積層構造体
【目的】 高温、高湿状態でのガラス板との接着耐久性に優れた機能層を設けた偏光板として有用な積層構造体を提供すること。
【構成】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する。
【構成】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、各種機能層を設けた偏光フィルムを有する積層構造体に関し、更に詳しくはガラス基材との接着性、特に湿熱条件下での接着性に優れた機能層付きの偏光板用の積層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられている。
該液晶表示装置には、偏光板が用いられているが、該偏光板としては、延伸・染色処理等により偏光性が付与されたポリビニルアルコールフィルム等の偏光フィルムの両面にセルロース系フィルム、例えば三酢酸セルロースフィルム等の保護層が積層された偏光板にアクリル系粘着剤層を設けた、保護層/偏光フィルム/保護層/アクリル系粘着剤層の構成を有するものが、通常用いられているが、最近では更にハードコート層、反射防止層、アンチグレア層等の各種機能層を設けた付加価値の高い偏光板が上市されている。
一方、従来の偏光板は通常ガラス基板と積層され、その際粘着剤層とガラス板との接着性を向上させるためにシラン系化合物が併用され、該化合物を粘着剤中に混合することが行われている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の如き構成を有するアクリル系粘着剤層が設けられた偏光板では、ガラス基材との接着性、特に湿熱条件下での接着性に劣るという欠点があり、上記の機能層を設けた偏光板においては、折角の機能を著しく低下させることも多く、機能層の性能を十分発揮させることのできる偏光板用の積層体が望まれているのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本考案者は上記の如き現況に鑑み、機能層/保護層/偏光フィルム/保護層/シラン系化合物層/アクリル系粘着剤の構成を有する積層構造体が、表示パネル等のガラス基材に貼着されたとき、湿熱条件下での接着性に優れ、機能層の性能を十分発揮できることを見いだし本考案の完成に至った。
尚、本考案の機能層は、2層以上の多層の場合も含む。
【0005】
本考案にかかる積層構造体を図面を用いて説明する。
図1〜10は、本考案にかかる積層構造体を示す断面図であり、図1は両面に保護層(2)を有する偏光フィルム(1)の該保護層(2)の一方の表面にシラン系化合物層(3)を設け、更にアクリル系粘着剤層(4)を積層し、かつ他方の保護層(2)の外側に機能層(A)をもうけた構成よりなるものであり、図2〜4は該機能層(A)をハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)に具体的に規定したものであり、図5は機能層(A)としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)を積層したもので、また図6〜10は図1〜5の積層構造体のアクリル系粘着剤層(4)の外側に更に離型用フィルム(5)を積層した構成を示すものであり、このように離型用フィルムを設けておけば、図1〜5の積層構造体の製造時及び保管時、更には加工時において極めて有用である。
【0006】
本考案に用いられる偏光フィルム(1)としては、ポリビニルアルコール系フィルム、エチレンビニルアルコール系フィルム、セルロース系フィルムなどが挙げられるが、加工性等の点でポリビニルアルコール系樹脂の偏光フィルムが好適に用いられ、以下該フィルムについて説明する。
【0007】
ポリビニルアルコール系樹脂は、通常酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるものであるが、本考案では、必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂を酸の存在下でアルデヒド類と反応させたポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂などのいわゆるポリビニルアセタール樹脂及びその他ポリビニルアルコール系樹脂誘導体も挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは、耐熱性が良好であるという点から、高ケン化度で高重合度のPVAが好ましい。即ち、ケン化度は95モル%以上が好ましく、更には99モル%以上、とくには99.5モル%以上であって、重合度は1000以上が好ましく、更には1000〜5000である。
【0008】
該ポリビニルアルコール系樹脂を用いた偏光フィルムの製造法としては、ポリビニルアルコール系樹脂を水又は有機溶媒に溶解した原液を流延製膜して、延伸してヨウ素染色するか、延伸と染色を同時に行うかヨウ素染色して延伸した後、ホウ素化合物処理する方法等が採用される。
本考案の保護層(2)としては、従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルムが挙げられるが、三酢酸セルロースフィルム等のセルロースアセテート系フィルムが好適に用いられる。
【0009】
該保護層(2)の外側に積層されるシラン系化合物層(3)に用いられるシラン系化合物とは、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン等が挙げられ、具体的にビニルシランとしては、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、P−アルリルフェニルエチルジクロロシラン、P−ビニルフェニルトリクロロシラン、アルソルメチルジクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン等が挙げられ、エポキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシ)−エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、更にメタクリルシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは1種または2種以上が用いられ、中でもグリシジル基を含有したエポキシシラン系化合物が好適に用いられる。
【0010】
更に本考案のアクリル系粘着剤層(4)に用いられるアクリル系粘着剤のアクリル系樹脂の構成成分としては、ガラス転移温度の低く柔らかい主モノマー成分やガラス転移温度の高く硬いコモノマー成分、更に必要に応じ少量の官能基含有モノマー成分が挙げられる。
【0011】
具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数2〜12程度のアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数4〜12程度のメタクリル酸アルキルエステルなど主モノマー成分が挙げられ、前記のコモノマー成分としては、アクリル酸メチルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等のアルキル基の炭素数1〜3のメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレンなどが挙げられる。
【0012】
前記以外に官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸等の多価カルボン酸、及びこれらの無水物等のカルボキシル基含有モノマーや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等やN−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー等の他に(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0013】
かかる官能基含有モノマー成分のうちで、特にカルボキシル基含有モノマーの使用が好ましい。
かかる主モノマー成分の含有量は、他に含有させるコモノマー成分や官能基含有モノマー成分の種類や含有量により一概に規定できないが、一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい。
本考案のアクリル系樹脂は、主モノマー、コモノマー、更に必要に応じて官能基含有モノマーを有機溶剤中でラジカル共重合させる如き、当業者周知の方法によって容易に製造される。
【0014】
前記重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。前記ラジカル重合に使用する重合触媒としては、通常のラジカル重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが具体例として挙げられる。
【0015】
上記のアクリル系樹脂は、必要に応じて架橋剤等の添加剤が配合されて最終的に本考案のアクリル系粘着剤となる。
該架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、アミン化合物、金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物、アンモニウム塩及びヒドラジン化合物等が例示される。
【0016】
該架橋剤のうちイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど、及びこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物などが挙げられる。
【0017】
エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0018】
アルデヒド系化合物としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0019】
金属塩としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属の塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩、たとえば、塩化第二銅、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸クロムなどが挙げられる。
金属アルコキシドとしては、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネートなどが挙げられる。
【0020】
金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル配位化合物などが挙げられる。
アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウムなどが挙げられる。
ヒドラジン化合物としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、およびそれらの塩基塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、ギ酸、シュウ酸等の有機酸塩類が挙げられる。
【0021】
上記の架橋剤の配合量は、アクリル系樹脂100重量部に対して0.001〜8重量部、好ましくは0.01〜4重量部、更に好ましくは0.1〜2.5重量部である。
該架橋剤の配合量が多すぎると高温時の粘着物性が低下し、逆に少なすぎると凝集力が低下する傾向にある。
【0022】
また、本考案の機能層(A)としては、具体的にハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)が挙げられ、ハードコート層(A1)とは、表面硬度をH(鉛筆硬度)以上にして、耐擦傷性を付与するもので、具体的にはメラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や多官能アクリル系樹脂を主成分とし紫外線或いは電子線等によるエネルギー線硬化性樹脂やSiO2等の金属酸化物などが用いられ、該層の形成方法としては、樹脂の場合にはバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が、又金属酸化物の場合には真空蒸着方法が好適に採用され、その層厚みは1〜20μ程度である。
又、反射防止層(A2)とは、積層構造体への蛍光灯などの反射を防止するもので、具体的にはフッ素系樹脂やSiO2、MgF2、ZrO2、Al2O3、TiO2等の金属酸化物などが用いられ、該層の形成方法としては、樹脂の場合にはバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が、又金属酸化物の場合には真空蒸着方法が好適に採用され、該金属酸化物は2層以上積層されることが多く、該反射防止層の厚みは0.05〜1μ程度である。
【0023】
更に、アンチグレア層(A3)とは、積層構造体表面のギラツキ防止や指紋等の付着防止を目的としたもので、具体的には粒子径が10μ以下のシリカビーズ等の無機充填剤を配合した上記の熱硬化性樹脂や多官能アクリル系のエネルギー線硬化性樹脂などが用いられ、該層の形成方法としては、上記と同様バーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が好適に採用され、その層厚みは1〜20μ程度である。
本考案の積層構造体を作製するに当たっては、保護層(2)が両面に積層された偏光フィルム(1)の一方の保護層(2)の表面にシラン系化合物を塗工して該化合物層(3)を形成した後、更にシラン系化合物層(3)の表面にアクリル系粘着剤を塗工して該粘着剤層(4)を形成した後、更に上記のハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)をそれぞれ上記記載の方法で他方の保護層(2)の外側に設けるのである。
【0024】
本考案においては、シラン系化合物層とアクリル系粘着剤層の2層構造とする点に特徴があり、シラン系化合物とアクリル系粘着剤を予め混合した組成物の層を形成させても本考案の効果は得難いのである。
又、本考案においては、図5に示される如く、機能層(A)として2層以上の機能層を積層することも可能で、該積層により多機能の効果を得ることも可能である。
更に該粘着剤層(4)の表面には、通常離型用フィルム(5)が積層され、図6〜10に示す如き積層構造体となる。
保護層(2)と偏光フィルム(1)の積層に関しては、天然或いは合成ゴム、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を主成分とする接着剤ないし粘着剤等を用いて、風乾法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法等により接着せしめることができる。
【0025】
シラン系化合物層(3)を設けるには、上記の如きシラン系化合物のイソプロピルアルコール溶液(通常は固形分0.05〜10重量%)を通常の方法、例えばバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等により、乾燥後の塗布量が0.005〜2g/m2程度になるように均一に塗布し、乾燥させる。
その後、上記の如きアクリル系粘着剤をシラン系化合物と同様に乾燥後の塗布量が5〜50g/m2程度になるように均一に塗布し、乾燥させてアクリル系粘着剤層(4)を設ける。
【0026】
アクリル系粘着剤層(4)の表面に設けられる離型用フィルム(5)としては、紙の表面に離型性シリコーン、ワックス、パラフィン類、塩化クロムステアレート又は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂による剥離層を設けた剥離紙や、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を基材とする合成樹脂系のものが使用できる。
かかる方法で得られた図1〜10に示す如き構成を有する積層構造体は、ガラス板等の基材に貼着されて実装に供されたとき、耐湿熱接着性に優れて良好な光学特性を示し、かつ各機能層の性能を十分発揮させることができ、電子卓上計算機、電子時計、テレビ、パソコン、ワープロ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防目メガネ、立体メガネ、医療機器、建築材料、玩具等に利用することができる。
【0027】
【作用】
本考案によれば、本考案の積層構造体をガラス板等の基材に貼着して偏光板用途に供したとき、耐湿熱耐久性に優れ、良好な偏光性能を得ると共に各種機能層の性能を十分発揮させることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本考案を更に具体的に説明する。
実施例1 アクリル系樹脂(樹脂成分:n−ブチルアクリレート/アクリル酸=95重量%/5重量%)100重量部に架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名;コロネートL)を1重量部(固形分換算)添加した固形分25重量%溶液(トルエン/酢酸エチルの重量比が1/1の溶媒)のアクリル系粘着剤を得た。
次に、膜厚25μのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99.5モル%、5倍延伸)(1)の両側を保護層(2)として厚さ80μの三酢酸セルロースフィルムを積層した偏光板(200mm×200m)を作製し、その一方の面に機能層(A)として、紫外線硬化型アクリル系樹脂層(5μ)を設けてハードコート層(A1)を形成して、他方の面にバーコーターを用いて乾燥塗布厚が0.1μとなるよう固形分量2重量%のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン溶液を塗布してシラン系化合物層(3)を形成させた後、同様に更に乾燥塗布厚が25μとなるようアクリル系粘着剤を塗布してアクリル系粘着剤層(4)を形成させて、図2に示すごとき本考案の積層構造体を得た。
【0029】
かかる積層構造体を厚さ1.1mmのガラス板上に圧着して、60℃,95%RHで48時間放置した後60℃の乾燥状態で更に48時間放置し、これを1サイクルとして10サイクル繰り返し処理を行った後、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で面内バラツキもなく、かつ表面は2H(JIS K 5400による鉛筆硬度)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0030】
実施例2 実施例1において、機能層(A)として、フッ素系樹脂(旭硝子社製、商品名;サイトップCT102A)を乾燥後の膜厚が0.1μになるように塗布して反射防止層(A2)とし図3に示すごとき本考案の積層構造体を得た以外は、実施例1と同様に湿熱処理を行ったところ、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で、かつ反射率が1.2%(島津製作所社製、UV−3100PC+鏡面反射測定装置にて測定)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0031】
実施例3 実施例1において、機能層(A)として、粒子径3μのシリカビーズを4重量%配合した紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗工(5μ)して、アンチグレア層(A3)とし図4に示すごとき本考案の積層構造体を得た以外は、実施例1と同様に湿熱処理を行ったところ、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で、かつ60°光沢度が65%(JIS K 7105に準じて測定)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0032】
比較例1 実施例1において、シラン系化合物層(3)及びアクリル系粘着剤層(4)の代わりにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.4重量%含有させたアクリル系粘着剤層(7)(乾燥塗布厚が25μ)を用いて、実施例と同様の評価を行った結果、偏光板縁部に端から中央に向かって5mm程度の剥離が認められた。又、上記同様単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で変化はなかったが、上記の如く周辺部に剥離が生じて変色が見られるため、偏光板として商品価値に欠けるものであった。
【0033】
【考案の効果】
本考案によれば、本考案の積層構造体をガラス板等の基材に貼着して偏光板用途に供したとき、耐湿熱耐久性に優れ、良好な偏光性能を得ると共に各種機能層の性能を十分発揮させることができる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の積層構造体で6層構成よりなる積層体の断面図
【図2】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図3】本考案の積層構造体で機能層として反射防止層(A2)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図4】本考案の積層構造体で機能層としてアンチグレア層(A3)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図5】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)の2層を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図6】本考案の積層構造体で離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図7】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図8】本考案の積層構造体で機能層として反射防止層(A2)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図9】本考案の積層構造体で機能層としてアンチグレア層(A3)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図10】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)の2層を設け、更に離型用フィルム(5)を設けた8層構成よりなる積層体の断面図
【図11】本考案の積層構造体をガラス板に貼着した時の断面図
【図12】従来の粘着剤層付き偏光板
【0035】
【符号の説明】
(A) 機能層
(A1) ハードコート層
(A2) 反射防止層
(A3) アンチグレア層
(1) 偏光フィルム
(2) 保護層
(3) シラン系化合物層
(4) アクリル系粘着剤層
(5) 離型用フィルム
(6) ガラス板
(7) シラン系化合物含有アクリル系粘着剤層
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、各種機能層を設けた偏光フィルムを有する積層構造体に関し、更に詳しくはガラス基材との接着性、特に湿熱条件下での接着性に優れた機能層付きの偏光板用の積層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられている。
該液晶表示装置には、偏光板が用いられているが、該偏光板としては、延伸・染色処理等により偏光性が付与されたポリビニルアルコールフィルム等の偏光フィルムの両面にセルロース系フィルム、例えば三酢酸セルロースフィルム等の保護層が積層された偏光板にアクリル系粘着剤層を設けた、保護層/偏光フィルム/保護層/アクリル系粘着剤層の構成を有するものが、通常用いられているが、最近では更にハードコート層、反射防止層、アンチグレア層等の各種機能層を設けた付加価値の高い偏光板が上市されている。
一方、従来の偏光板は通常ガラス基板と積層され、その際粘着剤層とガラス板との接着性を向上させるためにシラン系化合物が併用され、該化合物を粘着剤中に混合することが行われている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の如き構成を有するアクリル系粘着剤層が設けられた偏光板では、ガラス基材との接着性、特に湿熱条件下での接着性に劣るという欠点があり、上記の機能層を設けた偏光板においては、折角の機能を著しく低下させることも多く、機能層の性能を十分発揮させることのできる偏光板用の積層体が望まれているのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本考案者は上記の如き現況に鑑み、機能層/保護層/偏光フィルム/保護層/シラン系化合物層/アクリル系粘着剤の構成を有する積層構造体が、表示パネル等のガラス基材に貼着されたとき、湿熱条件下での接着性に優れ、機能層の性能を十分発揮できることを見いだし本考案の完成に至った。
尚、本考案の機能層は、2層以上の多層の場合も含む。
【0005】
本考案にかかる積層構造体を図面を用いて説明する。
図1〜10は、本考案にかかる積層構造体を示す断面図であり、図1は両面に保護層(2)を有する偏光フィルム(1)の該保護層(2)の一方の表面にシラン系化合物層(3)を設け、更にアクリル系粘着剤層(4)を積層し、かつ他方の保護層(2)の外側に機能層(A)をもうけた構成よりなるものであり、図2〜4は該機能層(A)をハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)に具体的に規定したものであり、図5は機能層(A)としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)を積層したもので、また図6〜10は図1〜5の積層構造体のアクリル系粘着剤層(4)の外側に更に離型用フィルム(5)を積層した構成を示すものであり、このように離型用フィルムを設けておけば、図1〜5の積層構造体の製造時及び保管時、更には加工時において極めて有用である。
【0006】
本考案に用いられる偏光フィルム(1)としては、ポリビニルアルコール系フィルム、エチレンビニルアルコール系フィルム、セルロース系フィルムなどが挙げられるが、加工性等の点でポリビニルアルコール系樹脂の偏光フィルムが好適に用いられ、以下該フィルムについて説明する。
【0007】
ポリビニルアルコール系樹脂は、通常酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるものであるが、本考案では、必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂を酸の存在下でアルデヒド類と反応させたポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂などのいわゆるポリビニルアセタール樹脂及びその他ポリビニルアルコール系樹脂誘導体も挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは、耐熱性が良好であるという点から、高ケン化度で高重合度のPVAが好ましい。即ち、ケン化度は95モル%以上が好ましく、更には99モル%以上、とくには99.5モル%以上であって、重合度は1000以上が好ましく、更には1000〜5000である。
【0008】
該ポリビニルアルコール系樹脂を用いた偏光フィルムの製造法としては、ポリビニルアルコール系樹脂を水又は有機溶媒に溶解した原液を流延製膜して、延伸してヨウ素染色するか、延伸と染色を同時に行うかヨウ素染色して延伸した後、ホウ素化合物処理する方法等が採用される。
本考案の保護層(2)としては、従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルムが挙げられるが、三酢酸セルロースフィルム等のセルロースアセテート系フィルムが好適に用いられる。
【0009】
該保護層(2)の外側に積層されるシラン系化合物層(3)に用いられるシラン系化合物とは、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン等が挙げられ、具体的にビニルシランとしては、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、P−アルリルフェニルエチルジクロロシラン、P−ビニルフェニルトリクロロシラン、アルソルメチルジクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン等が挙げられ、エポキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシ)−エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、更にメタクリルシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは1種または2種以上が用いられ、中でもグリシジル基を含有したエポキシシラン系化合物が好適に用いられる。
【0010】
更に本考案のアクリル系粘着剤層(4)に用いられるアクリル系粘着剤のアクリル系樹脂の構成成分としては、ガラス転移温度の低く柔らかい主モノマー成分やガラス転移温度の高く硬いコモノマー成分、更に必要に応じ少量の官能基含有モノマー成分が挙げられる。
【0011】
具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数2〜12程度のアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数4〜12程度のメタクリル酸アルキルエステルなど主モノマー成分が挙げられ、前記のコモノマー成分としては、アクリル酸メチルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等のアルキル基の炭素数1〜3のメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレンなどが挙げられる。
【0012】
前記以外に官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸等の多価カルボン酸、及びこれらの無水物等のカルボキシル基含有モノマーや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等やN−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー等の他に(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0013】
かかる官能基含有モノマー成分のうちで、特にカルボキシル基含有モノマーの使用が好ましい。
かかる主モノマー成分の含有量は、他に含有させるコモノマー成分や官能基含有モノマー成分の種類や含有量により一概に規定できないが、一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい。
本考案のアクリル系樹脂は、主モノマー、コモノマー、更に必要に応じて官能基含有モノマーを有機溶剤中でラジカル共重合させる如き、当業者周知の方法によって容易に製造される。
【0014】
前記重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。前記ラジカル重合に使用する重合触媒としては、通常のラジカル重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが具体例として挙げられる。
【0015】
上記のアクリル系樹脂は、必要に応じて架橋剤等の添加剤が配合されて最終的に本考案のアクリル系粘着剤となる。
該架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、アミン化合物、金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物、アンモニウム塩及びヒドラジン化合物等が例示される。
【0016】
該架橋剤のうちイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど、及びこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物などが挙げられる。
【0017】
エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0018】
アルデヒド系化合物としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0019】
金属塩としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属の塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩、たとえば、塩化第二銅、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸クロムなどが挙げられる。
金属アルコキシドとしては、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネートなどが挙げられる。
【0020】
金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル配位化合物などが挙げられる。
アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウムなどが挙げられる。
ヒドラジン化合物としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、およびそれらの塩基塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、ギ酸、シュウ酸等の有機酸塩類が挙げられる。
【0021】
上記の架橋剤の配合量は、アクリル系樹脂100重量部に対して0.001〜8重量部、好ましくは0.01〜4重量部、更に好ましくは0.1〜2.5重量部である。
該架橋剤の配合量が多すぎると高温時の粘着物性が低下し、逆に少なすぎると凝集力が低下する傾向にある。
【0022】
また、本考案の機能層(A)としては、具体的にハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)が挙げられ、ハードコート層(A1)とは、表面硬度をH(鉛筆硬度)以上にして、耐擦傷性を付与するもので、具体的にはメラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や多官能アクリル系樹脂を主成分とし紫外線或いは電子線等によるエネルギー線硬化性樹脂やSiO2等の金属酸化物などが用いられ、該層の形成方法としては、樹脂の場合にはバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が、又金属酸化物の場合には真空蒸着方法が好適に採用され、その層厚みは1〜20μ程度である。
又、反射防止層(A2)とは、積層構造体への蛍光灯などの反射を防止するもので、具体的にはフッ素系樹脂やSiO2、MgF2、ZrO2、Al2O3、TiO2等の金属酸化物などが用いられ、該層の形成方法としては、樹脂の場合にはバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が、又金属酸化物の場合には真空蒸着方法が好適に採用され、該金属酸化物は2層以上積層されることが多く、該反射防止層の厚みは0.05〜1μ程度である。
【0023】
更に、アンチグレア層(A3)とは、積層構造体表面のギラツキ防止や指紋等の付着防止を目的としたもので、具体的には粒子径が10μ以下のシリカビーズ等の無機充填剤を配合した上記の熱硬化性樹脂や多官能アクリル系のエネルギー線硬化性樹脂などが用いられ、該層の形成方法としては、上記と同様バーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等の公知の塗工方法が好適に採用され、その層厚みは1〜20μ程度である。
本考案の積層構造体を作製するに当たっては、保護層(2)が両面に積層された偏光フィルム(1)の一方の保護層(2)の表面にシラン系化合物を塗工して該化合物層(3)を形成した後、更にシラン系化合物層(3)の表面にアクリル系粘着剤を塗工して該粘着剤層(4)を形成した後、更に上記のハードコート層(A1)、反射防止層(A2)及びアンチグレア層(A3)をそれぞれ上記記載の方法で他方の保護層(2)の外側に設けるのである。
【0024】
本考案においては、シラン系化合物層とアクリル系粘着剤層の2層構造とする点に特徴があり、シラン系化合物とアクリル系粘着剤を予め混合した組成物の層を形成させても本考案の効果は得難いのである。
又、本考案においては、図5に示される如く、機能層(A)として2層以上の機能層を積層することも可能で、該積層により多機能の効果を得ることも可能である。
更に該粘着剤層(4)の表面には、通常離型用フィルム(5)が積層され、図6〜10に示す如き積層構造体となる。
保護層(2)と偏光フィルム(1)の積層に関しては、天然或いは合成ゴム、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を主成分とする接着剤ないし粘着剤等を用いて、風乾法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法等により接着せしめることができる。
【0025】
シラン系化合物層(3)を設けるには、上記の如きシラン系化合物のイソプロピルアルコール溶液(通常は固形分0.05〜10重量%)を通常の方法、例えばバーコート、ロールコート、グラビアコート、エアナイフコート等により、乾燥後の塗布量が0.005〜2g/m2程度になるように均一に塗布し、乾燥させる。
その後、上記の如きアクリル系粘着剤をシラン系化合物と同様に乾燥後の塗布量が5〜50g/m2程度になるように均一に塗布し、乾燥させてアクリル系粘着剤層(4)を設ける。
【0026】
アクリル系粘着剤層(4)の表面に設けられる離型用フィルム(5)としては、紙の表面に離型性シリコーン、ワックス、パラフィン類、塩化クロムステアレート又は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂による剥離層を設けた剥離紙や、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を基材とする合成樹脂系のものが使用できる。
かかる方法で得られた図1〜10に示す如き構成を有する積層構造体は、ガラス板等の基材に貼着されて実装に供されたとき、耐湿熱接着性に優れて良好な光学特性を示し、かつ各機能層の性能を十分発揮させることができ、電子卓上計算機、電子時計、テレビ、パソコン、ワープロ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防目メガネ、立体メガネ、医療機器、建築材料、玩具等に利用することができる。
【0027】
【作用】
本考案によれば、本考案の積層構造体をガラス板等の基材に貼着して偏光板用途に供したとき、耐湿熱耐久性に優れ、良好な偏光性能を得ると共に各種機能層の性能を十分発揮させることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本考案を更に具体的に説明する。
実施例1 アクリル系樹脂(樹脂成分:n−ブチルアクリレート/アクリル酸=95重量%/5重量%)100重量部に架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名;コロネートL)を1重量部(固形分換算)添加した固形分25重量%溶液(トルエン/酢酸エチルの重量比が1/1の溶媒)のアクリル系粘着剤を得た。
次に、膜厚25μのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99.5モル%、5倍延伸)(1)の両側を保護層(2)として厚さ80μの三酢酸セルロースフィルムを積層した偏光板(200mm×200m)を作製し、その一方の面に機能層(A)として、紫外線硬化型アクリル系樹脂層(5μ)を設けてハードコート層(A1)を形成して、他方の面にバーコーターを用いて乾燥塗布厚が0.1μとなるよう固形分量2重量%のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン溶液を塗布してシラン系化合物層(3)を形成させた後、同様に更に乾燥塗布厚が25μとなるようアクリル系粘着剤を塗布してアクリル系粘着剤層(4)を形成させて、図2に示すごとき本考案の積層構造体を得た。
【0029】
かかる積層構造体を厚さ1.1mmのガラス板上に圧着して、60℃,95%RHで48時間放置した後60℃の乾燥状態で更に48時間放置し、これを1サイクルとして10サイクル繰り返し処理を行った後、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で面内バラツキもなく、かつ表面は2H(JIS K 5400による鉛筆硬度)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0030】
実施例2 実施例1において、機能層(A)として、フッ素系樹脂(旭硝子社製、商品名;サイトップCT102A)を乾燥後の膜厚が0.1μになるように塗布して反射防止層(A2)とし図3に示すごとき本考案の積層構造体を得た以外は、実施例1と同様に湿熱処理を行ったところ、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で、かつ反射率が1.2%(島津製作所社製、UV−3100PC+鏡面反射測定装置にて測定)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0031】
実施例3 実施例1において、機能層(A)として、粒子径3μのシリカビーズを4重量%配合した紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗工(5μ)して、アンチグレア層(A3)とし図4に示すごとき本考案の積層構造体を得た以外は、実施例1と同様に湿熱処理を行ったところ、積層構造体縁部に剥離はなく、何ら異常は認められなかった。又、分光光度計(東京電色社製、TOPSCAN)を用いて単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で、かつ60°光沢度が65%(JIS K 7105に準じて測定)で液晶表示装置用偏光板として大変商品価値の高いものであった。
【0032】
比較例1 実施例1において、シラン系化合物層(3)及びアクリル系粘着剤層(4)の代わりにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.4重量%含有させたアクリル系粘着剤層(7)(乾燥塗布厚が25μ)を用いて、実施例と同様の評価を行った結果、偏光板縁部に端から中央に向かって5mm程度の剥離が認められた。又、上記同様単体透過率(%)及び偏光度(%)を測定したところ、42%及び98%で変化はなかったが、上記の如く周辺部に剥離が生じて変色が見られるため、偏光板として商品価値に欠けるものであった。
【0033】
【考案の効果】
本考案によれば、本考案の積層構造体をガラス板等の基材に貼着して偏光板用途に供したとき、耐湿熱耐久性に優れ、良好な偏光性能を得ると共に各種機能層の性能を十分発揮させることができる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の積層構造体で6層構成よりなる積層体の断面図
【図2】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図3】本考案の積層構造体で機能層として反射防止層(A2)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図4】本考案の積層構造体で機能層としてアンチグレア層(A3)を設けた6層構成よりなる積層体の断面図
【図5】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)の2層を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図6】本考案の積層構造体で離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図7】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図8】本考案の積層構造体で機能層として反射防止層(A2)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図9】本考案の積層構造体で機能層としてアンチグレア層(A3)及び離型用フィルム(5)を設けた7層構成よりなる積層体の断面図
【図10】本考案の積層構造体で機能層としてハードコート層(A1)及び反射防止層(A2)の2層を設け、更に離型用フィルム(5)を設けた8層構成よりなる積層体の断面図
【図11】本考案の積層構造体をガラス板に貼着した時の断面図
【図12】従来の粘着剤層付き偏光板
【0035】
【符号の説明】
(A) 機能層
(A1) ハードコート層
(A2) 反射防止層
(A3) アンチグレア層
(1) 偏光フィルム
(2) 保護層
(3) シラン系化合物層
(4) アクリル系粘着剤層
(5) 離型用フィルム
(6) ガラス板
(7) シラン系化合物含有アクリル系粘着剤層
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項2】 ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項3】 反射防止層(A2)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項4】 アンチグレア層(A3)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項5】 反射防止層(A2)/ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項6】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項7】 ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項8】 反射防止層(A2)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項9】 アンチグレア層(A3)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項10】 反射防止層(A2)/ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項1】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項2】 ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項3】 反射防止層(A2)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項4】 アンチグレア層(A3)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項5】 反射防止層(A2)/ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)の構成を有する積層構造体。
【請求項6】 機能層(A)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項7】 ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項8】 反射防止層(A2)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項9】 アンチグレア層(A3)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【請求項10】 反射防止層(A2)/ハードコート層(A1)/保護層(2)/偏光フィルム(1)/保護層(2)/シラン系化合物層(3)/アクリル系粘着剤層(4)/離型用フィルム(5)の構成を有する積層構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【登録番号】第3009021号
【登録日】平成7年(1995)1月11日
【発行日】平成7年(1995)3月28日
【考案の名称】積層構造体
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−12583
【出願日】平成6年(1994)9月14日
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【登録日】平成7年(1995)1月11日
【発行日】平成7年(1995)3月28日
【考案の名称】積層構造体
【国際特許分類】
【出願番号】実願平6−12583
【出願日】平成6年(1994)9月14日
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
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