説明

積層基材の加熱冷却方法およびカラーフィルターの製造方法

【課題】積層基材が反ることを抑制することができる積層基材の加熱冷却方法を提供する。
【解決手段】本発明による積層基材の加熱冷却方法においては、まず、第2基材12を内側にして積層基材2が巻芯29aに巻き取られ、巻取体29が形成される。続いて、巻取体29が加熱される。その後、加熱された巻取体29が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の第1基材と、第1基材に積層され、第1基材の熱収縮率より小さい熱収縮率を有する帯状の第2基材と、を有する積層基材の加熱冷却方法およびこの方法を含むカラーフィルターの製造方法に係り、とりわけ、積層基材が反ることを抑制することができる積層基材の加熱冷却方法およびカラーフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや電子ペーパー等に使用されるカラーフィルターの基板としては、一般的に、枚葉状のガラス板が用いられており、このガラス板に、複数色の画素がパターン状に形成されて、カラーフィルターが作製されている。
【0003】
ところで、最近のガラス製造技術の進歩により、厚さが100μm程度の超薄ガラスが製造されるようになっている。このような超薄ガラスは、可撓性を有しており、ロール状に巻き付け可能になっている。この超薄ガラスをカラーフィルターの基板に用いる場合には、超薄ガラスが巻き付けられたロールから超薄ガラスを繰り出して連続的にカラーフィルターを製造することができ、枚葉状のガラス板を用いる場合に比べて、生産効率を向上させることができる。しかしながら、超薄ガラスはその厚さが薄いことから、耐衝撃性が低下するという問題がある。
【0004】
このような問題の対策として、超薄ガラスを保護するために、超薄ガラスにプラスチックフィルムを積層した積層基材が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228166号公報
【特許文献2】特開2008−273211号公報
【特許文献3】特開2008−218419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フォトリソグラフィー法により超薄ガラスにカラーフィルター用の複数色の画素を形成する場合、溶剤や水分の除去と熱架橋の促進とを目的として、画素が形成された積層基材を、例えば200℃以上の温度で加熱処理(ポストベーク)して冷却することが一般的に行われている。この場合、積層基材を構成するプラスチックフィルムは、そのガラス転移点以上の温度で加熱されて、その後冷却されるが、冷却時にプラスチックフィルムが収縮する。一方、超薄ガラスはその厚さが小さいため、プラスチックフィルムの収縮力に対抗可能な剛性を有していない。このため、画素が形成された積層基材(パターン形成体)が、プラスチックフィルムの収縮力によって、全体として反るという問題があった。なお、この問題は、超薄ガラスとプラスチックフィルムとの積層基材に限られることはなく、例えば、互いに熱収縮率が異なる2つのプラスチックフィルムの積層基材、および、互いに熱収縮率が異なる2つの超薄ガラスの積層基材においても、起こり得る。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、積層基材が反ることを抑制することができる積層基材の加熱冷却方法およびカラーフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、帯状の第1基材と、前記第1基材に積層され、前記第1基材の熱収縮率より小さい熱収縮率を有する帯状の第2基材と、を有する積層基材の加熱冷却方法において、前記第2基材を内側にして前記積層基材を巻芯に巻き取り、巻取体を形成する工程と、前記巻取体を加熱する工程と、加熱された前記巻取体を冷却する工程と、を備えたことを特徴とする積層基材の加熱冷却方法を提供する。
【0009】
なお、上述した積層基材の加熱冷却方法において、前記第1基材はプラスチックにより形成されると共に、前記第2基材はガラスにより形成され、前記巻取体を加熱する工程において、前記巻取体を加熱する温度は、前記第1基材のガラス転移点より高く、かつ、前記第1基材の熱分解温度より低い、ことが好ましい。
【0010】
また、上述した積層基材の加熱冷却方法において、前記巻取体を冷却する工程において、前記巻取体を冷却する温度は、前記第1基材のガラス転移点以下である、ことが好ましい。
【0011】
また、上述した積層基材の加熱冷却方法において、前記第1基材および前記第2基材は、プラスチックにより形成され、前記巻取体を加熱する工程において、前記巻取体を加熱する温度は、前記第1基材のガラス転移点および前記第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点より高く、かつ、前記第1基材の融点および前記第2基材の融点のうち高い方の融点より低い、ことが好ましい。
【0012】
また、上述した積層基材の加熱冷却方法において、前記巻取体を冷却する工程において、前記巻取体を冷却する温度は、前記第1基材のガラス転移点および前記第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点以下である、ことが好ましい。
【0013】
本発明は、帯状の第1基材と、前記第1基材に積層され、前記第1基材の熱収縮率より小さい熱収縮率を有する帯状の第2基材と、を有する積層基材を準備する工程と、前記積層基材の前記第2基材上に、カラーフィルター用の画素を構成するようにパターニングされた画素用樹脂層を形成する工程と、上述したいずれかの積層基材の加熱冷却方法により、前記画素用樹脂層が形成された前記積層基材を加熱および冷却する工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルターの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱収縮率が小さい第2基材を内側にし、熱収縮率が大きい第1基材を外側にして積層基材が巻芯に巻き取られて巻取体が形成され、この巻取体が加熱されて冷却される。このうち加熱によって、外側に巻き付けられたことにより生じていた第1基材内の応力を除去することができ、冷却によって、第1基材に、第2基材より大きな収縮応力を発生させることができる。このため、積層基材を冷却後に巻取体から繰り出した際、巻き取りによって巻芯側に凹状となるように変形していた第2基材を、第1基材に発生した収縮応力によって平坦にすることができる。この結果、積層基材が反ることを抑制することができる。
【0015】
また、本発明によれば、第2基材上に、カラーフィルター用の画素を構成するようにパターニングされた画素用樹脂層が形成されたカラーフィルターが反ることを抑制することができる。このことにより、カラーフィルターの表示画像の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態において、カラーフィルターの断面構成の一例を示す図。
【図2】図2は、本発明の実施の形態において、パターン形成体の断面構成を示す図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、パターン形成体の製造装置およびその製造方法を示す図。
【図4】図4は、本発明の実施の形態において、巻取体の断面構成を示す図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態において、パターン形成体の製造方法のフローチャートを示す図。
【図6】図6は、本発明の実施例において、パターン形成体の反り量の測定方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
まず、図1により本実施の形態による積層基材の加熱冷却方法を含むカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルター1の断面構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態におけるカラーフィルターの製造方法により得られるカラーフィルター1は、後述する積層基材2と、この積層基材2上に形成され、所定の形状、例えばマトリックス形状にパターニングされたブラックマトリックス3と、を備えている。このうち、ブラックマトリックス3は、所定の感光性材料によってパターニングされた感光性材料層3aにより構成されている。
【0020】
通常、ガラスフィルム12上のブラックマトリックス3の各開口部内に、複数色の画素が形成されている。すなわち、ブラックマトリックス3の各開口部内に、赤色(R)画素用感光性材料、緑色(G)画素用感光性材料、および青色(B)画素用感光性材料により、赤色画素4、緑色画素5、および青色画素6が形成されている。各画素4、5、6の配列は、図示しないが、ストライプ配列、デルタ配列(トライアングル配列)、正方配列(四画素配列)等の公知の配列とすることができる。このように異なる色を有した三つの隣り合う画素によって、画面上における一つの表示画素が形成されるようになっている。更に、黄色画素(図示せず)等を追加して4色以上の画素が形成されるようにしても良い。
【0021】
また、図1に示すように、これらの画素4、5、6は、保護層7で覆われている。この保護層7上に、インジウム錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))からなる透明電極膜8が形成されている。
【0022】
このようなカラーフィルター1は、例えば、各画素4、5、6に対応して配列されたTFT等のスイッチング素子と液晶層とを含む液晶素子、および面光源と組み合わされて、液晶ディスプレイ(LCD)、または電子ペーパー等に用いられる。この構成において、液晶はスイッチング素子によって制御されてシャッターとして機能し、面光源からの光を所望の色の画素のみを介して出射させる。このようにして、画面上にカラー映像が表示されるにようになっている。
【0023】
続いて、図2を用いて、パターン形成体1aについて説明する。ここで、パターン形成体1aは、本実施の形態による積層基材の加熱冷却方法を用いて、ガラスフィルム12上にパターニングされた樹脂層が形成された積層基材2を加熱冷却して得られるものである。パターン形成体1aは、積層基材2と、積層基材2上に形成され、パターニングされた感光性材料層(樹脂層)3aと、を有している。このうち積層基材2は、プラスチックフィルム(第1基材)11と、プラスチックフィルム11に積層されると共に、プラスチックフィルム11の熱収縮率より小さい熱収縮率を有するガラスフィルム(第2基材)12と、を有しており、ガラスフィルム12上に、パターニングされた感光性材料層3aが形成されている。プラスチックフィルム11とガラスフィルム12との間には、粘着層13が介在されており、この粘着層13によってプラスチックフィルム11とガラスフィルム12とが貼り合わされている。
【0024】
次に、カラーフィルター1の各構成部材の材料について説明する。
【0025】
プラスチックフィルム11に用いる材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)が、量産品で低コストのため好ましい。また、プラスチックフィルム11の厚さは、10〜200μmであることが好ましい。このことにより、後述するパターン形成体の製造装置20(図3参照)の第1供給部21に巻き付けることができると共に、巻取部28において、巻芯29aにガラスフィルム12と共に巻き付けることができ、ガラスフィルム12の補強に必要な強度を確保することができる。
【0026】
ガラスフィルム12の厚さは、20〜300μmである超薄ガラスであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム12に可撓性を持たせることができ、パターン形成体の製造装置20の第2供給部22に巻き付けることができると共に、巻取部28において、巻芯29aにプラスチックフィルム11と共に巻き付けることができる。
【0027】
感光性材料層3aを形成する感光性材料としては、遮光性を有する黒色の顔料と溶剤と接合性樹脂(バインダー)とを含む顔料分散型の感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。また、各色の画素用感光性材料としては、同様にして、各色の顔料を分散させた感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0028】
次に、図3を用いて、フォトリソグラフィー法を用いた本実施の形態におけるパターン形成体1aを製造するためのパターン形成体の製造装置20について説明する。
【0029】
図3に示すように、パターン形成体の製造装置20は、帯状の連続したプラスチックフィルム11が巻き付けられた第1供給部21と、帯状の連続したガラスフィルム12が巻き付けられた第2供給部22と、を有している。このうち、第1供給部21に巻き付けられたプラスチックフィルム11上には、粘着層13(図2参照)が設けられ、粘着層13上に離型紙(図示せず)が剥離自在に貼り付けられている。
【0030】
第1供給部21および第2供給部22の進行方向下流側に、第1供給部21から繰り出されて離型紙が剥離されたプラスチックフィルム11と、第2供給部22から繰り出されたガラスフィルム12とを積層して貼り合せるラミネーター23が設けられている。このラミネーター23において、プラスチックフィルム11上の粘着層13を介してプラスチックフィルム11とガラスフィルム12とが貼り合わされて積層基材2が形成されるようになっている。
【0031】
ラミネーター23の下流側に、積層基材2のガラスフィルム12上に感光性材料を膜状に塗布する塗工部24が設けられている。この塗工部24は、マイクログラビア、グラビアコータ、ダイコータ等の塗工方式によりガラスフィルム12上に感光性材料を塗布して、感光性材料層3aを形成するようになっている。
【0032】
塗工部24の下流側に、感光性材料層3aの乾燥を行うプリベーク処理部25が設けられている。このプリベーク処理部25は、感光性材料層3aを、使用するプラスチックフィルム11の材料に応じて、約50〜120℃の温度で、約1〜5分間、乾燥するようになっている。例えば、プラスチックフィルム11がポリエチレンテレフタレートにより形成されている場合には、50℃の温度で、3分間、乾燥することが好適である。
【0033】
プリベーク処理部25の下流側に、感光性材料層3aを所定のパターンで露光する露光処理部26が設けられている。ここでは、所定形状のブラックマトリックス3とアライメントマーク(図示せず)を形成するためのフォトマスク26aを用いて露光を行うようになっている。
【0034】
露光処理部26の下流側に、露光された感光性材料層3aを現像し、パターニングする現像処理部27が設けられている。この現像処理部27は、現像液として、例えば水酸化カリウム(KOH)の0.05〜10%溶液を用いて、感光性材料層3aを現像する。このようにして、感光性材料層3aが、例えばマトリックス状にパターニングされて、パターン形成体1aが得られる。
【0035】
現像処理部27の下流側に、感光性材料層3aがパターニングされた積層基材2、すなわちパターン形成体1aを円筒状の巻芯29aに巻き取り、巻取体29を形成する巻取部28が設けられている。この巻取部28においては、図4に示すように、プラスチックフィルム11を外側に、ガラスフィルム12を内側にして、パターン形成体1aが巻き取られるようになっている。巻芯29aは、金属製であって、加熱による変形を防止するように構成されていることが好ましい。また、巻芯29aの直径は、5〜20cmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム12を変形または破損させることなく巻芯29aに巻き付けることができると共に、冷却後に巻取体29から繰り出したパターン形成体1aが反ることを防止可能なように、パターン形成体1aに曲げ半径を持たせることができる。なお、図4においては、図面を簡略化するために、巻芯29aに1重のパターン形成体1aが巻き取られた形態を示しているが、多重に巻き取られても良い。また、各供給部21、22と巻取部28との間には、積層基材2を案内する複数の案内ロール30が適所に設けられている。
【0036】
パターン形成体の製造装置20は、巻取部28により形成された巻取体29を加熱(ポストベーク)する加熱オーブン31を更に有している。この加熱オーブン31において、ガラスフィルム12上に形成された感光性材料層3aが加熱されて熱架橋される。巻取体29を加熱する温度は、プラスチックフィルム11のガラス転移点より高く、かつ、プラスチックフィルム11の熱分解温度より低いことが好ましい。プラスチックフィルム11のガラス転移点以下の温度で加熱する場合、その後の冷却時にプラスチックフィルム11が収縮することによる反りの問題はそもそも生じにくいためである。また、プラスチックフィルム11の熱分解温度以上の温度で加熱する場合、その後に冷却しても元の分子構造に戻らないためである。すなわち、分子間の結合が切れて低分子が揮発し、冷却時に元の分子構造と異なる分子構造となってしまうからである。分子構造が変化してしまう現象の具体例としては、黄変やヘーズの発生などの光学特性の変化や、脆くなるなどの機械的強度の低下が挙げられる。
【0037】
例えば、プラスチックフィルム11がポリエチレンテレフタレートにより形成される場合、プラスチックフィルム11のガラス転移点は70℃で熱分解温度が400℃となる。このことから、巻取体29を加熱する温度は、少なくとも70℃以上400℃以下であることが好ましく、とりわけ200℃以上であることが好ましい。一例として、210℃の温度で約30分間、巻取体29を加熱することが好適である。このことにより、ポストベーク時に、感光性材料層3aを熱架橋させると共に、プラスチックフィルム11内の応力を除去することができる。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態による積層基材の加熱冷却方法を含むパターン形成体の製造方法およびカラーフィルターの製造方法について、図3および図5を用いて説明する。
【0039】
まず、帯状のプラスチックフィルム11と、プラスチックフィルム11に積層された帯状のガラスフィルム12とを有する積層基材2を準備する(ステップS1)。
【0040】
この場合、まず、帯状の連続したプラスチックフィルム11が巻き付けられた第1供給部21を準備すると共に、帯状の連続したガラスフィルム12が巻き付けられた第2供給部22を準備する。このうち、第1供給部21には、粘着層13(図2参照)と離型紙が設けられたプラスチックフィルム11が巻き付けられる。続いて、第1供給部21からプラスチックフィルム11が繰り出され、粘着層13から離型紙が剥離される。また、第2供給部22からガラスフィルム12が繰り出される。その後、ラミネーター23において、プラスチックフィルム11とガラスフィルム12とが積層されて、積層基材2が形成される。この場合、プラスチックフィルム11上の粘着層13を介してプラスチックフィルム11とガラスフィルム12とが貼り合わされる。
【0041】
次に、積層基材2のガラスフィルム12上にパターニングされた感光性材料層3aが形成される(ステップS2)。
【0042】
この場合、まず、ガラスフィルム12上に、塗工部24により感光性材料が膜状に塗布され、膜状の感光性材料層3aが形成される(ステップS2a)。続いて、感光性材料層3aが、プリベーク処理部25により乾燥(プリベーク)される(ステップS2b)。プラスチックフィルム11にポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、感光性材料層3aは、例えば、50℃の温度で、約3分間、乾燥される。このことにより、感光性材料層3aに含まれる溶剤が蒸発し、感光性材料層3aのガラスフィルム12への密着性を向上させることができる。次に、露光処理部26において、感光性材料層3aは、所定のパターンで露光される(ステップS2c)。この場合、所定形状のブラックマトリックス3とアライメントマークを形成するためのフォトマスク26aを用いて露光が行われる。露光された感光性材料層3aは、現像処理部27において現像される(ステップS2d)。このことにより、感光性材料層3aが、マトリックス形状にパターニングされて、ガラスフィルム12上にパターニングされた感光性材料層3a(ブラックマトリックス3)が形成され、パターン形成体1aが得られる。
【0043】
続いて、パターン形成体1aが巻芯29aに巻き取られ、巻取体29が形成される(ステップS3)。この場合、図4に示すように、巻取部28において、プラスチックフィルム11を外側にし、ガラスフィルム12を内側にしてパターン形成体1aが巻芯29aに巻き取られる。
【0044】
その後、巻取体29がポストベークされる(ステップS4)。この場合、巻取体29が加熱オーブン31に投入され、プラスチックフィルム11にポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、例えば、210℃の温度で、約30分間、ポストベークされる。このことにより、感光性材料層3aを熱架橋させることができる。
【0045】
続いて、ポストベークされた巻取体29が冷却される(ステップS5)。この場合、ポストベークされた巻取体29が、加熱オーブン31から取り出されて、冷却される。巻取体29を冷却する温度は、プラスチックフィルム11のガラス転移点以下であることが好ましい。例えば、巻取体29は、大気中で冷却されることが好適である。この場合、冷却設備などを用いることなく、簡易に巻取体29を冷却することができる。
【0046】
その後、ガラスフィルム12上に、複数色の画素を構成するようにパターニングされた複数色の画素用感光性材料層(画素用樹脂層)4a、5a、6aが形成される。すなわち、上述したステップS2〜5を繰り返すことにより、ガラスフィルム12上に、赤色画素用感光性材料、緑色画素用感光性材料、および青色画素用感光性材料がそれぞれ塗布されて、ガラスフィルム12上のブラックマトリックス3の各開口部内に、赤色画素4、緑色画素5、および青色画素6がそれぞれ形成される。この場合、ステップS2aにおいては、各色の顔料を含む赤色画素用感光性材料、緑色画素用感光性材料、および青色画素用感光性材料がガラスフィルム12上に塗布され、また、ステップS2cにおいては、各画素4、5、6の配列に対応するフォトマスク26aを用いて露光が行われる。このことにより、複数の赤色画素4を構成するようにパターニングされた赤色画素用感光性材料層4a、複数の緑色画素5を構成するようにパターニングされた緑色画素用感光性材料層5a、および複数の青色画素6を構成するようにパターニングされた青色画素用感光性材料層6aが、それぞれ形成される。その後、保護層7および透明電極膜8が形成されて、図1に示すカラーフィルター1が得られる。
【0047】
このように本実施の形態によれば、積層基材2のガラスフィルム12上にパターニングされた感光性材料層3aが形成された後、熱収縮率が小さいガラスフィルム12を内側にし、熱収縮率が大きいプラスチックフィルム11を外側にして積層基材2が巻芯29aに巻き取られて巻取体29が形成され、この巻取体29が加熱されて冷却される。このうち加熱によって、外側に巻き付けられたことにより生じていたプラスチックフィルム11内の応力を除去することができ、冷却によって、プラスチックフィルム11に、ガラスフィルム12より大きな収縮応力を発生させることができる。このため、パターニングされた感光性材料層3aが形成された積層基材2、すなわちパターン形成体1aを、冷却後に巻取体29から繰り出した際、巻き取りによって巻芯29a側に凹状となるように変形していたガラスフィルム12を、プラスチックフィルム11に発生した収縮応力によって平坦にすることができる。この結果、パターン形成体1aが反ることを抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、ガラスフィルム12上に、複数色の画素4、5、6を構成するようにパターニングされた複数色の画素用感光性材料層4a、5a、6aが形成されたカラーフィルター1が反ることを抑制することができる。このことにより、カラーフィルター1の表示画像の精度を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明による実施の形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形も可能である。以下、代表的な変形例について説明する。
【0050】
ガラスフィルム12上にパターニングされた樹脂層を形成する方法として、フォトリソグラフィー法ではなく、インクジェット法を採用することもできる。この場合、ラミネーター23の下流側に、ガラスフィルム12上にインクを塗布するインクジェット印刷部(図示せず)を設けて、ガラスフィルム12上にパターン状にインクを塗布してパターニングされたインク層(樹脂層)を形成するようにしてもよい。ここで、インクに用いる材料としては、顔料または染料を含み、インクジェット法に適したインクを用いることが好ましい。あるいは、パターニングされた樹脂層を形成する他の方法として、転写法を採用することもできる。すなわち、ガラスフィルム12上に、パターニングされた樹脂層(図示せず)が転写されるようにしても良い。
【0051】
また、ガラスフィルム12上にブラックマトリックス3を形成することなく、赤色画素用感光性材料、緑色画素用感光性材料、および青色画素用感光性材料を塗布して、複数の赤色画素を構成するようにパターニングされた赤色画素用感光性材料層4a、複数の緑色画素を構成するようにパターニングされた緑色画素用感光性材料層5a、および複数の青色画素を構成するようにパターニングされた青色画素用感光性材料層6aを形成して、カラーフィルター1を得るようにしても良い。この場合においても、カラーフィルター1が反ることを抑制することができ、カラーフィルター1の表示画像の精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態においては、カラーフィルター1の各色の画素として、赤色画素4、緑色画素5、および青色画素6を形成する例について説明した。しかしながらこのことに限られることはなく、カラーフィルター1の各色の画素として、イエロー(Y)画素、マゼンタ(M)画素、シアン(C)画素を形成しても良い。すなわち、ガラスフィルム12上に、イエロー画素用感光性材料、マゼンタ画素用感光性材料、およびシアン画素用感光性材料を塗布して、複数のイエロー画素を構成するようにパターニングされたイエロー画素用感光性材料層、複数のマゼンタ画素を構成するようにパターニングされたマゼンタ画素用感光性材料層、および複数のシアン画素を構成するようにパターニングされたシアン画素用感光性材料層を形成して、カラーフィルター1を得るようにしても良い。
【0053】
また、本実施の形態においては、積層基材2の第1基材がプラスチックフィルム11であって、第2基材がガラスフィルム12である例について説明した。しかしながらこのことに限られることはなく、第1基材および第2基材が、互いに熱収縮率が異なるプラスチックフィルムであってもよい。この場合、加熱オーブン31においてパターン形成体1aが巻き取られた巻取体29を加熱(ポストベーク)する温度は、第1基材のガラス転移点および第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点より高く、かつ、第1基材の融点および第2基材の融点のうち高い方の融点より低いことが好ましい。第1基材のガラス転移点および第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点以下の温度で加熱する場合、その後の冷却時にプラスチックフィルムが収縮することによる反りの問題はそもそも生じにくいためである。また、第1基材の融点および第2基材の融点のうち高い方の融点以上の温度で加熱する場合、支持する機能を有する基材(融点が高い方の基材)が溶けて、他方の基材を支持できなくなるためである。また、ポストベークされた巻取体29を冷却する温度は、第1基材のガラス転移点および第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点以下であることが好ましい。例えば、巻取体29は、上述した実施の形態と同様にして、大気中で冷却されることが好適である。なお、一例として、第1基材にはポリエチレンテレフタレートを、第2基材にはポリエチレンナフタレートを用いることができる。
【0054】
また、第1基材および第2基材は、互いに熱収縮率が異なるガラスフィルムであってもよい。この場合、加熱オーブン31において巻取体29を加熱する温度は、第1基材の歪点および第2基材の歪点のうち低い方の歪点より高く、かつ、第1基材の軟化点および第2基材の軟化点のうち高い方の軟化点より低いことが好ましい。第1基材の歪点および第2基材の歪点のうち低い方の歪点以下の温度で加熱する場合、その後の冷却時にガラスフィルムが収縮することによる反りの問題はそもそも生じにくいためである。また、第1基材の軟化点および第2基材の軟化点のうち高い方の軟化点以上の温度で加熱する場合、支持する機能を有する基材(軟化点が高い方の基材)が軟化して、他方の基材を支持できなくなるためである。また、ポストベークされた巻取体29を冷却する温度は、第1基材の歪点および第2基材の歪点のうち低い方の歪点以下であることが好ましい。例えば、巻取体29は、上述した実施の形態と同様にして、大気中で冷却されることが好適である。なお、一例として、第1基材にはソーダライムガラスを、第2基材には無アルカリガラスを用いることができる。
【0055】
また、本実施の形態においては、カラーフィルター1を製造することを目的として、ガラスフィルム12上に、パターニングされた樹脂層として、マトリックス状のブラックマトリックス3、並びに、パターニングされた赤色画素4、緑色画素5および青色画素6が形成される例について説明した。しかしながら、カラーフィルター1に限られることはなく、積層基材2のガラスフィルム12上に、任意の形状(ベタ状態を含む)にパターニングされた樹脂層を形成する場合、さらには、樹脂以外の材料によりパターニングされた層が形成される場合、例えば、TFTアレイ用のパターニングされた金属層が形成される場合にも本発明を適用することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態においては、パターニングされた樹脂層が形成された積層基材2が巻芯29aに巻き取られて加熱冷却される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、積層基材2にパターニングされた樹脂層が形成されていない積層基材2を巻芯29aに巻き取って加熱冷却する場合にも本発明を適用することができ、この場合においても、積層基材が反ることを抑制するという本発明の効果を得ることができる。
【実施例】
【0057】
本発明の実施の形態による積層基材の加熱冷却方法を用いて形成されたパターン形成体1aの反り量を測定した。
【0058】
プラスチックフィルム11として、厚さ50μm、幅270mm、長さ10mのPETフィルム(リンテック社製、フジクリア50)を準備した。なお、このPETフィルムフィルム上に粘着層13が設けられており、粘着層13上に離型紙が剥離自在に貼り付けられている。また、ガラスフィルム12として、厚さ100μm、幅270mm、長さ10mのガラスフィルム(日本電気硝子社製 OA−10G)を準備した。
【0059】
続いて、PETフィルム11の離型紙を剥離し、PETフィルム11とガラスフィルム12とを粘着層13を介してラミネーター23を用いて貼り合せ、積層基材2を作製した。
【0060】
次に、得られた積層基材2に、マイクログラビアを用いてガラスフィルム12上にネガ型樹脂であるBMフォトレジストを塗布し、50℃で3分間乾燥を行った。
【0061】
引き続いて、フォトマスク26aを用いて露光し、アルカリ現像を行い、マトリックス形状のブラックマトリックス3が形成されたパターン形成体1aを得た。
【0062】
このパターン形成体1aを、ガラスフィルム12を内側にし、PETフィルム11を外側にして、直径8.7cmの金属製の巻芯29aに巻き取り、巻取体29を形成した。
【0063】
巻取体29を加熱オーブン31に投入し、210℃、30分間加熱してポストベークを行った。
【0064】
その後、巻取体29を加熱オーブン31から取り出し、大気中で冷却し、ブラックマトリックス3が形成された積層基材2、すなわち、パターン形成体1aを巻芯29aから繰り出し、270mm間隔で切断した。
【0065】
切断されたパターン形成体1aを、図6に示すように、平板32に載せ、パターン形成体1aの反り量を測定した。反り量は、パターン形成体1aの中央部と、平板32の上面との距離xとし、定規を用いて測定した。本実施例により得られたパターン形成体1aでは、反り量は1mm以下であった。
【0066】
上記と同様の手順で、赤色画素4、緑色画素5、青色画素6を、この順で、塗布、乾燥、露光、現像、ポストベークおよび冷却して、パターニングされた各色の画素4、5、6を形成した。青色画素6の冷却を終了した後、パターン形成体1aを枚葉状に切断して反り量を測定したところ、反り量は1mm以下であった。
【0067】
(比較例)
比較例として、上述した実施例と同様にして、積層基材2のガラスフィルム12上にブラックマトリックス3を形成して巻取体29を形成した後、この巻取体29から連続的に積層基材2を繰り出して加熱オーブン31に搬送しながらポストベークを行って冷却し、再び巻き取った。その後、パターン形成体1aを再び繰り出して切断して、上述した実施例と同様にして反り量を測定した。その結果、反り量は27mmであった。このパターン形成体1aに、赤色画素4を構成する赤色画素用レジストの塗布を試みたが、反り量が大きいため、ガラスフィルム12上に均一に塗布することができず、また露光する際には、露光領域において、積層基材2とフォトマスクとの間隔を均一にすることができなかった。
【0068】
このことにより、現像後、パターン形成体1aを巻き取って巻取体29を形成し、巻取体29の形態として、ポストベークおよび冷却を行うことにより、得られるパターン形成体1aの反り量が抑制されることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
1 カラーフィルター
1a パターン形成体
2 積層基材
3 ブラックマトリックス
3a 感光性材料層
4 赤色画素
4a 赤色画素用感光性材料層
5 緑色画素
5a 緑色画素用感光性材料層
6 青色画素
6a 青色画素用感光性材料層
7 保護層
8 透明電極膜
11 プラスチックフィルム
12 ガラスフィルム
13 粘着層
20 パターン形成体の製造装置
21 第1供給部
22 第2供給部
23 ラミネーター
24 塗工部
25 プリベーク処理部
26 露光処理部
26a フォトマスク
27 現像処理部
28 巻取部
29 巻取体
29a 巻芯
30 案内ロール
31 加熱オーブン
32 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1基材と、前記第1基材に積層され、前記第1基材の熱収縮率より小さい熱収縮率を有する帯状の第2基材と、を有する積層基材の加熱冷却方法において、
前記第2基材を内側にして前記積層基材を巻芯に巻き取り、巻取体を形成する工程と、
前記巻取体を加熱する工程と、
加熱された前記巻取体を冷却する工程と、を備えたことを特徴とする積層基材の加熱冷却方法。
【請求項2】
前記第1基材はプラスチックにより形成されると共に、前記第2基材はガラスにより形成され、
前記巻取体を加熱する工程において、前記巻取体を加熱する温度は、前記第1基材のガラス転移点より高く、かつ、前記第1基材の熱分解温度より低いことを特徴とする請求項1に記載の積層基材の加熱冷却方法。
【請求項3】
前記巻取体を冷却する工程において、前記巻取体を冷却する温度は、前記第1基材のガラス転移点以下であることを特徴とする請求項2に記載の積層基材の加熱冷却方法。
【請求項4】
前記第1基材および前記第2基材は、プラスチックにより形成され、
前記巻取体を加熱する工程において、前記巻取体を加熱する温度は、前記第1基材のガラス転移点および前記第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点より高く、かつ、前記第1基材の融点および前記第2基材の融点のうち高い方の融点より低いことを特徴とする請求項1に記載の積層基材の加熱冷却方法。
【請求項5】
前記巻取体を冷却する工程において、前記巻取体を冷却する温度は、前記第1基材のガラス転移点および前記第2基材のガラス転移点のうち低い方のガラス転移点以下であることを特徴とする請求項4に記載の積層基材の加熱冷却方法。
【請求項6】
帯状の第1基材と、前記第1基材に積層され、前記第1基材の熱収縮率より小さい熱収縮率を有する帯状の第2基材と、を有する積層基材を準備する工程と、
前記積層基材の前記第2基材上に、カラーフィルター用の画素を構成するようにパターニングされた画素用樹脂層を形成する工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の積層基材の加熱冷却方法により、前記画素用樹脂層が形成された前記積層基材を加熱および冷却する工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−220887(P2012−220887A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89384(P2011−89384)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】