説明

空気入りタイヤ

【課題】サイドウォール部に高硬度のゴム層を配置した空気入りタイヤにおいて、転がり抵抗を低く維持しながら操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】
サイドウォール部2のゴム層をタイヤ外表面に露出するサイドゴム層10とサイドゴム層10とカーカス層4との間に介在するサイド補強ゴム層11とから構成し、サイド補強ゴム層11を構成するゴム組成物の硬度をサイドゴム層10を構成するゴム組成物の硬度よりも相対的に高くし、その硬度差をJIS硬度で15〜30にすると共に、サイド補強ゴム層11をタイヤ周方向に連続的かつタイヤ子午線断面においてタイヤ径方向に複数の分断部12を有するように配置し、タイヤ周上で分断部12の数が最大となるタイヤ子午線断面で分断部12を2〜8箇所設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、転がり抵抗を低く維持しながら操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、操縦安定性を改善するために、サイドウォール部においてカーカス層とサイドウォール外面をなすゴム層との間に高硬度のゴム層を配置して、タイヤの周剛性を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この方法では、同時に縦剛性も高くなってしまうため、転がり抵抗が悪化すると云う問題がある。即ち、転がり抵抗を低減するという観点からはサイドウォール部の剛性を低減することが必要である。
【0004】
このように操縦安定性と転がり抵抗とは二律背反の関係にあり、これら性能を両立するには、タイヤの縦剛性を変えずに周剛性を高めることが有効であるが、特に、上述のようにサイドウォール部に高硬度のゴム層を配置する場合に、縦剛性及び周剛性のいずれか一方のみを選択的に向上することは難しく、操縦安定性と転がり抵抗とを同時に満足することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−050813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、サイドウォール部に高硬度のゴム層を配置した空気入りタイヤにおいて、転がり抵抗を低く維持しながら操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の両端部をそれぞれビードコアの廻りにビードフィラーを挟むようにタイヤ内側から外側へ巻き上げた空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部における前記カーカス層よりもタイヤ幅方向外側のゴム層をタイヤ外表面に露出するサイドゴム層と該サイドゴム層と前記カーカス層との間に介在するサイド補強ゴム層とから構成し、前記サイド補強ゴム層を構成するゴム組成物の硬度を前記サイドゴム層を構成するゴム組成物の硬度よりも相対的に高くし、その硬度差をJIS硬度で15〜30にすると共に、前記サイド補強ゴム層をタイヤ周方向に連続的かつタイヤ子午線断面においてタイヤ径方向に複数の分断部を有するように配置し、タイヤ周上で前記分断部の数が最大となるタイヤ子午線断面で前記分断部を2〜8箇所設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述のように、サイドウォール部に相対的に高硬度のサイド補強ゴム層を配置することでタイヤの周剛性を高めて優れた操縦安定性を得る一方で、タイヤ子午線断面において非連続にして2〜8箇所の分断部を有するようにしているので、相対的に低硬度のサイドゴム層が介在する分断部においてサイドウォールを積極的に変形させて縦剛性の増加を防ぎ、低い転がり抵抗を維持することが出来る。特に、サイド補強ゴム層とサイドゴム層との硬度差をJIS硬度で15〜30にすることで、サイド補強ゴム層が著しく高硬度になり転がり抵抗が悪化したり、サイドゴム層が著しく低硬度になり操縦安定性が悪化することを防止して、操縦安定性と転がり抵抗を高度に両立することが出来る。
【0009】
本発明においては、タイヤ子午線断面における分断部のうち最も狭い分断部のカーカス層に沿った分断長さが1mm以上10mm以下であることが好ましい。このように分断部により分断されたサイド補強ゴム層の各部分同士の距離を規定することで、サイドウォール部の縦撓みの変形し易さを調整して、縦剛性と周剛性のバランスを取り操縦安定性と転がり抵抗とをより高度に両立することが出来る。
【0010】
本発明において、サイド補強ゴム層をタイヤ回転軸の廻りに渦巻状に連続的に巻き付けることが好ましい。これにより、サイド補強ゴム層のタイヤ子午線断面における分断構造を維持したまま周方向に連続する長さを増大することが出来るので、周剛性をより向上して操縦安定性を更に向上することが出来る。このとき、サイド補強ゴム層の総長さの70%以上をタイヤ周方向に連続することで、周剛性を高めて更に優れた操縦安定性を得ることが出来る。
【0011】
本発明において、サイド補強ゴム層のタイヤ径方向内側端をビードフィラーのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に配置し、サイド補強ゴム層のタイヤ径方向外側端をタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に配置し、タイヤ子午線断面におけるサイド補強ゴム層の分断部により分断された各部分のカーカス層に沿う方向の長さを5mm〜20mmとし、サイド補強ゴム層の各部分のカーカス層に沿う方向の長さをその厚さよりも大きくすることが好ましい。このようにサイド補強ゴム層の位置と寸法を設定することで、周剛性を確保し易くなり、操縦安定性を向上する効果を高めることが出来る。また、縦剛性と周剛性のバランスをとることが出来るので、操縦安定性と転がり抵抗とをより高度に両立することが出来る。
【0012】
本発明において、ビード部側の分断部の分断長さよりもトレッド部側の分断部の分断長さが大きいことが好ましい。このようにビード部側からトレッド部側に向けて分断長さに勾配を持たせることで、タイヤの部位による変形量の違いに応じて縦剛性を調整して、転がり抵抗を更に改善することが出来る。
【0013】
尚、本発明でいう硬度とは、20℃での硬さであり、JIS K6253に規定されるデュロメータ(Aタイプ)を用いて測定されるデュロメータ硬さである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りランフラットタイヤを示す子午線半断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるサイド補強ゴム層を側面から見た模式図である。
【図3】本発明の他の実施形態におけるサイド補強ゴム層を側面から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、これらカーカス層4の端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周側にはゴムからなる断面三角形状のビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、2層のベルト層7がタイヤ全周に亘って配置されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト層7の端部を覆うようにベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8は、タイヤ周方向に配置する補強コードを含み、その補強コードをタイヤ周方向に連続的に巻回したものである。本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その具体的な構造は上記基本構造に限定されるものではない。
【0017】
本発明においては、サイドウォール部2におけるカーカス層4よりもタイヤ幅方向外側のゴム層は、タイヤ外表面に露出するサイドゴム層10とこのサイドゴム層10とカーカス層4との間に介在するサイド補強ゴム層11とから構成されている。このサイド補強ゴム層11を構成するゴム組成物の硬度H11は、サイドゴム層10を構成するゴム組成物の硬度H10よりも相対的に高く、H11>H10の関係になっている。そして、その硬度差はJIS硬度で15〜30である。また、サイド補強ゴム層11は、タイヤ周方向に連続的かつタイヤ子午線断面においてタイヤ径方向に複数の分断部12を有するように配置されている。更に、タイヤ周上で分断部12の数が最大となるタイヤ子午線断面で分断部12は2〜8箇所設けられている。
【0018】
このようにサイドウォール部2に相対的に高硬度のサイド補強ゴム層11を配置することで、タイヤの周剛性を高めて優れた操縦安定性を得ることが出来る。その一方で、このサイド補強ゴム層11をタイヤ子午線断面において非連続にして2〜8箇所の分断部12を有するようにしているので、相対的に低硬度のサイドゴム層10が介在する分断部12においてサイドウォール部2を積極的に変形させて縦剛性の増加を防ぎ、低い転がり抵抗を維持することが出来る。特に、サイド補強ゴム層11とサイドゴム層10との硬度差をJIS硬度で15〜30にすることで、サイド補強ゴム層11が著しく高硬度になり転がり抵抗が悪化したり、サイドゴム層10が著しく低硬度になり操縦安定性が悪化することを防止して、操縦安定性と転がり抵抗を高度に両立することが出来る。
【0019】
このとき、硬度差が15より小さいと、タイヤの周剛性を充分高めることが出来ないので上述の優れた操縦安定性を得ることが出来ない。また、硬度差が30より大きいと、縦剛性が増加してしまい転がり抵抗が悪化する。好ましくは、サイド補強ゴム層11を構成するゴム組成物の硬度H11を70〜80の範囲に設定し、サイドゴム層10を構成するゴム組成物の硬度H10を50〜60の範囲に設定して、上述の硬度差を付与すると良い。特に、サイドゴム層10を構成するゴム組成物の硬度H10が50よりも小さいと、サイドウォール部全体の硬度が低くなり過ぎてタイヤの耐久性が悪化する。
【0020】
また、分断部12が2箇所より少ないと、分断部12を設けることによる効果が充分に得られず、タイヤの縦剛性が増加して転がり抵抗が悪化する。分断部12が8箇所より多いと、タイヤ子午線断面においてサイド補強ゴム層12が細分化され過ぎて、タイヤの周剛性が低下して操縦安定性を向上することが出来ない。
【0021】
本発明においては、タイヤ子午線断面における分断部12のうち最も狭い分断部でのカーカス層4に沿った分断長さdが1mm以上10mm以下であることが好ましい。このように、タイヤ子午線断面において分断部12により分断されたサイド補強ゴム層11の各部分同士の距離を規定することで、サイドウォール部2の縦撓みの変形し易さを適正化して、縦剛性と周剛性のバランスを取ることが出来るので、操縦安定性と転がり抵抗とをより高度に両立することが出来る。
【0022】
分断長さdが1mmより小さいと、タイヤの縦剛性を低減することが出来ず、転がり抵抗を低減する効果が充分に得られない。分断長さdが10mmより大きいと、タイヤの周剛性の増加が不充分になり、操縦安定性を充分に向上することが出来ない。
【0023】
本発明では、上述のように、サイド補強ゴム層11はタイヤ周方向に連続的かつタイヤ子午線断面においてタイヤ径方向に断続的に設けられる。その具体的な形態としては、例えば、図2に示すように、サイド補強ゴム層11をタイヤ回転軸Xの廻りに同心円状に配置することが出来る。このような形態であれば、サイド補強ゴム層11を構成する各部分は周方向に連続し、かつ分断部12で分断されているので、縦剛性と周剛性のバランスをとることが出来る。
【0024】
また、図3に示すように、サイド補強ゴム層11をタイヤ回転軸Xの廻りに渦巻状に連続的に巻き付けることが出来る。このような形態であれば、サイド補強ゴム層11のタイヤ子午線断面における分断構造を維持したまま周方向に連続する長さを増大することが出来るので、周剛性をより向上して操縦安定性を更に向上することが出来る。
【0025】
このとき、サイド補強ゴム層11の総長さの70%以上をタイヤ周方向に連続することで、周剛性を高めて更に優れた操縦安定性を得ることが出来る。即ち、サイド補強ゴム層11の総長さの70%以上がタイヤ周方向に連続していれば、上述の同心円状の配置と渦巻状の配置とを組み合わせることが可能である。具体的には、例えば、サイド補強ゴム層11の総長さの70%以上を渦巻状の配置とし、残りの部分を同心円状の配置とすることが出来る。
【0026】
本発明においては、サイド補強ゴム層11のタイヤ径方向内側端11aをビードフィラー6のタイヤ径方向外側端6bよりもタイヤ径方向内側に配置し、サイド補強ゴム層11のタイヤ径方向外側端11bをタイヤ最大幅位置Pよりもタイヤ径方向外側に配置し、タイヤ子午線断面におけるサイド補強ゴム層11の分断部12により分断された各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLを5mm〜20mmとし、このサイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLをその厚さよりも大きくすることが好ましい。このように、サイド補強ゴム層11の配置と寸法を設定することで、周剛性を確保し易くなり、操縦安定性を向上する効果を高めることが出来る。また、タイヤの縦剛性と周剛性のバランスを取り操縦安定性と転がり抵抗とをより高度に両立することが出来る。
【0027】
このとき、サイド補強ゴム層11のタイヤ径方向内側端11aがビードフィラー6のタイヤ径方向外側端6bよりもタイヤ径方向外側に配置されると、サイド補強ゴム層11により補強される部位が狭くなり補強効果が低下する。また、サイド補強ゴム層11のタイヤ径方向外側端11bをタイヤ最大幅位置Pよりもタイヤ径方向内側に配置すると、サイド補強ゴム層11により補強される部位が狭くなり補強効果が低下する。尚、サイド補強ゴム層11のタイヤ径方向外側端11bは、ベルト層7の端部の下まで延長することが出来る。ここで、最大幅位置Pとは、タイヤをJATMA標準リムに装着し、空気圧180kPaを充填した際にタイヤの幅が最大となる位置である。
【0028】
また、サイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLが5mmより小さいと、サイド補強ゴム層11のタイヤ子午線断面における各部分が小さくなり過ぎて、タイヤの周剛性を充分に向上することが出来ず、操縦安定性を充分に向上することが出来ない。逆に、長さLが20mmより大きいとタイヤの縦剛性を充分に低減することが出来ず、転がり抵抗を充分に低減することが出来ない。また、サイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLと各部分の厚さとの大小関係が逆転して、サイド補強ゴム層11の各部分の厚さがカーカス層4に沿う方向の長さLよりも大きくなると、タイヤの縦剛性が高くなり転がり抵抗を充分に低減することが出来ない。
【0029】
本発明では、ビード部3側の分断部12の分断長さdよりもトレッド部1側の分断部12の分断長さdが大きいことが好ましい。具体的には、図2,3に示すように、各分断部の分断長さd1 ,d2 ,d3 が、タイヤ回転軸X側(ビード部3側)から外側(トレッド部1側)に向かって徐々に大きくなる関係、即ち、d1 <d2 <d3 の関係になっている。このようにビード部3側からトレッド部1側に向けて分断長さdに勾配を持たせることで、タイヤの部位による変形量の違いに応じて縦剛性を調整して、転がり抵抗を更に改善することが出来る。
【0030】
また、サイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLについては、ビード部3側よりもトレッド部1側で小さくなるようにすることが好ましい。具体的には、図2,3に示すように、サイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さL1 ,L2 ,L3 ,L4 が、タイヤ回転軸X側(ビード部3側)から外側(トレッド部1側)に向かって徐々に小さくなる関係、即ち、L1 >L2 >L3 >L4 の関係になっている。このようにビード部3側からトレッド部1側に向けてサイド補強ゴム層11の各部分のカーカス層4に沿う方向の長さLに勾配を持たせることで、タイヤの部位による変形量の違いに応じて縦剛性を調整して、転がり抵抗を更に改善することが出来る。
【0031】
尚、本発明においては、サイド補強ゴム層11はゴム中に補強コードは含まないものとする。補強コードを含まないサイド補強ゴム層11を用いた場合、1次グリーンタイヤを2次グリーンタイヤに成形する際に、成形ドラム上の1次グリーンタイヤにサイド補強ゴム層11を貼り付ければ良いので製造が容易である。一方、補強コードを埋設したゴムをサイド補強ゴム層11として用いた場合、補強コードがインフレート等の変形に追従できない為、2次グリーンタイヤにした状態でサイド補強ゴム層11を貼り付けることになり、寸法安定性が低下したり製造が困難になるため、実用上好ましくない。
【実施例】
【0032】
タイヤサイズ175/70R14の空気入りタイヤにおいて、サイド補強ゴム層の有無、サイド補強ゴム層における分断部の数、サイド補強ゴムとサイドゴムとの硬度差、分断長さdの最小値、サイド補強ゴム層の総長さに対する周方向に連続な割合、サイド補強ゴム層の各部分のカーカス層に沿う方向の長さLの最大値及び最小値、サイド補強ゴム層の外端位置、分断長さdの勾配(ビード部側よりもトレッド部側の方が大きい)の有無、サイド補強ゴム層の各部分のカーカス層に沿う方向の長さLの勾配(ビード部側よりもトレッド部側の方が小さい)の有無を表1のように異ならせた従来例1〜2、比較例1〜4、及び実施例1〜13の19種類の試験タイヤを製作した。
【0033】
尚、従来例1はサイド補強ゴム層を有さない例であり、従来例2はサイド補強ゴム層として分断部を有さないシートフィラーを採用した例である。
【0034】
これら19種類の試験タイヤについて、下記の評価方法により操縦安定性及び転がり抵抗を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0035】
操縦安定性
試験タイヤをリムサイズ14×4.5Jのリムに装着し、空気圧を220kPaとして、排気量1.5LのFF乗用車に取り付け、乾燥路面のテストコースを走行し、テストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0036】
転がり抵抗
試験タイヤをリムサイズ14×4.5Jのリムに組付けて、空気圧220kPaを充填し、ドラム径1707.6mmの室内ドラム試験機にて、荷重3.43kNを負荷させて、速度80km/hで走行させたときの抵抗値を測定した。評価結果は、従来例1の値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通常走行時の乗心地性が優れていることを意味する。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1,2から判るように、実施例1〜13はサイド補強ゴム層を有さない従来例1に対して、操縦安定性及び転がり抵抗を改善した。
【0040】
一方、サイド補強ゴム層を有するが分断部を設けない従来例2は、操縦安定性を向上することは出来るものの、転がり抵抗が悪化した。更に、分断部の数が少な過ぎる比較例1やゴムの硬度差が大き過ぎる比較例4は転がり抵抗が悪化し、分断部の数が多過ぎる比較例2やゴムの硬度差が小さ過ぎる比較例3は操縦安定性及び転がり抵抗を改善する効果が得られなかった。
【符号の説明】
【0041】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 サイドゴム層
11 サイド補強ゴム層
12 分断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の両端部をそれぞれビードコアの廻りにビードフィラーを挟むようにタイヤ内側から外側へ巻き上げた空気入りタイヤにおいて、
前記サイドウォール部における前記カーカス層よりもタイヤ幅方向外側のゴム層をタイヤ外表面に露出するサイドゴム層と該サイドゴム層と前記カーカス層との間に介在するサイド補強ゴム層とから構成し、前記サイド補強ゴム層を構成するゴム組成物の硬度を前記サイドゴム層を構成するゴム組成物の硬度よりも相対的に高くし、その硬度差をJIS硬度で15〜30にすると共に、前記サイド補強ゴム層をタイヤ周方向に連続的かつタイヤ子午線断面においてタイヤ径方向に複数の分断部を有するように配置し、タイヤ周上で前記分断部の数が最大となるタイヤ子午線断面で前記分断部を2〜8箇所設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ子午線断面における前記分断部のうち最も狭い分断部の前記カーカス層に沿った分断長さが1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイド補強ゴム層をタイヤ回転軸の廻りに渦巻状に連続的に巻き付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記サイド補強ゴム層のタイヤ周方向の総長さの70%以上がタイヤ周方向に連続していることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記サイド補強ゴム層のタイヤ径方向内側端を前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に配置し、前記サイド補強ゴム層のタイヤ径方向外側端をタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に配置し、且つタイヤ子午線断面における前記サイド補強ゴム層の前記分断部により分断された各部分の前記カーカス層に沿う方向の長さを5mm〜20mmとし、該サイド補強ゴム層の各部分の前記カーカス層に沿う方向の長さをその厚さよりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ビード部側の前記分断部の分断長さよりも前記トレッド部側の前記分断部の分断長さが大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67190(P2013−67190A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205163(P2011−205163)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)