説明

空気入りタイヤ

【課題】ユーザーが自由に装飾したり、その他の付属物を施したりすることが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】サイドウォール部14には、ピン孔30が形成されている。ピン孔30に装着される装着具40は、ピン部材42及び頭部44を備えている。ピン部材42の直径A2は、ピン孔30の径A1よりも大径に設定されている。装着具40を空気入りタイヤ10に取り付ける場合には、ピン孔30にピン部材42を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤのサイド部に装飾を施すため、リッジをデザイン配置したり、文字を配列したり、カラーリングしたりするなどの工夫がなされてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、装飾は予め施されており、ユーザーが自由に装飾を変更できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−273505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、ユーザーが自由に装飾したり、その他の付属物を施したりすることが可能な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る空気入りタイヤは、一対のタイヤサイドウォール部のうちの車両装着外側に配置される側に形成されたピン孔と、前記ピン孔の少なくとも一部の壁面を該ピン孔が拡張する方向に変形させつつ該ピン孔に挿入されると共に、該ピン孔から抜き出し可能とされたピン部材と、前記ピン部材の挿入後端側に設けられた頭部と、を有する装着具と、を備えている。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤでは、ピン部材をピン孔に挿入することにより、ピン孔が拡張するように弾性変形する。これにより、ピン部材が、ピン孔の壁面の少なくとも一部における復元力によって保持されて、ピン部材の挿入後端側に設けられた頭部を含む装着具が装着される。また、ピン部材をピン孔から抜き出すことにより、装着具を取り外すことができる。これにより、ユーザーが好みの装着具を自由に装着することができる。
【0008】
ここでの装着具は、装飾品、温度センサーなどの計測機器を含むものである。
【0009】
請求項2の発明に係る空気入りタイヤは、前記タイヤサイドウォール部に突出したサイドリブを有し、前記ピン孔は、前記サイドリブに形成されていること、を特徴とする。
【0010】
このように、サイドリブにピン孔を形成することにより、ピン孔の深さが確保しやすくなる。
【0011】
請求項3の発明に係る空気入りタイヤは、前記サイドリブは平坦なフラット外面を有し、該フラット外面のタイヤ径方向最外端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に配置されていること、を特徴とする。
【0012】
上記の位置にサイドリブのフラット外面を形成することにより、走行条件によってタイヤサイドウォール部が接地する状況となっても、フラット外面の接地を回避することができる。したがって、このフラット外面に挿入されるピン部材、装着される頭部の損傷、脱落、フラット外面に形成されたピン孔部の損傷も回避することができる。
【0013】
請求項4の発明に係る空気入りタイヤは、前記ピン孔の深さは、前記ピン孔が形成された部分における前記サイドリブを含むサイドウォール部のタイヤ軸方向の厚みの85%未満であること、を特徴とする。
【0014】
このように、ピン孔の深さを設定することにより、ピン孔によるタイヤ骨格部材への干渉を抑制することができる。
【0015】
請求項5の発明に係る空気入りタイヤは、前記ピン孔の最大対角長さは前記フラット外面のタイヤ径方向長さの50%以下であること、を特徴とする。
【0016】
このように、ピン孔の最大対角長さを設定することにより、ピン孔からの亀裂進展を抑制することができる。
【0017】
なお、空気入りタイヤの前記ピン孔は、請求項6〜10に記載のように、タイヤサイド側からみて円形状、矩形状、多角形状、楕円形状、円形と矩形を結合させた鍵穴形状、とすることができる。
【0018】
このように、ピン孔を種々の形状に形成することができる。
【0019】
請求項11に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔が、深さ方向に一定の断面を有する柱状部分を有していること、を特徴とする。
【0020】
このように、柱状部分を有することにより、ピン孔を容易に形成することができる。
【0021】
請求項12に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔が、深さ方向に徐々に断面が小さくなる錐状部分を有していること、を特徴とする。
【0022】
このように、錐状部分を有することにより、ピン部材の挿入及び抜き出しがし易くなる。
【0023】
請求項13に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔は、底部にピン孔が径方向に拡張された錘状部分を有していること、を特徴とする。
【0024】
このように、錘状部分を有していることにより、ピン部材の抜け出しを抑制することができる。
【0025】
請求項14に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔には、深さ方向の中間部に壁面が凹となる係合凹部が形成され、前記ピン部材には、この係合凹部に対応する位置に、係合凸部が形成されていること、を特徴とする。
【0026】
上記構成では、係合凹部に係合凸部が係合することにより、ピン部材の抜け出しを抑制することができる。
【0027】
請求項15に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔は、開口部が該開口部よりも奥側よりも大径とされていること、を特徴とする。
【0028】
このように開口部を大径とすることにより、ピン孔へピン部材を挿入しやすくすることができる。
【0029】
請求項16に係る発明の空気入りタイヤは、隣り合う前記ピン孔の間隔は、前記ピン孔の最大対角長さの1.5倍以上であること、を特徴とする。
【0030】
このようにピン孔の間隔を設定することにより、ピン孔を起点とするタイヤサイドウォール部の亀裂の進展を抑制することができる。
【0031】
請求項17に係る発明の空気入りタイヤは、前記ピン孔の深さ方向のタイヤ赤道面に対しての傾きは、60°〜120°であること、を特徴とする。
【0032】
この範囲内に、ピン孔の深さ方向のタイヤ赤道面に対しての傾きを設定することにより、タイヤ高速走行使用時における回転に伴う遠心力が作用しても、ピン部材の脱落を抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る請求項1に記載の空気入りタイヤによれば、ピン部材の挿入、抜き出しにより、ユーザーが好みの装着具を自由に装着することができる。
【0034】
請求項2に記載の空気入りタイヤによれば、サイドリブにピン孔が形成されているので、ピン孔の深さを容易に確保することができる。
【0035】
請求項3に記載の空気入りタイヤによれば、フラット外面に挿入されるピン部材、装着される装着具の損傷、脱落、フラット外面に形成されたピン孔部の損傷を回避することができる。
【0036】
請求項4に記載の空気入りタイヤによれば、ピン孔によるタイヤ骨格部材への干渉を抑制することができる。
【0037】
請求項5に記載の空気入りタイヤによれば、ピン孔からの亀裂進展を抑制することができる。
【0038】
請求項6〜10に記載の空気入りタイヤのように、ピン孔を種々の形状に形成することができる。
【0039】
請求項11に記載の空気入りタイヤによれば、ピン孔を容易に形成することができる。
【0040】
請求項12に記載の空気入りタイヤによれば、ピン部材の挿入及び抜き出しを容易に行うことができる。
【0041】
請求項13に記載の空気入りタイヤによれば、ピン部材の抜け出しを抑制することができる。
【0042】
請求項14に記載の空気入りタイヤによれば、ピン部材の抜け出しを抑制することができる。
【0043】
請求項15に記載の空気入りタイヤによれば、ピン孔へピン部材を挿入しやすくすることができる。
【0044】
請求項16に記載の空気入りタイヤによれば、ピン孔を起点とするタイヤサイドウォール部の亀裂の進展を抑制することができる。
【0045】
請求項17に記載の空気入りタイヤによれば、ピン部材の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの、タイヤ径方向の断面図である。
【図2】本実施形態に係る空気入りタイヤの、ピン孔及び装飾具を示す図である。
【図3】本実施形態に係る空気入りタイヤの装着具を未装着状態の側面図である。
【図4】本実施形態に係る空気入りタイヤの装飾具を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る空気入りタイヤの装着具を装着した状態の側面図である。
【図6】本実施形態に係る空気入りタイヤの、ピン孔の変形例及び装飾具を示す図である。
【図7】本実施形態の変形例に係る空気入りタイヤの、ピン孔の変形例(A)〜(E)を示す平面図である。
【図8】本実施形態の変形例に係る空気入りタイヤの、ピン孔の他の変形例(A)〜(C)を示す側断面図である。
【図9】本実施形態の変形例に係る空気入りタイヤの、ピン孔及び装着具の変形例(A)〜(B)を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。本実施形態において規定する空気入りタイヤの各部の位置等は、JATMA YEAR BOOK(2011年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。なお、使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0048】
図1には、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のタイヤ径方向断面図(タイヤ赤道面CLを挟んだ片側のみ)が示されている。本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、一対のビード部12と、一対のサイドウォール部14と、トレッド部16とを有している。
【0049】
ビード部12には、少なくとも1本の環状のビードコア18が埋設されている。一対のビードコア18間には、カーカス20がトロイダル状に跨るように設けられている。このカーカス20は、ビードコア18に対して内側から外側に巻き返されている。カーカス20のタイヤ径方向外側には、ベルト層22が設けられている。
【0050】
一対のサイドウォール部14は、ビード部12からタイヤ径方向外側に夫々延設されている。各々のサイドウォール部14には、外表面から突出したリムガード24(サイドリブ)が形成されている。リムガード24は、タイヤ全周に亘って連続形成されている。リムガード24のタイヤ軸方向AXの外側には、フラット外面24Aが形成されている。フラット外面24Aは、タイヤ赤道面CLに沿った平坦面とされている。
【0051】
空気入りタイヤ10のタイヤ最大幅位置をWmaxとすると、フラット外面24Aは、サイドウォール部14のタイヤ最大幅位置Wmaxよりもビード部12側に形成されている。なお、フラット外面24Aは、必ずしもタイヤ最大幅位置Wmaxよりもビード部12側に形成されている必要はないが、このように形成されていることにより、走行条件によってサイドウォール部14が接地する状況となっても、フラット外面24Aの接地を回避することができる。その結果、このフラット外面24Aに形成される後述のピン孔30の損傷も回避することができる。さらに、ピン孔30に挿入される後述のピン部材42、頭部44の損傷、脱落も回避することができる。
【0052】
リムガード24のフラット外面24Aには、図2にも示すように、ピン孔30が形成されている。ピン孔30は、タイヤ軸方向AXに沿って延在する円柱形状とされている。なお、ピン孔30の延在方向は、タイヤ軸方向AXに沿っている必要はないが、タイヤ赤道面CLに対して60°〜120°の範囲内の傾き角度θ(図1参照)とすることが好ましい。この範囲内に傾き角度θを設定することにより、タイヤ高速走行使用時における回転に伴う遠心力が作用しても、ピン部材の脱落を抑制することができる。
【0053】
ピン孔30は、図3にも示すように、リムガード24のタイヤ周方向に沿って複数形成されている。隣り合うピン孔30同士の間隔Bは、ピン孔30の直径A1の1.5倍以上であることが好ましい。このように間隔Bを設定することにより、ピン孔30を起点とするサイドウォール部14の亀裂の進展を抑制することができる。
【0054】
ピン孔30の深さD1は、ピン孔30の中心軸Pに対応する位置におけるリムガード24を含んだサイドウォール部14のタイヤ軸方向AXの厚みRGHの85%未満であることが好ましい。このように、ピン孔30の深さDを設定することにより、ピン孔30によるサイドウォール部14を含むタイヤ骨格部材への影響を抑制することができる。
【0055】
また、ピン孔30の直径A1(最大対角長さ)は、フラット外面24Aのタイヤ径方向長さTの50%以下であることが好ましい。このように、ピン孔30の直径A1を設定することにより、ピン孔30からサイドウォール部14への亀裂進展を抑制することができる。
【0056】
図4(A)及び図4(B)には、ピン孔30に装着される装着具40が示されている。装着具40は、ピン部材42及び頭部44を備えている。ピン部材42は、円柱形状とされている。ピン部材42の直径A2は、ピン孔30の直径A1よりも大径に設定されている。
【0057】
ピン部材42の一端部には頭部44が設けられている。頭部44はピン部材42よりも大径の円板状とされ、円板の中央部にピン部材42が配置されている。頭部44の外側面に装飾が施されている。なお、ピン部材42と頭部44とは、別体とされて連結されていてもよいし、一体的に形成されていてもよい。ピン部材42は、先端側(頭部44が設けられていない端部)からピン孔30に挿入され、頭部44側は挿入後端側となっている。
【0058】
装着具40を空気入りタイヤ10に取り付ける場合には、ピン孔30にピン部材42を挿入する。このとき、ピン部材42の直径A2はピン孔30の直径A2よりも大径であるため、ピン孔30を形成する内壁は、ピン部材42に押されてピン孔30が拡張するように弾性変形する。したがって、ピン孔30に挿入されたピン部材42は、ピン孔30の内壁の復元力によって保持され、装着具40が装着される。図5には、図3に示されるピン孔30に装着具40が装着された状態のタイヤ側面が示されている。頭部44は、ピン孔30の外側に配置される。
【0059】
装着具40を空気入りタイヤ10から取り外す場合には、頭部44を持って引っ張り、ピン部材42をピン孔30から抜き出せばよい。
【0060】
本実施形態の空気入りタイヤ10によれば、装着具40をピン孔30へ挿入したり、ピン孔30から抜き出したりすることができるので、ユーザーが好みの装着具40を自由に装着することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、装着具40として、頭部44に装飾の施された装飾品を例に説明したが、装着具としては装飾品に限定されるものではなく、温度センサー、走行履歴計測などの計測機器や、その他の部材であってもよい。また、頭部44の形状は円板状である必要はなく、四角形板状、三角形板状、その他の自由な形状とすることができる。
【0062】
また、本実施形態のピン孔30は、開口部と中間部の径が同じ形状のものを例に説明したが、図6に示すように、開口側が奥側よりも大径となるようなテーパー部31を形成してもよい。このように開口にテーパー部31を形成することにより、ピン孔30へピン部材42を容易に挿入することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ピン孔30のタイヤサイド側からみた形状を円形状としたが、この形状に限定されるものではなく、図7(A)〜(E)に示されるような他の形状としてもよく、その他に連続した直線と曲線で囲まれた形状とすることができる。
【0064】
例えば、図7(A)には、十字形状のピン孔30Aが示されている。この場合には、最大対角長さは、矢印A1−Aで示す位置となる。また、図7(B)には、四角形状(矩形状)のピン孔30Bが示されている。ピン孔30Bの一対の対角は面取りされており、他の一対の対角を結ぶ直線が最大対角長さA1−Bとなる。
【0065】
また、図7(C)には、楕円形状のピン孔30CBが示されている。楕円の長径がピン孔30Cの最大対角長さA1−Cとなる。また、図7(D)には、星形状のピン孔30Dが示されている。星型の最も離れた位置にある先端同士を結ぶ直線が最大対角長さA1−Dとなる。また、図7(E)には、円形と台形を連結させた鍵穴形状のピン孔30Eが示されている。台形の一方の角部とここから最も離れた位置にある円周とを結ぶ直線が最大対角長さA1−Eとなる。
【0066】
また、本実施形態では、ピン孔30が深さ方向に一定の断面を有する柱状である例について説明したが、この形状に限定されるものではなく、図8(A)に示されるように、奥側が小径となるような円錐形状のピン孔33Aとしてもよい。また、その他に連続した直線と曲線で囲まれた形状とすることができる。
【0067】
また、図8(B)、図8(C)に示されるように、底部にピン孔を拡張した錘部を形成してもよい。図8(B)では、円錐形状のピン孔33Bの底部に錘部35Bを形成し、図8(C)では、円柱形状のピン孔33Cの底部に錘部35Cを形成している。
【0068】
また、図9(A)に示されるように、ピン孔35Aの深さ方向の中間部に壁面が凹となる係合凹部37Aが形成されていてもよい。この場合のピン部材40Aには、係合凹部37Aに係合可能な係合凸部46Aを形成する。このように、係合凹部37Aへ係合凸部46Aを係合させることにより、装着具40Aの抜けを抑制することができる。
【0069】
また、図9(B)に示されるように、係合凹部37Bを、ピン孔35Bの全周に亘って形成される環状としてもよい。この場合のピン部材40Bには、係合凹部37Bに係合可能な環状の係合凸部46Aを形成する。このように、係合凹部37Bへ係合凸部46Bを係合させることにより、装着具40Bの抜けを抑制することができる。
【0070】
上記のピン孔についての各形状は、複数の形状を組み合わせることができる。例えば、タイヤサイド側からみた形状を四角形状にすると共に深さ方向に細くなる四角錐状とし、中間部に係合凹部を形成することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、リムガード24のフラット外面24Aにピン孔30を形成した例について説明したが、ピン孔30はサイドウォール部14の他の部分に形成されていてもよい。本実施形態のように、リムガード24に形成することにより、ピン孔30の深さを容易に確保することができる。
【0072】
また、ピン孔30は、サイドウォール部14に形成された、リムガード24と異なる凸部、リブ等に形成してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、空気入りタイヤ10の一対のサイドウォール部14の両側にピン孔30が形成され、このピン孔30に装着具40が装着される例について説明したが、必ずしも両側である必要はなく、少なくとも車両装着外側に形成されていればよい。
【0074】
[実施例]
【0075】
タイヤサイズ 195/65R15 91V のタイヤについて、ピン孔及びリムガードのサイズを変えた実施例1〜7を用いて、各種の試験を行った。ピン孔に装着される装着具は、すべての実施例において同一で図4に示す装着具であり、直径A2は3.3mm、ピン部材の長さD2は9.5mmとした。ピン孔及びリムガードのサイズについては、表1に示す通りである。
【0076】
【表1】

【0077】
試験として、劣化亀裂進展耐久ドラム試験、高速耐久ドラム試験、及び、高負荷荷重時のホイールへのピン孔接触計測を行った。
【0078】
劣化亀裂進展耐久ドラム試験では、実施例1〜7のタイヤを正規リム 6J15に組み付け、バルブコアを取り付けて、純度99%以上の酸素を充填圧が350kPaになるように充填し、その後恒温庫内に60℃で、7日間放置して事前酸素劣化させた。その後、タイヤ内の充填圧を230KPaまで充填し、JATMA準拠規格の最大荷重の85%の荷重負荷率にて試験速度90km/hで走行距離20000kmまで走行させた。試験走行後に、隣り合うピン孔への周方向亀裂の進展の有無、及び、タイヤ骨格材への亀裂到達の有無を確認した。各々の結果は、表2に示す通りである。
【0079】
高速耐久ドラム試験では、実施例1〜7のタイヤを正規リム 6J15に組み付け、正規内圧230kPaで内圧充填し、JATMA準拠規格の最大荷重の88%の荷重負荷率にて速度80km/hから最大速度240km/hまで30分毎に10km/hの速度を上昇させ、装着具がピン孔から抜け出てタイヤから脱落した時の速度を計測した。各々の結果は表2に示す通りである。
【0080】
高負荷荷重時のホイールへのピン孔接触計測では、実施例1〜7のタイヤを正規リム 6J15に組み付け、タイヤ負荷形状測定試験機にてLI(ロードインデックス)の300%負荷率時のホイールへのピン孔接触の有無を計測した。各々の結果は表2に示す通りである。
【0081】
【表2】

【符号の説明】
【0082】
10 空気入りタイヤ
14 サイドウォール部
24A フラット外面
24 リムガード(サイドリブ)
30 ピン孔
35B 錘部
35C 錘部
37A 係合凹部
37B 係合凹部
40A ピン部材
40B ピン部材
40 装着具
42 ピン部材
44 頭部
A1 直径
A2 直径
AX タイヤ軸方向
B 間隔
CL タイヤ赤道面
P 中心軸
Wmax タイヤ最大幅位置
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のタイヤサイドウォール部のうちの車両装着外側に配置される側に形成されたピン孔と、
前記ピン孔の少なくとも一部の壁面を該ピン孔が拡張する方向に変形させつつ該ピン孔に挿入されると共に、該ピン孔から抜き出し可能とされたピン部材と、前記ピン部材の挿入後端側に設けられた頭部と、を有する装着具と、
を備えた空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤサイドウォール部に、突出したサイドリブを有し、
前記ピン孔は、前記サイドリブに形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイドリブは平坦なフラット外面を有し、該フラット外面のタイヤ径方向最外端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に配置されていること、を特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ピン孔の深さは、前記ピン孔が形成された部分における前記サイドリブを含むサイドウォール部のタイヤ軸方向の厚みの85%未満であること、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ピン孔の最大対角長さは前記フラット外面のタイヤ径方向長さの50%以下であること、を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ピン孔は、タイヤサイド側からみて円形状であること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ピン孔は、タイヤサイド側からみて矩形状であること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ピン孔は、タイヤサイド側からみて多角形状であること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ピン孔は、タイヤサイド側からみて楕円形状であること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ピン孔は、タイヤサイド側からみて円形と矩形を結合させた鍵穴形状であること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ピン孔は、深さ方向に一定の断面を有する柱状部分を有していること、を特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ピン孔は、深さ方向に徐々に断面が小さくなる錐状部分を有していること、を特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ピン孔は、底部にピン孔が径方向に拡張された錘状部分を有していること、他の部分よりも断面が大きくなる錘状部分を有していること、を特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記ピン孔は、深さ方向の中間部に壁面が凹となる係合凹部が形成され、前記ピン部材には、この係合凹部に対応する位置に、係合凸部が形成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記ピン孔は、開口部が該開口部よりも奥側よりも大径とされていること、を特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
隣り合う前記ピン孔の間隔は、前記ピン孔の最大対角長さの1.5倍以上であること、を特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記ピン孔の深さ方向のタイヤ赤道面に対しての傾きは、60°〜120°であること、を特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−35463(P2013−35463A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174233(P2011−174233)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)