説明

穴有り弾性部材、靴の衝撃吸収・反発ユニット、およびその穴有り弾性部材を複数中底に搭載した靴

【課題】
靴のミッドソールに搭載するのに適した弾性部材を提供することである。また、その弾性部材を搭載した靴を提供することである。
【解決手段】
提案する弾性部材は、使用時に圧力がかかると想定される方向と直交する方向に、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、穴を複数開けた穴有り弾性部材である。また、提案する靴は、中底の所定位置に穴有り弾性部材を複数個はめ込むための窪み部を有する。各穴有り弾性部材の穴の貫通方向は、所定の面(例えば接地面)に含まれるように方向付けされて上記窪み部にはめ込まれる。穴有り弾性部材の材料としては例えばポリブタジエンラバーが適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の穴を一方向に貫通させることで弾性特性を改善した穴有り弾性部材、その穴有り弾性部材を複数有する靴の衝撃吸収・反発ユニット、およびその穴有り弾性部材を複数中底に搭載した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力が使用時に作用する物の部位にはその位置に必要とされる弾性特性を持つ弾性部材が設置されている。必要とされる弾性特性は対象とする物の種類・用途によって異なる。
【0003】
弾性部材の一種としての合成ゴムとしては、シリコンラバー(silicone rubber、CR)、フッ素ラバー(fluorocarbon rubber、FR)、天然ラバー(natural rubber、NR)、ウレタンラバー(urethane rubber、UR)、ポリブタジエンラバー(polybutadiene rubber、以下では、ブタジエンラバー(butadiene rubber)、BRと呼ぶ)などがある。
【0004】
このうち、シリコンラバーは、高度の耐熱性・耐寒性・耐オゾン性を持ち、電気特性・非粘着性にも優れ、生理的不活性がよい材料である。このシリコンラバーは、家電部品、自動車部品などに使用されている。
フッ素ラバーは、耐化学薬品性、耐溶剤性、耐老化性、耐熱性、耐寒性がよい材料であり、化学工場の耐食パッキン・ガスケット・ダイヤフラム・タンクライニング・ホース・ポンプ部品などに使用されている。
【0005】
天然ラバーは、天然のゴムが持つゴム本来の弾力性があり、機械的強度・伸縮性がよい素材である。この天然ラバーは、トラックのタイヤ・ホース・履物・ベルト・一般工業用品などに使用されている。
ウレタンラバーは、低温特性・耐オゾン性・耐油性・耐熱性・耐摩耗性がよい材料である。このウレタンラバーは、ロール・タイヤ・ベルト・ホース・シール材・靴底などに使用されている。
【0006】
ブタジエンラバーは、弾性・耐摩耗性・耐老化性に優れており、特に、弾性・耐摩耗性については天然ラバーより優れている。このブタジエンラバーは、自動車・航空機のタイヤ・履物・防振ゴム・ベルト・ホース・プラスチック改質材などに使用されている。また、スーパーボール(登録商標)など単品での使用例もある。
【0007】
図13は、各合成ゴムについて、機械的強度、反発弾性、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性の各特性を比較して示した図である。
このうち、耐熱性、耐寒性は温度℃が単位である。図13は各社のデータをまとめたものであり、限界温度も各社まちまちであるため、縦軸の値(0〜10)と温度との対応関係はおおよそにしか示すことはできないが、耐熱性、耐寒性については、例えば次のように対応している。

耐熱性:
0〜2 :〜80
3〜5 :81〜100
6〜8 :100〜200
9〜10:201〜

耐寒性:
0〜2 :〜-10
3〜5 :-11〜-30
6〜8 :-31〜-50
9〜10:-51〜

【0008】
また、各社とも、機械的強度、反発弾性、耐摩耗性を「かなり優れている」「優れている」「劣っている」「かなり劣っている」の4段階で評価していることから、機械的強度、反発弾性、耐摩耗性については、縦軸の値(0〜10)とは例えば次のように対応している。

0〜2 :かなり劣っている
3〜5 :劣っている
6〜8 :優れている
9〜10:かなり優れている

【0009】
図13に示した各合成ゴムに対する検査結果からは、次のことが判明する。
まず、シリコンラバーは、耐熱性・耐寒性がよい材料である。フッ素ラバーは、耐熱性がよい材料である。天然ラバーは、機械的強度、反発弾性、耐磨耗性、耐寒性がよい材料である。ウレタンラバーは機械的強度、反発弾性、耐磨耗性、耐寒性がよい材料である。ブタジエンラバーは、反発弾性、耐磨耗性、耐寒性がよい材料である。
【0010】
このように合成ゴムの特性はそれぞれ異なっており、それに応じて、使用される製品等が異なっている。本願で対象とする靴については、素材として、天然ラバー、ウレタンラバー、ブタジエンラバーなどが使用される。
靴のミッドソールに対する衝撃吸収についての文献として、特許文献1には、運動靴等のミッドソールにおいて、踏みつけ部および踵部に凹面部を形成し、その凹面部内に衝撃吸収体を挿入したミッドソールが示されている。これは、ミッドソールのうちで、人体の荷重が繰り返しかかる踏みつけ部や踵部に生じる素材自体のヘタリ防止を目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−065904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、靴のミッドソールに搭載するのに適した、弾性部材およびその弾性部材を複数有する衝撃吸収・反発ユニットを提供することを目的とする。また、ミッドソール部分に弾性部材を複数個搭載した靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
提案する弾性部材は、使用時に圧力がかかると想定される方向と直交する方向に、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、穴を複数開けた穴有り弾性部材である。前記穴有り弾性部材は例えばポリブタジエンラバーである。
提案する衝撃吸収・反発ユニットは、靴の中底(ミッドソール)に設けられた窪み部にはめ込んで使用するものである。このユニットは複数個の穴有り弾性部材を有し、その各穴有り弾性部材は、球形状であり、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、同一方向に開けられた複数の穴を有し、その各弾性部材の穴が開いている方向を所定の面に含まれるように方向付けされてユニットを形成した。前記複数個の穴有り弾性部材は例えばポリブタジエンラバーである。
【0014】
提案する靴は、穴有り弾性部材を複数はめ込むための窪み部が所定位置に設けられた中底を有する。前記各穴有り弾性部材は、球形状であり、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、同一方向に開けられた複数の穴を有する。そして、前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向を、所定の面に含まれるように揃えて前記窪み部に前記各穴有り弾性部材をはめ込んだものである。前記複数個の穴有り弾性部材は例えばポリブタジエンラバーである。
【発明の効果】
【0015】
前記弾性部材を同一方向に複数の穴を開けた球形状とし、図6にて後述するように試験を行った。その結果、穴を複数開けたことによって前記穴有り弾性部材の衝撃吸収・反発特性が靴のミッドソールに適したものとなったことが判明した。
前記衝撃吸収・反発ユニットにおいて、前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向を所定の面(例えば水平面)に含まれるように方向付けされることで、図6の試験結果に示すように、その衝撃吸収・反発ユニットの衝撃吸収・反発特性を靴のミッドソールに適したものとすることができる。
【0016】
前記弾性部材を搭載した靴において、各穴有り弾性部材の穴が開いている方向(穴の貫通方向)を所定の面(例えば水平面)に含まれるように方向付けされることで、極性を持つ穴有り弾性部材の衝撃吸収・反発特性をそれを中底に搭載した靴にとって図6の試験結果に示すように理想的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の一実施形態に係る穴有り弾性部材を示す図(その1)である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る穴有り弾性部材を示す図(その2)である。
【図2】本実施形態の穴有り弾性部材と、穴を開けていない同材質の弾性部材との上にダンベルを載せた状況を示した図である。
【図3】反発弾性の機能試験方法を示した図である。
【図4】耐久度の機能試験方法を示した図である。
【図5】衝撃吸収の機能試験方法を示した図である。
【図6】各メーカーが靴に採用している弾性部材と、本実施形態の穴有り弾性部材と、本実施形態の穴有り弾性部材と同材質で穴を開けていないものとで、反発弾性(左側)、耐久度(中央)、衝撃吸収(右側)の試験結果を比較して示した図である。
【図7】本実施形態の穴有り弾性部材を有する衝撃吸収・反発ユニットのミッドソールへの第1の搭載方法を示す図である。
【図8】本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの第1の搭載方法における穴有り弾性部材の組み合わせパターンの一例を示す図である。
【図9】本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への第1の搭載方法における搭載例を示す図である。
【図10】本実施形態の穴有り弾性部材を有する衝撃吸収・反発ユニットのミッドソールへの第2の搭載方法を示す図である。
【図11】本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への第2の搭載方法における搭載例を示す図である。
【図12】本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への搭載方法の変形例を示す図である。
【図13】各合成ゴムについて、機械的強度、反発弾性、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性の各特性を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1Aおよび図1Bは、本発明の一実施形態に係る穴有り弾性部材を示す図である。
本実施形態の穴有り弾性部材1は、図1Aおよび図1Bに示すように球形をしていて、その球形に対し、複数の穴2を一方向に開けるという加工処理を行っている。
【0019】
図1Aは、この穴有り弾性部材1を、開けられた複数の穴2の正面すなわち、穴の貫通方向から見た図である。これに対し、図1Bでは、この穴有り弾性部材1を、開けられた複数の穴2が左右方向に貫通している状態が分かるように、穴の貫通方向とは直交する方向のうちの1つから見た図である。
【0020】
このように本実施形態では、複数の穴を一方向に開けるという加工処理の結果として、部材の弾性特性に極性(方向性)を持たせた。加工処理を行ったことにより、貫通させた穴の分だけ部材の伸縮力が増し、弾力性が増すため、穴を開けない同材質の場合と比較して、衝撃を吸収・反発させる能力が増すことが予想される。
【0021】
実際にこの予想が正しいことは、図2に示すように、本実施形態の穴有り弾性部材1と、本実施形態の穴有り弾性部材1と同材質で穴を設けていない弾性部材(以下、穴無し弾性部材という)5との上にダンベル6を載せたときに、本実施形態の穴有り弾性部材1の方が、穴無し弾性部材5よりもダンベル6の重量により上下方向に大きく潰れていることから定性的に確認できる。また、後述の図6に示す実際に試験した結果からも、穴有り弾性部材1の弾性特性が、(使用時に圧力がかかる方向を含む)穴の方向に直交する方向に対して改善されることが判明した。
【0022】
穴有り弾性部材(ここでは球形とする)の製造方法について説明する。
まず、半球状の金型(例えばタコヤキ器)にポリブタジエンを流し込み、加硫(熱処理)した後、冷める前に半球と半球を重ね合わせる。この際、その半球状の金型の内側に複数本(ここでは31本)の棒状の突起があり、そこにポリブタジエンを流し込み加熱するので、穴が開いた半球と半球を重ねて球にすると、31本の穴が一方向に貫通したポリブタジエンを材料としたゴムボールが出来上がる。
【0023】
本実施形態では、穴有り弾性部材1を、スポーツスニーカー、革靴、サンダル等のあらゆる靴のミッドソール(中底)へ使用するものとする。
シューズメーカー各社は、ミッドソールに対する弾性特性を改善すべく、弾性部材をそれぞれ開発している。
例えば、A社は、衝撃吸収・弾性素材を開発している。
B社は、衝撃吸収・弾性素材を開発している。
【0024】
C社は、衝撃吸収・反発バックを開発している。
D社は、衝撃吸収・反発バックを開発している。
E社は、衝撃吸収・弾性素材を開発している。
【0025】
これらメーカー各社の部材と、穴無し弾性部材と、本実施形態の穴有り弾性部材とで、反発弾性、耐久度、衝撃吸収に対する試験を実施した。
続いて、図3〜図5を参照して、反発弾性、耐久度、衝撃吸収の機能試験方法について説明する。
反発弾性については、図3に示すように、46cm上部から16.3gの鋼球を部材上に自由落下させて「跳ね返り率(%)」を計測した。
【0026】
耐久度については、図4に示すように、3,000N(ニュートン)≒300kgのインパクトと、加重速度が50mm/minの速さで圧縮することで、「変形度」(変形無し、変形有り)を計測した。ただし、穴無し弾性部材(ここでは球形)については単体で実験した。
衝撃吸収については、図5に示すように、体重計に2.5kgのダンベルそのもののインパクト値を5回計測し、平均をとる。続いて、ミッドソールを体重計の上に置いて、その上から2.5kgのダンベルのインパクト値を5回計測し、平均をとる。ダンベルそのものを置いた(ときの平均値と、ミッドソールを通してダンベルを置いたときの平均値との差を、ダンベルそのものを置いたときの平均値で割ることで、「衝撃吸収(%)」を計測した。なお、図5の計測方法はより具体的には、「体重計そのもの」と「ソールを上に置いた体重計」の状態にそれぞれダンベルそのものを置き「上から人力で押し付ける動作」を繰り返して計測したものである。当然、力の入り具合が一定にはならないため、事前に練習を行い、20回程度「力加減」を慣らさせた後、本番で靴毎に5回ずつ動作を行い、その平均値をとったものである。
【0027】
図6は、各メーカーが靴に採用している弾性部材と、本実施形態の穴有り弾性部材と、穴無し弾性部材とで、反発弾性(左側)、耐久度(中央)、衝撃吸収(右側)の試験結果を比較して示した図である。
図6では、左から右へ、A社の衝撃吸収・弾性素材、B社の衝撃吸収・弾性素材、C社の衝撃吸収・反発バック、D社の衝撃吸収・反発バック、E社の衝撃吸収・弾性素材、本実施形態の穴有り弾性部材(ここでは、ブタジエンを材料とした球形)、穴無し弾性部材(ここでは、ブタジエンを材料とした球形)の順に検査結果データが表示されている。
また、各項目内では、左から右へ、反発弾性、耐久度、衝撃吸収の順に検査結果データが表示されている。
【0028】
図6の検査結果から次のことが判明する。
まず、反発弾性については、穴有りブタジエンラバーボールが跳ね返り率40%強で1位、A社の衝撃吸収・弾性素材が跳ね返り率40%強で僅差の2位、B社の衝撃吸収・弾性素材が跳ね返り率、約40%で3位となった。
耐久度については、穴無し弾性部材(ここでは、球形のブタジエンラバー、以下では、穴無しブタジエンラバーボールという)のみ変形度30%であり、他の部材6種については、変形度50%で差がなかった。
【0029】
衝撃吸収については、本実施形態の穴有り弾性部材(ここでは、球形のブタジエンラバー、以下では、穴有りブタジエンラバーボールという)が衝撃吸収(率)30%強で1位、A社の衝撃吸収・弾性素材が衝撃吸収(率)30%強で僅差の2位、B社の衝撃吸収・弾性素材が衝撃吸収(率)30%強で僅差の3位となった。つまり、この3個の部材については差はあまりなかった。
【0030】
このことから、本実施形態の穴有りブタジエンラバーボールが衝撃吸収・反発機能ともに1位であり、衝撃吸収力・反発弾性の双方を兼ね備えていることが判明した。なお、穴無しブタジエンラバーボールと、穴有りブタジエンラバーボールとの検査結果の差を見ることで、ブタジエンを素材とした球形のラバーボールにおいて、穴を開けることで、反発弾性、耐久度、衝撃吸収の機能が大幅に向上することも判明した。
なお、ブタジエンラバーボールに開ける穴については、製造上、耐久度に問題がないように、開ける数や内径を調整する。
【0031】
続いて、靴のミッドソール部分に、本実施形態の穴有りブタジエンラバーボールを搭載する方法(第1の搭載方法)について、図7を参照して説明する。
図7に示すように、靴の一般的構造として、天然ゴム(Natural Rubber)を材料としたカップインアウトソール11上に、コンプレッションモールデッドEVA(Compression Molded Ethylene-Vinyl Acetate)を材料としたミッドソール12を搭載し、そのミッドソール12の上に、必要に応じてインソール13を搭載している。
【0032】
穴有りブタジエンラバーボールを靴のミッドソール12上に搭載するには、穴有りブタジエンラバーボールの複数個を組み合わせてユニットとして搭載する。図7では、穴有りブタジエンラバーボール15a、15b、15cにより、靴の衝撃吸収・反発ユニット15が構成される。
【0033】
この際、この第1の搭載方法では、穴有りブタジエンラバーボール15a、15b、15cに開けられた穴の貫通方向が足のひらの、つま先から踵に向かう方向に直交する方向に一致するように、3個の穴有りブタジエンラバーボール15a、15b、15cに開けられた穴の貫通方向を揃える。なお、必ずしも、この第1の搭載方法に示されるように、つま先から踵に向かう方向に直交する方向に揃える必要はなく、第1の搭載方法でも、後述の第2の搭載方法のように、所定の面(接地面(水平面))に各ボールの穴の貫通方向が含まれるように方向付けさせてもよい。このように、各穴有りブタジエンラバーボールの穴が開いている方向(穴の貫通方向)をつま先から踵に向かう方向に直交する方向に揃える(接地面に含まれるように方向付けされる)ことで、極性を持つ穴有りブタジエンラバーボールの衝撃吸収・反発特性をそれをミッドソール部に搭載した靴にとって図6に示したように理想的なものとすることができる。
【0034】
そして、ミッドソール12上には、衝撃吸収・反発ユニット15を搭載する踵対応部分に窪み部21を設け、その窪み部21に衝撃吸収・反発ユニット15をはめ込む。この際、各ボール15a、15b、15cがフットヘッド上に0.5〜1.0cm程度頭が出るようにすることで、足裏にその衝撃吸収・反発性能を直接体感してもらうようにする。このようにすることで、古くなった場合などに衝撃吸収・反発ユニット15の交換を容易に行うことができる。
なお、インソール13を搭載する場合は、インソール13上の踵対応部分を刳り貫いて各ボール15a、15b、15cの頭がフットヘッド上に出るようにする。
【0035】
図8は、衝撃吸収・反発ユニットの第1の搭載方法における穴有りブタジエンラバーボールの組み合わせパターンの一例を示す図である。
なお、ここでは、穴有りブタジエンラバーボールが2個、3個、5個の3パターンのみ示してあるが、ボールの直径を小さくすることで、より多くのボールに対する組み合わせパターンも可能である。
図8では、直径30mmの穴有りブタジエンラバーボールについて、ボール2個(23a、23b)を組み合わせた衝撃吸収・反発ユニット23、ボール3個(26a、26b、26c)を組み合わせた衝撃吸収・反発ユニット26、ボール5個(29a、29b、・・・、29e)を組み合わせた衝撃吸収・反発ユニット29、を示している。いずれの場合も、それぞれのボールに開けられた穴の貫通方向は揃えられている。
例えば、ボール2個の組み合わせユニット23は、子供サイズの靴(20.0cm〜22.5cm)などのミッドソール上の30mm×60mm程度の大きさのエリアへの搭載に適している。
【0036】
ボール3個の組み合わせユニット26は、女性サイズの靴(23.0cm〜25.0cm)などのミッドソール上の60mm×60mm程度の大きさのエリアへの搭載に適している。
ボール5個の組み合わせユニット29は、男性サイズの靴(25.5cm〜29.0cm)などのミッドソール上の60mm×90mm程度の大きさのエリアへの搭載に適している。
なお、穴有りブタジエンラバーボールとして、直径30mm以外のものを作ることも可能である。例えば、前足部などの幅の狭いエリアに衝撃吸収・反発ユニットを搭載する場合、そのエリアの狭さに応じて、穴有りブタジエンラバーボールの直径も小さくする。
【0037】
図9は、本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への第1の搭載方法における搭載例を示す図である。
図9では、3個の穴有りブタジエンラバーボール31、32、33を個々に搭載できるように、そのボールの数(ここでは3個)分の半球状の窪みを金型に設けておくことで、ミッドソール35にその半球状の窪みを成型する。そして、その窪みに3個の穴有りブタジエンラバーボール31、32、33をそれぞれはめ込んで(埋め込んで)固定する。
以上で説明した第1の搭載方法では、各ボールの穴の貫通方向を接地面に含まれるように方向付けする際に、その調整に手間を要するという問題があった。
【0038】
この問題を解消すべく、以下に説明する第2の搭載方法では、図10に示すように、一本のワイヤー38を3個の穴有りブタジエンラバーボール41、42、43の穴に貫通させた後に必要な位置で屈曲させて、一体化させている。このようにすれば、複数個の穴有りブタジエンラバーボールを靴のミッドソールに搭載する場合でも、各ブタジエンラバーボールの穴の貫通方向が所定の面(例えば接地面)に含まれるように方向付けさせることができ、上述の方向付けに要する手間を軽減して、極性を持つ穴有りブタジエンラバーボールの衝撃吸収・反発特性をそれをミッドソール部に搭載した靴にとって図6に示したように理想的なものとすることができる。また、ワイヤー38の屈曲の度合いなどを変えることで、搭載する各ボールの位置も自由自在に変えることができ、人それぞれの足裏の力点の違いに臨機応変に対応した調整が可能となる。
【0039】
図11は、本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への第2の搭載方法における搭載例を示す図である。
図11では、2本のワイヤー46、47を使用して全体を一体化させるとともに、局所的には紐51、52、53を使用してそれぞれ3個の穴有りブタジエンラバーボールを一体化させている。
すなわち、ブタジエンラバーボール55a、55b、55cの穴に紐51が挿通されることでボール55a、55b、55cが一体化され、ブタジエンラバーボール56a、56b、56cの穴に紐52が挿通されることでボール56a、56b、56cが一体化され、ブタジエンラバーボール57a、57b、57cの穴に紐53が挿通されることでボール57a、57b、57cが一体化される。
【0040】
そして、ワイヤー46がボール57cの穴の1つに挿通されて、そのボール57cの穴の長手方向をV字の底部とするようにV字に屈曲されて、そのV字の一方の側がボール58、55bの穴にさらに挿通され、そのV字の他方の側がボール59、56bの穴にさらに挿通されている。
また、ワイヤー47がV字に屈曲されて、その一方の側に、ボール57a、58、55bの穴が挿通され、その他方の側に、ボール57b、59、56bの穴が挿通されている。このように、特に負荷のかかるエリアは、紐で複数個(ここでは3個)のボールを予め一体化させておき、その複数個のうちの1つあるいはすべてのボールの穴にワイヤーを挿通させることで、安定性を増すことが可能となる。
図12は、本実施形態の衝撃吸収・反発ユニットの靴への搭載方法の変形例を示す図である。
図12では、3個の穴有りブタジエンラバーボール61a、61b、61cが一体化された衝撃吸収・反発ユニット61が、サンダル63のミッドソールの踵対応部分に形成された窪み部にはめ込まれている。この例ではワイヤーを使用せずに紐のみで一体化を行っている。
【符号の説明】
【0041】
1 穴有り弾性部材
2 穴
5 穴無し弾性部材
6 ダンベル
11 カップインアウトソール
12、35 ミッドソール
13 インソール
15a、15b、15c、23a、23b、26a、26b、26c、29a、29b、29c、29d、29e、31、32、33、41、42、43、55a、55b、55c、56a、56b、56c、57a、57b、57c、58、59、61a、61b、61c 穴有りブタジエンラバーボール
15、23、26、29、61 衝撃吸収・反発ユニット
38、46、47 ワイヤー
51、52、53 紐
63 サンダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の形状を有する弾性部材において、
使用時に圧力がかかると想定される方向と直交する方向に、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、穴を複数開けたことを特徴とする穴有り弾性部材。
【請求項2】
前記複数の穴の方向は同一方向であることを特徴とする請求項1記載の穴有り弾性部材。
【請求項3】
前記穴有り弾性部材は球形であることを特徴とする請求項1または2記載の穴有り弾性部材。
【請求項4】
前記穴有り弾性部材は、ポリブタジエンラバーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の穴有り弾性部材。
【請求項5】
靴の中底に設けられた窪み部にはめ込んで使用する衝撃吸収・反発ユニットにおいて、
該ユニットは複数個の穴有り弾性部材を有し、
前記各穴有り弾性部材は、球形状であり、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、同一方向に開けられた複数の穴を有し、
前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向が所定の面に含まれるように方向付けされてユニットを形成したことを特徴とする靴の衝撃吸収・反発ユニット。
【請求項6】
前記各穴有り弾性部材の穴に挿通するためのワイヤーをさらに有し、
前記各穴有り弾性部材は、前記ワイヤーにより前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向が所定の面に含まれるように方向付けされ、一体化されたことを特徴とする請求項5記載の靴の衝撃吸収・反発ユニット。
【請求項7】
前記各穴有り弾性部材は、ポリブタジエンラバーであることを特徴とする請求項5または6記載の靴の衝撃吸収・反発ユニット。
【請求項8】
穴有り弾性部材を複数はめ込むための窪み部が所定位置に設けられた中底を有する靴において、
前記各穴有り弾性部材は、球形状であり、使用時に必要な強度を維持できる範囲で、同一方向に開けられた複数の穴を有し、
前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向が、所定の面に含まれるように方向付けされて前記窪み部に前記各穴有り弾性部材をはめ込んだことを特徴とする穴有り弾性部材が中底に搭載された靴。
【請求項9】
前記各穴有り弾性部材の穴に挿通するためのワイヤーをさらに有し、
前記各穴有り弾性部材は、前記ワイヤーにより前記各穴有り弾性部材の穴が開いている方向が所定の面に含まれるように方向付けされ、一体化されたことを特徴とする請求項8記載の穴有り弾性部材が中底に搭載された靴。
【請求項10】
前記各穴有り弾性部材は、ポリブタジエンラバーであることを特徴とする請求項8または9記載の穴有り弾性部材が中底に搭載された靴。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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