説明

移植機

【課題】 株間を容易にかつ柔軟に調節することができるようにする。
【解決手段】 本発明の移植機1は、圃場を走行する走行車体2と、該走行車体2に連結され、該走行車体2の走行に伴って圃場に苗を植え付ける移植装置3とを備えている。移植装置3を駆動するモータ25を含む駆動装置4と、該駆動装置4を制御する制御装置5とを備えており、移植装置3は、モータ25の回転速度に応じた植付速度で圃場に苗を植え付けるように構成されており、制御装置5は、走行車体2の走行方向における苗同士の株間の目標値を設定する株間設定ダイヤルと、前記株間を直接的又は間接的に表す情報を計測する株間計測手段とを備え、該株間計測手段から求めた前記株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するようにモータ25の回転速度を制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を走行する走行車体と、該走行車体に連結又は搭載され、該走行車体の走行に伴って圃場に苗を植え付ける移植装置とを備えた移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例としては、特許文献1に記載された田植機を例示する。この田植機は、図10に示すように、乗用型の走行車体501の後部に油圧シリンダ502で駆動される昇降リンク機構503を介して苗植付装置504を連結している。苗植付装置504は、走行車体501の走行速度と同調する速度で回転する第一動力取り出し軸(図示略)及び第一伝動軸519を介して、エンジン540の動力が走行車体側から伝動されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−172805号公報([0015]〜[0018]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来例の田植機は、走行車体の後部に設けられた第一伝動軸519を介して苗植付装置504が駆動されるように構成されているので、走行車体501の走行速度と、第一伝動軸519の回転速度との相対関係によって苗の植付株間が決まる。このため、前記走行速度又は前記回転速度のいずれかが変われば、苗植付装置504の動力伝達部のギヤやチェンスプロケットの組み替えにより、植付株間を修正する必要があり、走行車体の走行速度が限定されてしまうという課題や、走行速度又は第一伝動軸519の回転速度が異なる走行車体に接続することが困難であるという課題がある。
【0005】
また、走行車体501の走行速度や、圃場の状態によっては、圃場での走行時における車輪のスリップ量が増大し、植付株間が設定値よりも狭くなってしまうという課題もある。このような場合には、走行車体501の走行速度を低下させるか、又は、苗植付装置504の動力伝達部のギヤやチェンスプロケットの組み替えにより、植付株間を修正する必要がある。しかし、前者では、植付速度が低下し、作業効率が低下するという課題がある。また、後者では、植付速度を低下させないで済むが、植付株間の調整が困難で手間が掛かるし、圃場の状態が場所によって異なっているときに株間が不安定になり易いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の移植機は、
圃場を走行する走行車体と、該走行車体に連結又は搭載され、該走行車体の走行に伴って圃場に苗を植え付ける移植装置とを備えた移植機であって、
前記移植装置を駆動するモータを含む駆動装置と、該駆動装置を制御する制御装置とを備えており、
前記移植装置は、前記モータの回転速度に応じた植付速度で圃場に苗を植え付けるように構成されており、
前記制御装置は、前記走行車体の走行方向における苗同士の株間の目標値を設定する株間目標値設定手段と、前記株間を直接的又は間接的に表す情報を計測する株間計測手段とを備え、該株間計測手段から求めた前記株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するように前記モータの回転速度を制御するように構成されている。
【0007】
ここで、前記モータとしては、特に限定されないが、電動モータ、油圧モータなどを例示する。
【0008】
この構成によれば、前記移植装置を前記モータで駆動するように構成するとともに、該モータの回転速度を制御することにより株間を調節するように構成しているので、株間を容易にかつ柔軟に調節することができる。また、前記移植装置は、前記モータを駆動力源としているので、動力取出軸が設けられていない汎用の走行車体に対しても、容易に連結又は搭載させることができる。これは、モータを駆動するためのエネルギー源(電動モータにおける電力源(バッテリー、発電機)、油圧モータにおける油圧力源(油圧ポンプ))の追加や、モータとエネルギー源との接続(電動モータにおけるケーブル接続、油圧モータにおけるホース接続)は、動力取出軸の追加や接続よりも、容易だからである。また、前記制御装置により、該株間計測手段から求めた前記株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するように前記モータの回転速度を制御するようにしているので、走行速度や圃場の状態に関わらず、目標の株間を安定して実現できる。
【0009】
第2の発明の移植機としては、前記第1の発明において、
前記株間計測手段は、圃場における前記株間を計測する株間センサを備えた態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記株間を直接的に表す情報である「圃場における前記株間」を得ることができる。
【0011】
第3の発明の移植機としては、前記第1の発明において、
前記株間計測手段は、前記走行車体による走行速度を計測する走行速度センサと、前記移植装置による植付速度を計測する植付速度センサとを備えた態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記株間を間接的に表す情報である前記走行速度及び前記植付速度を得ることができる。前記株間は、前記走行速度を前記植付速度で除算することにより算出することができるからである。
【0013】
第4の発明の移植機としては、前記第1の発明において、
前記株間計測手段は、第一株間計測手段と、第二株間計測手段と、該第一株間計測手段及び該第二株間計測手段のいずれの情報を採用するかを切り替える制御切替手段とを備えており、
前記第一株間計測手段は、圃場における前記株間を計測する株間センサを備え、
前記第二株間計測手段は、前記走行車体による走行速度を計測する走行速度センサと、前記移植装置による植付速度を計測する植付速度センサとを備えた態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、苗の種類、圃場、天候などの条件に応じて、前記第一株間計測部又は前記第二株間計測部のいずれか信頼性の高い株間の情報が得られるものに適宜切り替えることができるので、高精度な植付株間を実現できる。
【0015】
第5の発明の移植機としては、前記第3又は4の発明において、
前記走行速度センサの出力値を補正するための補正値を設定する走行速度補正値設定手段を備えた態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、前記走行速度センサが、前記走行車体の車輪や、前記移植装置の接地輪の回転速度を計測することにより前記走行速度を間接的に得るように構成されている場合に、外乱(例えば、前記車輪がスリップすることなどによるもの)が生じても、前記補正値を調節することにより、走行速度の計測値を高精度に維持することができる。
【0017】
第6の発明の移植機としては、前記第1〜5のいずれかの発明において、
前記移植装置が接地していることを感知する接地センサを備え、
前記制御装置は、該接地センサにより該移植装置が接地していることを感知しているときのみ前記駆動装置により該移植装置を駆動させるように構成された態様を例示する。
【0018】
この構成によれば、前記移植装置が接地している場合に自動的に該移植装置が駆動されるので、苗の植え過ぎや植え残しを防止することができる。
【0019】
第7の発明の移植機としては、前記第1〜6のいずれかの発明において、
警報を出力する警報手段を備え、
前記制御装置は、前記株間計測部が所定時間以上株間を計測しない状態を感知すると、前記警報手段に警報を出力させるように構成された態様を例示する。
【0020】
この構成によれば、作業者に欠株の発生を迅速かつ確実に認識させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る移植機によれば、株間を容易にかつ柔軟に調節することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る移植機を示す側面図である。
【図2】同移植機の一部を破断してその油圧駆動装置の構成を示した側面図である。
【図3】同移植機の制御系統の構成を示すブロック図である。
【図4】同移植機の第一株間計測手段の構成例を示す図である。
【図5】同移植機の第二株間計測手段の構成例を示す図である。
【図6】同移植機の第一株間計測手段による制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】同移植機の第二株間計測手段による制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明を具体化した第二実施形態に係る移植機の一部を破断してその油圧駆動装置の構成を示した側面図である。
【図9】本発明を具体化した第三実施形態に係る移植機の制御系統の構成を示すブロック図である。
【図10】従来の移植機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図7は本発明を具体化した第一実施形態の移植機1を示している。この移植機1は、図1及び図2に示すように、圃場を走行する走行車体2と、走行車体2の後部に油圧シリンダ(図示略)で駆動される昇降リンク機構2aを介して上下動可能に連結され、該走行車体2の走行に伴って圃場に苗Nを植え付ける移植装置3と、該移植装置3を駆動する油圧モータ25を含む油圧駆動装置4と、該油圧駆動装置4を制御する制御装置5とを備えている。昇降リンク機構2aにより、苗の圃場への移植作業時は移植装置3を下方に下げることにより接地させることができ、移植作業を行わないときは移植装置3を上方に上げることにより接地させないことができるように構成されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0024】
走行車体2は、その機体前部にエンジン11が搭載されており、該エンジン11の動力が前後車輪12,13に伝えられ、機体を走行駆動するように構成されている。また、本例の走行車体2は乗用型に構成されており、エンジン11の後方に運転座席14及びステアリングハンドル15などの操作手段が設けられている。
【0025】
移植装置3は、多数のポット苗室が配設された苗箱から所定数ずつ苗Nを取り出すとともに、該苗Nを植付手段としての植付ディスク6により一株ずつ圃場に植え付けるように構成されている。本例の移植装置3の植付速度は、油圧モータ25の回転速度に比例するようになっている。
【0026】
油圧駆動装置4は、エンジン11の動力により駆動され、作動油を送り出す油圧ポンプ21と、油圧系統に必要な作動油を貯めておくオイルタンク22と、作動油の流量を制御する流量制御弁23、油圧のオン/オフを制御する油圧切替弁24、作動油の圧力から回転運動を取り出す油圧モータ25とを備えている。本例では、油圧ポンプ21は、エンジン11により回転駆動される動力取出軸16を介して駆動されるようになっている。
【0027】
制御装置5は、図3に示すように、制御ユニット30と、運転座席14の後方に装備された設定手段としての走行速度補正ダイヤル31、株間設定ダイヤル32及び制御切替スイッチ33と、警報手段としてのアラーム34と、移植装置3を駆動する油圧モータ25の回転数をもとに植付速度を感知する植付速度センサ35と、走行車体2の走行速度を感知する走行速度センサ36と、移植装置3が接地しているか否かを感知する接地センサ37と、移植装置3により圃場に植え付けられた苗Nの株間を感知する株間センサ38とを備えており、流量制御弁23及び油圧切替弁24に制御信号を出力するように構成されている。
【0028】
株間設定ダイヤル32は、走行車体2の走行方向における苗N同士の株間の目標値を設定する株間目標値設定手段となっている。
【0029】
株間センサ38は、株間を直接的に表す情報を計測する第一株間計測手段となっている。この株間センサとしては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)図4(a)に示すように、植付ディスク6から苗Nが離れるのを第一のセンサ38aで感知したとき、その直前に植え付けられた苗Nの位置を第二のセンサ38bで感知することにより株間を計測する態様。
(2)図4(b)に示すように、圃場に植え付けられた二以上の苗Nを撮影手段38cにより撮影しその画像データを入力するとともに、該画像データを解析することにより株間を計測する態様。
(3)図4(c)に示すように、赤外線発生装置38dにより、走行車体2の進行方向における左右いずれか一方から圃場に植え付けられた二以上の苗Nに対し赤外線Rを照射するとともに、同進行方向における他方に設けた赤外線受光装置38eにより赤外線Rを受光することにより、赤外線Rが遮られた位置を感知し株間を計測する態様。
【0030】
走行速度センサ36は、本例では移植装置3の接地輪の回転速度により走行速度を感知するようになっている。本例の走行速度センサ36は、圃場での走行時に接地輪がスリップすると、走行速度に誤差が生じてしまうので、走行速度補正値設定手段としての走行速度補正ダイヤル31により、その誤差を補正することができるように構成されている。植付速度センサ35及び走行速度センサ36は、株間を間接的に表す情報を計測する第二株間計測手段となっている。この株間を間接的に表す情報は、走行速度センサ36による走行速度(単位時間あたりの走行距離)を植付速度センサ35による植付速度(単位時間あたりの植付回数)で除算すると得られる。また、図5に示すように、苗Nの搬送経路(本例では植付ディスク6)に苗Nを感知する苗センサ39を設置し、感知した時間間隔に、走行速度センサ36による走行速度を乗じることによっても、株間を間接的に表す情報を計測することができ、この場合は、走行速度センサ36及び苗センサ39が第二株間計測手段となる。
【0031】
制御切替スイッチ33は、前記第一株間計測手段又は前記第二株間計測手段を選択する制御切替手段となっている。
【0032】
次に、制御切替スイッチ33の切替状態に応じた制御装置5の制御ユニット30における制御動作を説明する。図6は、制御切替スイッチ33により第一株間計測手段が選択されている状態の制御動作を示すフローチャートである。この状態では、まず、株間設定ダイヤル32による株間の目標値(A)を入力する(ステップS101)とともに、株間センサ38による株間の計測値(B)を入力する(ステップS102)。次いで、株間の計測値(B)が株間の目標値(A)より大きければ(ステップS103)、流量制御弁23の絞り量が相対的に小さくなるように制御することにより油圧モータ25の回転速度を上げる。これにより移植装置3の植付速度を上げて株間が小さくなるようにする(ステップS104)。一方、株間の計測値(B)が株間の目標値(A)より小さければ(ステップS105)、流量制御弁23の絞り量が相対的に大きくなるように制御することにより油圧モータ25の回転速度を下げる。これにより移植装置3の植付速度を下げて株間が大きくなるようにする(ステップS106)。そして、以上の制御動作を繰り返すように構成されている。なお、ステップS104、106における移植装置3の植付速度の上下量の設定方法としては、特に限定されないが、直前の植付速度に対し、所定の微小速度を昇降させた植付速度を新たな植付速度として設定する態様を例示する。
【0033】
図7は、制御切替スイッチ33により第二株間計測手段が選択されている状態の制御動作を示すフローチャートである。この状態では、まず、株間設定ダイヤル32による株間の目標値(A)を入力する(ステップS201)とともに、走行速度センサ36による走行速度の計測値(C)を入力する(ステップS202)。次いで、走行速度の計測値(C)を株間の目標値(A)で除算することにより植付速度の目標値(X)を算出する(ステップS203)。次いで、植付速度センサ35から植付速度の計測値(Y)を入力する(ステップS204)。次いで、植付速度の計測値(Y)が植付速度の目標値(X)より大きければ(ステップS205)、流量制御弁23の絞り量が相対的に大きくなるように制御することにより油圧モータ25の回転速度を下げる。これにより移植装置3の植付速度を下げて株間が大きくなるようにする(ステップS206)。一方、株間の計測値(Y)が株間の目標値(X)より小さければ(ステップS207)、流量制御弁23の絞り量が相対的に小さくなるように制御することにより油圧モータ25の回転速度を上げる。これにより移植装置3の植付速度を上げて株間が小さくなるようにする(ステップS208)。そして、以上の制御動作を繰り返すように構成されている。なお、ステップS206、208における植付速度の上下量の設定方法としては、特に限定されないが、直前の植付速度に対し、所定の微小速度を上下させた植付速度を新たな植付速度として設定する態様を例示する。
【0034】
ここで、図7の制御動作においては、植付速度の計測値が、植付速度の目標値と一致するように植付速度を制御(植付速度は株間に反比例する情報であるので、図6のフローチャートとは速度の上下を逆に制御)するように構成されているが、この構成は、株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するように植付速度を制御する図6のフローチャートの構成と実質的に等しいものである。
【0035】
これらの制御動作に加え、本例の制御装置5の制御ユニット30は、次のように構成されている。
(1)接地センサ37により該移植装置3が接地していることを感知しているときのみ、油圧切替弁24を制御することにより油圧をONにして油圧駆動装置4が作動可能にし、それ以外のときは油圧切替弁24を制御することにより油圧をOFFにする。
(2)株間センサ38が所定時間以上株間を計測しない状態を感知すると、アラーム34により、警報を出力させるようになっている。
【0036】
以上のように構成された本例の移植機1によれば、移植装置3を油圧モータ25で駆動するように構成するとともに、該油圧モータ25の回転速度を制御することにより株間を調節するように構成しているので、株間を容易にかつ柔軟に調節することができる。また、移植装置3は、油圧モータ25を駆動力源としているので、動力取出軸16が設けられていない走行車体に対しても、容易に連結又は搭載させることができる。また、制御装置5により、該第一株間計測手段や第二株間計測手段から求めた前記株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するように油圧モータ25の回転速度を制御するようにしているので、走行速度や圃場の状態に関わらず、目標の株間を安定して実現できる。
【0037】
また、前記株間計測手段は、第一株間計測手段と、第二株間計測手段と、該第一株間計測手段及び該第二株間計測手段のいずれの情報を採用するかを切り替える制御切替スイッチ33とを備えており、前記第一株間計測手段は、圃場における前記株間を計測する株間センサ38を備え、前記第二株間計測手段は、走行車体2による走行速度を計測する走行速度センサ36と、移植装置3による植付速度を計測する植付速度センサ35とを備えている。この構成によれば、苗Nの種類、圃場、天候などの条件に応じて、前記第一株間計測部又は前記第二株間計測部のいずれか信頼性の高い株間の情報が得られるものに適宜切り替えることができるので、高精度な植付株間を実現できる。
【0038】
また、走行速度センサ36の出力値を補正するための補正値を設定する走行速度補正ダイヤル31を備えているので、走行速度センサ36が、本例のように移植装置3の接地輪の回転速度を計測することにより前記走行速度を間接的に得るように構成されている場合に、外乱(例えば、前記接地輪がスリップすることなどによるもの)が生じても、前記補正値を調節することにより、走行速度の計測値を高精度に維持することができる。
【0039】
また、移植装置3が接地していることを感知する接地センサ37を備え、制御装置5は、該接地センサ37により該移植装置3が接地していることを感知しているときのみ油圧駆動装置4により該移植装置3を駆動させるように構成されているので、苗Nの植え過ぎや植え残しを防止することができる。
【0040】
また、警報を出力する警報手段としてのアラーム34を備え、制御装置5は、前記株間計測部が所定時間以上株間を計測しない状態を感知すると、アラーム34に警報を出力させるように構成されているので、作業者に欠株の発生を迅速かつ確実に認識させることができる。
【0041】
次に、図8は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この移植機51は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0042】
本例の移植機51は、耕耘装置52a及び油圧ポンプ52bが装備された耕耘機を走行車体52として用いることにより構成されている。すなわち、この走行車体52は、第一実施形態の走行車体2と同様に、エンジン11により回転駆動される動力取出軸16を備えているが、該動力取出軸16は耕耘装置52aに接続されている。また、走行車体52の油圧ポンプ52bには、第一実施形態の油圧駆動装置4から油圧ポンプ21を省いた構成が接続されることにより、第一実施形態と同様の油圧駆動装置53が構成されている。さらに、走行車体52の後部には、油圧駆動装置53により駆動される移植装置3が第一実施形態と同様に連結されている。
【0043】
本例の移植機51によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、耕耘装置52a及び油圧ポンプ52bが装備された耕耘機を用いて走行車体52を構成することができるので、簡単に耕耘同時苗移植機を実現できる。
【0044】
次に、図9は本発明を具体化した第三実施形態を示している。この移植機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0045】
本例の移植機では、株間計測手段として、第一実施形態における第二株間計測手段のみを用いるようにし、第一実施形態における制御切替スイッチ33を省いている。
【0046】
また、第一実施形態における走行速度補正ダイヤル31を省き、第一実施形態における株間センサ38を走行速度補正手段として用いる。すなわち、株間の計測値と植付速度センサ35から入力した植付速度とを乗算することで走行速度を算出することができるので、この走行速度により走行速度センサ36の出力値を補正するのである。走行速度センサ36の出力値の補正方法としては、特に限定されないが、走行速度センサ36の出力値と走行速度の算出値との差分を算出し、該差分に基づいて補正量を増減する態様を例示する。なお、移植装置3による苗Nの植え付け時に欠株が発生すると、株間センサ38は目標の株間からかけ離れた株間(目標の株間のおよそ整数倍)を感知してしまうので、株間センサ38が目標の株間よりも所定量(例えば、目標の株間の50%)以上大きい株間を検出した場合は、その株間を無視する(走行速度センサ36の出力値の補正に利用しない)ように構成する。なお、前記所定量を設定するための設定手段を設け、圃場の状態に応じて適宜変更可能にすることも可能である。
【0047】
本例の制御装置61は、図7の制御処理により移植装置3を制御する。この制御処理のなかで、走行速度センサ36による走行速度の計測値とは、走行速度補正手段としての株間センサ38の出力値による補正済みの計測値であるものとする。
【0048】
本例の移植機によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、次の効果を得ることができる。すなわち、第一実施形態における走行速度補正ダイヤル31及び制御切替スイッチ33を省くことができるので、操作を簡単化することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)移植装置3を駆動する駆動装置として、油圧駆動装置4に代えて、電動モータを駆動源とする電動の駆動装置を採用すること。
(2)制御切替スイッチ33を省くとともに、前記第一株間計測手段又は前記第二株間計測手段のいずれか一方のみを備えた移植機とすること。
【符号の説明】
【0050】
1 移植機
2 走行車体
2a 昇降リンク機構
3 移植装置
4 油圧駆動装置
5 制御装置
6 植付ディスク
11 エンジン
12 走行車輪
13 走行車輪
14 運転座席
15 ステアリングハンドル
16 動力取出軸
21 油圧ポンプ
22 オイルタンク
23 流量制御弁
24 油圧切替弁
25 油圧モータ
31 走行速度補正ダイヤル
32 株間設定ダイヤル
33 制御切替スイッチ
34 アラーム
35 植付速度センサ
36 走行速度センサ
37 接地センサ
38 株間センサ
38a 第一のセンサ
38b 第二のセンサ
38c 撮影手段
38d 赤外線発生装置
38e 赤外線受光装置
39 苗センサ
51 移植機
52 走行車体
52a 耕耘装置
52b 油圧ポンプ
53 油圧駆動装置
61 移植機
62 制御装置
N 苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体と、該走行車体に連結又は搭載され、該走行車体の走行に伴って圃場に苗を植え付ける移植装置とを備えた移植機であって、
前記移植装置を駆動するモータを含む駆動装置と、該駆動装置を制御する制御装置とを備えており、
前記移植装置は、前記モータの回転速度に応じた植付速度で圃場に苗を植え付けるように構成されており、
前記制御装置は、前記走行車体の走行方向における苗同士の株間の目標値を設定する株間目標値設定手段と、前記株間を直接的又は間接的に表す情報を計測する株間計測手段とを備え、該株間計測手段から求めた前記株間の計測値が、前記株間の目標値と一致するように前記モータの回転速度を制御するように構成された移植機。
【請求項2】
前記株間計測手段は、圃場における前記株間を計測する株間センサを備えた請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記株間計測手段は、前記走行車体による走行速度を計測する走行速度センサと、前記移植装置による植付速度を計測する植付速度センサとを備えた請求項1記載の移植機。
【請求項4】
前記株間計測手段は、第一株間計測手段と、第二株間計測手段と、該第一株間計測手段及び該第二株間計測手段のいずれの情報を採用するかを切り替える制御切替手段とを備えており、
前記第一株間計測手段は、圃場における前記株間を計測する株間センサを備え、
前記第二株間計測手段は、前記走行車体による走行速度を計測する走行速度センサと、前記移植装置による植付速度を計測する植付速度センサとを備えた請求項1記載の移植機。
【請求項5】
前記走行速度センサの出力値を補正するための補正値を設定する走行速度補正値設定手段を備えた請求項3又は4記載の移植機。
【請求項6】
前記移植装置が接地していることを感知する接地センサを備え、
前記制御装置は、該接地センサにより該移植装置が接地していることを感知しているときのみ前記駆動装置により該移植装置を駆動させるように構成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の移植機。
【請求項7】
警報を出力する警報手段を備え、
前記制御装置は、前記株間計測部が所定時間以上株間を計測しない状態を感知すると、前記警報手段に警報を出力させるように構成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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