説明

積層型圧電トランスおよびその製造方法

【課題】 積層型圧電トランスにおいて、製造ロット内での出力特性のばらつきを防止するとともに、製造コストの低下を図る。
【解決手段】 圧電積層体11は、圧電セラミック層12とその上面に設けられる内部電極層を積層することで構成されるが、このうち内部電極層は2種類の形状パターンが交互に繰り返し積層された構成である。このため内部電極層において、二次側内部電極15を1層おきに設置する構成として、同一の形状パターンにのみ二次側電極15が含まれる構成とすれば、各層間での二次側内部電極15の相互の微小な位置ずれを防止することができる。また圧電積層体11内に形成される内部電極層の面積が減少するので、貴金属を含む電極ペーストの使用量を減少させる効果を得ることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇圧用もしくは降圧用の積層型圧電トランスに関するもので、詳しくは主に携帯機器のインバータに用いるのに好適な薄型の積層型圧電トランス、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯薄型テレビやノート型パーソナルコンピュータ等の液晶ディスプレイを備えた携帯機器において、液晶バックライトの点灯用に用いられるインバータは、機械振動を利用して電圧変換を行う圧電トランスの使用が進んでいる。圧電トランスは一般に小型、薄型で電磁ノイズの発生も少なく、発火、発煙の危険性がないなど、携帯機器での使用において有利な特徴を備えている。
【0003】
圧電トランスは、一般に一次側(入力側または励振部)に入力電圧を印加することによってトランス内に機械的振動を発生させ、この振動を二次側(出力側または発電部)において再び電圧に変換して出力する機能を有するデバイスであり、構成素子であるセラミック積層体の内部もしくは外部に一次側電極、二次側電極を有している。
【0004】
現在用いられている圧電トランスの方式ではローゼン型のものが最も多い。この方式の特徴としては、圧電トランスの長さ、幅、厚さについての選択範囲が広く、底面積を大きくすることで薄型に形成することが可能な点が挙げられる。このため、携帯機器への搭載に適していることが、多く用いられる理由である。
【0005】
ローゼン型の圧電トランスを用いた実用例としては、積層型の構成が知られている。積層型とは複数の内部電極層と圧電セラミック層を交互に積層してなる構成であり、積層数に応じて1次側の入力電圧を低く抑えることができるため、昇圧トランスとして用いられる。また1次側と2次側とを逆転させて用いると降圧トランスとして作用する。前記液晶用バックライトの点灯用のインバータには昇圧トランスが必要であるが、電力効率が電磁型のトランスに比べて圧倒的に優れていること等が理由で、積層型の圧電トランスが多く使用されている。特許文献1はこのような積層型圧電トランスの従来例である。
【0006】
図3に特許文献1に記載の従来の積層型圧電トランスの構成を示す。図3(a)は積層型圧電トランスを構成するセラミック積層体の外観図、図3(b)から図3(e)は、それぞれこの積層型圧電トランスを構成する圧電セラミック層とその表面に形成した内部電極層を、それぞれ順番に1層分ずつ取り出して示した斜視図である。この内部電極層の形状パターンには2種類あり、図3(b)と図3(d)、図3(c)と図3(e)の形状パターンはそれぞれ同一であり、それぞれの形状パターンを図3(b)および図3(d)と、図3(c)および図3(e)に示している。
【0007】
図3(a)において、積層型圧電トランスの本体である圧電積層体31の長手方向に平行な側面のうちの片面に、一次側外部電極36および二次側外部電極37が共に形成されており、図3(a)では表示されていない、裏側のもう一つの長手方向に平行な側面には、外部電極は何も形成されていない。一次側外部電極36は2ヶ所に分かれて形成されており、図3(b)から図3(e)における、一次側内部電極33,34に各々接続されている。また二次側外部電極37は同じく二次側内部電極35に接続されている。この構成の場合、一次側内部電極33,34および二次側外部電極37が共に同一面に形成されているために、圧電積層体31の長手方向に平行な側面に外部電極を形成する際は1面のみに印刷を行えばよく、2面以上に印刷する工程が必要な従来の他の方法に比較して、よりコストダウンを図ることができる。
【0008】
図3(b)および図3(d)は、1層分の圧電セラミック層32に一次側内部電極33および二次側内部電極35が形成された、セラミックシート片について示したものであり、このうち一次側内部電極33は、圧電セラミック層32の約半分の面積を被覆している主電極部33aと、取り出し部33bから構成されている。このうち取り出し部33bは主電極部33aに接続され、その端部が圧電積層体31の長手方向に平行な側面に露出している。また二次側内部電極35は圧電積層体31の右端部に形成されており、取り出し部33bと同一の側面にその端部が露出している。
【0009】
同様に、図3(c)および図3(e)は、1層分の圧電セラミック層32に、一次側内部電極34および二次側内部電極35が形成されたセラミックシート片について示したものであるが、図3(b)および図3(d)の場合とは内部電極層の形状パターンが異なっており、主電極部34aに接続される取り出し部34bの位置が変化している。これらの取り出し部の露出位置は圧電積層体31の長手方向に平行な側面に設けられた一次側外部電極36の位置に対応しており、各層の一次側内部電極33,34には一次側外部電極36から導通が確保されている。図3(b)における主電極部33aと図3(c)における主電極部34aはその位置や形状が同一である。図3(b)から図3(e)に示すこれら1層分の圧電セラミック層が交互に積層されて、圧電積層体31を形成しており、取り出し部33b,34bもその長手方向に平行な側面に交互に露出している。前記長手方向に平行な側面の二次側内部電極35の各露出位置には、二次側外部電極37が設けられている。
【0010】
前記従来例における圧電積層体の形成工程について、図4に基づいて説明する。1枚のグリーンシート48には、2種類の形状パターンの一次側内部電極43,44が共に形成されて並設されており、図4ではこのうち並設される各1点ずつの形状パターンのみを図示している。また同時に二次側内部電極45も形成されている。これらは各1層分の圧電セラミック層および内部電極層を形成するものであり、各内部電極の印刷後に図の打ち抜き線49において打ち抜き、互いに切り離すことで個別のセラミックシート片とする。これらのセラミックシート片を内部電極層の形状パターンごとに交互に積層して互いに圧着し、その後、一定時間焼結させる。さらに長手方向に平行な側面のうちの片面にのみ、一次側および二次側の外部電極を形成して焼き付けを行い、圧電積層体を得る。なお1枚のグリーンシートに2種類の内部電極の形状パターンを同時に形成することにより、各形状パターンの形成のために必要なマスクの種別を1種類のみとすることができ、必要となるマスクの種別を減らしてコストダウンを図ることができる。また圧電積層体において最上部となるセラミックシート片については、内部電極の印刷を行わない。
【0011】
また、二次側には内部電極を設けずに、圧電積層体の長手方向に直交する側面に二次側外部電極を直接形成する、前記従来例とは異なる方式がある。しかし特許文献1に記載の従来例では、2種類の形状パターンを有する内部電極を、1種類のマスクによって同時に印刷することが可能である。そのためセラミックシート片の各層における一次、二次側内部電極の間の距離の変動が、内部電極層の印刷精度のみにより規定され、グリーンシートの打ち抜きにおける位置ずれの影響を受けないという利点がある。このことは、積層型圧電トランスにおいて出力特性をより安定化しうることにつながるので、上記の二次側内部電極を設けない従来例に比べて優れた特徴となっている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−208827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の従来例では、積層型圧電トランスを構成するセラミックシート片の各層における一次、二次側内部電極の間の距離の変動については、前記の通り、構成上グリーンシートの打ち抜きにおける位置ずれの影響を受けない。しかし内部電極層の各層の形状パターンの相違に起因する、各層間での二次側内部電極の間の相互の微小な位置ずれについては、グリーンシートの打ち抜きにおける位置精度に依存するために防ぐことができないという問題があった。
【0014】
前記従来例では内部電極層に関して2種類の形状パターンが存在する。内部電極層が形成されたグリーンシートの打ち抜きを行う際にはこの形状パターンそのもの、あるいは位置読み取りのためにとくに設けられているマーカー部を、画像認識手段等を用いて検出しつつ打ち抜きを行い、次いで積層することとなる。この際に、2種類の内部電極における形状パターンに差があることが原因となり、2種類の形状パターンの打ち抜きにおける位置精度が互いに微妙に異なるものとなってしまう。そのため、これらを積層した際には、各層間において内部電極層どうしに微小な位置ずれが発生することになる。一般に内部電極層においては一次側内部電極は面積が大きく、二次側内部電極はそれより面積がずっと小さく構成される。このため、この位置ずれによる影響は二次側内部電極においてより顕著なものとなる。この位置ずれは、位置読み取りのために専用のマーカー部を用いることによっても完全に解消することはできない。
【0015】
従って、本発明の目的は、積層型圧電トランスに用いられる内部電極層の形状パターンが複数種類存在することが原因となって、二次側内部電極における各内部電極層間に生じていた位置ずれを本質的に解消して、それにより製造ロット内での積層型圧電トランスの出力特性の安定化を図るための手段の提供、およびその手段による製造方法を提供することである。また付随的に、前記手段の実施によって積層型圧電トランスの内部電極層の形成に用いられる電極ペーストの使用量を減少させ、それにより製造コストを削減することも可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、積層型圧電トランスに用いられる内部電極層の形状パターンの印刷形成において、2種類のうちの一方の形状パターンにて二次側内部電極を廃止し、もう一方の形状パターンにおいてのみ二次側内部電極を印刷形成する構成とする。この時、1枚のグリーンシートには、二次側内部電極を有する形状パターンと有しない形状パターンの双方が印刷形成されることになり、この2つの形状パターンを打ち抜いて作製されたセラミックシート片を交互に積層することによって、圧電セラミック層に対して二次側内部電極が一層おきに形成された、セラミック積層体が作製される。
【0017】
上記の手段によると、二次側内部電極の積層数は従来例に比べて半減し、圧電セラミック層が2層に対して1層ずつ形成されることになるが、各々の圧電セラミック層はその上面もしくは下面のいずれかで必ず二次側内部電極に接触しているために、この積層数の半減によっても積層型圧電トランスの二次側の出力特性には特段の影響はなく、従って圧電トランスの機能に影響が生じることはない。またグリーンシートの打ち抜きの方法は、従来方法を用いることに何ら問題はなく、その際に求められる位置精度も、従来方法によって得られる精度にて十分である。
【0018】
即ち、本発明は、3層以上の圧電セラミック層と、2層以上の内部電極層とを交互に積層してなる圧電積層体を有する積層型圧電トランスにおいて、前記各内部電極層は、前記圧電セラミック層の面上に形成されてなる、一次側内部電極を有しており、前記一次側内部電極は、前記一次側内部電極の過半の面積を占める主電極部と、前記主電極部と電気的に接続されて一体に形成され、前記圧電積層体の長手方向に平行な側面の1つに端部を露出させてなる取り出し部とからなっており、前記一次側内部電極の形状パターンにおいて、前記取り出し部が前記圧電積層体の同一の側面に端部を露出させており、かつ前記主電極部に対する相対位置が互いに異なる2種類の形状パターンが存在しており、前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する2種類の内部電極層が、圧電セラミック層を介して、交互に繰り返し積層されて前記圧電積層体を形成する積層型圧電トランスであって、前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する前記2種類の内部電極層のうち、一方の形状パターンを有する内部電極層のみが、前記圧電セラミック層の面上に、前記一次側内部電極と共に形成されてなる、二次側内部電極を有していることを特徴とする、積層型圧電トランスである。
【0019】
また、本発明は、3層以上の圧電セラミック層と、2層以上の内部電極層とを交互に積層してなる圧電積層体を有する積層型圧電トランスの製造方法において、前記各内部電極層は、前記圧電セラミック層の面上に形成されてなる、一次側内部電極を有しており、前記一次側内部電極は、前記一次側内部電極の過半の面積を占める主電極部と、前記主電極部と電気的に接続されて一体に形成され、前記圧電積層体の長手方向に平行な側面の1つに端部を露出させてなる取り出し部とからなっており、前記一次側内部電極の形状パターンにおいて、前記取り出し部が前記圧電積層体の同一の側面に端部を露出させており、かつ前記主電極部に対する相対位置が互いに異なる2種類の形状パターンが存在しており、前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する前記2種類の内部電極層のうち、一方の形状パターンを有する内部電極層のみが、前記圧電セラミック層の面上に、前記一次側内部電極と共に形成されてなる、二次側内部電極を有しており、前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する2種類の内部電極層が、圧電セラミック層を介して、交互に繰り返し積層されて前記圧電積層体を形成する積層型圧電トランスの製造方法であって、前記2種類の形状パターンの一次側内部電極を有する、前記2種類の内部電極層が、同一のグリーンシート上に交互に同時に印刷形成することを特徴とする、積層型圧電トランスの製造方法である。
【0020】
さらに、本発明は、前記2種類の内部電極層を、同一のグリーンシート上に交互に配列して同時に印刷形成し、前記グリーンシートを打ち抜くことで、セラミックシート片となし、前記2種類の内部電極層を有する各セラミックシート片を交互に積層して圧電積層体となし、前記圧電積層体のうち、一次側内部電極および二次側内部電極の端部が共に露出している1側面にのみ、一次側外部電極および二次側外部電極を形成することを特徴とする、積層型圧電トランスの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、積層型圧電トランスにおいて、その内部に二次側内部電極が、圧電セラミック層に対して1層おきに形成され、同時に前記二次側内部電極が内部電極層のうち1種類の形状パターンにおいてのみ形成されることとなる。二次側内部電極の層間での相互の微小な位置ずれは、二次側内部電極を含む内部電極層が異なる形状パターンによって印刷形成されて打ち抜かれ、切り離されることがその原因であるから、前記手段によって解消することができる。従って、これにより製造ロット内での積層型圧電トランスの出力特性の安定化を達成することができる。また結果として二次側内部電極の積層数が従来例に比べて半減することになるので、積層型圧電トランスの電極形成に用いられる電極ペーストの使用量を若干ではあるが減少させることができる。電極ペーストには一般に銀(Ag)やパラジウム(Pd)といった高価な金属粒子が高い割合で含まれていることから、その使用量の減少は積層型圧電トランスのコストダウンに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態に係る積層型圧電トランスを、図1および図2に基づいて以下に説明する。
【0023】
図1に、本発明の実施の形態に係る積層型圧電トランスを構成する圧電積層体を示す。図1(a)は積層型圧電トランスを構成する圧電積層体の外観図、図1(b)から図1(e)は、この積層型圧電トランスを構成する圧電セラミック層とその表面に形成した内部電極層を、それぞれ1層分ずつ取り出して示した斜視図である。この内部電極層の形状パターンには2種類あり、図1(b)と図1(d)、図1(c)と図1(e)の形状パターンはそれぞれ同一である。両形状パターンの内部電極層は、図1(b)から図1(e)の順番で、圧電セラミック層を介して交互に積層される。
【0024】
図1(a)において、積層型圧電トランスの本体である圧電積層体11の長手方向に平行な側面のうちの片面に、一次側外部電極16および二次側外部電極17が共に形成されており、図1(a)では表示されていない、裏側のもう一つの長手方向に平行な側面には、外部電極は何も形成されていない。一次側外部電極16は2ヶ所に分かれて形成されており、図1(b)から図1(e)における、一次側内部電極13,14に各々接続されている。また二次側外部電極17は、図1(b)および図1(d)において圧電セラミック層12の右端部に設けられた、二次側内部電極15に接続されている。この構成の場合、一次側内部電極13,14および二次側外部電極17が共に同一面に形成されている。
【0025】
図1(b)は、1層分の圧電セラミック層12に一次側内部電極13および二次側内部電極15が形成された、1枚のセラミックシート片について示したものであり、このうち一次側内部電極13は、圧電セラミック層12の約半分の面積を被覆している主電極部13aと、取り出し部13bから構成されている。このうち取り出し部13bは主電極部13aに接続され、その端部が圧電積層体11の長手方向に平行な側面に露出している。また二次側内部電極15は圧電積層体11の右端部に形成されており、取り出し部13bと同一の側面にその端部が露出している。このセラミックシート片については従来の積層型圧電トランスを構成する、図3(b)に示したセラミックシート片と実質的に同一の形状である。
【0026】
図1(c)も同様に、本発明の積層型圧電トランスを構成する1枚のセラミックシート片について示したもので、1層分の圧電セラミック層12に一次側内部電極14のみが形成された構成であって、二次側内部電極は設けられていない。図1(b)の場合とは一次側内部電極についても形状パターンが異なっており、主電極部14aに接続される取り出し部14bの位置が変化している。これらの端部の露出位置は圧電積層体11の長手方向に平行な側面に設けられた一次側外部電極16の位置に対応しており、各層の一次側内部電極13,14は一次側外部電極16との導通が確保されている。主電極部14aの位置や形状については、前記図1(b)の場合の主電極部13aと同一である。
【0027】
また図1(d)、図1(e)に示すセラミックシート片は、それぞれ図1(b)、図1(c)に示すセラミックシート片と全く同一の構成、形状である。本発明の積層型圧電トランスにおいては図1(b)から図1(e)に示す、これら1層分のセラミックシート片が交互に積層されて圧電積層体11を形成しており、取り出し部13b,14bおよび二次側内部電極15の端部も、いずれも積層型圧電トランスの長手方向に平行な片側の側面にのみ交互に露出している。前記側面の2ヶ所の取り出し部13b,14bの位置には各々一次側外部電極16が、二次側内部電極15の露出位置には二次側外部電極17が、それぞれ設けられている。
【0028】
本発明の実施の形態に係る積層型圧電トランスを構成する、圧電積層体の形成工程について、図2に基づいて説明する。1枚のグリーンシート28には、2種類の形状パターンが共に形成されて並設されており、図2ではこのうち並設される各1点ずつの形状パターンのみを図示している。一次側内部電極23,24は並設される両方の形状パターンに形成されているが、二次側内部電極25はこのうち図の左側の形状パターンにのみ形成されている。これらは各1層分の圧電セラミック層および内部電極層を形成するものであり、各内部電極の印刷後に図の打ち抜き線29において打ち抜き、互いに切り離すことで個別のセラミックシート片とする。この打ち抜の際には位置決めのために内部電極の形状パターンそのもの、あるいは位置読み取りのためにとくに設けられたマーカー部を、画像認識手段等を用いて検出しつつ打ち抜きを行い、セラミックシート片を個別に切り離す。
【0029】
以上の方法により得られた各セラミックシート片を、内部電極層の形状パターンごとに交互に積層して互いに圧着し、長手方向に平行な側面のうちの片面にのみ一次側および二次側の外部電極を形成し、その後一定時間焼結させて圧電体を得る。この際に、二次側内部電極は圧電セラミック層2層に対して1層ずつ設けられる構成となるため、内部電極層の形状パターンの相違に対応する二次側の内部電極の層間での位置ずれが生じない。
【0030】
本発明の積層型圧電トランスは、一例として以下の方法にて作製される。まず、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O2)を成分として含むグリーンシートと、銀粒子およびパラジウム粒子の混合粉、セルロースおよび溶剤などから構成されるペーストが用意される。次に前記グリーンシートの上面に、前記ペーストをスクリーン印刷の方法により印刷形成して内部電極層を作製し、次いで位置決めを行いつつ打ち抜きを行ってセラミックシート片とする。前記セラミックシート片を内部電極層の形状パターンごとに交互に積層して互いに圧着し、その後、一定時間焼結させる。さらにその長手方向に平行な側面のうち、一次側、および二次側の内部電極の端部が露出した面に、銀ペーストを印刷して焼き付けを行うことで外部電極を形成し、圧電積層体を得る。最終的に研磨やリード線接続などの工程を経て、積層型圧電トランスが完成する。
【0031】
なお、上記実施の形態に関する説明は、本発明に係る積層型圧電トランスにおいて、二次側内部電極の層間での相互の微小な位置ずれの解消を図り、それにより積層型圧電トランスの出力特性の安定化を達成する手段について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明における積層型圧電トランスを構成する圧電積層体について示す図。図1(a)は圧電積層体の外観図、図1(b)から図1(e)は、それぞれ圧電セラミック層とその表面の内部電極層の4層分を取り出して、内部電極の形状パターンを順に示した斜視図。
【図2】本発明における積層型圧電トランスにおいて、グリーンシート上に内部電極層を形成した状態を示す上面図。
【図3】従来例における積層型圧電トランスを構成する、圧電積層体について示す図。図3(a)は圧電積層体の外観図、図3(b)から図3(e)は、それぞれ圧電セラミック層とその表面の内部電極層の4層分を取り出して、内部電極の形状パターンを順に示した斜視図。
【図4】従来における積層型圧電トランスにおいて、グリーンシート上に内部電極層を形成した状態を示す上面図。
【符号の説明】
【0033】
11 圧電積層体
12 圧電セラミック層
13、14、23、24 一次側内部電極
13a、14a、23a、24a 主電極部
13b、14b、23b、24b 取り出し部
15、25 二次側内部電極
16 一次側外部電極
17 二次側外部電極
28 グリーンシート
29 打ち抜き線
31 圧電積層体
32 圧電セラミック層
33、34、43、44 一次側内部電極
33a、34a、43a、44a 主電極部
33b、34b、43b、44b 取り出し部
35、45 二次側内部電極
36 一次側外部電極
37 二次側外部電極
48 グリーンシート
49 打ち抜き線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の圧電セラミック層と、2層以上の内部電極層とを交互に積層してなる圧電積層体を有する積層型圧電トランスにおいて、
前記各内部電極層は、前記圧電セラミック層の面上に形成されてなる、一次側内部電極を有しており、
前記一次側内部電極は、前記一次側内部電極の過半の面積を占める主電極部と、前記主電極部と電気的に接続されて一体に形成され、前記圧電積層体の長手方向に平行な側面の1つに端部を露出させてなる取り出し部とからなっており、
前記一次側内部電極の形状パターンにおいて、前記取り出し部が前記圧電積層体の同一の側面に端部を露出させており、かつ前記主電極部に対する相対位置が互いに異なる2種類の形状パターンが存在しており、
前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する2種類の内部電極層が、圧電セラミック層を介して、交互に繰り返し積層されて前記圧電積層体を形成してなる積層型圧電トランスであって、
前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する前記2種類の内部電極層のうち、一方の形状パターンを有する内部電極層のみが、前記圧電セラミック層の面上に、前記一次側内部電極と共に形成されてなる、二次側内部電極を有していることを特徴とする、積層型圧電トランス。
【請求項2】
3層以上の圧電セラミック層と、2層以上の内部電極層とを交互に積層してなる圧電積層体を有する積層型圧電トランスの製造方法において、
前記各内部電極層は、前記圧電セラミック層の面上に形成されてなる、一次側内部電極を有しており、
前記一次側内部電極は、前記一次側内部電極の過半の面積を占める主電極部と、前記主電極部と電気的に接続されて一体に形成され、前記圧電積層体の長手方向に平行な側面の1つに端部を露出させてなる取り出し部とからなっており、
前記一次側内部電極の形状パターンにおいて、前記取り出し部が前記圧電積層体の同一の側面に端部を露出させており、かつ前記主電極部に対する相対位置が互いに異なる2種類の形状パターンが存在しており、
前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する前記2種類の内部電極層のうち、一方の形状パターンを有する内部電極層のみが、前記圧電セラミック層の面上に、前記一次側内部電極と共に形成する、二次側内部電極を有しており、
前記2種類の形状パターンの一次側内部電極をそれぞれ有する2種類の内部電極層が、圧電セラミック層を介して、交互に繰り返し積層されて前記圧電積層体を形成する積層型圧電トランスの製造方法であって、
前記2種類の形状パターンの一次側内部電極を有する、前記2種類の内部電極層が、同一のグリーンシート上に同時に印刷形成することを特徴とする、積層型圧電トランスの製造方法。
【請求項3】
前記2種類の内部電極層を、同一のグリーンシート上に交互に配列して同時に印刷形成し、前記グリーンシートを打ち抜くことで、セラミックシート片となし、
前記2種類の内部電極層を有する各セラミックシート片を交互に積層して圧電積層体となし、前記圧電積層体のうち、一次側内部電極および二次側内部電極の端部が共に露出している1側面にのみ、一次側外部電極および二次側外部電極を形成することを特徴とする、請求項2に記載の積層型圧電トランスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−84909(P2008−84909A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260121(P2006−260121)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)