説明

空寸調整装置

【課題】スクイズ容器の熱垂れ変形を抑止し、スクイズ容器を汚損させることもなく、充填液の液面高さを揃えて商品としての見栄えを整えることが容易にできる装置を提供する。
【解決手段】容器保持手段に吊下されたスクイズ容器100の底部104に当接させる底板11と、カムフォロア14とを有する複数個の底板ユニット10を備えており、各底板ユニット10は、鉛直方向へ移動自在に支持板3に支承されているとともに、水平方向へ移動可能に配列され、少なくとも空寸調整区間においては、対応する容器保持手段と鉛直方向に対を為して移動可能に配設された底板昇降機構2、および、カムフォロア14を上面に摺接可能とされた調整用摺接部21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクイズ容器の口部をシール機やキャッパー等の密封装置によって密封する際の、前記スクイズ容器内の口頸部に形成される空寸(=ヘッドスペース:容器の口部から液面、すなわち入味線までの深さ寸法)を調整するための空寸調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外部からの押圧により撓む外周面を有する容器に充填液を充填させ、封栓シールやキャップなどで密封をする際に、前記容器内の充填液の液面高さを一定にするべく、封栓直前に該容器を外部から拘束抑圧し、その容積を変化させて該容器の液面高さを見かけ上一定の高さに揃えた状態としながら封栓することが行われており、そのための装置も種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転テーブル上に自立させたPET(ポリエチレンテレフタレート:POLYETHYLENE TEREPHTHALATE)等の樹脂製のボトル(以下、PETボトル)の底部周縁部より内側部分を押し上げて内部容積を減少させ、充填液の液面高さを上昇させるように構成されたキャッピング装置が開示されている。
【0004】
具体的には、このキャッピング装置においては、回転テーブルに、供給される各PETボトルの配置位置に対応させて挿通孔が形成されているとともに、該挿通孔に対し出没可能に形成された押圧部材を有している。そして、スクリューキャップを把持したキャッピングヘッドが昇降駆動する密封位置においてキャッピングヘッドを下降させ、把持したスクリューキャップを、充填物が充填されたPETボトルの口部上端部に当接させた状態で、前記押圧部材を上昇させてPETボトルの底部の周縁部よりも内側部分に押し当て、PETボトルを上下間で強力に押圧することにより、スクリューキャップのねじ部とボトルの口部との間隙を介して空寸にある気体を放出し、空寸を縮小させた状態で封栓を行なうように構成されている。
【0005】
ここで、調味料等の食品、化粧品、洗剤等に使用される容器として、柔軟性があり、充填物をしぼり出すことができるいわゆるスクイズ容器が多用されている。
【0006】
このスクイズ容器は、その口頸部に連続させて一体形成されている充填部本体が該充填物を絞り出し可能に柔軟性(スクイズ性)を有する素材により形成されている軟質容器であるため、自立状態が不安定で、座屈し易く、その口部の高さ位置を揃えた状態で、封栓シールやキャップなどで密封をする密封位置へ供給することは困難であった。
【0007】
そこで、従来においては、このスクイズ容器の座屈を防止し、口部を略同じ高さ位置に揃えた状態で密封位置へ供給するべく、袴と称されるホルダーを該スクイズ容器に下方から嵌合させ、スクイズ容器の充填部本体回りを覆って自立を補助した状態で、該スクイズ容器を密封位置に移送させていた(袴を利用する容器移送について、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、このホルダーを利用したスクイズ容器の移送、密封等の作業は、スクイズ容器にホルダーを嵌合させたり、外したりする工程が増えてしまう。
【0009】
また、使用したホルダーをスクイズ容器の移送の下流側から上流側へ戻して循環させるためのシステムが必要となる。そして、ホルダーを循環させるため、例えば、コンベア装置を配設したり、スクイズ容器とホルダーとの嵌合や取り外しのための装置を配設した場合には、その装置のコストやメンテナンスも必要となる。また、スクイズ容器の大きさや形状に合わせて、異なる大きさや形状のホルダーを準備しなければならず、1種毎のホルダーの個数も大量に必要となり、その保管や管理も煩雑となる等の様々な問題を抱えていた。
【0010】
そこで、たとえば、スクイズ容器の口外周にフランジを形成し、そのフランジの下面側をネックグリッパ等の容器保持手段により支持し、荷重を前記フランジで受けつつ吊下させたスクイズ容器を移送し、密封することが考えられる(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
しかしながら、容器保持手段で支持し、吊下した状態のスクイズ容器は、特に、該充填物が加熱された状態であるような場合には、充填物の熱と自重とで充填本体部分が延伸し(スクイズ容器の垂れ変形)、容積が増えて、空寸を増加させることが懸念される。これは、空寸をなるべく少なくして密封をするという意向に反するものとなる。
【0012】
前述の特許文献1に開示されたキャッピング装置のように、容器保持手段によって把持され、吊下されて移送されている充填液が充填されたスクイズ容器の一部を押圧部材で押圧して、スクイズ容器内の空寸にある気体を放出させることも考えられるが、特に、スクイズ容器の変形は一様ではないため、押圧部材を常に同じように押圧させて、空寸に反映させることは極めて困難である。
【0013】
また、充填物を充填させた状態で移送されたスクイズボトルを密封位置において急に押圧すれば、充填物が口部から噴出することも懸念され、商品を汚損したり、作業環境の衛生状態にも悪影響を及ぼすことになりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−10698号公報
【特許文献2】特開2000−313519号公報
【特許文献3】特公昭62−18435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記した問題点を解決するためになされたもので、ホルダーを使用することなく、容器保持手段によって把持され、吊下されて移送される充填液が充填されたスクイズ容器を密封する際に、スクイズ容器の充填液の熱等による垂れ変形を抑止し、確実にスクイズ容器内の空寸にある気体を放出して空寸を調整し、そこに残存する気体が充填物を劣化させる原因となるリスクを削減するとともに、空寸調整の際に、スクイズ容器を汚損させることもなく、充填液の液面高さを揃えて、商品としての見栄えを整えることが容易にでき、しかも、設定調整の簡便な空寸調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決する本発明の空寸調整装置は、密封装置における移送経路の受入口から供給され、容器保持手段により口頸部を保持して吊下された状態で前記移送経路の密封位置へ移送されるスクイズ容器の空寸を、前記移送経路上における前記密封位置と該密封位置の直前範囲とからなる空寸調整区間において調整するための空寸調整装置であって、前記容器保持手段に吊下されたスクイズ容器の底部に当接させる底板と、カムフォロアとを有する複数個の底板ユニットを備えており、前記各底板ユニットは、鉛直方向へ移動自在に支持板に支承されているとともに、水平方向へ移動可能とされ、少なくとも前記空寸調整区間においては、対応する容器保持手段と鉛直方向に対を為して移動可能に配設された底板昇降機構と、前記カムフォロアを上面に摺接可能とされた調整用摺接部を有し、前記調整用摺接部を密封位置に向かって上昇するように傾斜させ、かつ、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点を前記密封位置に対応させるようにして配置されるとともに、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点にカムフォロアを位置させた該底板ユニットの前記底板が前記スクイズ容器を押上げて、前記スクイズ容器内に所定量の空寸を形成するように配設されるカム部材とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の空寸調整装置は、充填液が充填されたスクイズ容器を密封する際に、前記スクイズ容器の移送経路の空寸調整区間において、対応する容器保持手段と対を為して移動する前記各底板ユニットのカムフォロアを、前記密封位置に向かって上昇する傾斜面とされた前記調整用摺接部に摺接移動させることにより、鉛直方向に移動自在に支承された底板ユニットの底板を上昇させ、前記底板を前記密封位置に移送されるスクイズ容器の底部に次第に強く押し当てていくようにする。
【0018】
その際、カム部材は、前記調整用摺接部におけるカムフォロアの移動軌跡の最上点を前記密封位置に対応させて位置させて配設されており、該密封位置において、移動軌跡の最上点に位置するカムフォロアが配設された前記底板ユニットの底板が前記スクイズ容器に所定量の空寸を形成するように押圧可能に配設されるので、該密封位置においては、該スクイズ容器に充填された充填物の所定量の押し上げを完了させ、スクイズ容器に所望の空寸を得ることができる。
【0019】
前記密封位置においては、密封装置により、空寸が調整されたスクイズ容器の口部に対し、密封シール、スクリューキャップ、押し込みキャップ等を用いる封栓が施される。そして、密封位置においてスクイズ容器に封栓が為された後は、前記底板の該スクイズ容器に対する当接を解除する。
【0020】
このように作用する本発明の空寸調整装置によれば、ホルダーを利用せず、容器保持手段によって把持され、吊下されて移送されるスクイズ容器を密封する場合に、充填物が充填されたスクイズ容器を下方から底板を当接させることで、スクイズ容器の垂れ変形の発生を抑止することができ、スクイズ容器内の空寸にある気体を放出して、所望の空寸に調整することができる。
【0021】
よって、空寸に残存する気体が充填物を劣化させる原因となるリスクを削減することができ、充填液の液面高さを揃えて、商品としての見栄えを整えることができる。
【0022】
また、充填物を充填させた状態で移送されたスクイズ容器に対し、密封位置に至る前から徐々に押圧を加えて気体を放出させるので、充填物が口部から噴出することを抑止できる。よって、噴出した充填物で商品としてのスクイズ容器を汚損させたり、作業環境を汚すことを防止することができる。
【0023】
また、請求項2に記載の空寸調整装置は、請求項1の空寸調整装置において、前記カム部材の前記調整用摺接部の勾配(傾斜角度)を調整するための勾配調整機構を備えることを特徴とする。
【0024】
具体的には、前記カム部材を密封位置から離間した一端側を回動支点として、他端側を上下に移動させてカム部材を回動させることにより、前記調整用摺接部の勾配を調整するための勾配調整機構を備えている。
【0025】
本発明の空寸調整装置によれば、まず、勾配調整機構により前記カム部材の調整用摺接部の勾配(傾斜角度)を調整することで、カム部材との摺接による前記底板ユニットの押し上げのタイミング、ひいては、密封位置に移送されるスクイズ容器の底部に対する前記底板の当接から押圧の強さやタイミング等を調整することができる。
【0026】
つまり、傾斜面とされる調整用摺接部の勾配(傾斜角度)を小さくすれば、調整用摺接部に摺接移動するカムフォロアを有する底板ユニットの水平移動量に対する鉛直移動量も小さくなるので、鉛直方向に移動自在に支承された底板ユニットの底板の上昇は緩慢なものとなる。よって、調整用摺接部の勾配を小さくするに従って、密封位置に移送されるスクイズ容器の底部に前記底板は穏やかに当接し、押圧する。
【0027】
逆に、傾斜面とされる調整用摺接部の勾配を大きくすれば、調整用摺接部に摺接移動するカムフォロアを有する底板ユニットの水平移動量に対する鉛直移動量も大きくなるので、鉛直方向に移動自在に支承された底板ユニットの底板の上昇は俊敏なものとなる。よって、調整用摺接部の勾配を大きくするに従って、密封位置に移送されるスクイズ容器の底部に対し、前記底板は早急に当接させ、押圧することができる。
【0028】
さらに、勾配調整機構により前記カム部材の調整用摺接部の仰角(傾斜角度)を調整することで、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡(カムフォロアが円形に水平移動する場合にはサインカーブとなる)の最上点の高さ位置を調整することができる。
【0029】
前述の通り、本発明の空寸調整装置においては、カム部材は、前記調整用摺接部におけるカムフォロアの移動軌跡の最上点を密封装置の密封位置に対応させて位置させ、前記移動軌跡の最上点に位置するカムフォロアが配設された前記底板ユニットの底板により、前記スクイズ容器の底部を所定量の空寸を形成するように押し上げる。
【0030】
よって、本発明のように、勾配調整機構により前記カム部材の調整用摺接部の勾配(傾斜角度)を調整することで、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点の高さ位置を調整し、密封時における底板によるスクイズ容器の押し上げ量(押圧量)、すなわち、前記スクイズ容器内に形成する空寸の容量を簡単に設定し、調整することができる。
【0031】
なお、調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点の高さ位置は、スクイズ容器の大きさ、形状、材質、充填物の種類(粘性等)に応じて適宜調整すればよい。
【0032】
また、請求項3に記載の空寸調整装置は、請求項1または請求項2に記載の空寸調整装置において、底板ユニットのカムフォロアの平面視における移動軌跡に対応させて移動させるための位置調整機構を備えることを特徴とする。
【0033】
具体的には、上面に前記カム部材を配設し、前記密封装置におけるスクイズ容器の移送経路に沿って、前記カムを底板ユニットのカムフォロアの平面視における移動軌跡上を移動可能に配設されたステージを備える位置調整機構を備える。
【0034】
本発明においては、前記調整用摺接部における前記カムフォロアのサインカーブの移動軌跡の最上点を密封装置の密封位置に対応させて配置し、前記カムフォロアを有する底板ユニットの底板を最も上位に位置させた状態で、スクイズ容器の底部を押し上げ、所望の空寸をスクイズ容器内に形成するものであり、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点を密封装置の密封位置に対応させて配置することが肝要である。
【0035】
よって、本発明においては、位置調整機構により、前記ステージ毎、前記カム部材を前記密封装置におけるスクイズ容器の移送経路に沿って移動させ、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点を密封装置の密封位置に適切に対応させて配置するようにする。
【0036】
例えば、密封装置において、スクイズ容器の口部長さ等の変更があり、移送経路上における密封位置が移動する場合においても、位置調整機構によれば、簡単に前記カム部材を前記密封装置におけるスクイズ容器の移送経路に沿って移動させ、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点を密封装置の密封位置に適切に対応させて配置することができるため、底板ユニットを変換することなく兼用性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0037】
このように、本発明の空寸調整装置によれば、ホルダーを使用することなく、容器保持手段によって把持され、吊下されて移送される、充填液が充填されたスクイズ容器を密封する際に、スクイズ容器の垂れ変形を抑止し、スクイズ容器内の空寸にある気体を放出して空寸を調整し、そこに残存する気体が充填物を劣化させる原因となるリスクを削減するとともに、空寸調整の際にスクイズ容器を汚損させることもなく、充填液の液面高さを揃えて、商品としての見栄えを整えることが容易にでき、衛生的な作業環境での密封作業を実現することができ、しかも、スクイズ容器の大きさ、形状等に合わせて設定調整や微調整も簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る空寸調整装置を、ロータリー式の密封装置とともに簡略化して示す要部正面図
【図2】本発明の一実施の形態に係るスクイズ容器の移動軌跡と空寸調整区間の位置関係を説明する平面図(図1は左視野図に相当)
【図3】本発明の一実施の形態に係る空寸調整装置における、底板昇降機構とカムとの別構成の例を簡略化して説明する要部正面図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3により説明する。
【0040】
図1は本発明の一の実施形態の空寸調整装置1と密封装置81とを示している。
【0041】
本実施形態において、密封装置81は移送されているスクイズ容器100の口部101にキャッピングをする、いわゆるロータリー式のキャッパーを採用している。この密封装置81においては、充填物が充填されたスクイズ容器100は、コンベヤやスターホイール等の不図示の搬送手段を介して、密封装置81におけるスクイズ容器100の移送経路の受入口Aから供給され、密封装置81の密封位置Bに至る間にスクイズ容器100内の空寸が所望の空寸となるように調整されつつ、密封位置Bへ移送された後、本実施形態の空寸調整装置1により、密封装置81によって所定のキャッピングが行われ、その後、密封装置81におけるスクイズ容器100の移送経路の排出口Cから排出側スターホイールを介して、コンベヤ等の搬送手段上に排出されて次の工程に送られる。
【0042】
なお、移送経路上における密封位置Bと該密封位置Bの直前範囲とからなる一定区間は、空寸調整区間Dとされている。なお、本発明においては、スクイズ容器100のキャッピングを、1箇所に停止している状態のスクイズ容器100に対して施す場合には、その停止位置が本発明にいうところの密封位置Bであることは勿論であるが、スクイズ容器100のキャッピングを、移送されているスクイズ容器100に対して施す場合には、後述するキャッピングヘッドに把持されたキャップの封栓が開始される位置を、便宜的に、前述の密封位置Bと概念する。本実施形態においては、密封位置Bから排出口Cへ至る間に、移送されているスクイズ容器100に対してキャッピングが施される場合を想定し、図2には、このキャッピングが行われる区間をキャッピング区間Eとして示す。
【0043】
密封装置81は、回転軸82の回転駆動により回転可能とされた回転体83を有しており、該回転体83には円周方向に等間隔に、容器保持手段としてのネックグリッパー84が複数設けられている。
【0044】
ここで、スクイズ容器100は充填部本体103が該スクイズ容器100の利用時に充填物を絞り出し可能な柔軟性(スクイズ性)を有するが、その口頸部102は、内外圧差によっても容易に形状変形しない強度を付与して形成されている。そこで、ネックグリッパー84は、口頸部102の外周を把持するものであり、本実施形態においては、前記スクイズ容器100は、このネックグ゛リッパー84による口頸部102を把持され、吊下された状態で密封位置Bへ移送されるように構成されている。
【0045】
そして、密封位置Bにおける回転体83の上方、詳しくは、ネックグリッパー84により把持されたスクイズ容器100の移動軌跡上には、密封装置81の不図示のキャッピングヘッドが昇降駆動自在に配設されている。
【0046】
そして、本実施形態の空寸調整装置1は、前記回転軸82を以て回転体83と同心で回転可能に、前記回転体83に配設された底板昇降機構2を有している。
【0047】
本実施形態において、底板昇降機構2は、回転軸82に連設された支持板3を有しており、該支持板3には、前記回転体83に配設されたネックグリッパー84のぞれぞれに対応させて回転軸82を中心とする円周方向に等間隔で、後述する底板ユニット10をそれぞれ鉛直方向に移動自在に支承する支承部4が形成されている。支承部4は、外周胴部にフランジ7が形成された筒状の摺動支承部材6を、支持板3に穿設された孔5に対し、フランジ7を支持板3の上面に当接させるようにして一端側(上方)から嵌合させ、その摺動支承部材6を固定させることで形成されている。なお、支承部4の構成はこの構成に限ることなく、底板ユニット10を鉛直方向に移動自在に支承可能であればよい。
【0048】
ここで、底板ユニット10は、ネックグリッパー84によって吊下されたスクイズ容器100の底部104に対向させて配設される底板11を上面に配したプレート部材12と、該プレート部材12に上端部を連接された、鉛直方向に延伸する支承軸部材13とを有している。図2に示す本実施形態において、支承軸部材13はシャフト状に形成されており、前記底板ユニット10は、支承軸部材13を摺動支承部材6の筒内に鉛直方向に移動可能に嵌挿させて、プレート部材12の下面側が摺動支承部材6に当接するまで自由落下可能に配置されている。そして、本実施形態においては、支承軸部材13の下端部には、後述するカム20と摺接可能とされ、少なくとも底板ユニット10の移動方向に摺接回転するカムフォロア14が不図示の水平軸によって軸支されて配設されている。
【0049】
このように構成され、底板昇降機構2を構成する底板ユニット10は、密封装置81の回転軸82を以て回転体83と同心に、平面視における円状の移動軌跡上を水平移動することとなる。つまり、底板ユニット10は、空寸調整区間Dにおいて、対応するネックグリッパー84と鉛直方向に対を為して移動可能に配設されている。
【0050】
また、本実施形態の空寸調整装置1は、底板昇降機構2の下方に配設された板状のカム20を備えている。前記カム20は、その上面に、平面視における円状の移動軌跡上を水平移動する底板ユニット10の移動方向において、密封位置Bに向かって一定の傾斜角度(等勾配)で上昇する傾斜面とされた調整用摺接部21が形成されている。
【0051】
前記カム20は、調整用摺接部21を、前記空寸調整区間Dに対応させ、調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点を、密封位置Bに対応させるように位置させて配設されている。
【0052】
カム20は、受入口A近傍においては、各底板ユニット10のカムフォロア14が調整用摺接部21に摺接しないか、あるいは、各底板ユニット10のカムフォロア14が調整用摺動部に摺接したとしても、該カムフォロア14を有する底板ユニット10の底板11は、その上方に吊下されているスクイズ容器100の底部104に当接することなく、また、密封位置Bにおいては、各底板ユニット10のカムフォロア14が移動軌跡の最上点に位置し、該カムフォロア14を有する底板ユニット10の底板11が、その上方に吊下されているスクイズ容器100の底部104を押圧し、充填液を押し上げることにより、スクイズ容器100に所定量の空寸を形成可能となるように、調整用摺接部21の勾配と、そのカムフォロア14の移動軌跡の最上点の高さ位置を調整して配設されている。
【0053】
なお、本実施形態において、密封位置Bから排出口Cに至るスクイズ容器100の移動経路に対応させた領域においてもカム20を位置させる場合には、密封装置81におけるスクイズ容器100の排出口C近傍においても、底板ユニット10のカムフォロア14が調整用摺接部21に摺接しないか、あるいは、各底板ユニット10のカムフォロア14が調整用摺動部に摺接したとしても、該カムフォロア14を有する前記底板ユニット10の底板11のその上方に吊下されているスクイズ容器100の底部104に対する当接が解除されるように、前記カム20を形成する。更に言えば、例えば、密封位置Bから排出口Cに至るスクイズ容器100の移動経路に対応させた領域においては、前記カム20(調整用摺接部21)を配設させなくてもよい。その場合、密封位置Bから排出口Cに至るスクイズ容器100の移動経路に対応させた領域において、カムフォロア14のカム20(調整用摺接部21)に対する当接摺動が解除された底板ユニット10は、支承軸部材13を摺動支承部材6の筒内に摺動させ、プレート部材12の下面を摺動支承部材6に当接するまで自由落下させた状態で支承されつつ、次に、カムフォロア14がカム20(調整用摺接部21)に当接摺動するまでの間、密封装置81の回転軸82を以て回転体83と同心に、平面視における円状の移動軌跡上を水平移動する。
【0054】
そして、本実施形態において、空寸調整装置1は、ロータリ式の密封装置81の下方に、密封装置81におけるスクイズ容器100の移送経路に沿ってカム20を移動させるための位置調整機構30を備えている。位置調整機構30は、密封装置81の回転軸82と同軸上の回転中心で回転可能に配設されたステージ31からなり、カム20は、このステージ31上において、スクイズ容器100の移送経路に対応させて、更に詳しくは、底板ユニット10のカムフォロア14の平面視における移動軌跡に対応させて、配設される。
【0055】
本実施形態において、ステージ31は、位置調整機構30を配設するフレーム32に形成した円形状の開口33に嵌設される円筒状の下方円筒部34を有している。該下方円筒部34は、その外周面と該開口33の内周面との間に、摺動補助部材としてのボールベアリング35を介在させ、回転軸82と同軸上の中心軸を以て回転自在に嵌合されている。
【0056】
下方円筒部34の上面には、該下方円筒部34と同じ中心軸とされた円筒状の上方円筒部36が固定されている。該上方円筒部36の外周面には円弧状に凹入した逆クラウン型のウォームホイール37の歯が形成されており、カム20が上面に配設されたステージ31を、回転軸82を中心とする固定の角度範囲においてウォームホイール37の歯と歯合させて配設された鼓型ウォーム38を正逆方向に回転させることにより、前記密封装置81の回転軸82と同軸上の回転中心を以て正逆方向に回転させ、カム20を、底板ユニット10のカムフォロア14の平面視における移動軌跡に対応させた位置へ移動可能とされている。
【0057】
さらに、本実施形態において、空寸調整装置1は、カム20を密封位置Bから離間した一端側を回動支点として、他端側を上下に移動させてカム20を回動させることにより、調整用摺接部21の勾配(傾斜角度)を調整するための勾配調整機構40を備えている。具体的には、勾配調整機構40は、カム20の一端部側とステージ31に配設された一組の回動手段43と、その回動手段43を以て回動自在とされたカム20の下面に当接し、該カム20を支承するカム支承手段44とからなる。本実施形態において、前記回動手段43は、カム20の一端側に形成された回動軸部41と、前記ステージ31に形成された軸受部42とからなり、カム支承手段44は、不図示の昇降装置により鉛直方向に調整可能なローラ45とされている。
【0058】
次に、このように構成された本実施形態の空寸調整装置1の作用について説明する。
【0059】
まず、本実施形態の空寸調整装置1においては、密封装置81および空寸調整装置1の駆動前に、カム20の調整用摺接部21を、底板ユニット10の水平移動方向へ前記密封位置Bに向かって上昇させ、調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点を密封位置Bに対応させて位置させるとともに、該密封位置Bにおいて、底板ユニット10の底板11が、充填液を充填されたスクイズ容器100の底部104を押圧し、充填液をスクイズ容器100内において押し上げ、該スクイズ容器100内に所定量の空寸を形成可能に、調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点の高さ位置を調整しておく。
【0060】
本実施形態においては、前述の位置調整機構30のウォーム38とウォームホイール37とからなるウォームギアを用いて、ステージ31を密封装置81の回転軸82と同心で回転させることができるので、底板ユニット10のカムフォロア14の平面視における移動軌跡に対応させてステージ31に配設されたカム20を、その移動軌跡上の所望の位置に簡便に移動させることができる。
【0061】
また、勾配調整機構40のローラ45の高さ位置を所望に調整し、そのローラ45に、前記カム20を密封位置Bから離間した一端側を回動支点として他端側を上下に移動させて回動するカム20を載置して、前記調整用摺接部21の勾配(仰角)を調整する。これにより、調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点の高さ位置を調整し、密封時における底板11によるスクイズ容器100の押し上げ量(押圧量)、すなわち、前記スクイズ容器100内の空寸の容量を簡便に設定し、調整することができる。
【0062】
本実施形態の空寸調整装置1においては、密封装置81が駆動されて、ネックグリッパー84を有する回転体83がその回転軸82を以て回転すると、回転体83に連設された支持板3を有する底板昇降機構2も、回転体83と同軸で回転する。このとき、底板昇降機構2の支持板3に支持された底板ユニット10も、密封装置81の回転軸82を以て回転体83と同軸で、平面視において円状の移動軌跡上を水平移動する。その際、各底板ユニット10のカムフォロア14が、カム20の調整用摺接部21に摺接しつつ、その傾斜面を上ることにより、該カムフォロア14を有する底板ユニット10が上昇する。つまり、調整用摺接部21に対するカムフォロア14の摺接移動時には、該カムフォロア14を有する底板ユニット10は、底板プレート12に連設された支承軸部材13は、摺動支承部材6の筒内部と摺接しつつ、上昇するように移動する。
【0063】
そして、上昇する底板ユニット10の底板11が密封位置Bに移送されるスクイズ容器100の底部104に当接し、充填物を押し上げてスクイズ容器100内の空寸にある気体を放出することにより、空寸の調整が始まり、各底板ユニット10のカムフォロア14が調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点、すなわち、キャッピングを行う密封位置Bに対応する位置へ至ったときに、空寸の調整は完了する。
【0064】
そして、密封位置Bにおいて、空寸の調整が完了したスクイズ容器100に対し、密封装置81によって所定のキャッピングを行なう。
【0065】
密封位置Bにおいて、空寸が調整されたスクイズ容器100の口部101に密封装置81によって封栓が施された後は、密封位置Bに対応させて調整用摺接部21におけるカムフォロア14の移動軌跡の最上点を配置した本実施形態においては、平面視において円状の移動軌跡上を水平移動する底板ユニット10の底板プレート12に連設された支承軸部材13は、底板ユニット10を下降させるように移動する。底板ユニット10が下降し、底板11の該スクイズ容器100に対する当接が解除された状態において、該スクイズ容器100を排出口Cの位置で、不図示の排出側スターホイールを介して、コンベヤ等の搬送手段上に排出し、次の工程に送る。
【0066】
このように構成され、作用する本発明の空寸調整装置1によれば、ホルダーを利用せず、容器保持手段によって把持され、吊下されて移送されるスクイズ容器100を密封する場合において、充填物が充填されたスクイズ容器100を下方から底板11を当接させることで、スクイズ容器100の垂れ変形の発生を抑止することができ、スクイズ容器100内の空寸にある気体を放出して、所望の空寸に調整することができる。
【0067】
また、充填物を充填させた状態で移送されたスクイズ容器100に対し、密封位置Bに至る前から徐々に押圧を加えて気体を放出させるので、充填物が口部101から噴出することを抑止できる。よって、噴出した充填物で商品としてのスクイズ容器100を汚損させたり、作業環境を汚すことを防止することができる。
【0068】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、ストレートラインの搬送経路においてスクイズ容器の封栓をおこなうような密封装置にも、本発明の空寸調整装置は適用可能である。
【0070】
例えば、該搬送経路の密封位置に至る直前の搬送経路に、密封装置のネックグリッパーと対をなして、スクイズ容器の搬送経路下を循環移動する底板ユニットを有する底板昇降機構を配設し、さらに、底板ユニットのカムフォロアの移動軌跡に沿わせて、前述のように、調整用摺接部を密封位置に向かって等勾配で上昇するように傾斜させ、かつ、調整用摺接部におけるカムフォロアの移動軌跡の最上点を前記密封位置に対応させてカムを配設すればよい。その場合、前記位置調整機構のステージは、ストレートラインの搬送経路に沿って移動可能に構成する。
【0071】
前記空寸調整装置は、密封装置の回転体の駆動とは別の駆動系により底板昇降機構2の支持板を移動させ、底板ユニットを空寸調整区間において密封装置のネックグリッパーと対をなしてスクイズ容器の搬送経路下を移動させるようにすることも可能である。
【0072】
また、底板ユニットにおいて、前記カムフォロアは、必ずしも本実施形態のように底板の直下においてカムと摺接するように配置する必要はない。例えば、図3に示すように、カムフォロアを前記底板プレートから側方へ持ち出し垂下させたステイに水平軸で回転可能に配設してもよい。
【0073】
さらに、カム支承手段は、本実施形態の昇降装置により鉛直方向に調整可能なローラに代えて、偏心カムやジャッキ機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 空寸調整装置
2 底板昇降機構
3 支持板
4 支承部
5 孔
6 摺動支承部材
7 フランジ
10 底板ユニット
11 底板
12 プレート部材
13 支承軸部材
14 カムフォロア
20 カム
21 調整用摺接部
30 位置調整機構
31 ステージ
32 フレーム
33 開口
34 下方円筒部
35 ボールベアリング
36 上方円筒部
37 ウォームホイール
38 ウォーム
40 勾配調整機構
41 回動軸部
42 軸受部
43 回動手段
44 カム支承手段
45 ローラー
81 密封装置
82 回転軸
83 回転体
84 ネックグリッパー
100 スクイズ容器
101 口部
102 口頸部
103 充填部本体
104 底部
A 受入口
B 密封位置
C 排出口
D 空寸調整区間
E キャッピング区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封装置における移送経路の受入口から供給され、容器保持手段により口頸部を保持して吊下された状態で前記移送経路の密封位置へ移送されるスクイズ容器の空寸を、前記移送経路上における前記密封位置と該密封位置の直前範囲とからなる空寸調整区間において調整するための空寸調整装置であって、
前記容器保持手段に吊下されたスクイズ容器の底部に当接させる底板と、カムフォロアとを有する複数個の底板ユニットを備えており、前記各底板ユニットは、鉛直方向へ移動自在に支持板に支承されているとともに、水平方向へ移動可能とされ、少なくとも前記空寸調整区間においては、対応する容器保持手段と鉛直方向に対を為して移動可能に配設された底板昇降機構と、
前記カムフォロアを上面に摺接可能とされた調整用摺接部を有し、前記調整用摺接部を密封位置に向かって上昇するように傾斜させ、かつ、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点を前記密封位置に対応させるようにして配置されるとともに、前記調整用摺接部における前記カムフォロアの移動軌跡の最上点にカムフォロアを位置させた該底板ユニットの前記底板が前記スクイズ容器を押上げて、前記スクイズ容器内に所定量の空寸を形成するように配設されるカム部材
とを備えたことを特徴とする空寸調整装置。
【請求項2】
前記カムの前記調整用摺接部の勾配を調整するための勾配調整機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の空寸調整装置。
【請求項3】
前記カムを底板ユニットのカムフォロアの平面視における移動軌跡に対応させて移動させるための位置調整機構を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空寸調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71756(P2013−71756A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212386(P2011−212386)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(390029090)靜甲株式会社 (30)
【Fターム(参考)】