説明

空中放電を減衰させる装置

本出願の発明は、トロイド、および1つまたはいくつかの尖った端部を有する棒のアセンブリと、フィルタシステムとを備え、棒の1つまたは複数の尖った端部の周りに、空気イオン化とともに電界が形成され、トロイドの周りの空間内で、電界の形成および空気イオン化が最小化され、尖った端部がトロイドレベルより上に突出し、またフィルタシステムが雷光の放電を減衰させる装置を提供する。本発明の装置は、接地まで届く低抵抗ケーブルに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の装置は、空中放電によって生成される雷光(lightning rays)の吸引力(attraction)、放電、チャネリング、減衰(attenuation)、および放散(dissipation)に関係する。
【背景技術】
【0002】
雷光は、建造物、セルラー式アンテナ、および多くの他の構造物にとって絶え間ない脅威であり、雷光がもつ高い電流によって大きな損傷がもたらされる。
【0003】
18世紀末、ベンジャミンフランクリン(Benjamin Franklin)が、空中放電を接地に引き付け、したがって建造物および高い構造物を雷光によってもたらされる損傷から保護するための避雷針(lightning rod)を発明した。避雷針は、上端部を尖らせた(sharpened)金属製の棒を有することを特徴とする。避雷針は、接地まで届く低抵抗ケーブルに接続され、よって放電を放散する。本発明の分野では、重要な想定は、避雷針の周りの空間内の空気イオン化とともに電界が形成されるため、雷光は避雷針によって優先的に引き付けられるという事である。
【0004】
1918年、ニコラテスラ(Nikola Tesla)が、米国特許第1,266,175号において、棒の端部に尖っていない突出部を有し、これらの突出部がこの棒の最上端部から照射(irradiate)し、前記尖っていない突出部は曲がっていて、それにより各突出部の終端が下方へ向けられることを特徴とする発明について説明した。テスラによれば、前記発明は、大気からの吸引力、離脱、または放電を防止する。テスラは、自身の特許の記載において、フランクリンの尖らせた棒は、空気をイオン化するときに雷光への吸引力を増大させると説明した。対照的に、テスラは、自身の発明では、尖っていない終端を下方へ向けることで電界の形成および空気イオン化が回避されるので放電を防止し、したがって雷光への吸引力を最小化すると述べている。テスラは、尖っていない突出部を有する棒に雷光が引き付けられた場合でも、前記棒はケーブルを用いて接地に接続され、したがって放電を放散すると述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本特許出願は、フランクリンの尖らせた棒に関連すると想定されてきた原理を、尖っていない突出部を有する棒がどのように雷光から保護するのかについて説明するためにテスラが記載した理論と調和させる新しい発明について説明する。さらに、本出願の発明は、放電を減衰させる要素について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の発明は、トロイド(toroid)、および1つまたはいくつかの尖った端部(pointed ends)を有する棒のアセンブリと、フィルタシステムとを備え、棒の1つまたは複数の尖った端部の周りに、空気イオン化とともに電界が形成され、トロイドの周りの空間内で、電界の形成および空気イオン化が最小化され、尖った端部がトロイドレベルより上に突出し、およびフィルタシステムが雷光の放電を減衰させる装置を提供する。本発明の装置は、接地(ground)まで届く低抵抗ケーブルに接続される。
【0007】
具体的には、本発明は、放電を引き付け、減衰させ、かつ放散する装置であって、
A.A1)その最上端部が尖った垂直棒、およびA2)放射状突出部(radial extensions)によってこの棒に接続された円形(circular)トロイド
を備えるアセンブリと;
B.アセンブリの棒の最下端部を支持するアイソレータ(断路器、isolator)と;
C.少なくとも2つの要素を備え、これらの要素がそれぞれアイソレータに接合され、これらの要素が上部レベルから下部レベルまで連続して配置され、第1の要素が最も上にあり、第1の要素がアセンブリ棒に直接接続された、放電のためのフィルタシステム;
とを特徴とする装置を提供する。
【0008】
フィルタシステムの2つの連続する要素間では、放電が存在するとき、空気中の気体の分子のイオン化によってプラズマ効果が引き起こされ、フィルタシステムの最も下にある要素が、ケーブルを用いて接地に接続される。
【0009】
本発明の他の実施形態では、アセンブリは、A1)垂直棒と、A2)垂直棒の最上端部に位置する複数の尖った端部を有する分散器(disperser)と、A3)放射状突出部によって棒に接続された円形トロイドとを備える。
【0010】
本発明のもう1つの態様では、アセンブリは、棒がエネルギー源によって電圧を加えられ、このエネルギー源が送電線であることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の実施形態では、アセンブリは、棒がエネルギー源によって電圧を加えられ、このエネルギー源が昇圧変圧器(elevator transformator)であることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様では、放電のためのフィルタシステムは、少なくとも2つの要素を有し、これらの要素がそれぞれアイソレータに接合され、これらの要素が上部レベルから下部レベルまで垂直にかつ連続して位置し、第1の要素が最も上にあり、第1の要素がアセンブリ棒に直接接続されることを特徴とする。
【0013】
本発明の別の実施形態では、放電のためのフィルタシステムは、少なくとも2つの要素を有し、これらの要素がそれぞれアイソレータに接合され、これらの要素が上部レベルから下部レベルまで連続してらせん状(spiral)に位置し、第1の要素が最も上にあり、第1の要素がアセンブリ棒に直接接続されることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる目的および利点は、図の説明、本発明の詳細な説明、および特許請求の範囲を読めばより明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の装置の一実施形態の2次元図である。
【図2】本発明の装置のアセンブリの一実施形態の2次元図である。
【図3】本発明の装置のアセンブリの一実施形態の2次元図である。
【図4】本発明の装置の一実施形態の3次元図である。
【図5】本発明の装置の一実施形態の上部平面からの2次元図である。
【図6】本発明の装置の一実施形態の下部平面からの2次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の装置の最も好ましい実施形態を示す。この装置は、
A.その最上端部(2)が尖った垂直棒(1)、および放射状突出部(4)によってこの棒に接続された円形トロイド(3)
を備えるアセンブリ(図2)と、
B.アセンブリの棒(1)の最下端部(6)を支持するアイソレータ(5)(図1)と、
C.少なくとも2つの要素(7Aおよび7)(図1、4〜6)を備え、要素(7)がそれぞれ好ましくはブラケット(8)(図1)によってまたは他の接合機構を使用してアイソレータ(5)に接合され、要素(7)が上部レベルから下部レベルまで連続して位置し、第1の要素(7A)(図1、4、および5)が最も上にあり、第1の要素(7A)図4および5)がアセンブリの棒(1)に直接接続された、放電のためのフィルタシステムとを特徴とする。
【0017】
フィルタシステムの2つの連続する要素(7)間では、放電が存在するとき、空気中の気体の分子のイオン化によってプラズマ効果が引き起こされ、フィルタシステムの最も下にある要素が、ケーブルを用いて、放電を放散するように適合された接地に接続される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、アセンブリは、垂直棒(1)と、垂直棒(1)の最上端部に位置する複数の尖った端部(9)(図1、3、4)を有する分散器と、放射状突出部(4)によって棒(1)に接続された円形トロイド(3)とを備える。
【0019】
本発明の別の態様では、アセンブリは、棒(1)がエネルギー源によって電圧を加えられ、このエネルギー源が送電線であることを特徴とする。
【0020】
本発明の別の実施形態では、アセンブリは、棒(1)がエネルギー源によって電圧を加えられ、このエネルギー源が昇圧変圧器であることを特徴とする。
【0021】
本発明の分野で最も受け入れられた配置を想定すると、本発明の最も好ましい実施形態は、いくつかの尖った端部の分散器装置をもつアセンブリを有するはずであり、いくつかの尖った端部の分散器装置の周りの空間内では、空気イオン化が増大するとともに広い電界が形成され、したがってそれとともに吸引力が高まり、また雷光の放電の可能性が高まるはずである。本発明の最も好ましい実施形態では、棒はエネルギー源によって電圧を加えられ、その結果電圧を加えられた棒により、電界空間およびイオン化された空気がさらに増大して、棒を介して雷光が引き付けられかつ放電される可能性がさらに増大するはずである。
【0022】
トロイドの機能により、テスラの理論を本発明に組み込むことができる。トロイドは、棒の下部部分に配置されることが好ましい。トロイドの位置により、仮想水平面が決定する。トロイドは、その円形の幾何形状および全く尖っていない形状のため、前記仮想水平面より下に位置する空間内で電界の形成および空気イオン化が生じる可能性を最小化する。言い換えれば、電界および空気イオン化は、トロイド位置によって決定される仮想水平面より上へ突出する上部空間内の棒の1つまたは複数の尖った端部の周りで発生し、一方前記仮想水平面より下では、電界の形成および空気イオン化が生じる可能性が最小化される。したがって、雷光が1つまたは複数の尖った端部によって引き付けられかつ放電される可能性がより高ければ、トロイドレベルで交差する仮想水平面の空間より下に位置する構造によって前記雷光が引き付けられまたは放電される可能性は最小になる。
【0023】
本発明は、棒が電圧を加えられていない場合でも、たとえば、棒に電圧を加える源が故障したとき、または棒に電圧を加える源が存在しないときでも、棒の尖った端部によって雷光が引き付けられかつ放電される可能性を高くすることと、トロイドのレベルより下で雷光が引き付けられかつ放電される可能性を最小にすることを両立させる。
【0024】
本発明の他の態様では、放電のためのフィルタシステムは、少なくとも2つの要素(7)を有し、要素(7)がそれぞれ好ましくはブラケット(8)によってまたは他の接合機構によってアイソレータ(5)に接合され、これらの要素が上部レベルから下部レベルまで垂直にかつ連続して位置し、第1の要素(7A)が最も上にあり、第1の要素(7A)がアセンブリの棒(1)に直接接続されることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の実施形態では、放電のためのフィルタシステムは、少なくとも2つの要素(7)を有し、これらの要素がそれぞれ好ましくはブラケット(8)によってまたは他の接合機構によってアイソレータ(5)に接合され、要素(7)が上部レベルから下部レベルまで連続してらせん状(spiral form)に位置し、第1の要素(7A)が最も上にあり、第1の要素(7A)がアセンブリの棒(1)に直接接続されることを特徴とする。
【0026】
本発明の最も好ましい方法では、フィルタの要素の数は少なくとも3つであり、また前記要素は、上部から下部までらせん形状に配置され、したがってらせん形状により、アイソレータの周りにより多くの接続された要素を配置することができる。これらの要素はまた、ある要素がすぐ上の要素の真下に位置するように垂直に配置することもできる。1つの要素と別の要素の距離は、放電が存在するときに2つの要素間の空気が最適のイオン化に達するような距離であることが重要であり、したがって、2つの要素間の空気中を進む電流アーク(current arc)が生成される可能性がより高くなる。間に位置する空間内のイオン化された空気中を伝わる(travels)電流アークが、プラズマ効果を規定するものである。2つの要素間の距離は25センチメートルより小さいことが好ましいが、2つの要素間の距離がより大きい場合でもプラズマ効果を発生させることは可能である。2つの要素間の各電流アークは、放電の電流の大きさを減衰させるはずである。より多くの要素を有するフィルタでは、電流アークがより多くなり、また放電の電流の減衰がより大きくなるはずである。
【0027】
本記載は本発明の好ましい実施形態を提示するが、特許請求の範囲内に含まれる基本的な概念および原理から離れることなく、これらの部分の形状および配置にさらなる変更を加えることもできる。
【実施例】
【0028】
最上端部が尖った棒と、放射状突出部によって前記棒の下部部分に接続された円形トロイドとのアセンブリを備える装置を構築した。前記棒の最下端部をアイソレータに接合した。前記アイソレータには、垂直軸に沿って上部から下部まで位置する6つの要素によって構成されたフィルタシステムを接続し、最も上にある要素をアセンブリの棒に直接接続した。フィルタ要素は、互いの間に直接的な物理的接続をもたない。1つのフィルタ要素から次の要素までの距離は9センチメートルとした。これらの要素をブラケットによってフィルタに接続した。フィルタの最も下にある要素をケーブルに接続し、このケーブルをさらに、接地システムに接続した。電流が棒に印加された時に、発生した電流のアンペア数を接地レベルで測定した。
【0029】
60サイクルで電圧11万5千ボルトの変圧器(transformator)によって生成された5〜7アンペアの電流が棒に印加されたとき、接地レベルでの電流の大きさは54〜36マイクロアンペアで変動し、これは、電流の大幅な減衰を示す。
【符号の説明】
【0030】
1 垂直棒
2 最上端部
3 円形トロイド
4 放射状突出部
5 アイソレータ
6 最下端部
7 要素
7A 要素
8 ブラケット
9 尖った端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電を引き付け、減衰させ、かつ放散する装置であって、
A.A1)その最上端部が尖った垂直棒、およびA2)放射状突出部によって前記棒に接続された円形トロイドを備えるアセンブリと;
B.前記アセンブリの前記棒の最下端部を支持するアイソレータと;
C.少なくとも2つの要素を備え、前記要素がそれぞれ前記アイソレータに接合され、前記要素が上部レベルから下部レベルまで連続して配置され、第1の要素が最も上にあり、前記第1の要素が前記アセンブリ棒に直接接続される、放電のためのフィルタシステムとを有し;
前記フィルタシステムの2つの連続する要素間では、放電が存在するとき、空気中の気体の分子のイオン化によってプラズマ効果が引き起こされ、前記フィルタシステムの最も下にある要素が、ケーブルを用いて接地に接続されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記アセンブリが、A1)垂直棒と、A2)前記垂直棒の最上端部に位置する複数の尖った端部を有する分散器と、A3)放射状突出部によって前記棒に接続された円形トロイドとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アセンブリが、前記棒がエネルギー源によって電圧を加えられ、前記エネルギー源が送電線であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記アセンブリが、前記棒がエネルギー源によって電圧を加えられ、前記エネルギー源が昇圧変圧器であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
放電のための前記フィルタシステムが、少なくとも2つの要素を有し、前記要素がそれぞれアイソレータに接合され、前記要素が上部レベルから下部レベルまで垂直にかつ連続して位置し、第1の要素が最も上にあり、前記第1の要素が前記アセンブリ棒に直接接続されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
放電のための前記フィルタシステムが、少なくとも2つの要素を有し、前記要素がそれぞれ前記アイソレータに接合され、前記要素が上部レベルから下部レベルまで連続してらせん状に位置し、第1の要素が最も上にあり、前記第1の要素が前記アセンブリ棒に直接接続されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529609(P2010−529609A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510901(P2010−510901)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001437
【国際公開番号】WO2008/149208
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509333771)
【出願人】(509333760)
【Fターム(参考)】