説明

積層型微多孔膜、電池用セパレータおよび非水電解質電池

【課題】 不織布を基材とした積層型微多孔膜のセパレータ特性を向上させる。
【解決手段】 不織布からなる基材の少なくとも一方の面に、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層とを備える積層型微多孔膜を、標準偏差によって表される膜厚の厚み変動率が2.5%以下となるように調整する。この調整は、表面層の少なくとも一方の面から積層型微多孔膜に対して加圧処理を施すことによりなされる。加圧処理は、例えばカレンダー処理であり、カレンダー処理時における加圧力を、線厚20kgf/cm以上200kgf/cm以下とすることにより、上述の様な積層型微多孔膜を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層構造を有する微多孔膜に関し、さらに詳細には、不織布からなる基材と、無機粒子を含有させてなり、加熱・加圧処理等が施された表面層とを備え、全体の厚みが均一に形成された積層型微多孔膜および電池用セパレータ、ならびにこれを用いた非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューターなどの携帯情報電子機器の普及に伴い、これらの機器の高性能化、小型化および軽量化が図られている。これらの機器の電源には、使い捨ての一次電池や繰り返し使用できる二次電池が用いられているが、高性能化、小型化、軽量化、経済性などの総合的なバランスの良さから、二次電池、特にリチウムイオン二次電池の需要が伸びている。また、これらの機器では、更なる高性能化や小型化などが進められており、リチウムイオン二次電池に関しても、高エネルギー密度化が要求されている。また、高エネルギー密度であることから、リチウムイオン二次電池は、電動工具、電動アシスト自転車、電気自動車およびハイブリッド自動車等に搭載される電池としても使用されている。
【0003】
車載用途に用いる場合、電池の大容量化、急速充放電にともなう大電流化、長期間にわたる繰り返し充放電など過酷な使用が想定される。従来、主に小型機器に持いられてきた二次電池では、セパレータとしてポリオレフィン系樹脂からなる微多孔膜が採用されてきた。中でもポリエチレン微多孔膜は、130℃程度で溶融し空孔を目詰まりさせるいわゆるシャットダウン機能を持つことで安全性を確保していた。さらに、ポリエチレンとポリプロピレンの積層微多孔膜では、高融点のポリプロピレンによってメルトダウン温度が上昇し、ポリエチレン単層膜よりも高い安全性を実現することができた。しかしながら、大電流で使用する電動工具や車載用途の場合は、ポリオレフィン系樹脂の耐熱性では十分でなく、より高温での安全性を求めて、高融点材料からなる不織布を検討することが多くなってきた。
【0004】
不織布は比較的安価な微多孔膜として、低品位の電池に使われている。しかしながら、製法上厚みムラが大きく、またピンホールが不規則に発生するため、二次電池への採用は本格化しなかった。また、不織布は微細繊維がからまっている構造上、機械特性が弱いという欠点も指摘されている。
【0005】
これら不織布の欠点に対して、厚みムラについては特許文献1に示すように不織布表面に対してカレンダー処理することによって、均一化できることが報告されている。一方、不規則なピンホールの発生は、不織布単層で解決するには微細繊維の積層量を増やして厚みを厚くすることによって、ピンホールの発生確率を最小化する以外に対策はなかった。少数とは言え、ショートの原因になりうる穴が存在することは、電池の安全性にとって許容できないことであるし、厚いセパレータは電池の高容量化に反する方向なので、好ましい対策とは言えない。
【0006】
これに対して、不織布を基材に用いた積層構造を有するセパレータにおいて、特許文献2に示すように、不織布表面に無機粒子を含有するPVdF樹脂層を形成して、ピンホールを隠蔽する方法が提案されている。また、機械特性の不足に対しては、PVdF樹脂が不織布の微細繊維を結束することによって改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−87228号公報
【特許文献2】特表2005−536658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献2のような方法を用いた場合、樹脂膜が不織布自体の表面性をトレースするため、表面性の悪い(表面粗度の大きい)不織布基材に樹脂膜を形成した場合、処理後の表面も表面性が悪くセパレータ特性の不均一をもたらすおそれがある。
【0009】
この発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、不織布基材を用いた積層型セパレータにおいて、ピンホールの発生を防止し、高い機械特性を有する積層型微多孔膜、電池用セパレータおよび非水電解質電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
問題点を解消するために、この発明の積層型微多孔膜および電池用セパレータは、不織布からなる基材と、
基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明の積層型微多孔膜および電池用セパレータは、不織布からなる基材と、
基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
表面層の少なくとも一方の面から加圧処理を施されることにより形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明の非水電解質電池は、正極と、
負極と、
セパレータと、
非水電解質と
を備え、
セパレータが、
不織布からなる基材と、
基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明の非水電解質電池は、正極と、
負極と、
セパレータと、
非水電解質と
を備え、
セパレータが、
不織布からなる基材と、
基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
表面層の少なくとも一方の面から加圧処理を施されることにより形成された
ことを特徴とする。
【0014】
この発明の積層型微多孔膜および電池用セパレータは、不織布基材の表面に表面層を形成して不規則に発生したピンホールを埋設するとともに、不織布を構成する微細繊維同士を結束させて表面層を均一に形成することができる。また、表面層の均一化処理と同時に表面層の緻密化を図ることができる。
【0015】
また、この発明の非水電解質電池は、上述の様なセパレータを用いることにより安全性が向上し、電極全面にわたって均一に高いセパレータ特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の積層型微多孔膜および電池用セパレータによれば、高い多孔質膜特性を膜全面にわたって均一に発現することができる。また、この発明の非水電解質電池は、電動工具、電動アシスト自転車、電気自動車およびハイブリッド自動車等に搭載される高品位を要求される電池用途にも好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の積層型微多孔膜の一構成例を示す断面図である。
【図2】この発明の積層型微多孔膜形成時における膜厚均一化処理の一例を示す模式図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態における非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態における非水電解質電池の外装部材の一構成例を示す斜視図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態における非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態による円筒型非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。
【図7】この発明を適用した非水電解質電池を構成する積層電極体の一例を示す略線図である。
【図8】この発明を適用した非水電解質電池に用いる正極および負極の一構成例を示す斜視図である。
【図9】この発明を適用した非水電解質電池の積層電極体の一構成例を示す斜視図である。
【図10】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリユニットの構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図12】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリモジュールの構成を示す斜視図である。
【図13】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリモジュールの構成を示す斜視図である。
【図14】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリモジュールの構成を示す斜視図である。
【図15】この発明の非水電解質電池を用いたバッテリモジュールの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下のように行う。
1.第1の実施の形態(この発明の積層型微多孔膜の例)
2.第2の実施の形態(この発明の積層型微多孔膜を用いた電池の例)
【0019】
1.第1の実施の形態
第1の実施の形態における積層型微多孔膜は、不織布からなる基材の両面に、樹脂材料と無機粒子とを含む表面層が形成され、表面層が加圧処理されたものである。この積層型微多孔膜は、例えば耐熱性、耐酸化性、寸法安定性、高い機械強度等を必要とする一般的な樹脂材料フィルム用途に用いることができるがこれに限られたものではない。有機溶媒に対する耐性等の必要な特性を満たせば、電池のセパレータ用途に用いることもできる。以下、この発明の積層型微多孔膜1について詳細に説明する。
【0020】
(1−1)積層型微多孔膜の構造
第1の実施の形態における積層型微多孔膜1は、図1に示すように、強度に優れる微多孔膜、具体的には不織布からなる基材2と、基材2の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含み、加圧処理等がされることにより膜厚を略均一とした表面層3とからなる。なお、積層型微多孔膜1を電池用途、すなわちセパレータとして用いる場合、積層型微多孔膜1は電池内において正極と負極とを隔離して両極の接触による電流の短絡を防止し、リチウムイオンを通過させる。また、積層型微多孔膜1は、非水電解質に対する耐性を有するものである。
【0021】
[基材]
基材2は、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜から構成される樹脂製多孔質膜であり、この発明においては不織布が用いられる。不織布としては、不織布を構成する微細繊維がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)またはこれら樹脂の混合樹脂、ガラス繊維およびセルロース等の材料から選択されたものが用いられる。また、これらの材料からなる微細繊維を2種以上用いて形成した不織布を形成してもよい。
【0022】
基材2は、積層型微多孔膜1として必要な強度を保つことができる厚さ以上の厚さであれば任意に設定可能である。積層型微多孔膜1を電池用セパレータとして用いる場合、基材2は、正極および負極間の絶縁を図り、短絡等を防止するとともに、積層型微多孔膜1を介した電池反応を好適に行うためのイオン透過性を有する主要な微多孔膜として機能する。基材2は、このような機能を充分に発現でき、かつ電池内において電池反応に寄与する活物質層の体積効率をできるだけ高くできる厚さに設定されることが好ましい。具体的に、基材2の厚さは12μm以上30μm以下であることが好ましい。基材2を構成する負極の透気度は、10sec./100ml以下であることが好ましい。また、上述のイオン透過性を得るために、基材2における空隙率は、40%以上60%以下であることが好ましい。
【0023】
なお、基材2として不織布を用いるのは、後に膜厚均一化処理を施す際に基材2が潰れないからである。例えば、電池用セパレータの基材として従来用いられてきた樹脂微多孔膜は、樹脂材料を一軸延伸または二軸延伸することにより、微細な空孔を発生させた延伸樹脂膜である。この延伸樹脂膜もしくは延伸樹脂膜に表面層を設けた積層膜に対して加圧処理を行った場合、延伸樹脂膜の樹脂同士が貼着したままとなり、空孔が潰れてしまう。このため、電池用セパレータとしては用いることができなくなる。すなわち、この発明の積層型微多孔膜1は、基材2が不織布である場合に作製できるものであり、延伸樹脂膜に対して樹脂材料と無機粒子とを含む表面層を設けた従来の積層型微多孔膜とは異なるものである。
【0024】
[表面層]
表面層3は、基材2の少なくとも一方の面に形成されるものであり、樹脂材料と無機粒子とを含有する。表面層3は、無機粒子を含んでいるものの、無機粒子が基材2に形成された微少な孔の目詰まりを起こすことのない機能層として存在している。無機粒子は、表面層3に耐熱性、耐酸化性を付与する。表面層3において、少なくとも無機粒子と樹脂材料との界面の一部には空隙が形成されて、イオン透過性が確保される。また、樹脂材料そのものが、例えば3次元網目構造を有することにより空孔が形成されてイオン透過性が確保されてもよい。
【0025】
この発明の積層型微多孔膜1において、基材2に生じた大きな空孔に表面層3の一部が入り込むことによって、この空孔が埋設される。また、表面層3は表面が平坦化され、これにより積層型微多孔膜1の厚みが略均一化されて膜厚のムラが少なくなっている。具体的に、この発明において厚みが略均一とは、積層型微多孔膜1の厚み変動率が、2.5%以下となっていることをいう。なお、厚み変動率とは、複数ポイントの厚みを測定して得た標準偏差によって表されるセパレータ厚み変動量の、セパレータ厚みに対する割合を示す。また、セパレータ厚みとは複数ポイントを測定して得た厚みの平均値である。
【0026】
表面層3を構成する樹脂材料は、一般的な樹脂フィルム用途において所望の耐熱性を有していれば材料の種類に限定はない。表面層3は、高い耐熱性を有する基材2に発生する大きな空孔を埋設するとともに、積層型微多孔膜の表面を保護する目的で設けられている。また、この発明の積層型微多孔膜1を電池用セパレータとして使用する場合には、電池内の非水電解液に対して不溶であり、かつ電池の使用範囲で電気化学的に安定な樹脂材料を用いることが好ましい。
【0027】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン材料、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂の一種または2種以上が用いられる。樹脂材料として、融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が例えば180℃以上のような高温である樹脂を用いる場合には、表面層3の耐熱性をより高めることができる。なかでも、樹脂材料としてはポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。
【0028】
無機粒子としては、電気絶縁性の無機粒子である金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。中でも、アルミナ、ルチル型構造を有するチタニア、シリカを用いることが好ましい。
【0029】
これら無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。無機粒子は耐酸化性も備えており、積層型微多孔膜を電池用セパレータとして用いる場合には電極、特に充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状およびランダム形状のいずれも用いることができるが、特に球状の無機粒子を用いることが好ましい。
【0030】
無機粒子は、セパレータの強度に与える影響、塗工面の平滑性の観点から、一次粒子の平均粒径が数μm以下とすることが好ましい。具体的には、一次粒子の平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。このような一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法により測定することができる。
【0031】
無機粒子の一次粒子の平均粒径が1.0μmを超えると、セパレータが脆くなり、塗工面も粗くなる場合がある。また、無機粒子を含む表面層3を塗布にて基材2上に形成する場合、無機粒子の一次粒子が大きすぎる場合には、無機粒子を含む塗工液が塗布されない部分が生じるおそれがある。
【0032】
また、表面層3中の無機粒子の添加量は、表面層3中の無機粒子と樹脂材料との質量比が5:1〜12:1の範囲であることが好ましい。無機粒子の添加量が少なすぎる場合には、表面層3における耐熱性、耐酸化性および耐収縮性効果が小さくなる。また、無機粒子の添加量が多すぎる場合には、表面層3の形成が困難となり、好ましくない。
【0033】
表面層3は、積層型微多孔膜1全体として必要な耐熱性・耐酸化性等の特性を有するように形成されていれば任意の厚さに設定可能である。積層型微多孔膜1を電池用セパレータとして用いる場合、表面層3は、正極および負極間の絶縁を図り、セパレータとして必要な耐熱性を備えるとともに、積層型微多孔膜1を介した電池反応を好適に行うためのイオン透過性を有し、かつ電池内において電池反応に寄与する活物質層の体積効率をできるだけ高くできる厚さに設定されることが好ましい。具体的に、表面層3の厚さは1μm以上10μm以下であることが好ましい。また、上述のイオン透過性を得るために、表面層3における空隙率は、30%以上70%以下であることが好ましい。
【0034】
この発明の積層型微多孔膜1からなる電池用セパレータは、積層型微多孔膜1の表面層3が少なくとも正極側表面、すなわち表面層3が正極と基材2との間に位置するように設けられていることが好ましい。正極近傍は、充電時における酸化性が高い。このため、表面層3に含まれる無機粒子による表面層3の耐酸化性効果を得ることができ、セパレータの劣化を抑制することができる。
【0035】
このように、不織布からなる基材2と樹脂材料および無機粒子を含み、膜厚均一化処理が施された表面層3からなる積層型微多孔膜1は、膜全体としての透気度が100sec./100ml以上1200sec./100ml以下であることが好ましい。この発明の積層型微多孔膜1に対する膜厚均一化処理は、加圧処理を含む。このため、積層型微多孔膜1は、膜厚均一化処理が施される前よりも、膜厚均一化処理が施された後の方が透気度が高くなる。すなわち、膜厚均一化処理後の積層型微多孔膜1の透気度と、積層型微多孔膜1表面の均一性とは相関すると考えられる。膜厚均一化処理後の積層型微多孔膜1の透気度が100sec./100ml未満の場合には、積層型微多孔膜1の厚み変動率が大きくなる傾向にあるため好ましくない。また、膜厚均一化処理後の積層型微多孔膜1の透気度が1200sec./100mlを超える場合には、表面層3におけるイオン透過性等が低下するため好ましくない。
【0036】
なお、表面層3は膜厚均一化処理により潰されて厚みが減少する。また、基材2も、膜厚均一化処理により軽微に潰されて厚みが減少する。膜厚均一化処理による潰れは、表面層3において特に顕著である。このため、表面層3において透気度が好ましくない範囲に上昇した場合には、積層型微多孔膜1の特性が低下する。
【0037】
(1−2)積層型微多孔膜の製造方法
まず、樹脂材料とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の分散溶媒とを、所定の重量比で混合し、樹脂材料をN−メチル−2−ピロリドンに十分に溶解させて、樹脂材料が溶解された樹脂溶液を作製する。次に、樹脂溶液に、アルミナ等の無機粒子微粉末を所定量添加し、ビーズミル等の攪拌性の高い装置を用いて攪拌し、塗布スラリーを作製する。
【0038】
ここで、分散溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエン等が用いられるが、溶解性および高分散性の観点からN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
【0039】
続いて、卓上コーター等の塗布装置を用いて、作製した塗布スラリーを基材2の表面に塗布する。このとき、基材2の空孔には塗布スラリーが入り込んでもよい。また、ピンホールと呼ばれる、基材2を貫通するような空孔が形成されている場合には、塗布スラリーが空孔に入り込んでピンホールを埋設する。このあと、塗布スラリーが塗布された基材2を水浴に所定時間浸漬して樹脂材料を相分離させた後、熱風にて乾燥させて表面層3を形成する。また、必要に応じて基材2のもう一方の面にも同様の方法により表面層3を形成する。
【0040】
続いて、基材2上に表面層3を形成した積層型微多孔膜1に対して、膜厚均一化処理を行う。膜厚均一化処理は、加圧処理を含むものであり、積層型微多孔膜1の全面に対して加圧することができればどのような処理でもよい。このような膜厚均一化処理の一例としては、例えば図2に示すような鏡面金属ロール4を備えた加圧装置を用いたカレンダー処理が挙げられる。カレンダー処理を行う場合には、積層型微多孔膜1に対する圧力を、線圧20kgf/cm以上200kgf/cm以下とすることが好ましい。これにより、標準偏差によって表される積層型微多孔膜1の厚み変動率が、2.5%以下となるように膜厚均一化処理を行うことができる。なお、この範囲外に圧力が小さい場合には、積層型微多孔膜1の膜厚の厚み変動率が大きくなるため好ましくない。また、この範囲外に圧力が大きくなる場合には、表面層3の潰れが大きくなるため好ましくない。また、加圧による膜厚均一化の効果を高めるために、加圧と同時に加熱が行われてもよい。
【0041】
これにより、不織布の表面に無機粒子が担持された樹脂層である表面層3を有し、積層型微多孔膜1を得ることができる。
【0042】
<効果>
第1の実施の形態によれば、積層型微多孔膜1は、厚みのムラが小さく、加圧処理が行われることにより薄膜化が可能となる。このため、セパレータ特性を膜全面にわたって均一に発現できるとともに、電池用セパレータとして用いた場合には、体積効率の向上効果が得られる。また、不織布に不規則に発生するピンホールを埋設するため、安全性が向上する。さらに、表面層が形成されることにより、樹脂材料が不織布の微細繊維を結束することによって機械特性が向上するとともに、無機粒子により表面層における耐熱性、耐酸化性が向上し、収縮が抑制される。
【0043】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態は、第1の実施の形態による積層型微多孔膜を電池用セパレータとして用いた非水電解質電池である。
【0044】
(2−1)非水電解質電池の構成
図3は、この発明の第2の実施の形態による非水電解質電池20の一構成例を示す断面である。図4は、非水電解質電池20の外装部材19の一構成例を示す断面図である。図5は、非水電解質電池20に収容される巻回電極体10の構造を示す断面図である。第2の実施の形態において、セパレータ13は、第1の実施の形態における積層型微多孔膜1が用いられる。
【0045】
この非水電解質電池20は、正極リード15および負極リード16が取り付けられた巻回電極体10をフィルム状の外装部材19の内部に収納した構成とされており、扁平型の形状を有するものである。正極リード15および負極リード16は、例えばそれぞれ短冊状であり、外装部材19から例えば同一方向にそれぞれ導出され、非水電解質電池20の内部から外部に突出されている。正極リード15は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード16は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0046】
[外装部材]
巻回電極体10を外装する外装材である外装部材19は、図4に示すように、例えば巻回電極体10対向側から内側樹脂層19c、金属層19aおよび外側樹脂層19bをこの順に積層し貼り合わせた構造を有するラミネートフィルムである。外側樹脂層19bおよび内側樹脂層19cと、金属層19aとの間には、例えば厚さ2μm以上3μm以下程度の接着層を設けても良い。外側樹脂層19bおよび内側樹脂層19cは、それぞれ複数層で構成されてもよい。また、非水電解質電池20を更に硬質の外装ケース等に収容する場合には、外装部材19は金属層19aを有しない樹脂フィルムであってもよい。
【0047】
金属層19aを構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔およびメッキを施した鉄(Fe)箔などを使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることが好ましい。特に、加工性の点から、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いるのが好ましい。
【0048】
金属層19aの厚みは、電池外装材として必要とされる強度が得られれば任意に設定可能であるが、30μm以上50μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、充分な材料強度を備えるとともに、高い加工性を得ることができる。また、ラミネートフィルム31の厚さが増大することによる非水電解質電池20の体積効率の低下も抑制することができる。
【0049】
内側樹脂層19cは、熱で溶けて互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0050】
内側樹脂層19cの厚みは、20μm以上50μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、ラミネートフィルム31の封止性が高くなり、また封止時の圧力緩衝作用を十分に得ることができため、短絡の発生を抑制できる。また、電池外部からの水分浸入経路となる内側樹脂層19cを必要以上に厚くしないことで、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下を抑制することができる。なお、内側樹脂層19cの厚みは、巻回電極体10に外装前の状態における厚みである。巻回電極体10に対してラミネートフィルム31を外装し、封止した後は、2層の内側樹脂層19cが互いに融着されるため、内側樹脂層19cの厚みは上記範囲から外れる場合もある。
【0051】
外側樹脂層19bとしては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0052】
なお、内側樹脂層19c同士を熱融着により溶融させてラミネートフィルム31を接着するため、外側樹脂層19bは、内側樹脂層19cよりも高い融点を有することが好ましい。熱融着時に内側樹脂層19cのみを溶融させるためである。このため、外側樹脂層19bは、内側樹脂層19cとして選択された樹脂材料によって使用可能な材料を選択可能である。
【0053】
外側樹脂層19bの厚みは、10μm以上30μm以下とすることが好ましい。この範囲とすることにより、保護層としての機能を十分に得ることができ、また不必要に厚みを増大させないため、非水電解質電池20の体積効率の低下を抑制する。
【0054】
図5は、図3に示した巻回電極体10のI−I線に沿った断面図である。巻回電極体10は、正極11と負極12とをセパレータ13および非流動性電解質である非水電解質層14を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ18が貼着されて巻回状態を維持している。
【0055】
[正極]
正極11は、正極活物質を含有する正極活物質層11Bが、正極集電体11Aの両面上に形成されたものである。正極集電体11Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいは、ステンレス(SUS)箔などの金属箔を用いることができる。
【0056】
正極活物質層11Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0057】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。
【0058】
正極材料は、例えば、LixM1O2あるいはLiyM2PO4で表されるリチウム含有化合物を用いることができる。式中、M1およびM2は1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LiyNiO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-zCoz2(0<z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi(1-v-w)CovMnw2(v+w<1))、またはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)あるいはリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2-tNit4(0<t<2))などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-uMnuPO4(0<u<1))などが挙げられる。
【0059】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等が挙げられる。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。例えば、ニッケルコバルト複合リチウム酸化物(LiNi0.5Co0.52、LiNi0.8Co0.22等)がその例として挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。
【0060】
更にまた、より高い電極充填性とサイクル特性が得られるという観点から、上記リチウム含有化合物のいずれかより成る芯粒子の表面を、他のリチウム含有化合物のいずれかより成る微粒子で被覆した複合粒子としてもよい。
【0061】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化バナジウム(V25)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化マンガン(MnO2)などの酸化物、二硫化鉄(FeS2)、二硫化チタン(TiS2)、二硫化モリブデン(MoS2)などの二硫化物、二セレン化ニオブ(NbSe2)等のリチウムを含有しないカルコゲン化物(特に層状化合物やスピネル型化合物)、リチウムを含有するリチウム含有化合物、ならびに、硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどの導電性高分子も挙げられる。もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0062】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。また、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびこれらを主体とする共重合体等が用いられる。
【0063】
正極11は正極集電体11Aの一端部にスポット溶接または超音波溶接で接続された正極リード15を有している。この正極リード15は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極リード15の材料としては、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0064】
[負極]
負極12は、負極活物質を含有する負極活物質層12Bが、負極集電体12Aの両面上に形成されたものである。負極集電体12Aとしては、例えば銅(Cu)箔およびニッケル(Ni)箔などの金属箔を用いることができる。
【0065】
負極活物質層12Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。この際、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量は、正極の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。なお、結着剤および導電剤に関する詳細は、正極と同様である。
【0066】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0067】
上述の炭素材料の他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0068】
上記した金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0069】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0070】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0071】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0072】
特に、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズ(Sn)を第1の構成元素とし、そのスズ(Sn)に加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。勿論、この負極材料を上記した負極材料と共に用いてもよい。第2の構成元素は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)およびケイ素(Si)からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
【0073】
中でも、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズ(Sn)およびコバルト(Co)の合計に対するコバルト(Co)の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
【0074】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)などが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量特性またはサイクル特性がさらに向上するからである。
【0075】
なお、SnCoC含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
【0076】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
【0077】
なお、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0078】
負極活物質層12Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。負極活物質層12Bを気相法、液相法、溶射法若しくは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成する場合には、負極活物質層12Bと負極集電体12Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体12Aの構成元素が負極活物質層12Bに拡散し、あるいは負極活物質層12Bの構成元素が負極集電体12Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層12Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層12Bと負極集電体12Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
【0079】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD; Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0080】
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が用いられる。
【0081】
負極12は負極集電体12Aの一端部にスポット溶接または超音波溶接で接続された負極リード16を有している。この負極リード16は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極リード15の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0082】
[セパレータ]
セパレータ13は、第1の実施の形態の積層型微多孔膜1を用いることができる。セパレータ13は、電池内に配設される際に、表面層3が少なくとも正極と対向するように、すなわち、少なくとも表面層3が正極と基材2との間に位置するように配設される。これにより、高充電電圧時における正極近傍の酸化環境および高温環境からセパレータ13を保護することができる。
【0083】
この非水電解質電池20では、充電を行うと、例えば、正極11からリチウムイオンが放出され、セパレータ13に含浸された電解質を介して負極12に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極12からリチウムイオンが放出され、セパレータ13に含浸された電解液を介して正極11に吸蔵される。
【0084】
[電解質]
非水電解質層14は、電解液と、この電解液を保持する高分子化合物とを含有しており、いわゆるゲル状となっている。電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。電解質塩にはいずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)あるいは炭酸ジエチル(DEC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
また、溶媒として、環状エステルまたは鎖状エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことが好ましい。このフッ素化された化合物としては、ジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)などの化合物を含む負極12を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができ、特にジフルオロエチレンカーボネートがサイクル特性改善効果に優れるからである。
【0087】
高分子化合物は、溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、あるいはビニリデンフルオライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイド(PEO)あるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)を繰返し単位として含むものなどが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、モノメチルマレイン酸エステル(MME)などの不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)などのハロゲン化エチレン、炭酸ビニレン(VC)などの不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマーなどを成分として含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
【0089】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
[正極の製造方法]
正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散して混合液を調製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体11Aに塗布し乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層11Bを形成し、正極11を得る。
【0090】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体12Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層12Bを形成し、負極12を得る。
【0091】
また、金属系、もしくは合金系負極を用いる場合には、気相法、液相法、溶射法もしくは焼成法等を用いることができる。また、それらの2種以上の方法を用いる場合には、負極集電体12Aと負極活物質層12Bとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体12Aの構成元素が負極活物質層12Bに拡散し、あるいは負極活物質層12Bの構成元素が負極集電体12Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層12Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層12Bと負極集電体12Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
【0092】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0093】
[非水電解質電池の組み立て方法]
まず、非水溶媒と、電解質塩と、必要に応じて溶剤とを含む前駆溶液を調整する。この前駆溶液を、正極11および負極12のそれぞれの表面に塗布した後、溶剤を揮発させてゲル状の非水電解質層を形成する。続いて、正極集電体11Aおよび負極集電体12Aにそれぞれ正極リード15および負極リード16を取り付ける。ここで、正極リード15および負極リード16は、非水電解質層の形成前に正極集電体11Aおよび負極集電体12Aに取り付けておくようにしても良い。
【0094】
続いて、非水電解質層が設けられた正極11と負極12とをセパレータ13を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープを接着させて巻回電極体を形成する。このとき、セパレータ13としては、第1の実施の形態における積層型微多孔膜を用いる。
【0095】
最後に、例えば2枚のフィルム状の外装部材の間に巻回電極体10を挟み込んだ後、その外装部材19の外縁部同士を熱融着などで接着させて減圧下で封止し、巻回電極体10を封入する。このとき、正極リード15および負極リード16と外装部材19との間に、密着フィルム17を挿入する。また、外装部材19の封止前に、必要に応じて非水電解液を注液してもよい。これにより、この発明の非水電解質電池20が完成する。
【0096】
<効果>
第2の実施の形態によれば、従来と同等の耐熱性、耐酸化性、イオン透過性等のセパレータ特性を備えながら薄膜化され、ピンホールがない、膜厚が略均一なセパレータを用いることができる。このため、この発明の積層型微多孔膜をセパレータとして用いた非水電解質電池は、高い安全性を有するとともに電池の体積効率が向上する。
【0097】
3.第3の実施の形態
(3−1)非水電解質電池の全体構成
図6は、第3の実施の形態における非水電解質電池30の一例を示す断面図である。この電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、図示しない非水電解液とともに帯状の正極41と負極42とがセパレータ43を介して巻回された巻回電極体40を有している。電池缶31は、例えばニッケルめっきが施された鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶31の内部には、巻回電極体40を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板38a、38bがそれぞれ配置されている。
【0098】
電池缶31の材料としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等が挙げられる。この電池缶31には、電池の充放電に伴う電気化学的な非水電解液による腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていても良い。電池缶31の開放端部には、正極リード板である電池蓋32と、この電池蓋32の内側に設けられた安全弁機構およびPTC素子(熱感抵抗素子:Positive Temperature Coefficient)34とが、絶縁封口ガスケット35を介してかしめられることにより取り付けられている。
【0099】
電池蓋32は、例えば電池缶31と同様の材料により構成されており、電池内部で発生したガスを排出するための開口部が設けられている。安全弁機構は、安全弁33とディスクホルダ36と遮断ディスク37とが順に重ねられている。安全弁33の突出部33aは遮断ディスク37の中心部に設けられた孔部37aを覆うように配置されたサブディスク19を介して巻回電極体40から導出された正極リード45と接続されている。サブディスク19を介して安全弁33と正極リード45とが接続されることにより、安全弁33の反転時に正極リード45が孔部37aから引き込まれることを防止する。また、安全弁機構は、PTC素子34を介して電池蓋32と電気的に接続されている。
【0100】
安全弁機構は、電池内部短絡あるいは電池外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に、安全弁33が反転し、突出部33aと電池蓋32と巻回電極体40との電気的接続を切断するものである。すなわち、安全弁33が反転した際には遮断ディスク37により正極リード45が押さえられて安全弁33と正極リード45との接続が解除される。ディスクホルダ36は絶縁性材料からなり、安全弁33が反転した場合には安全弁33と遮断ディスク37とが絶縁される。
【0101】
また、電池内部でさらにガスが発生し、電池内圧がさらに上昇した場合には、安全弁33の一部が裂壊してガスを電池蓋32側に排出可能としている。
【0102】
また、遮断ディスク37の孔部37aの周囲には例えば複数のガス抜き孔37bが設けられており、巻回電極体40からガスが発生した場合にはガスを効果的に電池蓋32側に排出可能な構成としている。
【0103】
PTC素子34は、温度が上昇した際に抵抗値が増大し、電池蓋32と巻回電極体40との電気的接続を切断することによって電流を遮断し、過大電流による異常な発熱を防止する。絶縁封口ガスケット35は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0104】
非水電解質電池30内に収容される巻回電極体40は、センターピン47を中心に巻回されている。巻回電極体40は、正極41および負極42がセパレータ43を介して順に積層され、長手方に巻回されてなる。巻回電極体40の正極41には正極リード45が接続されており、負極42には負極リード46が接続されている。正極リード45は、上述のように、安全弁33に溶接されて電池蓋32と電気的に接続されており、負極リード46は電池缶31に溶接されて電気的に接続されている。
【0105】
なお、セパレータ43は、第1の実施の形態における積層型微多孔膜1を用いることができる。また、正極41および負極42は、第2の実施の形態における正極11、負極12を用いることができる。
【0106】
(3−2)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池30は、例えば、次のようにして製造することができる。なお、正極41、負極42およびセパレータ43については、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の方法に作製するため、説明を省略する。
【0107】
[センターピンの作製]
薄い板状のセンターピン材料を用意し、このセンターピン材料を例えばプレス加工により所望の大きさに切断する。続いて、センターピン材料を丸めて筒状に成形し、両端にテーパーをつけてテーパー部を設けることにより、センターピン47を形成する。
【0108】
[非水電解質電池の組み立て]
正極41と負極42とをセパレータ43を介して積層して積層電極体24を形成し、積層電極体24を巻回して巻回電極体40を作製する。次に、センターピン47を巻回電極体40の中心に挿入する。続いて、巻回電極体40を一対の絶縁板38、39で挟み、負極リード46を電池缶31の缶底部に溶接すると共に、正極リード45を安全弁33の突出部33aに溶接する。次に、巻回電極体40を電池缶31の内部に収容し、非水電解液を電池缶31の内部に注入し、セパレータ43に含浸させる。最後に、電池缶31の開口端部に電池蓋32,安全弁33等の安全弁機構、およびPTC素子34を絶縁封口ガスケット35を介してかしめることにより固定する。これにより、図6に示したこの発明の非水電解質電池30が完成する。
【0109】
この非水電解質電池30では、充電を行うと、例えば、正極41からリチウムイオンが放出され、セパレータ43に含浸された非水電解液を介して負極42に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極42からリチウムイオンが放出され、セパレータ43に含浸された非水電解液を介して正極41に吸蔵される。
【0110】
<効果>
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
4.第4の実施の形態
(4−1)非水電解質電池の構成
図7Aは、この発明の一実施の形態にかかる非水電解質電池50の外観を示す斜視図であり、図7Bは、非水電解質電池50の構成を示す斜視分解図である。また、図7Cは、図7Aに示す非水電解質電池50の下面の構成を示す斜視図であり、図7Dは、図7Aの非水電解質電池50のII−II断面を示す断面図である。なお、下記の説明では、非水電解質電池50のうち、正極リード52が導出される部分をトップ部、トップ部に対向し、負極リード53が導出される部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。また、電極、電極リード等について、サイド部−サイド部方向を幅として説明する。
【0112】
この発明の非水電解質電池50は、電池素子である積層電極体60がラミネートフィルムからなる外装部材51にて外装されたものであり、外装部材51同士が封止された部分からは、積層電極体60と電気的に接続された正極リード52および負極リード53が電池外部に導出されている。正極リード52および負極リード53は、互いに対向する辺から導出されている。
【0113】
なお、第4の実施の形態で用いる積層電極体60の厚みは、5mm以上20mm以下であることが好ましい。積層電極体60の厚みが5mm未満であると、薄型であるため、蓄熱の影響が少なく、セル表面に凹凸がなくとも熱が逃げやすい傾向がある。一方、積層電極体60の厚みが20mmを超えると、電池表面から電池中央部までの距離が大きくなりすぎて、電池表面からの放熱だけでは電池内に温度差ができてしまい、寿命性能に影響がでる傾向がある。
【0114】
また、積層電極体60の放電容量は、3Ah以上50Ah以下であることが好ましい。積層電極体60の放電容量が3Ah未満であると、電池容量が小さいため、集電箔の厚みを厚くするなど電池容量を下げて抵抗を落とすなど他の手法でも発熱を抑えることができる傾向がある。積層電極体60の放電容量が50Ahを超えると、電池熱容量が大きくなり、放熱しにくくなってしまい、電池内での温度ばらつきも大きくなる傾向がある。
【0115】
非水電解質電池50に収容される積層電極体60は、図8Aまたは図8Bに示す矩形状の正極61と、図8Cまたは図8Dに示す矩形状の負極62とが、セパレータ63を介して積層された構成である。具体的には、例えば図9Aおよび図9Bに示すように、正極61および負極62がつづら折りに折り曲げられたセパレータ63を介して交互に積層された構成である。
【0116】
[積層電極体]
積層電極体60は、矩形状の正極61と、矩形状の負極62とがセパレータ63を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。第4の実施の形態では、積層型電極構造の一例として、積層電極体60の最表層がセパレータ63となるように、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63、負極62・・・セパレータ63、負極62、セパレータ63のように順に積層された積層電極体60を用いる。なお、積層電極体60の最表層は、セパレータ63に限ったものではなく、正極61もしくは負極62が最表層となっていてもよい。
【0117】
積層電極体60からは、複数枚の正極61からそれぞれ延出される正極タブ61Cと、複数枚の負極62からそれぞれ延出される負極タブ62Cとが導出されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接正極等の方法により正極リード52が接続されている。
【0118】
また、正極61と同様に、負極タブ62Cは、複数枚重ねられた上で、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた負極タブ62Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接正極等の方法により負極リード53が接続されている。
【0119】
以下、積層電極体60を構成する各部について説明する。
【0120】
[正極リード]
正極タブ61Cと接続する正極リード52は、例えばアルミニウム(Al)等からなる金属リード体を用いることができる。この発明の大容量の非水電解質電池50では、大電流を取り出すために、従来に比して正極リード52の幅を太く、厚みを厚く設定する。
【0121】
正極リード52の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、正極リード52の幅が正極61の幅に対して50%以上100%以下であることが好ましい。また、正極リード52および負極リード53を同一辺から導出する場合には、正極リード52の幅が正極61の幅の50%未満である必要がある。正極リード52が、負極リード53と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、外装部材51の封止性と高電流充放電とを両立するために、正極リード52の幅は正極61の幅の15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。
【0122】
正極リード52の厚みは、150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード52の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード52の厚みが250μmを超える場合、正極リード52が厚すぎるため、リード導出辺における外装部材51の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0123】
なお、正極リード52の一部分には、外装部材51と正極リード52との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント54が設けられる。シーラント54は、金属材料との接着性の高い樹脂材料により構成され、例えば正極リード52が上述した金属材料から構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0124】
シーラント54の厚みは、70μm以上130μm以下とすることが好ましい。70μm未満では正極リード52と外装部材51との接着性に劣り、130μmを超えると熱融着時における溶融樹脂の流動量が多く、製造工程上好ましくない。
【0125】
[負極リード]
負極タブ62Cと接続する負極リード53は、例えばニッケル(Ni)等からなる金属リード体を用いることができる。この発明の大容量の非水電解質電池50では、大電流を取り出すために、従来に比して負極リード53の幅を太く、厚みを厚く設定する。
【0126】
負極リード53の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、負極リード53の幅が負極62の幅に対して50%以上100%以下であることが好ましい。また、正極リード52および負極リード53を同一辺から導出する場合には、負極リード53の幅が負極62の幅の50%未満である必要がある。負極リード53が、正極リード52と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、外装部材51の封止性と高電流充放電とを両立するために、負極リード53の幅は負極62の幅の15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。
【0127】
負極リード53の厚みは、正極リード52と同様に150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード52の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード52の厚みが250μmを超える場合、正極リード52が厚すぎるため、リード導出辺における外装部材51の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0128】
負極リード53の一部分には、正極リード52と同様に、外装部材51と負極リード53との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント54が設けられる。
【0129】
[正極]
図8Aおよび図8Bに示すように、正極61は、正極集電体61Aが矩形状の主面部から延出する延出部を備えており、矩形状の主面部上に正極活物質層61Bが形成される。正極集電体61Aが露出した状態の延出部は、正極リード52を接続するための接続タブである正極タブ61Cとしての機能を備える。正極タブ61Cの幅は任意に設定可能であり、必要に応じて図8Aに示すように正極集電体露出部の一部を切断してもよい。特に、正極リード52および負極リード53を同一辺から導出する場合には、正極タブ61Cの幅は正極61の幅の50%未満とする必要がある。
【0130】
正極活物質層61Bを構成する正極活物質、導電剤および結着剤は、第2の実施の形態の正極11と同様の材料を用いることができる。
【0131】
[負極]
図8Cおよび図8Dに示すように、負極62は、負極集電体62Aが矩形状の主面部から延出する延出部を備えており、矩形状の主面部上に負極活物質層62Bが形成される。負極集電体62Aが露出した状態の延出部は、負極リード53を接続するための接続タブである負極タブ62Cとしての機能を備える。負極タブ62Cの幅は任意に設定可能であり、必要に応じて図8Cに示すように負極集電体露出部の一部を切断してもよい。特に、正極リード52および負極リード53を同一辺から導出する場合には、負極タブ62Cの幅は負極62の幅の50%未満とする必要がある。
【0132】
負極活物質層62Bを構成する正極活物質、導電剤および結着剤は、第2の実施の形態の負極12と同様の材料を用いることができる。
【0133】
[セパレータ]
セパレータ63は、第1の実施の形態における積層型微多孔膜1を用いることができる。また、第4の実施の形態では、ゲル電解質層を形成する一例として、表面に予めフッ化ビニリデンを含む高分子材料が付着されたセパレータ63を用いる場合について説明する。表面に予めフッ化ビニリデンを含む高分子材料が付着されたセパレータ63を用いることにより、後にフッ化ビニリデンを含む高分子材料と非水電解液とが反応して、非水電解液を保持してゲル電解質層が形成される。
【0134】
この発明の大容量の非水電解質二次電池において、セパレータの厚みは13μm以上40μm以下が好適に使用可能であり、20μm以上30μm以下がより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0135】
[非水電解液]
非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、積層電極体60とともに外装部材51内に封入される。非水溶媒および電解質塩としては、第2の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0136】
なお、セパレータ63の表面にフッ化ビニリデンを含む高分子材料が付着させずにゲル電解質層を形成してもよい。この場合には、非水電解液をマトリクスポリマに取り込むことで形成されるゾル溶液を正極61および負極62のそれぞれの両面、もしくはセパレータ63の両面に塗布した後乾燥する。これにより、非水電解液がマトリクスポリマに取り込まれたゲル電解質層を形成することができる。
【0137】
[ラミネートフィルム]
積層電極体60を外装する外装材である外装部材51は、第2の実施の形態の外装部材19と同様に、外側樹脂層51b/金属層51a/内側樹脂層51cの積層構造で表されるラミネートフィルムが使用できる。なお、第4の実施の形態の非水電解質電池50は、従来よりも寸法が大きく、大容量の電流を取り出すために電極リードのサイズも大きく、厚みも厚くなっている。したがって、各層の厚みを第2の実施の形態の非水電解質電池20に用いたラミネートフィルムよりも厚く設定することが好ましい。
【0138】
具体的には、金属層51aの厚みを30μm以上150μm以下とすることが好ましい。30μm未満の場合、材料強度に劣ってしまう。また、150μmを超えた場合、加工が著しく困難になるとともに、外装部材51の厚さが増してしまい、非水電解質二次電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0139】
外側樹脂層51bの厚みは、25μm以上35μm以下とすることが好ましい。25μm未満では保護層としての機能に劣り、35μmを超えると非水電解質二次電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0140】
内側樹脂層51cの厚みは、20μm以上50μm以下とすることが好ましい。20μm未満では接着性が低下するとともに、圧力緩衝作用が不十分となってしまい、短絡が発生しやすくなる。また、50μmを超えると、内側樹脂層51cを通じて水分が浸入しやすくなっていまい、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下が生じるおそれがある。なお、内側樹脂層51cの厚みは、積層電極体60に外装前の状態における厚みである。積層電極体60に対して外装部材51を外装し、封止した後は、2層の内側樹脂層51cが互いに融着されるため、内側樹脂層51cの厚みは上記範囲から外れる場合もある。
【0141】
[非水電解質電池の構成]
上述の様な積層電極体60は、上述の外装部材51にて外装される。このとき、正極タブ61Cと接続された正極リード52および負極タブ62Cと接続された負極リード53が外装部材51の封止部から電池外部に導出される。図7Bに示されるように、外装部材51には、予め深絞り加工により形成された積層電極体収納部56が設けられている。積層電極体60は、積層電極体収納部56に収納される。
【0142】
(4−2)非水電解質電池の製造方法
上述のような非水電解質電池は、以下のような工程で作製することができる。
【0143】
[正極の作製]
第2の実施の形態と同様にして正極合剤スラリーを作製し、帯状に連続した正極集電体61Aとなる金属箔の両面に正極集電体露出部を設けるようにして正極合剤スラリーを塗布する。続いて、正極合剤スラリー中の溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層61Bを形成し、正極シートとする。この正極シートを所定の寸法に切断し、正極61を作製する。この正極集電体露出部分を正極タブ61Cとする。また、必要に応じて正極集電体露出部の不要な部分を切断して正極タブ61Cを形成してもよい。これにより、正極タブ61Cが一体に形成された正極61が得られる。
【0144】
[負極の作製]
第2の実施の形態と同様にして負極合剤スラリーを作製し、帯状に連続した負極集電体62Aとなる金属箔の両面に負極集電体露出部を設けるようにして負極合剤スラリーを塗布する。続いて、負極合剤スラリー中の溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層62Bを形成し、負極シートとする。この負極シートを所定の寸法に切断し、負極62を作製する。この負極集電体露出部分を負極タブ62Cとする。また、必要に応じて負極集電体露出部の不要な部分を切断して負極タブ62Cを形成してもよい。これにより、負極タブ62Cが一体に形成された負極62が得られる。
【0145】
[セパレータの作製]
セパレータ63としては、第1の実施の形態の積層型微多孔膜1を用いることができる。
【0146】
[積層工程]
次いで、図9Aおよび図9Bに示すように、正極61と負極62とを、つづら折りにしたセパレータ63間に交互に挿入し、例えば、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63、負極62・・・セパレータ63、負極62、セパレータ63となるように重ね合わせて所定数の正極61および負極62を積層する。続いて、正極61、負極62およびセパレータ63が密着するように押圧した状態で固定し、積層電極体60を作製する。積層電極体60をより強固に固定するには、例えば接着テープ等の固定部材55を用いることができる。固定部材55を用いて固定する場合には、例えば積層電極体60の両サイド部に固定部材55を設ける。
【0147】
次に、複数枚の正極タブ61Cおよび複数枚の負極タブ62Cを断面U字状となるように折り曲げる。電極タブは、例えば特開2009−187768号公報のタブ折り曲げ方法を用いて折り曲げられる。
【0148】
[外装工程]
このあと、作製した積層電極体60を外装部材51で外装し、サイド部の一方と、トップ部およびボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。正極リード52および負極リード53が導出されたトップ部およびボトム部は、例えば切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。
【0149】
続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、非水電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部の外装部材51を熱融着し、積層電極体60を外装部材51内に封止する。この後、外装部材51の外部から、積層電極体60を加圧するとともに加熱し、非水電解液をフッ化ビニリデンを含む高分子材料に保持させる。これにより、正極61および負極62間にゲル電解質層が形成される。
【0150】
4.第5の実施の形態
第5の実施の形態では、第4の実施の形態の非水電解質電池50を用いたバッテリユニットおよびバッテリユニットが組み合わされたバッテリモジュールについて説明する。
【0151】
[バッテリユニット]
図10は、本発明を適用したバッテリユニットの構成例を示す斜視図である。図10Aおよび図10Bには、それぞれ異なる側から見たバッテリユニット100が示されており、図10Aに主に示されている側をバッテリユニット100の正面側とし、図10Bに主に示されている側をバッテリユニット100の背面側とする。図10に示すように、バッテリユニット100は、非水電解質電池50−1および50−2、ブラケット110、並びに、バスバー120−1および120−2を備えて構成される。
【0152】
ブラケット110は、非水電解質電池50−1および50−2の強度を確保するための支持具であり、ブラケット110の正面側に非水電解質電池50−1が装着され、ブラケット110の背面側に非水電解質電池50−2が装着される。なお、ブラケット110は、正面側および背面側のどちらから見ても、ほぼ同じ形状をしているが、下側の一方の角部分に面取り部111が形成されており、面取り部111が右下に見える側を正面側とし、面取り部111が左下に見える側を背面側とする。
【0153】
バスバー120−1および120−2は、略L字形状をした金属の部材であり、非水電解質電池50−1および50−2のタブに接続される接続部分がブラケット110の側面側に配置され、バッテリユニット100の外部と接続されるターミナルがブラケット110の上面に配置されるように、ブラケット110の両側面にそれぞれ装着される。
【0154】
図11は、バッテリユニット100が分解された状態を示す斜視図である。図11の上側をバッテリユニット100の正面側とし、図11の下側をバッテリユニット100の背面側とする。以下、非水電解質電池50−1において内部に積層電極体60が収容された凸状部分を電池本体50−1Aと称する。同様に、非水電解質電池50−2において内部に積層電極体60が収容された凸状部分を電池本体50−2Aと称する。
【0155】
そして、非水電解質電池50−1および50−2は、凸形状となっている電池本体50−1Aおよび50−2A側を互いに向い合せた状態で、ブラケット110に装着される。つまり、非水電解質電池50−1は正極リード52−1および負極リード53−1が設けられる面が正面側を向き、非水電解質電池50−2は正極リード52−2および負極リード53−2が設けられる面が背面側を向くように、ブラケット110に装着される。
【0156】
ブラケット110は、外周壁112およびリブ部113を有している。外周壁112は、非水電解質電池50−1および50−2の電池本体50−1Aおよび50−2Aの外周よりも若干広く、すなわち、非水電解質電池50−1および50−2が装着された状態で電池本体50−1Aおよび50−2Aを囲うように形成される。リブ部113は、外周壁112の内側の側面に外周壁112の厚み方向の中央部分から内側に向かって伸びるように形成される。
【0157】
図11の構成例では、非水電解質電池50−1および50−2が、ブラケット110の正面側および背面側から外周壁112内に挿入され、両面に粘着性を有する両面テープ130−1および130−2により、ブラケット110のリブ部113の両面に貼着される。両面テープ130−1および130−2は、非水電解質電池50−1および50−2の外周端に沿った所定の幅の略ロ字形状をしており、ブラケット110のリブ部113は、両面テープ130−1および130−2が貼着する面積だけ設けられていればよい。
【0158】
このように、リブ部113は、非水電解質電池50−1および50−2の外周端に沿った所定の幅だけ、外周壁112の内側の側面から内側に向かって伸びるように形成されており、リブ部113よりも内側は、開口部となっている。従って、ブラケット110の正面側から両面テープ130−1によりリブ部113に貼着される非水電解質電池50−1と、ブラケット110の背面側から両面テープ130−2によりリブ部113に貼着される非水電解質電池50−2との間では、この開口部によって隙間が生じている。
【0159】
すなわち、ブラケット110の中央部分に開口部が形成されていることで、非水電解質電池50−1および50−2は、リブ部113の厚みと両面テープ130−1および130−2の厚みとを合計した寸法の隙間を有してブラケット110に装着される。例えば、非水電解質電池50−1および50−2には、充放電やガスの発生などにより多少の膨らみが生じることがあるが、この開口部により設けられる間隙が、非水電解質電池50−1および50−2の膨らみを逃がす空間となる。従って、非水電解質電池50−1および50−2が膨らんだ部分によってバッテリユニット100全体の厚みが増加するなどの影響を排除することができる。
【0160】
また、非水電解質電池50−1および50−2をリブ部113に接着する際に、接着面積が広い場合にはかなりの圧力が必要となるが、リブ部113の接着面を外周端に限定することにより、効率よく圧力をかけて、容易に接着することができる。これにより、製造時に非水電解質電池50−1および50−2にかかるストレスを軽減することができる。
【0161】
図11に示すように、1つのブラケット110に2つの非水電解質電池50−1および50−2を取り付けることにより、例えば、1つのブラケットに1つの非水電解質電池を取り付ける場合よりも、ブラケット110の厚みと空間を削減することができる。これにより、エネルギー密度を向上させることができる。
【0162】
また、バッテリユニット100の厚み方向の剛性を、2枚の非水電解質電池50−1および50−2を貼り合わせる相乗効果により得られるため、ブラケット110のリブ部113を薄肉化することができる。すなわち、例えば、リブ部113の厚みを1mm以下(樹脂成型の限界の厚み程度)にしても、非水電解質電池50−1および50−2をリブ部113の両側から貼り合わせることで、バッテリユニット100全体として十分な剛性を得ることができる。そして、リブ部113の厚みを薄くすることにより、バッテリユニット100の厚みが薄くなり容積が縮小することになる結果、バッテリユニット100のエネルギー密度を向上させることができる。
【0163】
また、バッテリユニット100は、外的なストレスに対する耐性を高めるため、非水電解質電池50−1および50−2の外周面(両側面および上下面)が、ブラケット110の外周壁112の内周面と接触しない構造とし、非水電解質電池50−1および50−2が有する広い面でリブ部113に貼り合わされる構造となっている。
【0164】
このような構成により、エネルギー密度が高く、かつ、外的なストレスに強いバッテリユニット100を実現することができる。
【0165】
[バッテリモジュール]
次に、図12〜図15を参照して、バッテリユニット100が組み合わされたバッテリモジュール200の構成例について説明する。バッテリモジュール200は、モジュールケース210、ゴムシート部220、電池部230、電池カバー240、固定シート部250、電気パーツ部260、およびボックスカバー270を備えて構成されている。
【0166】
モジュールケース210は、バッテリユニット100を収納して使用機器に搭載するためのケースであり、図12の構成例では、24個のバッテリユニット100が収納可能なサイズとされている。
【0167】
ゴムシート部220は、バッテリユニット100の底面に敷かれて、衝撃などを緩和するためのシートである。ゴムシート部220では、3個のバッテリユニット100ごとに1枚のゴムシートが設けられ、24個のバッテリユニット100に対応するために8枚のゴムシートが用意される。
【0168】
電池部230は、図12の構成例では、24個のバッテリユニット100が組み合わされて構成されている。また、電池部230では、3個のバッテリユニット100が並列に接続されて並列ブロック231を構成し、8個の並列ブロック231が直列に接続される接続構成となっている。
【0169】
電池カバー240は、電池部230を固定するためのカバーであり、非水電解質電池50のバスバー120に対応した開口部が設けられている。
【0170】
固定シート部250は、電池カバー240の上面に配置され、ボックスカバー270がモジュールケース210に固定されたときに、電池カバー240およびボックスカバー270に密着して固定するシートである。
【0171】
電気パーツ部260は、バッテリユニット100の充放電を制御する充放電制御回路などの電気的な部品を有する。充放電制御回路は、例えば、電池部230において2本の列をなすバスバー120の間の空間に配置される。
【0172】
ボックスカバー270は、モジュールケース210に各部が収納された後に、モジュールケース210を閉鎖するためのカバーである。
【0173】
ここで、バッテリモジュール200では、3個のバッテリユニット100が並列に接続された並列ブロック231が直列に接続されて電池部230が構成されており、この直列の接続が、電気パーツ部260が有する金属板材で行われる。従って、電池部230では、並列ブロック231ごとに端子の向きが交互になるように、すなわち、隣り合う並列ブロック231どうしでプラスの端子とマイナスの端子とが並ぶように、並列ブロック231がそれぞれ配置される。そこで、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が並ぶことを回避させるような工夫が必要である。
【0174】
例えば、図13に示すように、バッテリユニット100−1〜100−3により構成される並列ブロック231−1と、バッテリユニット100−4〜100−6により構成される並列ブロック231−2とでは、プラスの端子とマイナスの端子とが隣り合うような配置で、モジュールケース210に収納される。このような配置となるように規制するために、バッテリユニット100のブラケット110の下側の一方の角部分に形成されている面取り部111が利用される。
【0175】
例えば、図14および図15に示すように、並列ブロック231では、バッテリユニット100−1〜100−3は、それぞれの面取り部111−1〜111−3が同じ向きとなるように組み合わされており、面取り領域280を形成する。そして、モジュールケース210には、面取り領域280の傾斜に応じた傾斜部290が形成されており、傾斜部290は、非水電解質電池50の3個分の厚みに応じた長さで、交互に配置されている。
【0176】
このように、並列ブロック231の面取り領域280と、モジュールケース210の傾斜部290とにより、並列ブロック231を間違った向きでモジュールケース210に収納しようとした場合には、並列ブロック231の底側の角部がモジュールケース210の傾斜部290に当接することになる。この場合、並列ブロック231がモジュールケース210の底面から浮き上がった状態となるため、並列ブロック231がモジュールケース210に完全に収納されなくなる。これにより、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が隣り合って並ぶことが回避される。
【0177】
このようにしてこの発明の非水電解質電池を用いたバッテリユニットおよびバッテリモジュールが構成されている。なお、第5の実施の形態のバッテリユニットおよびバッテリモジュールは、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0178】
なお、この発明の非水電解質電池50および非水電解質電池50を組み合わせたバッテリモジュール200は、電動工具、電気自動車やハイブリッド電気自動車および電動アシスト自転車、ならびに住宅もしくはビル等に用いる蓄電システム等に用いることができる。
【実施例】
【0179】
以下、実施例によりこの発明をより詳細に説明する。なお、この発明は実施例の構成に限られたものではない。
【0180】
<実施例1>
厚み16μm、透気度0.3sec./100mlのポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を基材として用いた。この基材の両面に、アルミナ(Al23)粒子を含む微細孔性樹脂膜からなる無機粒子層を形成した。無機粒子層は、下記のようにして形成した。
【0181】
平均粒径0.6μmのアルミナ粒子10質量部と、重量平均分子量が約100万のポリフッ化ビニリデン(PVdF)1質量部と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)33質量部とを混合したスラリーを、上述の基材の一方の面に厚さ8μmで塗布した。この後、スラリーを塗布した基材を水浴に15分間浸漬してポリフッ化ビニリデンを相分離させた後、熱風にて乾燥させた。続いて、基材のもう一方の面にも同様にスラリーを厚さ8μmで塗布し、水浴に浸漬してポリフッ化ビニリデンを相分離させ、熱風にて乾燥させた。これにより、総厚が32μmのカレンダー処理前セパレータを作製した。
【0182】
なお、作製したカレンダー処理前セパレータを倍率500倍で光顕観察したところ、視野内には全く穴が見られなかった。
【0183】
次に、作製したカレンダー処理前セパレータを、鏡面金属ロールを備えた加圧装置によって、線圧20kgf/cmでカレンダー処理を行い、実施例1のセパレータを作製した。
【0184】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ、22μmであった。また、カレンダー処理後のセパレータの透気度は960sec./100mlであった。処理後の目視外観は、やや光沢を帯びて見えるが、傷やシワは生じなかった。さらに、MD方向に2cm間隔で20ポイントの厚みを測定し、カレンダー処理後のセパレータ厚みの変動量を標準偏差により算出した。そして、セパレータ厚みの変動量(標準偏差)を用い、セパレータ厚みに対するカレンダー処理後のセパレータ厚みの変動量(標準偏差)の割合をセパレータ厚み変動率として算出したところ、1.7%であった。
【0185】
なお、後述するように、基材に用いた厚み16μm、透気度0.3sec./100mlのPET不織布を同条件でカレンダー処理すると、2μm程度の厚み減少が見られた。このため、カレンダー処理による無機粒子層の厚み減少分は、(カレンダー処理前総厚32μm)−(カレンダー処理後総厚22μm)−(カレンダー処理後基材厚み減少分2μm)から、8μmであったと推定される。両面均等に圧縮されたと考えると、カレンダー処理による無機粒子層片面の厚み減少は4μmであり、カレンダー処理前と比較して無機粒子層の厚みが半減したことが分かった。
【0186】
これは、膜密度の観点からは、塗布膜の体積密度が倍増したことを意味する。すなわち、無機粒子層の緻密さが倍増したことと等価と考えてよい。カレンダー処理後のセパレータの透気度は960sec./100mlまで増加したことにより、これが裏付けられた。
【0187】
<実施例2>
カレンダー処理時の条件を線圧80kgf/cmとした以外は実施例1と同様にして基材の両面に無機粒子層が形成されたセパレータを作製した。
【0188】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ、20μmであった。また、カレンダー処理後のセパレータの透気度は1100sec./100mlであった。さらに、カレンダー処理後のセパレータ厚みの変動を標準偏差により算出し、カレンダー処理後のセパレータ厚みの変動率を算出したところ、1.4%であった。
【0189】
<比較例1>
カレンダー処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして基材の両面に無機粒子層が形成されたセパレータを作製した。
【0190】
セパレータの総厚を測定したところ、32μmであった。また、セパレータの透気度は570sec./100mlであった。さらに、セパレータ厚みの変動を標準偏差により算出し、カレンダー処理を行っていないセパレータの厚みの変動率を算出したところ2.6%であり、測定点毎の厚み変動率が大きかった。
【0191】
<比較例2>
スラリー形成時にアルミナ粒子を添加せず、重量平均分子量が約100万のポリフッ化ビニリデン(PVdF)1質量部と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)33質量部とを混合したスラリーを基材の片面あたり1μmずつ塗布し、総厚が18μmのカレンダー処理前セパレータを作製した。これ以外は実施例1と同様にして基材の両面にアルミナ粒子を含まないPVdF層が形成されたセパレータを作製した。
【0192】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ、15μmであった。また、セパレータの透気度は1500sec./100mlであった。さらに、セパレータ厚みの変動を標準偏差により算出したところ、2.6%であり、測定点毎の厚み変動率が大きかった。
【0193】
ポリフッ化ビニリデンのみの表面層の場合、アルミナ粒子を含む無機粒子層と比較して圧縮されやすいため、透気度が上がった。また、樹脂のみの層では、不織布基材の表面形状をトレースし易いことから、厚み変動率も大きくなった。
【0194】
<比較例3>
基材両面ともに無機粒子層を形成しなかった以外は実施例1と同様にしてカレンダー処理されたPET不織布からなるセパレータを作製した。
【0195】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ14μmであった。また、カレンダー処理後のセパレータの透気度は12sec./100mlであり、空孔が押しつぶされて閉孔したことにより若干透気度の低下が生じていた。なお、この透気度の低下は、実用的観点からは無視できる程度のレベルである。さらに、カレンダー処理後のセパレータ厚みの変動を標準偏差により算出したところ、4.9%であり、測定点毎の厚み変動が大きかった。また、比較例1との比較から、PET不織布からなる基材に無機粒子層を設けただけの場合には、無機粒子層がPET不織布の膜厚に追随してしまうため、膜厚の均一化は困難であり、またカレンダー処理を行わない場合は、さらに膜厚が均一でなくなっていた。
【0196】
<比較例4>
厚さ16μm、透気度310sec./100mlのポリエチレン(PE)微多孔膜に対して、実施例1と同様の条件でカレンダー処理を行い、比較例4のセパレータを作製した。ポリエチレン(PE)微多孔膜の空孔は、ポリエチレンフィルムを延伸することにより形成した。
【0197】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ、11μmであった。また、カレンダー処理後のセパレータの透気度は4500sec./100mlであった。セパレータの目視外観は、カレンダー処理前のPE微多孔膜が白色不透明であったのに対し、カレンダー処理後の比較例3のセパレータは透明になった。透気度が大幅に増加したことから、比較例3のセパレータはカレンダー処理により空孔が閉塞したものと考えられる。
【0198】
<比較例5>
不織布の代わりに基材として比較例4で用いたポリエチレン(PE)微多孔膜を用い、スラリーを基材の片面あたり3μmずつ塗布して総厚が22μmのカレンダー処理前セパレータを作製した以外は実施例1と同様にして基材の両面に無機粒子層が形成されたセパレータを作製した。
【0199】
カレンダー処理後のセパレータの総厚を測定したところ、17μmであった。また、カレンダー処理後のセパレータの透気度は4100sec./100mlであった。無機粒子層を形成しても、カレンダー処理によってポリエチレン微多孔膜基材が潰れ、比較例4と同様に、空孔が潰れて閉塞したものと考えられる。
【0200】
[セパレータの評価]
上述の様にして作製した各セパレータを、下記の各試験により評価する。
【0201】
(a)耐熱性試験
各実施例および比較例のセパレータについて、MD(Machine Direction)方向およびTD(Transverse Direction)方向の熱収縮率を測定した。収縮率の測定は、所定の寸法に切り出したサンプルを150℃に調節した恒温槽で1時間保持した。この後、試料を取り出して室温に放冷してから試料の長さを測定した。試料の大きさは、MD方向およびTD方向のそれぞれについて測定した。
【0202】
次に、下記の式より、MD方向およびTD方向のそれぞれについて、収縮率を算出した。
収縮率[%]=[{高温保存前長さ−高温保存後長さ}/高温保存前長さ]×100
【0203】
(b)引張試験
各実施例および比較例のセパレータについて、引張強度と破断伸びを測定した。引っ張り強度[N/m]は、試験部が4mm幅のダンベル型に切り出したサンプルを用いた。このサンプルを、JIS規格における規格番号JIS B7721に準拠する引張試験機(島津製作所製、オートグラフTCE−N300)にてクランプ長30mmでクランプし引張強度を測定した。また、破断伸びの測定は、JIS規格における規格番号JIS K7113に準拠した方法により確認した。破断伸びは、引張試験におけるサンプルの破断時の伸びを下記の式から算出した。
破断伸び[%]=(サンプルの破断時の長さL−サンプルの初期長さL0)/サンプルの初期長さL0×100
【0204】
(c)突刺強度試験
各実施例および比較例のセパレータを固定し、セパレータの表面に直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半球状の針を、毎分100mmの速度で突き刺し、針が貫通する際の荷重を測定した。
【0205】
なお、比較例4および比較例5は、上述の通り空孔が閉塞したものと考えられセパレータとしての実用価値に乏しいと考えられるため、上述の各試験を行わなかった。
【0206】
表1に、評価結果を示す。
【0207】
【表1】

【0208】
表1から分かるように、セパレータに無機粒子層を設けなかった比較例2および比較例3は、MD方向の収縮率がそれぞれ−1.0%、−1.4%と高温保存後にサンプルが収縮してサイズが小さくなった。これに対して、セパレータに無機粒子層を設けた実施例1、実施例2および比較例1では、カレンダー処理を行った実施例1、実施例2およびカレンダー処理を行わなかった比較例1の双方ともMD方向、TD方向ともに収縮率は測定限界以下(0)であり、カレンダー処理によって、耐熱性に悪い影響を与えることはなかった。
【0209】
引張強度については、無機物層を形成したが、カレンダー処理を行わなかった比較例1、アルミナ粒子を添加せずに、樹脂のみの層を形成後、カレンダー処理を行った比較例2、無機物層を設けなかった比較例3に比べて、基材および無機粒子層の積層構造とし、さらにカレンダー処理を行った各実施例は、MD方向およびTD方向のそれぞれについて、高い強度を示した。
【0210】
破断伸び、突き刺し強度についても、引張り強度と同様に、各比較例に比べて、実施例の方が大きな値を示した。
【0211】
以上、この発明を若干の実施形態および実施例によって説明したが、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、微多孔膜を電池用セパレータとして用いる場合、微多孔膜の厚みおよび各材料の組成は、正極および負極の構成に合わせて設定すればよい。
【0212】
また、第2の実施の形態において説明した電池は一例であり、この発明の積層型微多孔膜は、円筒型、角型、積層型、コイン型等の種々の電池に用いることができる。
【符号の説明】
【0213】
1・・・積層型微多孔膜
2・・・基材層
3・・・耐熱層
10・・・巻回電極体
11・・・正極
11A・・・正極集電体
11B・・・正極活物質層
11a・・・電極表面部
11b・・・電極内部
12・・・負極
12A・・・負極集電体
12B・・・負極活物質層
13・・・セパレータ
14・・・非水電解質(層)
15・・・正極端子
16・・・負極端子
17・・・密着フィルム
18・・・保護テープ
19・・・外装部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下である
積層型微多孔膜。
【請求項2】
透気度が100sec./100ml以上1200sec./100ml以下である
請求項1に記載の積層型微多孔膜。
【請求項3】
上記樹脂材料が、ポリフッ化ビニリデンを含む
請求項2に記載の積層型微多孔膜。
【請求項4】
上記樹脂材料が3次元網目構造を有する
請求項3に記載の積層型微多孔膜。
【請求項5】
上記表面層における上記無機粒子と上記樹脂材料との質量比が5:1〜12:1の範囲である
請求項2に記載の積層型微多孔膜。
【請求項6】
上記無機粒子が、アルミナ(Al23)、ルチル型構造を有するチタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)の少なくとも一種からなる
請求項5に記載の積層型微多孔膜。
【請求項7】
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
上記表面層の少なくとも一方の面から加圧処理を施されることにより形成された
積層型微多孔膜。
【請求項8】
上記加圧処理が、カレンダー処理である
請求項7に記載の積層型微多孔膜。
【請求項9】
上記カレンダー処理時における加圧力を、線圧20kgf/cm以上200kgf/cm以下とする
請求項8に記載の積層型微多孔膜。
【請求項10】
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下である
請求項7〜請求項9のいずれかに記載の積層型微多孔膜。
【請求項11】
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下である
電池用セパレータ。
【請求項12】
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
上記表面層の少なくとも一方の面から加圧処理を施されることにより形成された
電池用セパレータ。
【請求項13】
正極と、
負極と、
セパレータと、
非水電解質と
を備え、
上記セパレータが、
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下
である
非水電解質電池。
【請求項14】
上記セパレータの透気度が100sec./100ml以上1200sec./100ml以下である
請求項13に記載の非水電解質電池。
【請求項15】
正極と、
負極と、
セパレータと、
非水電解質と
を備え、
上記セパレータが、
不織布からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、樹脂材料と無機粒子とを含有する表面層と
を備え、
上記表面層の少なくとも一方の面から加圧処理を施されることにより形成された
非水電解質電池。
【請求項16】
上記加圧処理が、カレンダー処理である
請求項15に記載の非水電解質電池。
【請求項17】
上記カレンダー処理時における加圧力を、線圧20kgf/cm以上200kgf/cm以下とする
請求項16に記載の非水電解質電池。
【請求項18】
上記セパレータの標準偏差によって表される厚み変動率が2.5%以下である
請求項15請求項17いずれかに記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−124029(P2012−124029A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273873(P2010−273873)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】