説明

積層剥離型容器

【課題】容器本体が外層部と内層部からなり、両者の間に空気を導入して剥離可能とした積層剥離型容器において、空気導入のための孔を所望の位置に正確に形成できる容器を提供する。
【解決手段】積層剥離型容器10は、キャップを装着するネック部14の空気導入孔18を設ける部分を平坦面19、20とした。それによって空気導入孔18を穿孔する工具の位置決めを正確に行うことができ、空気導入孔18を所望の位置に設けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の液体等を収納し、キャップを本体にねじ止めすることにより内部を密閉する容器に関するものであり、特に、本容器は、本体が外層部と内層部からなり、両者の間に空気を導入して剥離可能とした、積層剥離構造のものである。
【背景技術】
【0002】
積層剥離型容器は、合成樹脂製の外層部の内側に、合成樹脂製の内層部が剥離可能に積層されており、通常は容器の略円筒状のネック部にポンプを装着した状態で容器内部を密閉して用いられる。このポンプにより容器から内容物(例えばシャンプー等)を注出させると、内容物の減少に伴って内層部が外層部から剥離して収縮する。この内層部の収縮をスムーズに行わせるために、外層部には空気導入孔を設けている。
【0003】
図4および図5は、かかる積層剥離型容器の従来の例を示すものであり、図4はその外観を、図5は縦断面をそれぞれ示す。
【0004】
図示の容器100は、胴部101と、底部102と、肩部103と、肩部103の中央から上方に起立して延びる円筒状のネック部104とを具え、ネック部104の外面には、図示しないポンプを装着するためのねじ山105が設けられている。容器100は、ネック部104から胴部101を経て底部102に至るまで、その全体が、外層部106と内層部107とを積層して構成されている。外層部106と内層部107とは、その一部(接着層、図示せず)で互いに接合されているが、この接着層以外の部位では、互いに当接しているだけで剥離可能となっている。
【0005】
ネック部104の外面には、ねじ山105の他に、空気導入孔108が設けられている。この空気導入孔108は外層部106のみを貫通し、内層部107は貫通していない。この空気導入孔108を通して外層部106と内層部107との間に空気を導入することにより、両者が剥離するようになる。図5は、容器100において外層部106と内層部107とが一部剥離した状態を示すものである。内層部107内部の内容物が減少するに伴い、図示のように内層部107が外層部106から剥離して収縮し、両者の間に空間109が生じる。この空間109内に空気導入孔108から空気が流入し、内層部107の収縮が確実かつスムーズになる。
【0006】
図6は、上述した容器100に空気導入孔108を設けるための穿孔作業を示すものである。図では、穿孔装置110を用いて空気導入孔108を形成する。穿孔装置110は、支持部111と、この支持部111から水平に延在する支持軸112、垂直下方に延在する受け部材113、受け部材113先端部近傍に設けた受台114、支持軸112上を移動可能な摺動部材115、この摺動部材115の移動を規制するストッパ116、摺動部材115下部に設けたカッター部材117、カッター部材117の先端に設けたポンチ118を具える。空気導入孔108は、摺動部材115を矢印Xで示す方向に移動させ、ポンチ118で容器100の外層部106を穿孔することにより形成される。ここでポンチ118には透孔119が設けられ、穿孔により生じた切り屑は、この透孔から排出される。またカッター部材117に設けたボルト120およびロックナット121は、穿孔時の摺動部材115の送りを規制する。すなわち、図示のようにボルト120の先端が受け部材113に当接して、摺動部材115(つまりポンチ118)の水平方向の移動が止められる。それによって内層部107にまで穿孔されるのを防いでいる。
【0007】
しかしながら、上述した従来の積層剥離容器においては、ネック部の断面が通常、略円筒状であり、そのため受け部材113およびポンチ118がそれぞれ容器内側および外側の曲面と接することとなる。そのため、穿孔装置自体の正確な位置決めが困難となったり、穿孔位置(空気導入孔108の位置)にずれが生じたりするおそれがあった。
【0008】
この他、積層剥離容器の例として特許文献1に開示されているものがある。この容器はネック部に設けた空気導入孔近傍でねじ山を切り欠き、外層部と内層部との剥離をスムーズに行えるものとしているが、前述した例と同様に円筒形のネック部に空気導入孔を形成することとしているため、やはり空気導入孔を穿孔する際の穿孔装置の位置決めが困難であるという問題を有している。
【特許文献1】特開2001-72131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、製造時において空気導入孔を正確な位置に設けることのできる、積層剥離型容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、略円筒状に突出したネック部を有する容器本体と、前記ネック部を閉鎖するキャップとを具え、前記ネック部外側面に設けたねじ山と、前記キャップ内側面に設けたねじ山とを係合させて前記本体内部を密閉する容器であって、前記容器本体が外層部と内層部とを具え、前記外層部に設けた空気導入孔から空気を導入することにより、前記外層部と前記内層部との間に空気を導入して両者を剥離可能とし、前記空気導入孔を前記ネック部に設けると共に、前記ねじ山に前記空気導入孔近傍で切り欠き部を設け、かつ、前記ネック部の前記空気導入孔近傍を平坦面としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による積層剥離型容器は、ネック部の空気導入孔を設ける箇所近傍を平坦面としたことにより、穿孔作業時における穿孔装置の位置決めと、容器への空気導入孔の所望の位置への形成を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
図1〜図3は、本発明による積層剥離型容器の一実施形態を示すものである。図示の容器10は、胴部11と、底部12と、肩部13と、肩部13の中央から上方に起立して延びる円筒状のネック部14とを具え、ネック部14の外面には、図示しないポンプを装着するためのねじ山15が設けられている。容器10は、ネック部14から胴部11を経て底部12に至るまで、その全体が、外層部16と内層部17とを積層して構成されている。外層部16と内層部17とは、その一部(接着層、図示せず)で互いに接合されているが、この接着層以外の部位では、互いに当接しているだけで剥離可能となっている。
【0014】
ネック部14の外面には、ねじ山15の他に、空気導入孔18が設けられている。この空気導入孔18は外層部16のみを貫通し、内層部17は貫通していない。この空気導入孔18を通して外層部16と内層部17との間に空気を導入することにより、両者が剥離するようになる。
【0015】
図1〜図3より明らかなように、本容器10のネック部14に設けたねじ山15は、空気導入孔18の真上部分およびこれと対向する部分において切り欠いた形状をなしている。すなわち、この部分においては、外層部16と内層部17とは平滑な面で接する状態となっており、そのため両者の剥離が確実となり、内層部の収縮が確実かつスムーズに行われるようになる。なお、ねじ山15は、前述したように一部に切り欠きを設けられた形状となっているが、その長さは全体としてはわずかなものであり、ネック部14に図示しないキャップを装着、あるいは取り外すのに支障が生じることはない。
【0016】
また、図1(a)および、これに示すA-A 線に沿った断面図である図1(b)より明らかなように、本容器10のネック部14は、空気導入孔18とその近傍およびこれと対向する部分が平坦面19,20をなしている。そのため、容器10の製造時において、この空気導入孔18を形成する際、穿孔装置(例えば図5の穿孔装置110)および、この装置に設けた穿孔のための工具(ポンチ118)の位置決めを正確に行うことができ、それによって空気導入孔18を所望の位置に正確に設けることが可能となる。
【0017】
さらに、図3は、容器10において外層部16と内層部17とが一部剥離した状態を示すものである。内層部17内部の内容物が減少するに伴い、図示のように内層部17が外層部16から剥離して収縮し、両者の間に空間21が生じる。この空間21内に空気導入孔18から空気が流入し、内層部17の収縮が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上説明したように、本発明による積層剥離型容器は、外層部と内層部とを剥離するための空気導入孔の形成を、所望の位置に正確に行うことができるような構造としたことから、製品の歩留まり向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による積層剥離型容器の一実施形態の外観を示す図である。
【図2】図1の容器の上面および断面を示す図である。
【図3】図1の容器において内層部の一部が剥離した状態を示す図である。
【図4】従来の積層剥離型容器の一例を示す斜視図である。
【図5】図4の容器の縦断面図である。
【図6】図4の容器への空気導入孔形成作業を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10,100 積層剥離型容器
11,101 胴部
12,102 底部
13,103 肩部
14,104 ネック部
15,105 ねじ山
16,106 外層部
17,107 内層部
18,108 空気導入孔
19,20 ネック部14中の平坦部
21 外層部と内層部との間の空間
110 穿孔装置
111 支持部
112 支持軸
113 受け部材
114 受台
115 摺動部材
116 ストッパ
117 カッター部材
118 ポンチ
119 透孔
120 ボルト
121 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状に突出したネック部を有する容器本体と、
前記ネック部を閉鎖するキャップとを具え、
前記ネック部外側面に設けたねじ山と、前記キャップ内側面に設けたねじ山とを係合させて前記本体内部を密閉する容器であって、
前記容器本体が外層部と内層部とを具え、
前記外層部に設けた空気導入孔から空気を導入することにより、前記外層部と前記内層部との間に空気を導入して両者を剥離可能とし、
前記空気導入孔を前記ネック部に設けると共に、前記ねじ山に前記空気導入孔近傍で切り欠き部を設け、
かつ、前記ネック部の前記空気導入孔近傍を平坦面としたことを特徴とする積層剥離型容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69582(P2006−69582A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252726(P2004−252726)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】