説明

移相器

【課題】位相を変化させることのできる信号の周波数を広帯域化する移相器を提供する。
【解決手段】本発明に係る移相器10は、所定の入力信号を伝播する第1マイクロストリップ線路100と、所定の領域で第1マイクロストリップ線路100と電気的に結合し、入力信号の伝播方向に沿って設けられる間隙120により生じる経路長の異なる複数の経路を含み、間隙120により入力信号が分割された複数の分割信号のそれぞれを複数の経路のそれぞれにおいて伝播する結合線路と、第1マイクロストリップ線路100に平行に設けられ、所定の領域で結合線路と電気的に結合し、結合線路を伝播した複数の分割信号のそれぞれを伝播する第2マイクロストリップ線路105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路通過型の移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェーズドアレーアンテナのビーム制御又は位相変調等に用いられる移相器として、線路通過型の移相器が存在する。例えば、特許文献1には、第1の基板と、第1の基板上に形成されたU字型パターンと、第2の基板と、第2の基板上に形成され互いに平行な部分を有する第1パターン及び第2パターンとを備え、U字型パターンの平行な部分のそれぞれと、第1パターン及び第2パターンの平行な部分とをそれぞれ接触させて重ね合わせた状態で、第1の基板又は第2の基板を連続的に移動可能に構成した位相調整回路について記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の位相調整回路によれば、U字型パターンの長さは伝送する信号の1/2波長の整数倍の長さに設定されており、U字型パターンの平行な部分のそれぞれと第1パターン及び第2パターンの平行な部分のそれぞれとを接触させて重ね合わせた状態で、第1の基板又は第2の基板を連続的に移動させることができる。これにより、特許文献1に記載の位相調整回路は、信号の伝送経路長を連続的に変化させ、回路特性を確認しながら信号の位相を連続的に変化させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、第1の誘電体基板と、第1の誘電体基板上に設けられた複数の入力側マイクロストリップ線路及び複数の出力側マイクロストリップ線路と、第1の誘電体基板に対して可動する第2の誘電体基板と、第2の誘電体基板上に設けられた複数の結合用マイクロストリップ線路と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられた絶縁体とを備え、複数の入力側マイクロストリップ線路及び複数の出力側マイクロストリップ線路と、複数の結合用マイクロストリップ線路とを互いに重なるように向かい合わせて配置した移相器について記載されている。
【0005】
特許文献2に記載の移相器によれば、複数の入力側マイクロストリップ線路及び複数の出力側マイクロストリップ線路と、複数の結合用マイクロストリップ線路とが絶縁体を介して重なり合う部分の長さを一定比率で同時に変化させることができる。これにより、複数の入力側マイクロストリップ線路を伝播する信号の位相を、複数の結合用マイクロストリップ線路のそれぞれにおいて同時に変化させることができる。例えば、特許文献2に記載の移相器は、携帯電話基地局用アンテナ等に用いられるアレーアンテナに搭載されることにより、指向性方向変更装置として用いることができる。
【特許文献1】特開平5−14004号公報
【特許文献2】特開2001−237605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の移相器においては、U字型パターンの全長は伝送する信号の波長の1/2波長の整数倍の長さになるように予め固定される。また、特許文献2に記載の移相器においては、複数の結合用マイクロストリップ線路の全長は、それぞれ、伝送する信号の波長の1/2波長の整数倍の長さになるように予め固定される。したがって、特許文献1に記載の移相器及び特許文献2に記載の移相器のいずれにおいても、設計に用いた周波数の信号を除く他の周波数の信号を伝送する場合の通過特性及びリターンロス特性の向上は困難である。
【0007】
そこで本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、位相を変化させることのできる信号の周波数を広帯域化する移相器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明においては、所定の入力信号が伝播する第1マイクロストリップ線路と、所定の領域で第1マイクロストリップ線路と電気的に結合し、入力信号の伝播方向に沿って設けられる間隙により生じる経路長の異なる複数の経路を含み、間隙により入力信号が分割された複数の分割信号のそれぞれを複数の経路のそれぞれにおいて伝播する結合線路と、第1マイクロストリップ線路に平行に設けられ、所定の領域で結合線路と電気的に結合し、結合線路を伝播した複数の分割信号のそれぞれを伝播する第2マイクロストリップ線路とを備える移相器が提供される。
【0009】
また、上記移相器の結合線路は、複数の経路のそれぞれが折り返された形状を有していてもよい。そして、結合線路は、第1マイクロストリップ線路及び第2マイクロストリップ線路の入力信号の伝播方向に沿って移動自在に設けられる誘電体基板上に形成されてもよい。更に、結合線路は、誘電体基板上に設けられた導電材料から形成され、誘電体基板上に設けられた導電材料が、第1マイクロストリップ線路及び第2マイクロストリップ線路との間で直流的に絶縁されてもよい。そして、導電材料は、金属箔又は金属板であってよい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明においては、所定の入力信号が入力される入力端子と、入力端子に入力された入力信号を複数の分配信号に分配する分配器と、分配器が分配した複数の分配信号の位相をそれぞれ所定の位相に変換する複数の移相器とを備え、複数の移相器はそれぞれ、分配器が分配した複数の分配信号の一部を入力する第1ポートと、第1ポートに入力された分配信号を伝播する第1マイクロストリップ線路と、所定の領域で第1マイクロストリップ線路と電気的に結合し、分配信号の伝播方向に沿って設けられる間隙により生じる経路長の異なる複数の経路を含み、間隙により分配信号が分割された複数の分割信号のそれぞれを複数の経路のそれぞれにおいて伝播する結合線路と、第1マイクロストリップ線路に平行に設けられ、所定の領域で結合線路と電気的に結合し、結合線路を伝播した複数の分割信号のそれぞれを伝播する第2マイクロストリップ線路とを有する移相器が提供される。
【0011】
また、複数の分割信号のそれぞれを複数の部分分割信号に分割し、分割した複数の部分分割信号の一部を複数の分割信号の一部として出力端子に出力すると共に、分割した他の複数の部分分割信号を他の移相器の第1ポートに分配信号として出力する分配器に、第2マイクロストリップ線路が伝播した複数の分割信号のそれぞれを出力する第2ポートを更に有していてもよい。
【0012】
また、複数の移相器がそれぞれ有する結合線路は、誘電体基板上に設けられた導電材料から形成され、誘電体基板上に設けられた導電材料が、第1マイクロストリップ線路及び第2マイクロストリップ線路との間で直流的に絶縁されていてもよい。そして、導電材料は、金属箔又は金属板であってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位相を変化させることのできる信号の周波数を広帯域化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る移相器下部の平面図を示す。また、図1(b)は、第1の実施の形態に係る移相器上部の平面図を示す。なお、図1(b)に示す移相器上部2は、移相器下部1に設けられる第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の形成面と対向する面について示している。
【0015】
(移相器10の構成)
本実施形態に係る移相器10は、移相器下部1と移相器上部2とを備える。移相器下部1は、第1誘電体基板130と、第1誘電体基板130上の所定の領域に設けられる所定の入力信号を伝播する第1マイクロストリップ線路100と、第1マイクロストリップ線路100と略平行に第1誘電体基板130上の所定の領域に設けられる第2マイクロストリップ線路105とを有する。
【0016】
また、移相器下部1は、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と略平行に設けられ、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105に沿って移相器上部2を移動可能に保持するガイド140と、第1マイクロストリップ線路100の一端に設けられる第1ポート150と、第2マイクロストリップ線路105の一端に設けられる第2ポート155とを更に有する。
【0017】
移相器上部2は、誘電体基板としての第2誘電体基板135と、第1ポート150が設けられている第1マイクロストリップ線路100の一端とは異なる第1マイクロストリップ線路100の他端を含む所定の領域、及び第2ポート155が設けられている第2マイクロストリップ線路105の一端とは異なる第2マイクロストリップ線路105の他端を含む所定の領域のそれぞれと電気的に結合する結合線路としての結合線路110a及び結合線路としての結合線路110bとを有する。ここで、結合線路110aと結合線路110bとの間に、入力信号の伝播方向に沿って設けられる所定の間隔のスリットとしての間隙120が形成される。
【0018】
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る移相器の上面図を示す。また、図2(b)は、(a)におけるA−A線での移相器の断面図を示す。
【0019】
第1誘電体基板130は、比誘電率が3.7であるPPE(ポリフェニレンエーテル)から主として構成され、上面視にて略四角形に形成される。第1誘電体基板130の平面寸法は、縦寸法が60mmであり、横寸法が170mmである。そして、第1誘電体基板130の厚さは1.6mmである。そして、図2(b)を参照すると、GNDとしての地導体160は、第1誘電体基板130の下面、すなわち、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105が設けられる面の反対側の面に設けられる。地導体160は、例えば、銅から構成され、上面視にて略四角形状を有する。地導体160の平面寸法は、第1誘電体基板130の平面寸法と略同一であり、厚さは35μmである。
【0020】
第1マイクロストリップ線路100は、主として銅から構成され、誘電体基板130の上面、すなわち、地導体160が設けられる面の反対側の面に設けられる。第1マイクロストリップ線路100は、上面視にて略長方形に形成される。第1マイクロストリップ線路100の平面寸法は、幅が3.4mm、長さが110mm、厚さが35μmである。また、第1マイクロストリップ線路100は、50Ωでインピーダンス整合されている。
【0021】
第2マイクロストリップ線路105は、主として銅から構成され、第1マイクロストリップ線路100と略平行に、誘電体基板130の上面、すなわち、地導体160が設けられる面の反対側の面に設けられる。第2マイクロストリップ線路105は、第1マイクロストリップ線路100から10mmの間隔をおいて、誘電体基板130上に形成される。また、第2マイクロストリップ線路105は上面視にて略長方形に形成され、平面寸法は第1マイクロストリップ線路100と略同一である。更に、第2マイクロストリップ線路105は、50Ωでインピーダンス整合されている。
【0022】
第1ポート150は、第1マイクロストリップ線路100の一端で、第1マイクロストリップ線路100と電気的に接続する。また、第2ポート155は、第2マイクロストリップ線路105の一端で、第2マイクロストリップ線路105と電気的に接続する。なお、第1ポート150及び第2ポート155は、それぞれ、誘電体基板130に固定されている。また、第1ポート150が接続していない第1マイクロストリップ線路100の他端、及び第2ポート155が接続していない第2マイクロストリップ線路105の他端は、それぞれ開放端である。
【0023】
ガイド140は、主として絶縁体であるポリエチレンやテフロン(登録商標)から構成される。ガイド140は、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と平行に設けられる。そして、ガイド140は、第1マイクロストリップ線路100と第2マイクロストリップ線路105とを挟んで第1誘電体基板130上に一対として設けられる。具体的には、ガイド140は、一のガイド140と他のガイド140との間に35mm間隔をおいて第1誘電体基板130上に設けられる。
【0024】
本実施形態に係る移相器上部2が有する第2誘電体基板135は、比誘電率が3.7であるPPEから主として構成され、上面視にて略四角形に形成される。第2誘電体基板135の平面寸法は、縦寸法が29.8mmであり、横寸法が32mmである。そして、第2誘電体基板135の厚さは1.6mmである。
【0025】
結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ導電材料から形成される。例えば、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、金属箔としての銅箔から構成され、折り返し部分を有する。本実施形態において、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、それぞれの経路の途中に折り返された形を有する略U字形状に形成される。そして、結合線路110a及び結合線路110bはそれぞれ、全長が入力信号の1/2波長の整数倍に設定される。例えば、結合線路110aの入力信号が伝播する方向に沿った長さ、すなわち結合線路110aの全長は65mmであり、結合線路110bの入力信号が伝播する方向に沿った長さ、すなわち結合線路110bの全長は53mmである。更に、結合線路110a及び結合線路110bの幅はそれぞれ、例えば、1.9mmである。
【0026】
本実施形態において結合線路110aと結合線路110bとは、第2誘電体基板135上に相互に平行となるべく所定の間隔をおいて形成される。すなわち、結合線路110aと結合線路110bとの間には、入力信号の伝播方向に沿って、所定の間隔をおいて間隙120が設けられる。本実施形態において間隙120は、結合線路110a及び結合線路110bの一端から他端まで連続的に形成される。間隙120の幅は、例えば、0.8mmである。
【0027】
続いて、図2(a)を参照すると、本実施形態に係る移相器10は、移相器下部1が有するガイド140に移相器上部2を保持させることにより構成される。そして、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、第1マイクロストリップ線路100の一端を含む所定の領域の上方において第1マイクロストリップ線路100と電気的に結合する。また、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、第2マイクロストリップ線路105の一端を含む所定の領域の上方において第2マイクロストリップ線路105と電気的に結合する。
【0028】
具体的には、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105とは物理的に離間して、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の上方に配置される。すなわち、図2(b)を参照すると、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の上面から所定の間隔をおいて、結合線路110a及び結合線路110bがそれぞれ配置される。
【0029】
例えば、本実施形態において、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の上面と結合線路110a及び結合線路110bの下面との間の間隔は、30μmである。そして、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の上面と結合線路110a及び結合線路110bの下面との間に形成される結合領域170において、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と、結合線路110a及び結合線路110bとは、それぞれ直流的に絶縁され、交流的に結合する。
【0030】
なお、移相器上部2はガイド140に往復移動自在に保持される。したがって、移相器上部2が有する結合線路110a及び結合線路110bは、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105に沿って自由に移動する。すなわち、移相器上部2は、ガイド140に保持された状態で、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105の長手方向に沿って移動する。また、他の例においては、結合線路110a及び結合線路110bと、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105とを、物理的に直接に密着させ導通させてもよい。
【0031】
なお、第1誘電体基板130は、PPE以外の他の誘電体又は絶縁体から形成することもできる。例えば、第1誘電体基板130は、比誘電率が2.6であるテフロン(登録商標)、又は比誘電率が9.5であるアルミナから構成することもでき、比誘電率は適宜選択可能である。更に、第1誘電体基板130の平面寸法及び厚さは、上記の例に限られず、適宜変更することもできる。また、第1誘電体基板130を上面視した場合の形状についても、上記の例に限られず、適宜変更することもできる。そして、第1誘電体基板130の形状に合わせて、地導体160の形状を変更してもよい。また、第2誘電体基板135も第1誘電体基板130と同様に、PPEを除く他の誘電体から構成することもできる。第2誘電体基板135は、例えば、プリント基板から形成することもできる。
【0032】
更に、第1マイクロストリップ線路100、第2マイクロストリップ線路105、結合線路110a、結合線路110b、及び地導体160は、それぞれ、銅だけではなく、銅以外の他の金属、例えば、金、銀、アルミニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、及びタンタル等の金属から主として形成することもできる。
【0033】
また、第1マイクロストリップ線路100、第2マイクロストリップ線路105、結合線路110a、結合線路110b、及び地導体160は、それぞれ、銅、金、銀、アルミニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、又はタンタル等の金属を含む合金、若しくは導電性を有する導電性材料(例えば、導電性セラミック、導電性高分子等)から形成してもよい。
【0034】
なお、結合線路110a及び結合線路110bは、銅等の金属から構成される金属板として形成してもよい。そして、当該金属版を第2誘電体基板135上に設けてもよい。また、金属板としての結合線路110a及び結合線路110bは、第2誘電体基板135上に形成せずに、ガイド140にそれぞれ独立に保持させてもよい。また、結合線路110a及び結合線路110bの形状及び寸法は上記に限られない。例えば、結合線路110a及び結合線路110bは、それぞれ、折り返し部分が略直角だけではなく、所定の曲率を有して形成されてもよい。更に、結合線路110a及び結合線路110bの幅は、それぞれ異なる幅であってもよい。
【0035】
(移相器10の動作)
図3は、第1の実施の形態に係る移相器の動作の一例を示す図である。
【0036】
なお、図3においては、説明を簡略化することを目的として、移相器10の動作を説明することに要する結合線路110a及び結合線路110bと、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105とを除き、移相器10を構成する他の要素の図示は省略している。
【0037】
まず、第1マイクロストリップ線路100に、所定の入力信号として入力信号210が入力される。そして、入力信号210は第1マイクロストリップ線路100を伝播して、結合線路110a及び結合線路110bの一端において、複数の分割信号、すなわち、結合線路110aを伝播する分割信号a220と結合線路110bを伝播する分割信号b222とに分割される。
【0038】
ここで、結合線路110aは、結合線路110aの一端から所定の距離240だけ第1マイクロストリップ線路100の一端の上方において、直流的に絶縁されると共に、交流的に結合した状態で重なる(容量結合)。同様にして、結合線路110bは、結合線路110bの一端から所定の距離240だけ第1マイクロストリップ線路100の一端の上方において、直流的に絶縁されると共に、交流的に結合した状態で重なる(容量結合)。
【0039】
これにより、第1マイクロストリップ線路100を伝播する入力信号210は、第1マイクロストリップ線路100と結合線路110aとが容量結合している領域、及び第1マイクロストリップ線路100と結合線路110bとが容量結合している領域において、2つの分割信号、すなわち、分割信号a220と分割信号b222とに分割される。そして、分割信号a220は結合線路110aを伝播すると共に、分割信号b222は結合線路110bを伝播する。
【0040】
ここで、本実施形態においては、従来は一体となっていた結合線路の内部に、信号の伝播方向に沿って間隙120を設けることにより、経路長が相互に異なる結合線路110aと結合線路110bとが形成されている。具体的には、結合線路110aと結合線路110bとはそれぞれ、それぞれの経路の途中に折り返された形を有するU字形状に形成される。そして、結合線路110aと結合線路110bとの間に、入力信号210の伝播方向、及び分割信号a220及び分割信号b222の伝播方向に沿って間隙120が設けられる。これにより、間隙120により生じる結合線路110aの経路a200の経路長と、間隙120により生じる結合線路110bの経路b205の経路長とは互いに異なることとなる。
【0041】
すなわち、結合線路110aは結合線路110bの外側に間隙120を挟んで位置することとなり、経路a200の経路長の方が経路b205の経路長より長くなる。これは、結合線路110aと結合線路110bとの間に間隙120を設けると共に、結合線路110aと結合線路110bとのそれぞれが折り返された形状を有することから、信号が伝播する経路の経路長に差が生じるためである。そして、結合線路110aと結合線路110bとの経路長が相互に異なることから、結合線路110aと共振する周波数と結合線路110bと共振する周波数とが相互に異なることとなる。
【0042】
続いて、結合線路110aを経路a200に沿って伝播する分割信号a220は、結語線路110aから第2マイクロストリップ線路105に分割信号c230として伝播する。係る場合において、分割信号c230の位相は、経路a200の経路長に応じて分割信号a220の位相とは異なる位相に変換される。同様にして、結合線路110bを経路b205に沿って伝播する分割信号b222は、結合線路110bから第2マイクロストリップ線路105に分割信号d232として伝播する。係る場合において、分割信号d232の位相は、経路b205の経路長に応じて分割信号b222の位相とは異なる位相に変換される。
【0043】
具体的には、結合線路110a及び結合線路110bと、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105とが容量結合する距離240をLとすると、分割信号a220の位相と分割信号b222の位相とはそれぞれ、(2×L)/λだけ変化する。なお、この場合におけるλは、所定の誘電率を有する第1誘電体基板130を伝播する信号の等価波長である。
【0044】
図4(a)は、従来型移相器の概要を示す。また、図4(b)は、本実施形態に係る移相器の概要を示す。そして、図4(c)は、従来型移相器の通過特性(S21)と本実施形態に係る移相器の通過特性(S21)の比較を示す。更に、図4(d)は、従来型移相器の電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)と本実施形態に係る移相器のVSWRの比較を示す。
【0045】
なお、図4(a)及び図4(b)においては、説明を簡略化することを目的として、第1マイクロストリップ線路100、第2マイクロストリップ線路105、及び結合線路(結合線路111、結合線路110a、及び結合線路110b)を除き、従来型移相器12及び移相器10を構成する他の要素の図示は省略している。
【0046】
図4(a)に示すように、従来型移相器12は、第1マイクロストリップ線路100と第2マイクロストリップ線路105とを電気的に結合する結合線路111は、間隙を有さない。一方、図4(b)に示すように、本実施形態に係る移相器10は、間隙120が設けられることにより生じる、経路長が相互に異なる結合線路110aと結合線路110bとを有する。
【0047】
まず、図4(c)のグラフ300は、従来型移相器12及び本実施形態に係る移相器10のそれぞれに所定の高周波数の信号を伝播させた場合の通過特性(S21)のシミュレーション結果を示す。すなわち、グラフ300は、従来型移相器12及び移相器10に入射した高周波に対して、従来型移相器12及び移相器10から出射した透過波の割合を示す。
【0048】
移相器に入射した高周波が当該移相器から出射されるときの理想的な通過特性は0dBであるところ、本実施形態に係る移相器10によれば、周波数が約1.7GHzから約2.2GHzの範囲において通過特性が約−0.25dBから約−0.33dB程度であることが分かる(グラフ300の実線(b))。また、本実施形態に係る移相器10によれば、少なくとも周波数が約1.9GHzから約2.1GHzにおける通過特性が、従来型移相器12よりも向上する。すなわち、本実施形態に係る移相器10によれば、移相器10に入射した高周波信号の損失が従来型移相器12よりも少ないこととなる。
【0049】
続いて、図4(d)のグラフ302は、従来型移相器12及び本実施形態に係る移相器10のそれぞれに所定の高周波数の信号を伝播させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す。
【0050】
移相器に入射した高周波信号が移相器内を通過する場合に、高周波信号が移相器内で全く反射されない理想的な状態の場合、VSWRの値は1となるところ、本実施形態に係る移相器10によれば、周波数が約1.7GHzから約2.2GHzの範囲にわたってVSWRの値は1.05以下であり、従来型移相器12に比して1に近づいていることが分かる。すなわち、本実施形態に係る移相器10によれば、移相器10内において高周波信号が反射されることによる高周波信号の損失を、従来型移相器12よりも低減できる。したがって、本実施形態に係る移相器10によれば、例えば、携帯電話基地局用アンテナ等のように広帯域な周波数を利用する通信における通過特性、及びリターンロス特性が向上することとなる。
【0051】
更に、本実施形態に係る移相器10によれば、従来型移相器12に比して、周波数が約1.7GHzから約2.2GHzの範囲にわたってVSWRの値のばらつきが低減していることが分かる。なお、信号の伝播方向に沿って結合線路にn本の間隙を設けると、n+1個の結合線路が形成される。これは、n+1個の結合線路のそれぞれに対応する周波数で共振させることができることに対応するので、信号の伝播方向に沿って結合線路に設ける間隙の数を更に増加させると、VSWRの値のばらつきは更に低減する。
【0052】
(結合線路の変形例)
図5(a)から(d)は、結合線路の複数の変形例を示す図である。
【0053】
なお、図5(a)から(d)においては、結合線路の形状が異なる点を除き、他の構成及び機能は、図1から図4の説明における移相器10と略同一であるので、詳細な説明は省略する。また、図5(a)から(d)においては、複数の変形例を説明することに要する結合線路と、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105とを除き、図示は省略している。
【0054】
図5(a)に示す変形例を参照すると、結合線路112aは、第1マイクロストリップ線路100と容量結合する領域から第2マイクロストリップ線路105と容量結合する領域までの間に、信号の伝播方向に沿って間隙120を有すると共に、間隙120の途中に間隙120を塞ぐ連結部114を有する。なお、本変形例において連結部114が設けられる位置は、第1マイクロストリップ線路100と容量結合する領域の結合線路112aの一端と、第2マイクロストリップ線路105と容量結合する領域の結合線路112aの他端との中間点であるが、連結部114の位置は中間点に限られず、他の位置であってもよい。また、連結部114の形状、長さ、及び幅も適宜変更して形成できる。
【0055】
図5(b)に示す変形例を参照すると、本変形例においては結合線路112bと結合線路112cとの間に間隙120bが設けられると共に、結合線路112cと結合線路112dとの間に間隙120aが設けられる。そして、第1マイクロストリップ線路100を伝播する入力信号は3つの分割信号に分割され、結合線路112bと、結合線路112cと、結合線路112dとのそれぞれにおいて伝播する。
【0056】
これにより、本変形例においては、間隙120aと間隙120bとにより、結合線路112bと、結合線路112cと、結合線路112dとの3つのU字型の経路長の異なる線路が形成される。したがって、結合線路112bと、結合線路112cと、結合線路112dとのそれぞれにおいて共振する周波数が異なることになるので、間隙120が1つだけの場合に比べてVSWRのばらつきが更に減少する。
【0057】
なお、本変形例において間隙は2つであるが、間隙の数は更に増加させてもよい。信号の伝播方向に沿った間隙の数を増加させると、経路長の異なる結合線路が更に増加する。そして、経路長が異なる結合線路が増加すると、複数の結合線路のそれぞれにおいて共振する周波数が異なり、結果として共振する周波数の数が増加するので、VSWRのばらつきが更に減少することとなる。
【0058】
図5(c)に示す変形例を参照すると、U字型を有する結合線路112eの線路幅は、線路幅e400として結合線路112eの一端から他端まで一定である。一方、結合線路112fにおいては、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と平行な部分においては、結合線路112eと同一の線路幅であるが、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と垂直な部分においては、線路幅e400よりも幅が広い線路幅f402となるように形成される。
【0059】
なお、線路幅は本変形例に限られず、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と平行な部分における結合線路112eの線路幅と結合線路112fの線路幅とが異なるように形成することもできる。また、結合線路112e及び結合線路112fの線路幅は、結合線路112e及び結合線路112fの一端から他端までの間で複数の線路幅を有していてもよい。更に、結合線路112eと結合線路112fとの間に設けられる間隙120の一部を連結してもよい。
【0060】
図5(d)に示す変形例を参照すると、結合線路112gは、結合線路112gを伝播する信号の方向に沿って、複数の略四角形の間隙120を有する。すなわち、結合線路112gは、複数の連結部114によって内側の結合線路112gと外側の結合線路112gとの間を塞がれたことによって形成された、複数の間隙120を有する。なお、間隙120の数は本変形例に限られない。更に、間隙120の形状も略四角形に限られず、略多角形又は略円形であってもよい。
【0061】
(第1の実施の形態の効果)
本実施形態に係る移相器10によれば、折り返し形状を有する結合線路に間隙120を設けることにより、経路長が互いに異なる結合線路110aと結合線路110bとが設けられ、信号が伝播する経路を複数にすることができる。これにより、結合線路110aと結合線路110bとを伝播する信号の経路の距離に差が生じるので、結合線路110aで共振する周波数と、結合線路110bで共振する周波数とが互いに異なることとなる。すなわち、結合線路110aと結合線路110bとが形成されることにより、それぞれの結合線路で共振させることのできる周波数を増加させることができるので、当該移相器10において位相を変化させることのできる信号の周波数を広帯域化することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る移相器10によれば、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105が設けられる移相器下部1に対して、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105のそれぞれと容量結合している複数の結合線路が設けられている移相器上部2を、第1マイクロストリップ線路100及び第2マイクロストリップ線路105と平行な方向に、自在に移動させることができる。これにより、複数の結合線路のそれぞれを伝播する信号の経路長を変化させることができるので、複数の結合線路のそれぞれを伝播する信号の位相を自在に変化させることができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る移相器の構成の一例を示す図である。
【0064】
なお、図6においては、説明を簡略化することを目的として、第1マイクロストリップ線路100、第2マイクロストリップ線路105、結合線路110a、及び結合線路110bを除き、移相器10を構成する他の要素の図示は省略する。
【0065】
(移相器20の構成)
本実施形態において、移相器20は複数の移相器10を備える。なお、移相器10は、図1から図5の上記説明において説明した移相器10と略同一の構成を有すると共に、略同一の機能及び作用を奏するので、詳細な説明は省略する。
【0066】
より具体的には、移相器20は、所定の入力信号を入力する入力端子500と、入力端子500に入力された入力信号を複数の分配信号に分配する分配器510と、分配器510が分配した分割信号を複数の移相器10のそれぞれに伝播する複数の信号線路520と、信号線路520を介して分配信号を第1ポート150から入力すると共に、入力された分配信号の位相を所定の位相の信号に変換して出力する複数の移相器10と、複数の移相器10のそれぞれが有する第2ポート155が出力した信号を外部に出力する複数の出力端子530とを備える。
【0067】
また、複数の移相器10は、それぞれ、それぞれが有する第2ポート155とそれぞれが有する第1ポート150とが信号線路520を介して相互に接続されてもよい。この場合において、移相器20は、一の移相器10の第2ポート155と他の移相器10の第1ポート150との間に、一の移相器10から出力される信号を複数に分配する分配器を更に備えてもよい。
【0068】
(移相器20の動作)
分配器510は、入力端子500に入力された高周波信号を2つに分配する。そして、分配器510は、分配した一の高周波信号を第1の移相器10の第1ポート150に信号線路520を介して伝播させると共に、分配した他の高周波信号を第2の移相器10の第1ポート150に信号線路520を介して伝播させる。
【0069】
第1の移相器10及び第2の移相器10は、それぞれ、それぞれの第1ポート150において分配器510が分配した複数の分配信号の一部を入力する。そして、それぞれの移相器10が有する第1マイクロストリップ線路100は、第1ポート150に入力された分配信号を伝播する。続いて、所定の領域において第1マイクロストリップ線路100と電気的に結合している結合線路110a及び結合線路110bに、分配信号が分割された複数の分割信号のそれぞれが伝播する。
【0070】
第1の移相器10及び第2の移相器10がそれぞれ有する結合線路110a及び結合線路110bは、第1マイクロストリップ線路100から伝播した分割信号の位相をそれぞれ変換して、第2マイクロストリップ線路105に伝播させる。そして、第2マイクロストリップ線路105は、結合線路110a及び結合線路110bのそれぞれにおいて位相が変換された複数の分割信号のそれぞれを、第2ポート155に伝播させる。
【0071】
第1の移相器10及び第2の移相器10がそれぞれ有する第2ポート155は、第2マイクロストリップ線路105を伝播した複数の分割信号のそれぞれを、第2ポートと接続している出力端子530にそれぞれ供給する。出力端子530は、それぞれ、接続している第2ポート155から受け取った、第2マイクロストリップ線路105を伝播した複数の分割信号を外部にそれぞれ出力する。
【0072】
ここで、第1の移相器10の第2ポート155が、分配器と信号線路520とを介して第3の移相器10と接続している場合、当該分配器が第1の移相器10の第2ポート155から分割信号を受け取る。そして、当該分配器は、第1の移相器10から受け取った分割信号を複数の部分分割信号に分割する。続いて、当該分配器は、複数の部分分割信号の一部を複数の分割信号の一部として出力端子530に出力すると共に、分割した他の複数の部分分割信号を第3の移相器10の第1ポート150に分配信号として出力する。
【0073】
なお、第2の移相器10の第2ポート155が分配器と信号線路520とを介して第4の移相器10と接続している場合も、上記の説明における第1の移相器10と第3の移相器10との関係と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、分配器510は、入力端子500に入力された高周波信号を3以上に分配してもよい。この場合において、分配器510は、分配した高周波信号のそれぞれを、異なる複数の移相器10に信号線路520を介して伝播する。
【0074】
(第2の実施の形態の効果)
本実施形態に係る移相器20は、移相器10から出力される信号を分配して、分配した一部の信号を他の移相器10に入力させることにより、複数の移相器10を多段化することができる。これにより、移相器20は、複数の移相器10のそれぞれにおいて信号の位相をそれぞれ変化させて、複数の移相器10のそれぞれから位相が異なる信号をそれぞれ出力できる。したがって、移相器20は、例えば、アレーアンテナ等の多素子アンテナの位相を制御することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は、第1の実施の形態に係る移相器下部の平面図であり、(b)は、第1の実施の形態に係る移相器上部の平面図である。
【図2】(a)は、第1の実施の形態に係る移相器の上面図であり、(b)は、第1の実施の形態に係る移相器の断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る移相器の動作の一例を示す図である。
【図4】(a)は、従来型移相器の概要図であり、(b)は、第1の実施の形態に係る移相器の概要図である。また、(c)は、従来型移相器の通過特性(S21)と第1の実施の形態に係る移相器の通過特性(S21)の比較を示すグラフであり、(d)は、従来型移相器の電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)と本実施形態に係る移相器のVSWRの比較を示すグラフである。
【図5】(a)から(d)は、第1の実施の形態に係る結合線路の複数の変形例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る移相器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1…移相器下部、2…移相器上部、10…移相器、12…従来型移相器、20…移相器、100…第1マイクロストリップ線路、105…第2マイクロストリップ線路、110a,110b,111…結合線路、112a,112b,112c,112d…結合線路、112e,112f,112g…結合線路、114…連結部、120,120a,120b…間隙、130…第1誘電体基板、135…第2誘電体基板、140…ガイド、150…第1ポート、155…第2ポート、160…地導体、170…結合領域、200…経路a、205…経路b、210…入力信号、220…分割信号a、222…分割信号b、230…分割信号c、232…分割信号d、240…距離、300,302…グラフ、400…線路幅e、402…線路幅f、500…入力端子、510…分配器、520…信号線路、530…出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の入力信号が伝播する第1マイクロストリップ線路と、
所定の領域で前記第1マイクロストリップ線路と電気的に結合し、前記入力信号の伝播方向に沿って設けられる間隙により生じる経路長の異なる複数の経路を含み、前記間隙により前記入力信号が分割された複数の分割信号のそれぞれを前記複数の経路のそれぞれにおいて伝播する結合線路と、
前記第1マイクロストリップ線路に平行に設けられ、所定の領域で前記結合線路と電気的に結合し、前記結合線路を伝播した前記複数の分割信号のそれぞれを伝播する第2マイクロストリップ線路とを備える移相器。
【請求項2】
前記結合線路は、前記複数の経路のそれぞれが折り返された形状を有する請求項1に記載の移相器。
【請求項3】
前記結合線路は、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に沿って移動自在に設けられる誘電体基板上に形成される請求項1又は2に記載の移相器。
【請求項4】
前記結合線路は、前記誘電体基板上に設けられた導電材料から形成され、前記誘電体基板上に設けられた前記導電材料が、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路との間で直流的に絶縁されている請求項3に記載の移相器。
【請求項5】
前記導電材料は、金属箔又は前記金属板である請求項4に記載の移相器。
【請求項6】
所定の入力信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記入力信号を複数の分配信号に分配する分配器と、
前記分配器が分配した前記複数の分配信号の位相をそれぞれ所定の位相に変換する複数の移相器とを備え、
前記複数の移相器はそれぞれ、
前記分配器が分配した前記複数の分配信号の一部を入力する第1ポートと、
前記第1ポートに入力された前記分配信号を伝播する第1マイクロストリップ線路と、
所定の領域で前記第1マイクロストリップ線路と電気的に結合し、前記分配信号の伝播方向に沿って設けられる間隙により生じる経路長の異なる複数の経路を含み、前記間隙により前記分配信号が分割された複数の分割信号のそれぞれを前記複数の経路のそれぞれにおいて伝播する結合線路と、
前記第1マイクロストリップ線路に平行に設けられ、所定の領域で前記結合線路と電気的に結合し、前記結合線路を伝播した前記複数の分割信号のそれぞれを伝播する第2マイクロストリップ線路とを有する移相器。
【請求項7】
前記第2マイクロストリップ線路を伝播した前記複数の分割信号の少なくとも一部を出力する出力端子を更に備え、
前記複数の移相器はそれぞれ、
前記複数の分割信号のそれぞれを複数の部分分割信号に分割し、分割した前記複数の部分分割信号の一部を前記複数の分割信号の一部として前記出力端子に出力すると共に、分割した他の前記複数の部分分割信号を他の移相器の前記第1ポートに前記分配信号として出力する分配器に、前記第2マイクロストリップ線路が伝播した前記複数の分割信号のそれぞれを出力する第2ポートを更に有する請求項6に記載の移相器。
【請求項8】
前記複数の移相器がそれぞれ有する前記結合線路は、誘電体基板上に設けられた導電材料から形成され、前記誘電体基板上に設けられた前記導電材料が、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路との間で直流的に絶縁されている請求項6又は7に記載の移相器。
【請求項9】
前記導電材料が、金属箔又は前記金属板である請求項8に記載の移相器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−301201(P2008−301201A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145340(P2007−145340)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】