説明

空気二極イオン化方法及び対応する空気二極イオン化回路

本発明は、空気のイオン化が、陽イオンの発生を制限するように制御されることにより、陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率が得られる、方法および回路に関する。より具体的には、本方法は、イオン化電圧の正成分の減衰または低減により、陽イオンの発生の制限を得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二極イオン化方法及び空気の二極イオン化回路に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、空気の質、特に空気循環の殆どない閉環境内における空気の質は、煙、バクテリア、ガス、花粉、および、印刷機、コピー機、食料保管装置等の家庭用機器またはオフィス用設備により放出される他の揮発性有機物等の、微粒子の蓄積によって低下する傾向がある。このような物質は、それらに伴う臭気によってだけでなく、さらに判明しているヒトに対する有害な効果によっても、環境をより不快なものにする。
【0003】
微粒子フィルタ内に前述の物質を捕捉することからなる、空気を純化するためのデバイスおよび方法が知られている。
【0004】
しかし、このようなデバイスおよび方法は、不純物がフィルタ内に蓄積されるにつれて低下する空気純化能力の漸次的かつ急速な悪化を被るという重大な欠点、ならびに小サイズの微粒子を捕捉することが実質的に不可能であるという重大な欠点を有する。
【0005】
また、微粒子を捕捉する代わりに、特に、微粒子を無公害分子に凝集させることによって、微粒子をヒトにとって無害な要素に変形させる空気イオン化デバイスおよび空気イオン化技術も知られている。このようなデバイスは、小サイズの微粒子にも作用し、また、劣化を被るフィルタを使用しないことから実質的に無限の時間量にわたり持続するため、上記のフィルタよりも好ましい。さらに、これらのデバイスは、中断のない10000時間の動作おきに予測される通常のメンテナンスを要するのみである。
【0006】
実際には、イオン化の方法は、各原子軌道から電子を離脱させるまで、空気中に存在する原子または分子を電気的に励起することからなる。カチオンまたは陽イオンとして通常知られる電子が取り除かれた原子は、正電荷を有する。さらに、離脱した電子は、空気中に存在する他の原子または分子と衝突し、それらの原子または分子に負電荷を帯びさせ、いわゆるアニオンすなわち陰イオンを形成する。
【0007】
したがって、イオン化は、微粒子の原子または分子を、ヒトに対して無害なアニオンまたはカチオンへと転化させることに基づく。実際に、電子が取り去られた原子は、不安定であり平衡状態を求め、このことが新たな衝突および凝集をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多くの環境では、例えば、モニタ、印刷機等のオフィス設備により、または一般的に使用される家庭用機器により生成される陽イオンが既に豊富に存在しており、イオン化を介してカチオン及びアニオンをさらに導入することにより、一方においては、陰イオンの導入という有益な効果が得られるが、他方においては、陽イオン数をさらに増加させるという欠点が生じ、例えば、鬱、不安感、もしくは頭痛の徴候を引き起こす恐れある、ヒトに対して望ましくない有害な効果が生ずる。
【0009】
本発明の基礎を成す課題は、陽イオンまたは陰イオンの濃度を過度に上昇させることなく、空気をイオン化することが可能な方法及びデバイスを提供することにより、先行技術のイオン化システム及びイオン化方法が依然として直面している限界及び欠点を実質的に解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基礎にある解決手段の考え方は、所定の比率で陽イオンおよび陰イオンを生成して、一方においては、環境内に存在する微粒子を陽イオンおよび陰イオンの形のヒトに対して無害な物質へと転化するのを可能にし、他方においては、陽イオンおよび陰イオンのヒトにより優しい濃度を確立することを可能にする、二極イオン化回路および関連する方法を発明することである。
【0011】
特に、出願人は、既知のイオン化プロセスにおいては、陰イオンについては数秒の平均寿命であるのに対して、陽イオンの平均寿命が比較的長く数分に達し得るということにも起因して、イオン化される環境内に存在する陽イオンの濃度が、陰イオンの濃度よりも実質的に高くなることを見いだした。したがって、本発明の一態様によれば、空気のイオン化は、陰イオンに対して限定された量の陽イオンを生成するように制御され、所定の比率により、環境内の陽イオンおよび陰イオンの濃度を均衡させて、陽イオンのより長い寿命を補償するだけでなく、印刷機、ファクシミリ機等のオフィス設備による環境内へのそれらの導入を補償することが可能となる。
【0012】
イオン化は、適切な強度の電界を空気流に通過させることにより得られる。空気流は、電界を生成し、空気のイオン化を引き起こす少なくとも1つのイオナイザをかすめ通る。電気的に中性の空気の分子は、正または負の電荷を有する2つ以上の部分(イオン)に分離される。この解離は、エネルギーを加えることにより生じる。好ましくは、本発明によれば、イオン化は、適切な電界の生成によって引き起こされる。
【0013】
上述した解決手段の考え方によれば、技術的な課題は、空気のイオン化が陽イオンの生成を制限するように制御して、陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率が得られる方法によって解決される。
【0014】
本発明のこの方法の第1の態様によれば、当該方法は、イオン化電圧の正成分を減衰または低減させることにより、陽イオンの生成の前述の制限を達成するステップを含む。
【0015】
特に、当該方法は、イオン化回路に電圧を供給するステップと、このような電圧を上昇させるステップと、当該電圧の所定の正の値を低減させて、陽イオンの生成を減少させるステップとを含む。
【0016】
かかる方法の一実施形態においては、当該電圧は、時間に対する交流電圧値の正半波と関連づけられ、当該正半波は、それに関連づけられたRMS値が電圧値の負半波に関連づけられるRMS値よりも低い出力をもたらすように低減される。特に、正半波は負半波と比較して、同一の振幅を有するが高さが低くなる。
【0017】
当該方法の別の実施形態においては、当該電圧は、電圧値の負半波よりも低い振幅および高さを有する交流電圧値の正半波に関連づけられる。また、この場合にも、正半波に関連づけられるRMS値は、前述の電圧値の負半波に関連づけられるRMS値よりも低い出力をもたらす。その結果、電圧の正の部分により移送されるエネルギーは、電圧の負の部分により移送されるエネルギーよりも低くなる。特に、電圧は、ゼロに対して対称的または非対称的であり、異なる波形を有することが可能である。好ましくは、電圧は、実質的に正弦波曲線の傾向を示す。
【0018】
前述の実施形態のうちの特定のものにおいては、正の電圧値が、第2の回路部分により負の電圧値が整流される直流電圧値の絶対値(module)よりも低い第1の直流電圧値において、第1の回路部分により整流される。前記第1の回路部分および第2の回路部分は、陽イオンおよび陰イオンのそれぞれを放出するための少なくとも1つの正電極および負電極の上流に配置された受動素子を備える。
【0019】
本発明の前述の態様によれば、正半波のRMS値の減衰は、例えば以下の方式のうちの1つにおいて達成することが可能である。第1の方式では、時間に対する電圧の関数V(t)が、ゼロに対して非対称、すなわち、正半波のピーク値が、負半波のピーク値よりも(絶対値として)低い。例えば、関数V(t)は、ゼロの線に対して、そして負の値の方向に変位されたほぼ正弦波形状である。第2の方式においては、ゼロに対して対称である電圧V(t)が、正のピーク値の平滑化を伴いつつ、正半波の減衰を受ける。電圧信号の正半波の減衰により正電圧のRMS値を低下させることが可能である。この減衰は、例えば、1つまたは複数の抵抗および1つまたは複数のダイオードなどの、例えば前述の受動構成要素により得ることが可能である。
【0020】
既述のように、空気のイオン化は、電界の生成により誘起される。特に、やはり本発明のこの態様によれば、電界は、実質的に交流の傾向を経時的に示し、正半波のRMS電圧値は、負半波のRMS電圧値よりも低い。このようにして、陽イオンの生成が制限されることにより、陽イオンと陰イオンとの間における前述の均衡効果が得られる。実際に、出願人は、陽イオンの生成と正電圧値との間に相関があることと、正の電圧値を低下させることにより陽イオンの生成を低減させることが可能であることを発見した。
【0021】
本発明の方法の別の態様によれば、陽イオンの生成の制限は、インパルスタイプの給電回路に接続された一次巻線と、イオン化デバイスの少なくとも1つの電極に接続された二次巻線とを有する、高電圧ゲート変圧器によりイオン化ユニットに給電することによって、達成される。この場合には、変圧器に給電するためのスイッチが存在し、このスイッチの開は、変圧器の二次巻線からイオン化デバイス24へのエネルギーの送給を決定する電圧曲線の前縁(leading edge)の生成に、したがって陽イオンの制限された生成を伴う実際のイオン化プロセスに対応する。
【0022】
本発明の基礎にある解決手段の考え方によれば、技術的課題は、空気のイオン化が陽イオンの発生を制限するように制御されることにより、陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率が得られる、イオン化回路によっても解決される。
【0023】
本発明の一態様によれば、当該回路は、電源と、陽イオンの生成に応じた電流の電圧の所定の値を低下させるためのフィルタとを備える。
【0024】
このイオン化回路は、ニードルまたはチューブを有するイオン化ユニットを備えるデバイスに組み込むことが可能である。
【0025】
特に、電圧の正の値を低下させるためのフィルタは、電圧低減装置(voltage reducer)や抵抗のような受動構成要素などの既知の回路素子によって構成することが可能である。回路およびフィルタの他の特徴は、ニードルを有するイオン化ユニットおよびチューブを有するイオン化ユニットの両方を参照として、以下の説明において示す。
【0026】
好ましくは、本発明のこの態様によれば、当該フィルタは、電流の電圧の正の値を漸進的に低減させ、陽イオンの生成の比例して低減させるように調節可能である。有利には、この調節可能なフィルタにより、例えば1:4の好ましい値から、陰イオンの濃度が既にそれ自体低い環境においては好ましい1:3の値、すなわち約3/9の陽イオンおよび6/9の陰イオンへと比率を変更することが可能となる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、イオン化回路は、イオン化ユニットの電源との間のある特定の接続によりイオンの生成の制限を行い、この接続は、インパルスタイプの給電回路に接続された一次巻線と、イオン化ユニットの少なくとも1つの電極に接続された二次巻線とを有する高電圧ゲート変圧器との間で行われる。好ましくは、変圧器の一次巻線は、例えばMOS−FETなどの少なくとも1つの電子スイッチによりアースに接続される。このようにすることで、前記スイッチを閉じることにより、変圧器の一次巻線中に電流が誘起され、スイッチを開くことにより、二次巻線中に電流のインパルスを引き起こし、イオン化ユニットへエネルギーが移動される。スイッチは、発振器により生成される方形波信号により制御することが可能である。
【0028】
スイッチを開くことは、さらに詳細には、電流の1インパルスの、したがってエネルギーの、変圧器の二次巻線への移動に相当し、二次巻線への移動はイオン化デバイスへの移動を伴う。イオン化プロセスは、実質的に前記インパルスの前縁の間に生じる。本発明の一態様によれば、スイッチの開閉頻度は、2つのインパルス間の期間が、スイッチの閉時間中に一次巻線中を電流が通過することから得られるエネルギーを二次巻線に移送するために必要な期間に実質的に等しくなるようなものである。出願人は、このようにすることで、イオンの生成が大部分は陰イオンの生成となり、所望の制御された二極イオン化効果が得られることを発見した。
【0029】
本発明の保護範囲を限定するものではないが、上述の方法および回路により実現される陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率は、約1:4に、すなわち陽イオンが2/10、陰イオンが8/10になる。この比率は、例えばいくつかの治療環境においては好ましい陽イオンが1/10、陰イオンが9/10という比率などに調節することが可能である。
【0030】
添付図面を参照して、例ではあるが限定することを目的とせずに提示される本発明の実施形態から、本発明によるイオン化回路および関連するイオン化方法のさらなる技術的特徴および利点が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明によるイオン化回路を示す図である。
【図1b】図1aの回路に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【図1c】図1aのニードルを有するイオン化素子に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【図2a】本発明によるイオン化回路の変形形態を示す図である。
【図2b】図2aの回路に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【図2c】図2aのチューブを有するイオン化要素に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【図2d】異なるグラフにより、図2aの電流の電圧を表したものである。
【図3a】本発明によるイオン化回路の別の実施形態を示す図である。
【図3b】図3aの回路に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【図3c】図3aのチューブを有するイオン化素子に対する入力における、時間に沿った電流の電圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1aを参照すると、陽イオンを放出するための第1の電極3cおよび陰イオンを放出するための第2の電極4cを備える本発明によるイオン化回路1が、概略的に示されている。好ましくは、第1の電極および第2の電極は、電流の電圧を受容するように構成されたニードルを有するイオン化ユニット5に組み込まれる。
【0033】
回路1においては、例えば周波数50Hz、220VACなどの交流電圧電源2が、当該電流の電圧を上昇させるHVG変圧器に接続されている。好ましくは、HVG変圧器は、入力における電流の交流電圧、例えば50Hzの220V、を電圧約800Vまで上昇させるフェライトから作製される。特に、HVG変圧器からの出力が、可変抵抗6に接続され、次いでこの可変抵抗6は、それを通して第1の電極3への給電がなされる第1の抵抗7と、それを通して第2の電極4への給電がなされる第2の可変抵抗8との間に接続される。可変抵抗6および8を調節することにより、正の値の電圧を得ることが可能となり、したがって陽イオンおよび陰イオンの比率を調節することが可能となり、それにより陽イオンの生成が制限される。
【0034】
第1の電極3cおよび第2の電極4cは、電流の電圧をさらに上昇させ、かつ直流電圧へと整流するように、カスケード接続された複数のコンデンサおよびダイオード4a、4bを備える受動素子の下流に接続され、これにより陽イオンおよび陰イオンが放出される。例えば、陰イオンのより多くの発生に対応するように、第1の電極3cのコンデンサ3aおよびダイオード3bは、出力において4500VDCの電圧を供給するように構成され、第2の電極のコンデンサ4aおよびダイオード4bは、5000DVCの電圧を供給するように構成される。好ましくは、イオン化ユニットは、タングステン・ニードルを有する。
【0035】
図1bは、HVG変圧器からの出力における交流電圧の傾向を概略的に示し、図1cは、コンデンサ3aおよびダイオード3b、ならびにコンデンサ4aおよびダイオード4bのそれぞれからの出力における、正の直流電圧9aおよび負の直流電圧9bの傾向を示す。ここで、負の電圧は、正の電圧よりも大きい絶対値を有する。
【0036】
図1aの回路の構造をさらに詳細に説明することは有益である。ニードルを有するイオナイザ5は、陽極3cに接続された電極もしくはニードルまたは複数のニードルと、陰極4cに接続された、対応する1つまたは複数のニードルとを備える。220VACの供給電圧、または直接的に12VDCの供給電圧が、第1のHVG変圧器において上昇され、次いで、一連のコンデンサおよびダイオード3a、3b、4a、4bによりさらに上昇及び整流されることにより、直流出力信号(DC)が得られる。適切なトリマ(trimmer)6〜8により、極3cおよび4cにて得られる出力信号を調節して、極3cにおける正電圧のレベルを減衰させる。例えば、図1bのような入力における信号は、出力において4.5kV DCの正電圧9aおよび5kV DCの負電圧9bの信号をもたらす。
【0037】
上述の実施形態を参照すると、作動中に極3cおよび3dに接続されたニードル同士の間において確立される電界は気流をイオン化して、相当量のイオンを放出する。
【0038】
また、本発明は、上述の回路に対して、または例えばチューブを有するイオン化ユニットに基づく変形形態に対して適用可能な空気の二極イオン化方法に関する。この方法のいくつかの例を、以下説明する。
【0039】
この方法は、陽イオンの発生を制限するように空気のイオン化を制御することにより、陽イオンと陰イオンとの間で所定の比率を得る。特に、この方法は、イオン化電圧の正成分を減衰および低減させることにより、陽イオンの発生の制限を実現する。空気は、誘電材料体によって離隔された2つの電極を備える少なくとも1つのイオン化ユニットによりイオン化される。これらの2つの電極の一方は、アースに接続され、他方の電極には、ゼロ電圧に対して経時的に交流の傾向を呈する電圧V(t)が供給される。電圧V(t)の負半波に関連付けられたRMS値Veff,−は、正半波に関連づけられたRMS値Veff,+よりも大きい。
【0040】
図2aを参照すると、好ましくは、イオン化ユニット14に組み込まれ、誘電材料から作製されたユニット14の本体(body)13によって離隔された、内方電極11および外方電極12を備える、本発明の変形形態によるイオン化回路10が、概略的に示されている。一方の電極11は、アースに接続され、他方の電極12には、経時的には実質的に正弦波の傾向を示す電圧を供給される。好ましくは、イオン化ユニット14はチューブタイプであり、誘電体チューブ(tube)と、当該チューブの内部および外部にそれぞれ配置された2つの電極とを備える。例えば、外方電極12は接地され、内方電極11は、HVG変圧器の二次巻線に接続される。好ましくは、この変圧器は、50Hz、230VACの一次巻線と、2.7kVの二次巻線とを有する。出願人は、フェライト鉄心を有する変圧器および石英チューブを有するイオン化ユニットが、高い精度で陽イオンおよび陰イオンの比率を調整可能にすることを発見した。
【0041】
回路10は、基本的には、交流電圧を供給される一次巻線と、例えばチューブを有するイオナイザの内方電極など、電極のいずれかに接続される二次巻線とを有する、高電圧ゲート変圧器を備える。電極11および12は、正の電圧値を有する電流の第1の成分と、負の電圧値を有する第2の成分とを受容するように構成される。一連の抵抗15、16、17は、第2の成分に対して第1の成分の所定値を低減させ、各電極によって放出される陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率を得るように構成される。
【0042】
回路10は、本発明による二極イオン化方法により制御され、特に、イオン化ユニットの内方電極11に電圧を供給するための電圧Vは、高電圧ゲート変圧器から取られ、抵抗器15〜17を有する電圧フィルタを介して、陰イオンとは異なる比率の陽イオンの発生に対応した所定値を減じられる。抵抗15、16は、20mA未満まで電流を低下させるように直列で使用される。好ましくは、それらの抵抗は、例えば10MΩを越える非常に高い値を有する。かかる条件により、正の電圧値に関連づけられた正半波を平滑化して、負の電圧値に関連づけられた、対応する負半波を変化させないことが可能となる。抵抗17を変更することにより、正半波の閾値カットオフ値を変更することが可能となる。
【0043】
好ましくは、抵抗器およびダイオード15〜19により構成されるフィルタは、電流の電圧の正の値を漸進的に低減させ、陽イオンの発生を比例的に低減させるように調節可能である。有利には、この調節可能なフィルタにより、例えば1:4の好ましい値から、陰イオンの濃度が既にそれ自体低い環境においては好ましい1:3の値、すなわち陽イオンが約3/9、陰イオンが6/9へと比率を変更することが可能となる。
【0044】
図2bは、高電圧ゲート変圧器からの出力における、時間tの経過にしたがった電圧Vの傾向を概略的に示す。好ましくは、この電圧は2.7kV程度である。一方、図2cは、HVG変圧器により加えられる電圧上昇、及びコンポーネント15〜17および19により実施される正の値の低減の下流における、イオン化ユニット14への入力での電圧を概略的に示す。特に、所定の低減された電圧値により、陽イオンの生成が制限されて、陽イオンに対する陰イオンのより高い比率が得られる。
【0045】
図2dを参照すると、陽イオンの発生に対応した、時間tに対する電圧Vの正半波S1の所定の上方部分S1’において見られる所定の電圧値V(t)(t1<t<t2)が概略的に示されている。
【0046】
当該所定の電圧値を低減させるステップにより、その正半波S1に関連づけられたRMS値Veff+が、前述の電圧値V(t)の負半波S2に関連づけられたRMS値Veff−よりも低い出力をもたらすように、正半波S1が変更される。このような差は、交流電流の負の電圧値が低減されないことによるものである。
【0047】
換言すれば、再度図2dを参照すると、本発明の方法による電圧値は、ほぼ半正方形となる半波Sによって描かれる上方部分S1’の範囲内には決して入らない。
【0048】
図2aの回路の構造的構成は、注目に値する。イオン化ユニット14は、絶縁材料で構成されたチューブと、内方プレート11と、外方メッシュ12とを構造として備える。電圧は、高電圧ゲートHVG変圧器により供給される。この高電圧ゲートHVG変圧器においては、一次HVG2が図2bのように交流正弦波電圧V4,inを受容し、二次HVG1が電圧V4,outを生成し、抵抗15〜17およびダイオード19により、正ピークの平滑化(図2d)が得られる。受動構成要素15〜17、19の効果により、正半波は、正弦曲線のピーク電圧値V+未満の最大値Vで平滑化される。図2cにおいて破線により示されるピーク区域は、信号により「切断」され、その結果として、正半波のRMS電圧値は、負半波のRMS電圧値よりも低くなる。例えば、図3bの入力信号は220VACであり、図3cの信号は2.7kVACに達する。
【0049】
図2dの実施形態においては、正半波から移送されるエネルギーは、負半波から移送されるエネルギーよりも低くなる点を理解されたい。
【0050】
他方において、図1aおよび図2aのイオン化回路は、空気のイオン化が、正の電圧ピークV+および負の電圧ピークV−を有する実質的に交流の傾向を経時的に示す電界の生成によって誘起され、この電界の正半波は、正半波のRMS電圧値Veff+が負半波のRMS電圧値Veff−よりも低くなるように平滑化される、本発明の方法により制御される。
【0051】
特に、空気のイオン化を引き起こす電界の電圧は、2から5kVの間の、より好ましくは2から3kVの間の公称値を有する。この電界は、20から60kHzの間の、より好ましくは45から50kHzの間の振動周波数を有する。
【0052】
このような条件においては、本発明による二極イオン化方法は、約50.000ION−/cm3(cm3当たりの陰イオン)および約10.000ION+/cm3(cm3当たりの陰イオン)を発生する。
【0053】
図3aは、図2aに概略的に示したイオン化ユニット、すなわちチューブを有するイオナイザと実質的に類似のものであり、外方電極22および内方電極21を有するイオン化ユニット24を備える、本発明の別の実施形態によるイオン化回路20を示す。外方電極22は、アースに接続され、内方電極21は、HVG変圧器の二次巻線26に接続される。HVG変圧器は一次巻線27を有し、これは、例えば図3bに概略的に示される12VDCの電流などの直流電圧で電流が供給される。発振器30を有する電圧補償回路29が、入力において直流電流の供給を受け取り、出力においては、HVG変圧器の一次巻線27に接続されたMOS回路31に接続される。HVG変圧器および発振器30は、直流電流を、好ましくは電圧1.9kVACの、図3cにおいて概略的に示されるタイプの高圧交流電流へと変更する。
【0054】
イオン化ユニット24は、石英または別の絶縁性誘電材料から作製された、実質的に円筒状のチューブを備える。このチューブは、例えば金属製など、共に導電性材料から作製された、内方プレート21および外方メッシュ22を備える。当該プレート21およびメッシュ22は、基本的には、コンデンサの接触子(armature)を形成し、チューブの実質的に全長にわたって延在する。メッシュ22は、アースに接続されるが、他方の接触子、すなわちプレート21は、HVG変圧器の二次巻線26(高圧)の一端部に接続される。巻線26は、反対側の端部にて接地される。
【0055】
当該HVG変圧器は、インパルスタイプの回路29に接続される。この回路29は、電子スイッチ31の使用に実質的に基づくものである。スイッチ31が閉じられると、変圧器の一次巻線に電流が流れ、スイッチが開いている場合には、二次巻線への、そして二次巻線に接続されたイオン化デバイスへのエネルギー移送が生じる。さらに詳細には、HVG変圧器の一次巻線27は、低直流電圧(12V)の供給ライン32に接続され、方形波発振器30、ドライバ段33、および電子MOSスイッチ31を基本的に備える制御回路29に接続される。スイッチ31は、発振器により発生される方形波の正インパルスにより求められる閉時間を有する。12VDCの入力信号V3,inが、図3bに示される。
【0056】
図3cは、スイッチ31を閉じることを決定する発振器の方形波と、HVG変圧器の二次巻線における電流を表す曲線とを示す。スイッチ31の閉(導電)時間は、図3cにおいては、時刻tと時刻tとの間の期間に対応する。時刻tにおいては、変圧器への給電が遮断されて、曲線201の前縁202が生成され、これはイオン化デバイス24へのエネルギー移動、したがって実際のイオン化プロセスに対応する。スイッチの開閉頻度は、好ましくは、2つのインパルス間、すなわち、前縁202を発生する、スイッチの連続する2つの開の間の期間が、一次巻線から二次巻線への完全なエネルギー移送に必要な期間と実質的に等しくなるようなものである。
【0057】
イオン化回路は、システムに損傷を与え得る過電圧(例えば、12VDCの公称電圧に対して最大16VDCなど)が生じる場合に備えて電圧制御部を有し、また、振動周波数の調節するためのトリマを有する。
【0058】
利点として、本発明によるイオン化方法およびイオン化回路により、陽イオンの濃度を過度に上昇させることなく空気をイオン化して、陰イオンのより多くの発生によりイオナイザによって放出される陽イオンのより長い寿命を補償するだけでなく、良好に比率が定められ、かつ調整可能なかかるイオンの生成により他のイオン化デバイスによって放出される陽イオンの濃度を補償することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化の方法であって、空気のイオン化が、陽イオンの発生を制限するように制御され、それにより陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率が得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
イオン化電圧の正成分を減衰または低減させて、陽イオンの発生の前記制限を達成するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気は、誘電材料体により離隔された2つの電極を備える少なくとも1つのイオン化ユニットによりイオン化され、
前記2つの電極の一方(4c、12)がアースに接続され、他方の電極(3c、11)に、ゼロ電圧に対して交流の傾向を経時的に示す電圧V(t)を供給され、
前記電圧V(t)の負半波に関連づけられたRMS値(Veff,−)が、正半波に関連づけられたRMS値(Veff,+)よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
通電状態の前記電極(3c、11)は、高電圧ゲート(HVG)変圧器の二次巻線に接続され、
前記電極(3c、11)に供給される電圧信号の正半波は、受動コンポーネント(3a、3b、4a、4b、15〜19)により減衰されることによって、前記正半波のピーク値の平滑化が得られることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化ユニットは、誘電チューブと、前記誘電チューブの内部および外部にそれぞれ存在する2つの電極とを備えるチューブタイプであることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン化ユニットは、
正極(3c)に接続された電極もしくはニードルまたは複数のニードルと、負極(4c)に接続された対応する1つまたは複数のニードルとを備えるニードルタイプであることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記空気は、正の直流電圧が供給される、陽イオンを発生するための少なくとも1つの電極(3c)と、負の直流電圧が供給される、陰イオンを発生するための少なくとも1つの電極(4c)とを備える少なくとも1つのイオン化ユニットによりイオン化され、
前記負の直流電圧は、前記正の直流電圧よりも大きい絶対値を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記空気のイオン化を引き起こす電界の電圧が、2から5kVの間、より好ましくは2から3kVの間の公称値を有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記電界は、20から60kHzの間、より好ましくは45から50kHzの間の振動周波数を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
イオン化ユニット(24)が、高電圧ゲート(HVG)変圧器による給電を受け、
前記変圧器は、インパルスタイプの給電回路(33)に接続された一次巻線(27)と、前記イオン化デバイス(24)の少なくとも1つの電極(21)に接続された二次巻線(26)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記変圧器の前記一次巻線(27)は、少なくとも1つの電子スイッチ(31)によりアースに接続され、それにより、前記スイッチが閉じることによって前記変圧器の前記一次巻線中に電流が誘発され、前記スイッチが開くことによって、前記二次巻線内の電流のインパルスと、前記イオン化デバイスへのエネルギー移送が引き起こされることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スイッチの開閉頻度は、2つのインパルス間の期間が、前記スイッチの閉時間中に前記一次巻線中を電流が通過することから得られるエネルギーを、前記二次巻線に移送するために必要な期間に実質的に等しくなるようなものであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記比率は、好ましくは約1:4、すなわち、陽イオンが2/10、陰イオンが8/10であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
陽イオンの前記制限は、イオン化回路に供給するステップと、時間に対して前記交流電流の正半波および負半波を上昇させるステップと、前記正半波を低下させるステップと、イオン化ユニットの第1の電極に結果的に得られる電圧を供給するステップとにより得られ、前記イオン化ユニットは、接地された第2の電極を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン化の方法。
【請求項15】
前記正半波および前記負半波は、前記イオン化ユニットの受動構成要素により、正の電圧値および負の電圧値を有する電流の直流電圧において整流され、前記正の電圧値は、前記負の電圧値の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項14に記載のイオン化の方法。
【請求項16】
前記上昇させるステップは、前記電圧を、好ましくは800VACの値にまで上昇させることを特徴とする請求項14に記載のイオン化の方法。
【請求項17】
前記低下させるステップは、前記正半波(S1)の所定の上方部分(S1’)を平滑化することを特徴とする請求項14に記載のイオン化の方法。
【請求項18】
空気のイオン化回路であって、
空気のイオン化ユニットと、
陽イオンの発生を制限して、陽イオンと陰イオンとの間の所定の比率を得るための回路制御部分と
を備えることを特徴とするイオン化回路。
【請求項19】
前記回路制御部分は、イオン化電圧の正成分を低減させて、陽イオンの発生の前記制限を得るための電気的コンポーネント(3a、3b、4a、4b、15〜17、19)を備えることを特徴とする請求項18に記載のイオン化回路。
【請求項20】
前記イオン化ユニットは、誘電材料体により離隔された2つの電極を備え、前記2つの電極(4c、12)の一方がアースに接続され、他方(3c、11)に、ゼロ電圧に対して交流の傾向を経時的に示す電圧V(t)が供給され、前記電圧V(t)の負半波に関連づけられたRMS値(Veff,−)が、正半波に関連づけられたRMS値(Veff,+)よりも大きいことを特徴とする請求項19に記載のイオン化回路。
【請求項21】
前記イオン化ユニット(24)は、インパルスタイプの給電回路(33)に接続された一次巻線(27)と、前記イオン化ユニット(24)の少なくとも1つの電極(21)に接続された二次巻線(26)とを備える高電圧ゲート(HVG)変圧器に接続されていることを特徴とする請求項18に記載のイオン化回路。
【請求項22】
前記変圧器の前記一次巻線(27)は、少なくとも1つの電気スイッチ(31)によりアースに接続されることにより、前記スイッチが閉じることによって前記変換器の前記一次巻線中に電流を誘発し、前記スイッチが開くことによって、前記二次巻線内の電流のインパルスおよび前記イオン化ユニットへのエネルギー移送を実現することを特徴とする請求項21に記載のイオン化回路。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2013−514619(P2013−514619A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543920(P2012−543920)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055827
【国際公開番号】WO2011/073732
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512156729)ペリソ・ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】