説明

空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造及び該捕集具の装着部構造を備えた空中浮遊菌捕集機

【課題】形状の異なる捕集具に対応することができる空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造を提供すること。
【解決手段】第1の捕集具2Aに係止爪23を形成し、この係止爪23を台座3に形成した切欠部31aを通して溝31に差し込み、第1の捕集具2Aを回転させることによって、台座3に形成した第1の凹部32に嵌め込んで装着可能とするとともに、第1の捕集具2Aよりも平面形状の大きい第2の捕集具2Bを、台座3の第1の凹部32の上方に形成した第2の凹部33に嵌め込んで装着可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に浮遊する細菌、真菌等の微生物(以下、「空中浮遊菌」という。)を捕集し、培養したり、ATP計測により菌の量を計数することにより、バイオクリーンルームや無菌食品、無菌充填飲料等の製造設備等の環境を測定するために用いられる空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造に関し、特に、捕集具の装着部に汎用性を持たせるようにした空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造及び該捕集具の装着部構造を備えた空中浮遊菌捕集機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオクリーンルームや無菌製剤、無菌食品、無菌充填飲料等の製造設備等の環境を測定するために、空中浮遊菌を捕集し、培養したり、ATP計測により菌の量を計数することが行われており、このために、空中浮遊菌捕集機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−300246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空中浮遊菌の計測のために、ゼラチンを含む専用の担体に空中浮遊菌を固定し、ゲル状の担体を溶解してゾル化し、ATP計測を行うためには、作業性等の点から、専用の担体容器が使用されている。
【0005】
一方、例えば、無菌製剤の製造設備の環境測定方法として、寒天培地を使用した平板培養法が、公定法(「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」の求める基準、いわゆる、「GMP」に適合する方法。)として一般的に使用されている。
この平板培養法では、寒天培地(担体)の容器として、直径90mmのガラス製シャーレや使い捨て可能なプラスチック製シャーレが使用されている。
このように、公定法に適用される空中浮遊菌捕集機は、直径90mmのシャーレが使用できることが必要条件となっている。
【0006】
このように、ATP計測に適用される空中浮遊菌捕集機と、公定法に適用される空中浮遊菌捕集機とは、捕集具として、専用の担体容器と直径90mmのシャーレという形状の異なる捕集具を用いるため、当然、捕集具の装着部の構造が異なり、ATP計測と公定法の両方の方法を実施する必要のある、例えば、無菌製剤の製造設備の管理者は、それぞれに適合する空中浮遊菌捕集機を保有する必要があった。
【0007】
本発明は、形状の異なる捕集具に対応することができる空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造及び該捕集具の装着部構造を備えた空中浮遊菌捕集機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造は、担体を収容した捕集具を装着し、前記担体の表面に、吸引ヘッドに形成したノズル孔から吸引される空気に含まれる空中浮遊菌を付着させるようにした空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造において、第1の捕集具に係止爪を形成し、該係止爪を台座に形成した切欠部を通して溝に差し込み、該第1の捕集具を回転させることによって、台座に形成した第1の凹部に嵌め込んで装着可能とするとともに、前記第1の捕集具よりも平面形状の大きい第2の捕集具を、前記台座の第1の凹部の上方に形成した第2の凹部に嵌め込んで装着可能とするようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、吸引ヘッドに形成したノズル孔から吸引される空気に含まれる空中浮遊菌を慣性法により付着させるようにすることができる。
【0010】
また、第1の捕集具及び第2の捕集具に適合したノズル孔が形成された第1の吸引ヘッド及び第2の吸引ヘッドを選択して用いるようにすることができる。
【0011】
また、上記の捕集具の装着部構造を備えた本発明の空中浮遊菌捕集機は、空中浮遊菌捕集機の重心位置に揺動自在に取っ手を配設するとともに、該取っ手を持って空中浮遊菌捕集機を吊り下げた状態にしたとき、取っ手が空中浮遊菌捕集機の本体に固定されるようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造によれば、1台の空中浮遊菌捕集機でもって形状の異なる捕集具に対応することができることから、例えば、ATP計測と公定法の両方の方法を実施する場合に、1台の空中浮遊菌捕集機を共用することができる。
【0013】
また、第1の捕集具及び第2の捕集具に適合したノズル孔が形成された第1の吸引ヘッド及び第2の吸引ヘッドを選択して用いるようにすることにより、適切な条件で、例えば、ATP計測と公定法の両方の方法を実施することができる。
【0014】
また、本発明の空中浮遊菌捕集機によれば、台座に捕集具を装着した状態で空中浮遊菌捕集機を安定して持ち運ぶことができ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造を適用した空中浮遊菌捕集機の一実施例を示し、(a1)はATP計測を行うための専用の担体容器を装着した状態を示す説明図、(a2)は同要部の拡大図、(b)は直径90mmのシャーレを装着した状態を示す説明図である。
【図2】空中浮遊菌捕集機の捕集具を示し、(a)はATP計測を行うための専用の担体容器を示す説明図、(b)は直径90mmのシャーレを示す説明図である。
【図3】本発明の空中浮遊菌捕集機の取っ手の取付部の説明図で、(a)は取っ手を持って空中浮遊菌捕集機を吊り下げた状態を、(b)は空中浮遊菌捕集機を載置した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に、本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造を適用した空中浮遊菌捕集機の一実施例を示す。
【0018】
この空中浮遊菌捕集機1は、担体を収容した捕集具2A、2Bを装着する台座3を備え、台座3に装着した捕集具2A、2Bに収容した担体21、24の表面に、吸引ヘッド4A、4Bに形成したノズル孔41A、41Bから吸引される空気に含まれる空中浮遊菌を慣性法により衝突、付着させるようにしたものである。
【0019】
そして、この空中浮遊菌捕集機1は、具体的には、密閉構造とした筒状の胴部10の上部に、ノズル孔41A、41Bを形成した吸引ヘッド4A、4Bを、その内部に台座3及び台座3に装着される捕集具2A、2Bを収容できる空間を形成するようにして、着脱可能に配設するようにしている。
【0020】
台座3の下方には、通気路5を介して、吸引ヘッド4A、4Bの内部を負圧にすることによって、吸引ヘッド4A、4Bに形成したノズル孔41A、41Bから空気を吸引し、この空気に含まれる空中浮遊菌を慣性法により、台座3に装着した捕集具2A、2Bに収容した担体21、24の表面に、衝突、付着させるようにするためのターボファン6を配設し、さらに、ターボファン6に吸引された、空中浮遊菌が担体21、24の表面に衝突、付着することにより除去された空気を、ターボファン6から排出され、ターボファン6内で発生した発塵粒子等をフィルタ7を通して除去した後に、大気に放出するようにしている。
【0021】
また、この空中浮遊菌捕集機1は、商用電源のない場所でも使用することができるように、充電池等のバッテリ8を着脱可能に備えるようにしている。
【0022】
また、この空中浮遊菌捕集機1の持ち運びは、空中浮遊菌捕集機1の本体の重心位置に揺動自在に取っ手9を配設するとともに、この取っ手9を持って空中浮遊菌捕集機1を吊り下げた状態にしたとき、取っ手が空中浮遊菌捕集機1の本体に固定されるようにしている。
具体的には、図3(a)(取付ねじを省略)に示すように、取っ手9を持って空中浮遊菌捕集機1を吊り下げるために取っ手9を引き上げると、取っ手9を軸支する対向する平面を備えた軸部92が、取っ手9に形成した軸孔91の対向する平面を備えた狭小部に嵌入し、取っ手9を持って空中浮遊菌捕集機1を吊り下げた状態では、取っ手9が空中浮遊菌捕集機1の本体に固定され、取っ手9に対する空中浮遊菌捕集機1の本体の揺動が防止できるようにしている。
一方、空中浮遊菌捕集機1を載置し、取っ手9をおろした状態では、図3(b)(取付ねじを省略)に示すように、取っ手9を軸支する軸部92が、取っ手9に形成した軸孔91の大径部に位置し、取っ手9は空中浮遊菌捕集機1の本体に対して揺動可能となるようにされ、空中浮遊菌捕集機1による空中浮遊菌の捕集時に、取っ手9が邪魔にならないようにしている。
【0023】
この場合において、台座3に、形状の異なる捕集具2A、2B、具体的には、ATP計測用の専用の担体容器からなる捕集具2Aと、直径90mmのシャーレからなる捕集具2Bとを選択的に装着することができるようにしている。
【0024】
具体的には、平面形状の小さいATP計測用の専用の担体容器からなる捕集具2Aは、ゼラチンを含む専用の担体21を収容した捕集皿22を上部に備えるようにし、下部に1個又は複数個(本実施例においては、120°の間隔をあけて3個)の係止爪23を形成した構造とし、係止爪23を台座3に形成した切欠部31aを通して溝31に差し込み、捕集具2Aを回転させることによって、台座3に形成した第1の凹部32に嵌め込んで装着する構造(バヨネットマウント構造)を採用している。
この場合、溝31には、捕集具2Aを所定角度、例えば、30°回転させたときに係止爪23が当接する停止突起(図示省略)を設けることができる。
上記構造の捕集具2Aは、捕集皿22に直接に手を触れずに、台座3に装着することができ、ATP計測のノイズを低減できるようにしている。
なお、捕集具2Aに取り付ける捕集皿22は、任意の形状のものを選択可能である。
【0025】
このATP計測用の専用の担体容器からなる捕集具2Aを装着する場合には、この捕集具2Aに合わせたノズル孔41Aが形成された吸引ヘッド4A、具体的には、200個程度の多数のノズル孔41Aが形成された吸引ヘッド4Aを用いるようにし、ノズル孔41Aと担体21との間隔が空中浮遊菌が衝突して捕集できる距離、例えば、数mm程度、本実施例においては、1.6mmの距離となるように設定するようにする。
なお、ノズル孔41Aと担体21との間隔の調整は、空中浮遊菌捕集機1の構成部材の調節や捕集具2Aの選択により、さらに、微調整は、担体21の充填量を調節することにより行うことができる。
【0026】
一方、ATP計測用の専用の担体容器からなる捕集具2Aよりも平面形状の大きい90mmシャーレは、寒天培地からなる担体24を収容するようにし、台座3に形成した第1の凹部32の上方に同心状に形成した第2の凹部33に嵌め込んで装着する構造を採用している。
この場合、台座3に形成する凹部33は、若干大きさに違いのある汎用の90mmシャーレのすべてに対応することができるように、90mmシャーレの平面形状よりも若干大きく形成するようにする。
また、必要に応じて、凹部33を区画する立ち上がり縁34に、90mmシャーレの外周表面に当接して、付勢する押さえバネからなる押圧係止部材35を複数個(本実施例においては、120°の間隔をあけて3個)配設するようにすることができる。
【0027】
この90mmシャーレからなる捕集具2Bを装着する場合には、この捕集具2Bに合わせたノズル孔41Bが形成された吸引ヘッド4Bを用いるようにし、ノズル孔41Bと担体24との間隔が空中浮遊菌が衝突して捕集できる距離、例えば、数mm程度、本実施例においては、1.6mmの距離となるように設定するようにする。
なお、ノズル孔41Bと担体24との間隔の調整は、空中浮遊菌捕集機1の構成部材の調節により、さらに、微調整は、担体24の充填量を調節することにより行うことができる。
【0028】
この空中浮遊菌捕集機1は、台座3に、ATP計測用の専用の担体容器からなる捕集具2Aと、直径90mmのシャーレからなる捕集具2Bとを選択的に装着することができるようにし、さらに、それぞれの捕集具2A、2Bに適合したノズル孔41A、41Bが形成された吸引ヘッド4A、4Bを用いるようにしているので、1台の空中浮遊菌捕集機1をATP計測と公定法とに共用することができる。
【0029】
なお、この空中浮遊菌捕集機1に用いる吸引ヘッド4A、4Bは、例えば、金属製でオートクレーブ滅菌を行うことによって再使用できるものとしたり、合成樹脂製でワンウェイ(使い捨て)のものとすることができる。
【0030】
また、この空中浮遊菌捕集機1は、持ち運びを、空中浮遊菌捕集機1の本体の重心位置に揺動自在に取っ手9を配設するとともに、この取っ手9を持って空中浮遊菌捕集機1を吊り下げた状態にしたとき、取っ手が空中浮遊菌捕集機1の本体に固定されるようにしているが、これにより、台座3に捕集具2A、2Bを装着した状態で空中浮遊菌捕集機1を安定して持ち運ぶことができ、作業性を向上することができる。
【0031】
以上、本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造によれば、1台の空中浮遊菌捕集機でもって形状の異なる捕集具に対応することができることから、ATP計測と公定法の両方の方法を実施する必要のある、例えば、無菌製剤の製造設備の空中浮遊菌捕集機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 空中浮遊菌捕集機
2A 捕集具(第1の捕集具(ATP計測用の専用の担体容器))
2B 捕集具(第2の捕集具(90mmシャーレ))
21 担体
22 捕集皿
23 係止爪
24 担体
3 台座
31 溝
31a 切欠部
32 第1の凹部
33 第2の凹部
34 立ち上がり縁
35 押圧係止部材
4A 吸引ヘッド
4B 吸引ヘッド
41A ノズル孔
41B ノズル孔
5 通気路
6 ターボファン
7 フィルタ
8 バッテリ
9 取っ手
91 軸孔
92 軸部
10 胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を収容した捕集具を装着し、前記担体の表面に、吸引ヘッドに形成したノズル孔から吸引される空気に含まれる空中浮遊菌を付着させるようにした空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造において、第1の捕集具に係止爪を形成し、該係止爪を台座に形成した切欠部を通して溝に差し込み、該第1の捕集具を回転させることによって、台座に形成した第1の凹部に嵌め込んで装着可能とするとともに、前記第1の捕集具よりも平面形状の大きい第2の捕集具を、前記台座の第1の凹部の上方に形成した第2の凹部に嵌め込んで装着可能とするようにしたことを特徴とする空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造。
【請求項2】
吸引ヘッドに形成したノズル孔から吸引される空気に含まれる空中浮遊菌を慣性法により付着させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造。
【請求項3】
第1の捕集具及び第2の捕集具に適合したノズル孔が形成された第1の吸引ヘッド及び第2の吸引ヘッドを選択して用いるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空中浮遊菌捕集機の捕集具の装着部構造。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の捕集具の装着部構造を備えた空中浮遊菌捕集機であって、空中浮遊菌捕集機の重心位置に揺動自在に取っ手を配設するとともに、該取っ手を持って空中浮遊菌捕集機を吊り下げた状態にしたとき、取っ手が空中浮遊菌捕集機の本体に固定されるようにしてなることを特徴とする空中浮遊菌捕集機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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