説明

積層対象物の繰出装置と積層対象物の繰出方法

【課題】広範囲な対象物の選択自由度を持ちながらも、積層対象物を表面から1枚ずつ繰り出す安定した分離繰り出し機能を確保することで、繰り出し速度の高速化を図ることができる積層対象物の繰出装置を提供すること。
【解決手段】紙収容トレー1に積層された積層紙Pを表面位置の紙から順に1枚ずつ分離して事務用機器9へ繰り出す積層対象物の繰出装置A1において、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、複数の電極28が絶縁層29で被覆された静電吸着ベルト6と、複数の電極28に接続され、電圧印加と印加電圧の遮断を行う静電吸着制御回路30と、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに静電吸着した繰り出し紙Paをベルト回転により繰り出す対象物繰出機構11と、ベルト保持面6aと積層紙Pの相対間隔を調整することで、吸着時にベルト保持面6aと積層紙Pを接近または接触させ、繰り出し時にベルト保持面6aと積層紙Pを離間させる静電吸着ベルト動作機構10と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸着力(=クーロン力)を利用して積層した積層紙等の対象物を1枚ずつ繰り出す積層対象物の繰出装置と積層対象物の繰出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層対象物の一例である積層紙幣を1枚ずつ繰り出す積層対象物の繰出装置としては、収納部から繰り出し口側に1枚の紙幣を送るピッカーローラと、1枚の紙幣を収納部から繰り出す繰出ローラと、この繰出ローラに対向配置された分離ローラと、前記収納部の積層紙幣の後端を受ける用に配置され、複数の傾斜面を有するガイドブロックと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ベルトに電極パターンを形成し、電圧を印加することによって紙を静電吸着する静電吸着ベルト(あるいは「静電保持ベルト」)が知られている(例えば、特許文献2や特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−26497号公報
【特許文献2】特開2002−46886号公報
【特許文献3】特開2005−319739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された積層対象物の繰出装置にあっては、ピッカーローラや繰出ローラや分離ローラとして樹脂ローラを用い、これらの樹脂ローラを紙幣面に接触した状態でローラを回転させ、樹脂ローラの接触圧を利用して紙幣を繰り出す構造になっている。つまり、接触ローラ方式により、積層した積層紙を1枚ずつ繰り出すものであるため、下記に列挙する課題を有する。
(1) 樹脂ローラからの接触圧は、2枚目以降の紙に伝わり、2枚以上の紙が同時に繰り出しされる場合もある。
(2) 両面または片面にコーティングが施されている紙では、接触する2枚の紙間の摩擦抵抗が高く、1枚目の紙を送り出す時、高い摩擦抵抗により、2枚目以降の紙を繰り出し方向に作用する力が発生し、複数枚の紙の同時繰り出しが発生する。
(3) 積層した積層紙は、紙間に帯電電荷がよく存在する。この電荷の存在で複数枚の紙が互いにくっつき合って、1枚目の紙を送り出す時、2枚目以降の紙を繰り出し方向に作用する力が発生し、複数枚の紙の同時繰り出しが発生する。
【0005】
したがって、接触ローラ方式では、同時繰り出しを最小限に抑える必要があるため、選択可能な対象物として、摩擦抵抗の低い紙等の特定対象物に限定されるばかりでなく、対象物として摩擦抵抗の低い紙等の特定対象物を選択しても、接触圧や帯電電荷等を原因とする複数枚の紙の同時繰り出しを確実に回避するには至らない。さらに、繰り出し速度を高く設定するほど、安定した分離繰り出し作用が損なわれてしまうため、繰り出し速度の高速化要求に応えることができない、という問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2,3に記載された静電吸着ベルトは、予め1枚ずつ分離させた紙やフィルム等の媒体を送る搬送経路に2つの固定ローラを設定し、この2つの固定ローラ間に掛け渡されているもので、媒体を強く静電吸着して搬送するという搬送機能を持つのみである。そして、樹脂ローラに代えて静電吸着ベルトを用いたとしても、静電吸着ベルトと積層対象物とは、互いに接触状態を保ったままとなる。このため、ベルト接触圧が積層対象物に作用する構造となるため、接触ローラ方式と同様に、複数枚の同時繰り出しが発生してしまう。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、広範囲な対象物の選択自由度を持ちながらも、積層対象物を表面から1枚ずつ繰り出す安定した分離繰り出し機能を確保することで、繰り出し速度の高速化を図ることができる積層対象物の繰出装置と積層対象物の繰出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、収容部材に積層された積層対象物を表面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置へ繰り出す積層対象物の繰出装置において、
駆動ローラと従動ローラに掛け渡され、複数の電極が絶縁層で被覆された静電吸着ベルトと、
前記複数の電極に接続され、電圧印加により対象物表面に表面分極を誘起し、印加電圧の遮断により表面分極の無い元状態に戻す静電吸着制御回路と、
前記静電吸着ベルトのベルト保持面に静電吸着した繰出対象物をベルト回転により繰り出す対象物繰出機構と、
前記ベルト保持面と積層対象物の相対間隔を調整することで、吸着時にベルト保持面と積層対象物を接近または接触させ、繰り出し時にベルト保持面と積層対象物を離間させる相対間隔調整機構と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明の積層対象物の繰出装置では、対象物の静電吸着時、相対間隔調整機構によってベルト保持面と積層対象物を相対的に接近または接触させることで、1枚の繰出対象物のみが表面分極によりベルト保持面に静電吸着される。そして、対象物の繰り出し時、相対間隔調整機構によって静電吸着状態のままでベルト保持面と積層対象物を相対的に離間させることで、1枚の繰出対象物が残りの積層対象物から分離されるし、さらに、1枚の繰出対象物と残りの積層対象物との剥離作用を維持したままで繰り出される。
すなわち、静電吸着ベルトを採用したことにより、表面分極を誘起するものであれば、導体〜半導体〜絶縁体というように、広範囲の対象物を静電吸着可能である。そして、ベルト保持面と積層対象物の相対間隔調整機構を採用している。このため、静電吸着時にベルト保持面と積層対象物を相対的に接近または接触させることで、表面分極により1枚の繰出対象物が確実にベルト保持面に静電吸着する作用を示す。さらに、繰り出し時に静電吸着した1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から離間させることで、同時繰り出しの原因となるベルト接触圧や帯電電荷等の影響が解消されることになり、安定した分離繰り出し作用を示す。
この結果、広範囲な対象物の選択自由度を持ちながらも、積層対象物を表面から1枚ずつ繰り出す安定した分離繰り出し機能を確保することで、繰り出し速度の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の積層対象物の繰出装置と積層対象物の繰り出し方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1を示す概略全体図である。以下、図1に基づき装置の概略構成を説明する。
【0012】
実施例1の積層対象物の繰出装置A1は、図1に示すように、紙収容トレー1(収容部材)と、ストッパプレート2と、紙載せ台3と、紙面概略位置検出センサー4と、紙載せ台上げ機構5と、静電吸着ベルト6と、駆動ローラ7と、従動ローラ8と、事務用機器9(対象物処理装置)と、を備えている。
【0013】
前記紙収容トレー1は、紙載せ台3に積層紙P(積層対象物)を収容している。紙収容トレー1の上部位置に設けられた非接触式の紙面概略位置検出センサー4により積層紙Pの上面概略位置を測定し、繰り出しで低くなった紙面を所定の概略位置に紙載せ台上げ機構5で上げる。
【0014】
前記ストッパプレート2は、紙収容トレー1のうち、積層紙Pの繰り出し端部の位置に設けられ、繰り出し紙Pa(繰出対象物)を繰り出すとき、残りの積層紙Pb(残りの積層対象物)の繰り出しを阻止する。
【0015】
前記静電吸着ベルト6は、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、積層紙Pの繰り出し側の端部領域に対向する位置にベルト保持面6aが配置されるように設定した積層紙Pの繰り出し手段である。この静電吸着ベルト6により、紙収容トレー1に積層された積層紙Pを表面位置の繰り出し紙Paから順に1枚ずつ分離し、積層紙の送出先である対象物処理装置の一例である事務用機器9へ繰り出す。
【0016】
前記事務用機器9は、積層紙Pから1枚ずつ分離して繰り出された繰り出し紙Paを受け取り、内部を搬送しながら各繰り出し紙Paに印刷等の処理を施すプリンターやスキャナーやコピー機等の機器である。
【0017】
図2は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルト動作機構・対象物繰出機構・可変ストッパ機構を示す斜視図である。以下、図2に基づき各機構の構成を説明する。
【0018】
実施例1の積層対象物の繰出装置A1は、図2に示すように、可動機構として、静電吸着ベルト動作機構10(相対間隔調整機構)と、対象物繰出機構11と、可変ストッパ機構12(ストッパ機構)と、を備えている。
【0019】
前記静電吸着ベルト動作機構10は、図2に示すように、リンク部材13と、回動軸14と、回動ギアプレート15と、モータギア16と、回動モータ17と、を有して構成されている。
【0020】
前記静電吸着ベルト動作機構10は、ベルト保持面6aと積層紙Pの相対間隔を調整する相対間隔調整機構であり、実施例1では、静電吸着ベルト動作機構10として、固定位置に設定した紙収容トレー1に対し、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを上下させる機構を採用している。
つまり、両ローラ7,8のローラ軸と平行で、かつ、繰り出し方向と反対側の位置に回動軸CLを設定し、両ローラ7,8の両端部を回転可能に支持する回動リンク部材13により、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを上下に揺動させる。そして、静電吸着ベルト動作機構10により、1枚の繰り出し紙Paをベルト保持面6aに静電吸着させた状態のままでの上方移動により、ベルト保持面6aを積層紙Pに対し傾斜状態で離間させることで、繰り出し方向に上向きの傾斜角度を持たせた1枚の繰り出し紙Paを残りの積層紙Pbから分離するようにしている。
【0021】
前記回動リンク部材13は、回動軸CLを中心として回転可能であると共に駆動ローラ7をローラ軸7aにより回転可能に両端支持する第1回動リンク13aと、駆動ローラ7のローラ軸7aを中心として回動可能であると共に従動ローラ8をローラ軸8aにより回転可能に両端支持する第2回動リンク13bと、第1回動リンク13aに部分円弧状に開口され、従動ローラ8のローラ軸8aを挿通するストッパ穴13c(角度制限構造)と、を有する。
【0022】
前記第1回動リンク13aは、その回動軸CLの位置に、装置枠18に回転可能に支持された回動軸14が設けられる。そして、一方の回動軸14に、回転モータ17のモータ軸に設けられたモータギア16と噛み合う回動ギアプレート15が設けられている。すなわち、回転モータ17の回転駆動方向に応じて第1回動リンク13aを上下に回動させる。
【0023】
前記第2回動リンク13bは、駆動ローラ7のローラ軸7aを中心としてストッパ穴13cにより制限される角度範囲内で回動可能である。
【0024】
前記ストッパ穴13cは、第1回動リンク13aと第2回動リンク13bがなすリンク角度を設定角度範囲内に制限する角度制限構造である。
【0025】
前記第1回動リンク13aのストッパ穴13cに臨む位置には、第1回動リンク13aと第2回動リンク13bがなすリンク角度の変化によりベルト保持面6aと積層紙Pの接触状況を検知する接触開始検知スイッチ19(接触状況検知手段)と接触終了検知スイッチ20(接触状況検知手段)が設けられている。
【0026】
前記接触開始検知スイッチ19は、ストッパ穴13cの下側位置に設けられ、従動ローラ8のローラ軸8aが、積層紙Pへの接触開始によりストッパ穴13cの下端位置から図2の上方に移動し始めるとき、ON信号からOFF信号に変化することで積層紙Pへの接触開始を検知する。
【0027】
前記接触終了検知スイッチ20は、ストッパ穴13cの上側位置に設けられ、従動ローラ8のローラ軸8aが、積層紙Pへの全面接触によりストッパ穴13cの上端位置に達するとき、OFF信号からON信号に変化することで積層紙Pへの接触終了を検知する。
【0028】
前記対象物繰出機構11は、図2に示すように、ローラ側プーリ21と、モータ側プーリ22と、ベルト23と、繰出駆動モータ24と、を有して構成されている。この対象物繰出機構11は、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに繰り出し紙Paを静電吸着したままで静電吸着ベルト6を回転させる機構である。
つまり、繰出駆動モータ24を一方向に回転駆動させることで、両プーリ21,22とベルト23を介して回転駆動力が駆動ローラ7に伝達され、静電吸着ベルト6を回転させる。
【0029】
前記可変ストッパ機構12は、図2に示すように、ストッパプレート2と、ラックギア25と、ピニオンギア26と、ストッパプレート駆動モータ27と、を有して構成されている。この可変ストッパ機構12は、紙収容トレー1のうち、積層紙Pの繰り出し端部の位置に設けられたストッパプレート2を、繰り出し紙Paを静電吸着するときに降下させることでストッパ機能を解除し、少なくとも繰り出し紙Paの繰り出し開始から繰り出し終了までは上昇させることで残りの積層紙Pbの繰り出しを阻止するストッパ機能を発揮する機構である。
つまり、ストッパプレート駆動モータ27の回転動作を、ラックギア25およびピニオンギア26を介してストッパプレート2の直線動作に変換し、ストッパプレート駆動モータ27を一方向に回転させることでストッパプレート2を下降させ、ストッパプレート駆動モータ27を反対方向に回転させることでストッパプレート2を上昇させる。
【0030】
図3は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトおよび静電吸着ベルト動作機構を示す平面図である。図4は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトを示す図3のA−A線による拡大縦断面図である。図5は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトを示す図4のB−B線による拡大横断面図である。以下、図3〜図5に基づき静電吸着ベルト6の構成を説明する。
【0031】
前記静電吸着ベルト6は、図3に示すように、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡されていて、図4及び図5に示すように、複数の電極28を絶縁層29で被覆することにより構成している。
【0032】
前記複数の電極28は、図4及び図5に示すように、プラス電極28aとマイナス電極28bが交互に配置されるように分極され、滑らかな波形状による等幅の絶縁層29を介した組み合わせ電極パターン形状に設定している。この電極パターン形状により、低電圧印加としながらも、表面分極により電極面と吸着面間に強い静電界を形成し、強い静電吸着力を誘起するようにしている。
【0033】
前記絶縁層29は、図4及び図5に示すように、複数の電極28を内蔵するように全周を被覆するもので、柔軟に変形する可撓性を有し、耐久信頼性等を含めてベルト素材として適する合成樹脂(例えば、ポリイミド等)により形成される。
【0034】
前記複数の電極28には、図3に示すように、静電吸着制御回路30が接続される。この静電吸着制御回路30と電極28は、リード線31とスリップリング32a,32bと給電リング33a,33bにより接続される。リード線31は、一端部が静電吸着制御回路30に接続され、他端側が駆動ローラ7のローラ軸7aに内挿される。スリップリング32a,32bは、リード線31に接続され、駆動ローラ7のローラ面に沿って突出した分割構造のリングである。給電リング33a,33bは、静電吸着ベルト6の内面に露出して設けられ、スリップリング32a,32bとの接触によりプラス電極28aとマイナス電極28bに電圧を印加する。
【0035】
前記静電吸着制御回路30は、複数の電極28へ所定の電圧を印加することで、対象物である繰り出し紙Paの表面に表面分極を誘起し、複数の電極28への印加電圧を遮断することで、対象物である繰り出し紙Paを表面分極の無い元の状態に戻す。
【0036】
図6は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における繰出制御系を示す制御ブロック図である。以下、図6に基づき繰出制御系の構成を説明する。
【0037】
実施例1の繰出制御系は、図6に示すように、メインスイッチ34と、繰り出し開始スイッチ35と、枚数設定器36と、接触開始検知スイッチ19と、接触終了検知スイッチ20と、積層対象物が送出ローラ9a(図1参照)に到着または抜き出ることを検知するセンサー9bと、繰出コントローラ37と、モータドライバ38,39,40と、回動モータ17と、繰出駆動モータ24と、ストッパプレート駆動モータ27と、静電吸着制御回路30と、電極28と、専用電源41と、を備えている。
【0038】
前記繰出コントローラ37は、メインスイッチ34、繰り出し開始スイッチ35、枚数設定器36、接触開始検知スイッチ19、接触終了検知スイッチ20、センサー9b等からの入力情報に基づき、設定されている制御プログラムにしたがって演算処理を行う。そして、演算結果による制御指令を、モータドライバ38,39,40や静電吸着制御回路30に出力し、回動モータ17、繰出駆動モータ24、ストッパプレート駆動モータ27の駆動制御と、電極28への電圧印加と電圧印加解除の制御を行う。
【0039】
図7は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1における繰出コントローラ37にて実行される繰り出し制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0040】
ステップS1-1では、メインスイッチ34をON操作した後、繰り出し開始スイッチ35がONになったか否かを判断し、YES(繰り出し開始スイッチON)の場合はステップS1-2へ移行し、NO(繰り出し開始スイッチOFF)の場合はステップS1-1の判断を繰り返す。
【0041】
ステップS1-2では、紙載せ台3を紙載せ台上げ機構5で上げステップS1-3へ移行する。S1−3では、紙面概略位置検出センサー4で紙面高さが所定概略高さに入ったかどうかを判断し、YESの場合はステップS2へ移行し、NOの場合はステップS1-2に戻る。
【0042】
ステップS2では、ステップS1−3での紙面高さが所定概略高さに入った判断、あるいは、ステップS3での積層紙との接触非検知判断に続き、回動リンク部材13とストッパプレート2を下げる指令を回動モータ17とストッパプレート駆動モータ27に出力し、ステップS3へ移行する。
なお、回動リンク部材13とストッパプレート2は、上昇させた位置を待機時における初期設定位置とする。
【0043】
ステップS3では、ステップS2での回動リンク部材13とストッパプレート2を下げる指令出力に続き、接触開始検知スイッチ19からのスイッチ信号がON信号からOFF信号に切り替わり、かつ、接触終了検知スイッチ20からのスイッチ信号がOFF信号からON信号に切り替わったか否かを判断し、YES(積層紙との接触検知)の場合はステップS4−1へ移行し、NO(積層紙との接触非検知)の場合はステップS2へ戻る。
【0044】
ステップS4−1では、ステップS3での積層紙Pとの接触検知判断に続き、複数の電極28に電圧を印加する指令を出力し、ステップS4−2へ移行する。
【0045】
ステップS4−2では、電極に電圧印加後の経過時間が設定所定時間より長くなったかを判断し、YESの場合はステップS5へ移行し、NOの場合はステップS4-2を繰り返す。
【0046】
ステップS5では、ステップS4−2での吸着設定時間経過との判断、あるいは、ステップS6での駆動パルス数<第1設定値との判断に続き、回動リンク部材13とストッパプレート2を上げる指令を回動モータ17とストッパプレート駆動モータ27に出力し、ステップS6へ移行する。
【0047】
ステップS6では、ステップS5での回動リンク部材13とストッパプレート2を上げる指令出力に続き、回動モータ17とストッパプレート駆動モータ27に出力した駆動パルス数が、第1設定値(回動リンク部材13とストッパプレート2が上限位置まで達する値)以上であるか否かを判断し、YES(駆動パルス数≧第1設定値)の場合にはステップS7へ移行し、NO(駆動パルス数<第1設定値)の場合にはステップS5へ戻る。
【0048】
ステップS7では、ステップS6での駆動パルス数≧第1設定値であるとの判断、あるいは、センサー9bがOFF→ONでないとの判断に続き、第一回動リンク13とストッパプレート2を止める指令を出すと共に、繰出ローラ7を回転させるローラ駆動指令を繰出駆動モータ24に出力し、ステップS8へ移行する。
【0049】
ステップS8では、紙が送出ローラ9aに入ったかどうかをセンサー9bで検出し、YESの場合はステップS9−1へ移行し、NOの場合はステップS7に戻る。
【0050】
ステップS9−1では、繰出ローラ7の回転駆動継続指令を出力すると共に、電極28への電圧印加を遮断する指令を出力し、ステップS9−2へ移行する。ここでは、紙は送出ローラ9aに入っており、不図示の回転駆動モータで回転駆動される送出ローラ9aによって紙が継続的に繰り出しされる。この時、繰出ローラ7と送出ローラ9aの線速度は必ずしも等しくないため、繰出中の紙とベルト保持面6aとの摩擦を軽減するために、電極28への印加電圧を遮断すると共に、繰出ローラ7の回転駆動を継続する。
【0051】
ステップS9−2では、紙が送出ローラ9aを抜けたかどうかをセンサー9bで検知し、YESの場合はステップS9−3へ移行し、NOの場合はステップS9−2を繰り返す。
【0052】
ステップS9−3では、繰出ローラ7の回転駆動を停止し、ステップS10へ移行する。
【0053】
ステップS10では、繰り出し紙カウント数nを、前回の繰り出し紙カウント数nに1を加算して求め、ステップS11へ移行する。
【0054】
ステップS11では、ステップS10での繰り出し紙カウント数nの算出に続き、繰り出し紙カウント数nが、設定された枚数値no以上であるか否かを判断し、YES(n≧no)の場合はエンドへ移行し、NO(n<no)の場合はステップS1−2へ移行する。
ここで、設定された枚数値noは、繰り出し開始スイッチを押しただけではno=1(初期値)であり、枚数設定器36により設定した場合には設定操作による値である。
【0055】
次に、作用を説明する。
まず、「静電チャックによる静電吸着力の発生原理と静電チャックの有する特長」の説明を行い、続いて、実施例1の積層対象物の繰出装置A1の作用を説明する。
【0056】
[静電チャックによる静電吸着力の発生原理と静電チャックの有する特長]
図8は、静電チャックによる静電吸着力の発生原理の説明図である。図9は、静電チャックの有する印加電圧遮断により対象物が元の状態に戻る特長の説明図である。図10は、静電チャックの有する静電吸着力の発生時において周囲塵埃を吸い寄せない特長の説明図である。以下、図8〜図10に基づいて静電チャックによる静電吸着力の発生原理と静電チャックの有する特長を説明する。
【0057】
実施例1で用いた静電吸着ベルト6は、クーロン力により対象物を静電吸着する「静電チャック」の一例である。この「静電チャック」による静電吸着力の発生原理は、図8に示すように、電極に電圧を印加すると、対象物の表面に表面分極を誘起する。ここで、プラス電圧を印加した電極部分に対向する対象物の表面部分にはマイナスの表面分極を誘起する。また、マイナス電圧を印加した電極部分に対向する対象物の表面部分にはマイナスの表面分極を誘起する。そして、電極面と対象物表面間には、プラス電極から対象物の表面を経過しマイナス電極への円弧状流れによる静電界が形成され、この静電界により対象物を絶縁層の表面に吸着する静電吸着力が生じる。
【0058】
この「静電チャック」の有する特長は、下記の通りである。
(1) 広範囲な対象物である。
すなわち、対象物として、導体〜半導体〜絶縁体のいずれでも良い。さらに、穴付き対象物(穴付きプリント基板等)も静電吸着の対象物となる。
(2) 積層対象物から最上層の一枚のみを吸着する。
すなわち、対象物の表面に表面分極を誘起して静電吸着力が生じるものであるため、二枚目以降の積層対象物には静電吸着力が及ばない。
(3) 対象物の全面に均一な静電吸着力が作用する。
すなわち、プラス電極とマイナス電極を、交互に、かつ、各方向に対してバランスの良いパターン形状にて配置することで、静電吸着力の均一性が確保される。また、この静電吸着力の均一性により、対象物が薄物であっても皺が寄ることがない。
(4) 対象物に電荷を供与しない。
すなわち、図9に示すように、低い印加電圧により対象物の表面分極で静電吸引力を誘起し、印加電圧を遮断すると対象物は元状態に戻る。
(5) 周囲塵埃を吸い寄せない。
すなわち、図10に示すように、対象物のうち、絶縁層と対向する面には表面電位を生じるが、対象物の裏面は無電位となる。よって、対象物の裏面から周囲の塵埃を吸い寄せることはない。
【0059】
[積層紙の繰出方法]
図11は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1による積層紙の繰り出し方法を示す説明図であり、(a)は待機ステップをあらわし、(b)は静電吸着ステップをあらわし、(c)は対象物分離ステップをあらわし、(d)は剥離繰り出しステップをあらわす。以下、図11に基づいて積層紙の繰り出し方法を説明する。
【0060】
紙収容トレー1に積層された積層紙Pを表面位置の紙から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置である事務用機器9へ繰り出す実施例1の積層対象物の繰り出し方法は、積層紙Pの繰り出し手段として、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、複数の電極28が絶縁層29で被覆された静電吸着ベルト6を用いたものであり、待機ステップと、静電吸着ステップと、対象物分離ステップと、剥離繰出ステップを有する。以下、各ステップを説明する。
【0061】
(待機ステップ)
待機ステップは、図11(a)に示すように、複数の電極28への印加電圧を遮断し、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aと積層紙Pを相対的に傾斜離間させる。このとき、ストッパプレート2は、最上部の位置に設定しておく。
【0062】
(静電吸着ステップ)
静電吸着ステップは、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを傾斜離間位置から下方に揺動させることにより、図11(b)に示すように、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを積層紙Pに対し接触させ、複数の電極28へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰り出し紙Paのみをベルト保持面6aに静電吸着させる。このとき、ストッパプレート2は、静電吸着ベルト6との干渉を避けるべく下方の位置まで下げておく。
【0063】
(対象物分離ステップ)
対象物分離ステップは、1枚の繰り出し紙Paを静電吸着させた状態のままで静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを上方に揺動させることにより、図11(c)に示すように、1枚の繰り出し紙Paを残りの積層紙Pbから繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを持つ傾斜離間にて境界面Sの位置で分離させる。このとき、ストッパプレート2は、再度、最上部の位置まで上げて戻す。
【0064】
(剥離繰り出しステップ)
剥離繰出ステップは、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを残りの積層紙Pbに対し傾斜離間させた状態のままで、駆動ローラ7を回転させることにより、図11(d)に示すように、1枚の繰り出し紙Paと残りの積層紙Pbの傾斜角度θを保つ境界面Sで生じる連続剥離作用により、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに静電吸着している1枚の繰り出し紙Paを、残りの積層紙Pbから剥離しながら繰り出す。このとき、ストッパプレート2は、最上部の位置に設定したままとしておく。
【0065】
[積層紙の繰出制御作用]
図12は、実施例1の積層対象物の繰出装置A1による積層紙の繰り出し制御作用を示す作用説明図であり、(a)は待機時をあらわし、(b)は吸着時をあらわし、(c)は繰り出し開始時をあらわし、(d)は繰り出し中をあらわす。以下、図7および図12に基づいて積層紙の繰り出し制御作用を説明する。
【0066】
実施例1の積層対象物の繰り出し制御は、繰り出し開始スイッチ35をONにすると、図7のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3にてYESと判断されるまでステップS2→ステップS3へと進む流れが繰り返される。
すなわち、図12(a)に示す静電吸着ベルト6の位置から、ベルト保持面6aと積層紙Pの最上層紙面の全面的な接触が検知されるまでは、回動リンク部材13が下げられると共にストッパプレート2が下げられることになる。
【0067】
そして、ベルト保持面6aと積層紙Pの最上層紙面の全面的な接触が検知されると、図7のフローチャートにおいて、ステップS3からステップS4へと進み、ベルト保持面6aと積層紙Pの最上層紙面が全面的に接触した時点から複数の電極28への電圧印加が開始される。
すなわち、複数の電極28への電圧印加により、図12(b)に示すように、ベルト保持面6aからの静電界によって、1枚の繰り出し紙Paに表面分極が起き、ベルト保持面6aと1枚の繰り出し紙Paの間に電位差が発生して、1枚の繰り出し紙Paがベルト保持面6aに、強くて均一な力により静電吸着される。
【0068】
そして、複数の電極28への電圧印加が開始されると、図7のフローチャートにおいて、ステップS4からステップS5→ステップS6へと進み、ステップS6にてYESと判断されるまでステップS5→ステップS6へと進む流れが繰り返され、回動リンク部材13とストッパプレート2を上げる指令が出力される。
すなわち、1枚の繰り出し紙Paをベルト保持面6aに静電吸着した状態で、図12(c)に示すように、静電吸着ベルト6を斜めに持上げることによって、ベルト接触圧は、2枚目以降の残りの積層紙Pbに伝わることはない。
また、1枚目の繰り出し紙Paと2枚目以降の残りの積層紙Pbの間に帯電吸着が生じている場合であっても、帯電電荷がベルト保持面6aの静電界に引き寄せられる。このため、静電吸着ベルト6の下部にある2枚の紙間の帯電は、静電吸着ベルト6と1枚目の繰り出し紙Paの間に移動し、ベルト保持面6aの真下においては、2枚の紙間の帯電吸着は解除される(図11(c)参照)。この状態で、図12(c)に示すように、静電吸着ベルト6を持ち上げると、ベルト保持面6aの真下に存在する2枚の紙が整然と分離される。
【0069】
そして、ベルト保持面6aに静電吸着した1枚目の繰り出し紙Paの持ち上げ動作が完了すると、図7のフローチャートにおいて、ステップS6からステップS7→ステップS8へと進み、ステップS8にてYESと判断されるまでステップS7→ステップS8へと進む流れが繰り返され、ローラ駆動指令が出力される。
すなわち、ローラ駆動により、ベルト保持面6aに静電吸着した1枚目の繰り出し紙Paが、対象物処理装置である事務用機器9へ繰り出されるが、図12(c)に示す状態で静電吸着ベルト6を回転させると、1枚目の繰り出し紙Paに対し、ベルト保持面6aの進行方向に引っ張り力が発生する。この作用力(=引っ張り力)は、繰り出し紙Paの後方側に伝わろうとする時、繰り出し方向に上向きの傾斜角度θの存在により、境界面Sに集中する。このため、1枚目の繰り出し紙Paの繰り出し中は、図12(d)に示すように、境界面Sにおいて、繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを保った境界面形状のままで、順次、繰り出し紙Paの繰り出し行われ、1枚目の紙Paが2枚目の紙Pbから剥離する(ピーリング)。故に、コーティング紙等のように面摩擦力の高い紙でも1枚ずつ確実に分離することができる。
【0070】
上記のように、実施例1では、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを積層紙Pの最上層面に接触させて静電吸着を行った後、ベルト接触圧を解除すると共に、積層紙Pに対して繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを形成してピーリングを生かすように、静電吸着ベルト6を静電吸着ベルト動作機構10で持上げると共に傾かせるようにしている。
すなわち、静電吸着ベルト6を採用したことにより、表面分極を誘起するものであれば、導体〜半導体〜絶縁体というように、広範囲の対象物を静電吸着可能である。そして、ベルト保持面6aを積層紙Pに対し上下に揺動する静電吸着ベルト動作機構10を採用している。このため、静電吸着時にベルト保持面6aを積層紙Pに接触させることで、表面分極により1枚の繰り出し紙Paが確実にベルト保持面6aに静電吸着する作用を示す。さらに、繰り出し時に静電吸着した1枚の繰り出し紙Paを残りの積層紙Pbから傾斜離間させることで、同時繰り出しの原因となるベルト接触圧や帯電電荷等の影響が解消されることになり、安定した分離繰り出し作用を示す。
そして、繰り出し速度の高低に左右されることなく、上記のように、安定した分離繰り出し作用を示すことで、繰り出し速度の高速化要求に応えることができる。実施例1においては、スイッチ信号をトリガとする電圧印加制御とモータ駆動制御により繰り出し制御が行われるため、例えば、回動モータ17、繰出駆動モータ24、ストッパプレート駆動モータ27として、応答速度の高いサーボモータを用いることで、繰り出し速度の高速化を図ることができる。なお、回動モータ17とストッパプレート駆動モータ27は、上下動作を同じタイミングで行うため、1つの共用モータとしても良い。
【0071】
実施例1では、ベルト保持面6aと積層紙Pの最上層面を接近させたり離間させたりする相対間隔調整機構として、静電吸着ベルト6に取り付ける揺動による静電吸着ベルト動作機構10を採用している。
ここで、相対間隔調整機構としては、静電吸着ベルト動作機構10の代わりに、紙載せ台3の上下動による積層対象物動作機構も利用できる。しかし、積層対象物動作機構の場合には、例えば、積層紙Pが数千枚と多く重いと、高速に紙載せ台3を往復上下移動するのは駆動系に負担がかかる。
これに対し、実施例1の上下揺動による静電吸着ベルト動作機構10の場合、一定の重さを持つ静電吸着ベルト6を上下揺動させるだけで良い。つまり、積層対象物動作機構の場合に比べ、静電吸着ベルト動作機構10の方が駆動系の負担が低く安定している点で有効である。
【0072】
実施例1の場合、静電吸着ベルト6が積層紙Pから傾斜離間している時、従動ローラ8は、その自重により垂れ下がり、リンク角度が最大角度状態となる。この状態で、回動リンク部材13を下降させることによって、従動ローラ8の周りのベルト保持面6aが積層紙Pに接触を開始すると、リンク角度が最大角度から小さくなろうとする。このことを検出してベルト保持面6aの積層紙Pへの接触開始を検知することができる。そして、さらに回動リンク部材13を下降させることによって、ベルト保持面6aを積層紙Pの上層面に全面的に載せると、リンク角度が最小角度になる。このことを検出してベルト保持面6aの積層紙Pへの全面的な接触を検知することができる。つまり、実施例1では、接触状況に応じて第1回動リンク13aと第2回動リンク13bのリンク角度が変化することに着目し、第1回動リンク13aに形成したストッパ穴13cの周囲であって、第2回動リンク13bに支持された従動ローラ8のローラ軸8aに臨む位置に、接触開始検知スイッチ19と接触終了検知スイッチ20を設定することにより、ベルト保持面6aが積層紙Pの最上層面に接触していることを検知する構成を採用している。
ここで、接触検知手段としては、ベルト保持面6aと積層紙Pの最上層面の間隔を、例えば、ギャップセンサーや変位センサー等を用いて検出することもできる。しかし、積層紙Pの紙面がS字形等により大きくそり変形している場合においては、測定箇所によって正確な測定ができない場合がある。
これに対し、実施例1では、接触開始検知スイッチ19と接触終了検知スイッチ20を採用したことで、積層紙Pの紙面変形にかかわらず、精度良くベルト保持面6aが積層紙Pの最上層面に接触していることを検知することができると共に、ギャップセンサー等に比べて、低コストでありながら動作信頼性や耐久性の高いスイッチを用いることができる。
【0073】
実施例1では、図12(b)に示す吸着時において、静電吸着ベルト6が積層紙Pの繰り出し端部領域に全面的に接触する。このとき、ストッパプレート2が固定であると、ストッパプレート2と静電吸着ベルト6が干渉する。この干渉を防止するために、吸着時において、ストッパプレート2を干渉回避位置まで下げるように設定している。
一方、図12(d)に示す繰り出し中において、前記ピーリングによって1枚目の繰り出し紙Paが2枚目以降の積層紙Pbから剥離される。このとき、2枚目以降の積層紙Pbが繰り出し方向に移動することなく確実に停止するように、繰り出し時において、ストッパプレート2が2枚目以降の積層紙Pbの紙面より高くなるように設定している。
このように、実施例1では、高い分離性能や剥離性能を発揮できる積層紙Pの繰り出し側端部領域に対向する位置にベルト保持面6aを配置しながら、可動ストッパ機構12を採用したことで、吸着時には、静電吸着ベルト6との干渉を回避しつつ、繰り出し時には、2枚目以降の積層紙Pbが繰り出されるのを確実に阻止することができる。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例1の積層対象物の繰出装置A1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0075】
(1) 収容部材(紙収容トレー1)に積層された積層対象物(積層紙P)を表面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置(事務用機器9)へ繰り出す積層対象物の繰出装置A1において、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、複数の電極28が絶縁層29で被覆された静電吸着ベルト6と、前記複数の電極28に接続され、電圧印加により対象物表面に表面分極を誘起し、印加電圧の遮断により表面分極の無い元状態に戻す静電吸着制御回路30と、前記静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに静電吸着した繰出対象物(繰り出し紙Pa)をベルト回転により繰り出す対象物繰出機構11と、前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)の相対間隔を調整することで、吸着時にベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を接近または接触させ、繰り出し時にベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を離間させる相対間隔調整機構(静電吸着ベルト動作機構10)と、を有する。このため、広範囲な対象物の選択自由度を持ちながらも、積層対象物を表面から1枚ずつ繰り出す安定した分離繰り出し機能を確保することで、繰り出し速度の高速化を図る積層対象物の繰出装置A1を提供することができる。
【0076】
(2) 前記相対間隔調整機構は、固定位置に設定した前記収容部材(紙収容トレー1)に対し、前記静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを上下に動作させる静電吸着ベルト動作機構10であり、前記静電吸着ベルト動作機構10は、前記ベルト保持面6aを積層対象物(積層紙P)に対し接近または接触させる下方への移動動作により、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)をベルト保持面6aに静電吸着させ、該静電吸着状態のままでの上方動作により、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離する。このため、相対間隔調整機構として、積層対象物の動作機構を用いる場合に比べ、駆動系の負担が低く安定したものとなり、繰り出し速度の高速化や繰り出し動作の安定化を図ることができる。
【0077】
(3) 前記静電吸着ベルト動作機構10は、前記両ローラ7,8のローラ軸7a,8aと平行で、かつ、繰り出し方向と反対側の位置に回動軸CLを設定し、前記両ローラ7,8の両端部を回転可能に支持する回動リンク部材13により、前記静電吸着ベルト6のベルト保持面6aを上下に揺動させる機構であり、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)をベルト保持面6aに静電吸着させた状態のままでの上方揺動により、前記ベルト保持面6aを積層対象物(積層紙P)に対し傾斜離間させることで、繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを持たせた1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離する。このため、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離し、繰り出し中に両対象物間に互いに生じる作用力を最小限に抑えて剥離させるピーリング効果を達成することができる。
【0078】
(4) 前記回動リンク部材13は、前記回動軸CLを中心として回動可能であると共に前記駆動ローラ7を回転可能に支持する第1回動リンク13aと、前記駆動ローラ7のローラ軸7aを中心として回動可能であると共に前記従動ローラ8を回転可能に支持する第2回動リンク13bと、前記第1回動リンク13aと前記第2回動リンク13bがなすリンク角度を設定角度範囲内に制限する角度制限構造(ストッパ穴13c)を有し、前記静電吸着ベルト動作機構10は、前記第1回動リンク13aと前記第2回動リンク13bがなすリンク角度の変化により前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)の接触状況を検知する接触状況検知手段(接触開始検知スイッチ19,接触終了検知スイッチ20)を有する。このため、積層紙Pの紙面変形にかかわらず、精度良くベルト保持面6aが積層紙Pの最上層面に接触していることを検知することができると共に、変位センサー等に比べ低コストでありながら動作信頼性や耐久性の高いスイッチを用いることができる。
【0079】
(5) 前記静電吸着ベルト6は、積層対象物(積層紙P)の繰り出し側の端部領域に対向する位置にベルト保持面6aが配置されるように設定し、前記収容部材(紙収容トレー1)は、積層対象物(積層紙P)の繰り出し端部の位置に、繰出対象物(繰り出し紙Pa)を静電吸着するときにストッパ機能を解除し、少なくとも対象物の繰り出し開始から繰り出し終了までは残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)の繰り出しを阻止するストッパ機能を発揮する可動ストッパ機構12を有する。このため、ベルト保持面6aを高い分離性能や剥離性能を発揮できる位置に配置しながら、吸着時、静電吸着ベルト6との干渉を回避しつつ、繰り出し時、2枚目以降の積層紙Pbが繰り出されるのを確実に阻止することができる。
【0080】
(6) 前記積層対象物は、前記収容部材(紙収容トレー1)に積層した積層紙Pであり、前記対象物処理装置は、積層紙Pから1枚ずつ分離して繰り出された紙に所定の処理を施す事務用機器9である。このため、積層紙Pから確実に1枚ずつ分離して紙を繰り出す安定した分離繰り出し機能を持つと共に、高速処理要求に応える事務用機器9を提供することができる。
【0081】
(7) 収容部材(紙収容トレー1)に積層された積層対象物(積層紙P)を表面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置(事務用機器9)へ繰り出す積層対象物の繰り出し方法において、積層対象物(積層紙P)の繰り出し手段として、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、複数の電極28が絶縁層29で被覆された静電吸着ベルト6を用い、前記複数の電極28への印加電圧を遮断し、ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を相対的に離間させる待機ステップと、前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を相対的に接近または接触させ、前記複数の電極28へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)のみをベルト保持面6aに静電吸着させる静電吸着ステップと、前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を相対的に離間させ、ベルト保持面6aに静電吸着している1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離させる対象物分離ステップと、前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)を相対的に離間させた状態のままで、前記駆動ローラ7の回転により、前記ベルト保持面6aに静電吸着している1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を、残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から剥離しながら繰り出す剥離繰出ステップと、を有する。このため、広範囲な対象物の選択自由度を持ちながらも、積層対象物を表面から1枚ずつ繰り出す安定した分離繰り出し機能を確保することで、繰り出し速度の高速化を図る積層対象物の繰り出し方法を提供することができる。
【0082】
(8) 前記待機ステップは、前記複数の電極28への印加電圧を遮断し、前記ベルト保持面6aを積層対象物(積層紙P)に対し傾斜離間させ、前記静電吸着ステップは、前記ベルト保持面6aを下方に揺動させることにより、前記ベルト保持面6aを積層対象物(積層紙P)に対し接触させ、前記複数の電極28へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)のみをベルト保持面6aに静電吸着させ、前記対象物分離ステップは、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を静電吸着させた状態のままで前記ベルト保持面6aを上方に揺動させることにより、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを持つ傾斜離間にて分離させ、前記剥離繰出ステップは、前記ベルト保持面6aを残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)に対し傾斜離間させた状態のままで、前記駆動ローラ7を回転させることにより、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)と残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)の傾斜角度θを保つ境界面Sで生じる連続剥離作用により、前記ベルト保持面6aに静電吸着している1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を、残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から剥離しながら繰り出す。このため、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離し、繰り出し中に両対象物間に互いに生じる作用力を最小限に抑えて剥離させるピーリング効果を達成することができる。
【実施例2】
【0083】
実施例2は、相対間隔調整機構として、固定位置に設定した静電吸着ベルトに対し、積層対象物を上下に動作させる積層対象物動作機構を用いた例である。
【0084】
まず、構成を説明する。
図13は、実施例2の積層対象物の繰出装置A2を示す概略全体図である。以下、図13に基づき装置の概略構成を説明する。
【0085】
実施例2の積層対象物の繰出装置A2は、図13に示すように、紙収容トレー1(収容部材)と、紙載せ台3と、積層対象物動作機構50(相対間隔調整機構)と、静電吸着ベルト6と、駆動ローラ7と、従動ローラ8と、事務用機器9(対象物処理装置)と、ギャップセンサー42と、を備えている。なお、紙収容トレー1は、紙の繰り出し部にストッパプレート部2’が形成されている。
【0086】
前記積層対象物動作機構50は、図13に示すように、固定位置に設定した静電吸着ベルト6に対し、積層紙P(積層対象物)を搭載している紙載せ台3を上下方向に動作させる機構である。この積層対象物動作機構50は、積層紙Pをベルト保持面6aに対し接近あるいは接触させる上方動作により、1枚の繰り出し紙Paをベルト保持面6aに静電吸着させ、静電吸着状態のままでの下方移動動作により、1枚の繰り出し紙Paを残りの積層紙Pbから分離する。なお、積層対象物動作機構50には、紙載せ台3の上下駆動アクチュエータとして、積層対象物駆動モータ44を有する(図14参照)。
【0087】
前記静電吸着ベルト6は、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、積層紙Pの繰り出し側の端部領域に対向する位置にベルト保持面6aが水平状態で固定配置された積層紙Pの繰り出し手段である。この静電吸着ベルト6により、紙収容トレー1に積層された積層紙Pを表面位置の繰り出し紙Paから順に1枚ずつ分離して対象物処理装置の一例である事務用機器9へ繰り出す。
【0088】
前記ギャップセンサー42は、紙収容トレー1に設けられ、センサー設定位置から積層紙Pの上面位置までの間隔(ギャップ)を、光波や音波の発信タイミングと反射波の受信タイミングの時間差等により検出する非接触式の変位量検出手段である。
【0089】
図14は、実施例2の積層対象物の繰出装置A2における繰り出し制御系を示す制御ブロック図である。以下、図14に基づき繰り出し制御系の構成を説明する。
【0090】
実施例2の繰り出し制御系は、図14に示すように、メインスイッチ34と、繰り出し開始スイッチ35と、枚数設定器36と、ギャップセンサー42と、センサー9bと、繰出コントローラ37と、モータドライバ39と、繰出駆動モータ24と、モータドライバ43と、積層対象物駆動モータ44と、静電吸着制御回路30と、電極28と、専用電源41と、を備えている。
【0091】
前記繰出コントローラ37は、メインスイッチ34、繰り出し開始スイッチ35、枚数設定器36、ギャップセンサー42、センサー9b等からの入力情報に基づき、設定されている制御プログラムにしたがって演算処理を行う。そして、演算結果による制御指令を、モータドライバ39,43や静電吸着制御回路30に出力し、繰出駆動モータ24と積層対象物駆動モータ44の駆動制御と、電極28への電圧印加と電圧印加解除の制御を行う。
【0092】
図15は、実施例2の積層対象物の繰出装置A2における繰出コントローラにて実行される繰り出し制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図15の各ステップについて説明する。
【0093】
ステップS21では、メインスイッチ34をON操作した後、繰り出し開始スイッチ35がONになったか否かを判断し、YES(繰り出し開始スイッチON)の場合はステップS22へ移行し、NO(繰り出し開始スイッチOFF)の場合はステップS21の判断を繰り返す。
【0094】
ステップS22では、ステップS21での繰り出し開始スイッチON判断、あるいは、ステップS23でのGa>Gaoであるとの判断、あるいは、ステップS29でのn<noとの判断に続き、積層紙Pを上昇させる駆動指令を積層対象物駆動モータ44に出力し、ステップS23へ移行する。
【0095】
ステップS23では、ステップS22での積層紙Pの上昇指令出力に続き、ギャップセンサー42により検出されるギャップ値Gaが、設定値Gao(ベルト保持面6aに繰り出し紙Paを静電吸着できるサブmm単位による値)以下であるか否かを判断し、YES(Ga≦Gao)の場合はステップS24へ移行し、NO(Ga>Gao)の場合はステップS22へ戻る。
【0096】
ステップS24では、ステップS23でのGa≦Gaoであるとの判断に続き、複数の電極28に電圧を印加する指令を出力すると共に、積層紙Pを所定量だけ下降させる駆動指令を積層対象物駆動モータ44に出力し、ステップS25へ移行する。
【0097】
ステップS25では、ステップS24での積層紙Pを下降させる駆動指令の出力、あるいは、ステップS26での駆動パルス数<第3設定値であるとの判断に続き、繰出駆動モータ24に対しローラ駆動指令を出力し、ステップS26へ移行する。
【0098】
ステップS26では、ステップS25でのローラ駆動指令の出力に続き、繰出駆動モータ24に出力した駆動パルス数が、第3設定値(繰り出し紙Paが繰り出し完了する時間相当値)以上であるか否かを判断し、YES(駆動パルス数≧第3設定値)の場合にはステップS27へ移行し、NO(駆動パルス数<第3設定値)の場合にはステップS25へ戻る。
【0099】
ステップS27では、ステップS26での駆動パルス数≧第3設定値の判断で駆動ローラ7駆動停止に続き、電極28への電圧印加を遮断する指令を出力し、ステップS28へ移行する。
【0100】
ステップS28では、ステップS27での電極28への電圧印加遮断に続き、繰り出し紙カウント数nを、前回の繰り出し紙カウント数nに1を加算して求め、ステップS29へ移行する。
【0101】
ステップS29では、ステップS28での繰り出し紙カウント数nの算出に続き、繰り出し紙カウント数nが、設定された枚数値no以上であるか否かを判断し、YES(n≧no)の場合はエンドへ移行し、NO(n<no)の場合はステップS22へ戻る。
ここで、設定された枚数値noは、繰り出し開始スイッチを押しただけではno=1(初期値)であり、枚数設定器36により設定した場合には設定操作による値である。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
次に、作用を説明する。
図16は、実施例2の積層対象物の繰出装置A2による積層紙の繰り出し方法を示す説明図であり、(a)は待機ステップをあらわし、(b)は静電吸着ステップをあらわし、(c)は対象物分離ステップをあらわし、(d)は剥離繰出ステップをあらわす。以下、図16に基づいて積層紙の繰り出し方法を説明する。
【0103】
紙収容トレー1に積層された積層紙Pを表面位置の紙から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置である事務用機器9へ繰り出す実施例2の積層対象物の繰り出し方法は、積層紙Pの繰り出し手段として、駆動ローラ7と従動ローラ8に掛け渡され、複数の電極28が絶縁層29で被覆された静電吸着ベルト6を用いたものであり、実施例1と同様に、待機ステップと、静電吸着ステップと、対象物分離ステップと、剥離繰出ステップを有する。以下、各ステップを説明する。
【0104】
(待機ステップ)
待機ステップは、図16(a)に示すように、複数の電極28への印加電圧を遮断し、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対し、ベルト保持面6aと平行な積層紙Pの上面を離間させる。
【0105】
(静電吸着ステップ)
静電吸着ステップは、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対して、ベルト保持面6aと平行な積層紙Pの上面を持ち上げる積層紙Pの上方移動により、図16(b)に示すように、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対し積層紙Pの上面を接近あるいは接触させ、複数の電極28へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰り出し紙Paのみをベルト保持面6aに静電吸着させる。
すなわち、繰り出し開始スイッチ35をONにすると、図15のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23へと進み、ギャップ値Gaが設定値Gaoを超えている間は、ステップS22→ステップS23へと進む流れが繰り返され、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対し積層紙Pの上面を接近させる。そして、ギャップ値Gaが設定値Gao以下になると、ステップS23からステップS24へ進み、複数の電極28へ電圧が印加される。
【0106】
(対象物分離ステップ)
対象物分離ステップは、1枚の繰り出し紙Paを静電吸着させた状態のままで、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対して、ベルト保持面6aと平行な積層紙Pの上面を降下させる積層紙Pの下方移動により、図16(c)に示すように、1枚の繰り出し紙Paを残りの積層紙Pbから分離させる。
すなわち、ギャップ値Gaが設定値Gao以下になると、図15のフローチャートにおいて、ステップS23からステップS24へ進み、複数の電極28へ電圧を印加する指令を出力すると共に、積層紙Pを下降させる駆動指令が出力され、1枚の繰り出し紙Paを吸着すると共に、1枚の繰り出し紙Paが残りの積層紙Pbから分離される。
【0107】
(剥離繰り出しステップ)
剥離繰り出しステップは、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに対して、残りの積層紙Pbを平行離間させた状態のままでの駆動ローラ7の回転により、図16(d)に示すように、1枚の繰り出し紙Paと残りの積層紙Pbの間で生じる連続剥離作用により、静電吸着ベルト6のベルト保持面6aに静電吸着している1枚の繰り出し紙Paを、残りの積層紙Pbから剥離しながら繰り出す。
すなわち、図15のフローチャートにおいて、ステップS24からステップS25へ進み、ステップS25において、ローラ駆動指令が出力され、ステップS26の繰り出し完了条件が成立するまで、複数の電極28へ電圧印加を維持したままでローラ駆動指令が出力される。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0108】
次に、効果を説明する。
実施例2の積層対象物の繰出装置A2にあっては、実施例1の(1),(6),(7)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0109】
(9) 前記相対間隔調整機構は、固定位置に設定した前記静電吸着ベルト6に対し、前記積層対象物(積層紙P)を上下に動作させる積層対象物動作機構50であり、前記積層対象物動作機構50は、前記積層対象物(積層紙P)をベルト保持面6aに対し接近または接触させる上方動作により、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)をベルト保持面6aに静電吸着させ、該静電吸着状態のままでの下方動作により、1枚の繰出対象物(繰り出し紙Pa)を残りの積層対象物(残りの積層紙Pb)から分離する。このため、静電吸着ベルト6の固定設置により、ベルト駆動の容易性や電圧印加の容易性を図ることができる。特に、積層対象物の積層枚数が少なく、積層対象物動作機構50の駆動系負担が低く抑えられる場合に有用である。
【実施例3】
【0110】
実施例3は、回動リンク部材を、実施例1の回動リンク部材とは異なるローラ支持による構成とした変形例である。
【0111】
まず、構成を説明する。
図17は、実施例3の積層対象物の繰出装置A3による積層紙の繰り出し制御作用を示す作用説明図であり、(a)は待機時をあらわし、(b)は吸着時をあらわし、(c)は繰り出し開始時をあらわし、(d)は繰り出し中をあらわす。以下、図17に基づいて実施例3の回動リンク部材13の構成を説明する。
【0112】
実施例3の回動リンク部材13は、回動軸CLを中心として回動可能な第3回動リンク13dと、第3回動リンク13dの端部に設けたリンク軸13fに対し回動可能であると共に駆動ローラ7および従動ローラ8をローラ軸7a,8aにより回転可能に支持する第4回動リンク13eと、第3回動リンク13dに部分円弧状に開口され、駆動ローラ7のローラ軸7aを挿通する第1ストッパ穴13g(角度制限構造)と、第3回動リンク13dに部分円弧状に開口され、従動ローラ8のローラ軸8aを挿通する第2ストッパ穴13h(角度制限構造)と、を有する。
【0113】
そして、第3回動リンク13dの第2ストッパ穴13hに臨む位置には、第3回動リンク13dと第4回動リンク13eがなすリンク角度の変化によりベルト保持面6aと積層紙Pの接触状況を検知する接触開始検知スイッチ19(接触状況検知手段)と接触終了検知スイッチ20(接触状況検知手段)が設けられている。
【0114】
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
次に、作用を説明する。
実施例3の場合、図17(a)に示すように、静電吸着ベルト6が積層紙Pから傾斜離間している時、駆動ローラ7と従動ローラ8は、その自重により垂れ下がり、リンク角度が最大角度状態となる。この状態で、回動リンク部材13を下降させることによって、従動ローラ8の周りのベルト保持面6aが積層紙Pに接触を開始すると、リンク角度が最大角度から小さくなろうとする。このことを検出してベルト保持面6aの積層紙Pへの接触開始を検知することができる。そして、さらに回動リンク部材13を下降させることによって、ベルト保持面6aを積層紙Pの上層面に全面的に載せると、図17(b)に示すように、リンク角度が最小角度になる。このことを検出してベルト保持面6aの積層紙Pへの全面的な接触を検知することができる。
【0116】
そして、ベルト保持面6aの積層紙Pへの全面的な接触を検知されると、図17(c),(d)に示すように、駆動ローラ7と従動ローラ8は、合計した自重により垂れ下がり、外部や駆動系からの振動入力時、安定して繰り出し方向に上向きの傾斜角度θを保つ。このため、高速繰り出しによる振動入力時等において、高い安定性により、1枚の繰り出し紙Paを分離して繰り出すことができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0117】
次に、効果を説明する。
実施例3の積層対象物の繰出装置A3にあっては、実施例1の(1)〜(3),(5)〜(8)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0118】
(10) 前記回動リンク部材13は、前記回動軸CLを中心として回動可能な第3回動リンク13dと、該第3回動リンク13dの端部に設けたリンク軸13fに対し回動可能であると共に前記駆動ローラ7および前記従動ローラ8を回転可能に支持する第4回動リンク13eと、前記第3回動リンク13dと前記第4回動リンク13eがなすリンク角度を設定角度範囲内に制限する角度制限構造(第1ストッパ穴13g、第2ストッパ穴13h)を有し、前記静電吸着ベルト動作機構10は、前記第3回動リンク13dと前記第4回動リンク13eがなすリンク角度の変化により前記ベルト保持面6aと積層対象物(積層紙P)の接触状況を検知する接触状況検知手段(接触開始検知スイッチ19、接触終了検知スイッチ20)を有する。このため、積層紙Pの紙面変形にかかわらず、精度良くベルト保持面6aが積層紙Pの最上層面に接触していることを検知することができると共に、変位センサー等に比べ低コストでありながら動作信頼性や耐久性の高いスイッチを用いることができ、さらに、駆動ローラ7と従動ローラ8を合わせた自重により、振動入力等に対して安定した繰り出し作用を確保することができる。
【0119】
以上、本発明の積層対象物の繰出装置と積層対象物の繰り出し方法を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0120】
実施例1,3では、ベルト保持面と積層対象物の相対間隔を調整する相対間隔調整機構として、ベルト保持面側を上下に動作させる静電吸着ベルト動作機構10の例を示し、実施例2では、積層対象物側を上下に動作させる積層対象物動作機構50の例を示した。しかし、相対間隔調整機構としては、ベルト保持面と積層対象物の両方を動作させるような例としても良い。さらに、静電吸着ベルト動作機構10の場合、上下に揺動する機構の例を示したが、上下に平行移動する機構、あるいは、各ステップに応じて適切に決めた動作軌跡に沿って上下動作する機構等の例であっても良い。
【0121】
実施例1,3では、接触状況検知手段として、2つの回動リンクの角度制限構造の位置に設けた接触開始検知スイッチ19と接触終了検知スイッチ20による例を示した。しかし、2つの回動リンクの角度を検出する回動角度センサー、2つの回動リンクに支持されるローラの位置を検出するローラ位置センサー等を用いる例としても良い。
【0122】
実施例1〜3では、上下動作の駆動アクチュエータとして、駆動モータを用いる例を示した。しかし、上下動作の駆動アクチュエータとしては、例えば、流体圧(空気圧や油圧等)を用いる流体圧シリンダーを用いても良い。
【0123】
実施例1〜3では、収容部材に積層された積層対象物を上面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置へ繰り出す例を示した。しかし、収容部材に積層された積層対象物を下面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して対象物処理装置へ繰り出すものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0124】
実施例1〜3では、積層対象物として積層紙の例を示した。しかし、積層紙以外に、例えば、積層樹脂シートや積層布や積層金属シート等の繰出装置としても適用することができる。実施例1〜3では、対象物処理装置として事務用機器(プリンターやスキャナーやコピー機等)の例を示した。しかし、事務用機器以外に、積層対象物に応じて、例えば、1枚ずつ分離したものを色や形状や模様等により種別処理する装置や、1枚ずつ分離したものを切断処理やプレス加工処理により半製品あるいは製品化する装置等であっても対象物処理装置に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施例1の積層対象物の繰出装置A1を示す概略全体図である。
【図2】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルト動作機構・対象物繰出機構・可変ストッパ機構を示す斜視図である。
【図3】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトおよび静電吸着ベルト動作機構を示す平面図である。
【図4】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトを示す図3のA−A線による拡大縦断面図である。
【図5】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における静電吸着ベルトを示す図4のB−B線による拡大横断面図である。
【図6】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における繰り出し制御系を示す制御ブロック図である。
【図7】実施例1の積層対象物の繰出装置A1における繰出コントローラにて実行される繰り出し制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】静電チャックによる静電吸着力の発生原理の説明図である。
【図9】静電チャックの有する印加電圧遮断により対象物が元の状態に戻る特長の説明図である。
【図10】静電チャックの有する静電吸着力の発生時において周囲塵埃を吸い寄せない特長の説明図である。
【図11】実施例1の積層対象物の繰出装置A1による積層紙の繰り出し方法を示す説明図であり、(a)は待機ステップをあらわし、(b)は静電吸着ステップをあらわし、(c)は対象物分離ステップをあらわし、(d)は剥離繰出ステップをあらわす。
【図12】実施例1の積層対象物の繰出装置A1による積層紙の繰り出し制御作用を示す作用説明図であり、(a)は待機時をあらわし、(b)は吸着時をあらわし、(c)は繰り出し開始時をあらわし、(d)は繰り出し中をあらわす。
【図13】実施例2の積層対象物の繰出装置A2を示す概略全体図である。
【図14】実施例2の積層対象物の繰出装置A2における繰り出し制御系を示す制御ブロック図である。
【図15】実施例2の積層対象物の繰出装置A2における繰出コントローラにて実行される繰り出し制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】実施例2の積層対象物の繰出装置A2による積層紙の繰り出し方法を示す説明図であり、(a)は待機ステップをあらわし、(b)は静電吸着ステップをあらわし、(c)は対象物分離ステップをあらわし、(d)は剥離繰出ステップをあらわす。
【図17】実施例3の積層対象物の繰出装置A3による積層紙の繰り出し制御作用を示す作用説明図であり、(a)は待機時をあらわし、(b)は吸着時をあらわし、(c)は繰り出し開始時をあらわし、(d)は繰り出し中をあらわす。
【符号の説明】
【0126】
A1,A2,A3 積層対象物の繰出装置
1 紙収容トレー(収容部材)
2 ストッパプレート
3 紙載せ台
4 紙面概略位置検出センサー
5 紙載せ台上げ機構
6 静電吸着ベルト
6a ベルト保持面
7 駆動ローラ(繰出ローラ)
7a ローラ軸
8 従動ローラ
8a ローラ軸
9 事務用機器(対象物処理装置)
9a 送出ローラ
9b (紙が)送出ローラ到着/抜出し検出センサー(センサー)
10 静電吸着ベルト動作機構(相対間隔調整機構)
11 対象物繰出機構
12 可動ストッパ機構
13 回動リンク部材
13a 第1回動リンク
13b 第2回動リンク
13c ストッパ穴(角度制限構造)
13d 第3回動リンク
13e 第4回動リンク
13f リンク軸
13g 第1ストッパ穴(角度制限構造)
13h 第2ストッパ穴(角度制限構造)
14 回動軸
15 回動ギアプレート
16 モータギア
17 回動モータ
18 装置枠
19 接触開始検知スイッチ(接触状況検知手段)
20 接触終了検知スイッチ(接触状況検知手段)
21 ローラ側プーリ
22 モータ側プーリ
23 ベルト
24 繰出駆動モータ
25 ラックギア
26 ピニオンギア
27 ストッパプレート駆動モータ
28 電極
28a プラス電極
28b マイナス電極
29 絶縁層
30 静電吸着制御回路
31 リード線
32a,32b スリップリング
33a,33b 給電リング
34 メインスイッチ
35 繰り出し開始スイッチ
36 枚数設定器
37 繰出コントローラ
38,39,40,43 モータドライバ
41 専用電源
42 ギャップセンサー
44 積層対象物駆動モータ
50 積層対象物動作機構(相対間隔調整機構)
P 積層紙(積層対象物)
Pa 繰り出し紙(繰出対象物)
Pb 残りの積層紙(残りの積層対象物)
CL 回動軸
θ 傾斜角度
S 境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部材に積層された積層対象物を表面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して繰り出す積層対象物の繰出装置において、
駆動ローラと従動ローラに掛け渡され、複数の電極が絶縁層で被覆された静電吸着ベルトと、
前記複数の電極に接続され、電圧印加により対象物表面に表面分極を誘起し、印加電圧の遮断により表面分極の無い元状態に戻す静電吸着制御回路と、
前記静電吸着ベルトのベルト保持面に静電吸着した繰出対象物をベルト回転により繰り出す対象物繰出機構と、
前記ベルト保持面と積層対象物の相対間隔を調整することで、吸着時にベルト保持面と積層対象物を接近または接触させ、繰り出し時にベルト保持面と積層対象物を離間させる相対間隔調整機構と、
を有することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記相対間隔調整機構は、前記静電吸着ベルトのベルト保持面を上下に動作させる静電吸着ベルト動作機構であり、
前記静電吸着ベルト動作機構は、前記ベルト保持面を積層対象物に対し接近または接触させる下方への移動動作により、1枚の繰出対象物をベルト保持面に静電吸着させ、該静電吸着状態のままでの上方への移動動作により、1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から分離することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項3】
請求項2に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記静電吸着ベルト動作機構は、前記両ローラのローラ軸と平行で、かつ、繰り出し方向または反対側の位置に回動軸を設定し、前記両ローラの両端部を回転可能に支持する回動リンク部材により、前記静電吸着ベルトのベルト保持面を上下に揺動させる機構であり、1枚の繰出対象物をベルト保持面に静電吸着させた状態のままでの上方向に揺動させることにより、前記ベルト保持面を積層対象物に対し傾斜離間させることで、繰出方向に上向きの傾斜角度を持たせた1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から分離することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項4】
請求項3に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記回動リンク部材は、前記回動軸を中心として回動可能であると共に前記駆動ローラを回転可能に支持する第1回動リンクと、前記駆動ローラのローラ軸を中心として回動可能であると共に前記従動ローラを回転可能に支持する第2回動リンクと、前記第1回動リンクと前記第2回動リンクがなすリンク角度を設定角度範囲内に制限する角度制限構造を有し、
前記静電吸着ベルト動作機構は、前記第1回動リンクと前記第2回動リンクがなすリンク角度の変化により前記ベルト保持面と積層対象物の接触状況を検知する接触状況検知手段を有することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記積層対象物の繰り出し端部の位置に、少なくとも対象物の繰り出し開始から繰り出し終了までは残りの積層対象物の繰り出しを阻止するストッパ機構を有することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項6】
請求項1に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記相対間隔調整機構は、前記積層対象物を上下に動作させる積層対象物動作機構であり、
前記積層対象物動作機構は、前記積層対象物をベルト保持面に対し接近または接触させる上方への移動動作により、1枚の繰出対象物をベルト保持面に静電吸着させ、該静電吸着状態のままでの下方への移動動作により、1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から分離することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項7】
請求項3に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記回動リンク部材は、前記回動軸を中心として回動可能な第3回動リンクと、該第3回動リンクの端部に設けたリンク軸に対し回動可能であると共に前記駆動ローラおよび前記従動ローラを回転可能に支持する第4回動リンクと、前記第3回動リンクと前記第4回動リンクがなすリンク角度を設定角度範囲内に制限する角度制限構造を有し、
前記静電吸着ベルト動作機構は、前記第3回動リンクと前記第4回動リンクがなすリンク角度の変化により前記ベルト保持面と積層対象物の接触状況を検知する接触状況検知手段を有することを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載された積層対象物の繰出装置において、
前記積層対象物は、前記収容部材に積層した積層紙であることを特徴とする積層対象物の繰出装置。
【請求項9】
収容部材に積層された積層対象物を表面位置の対象物から順に1枚ずつ分離して繰り出す積層対象物の繰出方法において、
積層対象物の繰出手段として、駆動ローラと従動ローラに掛け渡され、複数の電極が絶縁層で被覆された静電吸着ベルトを用い、
前記複数の電極への印加電圧を遮断し、ベルト保持面と積層対象物を相対的に離間させる待機ステップと、
前記ベルト保持面と積層対象物を相対的に接近または接触させ、前記複数の電極へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰出対象物のみをベルト保持面に静電吸着させる静電吸着ステップと、
前記ベルト保持面と積層対象物を相対的に離間させ、ベルト保持面に静電吸着している1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から分離させる対象物分離ステップと、
前記ベルト保持面と積層対象物を相対的に離間させた状態のままで、前記駆動ローラの回転により、前記ベルト保持面に静電吸着している1枚の繰出対象物を、残りの積層対象物から剥離しながら繰り出す剥離繰り出しステップと、
を有することを特徴とする積層対象物の繰出方法。
【請求項10】
請求項9に記載された積層対象物の繰出方法において、
前記待機ステップは、前記複数の電極への印加電圧を遮断し、前記ベルト保持面を積層対象物に対し離間させ、
前記静電吸着ステップは、前記ベルト保持面を下方に移動させることにより、前記ベルト保持面を積層対象物に対し接触させ、前記複数の電極へ電圧を印加することで、表面分極により1枚の繰出対象物のみをベルト保持面に静電吸着させ、
前記対象物分離ステップは、1枚の繰出対象物を静電吸着させた状態のままで前記ベルト保持面を上方に移動させることにより、1枚の繰出対象物を残りの積層対象物から繰り出し方向に上向きの傾斜角度を持つ傾斜離間にて分離させ、
前記剥離繰出ステップは、前記ベルト保持面を残りの積層対象物に対し傾斜離間させた状態のままで、前記駆動ローラを回転させることにより、1枚の繰出対象物と残りの積層対象物の傾斜角度を保つ境界面で生じる連続剥離作用により、前記ベルト保持面に静電吸着している1枚の繰出対象物を、残りの積層対象物から剥離しながら繰り出すことを特徴とする積層対象物の繰出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−126317(P2010−126317A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303751(P2008−303751)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(593115792)筑波精工株式会社 (10)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】