説明

空気入りタイヤ

【課題】操縦安定性能を確保するとともに、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部3のカーカス層7の外側に設けられたトレッドゴム10は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、キャップ部12のタイヤ径方向内側に設けられるベース部11と、導電性ゴムで形成され且つトレッドゴム10の厚み方向TDに延びて接地面からトレッドゴム10の底面に至る導電部13とを有する。トレッドゴム10の厚み方向TDの中央部における導電部13の厚みは相対的に大とし、トレッドゴム10の厚み方向TDの両端部における導電部13の厚みは相対的に小としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の低燃費化と関係が深い転がり抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能(ウェット制動性能)の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズなどの不具合を生じ易いという問題があった。
【0003】
そこで、シリカ等を配合した非導電性ゴムからなるトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電性ゴムからなる導電部を埋設して、通電性能を発揮できるようにした空気入りタイヤが開発されている。例えば、特許文献1〜3に記載のタイヤでは、図5〜8に示すように、非導電性ゴムからなるキャップ部を備えたトレッドゴム10a〜10dに、該トレッドゴムをタイヤ幅方向に分割する導電部18〜21を設けて、静電気を放出するための導電経路を形成している。
【0004】
ところで、本発明者の研究によると、図5のトレッドゴム10aでは、コーナリング時において非導電性ゴムに対する導電部18による横方向からの支持が十分でなく、タイヤ外側と内側の剛性バランスが崩れて、操縦安定性能が低下しやすいことが判明した。導電部18の厚みを増やすことで、操縦安定性能が改善される傾向にあるものの、その場合には、トレッドゴムに非導電性ゴムを使用することによる改善効果、即ち転がり抵抗の低減効果やウェット制動性能の向上効果が犠牲になる。
【0005】
一方、図6のトレッドゴム10bでは、トレッドゴム10aに比べて、非導電性ゴムに対する導電部19の接触面積が大きく、比較的に操縦安定性能を確保しやすい。しかし、導電部19の厚みが一律であるため、この厚みが小さい場合には、非導電性ゴムを十分に支持できずに操縦安定性能が低下しやすく、トレッドゴムの成形効率の点でも不利である。また、導電部19の厚みが大きい場合には、トレッドゴムに非導電性ゴムを使用することによる改善効果が犠牲になる。
【0006】
図7のトレッドゴム10cでは、導電部20の厚みがトレッドゴム10cの底面側で大きくなっており、転がり抵抗の低減に寄与の高いベース部のボリュームが減ることになるため、転がり抵抗の低減効果が損なわれやすい。また、コーナリング時において非導電性ゴムに対する導電部20による横方向からの支持が十分でなく、操縦安定性能が低下する傾向にある。
【0007】
図8のトレッドゴム10dでは、トレッドゴム10aに比べて、非導電性ゴムに対する導電部21の接触面積が大きく、比較的に操縦安定性能を確保しやすい。しかし、導電部21の厚みがトレッドゴム10dの底面側で大きく、ベース部のボリュームが減るために、転がり抵抗の低減効果が損なわれやすい。のみならず、導電部21の厚みが接地面側でも大きく、路面に接する非導電性ゴムが減ることになるため、ウェット制動性能の向上効果も損なわれる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2944908号公報
【特許文献2】特開平11−139107号公報
【特許文献3】特開平11−20426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操縦安定性能を確保するとともに、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記トレッド部の前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられるベース部と、導電性ゴムで形成され且つ前記トレッドゴムの厚み方向に延びて接地面から前記トレッドゴムの底面に至る導電部とを有し、前記トレッドゴムの厚み方向の中央部における前記導電部の厚みを相対的に大とし、前記トレッドゴムの厚み方向の両端部における前記導電部の厚みを相対的に小としたものである。
【0011】
かかる構成によれば、トレッドゴムの厚み方向の中央部で導電部の厚みを大きくできるとともに、図5の如きトレッドゴムに比べて、非導電性ゴムに対する導電部の接触面積が大きくなる。それ故、コーナリング時に非導電性ゴムを導電部で横方向から十分に支持し、タイヤ外側と内側の剛性バランスを保って操縦安定性能を確保できる。また、トレッドゴムの厚み方向の両端部では導電部の厚みが小さくなるため、ベース部のボリュームや路面に接する非導電性ゴムを確保して、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できる。
【0012】
加えて、本発明では、トレッドゴムの厚み方向の中央部で導電部の厚みを大きくしていることから、押出成形法によってトレッドゴムを成形する場合において、該トレッドゴムの成形効率を有利にできる。即ち、複数のゴムを共押出するときの押出速度は、断面積が最小のゴムの押出速度に合わせる必要があるため、総じて遅くなりがちであるが、本発明では、トレッドゴムの厚み方向の中央部で導電部の厚みが大きく、導電部の断面積を相応に大きくできることから、押出速度を速めてトレッドゴムの成形効率を高められる。
【0013】
本発明では、前記導電部がタイヤ子午線断面で略三日月形状をなすものが好ましい。かかる構成では、導電部の両側の側面がタイヤ幅方向の同方向に湾曲した形状となり、導電部の厚みが全体的に小さくても、コーナリング時に非導電性ゴムを横方向から十分に支持し得るため、タイヤ外側と内側の剛性バランスを保って操縦安定性能を確保できる。また、導電性ゴムのボリュームを抑えて、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【図2】図1の導電部を拡大して示す断面図
【図3】本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図
【図4】本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図
【図5】比較例1に係るトレッドゴムを示す断面図
【図6】比較例2に係るトレッドゴムを示す断面図
【図7】比較例3に係るトレッドゴムを示す断面図
【図8】比較例4に係るトレッドゴムを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0016】
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が設けられ、その端部がビード1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が設けられている。
【0017】
ビード部1のカーカス層7の外側には、リム装着時にリム(不図示)と接するリムストリップゴム4が設けられている。また、サイドウォール部2のカーカス層7の外側には、サイドウォールゴム9が設けられている。本実施形態では、カーカス層7のトッピングゴム(カーカスプライのトッピングゴム)、リムストリップゴム4、後述するベルト層6及びベルト補強層8のトッピングゴムが、それぞれ導電性ゴムで形成され、サイドウォールゴム9が非導電性ゴムで形成されている。
【0018】
トレッド部3のカーカス層7の外側には、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6と、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8と、トレッドゴム10とが設けられている。各ベルトプライは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト補強層8は、必要に応じて省略しても構わない。
【0019】
トレッドゴム10は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、キャップ部12のタイヤ径方向内側に設けられるベース部11と、導電性ゴムで形成され且つトレッドゴム10の厚み方向に延びて接地面からトレッドゴム10の底面に至る導電部13とを有する。ベース部11は、キャップ部12とは異種のゴムからなり、例えば25℃でのtanδが0.35以下の低発熱性に優れるゴムが採用される。本実施形態では、ベース部11が非導電性ゴムで形成されている例を示すが、導電性ゴムで形成しても構わない。
【0020】
ここで、導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。また、非導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合することにより作製される。
【0021】
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
【0022】
導電部13を形成する導電性ゴムは、導電部13の耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着比表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが好ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
【0023】
導電部13は、トレッドゴム10をタイヤ幅方向に分割するように設けられ、その上端が接地面に露出し、その下端がトレッドゴム10の底面に露出してベルト補強層8に接続されている。車体やタイヤで発生した静電気は、リムから、リムストリップゴム4、カーカス層7、ベルト層6、ベルト補強層8及び導電部13を介した導電経路を通じて路面に放出される。ベース部11を導電性ゴムで形成した場合には、リムから、リムストリップゴム4、カーカス層7、ベース部11及び導電部13を介した導電経路となる。
【0024】
導電部13が露出する接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部3の表面を指す。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。
【0025】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
【0026】
図2に拡大して示すように、このタイヤでは、トレッドゴム10の厚み方向TDの中央部における導電部13の厚みを相対的に大とし、トレッドゴム10の厚み方向TDの両端部における導電部13の厚みを相対的に小にしている。具体的には、厚み方向TDの中央における導電部13の厚み13Tm、接地面における導電部13の厚み13Tt、及び、トレッドゴム10の底面における導電部13の厚み13Tbが、13Tm>13Tt、且つ、13Tm>13Tbという関係を満たす。
【0027】
厚み13Tmは、例えば0.6〜1.5mmに設定される。この厚み13Tmが0.6mm以上であることによって、操縦安定性能を確保しやすくなるとともに、1.5mm以下であることによって、導電性ゴムのボリュームを抑えて、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果をより良好に発揮できる。また、導電部13の全幅Wは、例えば1.5〜3.5mmに設定される。
【0028】
厚み13Ttは、例えば0.1〜0.5mmに設定される。これが0.1mm以上であることによって、通電性能を確保しやすくなるとともに、0.5mm以下であることによって、ウェット制動性能の向上効果をより良好に発揮できる。また、厚み13Tbは、例えば0.1〜0.4mmに設定される。これが0.1mm以上であることによって、通電性能を確保しやすくなるとともに、0.4mm以下であることによって、転がり抵抗の低減効果をより良好に発揮できる。
【0029】
本実施形態では、導電部13がタイヤ子午線断面で略三日月形状をなしており、導電部13の両側の側面がタイヤ幅方向の同方向に湾曲した形状となる。それ故、導電部13の厚みが全体的に小さくても、コーナリング時に非導電性ゴム(キャップ部12)を横方向から十分に支持して操縦安定性能を確保できる。また、導電性ゴムのボリュームを抑えて、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できる。この形状において、曲率半径Rは例えば5〜45mmに設定される。
【0030】
このような導電部13を有するトレッドゴム10は、押出成形法によって簡便に得られる。押出成形法では、キャップ部12とベース部11と導電部13との共押出により、所定の断面形状を有するトレッドゴムが帯状に成形され、その端部同士をジョイントすることにより環状のトレッドゴム10が成形される。本発明では、導電部13の断面積を相応に大きくできることから、共押出における押出速度を速めて、トレッドゴムの成形効率を高められる。
【0031】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如きトレッドゴムを設けること以外は、通常の空気入りタイヤと同等に構成でき、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
【0032】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0033】
[別実施形態]
(1)前述の実施形態では、導電部がタイヤ子午線断面で略三日月形状をなす例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば図3のような横向きT字形状をなす導電部14でもよい。この導電部14においても、トレッドゴム10の厚み方向TDの中央部における厚みが相対的に大であり、トレッドゴム10の厚み方向TDの両端部における厚みが相対的に小となっている。
【0034】
図3の例において、厚み方向TDの中央における導電部14の厚み14Tmは、例えば0.6〜1.5mmに設定される。また、接地面における導電部14の厚み14Ttは、例えば0.1〜0.9mmに設定され、トレッドゴム10の底面における導電部14の厚み14Tbは、例えば0.1〜0.4mmに設定される。この形状において、導電部14の厚みが大となる部分の高さ14Hmは、例えばトレッドゴム10の厚み10Tの40〜60%に設定される。
【0035】
(2)図4に、本発明で採用され得る導電部の他の例を示す。(A)は、導電部15の両側の側面がタイヤ幅方向の異方向に湾曲した例であり、(B)は、導電部16が断面十字形状をなす例であり、(C)は、導電部17の両側の側面がタイヤ幅方向の異方向に屈曲した例である。接地面及びトレッドゴム10の底面における導電部の厚みが同じであれば、図4の導電部15〜17に比べて、図2,3の導電部13,14の方が、導電性ゴムのボリュームが抑えられ、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果に優れる。
【0036】
(3)本発明は、タイヤ子午線断面において複数の導電部が現れるように構成しても構わないが、導電性ゴムのボリュームを極力低減する観点から、前述の実施形態のようにタイヤ子午線断面に1つの導電部が現れるように構成することが好ましい。その場合、タイヤの横方向のユニフォミティを向上するうえで、タイヤ赤道(センターライン)を通るように導電部を配置することが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
【0038】
(1)操縦安定性能
実車(1.5Lクラスの国産セダン)にタイヤを装着して車両指定の空気圧でドライバー1名乗車時の荷重が負荷される状態で直進走行やコーナリング走行を実施し、ドライバーの官能試験により評価した。従来例の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0039】
(2)転がり抵抗
国際規格ISO28580(JISD4234)に準じて、時速80km/hにおける転がり抵抗を測定し、その逆数を算出した。従来例の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど転がり抵抗に優れていることを示す。
【0040】
(3)ウェット制動性能
上記実車にタイヤを装着して濡れた路面を走行させ、時速100km/hから0km/hまでABS制動を行い、第5輪により計測した制動距離の逆数を算出した。従来例の結果を100として指数評価し、数値が大きいほどウェット制動性能に優れていることを示す。
【0041】
(4)通電性能
静電気を路面へ放出しうる導電経路が存在する場合を○、存在しない場合を×として、通電性能を評価した。
【0042】
評価に供したタイヤのサイズは195/65R15であり、導電部の形状を除いて、各例におけるタイヤ構造やゴム配合は共通である。導電部の寸法は表1に示す通りであるが、従来例では導電部を設けておらず、比較例4では導電部21の厚みが小となる部分の高さ21Hmを4mmとし、実施例1では導電部13の曲率半径Rを30mmとし、実施例2では導電部14の厚みが大となる部分の高さ14Hmを4mmとした。評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、実施例1,2では、従来例や比較例1〜4と比べて、操縦安定性能を確保しながら、転がり抵抗の低減効果とウェット制動性能の向上効果を良好に発揮できている。
【符号の説明】
【0045】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
7 カーカス層
10 トレッドゴム
11 ベース部
12 キャップ部
13 導電部
14 導電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記トレッド部の前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられるベース部と、導電性ゴムで形成され且つ前記トレッドゴムの厚み方向に延びて接地面から前記トレッドゴムの底面に至る導電部とを有し、
前記トレッドゴムの厚み方向の中央部における前記導電部の厚みを相対的に大とし、前記トレッドゴムの厚み方向の両端部における前記導電部の厚みを相対的に小としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記導電部がタイヤ子午線断面で略三日月形状をなす請求項1に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23200(P2013−23200A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163376(P2011−163376)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)