説明

穴加工工具

【課題】異なる径の加工孔に加工を施す場合や、磨耗が進行した場合に、加工部を交換することを可能としコストの低減を図ることができるとともに、加工精度を高く維持することができる穴加工工具を提供する。
【解決手段】穴加工工具において、シャンク部10は、その先端部に軸線Oを中心としたねじ孔13を有するとともに、リーマヘッド20は、内部に穿設された軸線Oを中心とした貫通孔22の先端開口部に内周テーパ部22aを備え、シャンク部10の先端部にテーパ凹部12を備え、リーマヘッド20の後端部にはテーパ凹部12と嵌合するテーパ凸部23を備えるとともに、ねじ孔13と螺合する雄ねじ部31と、内周テーパ部22aと嵌合する外周テーパ部34とを備えるボルト部材30によって、リーマヘッド20をシャンク部10に交換可能に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、下穴の内壁面を切削加工する際に用いられる穴加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の穴加工工具としては、例えば特許文献1に示すように、軸線回りに回転される長尺円柱状の工具本体の先端部に、工具本体先端側及び工具本体径方向外側に向けた切刃を備えた加工部が設けられた、いわゆるリーマが知られている。図5及び図6に従来のリーマの一例を示す。
【0003】
このリーマは、軸線O回りに回転される長尺円柱状の工具本体1を有し、この工具本体1の先端部分が切削を行う加工部2とされている。加工部2の外周に工具本体1先端側及び工具本体1径方向外側に向けて開口した切屑排出溝3が形成され、この切屑排出溝3の工具回転方向T後方側には取付座4が形成されている。この取付座4には、切刃6Aを有する平板状のインサート6が、その厚さ方向を工具回転方向Tに向けて着座されてクランプネジ7によって固定されている。また、加工部2の外周面には、周方向に複数のガイドパッド5が配置されている。
【0004】
このように構成されたリーマは、通常、様々な径の加工穴に適応し得るように各種サイズのものが準備されており、加工の際には対象となる加工穴の径に応じた外径を有するリーマが選択され工作機械の主軸端に装着される。そして、このように装着されたリーマは、軸線O回りに回転されながら軸線O方向先端側に送りを与えられ、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、この下穴の内壁面をインサート6の切刃6Aによって切削して所定の内径の加工穴を形成するとともに、切屑排出溝3を介して切屑を排出する。この切削の際には、加工穴の内壁面とガイドパッド5とが摺動することにより、リーマ1の軸線Oの振れを防止して寸法精度の向上を図っている。
【特許文献1】特開2002−160124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のリーマにおいては、工具本体に加工部が一体成形されているため、工具自体の振れやがたつきが少なく加工精度は高いものの、様々な径の加工穴に対応するには各種サイズの多種類のリーマを揃える必要があり、コストの増加につながってしまっていた。また、加工穴に切削加工を行う際に該加工穴と直接的に摺接する加工部は、使用経過とともに磨耗していくため、磨耗が進行した際には工具本体全体を交換する必要があり、管理コストを増加させてしまっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、異なる径の加工孔に加工を施す場合や、磨耗が進行した場合に、加工部を交換することを可能としコストの低減を図ることができるとともに、加工精度を高く維持することができる穴加工工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る穴加工工具は、軸線回りに回転されるシャンク部の先端に、加工部を備えたリーマヘッドを装着してなり、前記シャンク部は、その先端部に前記軸線を中心としたねじ孔を有するとともに、前記リーマヘッドは、内部に穿設された前記軸線を中心とした貫通孔の先端開口部に内周テーパ部を備え、前記シャンク部の先端部と前記リーマヘッドの後端部との一方は前記軸線を中心として底部に向かうに従い縮径するテーパ凹部を備え、他方は前記テーパ凹部と嵌合するテーパ凸部を備えており、前記ねじ孔と螺合する雄ねじ部と、前記内周テーパ部と嵌合する外周テーパ部とを備えるとともに、前記リーマヘッドの前記先端開口部から挿入されて前記シャンク部の前記ねじ孔に至るボルト部材によって、前記リーマヘッドが前記シャンク部に交換可能に装着されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の穴加工工具は、工作機械の主軸端に装着されるシャンク部の先端に、加工部を備えるリーマヘッドが、ボルト部材で固定されることによって装着されている。シャンク部にリーマヘッドを装着する際には、まず、シャンク部の先端部とリーマヘッドの後端部とのいずれか一方に設けられたテーパ凹部と、他方に設けられたテーパ凸部とを嵌合させる。これによって、シャンク部とリーマヘッドはそれぞれの中心軸線を一致させながら接合される。
【0009】
上記のようにリーマヘッドをシャンク部に接合した状態で、リーマヘッドの内部に穿設された貫通孔の先端開口部からボルト部材を挿入し、該貫通孔に連通するシャンク部のねじ孔に至らせ、ボルト部材の雄ねじとシャンク部のねじ孔を螺合させて、リーマヘッドをシャンク部に固定する。さらにこのとき、リーマヘッドの貫通孔の先端開口部に設けられた内周テーパ部と、ボルト部材の外周側面に設けられた外周テーパ部とを嵌合させることによって、リーマヘッドとボルト部材のそれぞれの中心軸線が一致させられる。
【0010】
以上のように、加工部を備えるリーマヘッドをボルト部材を介してシャンク部に装着する構成としているため、異なる径の加工孔に対応させる場合や、加工部の磨耗が進行した場合には、ボルト部材の着脱によって容易にリーマヘッドを交換することが可能となる。また、シャンク部とリーマヘッド間、さらにリーマヘッドとボルト部材間のそれぞれにおいてテーパ嵌合が施されているため、工具全体として中心軸を合わせるためのテーパ嵌合が二重で施されることになる。従って、シャンク部に対してリーマヘッドを着脱可能とする構成としても、リーマヘッドをシャンク部に装着する際には高精度で芯出しを行うことができるため、穴加工工具の加工精度を高く維持することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る穴加工工具においては、前記シャンク部の先端と前記リーマヘッドの後端とのいずれか一端に、底部に向かうに従い縮径するテーパ壁面が形成された固定孔を備え、他端に、前記テーパ壁面と嵌合するテーパ側面を有するとともに、前記軸線方向に摺動可能に、かつ前記固定孔に向かって付勢されたドライブピンを備えていることを特徴としている。
【0012】
シャンク部の先端とリーマヘッドの後端を接合する際には、いずれか一端に設けられたドライブピンを他端に設けられた固定孔に入り込ませる。このときドライブピンは固定孔に向かって付勢されているため、ドライブピンのテーパ側面と固定孔のテーパ壁面とが密着嵌合される。それとともに、ドライブピンが軸線方向に摺動可能に設けられているため、接合の際には、該ドライブピンは固定孔に密着嵌合されながらも後退していく。従って、ドライブピンは固定孔に強固に固定される一方で、該ドライブピンがリーマヘッドとシャンク部材との接合の妨げになることはない。
【0013】
このようにドライブピンが固定孔に固定されることで、リーマヘッドとシャンク部とが工具回転方向に固定されるため、工作機械によって回転されるシャンク部のトルクをリーマヘッドに確実に伝達することが可能となるとともに、ボルト部材を回転させてリーマヘッドを着脱させる際に、リーマヘッドがシャンク部に対して不用意に回転してしまうことを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る穴加工工具は、前記リーマヘッド先端側に露呈する前記ボルト部材の端部に、前記軸線を中心とした断面真円形状の振れ測定部が設けられたことを特徴としている。
【0015】
ボルト部材によってリーマヘッドをシャンク部に固定させた際に、ボルト部材に設けられた振れ測定部に計測器を当てて回転時の偏心度を測定することによって、工具の振れを簡単かつ正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の穴加工工具によれば、加工部を備えるリーマヘッドをボルト部材を介してシャンク部に着脱可能に装着する構成とすることによって、異なる径の加工穴に対応させる場合や、磨耗が進行した場合等には、加工部であるリーマヘッドを交換することが可能となるため、コストの低減を図ることができる。また、このようにリーマヘッドとシャンク部とが分割された構造であっても、シャンク部にリーマヘッドを装着する際には、シャンク部とリーマヘッドとの間において、さらにリーマヘッドとボルト部材との間において、中心軸を合わせるテーパ嵌合をすることができるため、高精度に芯出しを行うことができ、穴加工工具の加工精度を高く維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の穴加工工具の実施の形態であるリーマについて、図1から図4を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態であるリーマを示す一部を破断した縦断面図であり、図2は該リーマの部分拡大図、図3は本発明の実施の形態であるリーマの正面図、図4は図1におけるX方向矢視図である。
【0018】
図1から図4に示すリーマは軸線Oを中心とした長尺円柱状の形状をしており、軸線O回りに工具回転方向Tに回転されるシャンク部10と、該シャンク部10の工具先端側(図1において左側)に接合され、加工部20aを備えるリーマヘッド20と、該リーマヘッド20をシャンク部10に固定、一体化させるボルト部材30とから構成される。
【0019】
シャンク部10は、概略円柱状の形状を有しており、工具後端側(図1において右側)が図示しない工作機械の主軸端に装着されている。このシャンク部10の工具先端側の端面はシャンク先端面11とされて軸線Oに垂直な平坦面とされるとともに、このシャンク先端面11の中央には、軸線Oを中心軸線として断面円形状に凹んだ有底孔であって、その内周側面が工具先端側に向かって拡径するテーパ面12aとされたテーパ凹部12が開口している。
【0020】
さらに、このテーパ凹部12の底部12bには、該底部12bから軸線Oに沿って工具後端側に延びるようにして、テーパ凹部12よりも小径とされて、内周側面に雌ねじが形成されたねじ孔13が、底部12bと同心をなすようにして設けられている。従って、シャンク部10においては、テーパ凹部12とねじ孔13はともに軸線Oを中心軸線として形成されており、ねじ孔13の開口部にテーパ凹部12が位置することになる。
【0021】
また、シャンク先端面11のテーパ凹部12の開口部を除いた残りの面の一部分には、詳しくは図2に示すように、軸線O方向に断面円形状に凹んだ嵌入孔14が形成されており、さらにその嵌入孔の底面14aには、該底面14aよりも小径とされたねじ孔部15が設けられている。また、嵌入孔14には、嵌入孔14と略同一の径を有する円筒形状を有し、内部が挿入孔16aとされているとともに、外周側面の一端側がその端面に向けて縮径するように形成されてテーパ側面16bとされたドライブピン16が、該テーパ側面16bが工具先端側に臨むようにして、嵌入孔14の内周側面14bに対して摺動可能となるように嵌入されている。
【0022】
また、挿入孔16aの工具先端側に臨む開口部から止めねじ18が挿入され、ドライブピン16を貫通して、止めねじ18の一端側の外周側面に設けられた雄ねじ部18aが、嵌入孔14の底面14aに開口するねじ孔部15に螺合されることによって、止めねじ18がシャンク部10に固定支持されている。なお、該止めねじ18の他端側は頭部18cとされており、止めねじ18における頭部18cと雄ねじ部18a間の外周側面は、表面が滑らかに形成されたストレート軸部18bとされている。これにより、ドライブピン16は、嵌入孔14の内周側面14bのみならず、止めねじ18に対しても容易に軸線方向に摺動することが可能とされている。
【0023】
また、止めねじ18の頭部18cは径方向に張り出すように形成されており、嵌入孔14及び止めねじ18対して摺動可能に設けられたドライブピン16の端面16dが該止めねじ18の頭部18cに当接することによって、ドライブピン16のそれ以上の工具先端方向への移動が阻止される。
【0024】
なお、こうして端面16dが頭部18cに当接してドライブピン16が嵌入孔14内に嵌入された状態では、テーパ側面16bはシャンク先端面11よりも工具先端側に突出しており、このとき、ドライブピン16の工具後端側に臨む端面16cと嵌入孔14の底部14aとは当接することはなく一定距離隔てられおり、これによって端面16cと底部14aとの間には空間が形成され、該空間は収納孔17とされている。
【0025】
そして、この収納孔17にはコイルスプリングや複数の皿バネ等の付勢部材19が圧縮された状態で挿入されており、該付勢部材19が伸張しようとする弾性力を受けてドライブピン16は常に工具先端側に向かって押し付けられる方向に付勢されている。従って、この付勢力によって、通常、ドライブピン16の工具先端側の端面16dは、止めねじ18の頭部18cに当接されており、ドライブピン16に工具後端側に向かって力が加えられた際にのみ、付勢部材19を工具後端側に収縮させながらドライブピン16は工具後端側に移動する。
【0026】
リーマヘッド20は、内部にボルト部材30を挿通させる貫通孔22が形成された概略円筒形状の部材であって、その先端部には加工穴に加工を施す加工部20aが設けられている。このリーマヘッド20の工具後端側の端面の外周部は軸線Oに垂直となる平坦面とされたヘッド後端面21とされ、ヘッド後端面21の中央には、軸線Oを中心として断面円形状に工具後端側に向かって突出するように形成された凸部であって、その外周側面が工具後端側に向かってテーパ凹部12と等しいテーパ角で縮径するテーパ面23aとされたテーパ凸部23が設けられている。
【0027】
また、ヘッド後端面21のテーパ凸部23が形成された箇所を除いた面の一部分には、詳しくは図2に示すように、該ヘッド後端面21から軸線O方向に凹んだ有底孔であって、その内周側面の開口部側が工具後端側に向かって拡径したテーパ壁面24aとされた固定孔24が形成されている。
【0028】
貫通孔22は、軸線Oに垂直となる平坦面とされたリーマヘッド20の工具先端側の端面であるヘッド先端面25から、ヘッド後端面21に形成されたテーパ凸部23の工具後端側に臨む端面である凸部端面23bにかけて、リーマヘッド20を軸線O方向に貫通するようにして穿設されており、該貫通孔22の工具先端側に臨む先端開口部22bには、貫通孔22の内周壁面が工具先端側に向かうに従い拡径するようにして形成された内周テーパ部22aが配設されている。
【0029】
また、リーマヘッド20の外周側面29には、図3に示すように、軸線Oに直交する断面において、外周側面29を円弧状に切り開いた形状の切屑排出溝26が、軸線O方向に沿って延びるように設けられている。この切屑排出溝26の先端部の工具回転方向T前方側を向く壁面には、該壁面から窪むようにして、後述するインサート40を着脱可能に取り付けるための取付座27が形成されている。この取付座27は、リーマヘッド20の径方向外側を向く壁面27aを有しており、この壁面27aは、図3に示すように、切屑排出溝26をなす円弧線の一端(工具回転方向T後方側端)に連なるように形成されおり、また、壁面27aには軸線Oに対して直交する方向に延びる図示しないクランプネジ孔が穿設されている。
【0030】
そして、この取付座27にいわゆる縦刃のインサート40が着脱可能に取り付けられる。インサート40は、図3、図4に示すように、概略四角形平板形状を有する超硬合金等の硬質材料によって形成されており、厚さ方向を向く2つの四角形面と4つの側面とを有している。インサート40の厚さ方向を向く一の四角形面が、取付座27のリーマヘッド20径方向外側を向く壁面27aに着座される着座面41とされ、厚さ方向を向く他の四角形面が、リーマヘッド20径方向外側に向けられた外周逃げ面42とされている。
【0031】
このインサート40の側面のうちの一つが工具回転方向T前方側を向いてすくい面43とされ、このすくい面43に連なる他の側面の一つが工具先端側に向けられて正面逃げ面44とされている。すくい面43の正面逃げ面44と外周逃げ面42とが交差する角部には、ダイヤモンド焼結体で構成された平板状の刃先部45が設けられている。この刃先部45と外周逃げ面42との交差稜線部に外周切刃46が形成され、刃先部45と正面逃げ面44との交差稜線部に正面切刃47が形成されている。また、インサート40には、着座面41及び外周逃げ面42に開口するようにインサート40の厚さ方向に貫通する図示しない挿通孔が穿設されている。
【0032】
このような構成とされたインサート40が、リーマヘッド20の取付座27に、以下のようにして取り付けられる。すくい面43とされる側面が工具回転方向T前方側を向くように、かつ、取付座27のリーマヘッド20径方向外側を向く壁面27aにインサート40の着座面41が密着するようにして、インサート40が取付座27に載置される。このようにインサート40を載置した状態で、挿通孔に挿通された固定ネジ48を、リーマヘッド20径方向外側を向く壁面27a上に設けられた図示しないクランプネジ孔に螺着することにより、インサート40が取付座27に取り付けられる。
【0033】
また、リーマヘッド20の外周側面29には、超硬合金等の硬質材料で形成され、外周側面29から径方向外側に突出して軸線Oに平行に延びる複数(本実施形態においては4つ)のガイドパッド28が取り付けられている。このガイドパッド28は、リーマヘッド20の外周側面29に形成された凹溝に例えばろう付け等によって取り付けられており、周方向に間隔を空けて複数が設けられている。これらガイドパッド28は、外周側面29に取り付けられた状態で軸線Oを中心とした円筒研磨が施され、軸線Oに直交する断面において、ガイドパッド28の軸線Oの径方向外側に臨む外周面28aと軸線Oとの距離は、上述の刃先部45の外周切刃46と軸線Oとの距離より極僅かに小さい程度に設定されている。
【0034】
ボルト部材30は、図1に示すように概略長尺円柱状の形状を有しており、その一端側の外周面には、シャンク部10のねじ孔13と螺合する雄ねじ部31を備え、他端側には、締め外しをするためのレンチ等の作業用工具が嵌まるレンチ孔32aが設けられたボルト頭部32を備えている。また、ボルト部材30のボルト頭部32と雄ねじ部31との間に位置する外周面には、ボルト頭部32から雄ねじ部31に向かって順に、振れ測定部33、外周テーパ部34及びストレート部35が設けられている。
【0035】
振れ測定部33は、ボルト頭部32と連続するようにして形成され、該ボルト頭部32の外径を一段拡径するようにして形成された軸線Oを中心とした断面真円状の側面33aを有している。そして、図1に示すようにボルト部材30をリーマヘッド20の貫通孔22及びシャンク部10のねじ孔13に挿入した際には、振れ測定部33のボルト頭部32の反対側に臨む端面33bが軸線Oと垂直とされて、リーマヘッド20のヘッド先端面25と当接するようにされている。
【0036】
ストレート部35はその外径がリーマヘッド20の貫通孔22の内径より僅かに小さく形成されており、ボルト部材30をリーマヘッド20に挿入した際には、ストレート部35の外周面と貫通孔22の内周面との間に若干のクリアンスが形成されるように構成されている。
【0037】
また、ストレート部35の先端から振れ測定部33に向かっては外径が内周テーパ部22aと等しいテーパ角で拡径するようにして軸線Oを中心軸線とした外周テーパ部34が形成されており、ボルト部材30をリーマヘッド20に挿入した際には、この外周テーパ部34と貫通孔22の内周テーパ部22aが嵌合されるように構成されている。
【0038】
本実施形態に係るリーマにおいて、シャンク部10の先端側にリーマヘッド20を装着する際には、シャンク部10の工具先端側に設けられたテーパ凹部12と、リーマヘッド20の工具後端側に設けられたテーパ凸部23とを嵌合させる。このとき、テーパ凹部12とテーパ凸部23とは互いに等しいテーパ角のテーパ状であって、それぞれの断面は軸線Oを中心軸線とした円形状であるため、これらテーパ凹部12及びテーパ凸部23が互いに嵌合することによって、シャンク部10とリーマヘッド20とは、それぞれの中心軸線を一致させながら接合される。また、これによって、シャンク部10のねじ孔13とリーマヘッド20の貫通孔22とは連通された状態となる。
【0039】
また、このようにシャンク部10にリーマヘッド20を取り付ける際には、同時にシャンク部10のシャンク先端面11に設けられたドライブピン16を、リーマヘッド20のヘッド後端面21に設けられた固定孔24に挿入させる。これにより、ドライブピン16のテーパ側面16bが固定孔24のテーパ壁面24aに当接し、さらにドライブピン16に及ぼされる工具先端方向への付勢力により、ドライブピン16のテーパ側面16bと固定孔24のテーパ壁面24aとが密着嵌合される。
【0040】
なお、この際、ドライブピン16は軸線方向に摺動可能であるため、ドライブピン16と固定孔24とがテーパ嵌合し、ドライブピン16が固定孔24に強固にクランプされながらも、シャンク部10のシャンク先端面11とリーマヘッド20のヘッド後端面21とが密着される際には、ドライブピン16は付勢部材19による付勢力に逆らうようにして工具後端側に後退する。従って、ドライブピン16は固定孔24に強固にクランプされる一方で、該ドライブピン16がシャンク部10とリーマヘッド20との接合の妨げになることはない。
【0041】
このようにして、リーマヘッド20をシャンク部10に接合した状態で、リーマヘッド20の貫通孔22の先端開口部22bからボルト部材30を挿入する。そして、ボルト部材30を、該貫通孔22に連通するシャンク部10のねじ孔13に至らせ、ボルト部材30の雄ねじ部31とシャンク部10のねじ孔13を螺合させ、同時に、リーマヘッド20の貫通孔22の先端開口部22bに設けられた内周テーパ部22aと、ボルト部材30の外周テーパ部34を嵌合させる。
【0042】
このとき、リーマヘッド20の内周テーパ部22aとボルト部材30の外周テーパ部34とは互いに等しいテーパ角のテーパ状であって、それぞれの断面は軸線Oを中心軸線とした円形状であることから、ボルト部材30を取り付けた状態においては、これら内周テーパ部22aと外周テーパ部34が互いに嵌合することによって、リーマヘッド20とボルト部材30との中心軸線が一致させられる。
【0043】
なお、ボルト部材30を取り付けた状態では、ボルト部材30の振れ測定部33の端面33bが、リーマヘッド20のヘッド先端面25と当接していて、ボルト部材30をレンチ等の作業用工具でさらに奥に回し入れることによって、該端部33bによってリーマヘッド20がシャンク部10側に押圧されるため、外周テーパ部34と内周テーパ面22a、及びテーパ凹部12とテーパ凸部23とがさらに強くテーパ嵌合させられるとともに、ヘッド先端面25と端面33b、シャンク先端面11とヘッド後端面21も密着して、シャンク部10にリーマヘッド20を強固に装着することが可能となる。
【0044】
以上のようにして、加工部20aを備えたリーマヘッド20をボルト部材30を介してシャンク部10に装着する構成としているため、異なる径の加工穴に対応させる場合や、リーマヘッドの磨耗が進行した場合等には、ボルト部材30の締め外しをすることによって容易に異なる加工径を有するリーマヘッド20や新品のリーマヘッド20に交換することが可能となる。
【0045】
また、シャンク部10とリーマヘッド20間、さらにリーマヘッド20とボルト部材30間は、それぞれが中心軸を合わせるようにしてテーパ嵌合されているため、工具全体として二重のテーパ嵌合が施されることになり、高精度に芯出しを行うことができ、加工精度を向上させることが可能となる。
【0046】
また、上述のようにドライブピン16が固定孔24に固定されるため、シャンク部10とリーマヘッド20とが工具回転方向Tに固定され、工作機械によって回転されるシャンク部10のトルクをリーマヘッド20に確実に伝達することが可能となるとともに、ボルト部材30を回転させてリーマヘッド20をシャンク部10に対して着脱する際には、リーマヘッド20がシャンク部10に対して不用意に回転してしまうことを防止し、着脱を円滑に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係るリーマにおいては、ボルト部材30を装着した状態では、該ボルト部材30のリーマヘッド20先端側に露呈する箇所に、軸線を中心とした断面真円形状の側面33aを有する振れ測定部33が設けられているため、この振れ測定部33に計測器を当てて回転時の偏心度を測定することによって、工具の触れを簡単かつ正確に測定することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態であるリーマについて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、本実施形態においては、シャンク部10にテーパ凹部12が、リーマヘッド20にテーパ凸部23が設けられているが、これらテーパ凹部12とテーパ凸部23との配置は互いに逆であってもよい。即ち、シャンク部10にテーパ凸部23が、リーマヘッド20にテーパ凹部12が設けられたものであってもよく、この場合であっても、テーパ凹部12とテーパ凸部23とがテーパ嵌合することによって、シャンク部12及びリーマヘッド20は互いに中心軸を一致させながら接合される。
【0050】
さらに、本実施形態では、シャンク部10側にドライブピン16が、リーマヘッド20側に固定孔24が設けられているが、シャンク部10側に固定孔24が、リーマヘッド20側にドライブピン16が設けられたものであってもよい。この場合でも、リーマヘッド20側に設けられたドライブピン16がシャンク部10側に設けられた固定孔24に入り込むことによってテーパ嵌合され、シャンク部10とリーマヘッド20とは工具回転方向Tに固定される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態であるリーマを示す一部を破断した縦断面図である。
【図2】図1におけるドライブピン付近の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態であるリーマの正面図である。
【図4】図1におけるX方向矢視図である。
【図5】従来のリーマ先端部の拡大部分断面図である。
【図6】図5におけるY―Y断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 シャンク部
12 テーパ凹部
13 ねじ孔
16 ドライブピン
20 リーマヘッド
20a 加工部
22 貫通孔
22a 内周テーパ部
23 テーパ凸部
24 固定孔
30 ボルト部材
31 雄ねじ部
33 振れ測定部
34 外周テーパ部
O 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるシャンク部の先端に、加工部を備えたリーマヘッドを装着してなり、
前記シャンク部は、その先端部に前記軸線を中心としたねじ孔を有するとともに、
前記リーマヘッドは、内部に穿設された前記軸線を中心とした貫通孔の先端開口部に内周テーパ部を備え、
前記シャンク部の先端部と前記リーマヘッドの後端部との一方は前記軸線を中心として底部に向かうに従い縮径するテーパ凹部を備え、他方は前記テーパ凹部と嵌合するテーパ凸部を備えており、
前記ねじ孔と螺合する雄ねじ部と、前記内周テーパ部と嵌合する外周テーパ部とを備えるとともに、前記リーマヘッドの前記先端開口部から挿入されて前記シャンク部の前記ねじ孔に至るボルト部材によって、前記リーマヘッドが前記シャンク部に交換可能に装着されていることを特徴とする穴加工工具。
【請求項2】
前記シャンク部の先端と前記リーマヘッドの後端とのいずれか一端に、底部に向かうに従い縮径するテーパ壁面が形成された固定孔を備え、
他端に、前記テーパ壁面と嵌合するテーパ側面を有するとともに、前記軸線方向に摺動可能に、かつ前記固定孔に向かって付勢されたドライブピンを備えていることを特徴とする請求項1に記載の穴加工工具。
【請求項3】
前記リーマヘッド先端側に露呈する前記ボルト部材の端部に、前記軸線を中心とした断面真円形状の振れ測定部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の穴加工工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12129(P2009−12129A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177194(P2007−177194)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】