説明

穀粒の冷却装置

【課題】短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行う熱交換機をチェックビンの内部に組み込むことを可能にし、これにより、チェックビンに一時的に貯留する小麦の量が減少することを可能な限り防止した穀粒の冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却空気を導入する空気供給装置と、この空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気の間で熱交換する熱交換機本体と、温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、熱交換機本体は、その内部に、供給空気を穀粒の間に導入して分散させる複数の空気供給樋と、温度の上昇した空気を集めて排出する複数の空気排出樋とを備え、複数の空気供給樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、空気供給樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する空気供給樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、上部と下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたことにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、この導入された空気を高温の穀粒の間を通過させて、穀粒と空気との間で熱交換を行わせる熱交換機本体と、高温の穀粒と熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を集めて排出する空気排出装置とを有し、高温の穀粒と冷却された空気との間で熱交換を行わせることによって穀粒を冷却するようにした穀粒の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製粉装置(ミル)によって小麦等の穀粒を製粉する際に、原料となる穀粒の温度が高いと粉砕能力が落ちて、製品となる小麦粉等の穀粉の歩留りが悪くなるということは、以前から知られている。この現象は、夏などに暑い日が続くようになると顕著になるものであって、このようなときには、小麦を貯留する大型のサイロから搬送コンベアで搬送され、製粉するミルの直前で一時的に貯留するチェックビン(バッファのための小型のサイロ)に到達した小麦の温度は、40°Cを超えるような高温になっており、この小麦を製粉すると、小麦粉の歩留りが明らかに悪くなる現象が生じていた。しかし、従来は、これは止むを得ないものとして格別の対策をとることもなく放置されていた。
【0003】
実験の結果、この現象は、小麦を10°C程度冷却して、30°C程度の温度にすることによって大幅に改善されることが明らかになったが、小麦を製粉する際には10〜20t/hr程度の能力を有する大型の製粉装置を使用するのが通例であり、小麦を貯留しているサイロも屋外に設置された非常に大型のものであって、この大型のサイロに貯留されている小麦全体をまとめて冷却するのでは非常に大型の冷却装置を必要とし、また、冷却された空気を小麦の間を通すことによってサイロの小麦全体を冷却するためには、空気冷却装置や送風装置が大型化するとともに、その後に、小麦をミルに搬送する搬送コンベアで再び温度が上昇するので、エネルギー効率が非常に悪いものとならざるを得ない。
【0004】
これに対しては、ミルの直前で小麦を一時的に貯留するチェックビンにおいて小麦を冷却することも考えられるが、通常のチェックビンの容量は、ミルへの供給量に換算して数分〜十数分間分程度の小麦を貯留する容量しかなく、製粉装置を収納している建物との関係もあって、チェックビンを大きくして容量を増加することも困難なことが多い。このため、チェックビンに小麦を冷却する熱交換装置を配置するためには、短時間で効率よく冷却することが必要であり、冷却空気の風量を大きくして、エネルギー利用効率の高い冷却をすることが必要不可欠となる。
【0005】
しかしながら、従来の穀粒の冷却装置は、単に冷却空気を送り込むだけのものが多く、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却をするための方法はほとんど検討されていなかった。そのため、従来の穀粒の冷却装置では、単に、空気供給装置で適当な量の冷却空気を送り込むだけのものであり、空気供給装置から冷却空気を送り込み、空気排出装置で温度の上昇した空気を排出するように構成された穀粒の冷却装置でも、空気供給装置から導入される空気の温度や空気量,空気排出装置で排出される空気の温度や空気量はきちんと管理されてはおらず、熱交換機の内部における冷却空気の流れがどのようにエネルギー効率に関係するかについても充分には考慮されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行う熱交換機を、バッファのための小型のサイロであるチェックビンの内部に組み込むことを可能にするとともに、この熱交換機をチェックビンの内部に組み込むことによってチェックビンに一時的に貯留する小麦の量が減少することを可能な限り防止した穀粒の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る穀粒の冷却装置は、所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、この空気供給装置により導入された空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気との間で熱交換を行わせる熱交換機本体と、穀粒と熱交換を行うことにより温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、穀粒と空気との間で熱交換を行わせることによって穀粒を冷却する穀粒の冷却装置であって、前記熱交換機本体は、その内部に、前記空気供給装置で供給された空気を穀粒の間に導入して分散させる複数の空気供給樋と、穀粒との間で熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を集めて前記空気排出装置で排出する複数の空気排出樋とを備え、前記複数の空気供給樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、前記空気供給樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気供給樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部が略平行に形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記複数の空気排出樋は、それぞれ平行に並列して配置されているのが好ましい。
また、前記空気排出樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気排出樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたのが好ましい。
また、前記空気排出樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気排出樋の断面形状と略同じ形状を持つ第1の開口部を介して、前記空気排出装置に連結されているのが好ましい。
また、前記第1の開口部の下端部は、前記空気排出樋の前記開放された下部より上方に位置するのが好ましい。
【0009】
また、前記空気供給樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気供給樋の断面形状と略同じ形状を持つ第2の開口部を介して、前記空気供給装置に連結されているのが好ましい。
また、前記複数の空気供給樋が下段側に、前記複数の空気排出樋が上段側に配置されているのが好ましい。
また、上段側の前記複数の空気排出樋および下段側の前記複数の前記空気供給樋の組が複数組配置されているのが好ましい。
また、前記第1の開口部と前記第2の開口部とは、それぞれ前記前記熱交換機本体の対向する側壁に設けられるのが好ましい。
また、前記複数の空気供給樋と前記複数の空気排出樋とが、相互に千鳥状に対を成して配置されているのが好ましい。
【0010】
また、前記空気供給装置と前記空気排出装置とが、中間に空気冷却装置を有する閉回路で連結されており、前記空気供給装置で供給される空気量Qi と前記空気排出装置で排出される空気量Qo とをほぼ一致させるように構成したのが好ましい。なお、ここでいう空気量とは、質量流量(例えば、Kg/min単位)であることが好ましい。
また、前記空気供給装置と前記空気排出装置とは、それぞれ、給気ポンプと排気ポンプとを有し、これら給気ポンプと排気ポンプとの少なくとも一方が風量の調節可能なポンプであるのが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る穀粒の冷却装置は、所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、この空気供給装置により導入された空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気との間で熱交換を行わせる熱交換機本体と、穀粒と熱交換を行うことにより温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、穀粒と空気との間で熱交換を行わせることによって穀粒を冷却する穀粒の冷却装置であって、前記熱交換機本体は、その内部に、前記空気供給装置で供給された空気を穀粒の間に導入して分散させる複数の空気供給樋と、穀粒との間で熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を集めて前記空気排出装置で排出する複数の空気排出樋とを備え、前記空気排出樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気排出樋の断面形状と略同じ形状を持つ第1の開口部を介して、前記空気排出装置に連結されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記複数の空気排出樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、前記空気排出樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気排出樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたのが好ましい。
また、前記第1の開口部の下端部は、前記空気排出樋の前記開放された下部より上方に位置するのが好ましい。
また、前記空気供給樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気供給樋の断面形状と略同じ形状を持つ第2の開口部を介して、前記空気供給装置に連結されているのが好ましい。
また、前記複数の空気供給樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、前記空気供給樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気供給樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたのが好ましい。
また、前記第1の開口部と前記第2の開口部とは、それぞれ、前記前記熱交換機本体の対向する側壁に設けられるのが好ましい。
【0013】
上記の各条件を満たすように構成された本発明に係る穀粒の冷却装置は、穀粒を安定して搬送しつつ、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行うことが可能であり、また、このような穀粒の冷却装置を、バッファのための小型のサイロであるチェックビンの内部に組み込むことを可能とするとともに、この装置をチェックビンの内部に組み込む際における、チェックビンの容量低下を抑えたものとすることが可能なものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る穀粒の冷却装置は、所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、この導入された空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気の間で熱交換を行う熱交換機本体と、穀粒と熱交換を行って温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、穀粒と空気の間で熱交換を行うことによって穀粒を冷却する穀粒の冷却装置において、空気供給装置と空気排出装置とを連動して、空気供給装置で供給される空気量Qi と空気排出装置で排出される空気量Qo とをほぼ一致させるように構成したことによって、熱交換機と外部との空気の流通をなくし、更に、空気供給樋と空気排出樋のセットの間の空気の流れも防止したので、温度の高い小麦と温度の低い空気とが対向する方向に移動しながら熱交換する対向流となり、短時間で効率よく且つエネルギー効率の高い冷却を行う熱交換機を得ることができたものである。
【0015】
ここで、空気供給樋と空気排出樋のセットの数は、できるだけ少ない数、望ましくは、1セットとすることが求められ、冷却効率の面からも、他の空気供給樋と空気排出樋のセットからショートカットして回り込む空気によって供給する空気量に限度が生じる点からも、空気供給樋と空気排出樋のセットの数はできるだけ少ない数とすることが望ましい。そして、このように構成することによって、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行うことができ、空気供給樋と空気排出樋のセットの数はできるだけ少ない数とすることによって、空気供給樋と空気排出樋とを設けることによるチェックビンの容量の減少を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の穀粒の冷却装置について、添付の図面に示される好適実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係る穀粒の冷却装置を示す正面図、図2は、同右側面図、図3は、同左側面図、また、図4は、空気供給樋と空気排出樋との配列を示す側断面図である。ここで、図1〜図3に示すように、本発明に係る穀粒の冷却装置は、穀粒を貯留するサイロ、特にチェックビンに組み合わせて好適に採用可能なものである。
【0018】
本実施例の穀粒の冷却装置は、所定の温度に冷却された空気を導入し、穀粒(本実施例の穀粒の冷却装置は、小麦の製粉装置に好適に組み合わせて使用可能であるので、以下、小麦を例に挙げる)とこの冷却された空気との間で熱交換を行わせることによって小麦を冷却するものであって、所定の温度に冷却された空気を小麦の間を分散して通過させ、小麦と空気の間で熱交換する熱交換機本体10として、小麦を貯留するサイロ、特に、小麦を製粉する直前に一時的に貯留するチェックビン12を使用するものである。
【0019】
そして、この熱交換機本体10を構成するチェックビン12の上部には、図示されていない大型のサイロから小麦を供給する搬入コンベア14が設けられており、また、上記チェックビン12の下部には、図示されていないミルに小麦を供給するロート状のダクト16が設けられている。
【0020】
ここで、前述のように、製粉装置(ミル)を収納している建物との関係もあって、チェックビン12の容量を大きくすることができないことが多いので、搬入コンベア14は、可能な限りチェックビン12の容量に制限を与えないように背の低い搬送コンベアとすることが望ましい。また、ダクト16も、チェックビン12の容量を可能な限り大きくするために、全高さの低いものとすることが望ましく、本実施例では、チェックビン12の底面を4分割し、そのそれぞれにダクト16を設けてミルに接続する搬出コンベア18に接続して、この搬出コンベア18内で、4ヶ所のダクト16から流出した小麦を合流させることによって全高さの低いダクト16を構成している。
【0021】
チェックビン12の両側面には、図示されていない空気冷却装置によって所定の温度に冷却された空気をチェックビン12に導入するための空気供給装置となる給気管20と、小麦と熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を排出するための空気排出装置となる排気管22とが配置されている。本実施例の給気管20は、図2および図3からも明らかなように、下部が2股に分岐して、給気管20とチェックビン12とを接続する上下2段に構成された接続部24a,24bに連結されている。
【0022】
なお、この接続部24a,24bは、チェックビン12の前後方向の幅全体に広がっており、所定の温度に冷却された空気をほぼ均一な圧力および流量で、チェックビン12の内部に設けられた後述する空気供給樋28に導入して、小麦の間に分散させるように構成されている。
また、排気管22の下部も2股に分岐して、排気管22とチェックビン12とを接続する上下2段に構成された接続部26a,26bに連結されており、同様にチェックビン12の前後方向の幅全体に広がって、小麦と熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を後述する空気排出樋30で集めて回収し、チェックビン12の幅方向の全体からスムーズに排出できるようになっている。
【0023】
この2股に分岐した給気管20及び排気管22には、風量調整ゲート32a,32bおよび34a,34bが設けられており、接続部24a,24bに導入する冷却空気の風量と、接続部26a,26bから排出される小麦と熱交換を行うことによって温度の上昇した空気の風量を調節可能としており、上側の空気供給樋28aと下側の空気供給樋28bおよび上側の空気排出樋30aと下側の空気排出樋30bとの風量のバランスを調整することが可能になっている。
【0024】
本実施例の穀粒の冷却装置においては、給気管20と排気管22の接続部24a,24bおよび26a,26bが、それぞれ所定のピッチで上下2段に形成されており、給気管20の上側の接続部24aが排気管22の2個の接続部26a,26bの中央に、排気管22の下側の接続部26bが給気管20の2個の接続部24a,24bの中央に配置されるように、給気管20の接続部24a,24bが、排気管22の接続部26a,26bより半ピッチずつ下側になって千鳥状に配置されている。
【0025】
図4は、給気管20と排気管22の接続部24a,24bおよび26a,26bにそれぞれ連結された空気供給樋28と空気排出樋30との配列を示す側断面図である。図に示すように、熱交換機本体10を構成するチェックビン12の内側には、その断面形状が、中央部が上に凸となる形状、また、下部が開放された形状の空気供給樋28と空気排出樋30とが、チェックビン12の全幅にわたって、相互に平行に多数並列して千鳥状に配置されている。
【0026】
上側の空気供給樋28aは、チェックビン12の右側の側壁に設けられた開口部36を介して給気管20の上側の接続部24aに連通しており、上側の空気排出樋30aはチェックビン12の左側の側壁に設けられた開口部38を介して排気管22の上側の接続部26aに連通している。同様に、下側の空気供給樋28bは給気管20の下側の接続部26bに、下側の空気排出樋30bは排気管22の下側の接続部26bに開口部(図示されていない)を介して連通している。
【0027】
また、チェックビン12の内部は、一時的に貯留されている小麦が、充満して流下しているので、空気供給樋28から導入された冷却空気は、空気供給樋28の下端から溢流して、図4中に矢印で示すように、小麦の間を通過しながら熱交換を行って小麦を冷却した後、空気排出樋30で集められて排出される。
【0028】
上述の、空気供給樋28a,28bは、給気管20から供給された空気を小麦の間に導入して分散させるためのものであり、また、空気排出樋30a,30bは、小麦との間で熱交換を行って温度の上昇した空気を集めて排気管22から排出するものであって、上下2段に形成された1セットの空気供給樋28と空気排出樋30とでは、空気を導入する空気供給樋28が下側に、空気を集めて排出する空気排出樋30が上側になるように相互に平行に多数並列して千鳥状に配置されている。なお、空気供給樋28と空気排出樋30とのセットは、この図示のように、上下の2セットに限定されるものではなく、1セットないし上下に重なって配置された数セットの任意のセット数にすることができる。
【0029】
本発明者の実験によれば、ここで、上述の空気供給樋28と空気排出樋30との配置については、前述の通り、空気供給樋28相互間、および、空気排出樋30相互間の流路をほぼ平行とするとともに、その縦横比(縦/横)を2以上とすることが好ましい。なお、2段構成とされている各段については、空気供給樋28(28aおよび28b)相互間の流路は、空気排出樋30(30aおよび30b)相互間の流路より広くなっていることが望ましい。
【0030】
さらに、この2段の空気供給樋28と空気排出樋30との形状も、図から明らかなように、全く同一の形状とする必要はないが、後述するように、空気供給樋28から導入する空気量と空気排出樋30から排出する空気量とをほぼ一致させるために、空気供給樋28の入口断面積と空気排出樋30の出口断面積とをほぼ同じにすることが望ましい。
【0031】
また、前述のように、穀粒を安定して搬送しつつ、短時間で効率よく、かつ、エネルギー効率の高い冷却を行うためには、冷却装置内における処理風速を上げることが好ましいが、ここでの問題は、冷却対象とする穀粒がこの風速で、不用意に装置内から持ち出されることである。この持ち出しは、しっかり防止しなければならない。
【0032】
この点についての本発明者の実験によれば、処理風速を上げる際に、空気排出樋30の形状について、次のような配慮をすれば、上述のような問題が防止できることが確認された。すなわち、空気排出樋30における、空気吸入口(樋下面)の面積S1と空気排出口(側面)の面積S2との間に、
S2≧0.072S1
なる関係を持たせることである。
【0033】
この関係式は、空気排出樋30の空気吸入口(樋下面)における穀粒の吸入、および、空気排出口(側面)からの穀粒の噴出現象が発生する限界速度の値から得られたものであり、この関係が維持されていれば、処理風速を所望の範囲内で上げた場合にも、前述のような穀粒の不用意な持ち出しは発生しない。
【0034】
本実施形態に係る冷却装置では、給気管20と排気管22とは、図1に示すように、中間にモーター40で駆動される送風ポンプ42と空気冷却装置44を有する閉回路で連結されており、空気排出装置となる排気管22から排出された空気がそのまま空気冷却装置44で冷却され、再び冷却空気となって空気供給装置となる給気管20から供給される。従って、この実施例では、小麦と熱交換を行って温度の上昇した空気と所定の温度に冷却された空気の量(質量流量、以下同じ)は常に一定であり、空気供給装置である給気管20から供給される空気量Qi と空気排出装置である排気管22から排出される空気量Qo とは、常に、
Qi =Qo
となっている。
【0035】
このように構成することにより、空気供給装置である給気管20から供給される空気量Qi と空気排出装置である排気管22から排出される空気量Qo とが、常に一定になるので、風量調整ゲート32a,32bによって空気供給樋28a,28bに供給される冷却空気の風量を均等に分配し、また、風量調整ゲート34a,34bによって空気排出樋30a,30bから排出される風量が均等になるように調整すれば、空気供給樋28a,28bから導入されて小麦の間を分散して通過し、小麦との間で熱交換を行って空気排出樋30a,30bに集められる空気の流れは、給気管20から供給される空気量Qi と排気管22から排出される空気量Qo とが、
Qi =Qo
となって、このときの空気の流れは、図4に矢印で示すように、空気供給樋28と空気排出樋30とのセットの内部で完結し、他のセットとの間での空気の流れはほとんど生じなくなる。
【0036】
このように他のセットとの空気の流れがほとんど生じなくなると、熱交換が行われる際の小麦と空気の流れは、図4に示すように、チェックビン12内を流下する小麦に対してほぼ完全な対向流となって、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行うことができる。しかし、小麦との間で熱交換が行われることによって温度の上昇した空気を冷却装置で冷却することになるので、冷却のためのエネルギー効率としては損失が生じるが、流量を正確に測定することすら困難な空気の流れにおいて、給気管20と排気管22との空気の流量が完全に一致するので、流量の制御が容易である長所を有している。
【0037】
あるいは、給気側の空気供給装置に給気ポンプ(図示しない)を設け、この給気ポンプで供給された空気を空気冷却装置44で冷却して、給気管20,接続部24a,24bを経由して空気供給樋28a,28bに供給し、小麦と熱交換を行って温度が上昇して空気排出樋30a,30bによって排気管22に集められた空気は、排気側の空気排出装置に排気ポンプ(図示されていない)を設けて、この排気ポンプで排出するように構成することもできる。この場合には、給気ポンプまたは排気ポンプの少なくとも一方を、ルーツブロア等の風量の調節可能なポンプとして、給気管20から供給される空気量Qi と排気管22で排出される空気量Qo とをほぼ一致させるとともに、ごくわずかに
Qi >Qo
となるように風量を調整する。
【0038】
このように構成すると、空気供給装置である給気管20から供給される空気量Qi と空気排出装置である排気管22から排出される空気量Qo とが、ほとんど一致しており、わずかに空気供給装置で供給される空気量Qi が空気排出装置で排出される空気量Qo より多くなるので、供給された空気のごく一部が熱交換機本体10において外部に洩れ出すのみで、空気供給樋28a,28bから導入されて小麦の間を分散して通過し、小麦との間で熱交換を行って温度が上昇して空気排出樋30a、30bで集められる空気の流れは、図4に矢印で示すように、空気供給樋28と空気排出樋30とのセットの内部でほぼ完結し、わずかな空気が外部に流出するのみで、他のセットに流れる空気はほとんど生じなくなる。
【0039】
この場合には、ごくわずかな空気であっても空気が外部に流出するので、その影響で熱交換が行われる際の小麦と空気との流れは完全な対向流とならないが、熱交換を行って温度の上昇した空気よりも温度の低い外気を冷却して供給するので、エネルギー効率は、上昇することが期待される。しかし、空気の流量を正確に測定することが困難であるとともに、同じ質量流量であっても、冷却された空気と小麦との間で熱交換を行って温度の上昇した空気との体積は異なるので、風量の調節可能なポンプを使用したとしても流量の調整が困難である短所を有しており、給気管20と排気管22との空気量のバランスがくずれると、熱交換が行われる際の小麦と空気の流れが対向流でなくなり、エネルギー効率が大幅に低下する可能性がある。
【0040】
ただし、上述した要件は、必ずしも穀粒の移動方向と冷却風の方向とが対向流を構成しない場合においても有効なものであり、これらの構成を平行流型の穀粒冷却装置に適用した場合にも、穀粒冷却装置を効率的に運転するために極めて有効なものである。
【0041】
本実施形態に係る穀粒の冷却装置は、このように構成されているので、空気供給装置である給気管20と空気排出装置である排気管22とを、閉回路で連結し、あるいは給気ポンプまたは排気ポンプの少なくとも一方を調節可能なポンプとなどの方法によって連動することによって、給気管20で供給される空気量Qi と排気管22で排出される空気量Qo とをほぼ一致させるように構成することができる。
【0042】
以上のように構成されている本実施例の穀粒の冷却装置は、給気管20で供給する空気量Qi と排気管22で排出する空気量Qo とをほぼ一致させることによって、熱交換機本体10となるチェックビン12の内部に外気が流入することはなく、また、チェックビン12の外部に空気が流出することもほとんどないので、搬入コンベア14で搬入された小麦がチェックビン12内を流下するとともに、空気供給樋28a,28bから導入された冷却空気のほとんどは、図4に矢印で示すように、小麦の間を分散して通過し、空気排出樋30a,30bに向かって上昇することによって小麦との間で熱交換が行われる。このため、温度の高い小麦と温度の低い空気とが対向する方向に移動しながら熱交換する対向流となるので、短時間で効率よく、かつエネルギー効率の高い冷却を行うことができる。
【0043】
この対向流は、空気供給樋と空気排出樋とのセットの数が1セットのときに最も正確に発現してほぼ完全な対向流となり、セットの数が増加するにしたがって他のセットに流れる空気の量も増加する。また、熱交換機としての冷却効率も1セットの場合に最も効率が良い。何故ならば、例えば2セットの場合に、搬入された小麦の温度をt0 °Cとし、上の空気供給樋と空気排出樋のセットでt1 °Cに、下の空気供給樋と空気排出樋のセットで目標とするt2 °Cに冷却するときには、上のセットに供給される空気は熱交換を行うことによってt0 °Cまで温度が上昇するが、下のセットに供給される空気は、t1 °Cまでしか温度が上昇せず、t0 −t1 に相当する冷却能力を有するままで排気管から排出されることになるからである。
【0044】
このため、空気供給樋と空気排出樋とのセットの数は、可能な限り少ないことが望ましい。しかし、少ないセットの数で所要の温度まで冷却するためには、供給する冷却空気の量を増加しなければならないが、冷却する空気量を増加するために空気流の流速を上げると、麦の流動化して空気排出樋から排気管に吸い出される現象が生じる。このため、冷却する空気の量(空気流の流速)には限度がある。そして、この現象は、他の空気供給樋と空気排出樋のセットからショートカットして回り込む空気があると、その部分の空気の流速が上昇するのでより生じ易くなる。したがって、実際の設計においては、このようなことを考慮して空気供給樋と空気排出樋のセットの数や供給する冷却空気(および排出する温度の上昇した空気)の量を決定しなければならない。
【0045】
従来の穀粒の冷却装置では、前述のように、給気管で供給する空気量と排気管で排出する空気量とをほぼ一致させて、空気供給樋と空気排出樋とのセットの内部で完結させて冷却空気の流れを一定にすることや、穀粒と冷却空気との流れを対向させ、対向流によって熱交換して冷却することは意図されておらず、単に、冷却空気を導入することによって穀粒を冷却することのみを目的とするものであって、対向流と平行流が混在しているものとなっていた。周知のように、熱交換機の効率は対向流が最も高く、平行流が混在するにしたがって低下するので、高い割合で平行流が混在している熱交換機は、高い熱効率を期待することができないものであった。
【0046】
本発明に係る穀粒の冷却装置は、もちろん、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、米や大麦等の穀粒にも同様に適用できるものであり、チェックビンばかりでなく、大型のサイロにも同様に適用できるなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲において各種の改良や変更を行っても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る穀粒の冷却装置の構成例を示す正面図である。
【図2】図1に示した穀粒の冷却装置の右側面図である。
【図3】図1に示した穀粒の冷却装置の左側面図である。
【図4】空気供給樋と空気排出樋との配列を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 熱交換機本体
12 チェックビン
14 搬入コンベア
16 ダクト
18 搬出コンベア
20 給気管
22 排気管
24a,24b,26a,26b 接続部
28a,28b 空気供給樋
30a,30b 空気排出樋
32a,32b,34a,34b 風量調整ゲート
36,38 開口部
40 モーター
42 送風ポンプ
44 空気冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、
この空気供給装置により導入された空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気との間で熱交換を行わせる熱交換機本体と、
穀粒と熱交換を行うことにより温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、穀粒と空気との間で熱交換を行わせることによって穀粒を冷却する穀粒の冷却装置であって、
前記熱交換機本体は、その内部に、
前記空気供給装置で供給された空気を穀粒の間に導入して分散させる複数の空気供給樋と、
穀粒との間で熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を集めて前記空気排出装置で排出する複数の空気排出樋とを備え、
前記複数の空気供給樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、
前記空気供給樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気供給樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたことを特徴とする穀粒の冷却装置。
【請求項2】
前記複数の空気排出樋は、それぞれ平行に並列して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項3】
前記空気排出樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気排出樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項4】
前記空気排出樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気排出樋の断面形状と略同じ形状を持つ第1の開口部を介して、前記空気排出装置に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項5】
前記第1の開口部の下端部は、前記空気排出樋の前記開放された下部より上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項6】
前記空気供給樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気供給樋の断面形状と略同じ形状を持つ第2の開口部を介して、前記空気供給装置に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項7】
前記複数の空気供給樋が下段側に、前記複数の空気排出樋が上段側に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項8】
上段側の前記複数の空気排出樋および下段側の前記複数の前記空気供給樋の組が複数組配置されていることを特徴とする請求項7に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項9】
前記空気供給装置と前記空気排出装置とが、中間に空気冷却装置を有する閉回路で連結されており、前記空気供給装置で供給される空気量Qi と前記空気排出装置で排出される空気量Qo とをほぼ一致させるように構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項10】
前記空気供給装置と前記空気排出装置とは、それぞれ、給気ポンプと排気ポンプとを有し、これら給気ポンプと排気ポンプとの少なくとも一方が風量の調節可能なポンプであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項11】
所定の温度に冷却された空気を導入する空気供給装置と、
この空気供給装置により導入された空気を穀粒の間を通過させ、穀粒と空気との間で熱交換を行わせる熱交換機本体と、
穀粒と熱交換を行うことにより温度の上昇した空気を排出する空気排出装置とを有し、穀粒と空気との間で熱交換を行わせることによって穀粒を冷却する穀粒の冷却装置であって、
前記熱交換機本体は、その内部に、
前記空気供給装置で供給された空気を穀粒の間に導入して分散させる複数の空気供給樋と、
穀粒との間で熱交換を行うことによって温度の上昇した空気を集めて前記空気排出装置で排出する複数の空気排出樋とを備え、
前記空気排出樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気排出樋の断面形状と略同じ形状を持つ第1の開口部を介して、前記空気排出装置に連結されていることを特徴とする穀粒の冷却装置。
【請求項12】
前記複数の空気排出樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、
前記空気排出樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気排出樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたことを特徴とする請求項11に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項13】
前記第1の開口部の下端部は、前記空気排出樋の前記開放された下部より上方に位置することを特徴とする請求項12に記載の穀粒の冷却装置。
【請求項14】
前記空気供給樋は、その延在方向の端部で、前記熱交換機本体の側壁に設けられ、前記空気供給樋の断面形状と略同じ形状を持つ第2の開口部を介して、前記空気供給装置に連結されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の穀粒の冷却装置。
【請求項15】
前記複数の空気供給樋は、それぞれほぼ平行に並列して配置され、
前記空気供給樋は、その断面形状が中央部が上に凸となる形状に形成されるとともに下部が開放されており、隣接する前記空気供給樋間にほぼ平行な流路が形成されるように、前記上に凸となる形状に形成された上部と前記開放された下部との間の対向する2つの側面部がほぼ平行に形成されたことを特徴とする請求項14に記載の穀粒の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−167075(P2007−167075A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35063(P2007−35063)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【分割の表示】特願2001−190706(P2001−190706)の分割
【原出願日】平成13年6月25日(2001.6.25)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】