説明

穀物袋及びその穀物袋の製造方法

【目的】
本発明は、ポリエチレンフィルム製穀物袋の外表面に施した印刷表示面に、当該穀物袋を多段に平積みしたときに滑って荷崩れしないようにすると共に、落ち着き感と、風合い感と高級感を持たせることができるようにしたものである。
【解決手段】
ポリエチレンフィルムで長尺のチューブ体(1)を成形し、これを扁平に形成した扁平チューブ体(2)の側面部分(2n′)を含む表面部(2′)に下地印刷層(3)を形成し、当該下地印刷層に穀物の銘柄、産地等の表示をし、且つその下地印刷層にマットコート層(4)を形成し、前記扁平チューブ体の裏面(2″)にJAS法に基づく表示及びPL法に基づく表示等を印刷し、且つその下地印刷層(3)にマットコート層(4)を形成した後、扁平チューブ体(2)の長さ方向を設定長さに裁断して単一の袋体(A)を成形するように構成した穀物袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンフィルム製穀物袋の平面となる外表面の略全面下地となる下地印刷層を施し、且つその下地印刷層内に内容物や産地名等の印刷表示面が見えるようにすることにより、当該穀物袋を複数段に平積みしたときに滑って荷崩れしないようにすると共に、穀物袋の表面に落ち着き感と、風合い感と高級感および温かみを持たせることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の穀物袋、例えば米袋の外表面に内容物のブランド名や産地名やキャラクタ印刷表示にはポリエチレンフィルムに印刷加工をしたものが知られている。
【0003】
また、ポリエチレンフィルム製の袋体は、可撓性、耐内容物性、耐引張性等に優れると共に、安価かつ簡単に製造でき、加工性に優れていること等の理由によりチューブ体から加工する米袋の材料として広く利用されている。
【0004】
このポリエチレンフィルム製米袋が有する大きな特長は、その袋体表面がつるつるして平滑であるため汚れ難く、仮に汚れが付着しても簡単に拭き取ることができる。しかしながら難点としては、袋体の外観が光沢性に富んでいるため、これが却って、落ち着き感や風合い及び高級感に欠け、且つ冷たい感じがすることが否めない。
【0005】
そこで、従来においても、合成樹脂製シート体に、和紙、織物、皮等の質感および感触を持たせるため、シート体の主構成層である主体層1の外表面に発泡樹脂層を形成し、その発泡樹脂層の外表面に印刷層を、そしてさらにその上にグラデーションマットコート層を形成したものが知られている。これによって、発泡樹脂層のもつ柔らかみ及び温かみ、そしてグラデーションマットコート層のもつつや消し効果によって和紙、織物、皮等の質感および感触を引き出すことができるとしている。
【0006】
そして、さらに改良したものとして、チューブ容器を形成した場合に、内側から、主体層、発泡樹脂、印刷層、グラデーションマットコート層とから成る合成樹脂製シート体において、前記した発泡樹脂層と印刷層との間に、発泡樹脂層と同じ材質で形成した軟質樹脂層を設け、その軟質樹脂層の表面に印刷層を形成する発明が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−197233号の発明
【特許文献2】特開昭63−317332号の発明
【0008】
上記の特許文献1にあっては、発泡樹脂層の表面はでこぼこした粗面であるため、その表面上に印刷層がうまくのらず、その結果、その印刷層によって形成される模様が設定通りに現出されないことである。また、粗面であるため、印刷層の発泡樹脂層に対する接着が必ずしも充分とはいえなかった。
【0009】
次に特許文献2にあっては、特許文献1の発明の問題点を解消すべく、発泡樹脂層の外表面上に軟質樹脂層を形成したので、その表面上に形成される印刷層がうまくのって所望の模様等を確実に形成すると共に、強固に接着する。また、発泡樹脂層およびグラデーションマットコート層のはたらきによって柔らかみと温かみのある、和紙、織物、皮等のような質感および感触を持つシート体やそれによって形成されるチューブ容器等を製作することができる。さらに、軟質樹脂層を設けたことによって、シート体の層構造の強化にもつながるといった優れた効果も併せて発揮するとの効果がある、としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2の発明は、もっぱら単一の合成樹脂製シートそのものにグラデーションマットコートを施し、これをボトル容器に巻き付け包装するものである。したがって、そのグラデーションマットを表示する面積はきわめて小さい面積に限られる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、従来の課題を解決し、発明の目的を達成するために提供するものである。
【0012】
本発明の第1は、穀物袋において、ポリエチレンフィルムで長尺のチューブ体を成形し、これを扁平に形成した扁平チューブ体の表側面部分を含む表面部に下地となる下地印刷層を形成し、当該下地印刷層に穀物の銘柄、産地等の表示をし、且つその下地印刷層にマットコート層を形成し、前記扁平チューブ体の裏面にJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づく表示及びPL法(製造物責任法)等に基づく表示等を印刷し、且つ、扁平チューブ体の長さ方向を設定長さに裁断して単一の袋体を成形するように構成したものである。
【0013】
本発明の第2は、第1の発明に係る穀物袋において、扁平チューブ体の裏面部に下地印刷層とJAS法に基づく表示及びPL法等に基づく表示等を印刷し、且つその印刷層にマットコート層を形成するものである。
【0014】
本発明の第3は、穀物袋の製造方法において、ポリエチレンフィルムで成形した長尺のチューブ体を扁平に形成して扁平チューブ体とし、当該扁平体に表側面部分を含む表面部に下地となる下地印刷層を形成し、当該下地印刷層に穀物の銘柄、産地等の表示をし、且つその印刷層を覆って表面部と表側面部分を覆うマットコート層を形成し、前記偏平体の裏面部にJAS法に基づく表示及びPL法等に基づく表示等を印刷した後、扁平チューブ体の長さ方向を設定長さに裁断して単一の袋体を成形するように構成したものである。
【0015】
本発明の第4は、第3の発明に係る穀物袋の製造方法において、偏平体の裏面部に下地印刷層を形成し、JAS法に基づく表示及びPL法に基づく表示等をした後、当該印刷層を覆って裏面部と裏側面部分にマットコート層を形成するものである。
【0016】
本発明は上記の構成であるから、次の効果がある。すなわち、ポリエチレンフィルム製チューブ体の表裏面部に一袋分ごとに印刷加工した後、その印刷表示面にマットコーティングをしたことにより、袋体の平面と左右の両側面の印刷表示部位にポリエチレン素材のつるつるした外観がなくなり、つや消しによる落ち着いた風合いと高級感を醸し出し、且つ暖かみを有するとともに光の反射を防ぐ効果がある。
【0017】
また、その製法もポリエチレンフィルムで長尺のチューブ体を成形し、これを扁平に形成してその表面部と裏面部共に外面から印刷表示をして印刷層を形成した後、マットコーティング加工をするだけのきわめてシンプルの製法によってできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る穀物袋用扁平チューブ体の斜視図である。
【図2】図1の拡大表面図である。
【図3】図1の拡大裏面図である。
【図4】図2の4−4線に沿う断面図である。
【図5】扁平チューブ体の斜視図である。
【図6】本発明に係る穀物袋を多段に平積みした状態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は次のとおりである。袋体をポリエチレンフィルムで長尺のチューブ体を成形する。そして、そのチューブ体を扁平に形成してその表面部には、米のブランド名と生産地を大きく表示し、且つ内容量及び販売店のロゴマーク等を合わせて表示し、また扁平チューブ体の裏面部にはJAS法に基づく米の名称、産地、品種、内容量、販売者、PL法に基づく表示等の必須記載事項のほか、販売者のスローガン、「おいしいご飯の炊き方」、「お米の上手な保存方法」の各事項を印刷表示して印刷層を形成し、その上からつや消しのマットコーティング加工を施す。
【実施例】
【0020】
次に本発明の実施例を図面に即して説明する。1はポリエチレンフィルムで成形した長尺のチューブ体、2は当該チューブ体を偏平に形成した扁平チューブ体であり、その一方を表面部2′とし、他方を裏面部2″としてある。なお、表面部と裏面部の両側辺には、精米や無洗米又は玄米等の内容物Rを充填したときに袋体の側面2nの全幅wの半分の幅w′・w″となる表裏側面部分の2n′・2n″が形成されている。
【0021】
3はそのチューブ体1の表面部2′と裏面部2″の表裏側面部分2n′・2n″を含む略全面を覆う白地又は雲龍模様状の下地となる下地印刷層であり、当該表裏側面部分を除く表裏面2′・2″内に印刷加工してある。その下地印刷層3内において、表面部に米の銘柄名31と産地32を大きく印刷表示し、且つ内容量33及び販売者34等を併せて表示し、併せて表面部の両側面部分2n′に米の銘柄31′が印刷してある。
【0022】
また、扁平チューブ体1の裏面部2″には、JAS法に基づく表示である「米の銘柄31″、産地32′、品種35、内容量33′、販売者35」等、PL法に基づく表示36等の必須記載事項のほか、販売者のスローガン37、「おいしいご飯の炊き方38」、「お米の上手な保存方法39」の各事項を印刷表示して下地となる印刷層3を形成してある。
【0023】
4は前記の白地又は雲竜模様の下地印刷層3のスペースを超えて当該扁平チューブ体表裏面2′・2″の表裏側面部分2n′・2n″を含む略全面を覆うマットコート層である。このマットコート層は、つや消しにより半透明のコーティング加工がされ、コーティングをしない他の面に比べて高い摩擦作用が生じる。図1及び図2において、扁平チューブ体2の上下部に示す水平の点線s・s′は袋体Aを形成するシール部位である。図6において、符号Rは図2及び図3の扁平チューブ体2で米袋Aを成形し、これに収容する穀物のうち、精米・無洗米・玄米等の米を示す。
【0024】
「具体的な工程例」
ポリエチレンフィルム製長尺のチューブ体1(図5)を上下の押圧ローラーで折り目を付けながら扁平チューブ体2を成形し、当該扁平体表面部2′に白地又は雲竜模様印刷して下地印刷層3を形成し、次いで穀物の銘柄31、産地名32、内容量33、販売者34等を印刷表示する。
【0025】
次に、前記の白地又は雲竜模様の下地印刷層3及び表面側面部分2n′の面積を超えて当該扁平チューブ体表面2′の印刷部分31′を含む略全面をマットコーティングしてつや消しによる半透明のコート層4を形成する。
【0026】
続いて、扁平体裏面部2″に白地又は雲竜模様印刷して下地印刷層3を形成した後、JAS法に基づく表示である「米の名称31″、産地32′、品種35、内容量33′、販売者34等」、PL法に基づく表示36等の必須記載事項のほか、販売者のスローガン37、「おいしいご飯の炊き方38」、「お米の上手な保存方法39」の各事項を印刷表示する。
【0027】
なお、図3にあっては、扁平チューブ体1の裏面部2″には、下地印刷層3及び側面部位2n″を覆うマットコート層4を設けないこともある。その理由は米体の裏面は店頭に陳列する場合に、表面部ほどには余り人目に触れないことにある。しかしながら、図6のように袋体Aを複数段に平積みする場合において、袋体表面がつるつるして滑りやすい平滑面による位置ずれや荷崩れを防止し、且つ裏面にも風合いや落ち着き感並びに高級感及び温かみを出すためには、その裏面にも図3の鎖線示のようにマットコート層4を形成することが望ましい。
【0028】
最後の工程で扁平チューブ体1の下部をシール部位s′に沿ってシールして底部を形成すると共に、その中に米を充填した後、上部開口部をシール部位sに沿ってシールして密封した袋体Aを成形する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る穀物袋は、精米・無洗米・玄米の米及び麦を含む主穀のほか、大豆・小豆・蕎麦・胡麻・落花生等の雑穀の収納用袋にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1……ポリエチレン製チューブ体
2……偏平チューブ体
2′…偏平チューブ体の表面部
2″…偏平チューブ体の裏面部
2n…扁平チューブ体の表側面部分
2n′…扁平チューブ体の裏側面部分
3……白地又は雲竜模様の下地となる下地印刷層
4……マットコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンフィルムで長尺のチューブ体(1)を成形し、これを扁平に形成した扁平チューブ体(2)の表側面部分(2n′)を含む表面部(2′)に下地となる下地印刷層(3)を形成し、当該下地印刷層に商品の名称、産地等の表示をし、且つその印刷層(3)にマットコート層(4)を形成し、前記扁平チューブ体の裏面部(2″)にJAS法に基づく表示及びPL法等に基づく表示(31〜39)等を印刷し、且つ、扁平チューブ体(2)の長さ方向を設定長さに裁断して単一の袋体を成形するように構成したことを特徴とする米袋。
【請求項2】
扁平チューブ体(2)の裏面部(2″)に下地印刷層(3)とJAS法に基づく表示及びPL法に基づく表示(31〜39)等を印刷し、且つその印刷層にマットコート層(4)を形成する請求項1記載の穀物袋。
【請求項3】
ポリエチレンフィルムで成形した長尺のチューブ体(1)を扁平に形成して扁平チューブ体(2)とし、当該扁平体に表側面部分(2n)を含む表面部(2′)に下地となる下地印刷層(3)を形成し、当該下地印刷層に商品の名称、産地等の表示をし、且つその下地印刷層(3)を覆って表面部(2′)と表側面部分(2n)を覆うマットコート層(4)を形成し、前記偏平体の裏面部(2″)にJA法に基づく表示及びPL法等に基づく表示等を印刷した後、扁平チューブ体(2)の長さ方向を設定長さに裁断して単一の袋体(A)を成形するように構成したことを特徴とする穀物袋の製造方法。
【請求項4】
偏平チューブ体(2)の裏面部(2″)に下地印刷層(3)を形成し、JAS法に基づく表示及びPL法に基づく表示(31〜39)等をした後、当該下地印刷層を覆って裏面部(2″)と裏側面部分(2n″)にマットコート層(4)を形成した請求項3記載の穀物袋の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−140343(P2011−140343A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3420(P2010−3420)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(594010696)株式会社拓殖商事 (4)
【Fターム(参考)】