説明

積層型エバポレータ

【課題】組立性に優れた積層型エバポレータを提供する。
【解決手段】樋状の天板11及び底板12を接合してなるタンク1の天板に形成された接続孔13に、それぞれの断面が扁平なエレメント2の下端部21を挿入し、エレメントの下端部21と接続孔13とを液密に接合した積層型エバポレータであり、底板12の下面に当該タンク1への冷媒入口孔14と当該タンク1からの冷媒出口孔15とを隣接して形成し、膨張弁が内蔵されたブロック膨張弁4を固定するためのフランジ5を天板11に形成し、冷媒入口孔14と冷媒出口孔15にブロック膨張弁4を直接取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膨張弁付きブロック(以下、ブロック膨張弁という)をタンク下面に直接取り付けることにより組立性を改善した積層型エバポレータに関する。
【0002】
【従来の技術】車両用空気調和装置の冷房サイクルの構成部品である積層型エバポレータは、車室内のクーラユニットに設けられており、膨張弁にて低圧の霧状とされた冷媒は、入口管からエバポレータの内部へ導かれ、取り入れ空気との熱交換が行われたのち出口管からコンプレッサへ戻される。
【0003】従来この種のエバポレータにおいて、冷媒の入口管と出口管は離れた位置に設けられ、しかも入口管に取り付けられた膨張弁に出口管内の冷媒の温度及び圧力を感知する感温筒及び外部均圧管を設ける関係上、入口管を出口管に近づけるように取り廻す必要があり、入口管がエバポレータの空気流通方向前面を通る構造にせざるを得なかった。そのため、入口管及び出口管のパイプ長が長くなるだけでなく、入口管に取り付けられた膨張弁がエバポレータの前面を覆うためにユニット内の通気抵抗が増加するという問題があった。
【0004】そこで、熱交換エレメントの端板に冷媒入口と冷媒出口とを近接して設け、この端板にブロック膨張弁を取り付けることにより冷媒入口と冷媒出口とを接続した積層型エバポレータが提案されている(例えば、実開昭60−82,170号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の積層型エバポレータにおいては、ブロック膨張弁を取り付けるにあたり、当該ブロック膨張弁と熱交換エレメントの端板との間に別部品であるフランジやパイプを介在せざるを得ない構造であるため、部品数の増加にともなう加工工数や組立工数が増加するという問題があった。また、部品数が増加すればするほど組立寸法のばらつきも大きくなるという問題もあった。
【0006】本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、組立性に優れた積層型エバポレータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の積層型エバポレータは、樋状の天板及び底板を接合してなるタンクの前記天板に形成された接続孔に、それぞれの断面が扁平なエレメントの下端部を挿入し、前記エレメントの下端部と前記接続孔とを液密に接合した積層型エバポレータにおいて、前記底板の下面に当該タンクへの冷媒入口孔と当該タンクからの冷媒出口孔とを隣接して形成し、膨張弁が内蔵されたブロック膨張弁を固定するためのフランジを前記天板に形成し、前記冷媒入口孔と冷媒出口孔に前記ブロック膨張弁を直接取り付けたことを特徴とする。
【0008】このように構成された本発明の積層型エバポレータは、タンクが樋状の天板と底板とを接合してなる構造であるため、天板へのフランジの形成は、当該天板を成形する際に容易に行うことができる。また、ブロック膨張弁をタンクに直接取り付けているので、部品数を減少させることができるとともに余計な加工工数や組立工数が削減できる。これに加えて、タンクとブロック膨張弁との間に介在する部品がないので、エバポレータ自体の高さを小さくすることができる。
【0009】本発明の積層型エバポレータにおいて、前記天板のフランジにバーリング孔を形成し、タッピングネジを前記バーリング孔に螺合することにより、前記冷媒入口孔と冷媒出口孔とに前記ブロック膨張弁を直接取り付けることができる。タッピングネジとバーリング孔との締結方法を採用することで、ネジ加工を省略することができ加工工数が削減できる。
【0010】また、本発明の積層型エバポレータにおいて、前記天板のフランジにナットが接合された孔を形成し、ボルトを前記孔に挿通して前記ナットに螺合することにより、前記冷媒入口孔と冷媒出口孔とに前記ブロック膨張弁を直接取り付けることもできる。
【0011】さらに、本発明の積層型エバポレータにおいて、前記天板のフランジに第1の係合部を形成し、前記ブロック膨張弁に第2の係合部を形成し、クリップを前記第1の係合部と前記第2の係合部とに係合させることにより、前記冷媒入口孔と冷媒出口孔とに前記ブロック膨張弁を直接取り付けることもできる。クリップによる締結方法を採用することでワンタッチの組立作業を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1(A)は本発明の実施の形態である積層型エバポレータの要部を示す断面図、図1(B)(C)はそれぞれ本発明の他の実施の形態である積層型エバポレータの要部を示す半断面図、図2は本発明の実施の形態である積層型エバポレータを示す側面図、図3は本発明の実施の形態である積層型エバポレータのエレメントを示す正面図、図4は本発明の実施の形態である積層型エバポレータのタンクの下方から見た概略分解斜視図、図5は本発明の実施の形態である積層型エバポレータのブロック膨張弁を示す断面図、図6は本発明の実施の形態である積層型エバポレータの冷媒の流れを示す斜視図である。
【0014】まず、図1及び図3に示すように、本実施の形態である積層型エバポレータ100は、それぞれが2枚の金属板2′,2′を凹面を互いに向き合わせて最中状に組み合わせてなるエレメント2を複数個、互いに積層することで構成されている。各エレメント2の内部にはU字状の冷媒流路22が形成されており、一方の下端部21から流入した冷媒はU字状の冷媒流路22を通って他方の下端部21から流出するようになっている。このようなエレメント2を互いに積層すると共に、図2に示すように各エレメント2間にコルゲートフィン3を挟持することにより、ここを流れる空気と各エレメント2内を流れる冷媒との間で熱交換が行われるようになっている。
【0015】エバポレータ100の下部に設けられた2本のタンク1は、それぞれが樋状の天板11及び底板12を合わせることにより構成されており、このタンク1は、天板11に形成された複数のスリット状接続孔13に各エレメント2の下端部21をそれぞれ挿入して液密にろう付けすることによりエレメント2に接合されている。
【0016】また、図2に示すように一方のタンク1の底板12の下面には、冷房サイクルを構成し、コンプレッサ54で圧縮された冷媒を凝縮させるコンデンサ52及び気体状冷媒と液体状冷媒を分離し液状冷媒を送り出すためのリキッドタンク53(図5参照)からの冷媒が流入するための冷媒入口孔14と、熱交換後の冷媒がコンプレッサ54(図5参照)へ帰還するための冷媒出口孔15とが開設されており、これら冷媒入口孔14と冷媒出口孔15との間には仕切り板6が設けられて冷媒が行き交わないようになっている。
【0017】これにより、リキッドタンク53から冷媒入口孔14へ流入した冷媒は、図6に示すように、冷媒入口孔14が設けられたタンク1の第1の領域31から各エレメント2の下端部21を通ってU字状の冷媒流路22を流れ、他方の下端部21から他方のタンク1の第2の領域32へ流れる。この他方のタンク1には、仕切り板6が設けられていないので、当該タンク1へ流入した冷媒は、当該タンク1の第3の領域33へ流れ、ここに接続された各エレメント2の下端部21から、U字状の冷媒流路22を通って他方の下端部21から冷媒出口孔15が形成されたタンク1の第4の領域34へ流れたのち、冷媒出口孔15からコンプレッサ54へ帰還する。
【0018】特に、本実施の形態の一方のタンクの天板11には、図4にも示したように、ブロック膨張弁4を取り付けるためのフランジ5が形成され、このフランジ5にはバーリング孔5aが加工されている。なお、図4においては、接続孔13などは図示省略してある。
【0019】上記のように、本実施の形態のタンク1は、樋状の天板11と底板12とを接合した構造であるため、底板12の下面に冷媒入口孔14と冷媒出口孔15を開設する場合は、まず平板を絞り加工して樋状に成形し、この成型品に孔明け加工を施して冷媒入口孔14と冷媒出口孔15とを同時に形成すればよい。また、樋状に成形する際に同時に孔明け加工をすることも可能である。一方、天板11にフランジ5を形成する場合は、平板を絞り加工したのちトリミング加工を行う際にフランジ5を同時に形成すればよい。したがって、冷媒入口孔14と冷媒出口孔15、及びフランジ5をきわめて簡単に形成することができる。
【0020】本実施の形態である積層型エバポレータ100では、図1〜図3に示すように、上述した冷媒入口孔14と冷媒出口孔15に直接ブロック膨張弁4を取り付けている。すなわち、フランジ5には、バーリング孔5aが形成されており、ブロック膨張弁4に形成された貫通孔41にタッピングネジ7aを挿入して締め付けることにより、ブロック膨張弁4を直接タンク1に固定することができるようになっている。
【0021】また、ブロック膨張弁4を直接タンク1に取り付ける手段として、上述したバーリング孔5aとタッピングネジ7a以外にも、例えば図1(B)に示すように、天板11のフランジ5に孔5cを形成するとともにこの孔5cの一方にナット5bを溶接し、このナット5bにボルト7bを螺合させる構造を採用することもできる。さらに、図1(C)に示すように、天板11のフランジ5に第1の係合部5dを形成するとともに、この第1の係合部に対応する第2の係合部4aをブロック膨張弁に形成し、これら第1の係合部5d及び第2の係合部4aにクリップ7cを取り付けることによりブロック膨張弁4を直接タンク1に取り付けても良い。
【0022】本実施の形態のブロック膨張弁4は、図5に示すように、一端がリキッドタンク53の出口側に接続されると共に他端がエバポレータ100の入口側に接続される第1の流路87と、一端がエバポレータ100の出口側に接続されると共に他端がコンプレッサ54の入口側に接続される第2の流路88とが形成されている。第1の流路87には、コンデンサ52からの高圧の冷媒を減圧し断熱膨張させるための隘路89が形成されており、球状の弁体90により弁の開度が調節されるようになっている。弁体90は、ロッド92を介してケーシングの外部に配置される感温部93のダイアフラム94と連動するが、ダイアフラム94の上面にはエバポレータ100で空気と熱交換して来た第2の流路88を通過する冷媒の温度によって膨張又は収縮する封入気体が接しており、下面には第2の流路88と連通して冷媒の圧力がダイアフラム94の下面に作用している。したがって、エバポレータの熱負荷が多く第2の流路88内の冷媒温度が高くなると封入気体が膨張し、ダイアフラム94が上面から押圧され、バネ95に抗してこれにより弁体90が開く。逆に、エバポレータの熱負荷が少なく第2の流路88内の温度が低くなると弁体90が閉じる。また、弁体90は、バネ95によって開度を小さくする方向に付勢されており、開度特性は調節ネジ97によって調節されるバネ95の弾性力によって調節されている。このようにして膨張弁の開度を調節し、エバポレータ100に供給される冷媒量を調節して、エバポレータ100の出口における冷媒の状態が一定になるようにしている。なお、図5において符号「96」は弁体90を支持するためのバルブホルダである。
【0023】本実施の形態では、このようなブロック膨張弁4をエバポレータ100のタンク1の下面に直付けする構造を採用しているので、冷媒入口孔14及び冷媒出口孔15とブロック膨張弁4との間に別部品であるフランジやアルミパイプなどの接続用冷媒配管を設ける必要がなく、部品数の削減による組立作業工数が低減できコストダウンに繋がる。これに加え、エバポレータ100の全長がさらに短くなり、小型化を図ることができる。
【0024】なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、タンクが樋状の天板と底板とを接合してなる構造であるため、天板へのフランジの形成は、当該天板を成形する際に容易に行うことができ、また、ブロック膨張弁をタンクに直接取り付けているので、部品数を減少させることができるとともに余計な加工工数や組立工数が削減できる。これに加えて、タンクとブロック膨張弁との間に介在する部品がないので、エバポレータ自体の高さを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の実施の形態である積層型エバポレータの要部を示す断面図、(B)(C)はそれぞれ本発明の他の実施の形態である積層型エバポレータの要部を示す半断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態である積層型エバポレータを示す側面図である。
【図3】 本発明の実施の形態である積層型エバポレータのエレメントを示す正面図である。
【図4】 本発明の実施の形態である積層型エバポレータのタンクの下方から見た概略分解斜視図である。
【図5】 本発明の実施の形態である積層型エバポレータのブロック膨張弁を示す断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態である積層型エバポレータの冷媒の流れを示す斜視図である。
【符号の説明】
1…タンク、
2…エレメント、
4…ブロック膨張弁、
5…フランジ、
5a…バーリング孔、
5b…ナット、
5c…孔、
5d…第1の係合部、
7a…タッピングネジ、
7b…ボルト、
7c…クリップ、
11…天板、
12…底板、
13…接続孔、
14…冷媒入口孔、
15冷媒出口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】樋状の天板(11)及び底板(12)を接合してなるタンク(1) の前記天板(11)に形成された接続孔(13)に、それぞれの断面が扁平なエレメント(2) の下端部(21)を挿入し、前記エレメント(2) の下端部(21)と前記接続孔(13)とを液密に接合した積層型エバポレータにおいて、前記底板(12)の下面に当該タンク(1) への冷媒入口孔(14)と当該タンク(1) からの冷媒出口孔(15)とを隣接して形成し、膨張弁が内蔵されたブロック膨張弁(4) を固定するためのフランジ(5) を前記天板(11)に形成し、前記冷媒入口孔(14)と冷媒出口孔(15)に前記ブロック膨張弁(4) を直接取り付けたことを特徴とする積層型エバポレータ。
【請求項2】前記天板(11)のフランジ(5) にはバーリング孔(5a)が形成され、タッピングネジ(7a)を前記バーリング孔(5a)に螺合することにより、前記冷媒入口孔(14)と冷媒出口孔(15)とに前記ブロック膨張弁(4) が直接取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型エバポレータ。
【請求項3】前記天板(11)のフランジ(5) にはナット(5b)が接合された孔(5c)が形成され、ボルト(7b)を前記孔(5c)に挿通して前記ナット(5b)に螺合することにより、前記冷媒入口孔(14)と冷媒出口孔(15)とに前記ブロック膨張弁(4) が直接取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型エバポレータ。
【請求項4】前記天板(11)のフランジ(5) には第1の係合部(5d)が形成され、前記ブロック膨張弁(4) には第2の係合部(4a)が形成され、クリップ(7c)を前記第1の係合部(5d)と前記第2の係合部(4a)とに係合させることにより、前記冷媒入口孔(14)と冷媒出口孔(15)とに前記ブロック膨張弁(4) が直接取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型エバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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