説明

空気入りタイヤ

【課題】タイヤサイド部の冷却効率をより向上すること。
【解決手段】少なくとも一方のタイヤサイド部Sに、長手状に延在する凸部9が、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置された空気入りタイヤ1において、凸部9の表面に凹設され、その開口外縁が凸部9の表面で連続する1つの面9a上に形成された複数の凹部10を備える。凸部9は、タイヤ回転時にタイヤ周りの空気を乱流化させるため、タイヤサイド部Sの冷却効果がある。そして、この凸部9の表面に凹部10を設けたことにより、凸部9の表面積が大きくなり、タイヤサイド部Sの冷却効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤサイド部の冷却効率を向上する空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの放熱を促進させるため、タイヤサイド部に突条を設け、タイヤ回転時に凸部(フィン)によってタイヤ周りの空気を乱流化させることが知られている。
【0003】
そして、従来、例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤ(タイヤ)は、タイヤサイド部に、タイヤ径方向に延設されるとともにタイヤ幅方向に突出することで乱流を発生させる凸部を、タイヤ周方向に所定間隔をおいて複数配設し、空気の乱流を大きくするため、凸部の頂部に対してタイヤ幅方向に起伏しながらタイヤ径方向に沿って延びる凹凸面を複数形成したことを特徴としている。
【0004】
また、従来、例えば特許文献2に記載の空気入りタイヤは、タイヤサイド部に、タイヤ径方向に延設されるとともにタイヤ幅方向に突出することで乱流を発生させる凸部を、タイヤ周方向に所定間隔をおいて複数配設し、凸部や凸部の周りに付着した泥や土を脱落させるため、凸部に対して剛性を変化させる補強部を設けたことを特徴としている。
【0005】
また、従来、例えば特許文献3に記載の空気入りタイヤは、タイヤサイド部に、タイヤ径方向に延設されるとともにタイヤ幅方向に突出することで乱流を発生させる凸部を、タイヤ周方向に所定間隔をおいて複数配設し、凸部を冷却させるため、凸部の延在方向に交差する方向に貫通する貫通孔を形成したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−168001号公報
【特許文献2】特開2009−96447号公報
【特許文献3】特開2010−167998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の空気入りタイヤのように、凸部の頂部に凹凸面を形成した場合、凸部の基本となる外形が大きく変化してしまうため、凸部本来の空気の乱流効果が低減するおそれがあり、結果として冷却効率の向上効果が低減することになる。
【0008】
また、上述した特許文献2に記載の空気入りタイヤは、凸部に対して剛性を変化させる補強部を設けてあるが、この補強部を設けたことによって、特許文献1と同様に凸部の基本となる外形が大きく変化してしまうため、凸部本来の空気の乱流効果が低減するおそれがあり、結果として冷却効率の向上効果が低減することになる。
【0009】
また、上述した特許文献3に記載の空気入りタイヤのように、凸部に貫通孔を設けた場合は、特許文献1や特許文献2のように凸部の基本となる外形は大きく変化しないが、貫通孔を起点として凸部が切れたり削げたりするおそれがあり、凸部の耐久性が低下することになる。
【0010】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤサイド部の冷却効率をより向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも一方のタイヤサイド部に、長手状に延在する凸部が、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置された空気入りタイヤにおいて、前記凸部の表面に凹設され、その開口外縁が前記凸部の表面で連続する1つの面上に形成された複数の凹部を備えることを特徴とする。
【0012】
この空気入りタイヤによれば、凸部は、タイヤ回転時にタイヤ周りの空気を乱流化させるため、空気入りタイヤの冷却効果がある。そして、この凸部の表面に凹部を設けたことにより、凸部の表面積が大きくなり、タイヤサイド部の冷却効率が向上する。このため、空気入りタイヤの耐久性を向上することができる。しかも、凹部は、その開口外縁が凸部の表面で連続する1つの面上に形成されており、凸部の複数の面に跨るように形成されていないため、凹部を設けたとしても凸部の耐久性を維持することができる。さらに、凸部の表面に凹部を設けたことにより、凸部を単独で配置した場合と比較して、凹部によるミクロな部分で空気の乱流を発生させることができ、これにより、空気がタイヤサイド部から剥離することが抑制されてタイヤ周りに発生する空気抵抗が減少するため、空気入りタイヤが装着された車両の低燃費化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記凹部は、その開口面積の総和が、当該凹部が設けられた前記凸部の面の面積の10[%]以上を占めることを特徴とする。
【0014】
この空気入りタイヤによれば、凸部の面に対する凹部の開口面積の総和を10[%]以上としたことで、凹部による冷却効果を顕著に得ることができる。
【0015】
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記凹部は、前記凸部のタイヤ周方向に向く少なくとも1つの面に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この空気入りタイヤによれば、タイヤ回転方向となるタイヤ周方向に向く凸部の面は、空気の当たる割合が大きい部分であり、この部分に凹部を配置することで、凹部がなす効果を顕著に得ることができる。
【0017】
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記凹部は、前記凸部におけるタイヤ回転方向前側の面と、タイヤ回転方向後側の面とで開口面積の総和が占める割合が異なることを特徴とする。
【0018】
この空気入りタイヤによれば、凸部のタイヤ回転方向前側の面の方が、タイヤ回転方向後側の面よりも凹部の開口面積の総和が占める割合が大きい場合は、対向する空気を効率よく冷却できるため、冷却効果を顕著に得る上で好適である。一方、凸部のタイヤ回転方向後側の面の方が、タイヤ回転方向前側の面よりも凹部の開口面積の総和が占める割合が大きい場合は、空気の乱流化によって、通過する空気がタイヤサイド部から剥離することをより抑制できるため、空気抵抗低減効果を顕著に得る上で好適である。
【0019】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状が、タイヤ回転方向前側とタイヤ回転方向後側とで非対称であることを特徴とする。
【0020】
この空気入りタイヤによれば、例えば、凸部のタイヤ回転方向前側の面が切り立って形成され、タイヤ回転方向後側の面がなだらかに形成されている場合、対向する空気を切り立った面によって効率よく冷却するため、冷却効果を顕著に得る上で好ましく、かつなだらかな面によって通過する空気がタイヤサイド部から剥離する事態をより抑制するため、空気抵抗低減効果を顕著に得る上で好ましい。一方、凸部のタイヤ回転方向前側の面がなだらかに形成され、タイヤ回転方向後側の面が切り立って形成されている場合、空気の流れに対向する部分の面積が増えるため、冷却効率の向上が望める。
【0021】
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記凹部は、その容積が前記凸部の延在方向で異なることを特徴とする。
【0022】
タイヤサイド部のタイヤ幅方向寸法が最大となる部分(以下、タイヤ最大幅という)部分は、撓み量(変形量)が大きく熱が発生し易い。このため、タイヤ最大幅の部分での凹部の容積を大きくすることで、冷却することの効果を顕著に得ることができる。また、タイヤ径方向内側は、タイヤ回転時での速度が比較的遅く、空気の流れが遅い部分であって、空気流による放熱効果が小さい。このため、タイヤ径方向内側となる部分での凹部の容積を最も大きくすることで、冷却することの効果を顕著に得ることができる。また、タイヤ径方向外側は、タイヤ回転時での速度が比較的速く、空気の流れが速い部分であって、タイヤサイド部から空気が剥離しやすい。このため、タイヤ径方向外側となる部分での凹部の容積を最も大きくすることで、空気をより乱流化させ、通過する空気がタイヤサイド部から剥離することをより抑制できるため、空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
【0023】
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記凹部は、最大開口幅Wと最大深さDとの関係が、0.05≦D/W≦1の範囲で形成されていることを特徴とする。
【0024】
凹部の最大開口幅Wをある程度大きく設定することで、乱流が発生し易くなり、冷却効果を適宜得ることができ、かつタイヤサイド部から空気の剥離を抑制して空気抵抗の低減効果を適宜得ることができる。一方、凹部の深さDが深すぎると凸部の耐久性が低下する傾向となる。そのため、最大開口幅Wを大きく設定したときに最大深さDを適切に設定できるように、0.05≦D/W≦1とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状が、三角形状に基づき形成されていることを特徴とする。
【0026】
凸部の断面形状が三角形状に基づいて形成されていると、凹部が設けられる面が、タイヤ回転方向前側とタイヤ回転方向後側に向けて斜めに配置される。このため、空気の流れが、タイヤサイド部の面から斜めの面に沿って凸部を越え、再びタイヤサイド部の面に至るため、凸部の面が空気の流れを阻害することなく接触することから、乱流が発生し易く、かつタイヤサイド部から空気の剥離を抑制し易いため、冷却効果および空気抵抗低減効果を適宜得ることができる。
【0027】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状において、前記凹部を有する部分が少なくとも1つの円弧を有して形成されていることを特徴とする。
【0028】
断面形状の凹部を有する部分が少なくとも1つの円弧を有していることによって、直線形状と比較して空気と接触する面積が大きくなることから、乱流が発生し易く、かつタイヤサイド部から空気の剥離を抑制し易いため、冷却効果および空気抵抗低減効果を適宜得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤサイド部の冷却効率をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの一部外観斜視図である。
【図7】図7は、凸部の拡大斜視図である。
【図8】図8は、凸部の拡大斜視図である。
【図9】図9は、凸部の拡大斜視図である。
【図10】図10は、凸部の断面図である。
【図11】図11は、凸部の断面図である。
【図12】図12は、凸部の断面図である。
【図13】図13は、凸部の断面図である。
【図14】図14は、凸部をタイヤ周方向から視た空気入りタイヤの一部子午断面図である。
【図15】図15は、凸部をタイヤ周方向から視た空気入りタイヤの一部子午断面図である。
【図16】図16は、凸部をタイヤ周方向から視た空気入りタイヤの一部子午断面図である。
【図17】図17は、凸部の拡大断面図である。
【図18】図18は、凸部の断面図である。
【図19】図19は、凸部の断面図である。
【図20】図20は、凸部の断面図である。
【図21】図21は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1の子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0033】
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
【0034】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施の形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割されている。また、ラグ溝は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
【0035】
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0036】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
【0037】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0038】
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
【0039】
図2〜図5は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。上述のように構成された空気入りタイヤ1は、図1〜図5に示すように、少なくとも一方のタイヤサイド部Sにおいて、当該タイヤサイド部Sの面よりタイヤの外側に突出する凸部9が設けられている。
【0040】
ここで、タイヤサイド部Sとは、図1において、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外側であってリムチェックラインLからタイヤ径方向外側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインLとは、タイヤのリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部5の表側面において、リムフランジよりもタイヤ径方向外側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
【0041】
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0042】
凸部9は、例えば、図2に示すように、タイヤサイド部Sの範囲において、タイヤ径方向に長手状に形成されたゴム材(タイヤサイド部Sを構成するゴム材であっても、当該ゴム材とは異なるゴム材であってもよい)からなる突条として形成され、かつタイヤ周方向に所定間隔をおいて複数配置されている。凸部9は、タイヤ径方向に沿って直線状に形成されていてもよく(図2参照)、タイヤ径方向に対して傾いて直線状に形成されていてもよく(図3参照)、屈曲して形成されていてもよく(図4参照)、湾曲して形成されていてもよい(図5参照)。また、凸部9は、長手方向に直交する断面形状が、半円形状、半楕円形状、半長円形状、三角形状、四角形状、台形状、または断面外形の少なくとも1部が円弧を有して形成されている。ここで、凸部9の長手方向に直交するとは、その延在方向に直交することを意味し、凸部9が湾曲して形成されている場合は、湾曲部分の接線に直交することを意味する。また、凸部9は、その端部が、タイヤサイド部Sの面から滑らかに突出していてもよく、またはタイヤサイド部Sの面に切り立って突出していてもよい。なお、図1〜図5において凸部9は、タイヤサイド部Sの範囲のタイヤ径方向で1つの突条として形成されているが、長手方向で複数に分割されていてもよい。凸部9が分割されている場合、そのタイヤ周方向に並ぶ別の凸部9が、タイヤ周方向で隣接する凸部9の分割部分に対してタイヤ周方向で重なるように配置されていてもよい。なお、凸部9が設けられていないタイヤサイド部Sの面は、一般的な空気入りタイヤに用いられているセレーションなどの模様が施されていてもよく、複数の窪みが設けられていてもよい。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの一部外観斜視図であり、図7〜図9は、凸部の拡大斜視図である。図6〜図9に示すように、凸部9は、その表面に複数の凹部10が凹設されている。凹部10は、その開口外縁が凸部9の表面で連続する1つの面9a上に形成されている。ここで、凸部9の連続する1つの面9aとは、図7〜図9に示すように、タイヤサイド部Sの面や、凸部9の外形状をなす角9bによって囲まれる各面を言い。図9に示すように、凸部9の表面が円弧で形成されている場合は、その円弧部分を連続する1つの面とする。すなわち、凹部10は、その開口外縁が、凸部9の複数の面9aに跨るように形成されるものではない。なお、図7に示す凸部9は、断面形状が三角形状とされたもので、その各面9aに凹部10が設けられている。また、図8に示す凸部9は、断面形状が四角形状とされたもので、その各面9aに凹部10が設けられている。また、図9に示す凸部9は、断面形状が半円形状とされたもので、その各面9aに凹部10が設けられている。
【0044】
また、凹部10は、凸部9の表面に開口する開口形状が、円形状、楕円形状、長円形状、多角形状などに形成されている。また、凹部10は、断面形状が、半円形状、半楕円形状、半長円形状、すり鉢形状、または矩形状などに形成されている。また、凸部9の1つの面において設けられる複数の凹部10は、それぞれの開口面積が一様であっても、一様でなくてもよい。また、複数の凹部10は、凸部9の表面に対して千鳥状に配置されていてもよく、四角形または三角形を基準とするように配置されていてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、少なくとも一方のタイヤサイド部Sに、長手状に延在する凸部9が、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置された空気入りタイヤ1において、凸部9の表面に凹設され、その開口外縁が凸部9の表面で連続する1つの面上に形成された複数の凹部10を備える。
【0046】
凸部9は、タイヤ回転時にタイヤ周りの空気を乱流化させるため、空気入りタイヤ1の冷却効果がある。そして、この凸部9の表面に凹部10を設けたことにより、凸部9の表面積が大きくなり、タイヤサイド部Sの冷却効率が向上する。このため、空気入りタイヤ1の耐久性を向上することが可能になる。しかも、凹部10は、その開口外縁が凸部9の表面で連続する1つの面9a上に形成されており、凸部9の複数の面9aに跨るように形成されていないため、凹部10を設けたとしても凸部9の耐久性を維持することが可能になる。さらに、凸部9の表面に凹部10を設けたことにより、凸部9を単独で配置した場合と比較して、凹部10によるミクロな部分で空気の乱流を発生させることができ、これにより、空気がタイヤサイド部Sから剥離することが抑制されてタイヤ周りに発生する空気抵抗が減少するため、空気入りタイヤ1が装着された車両の低燃費化を図ることが可能になる。この結果、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、凸部9の耐久性を低下させることなくタイヤサイド部Sの冷却効率をより向上することが可能になる。
【0047】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、凹部10は、その開口面積の総和が、当該凹部10が設けられた凸部9の面9aの面積の10[%]以上を占める。
【0048】
なお、凹部10の開口面積、および当該凹部10が設けられた凸部9の面9aの面積は、当該面9aおよび凹部10の開口部を所定の平面に投影して得てもよく、または当該面9aおよび凹部10の開口部を平面に展開して得てもよい。
【0049】
凸部9の面9aに対する凹部10の開口面積の総和が10[%]以上であれば、凹部10による冷却効果を顕著に得ることが可能である。凹部10の開口面積が多いほど凸部9の表面積が大きくなることから冷却効果が顕著であるが、凹部10同士の開口外縁が重なることを抑えるため、凸部9の面9aに対する凹部10の開口面積の総和は、80[%]以下が好ましい。そして、冷却効率をより顕著に得るうえで、凸部9の面9aに対する凹部10の開口面積の総和は、30[%]以上80[%]以下であることがより好ましい。
【0050】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、凹部10は、凸部9のタイヤ周方向に向く少なくとも1つの面9aに設けられている。
【0051】
タイヤ回転方向となるタイヤ周方向に向く凸部9の面9aは、空気の流れを受けるタイヤ回転方向前側と、空気の流れを通すタイヤ回転方向後側とがある。すなわち、タイヤ周方向に向く凸部9の面9aは、空気の当たる割合が大きい部分であり、この部分に凹部10を配置することで、凹部10がなす効果を顕著に得ることが可能である。特に、空気の流れを受けるタイヤ回転方向前側の面9aに凹部10を設けることが、対向する空気を効率よく冷却できるため、冷却効果を顕著に得る上で好ましい。また、空気の流れを通すタイヤ回転方向後側の面9aに凹部10を設けた場合は、空気の乱流化によって、通過する空気がタイヤサイド部Sから剥離することをより抑制できるため、空気抵抗低減効果を顕著に得る上で好ましい。また、凸部9のタイヤ周方向に向く面9aは、長手状に延在する方向に沿う面であることが、空気の当たる割合が大きく、この面に凹部10を設けることが好ましい。なお、凸部9の面9aが湾曲して連続している場合、タイヤ周方向から子午断面の平面に投影し得る面をタイヤ周方向に向く面とする。
【0052】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、凹部10は、凸部9におけるタイヤ回転方向前側の面9aと、タイヤ回転方向後側の面9aとで開口面積の総和が占める割合が異なる。
【0053】
図10および図11は、凸部の断面図である。図10および図11に示す凸部9は、一例として断面形状が二等辺三角形であり、タイヤ回転方向前側の面9aと、タイヤ回転方向後側の面9aとが同じ面積とされている。そして、図10に示す凹部10は、タイヤ回転方向前側の面9aの方が、タイヤ回転方向後側の面9aよりも開口面積の総和が占める割合が大きい。なお、図10において、各凹部10の深さを一定としている。このように構成した場合は、対向する空気を効率よく冷却できるため、冷却効果を顕著に得る上で好ましい。すなわち、冷却効果を顕著に得るためには、凸部9におけるタイヤ回転方向前側の面9aと、タイヤ回転方向後側の面9aとで、凹部10の開口面積の総和が占める割合は、タイヤ回転方向前側の面9a側が大きいことが好ましい。
【0054】
また、図11に示す凹部10は、タイヤ回転方向後側の面9aの方が、タイヤ回転方向前側の面9aよりも開口面積の総和が占める割合が大きい。なお、図11において、各凹部10の深さを一定としている。このように構成した場合は、空気の乱流化によって、通過する空気がタイヤサイド部Sから剥離することをより抑制できるため、空気抵抗低減効果を顕著に得る上で好ましい。
【0055】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の延在方向に対して直交する断面形状が、タイヤ回転方向前側とタイヤ回転方向後側とで非対称である。
【0056】
図12および図13は、凸部の断面図である。図12に示す凸部9は、一例として断面形状が三角形であり、タイヤ回転方向前側の面9aが切り立って形成され、タイヤ回転方向後側の面9aがなだらかに形成されている。なお、図12において、各面9aにおける凹部10の開口面積の総和が占める割合を一定としており、各凹部10の深さも一定としている。このように構成した場合は、対向する空気を切り立った面9aによって効率よく冷却するため、冷却効果を顕著に得る上で好ましく、かつなだらかな面9aによって通過する空気がタイヤサイド部Sから剥離する事態をより抑制するため、空気抵抗低減効果を顕著に得る上で好ましい。すなわち、冷却効果および空気抵抗低減効果を顕著に得るためには、凸部9の延在方向に対して直交する断面形状が、タイヤ回転方向前側の面が切り立って形成され、タイヤ回転方向後側の面9aがなだらかに形成されていることが好ましい。
【0057】
また、図13に示す凸部9は、一例として断面形状が三角形であり、タイヤ回転方向前側の面9aがなだらかに形成され、タイヤ回転方向後側の面9aが切り立って形成されている。なお、図13において、各面9aにおける凹部10の開口面積の総和が占める割合を一定としており、各凹部10の深さも一定としている。このように構成した場合は、空気の流れに対向する部分の面積が増えるため、冷却効率の向上が望める。
【0058】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、凹部10は、その容積が凸部9の延在方向で異なる。
【0059】
図14〜図16は、凸部をタイヤ周方向から視た空気入りタイヤの一部子午断面図である。なお、凹部10の容積は、凹部10の開口幅(開口面積)や、凹部10の深さを変更することで変えることができ、図14〜図16では、容積の違いを明確とするため、凹部10の開口幅を変えて示している。図14に示す凹部10は、タイヤサイド部Sのタイヤ幅方向寸法が最大となる部分(以下、タイヤ最大幅という)での容積を最も大きくしてある。タイヤ最大幅の部分は、撓み量(変形量)が大きく熱が発生し易い。このため、タイヤ最大幅の部分での凹部10の容積を大きくすることで、冷却することの効果を顕著に得ることが可能になる。図15に示す凹部10は、タイヤ径方向内側となる部分での容積を最も大きくしてある。タイヤ径方向内側は、タイヤ回転時での速度が比較的遅く、空気の流れが遅い部分であって、空気流による放熱効果が小さい。このため、タイヤ径方向内側となる部分での凹部10の容積を最も大きくすることで、冷却することの効果を顕著に得ることが可能になる。図16に示す凹部10は、タイヤ径方向外側となる部分での容積を最も大きくしてある。タイヤ径方向外側は、タイヤ回転時での速度が比較的速く、空気の流れが速い部分であって、タイヤサイド部Sから空気が剥離しやすい。このため、タイヤ径方向外側となる部分での凹部10の容積を最も大きくすることで、空気をより乱流化させ、通過する空気がタイヤサイド部Sから剥離することをより抑制できるため、空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることが可能になる。なお、図14〜図16では、タイヤ周方向に向く凸部9の面9aに凹部10を設けた場合を示しているが、タイヤ幅方向に向く凸部9の面9aに凹部10を設けた場合も同様に凹部10の容積を異ならせることで同様の効果を得ることが可能である。
【0060】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図17の凹部の断面図に示すように、凹部10は、最大開口幅Wと最大深さDとの関係が、0.05≦D/W≦1の範囲で形成されている。
【0061】
凹部10の最大開口幅Wをある程度大きく設定することで、乱流が発生し易くなり、冷却効果を適宜得ることができ、かつタイヤサイド部Sから空気の剥離を抑制して空気抵抗の低減効果を適宜得ることが可能になる。一方、凹部10の深さDが深すぎると凸部9の耐久性が低下する傾向となる。そのため、最大開口幅Wを大きく設定したときに最大深さDを適切に設定できるように、0.05≦D/W≦1とした。なお、空気を乱流化させ、かつ凸部9の耐久性を維持するうえで、凹部10の最大開口幅Wと最大深さDとの関係を、0.1≦D/W≦0.5の範囲とすることがより好ましい。
【0062】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の延在方向に対して直交する断面形状が、三角形状に基づき形成されている。
【0063】
すなわち、図10〜図13に示すように、凸部9は、断面形状が三角形状に形成されている。凸部9が三角形状であると、凹部10が設けられる面9aが、タイヤ回転方向前側とタイヤ回転方向後側に向けて斜めに配置される。このため、空気の流れが、タイヤサイド部Sの面から斜めの面9aに沿って凸部9を越え、再びタイヤサイド部Sの面に至るため、凸部9の面9aが空気の流れを阻害することなく接触することから、乱流が発生し易く、かつタイヤサイド部Sから空気の剥離を抑制し易いため、冷却効果および空気抵抗低減効果を適宜得ることが可能になる。また、凸部の断面図である図18〜図20に示すように、三角形状に基づいて、面9aが円弧状に形成されていても、同様の効果を得ることが可能である。
【0064】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図18〜図20に示すように、凸部9の延在方向に対して直交する断面形において、凹部10を有する部分が少なくとも1つの円弧を有して形成されている。
【0065】
このように、断面形状の凹部10を有する部分が少なくとも1つの円弧を有していることによって、直線形状と比較して空気と接触する面積が大きくなることから、乱流が発生し易く、かつタイヤサイド部Sから空気の剥離を抑制し易いため、冷却効果および空気抵抗低減効果を適宜得ることが可能になる。なお、図には明示しないが、凸部9は、断面形状が、基より円弧を有する半円形状や半楕円形状や半長円形状であってもよく、また、四角形状や台形状に基づく断面形状で少なくとも1つの円弧を有していてもよく、同様の効果を得ることが可能である。
【0066】
なお、上述した空気入りタイヤ1は、乗用車用のみならず、重荷重用やランフラット用の空気入りタイヤに適用される。乗用車用の場合は、上述のごとく効果が得られる。また、重荷重用の場合は、特に、大荷重において、凸部9によってタイヤサイド部Sの圧縮時でのタイヤの変形をより抑えるとともに、当該凸部9の面9aに設けた凹部10による冷却効果によってタイヤサイド部Sの圧縮時での温度上昇を抑える。また、ランフラット用の場合も、特に、パンク時において、凸部9によってタイヤサイド部Sの圧縮時でのタイヤの変形をより抑えるとともに、当該凸部9の面9aに設けた凹部10による冷却効果によってタイヤサイド部Sの圧縮時での温度上昇を抑える。
【実施例】
【0067】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、タイヤサイド部の昇温量に関する性能試験が行われた(図21参照)。
【0068】
この性能試験では、タイヤサイズ185/65R15の空気入りタイヤを、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填して、排気量1500[cc]+モータアシスト駆動の小型前輪駆動車に装着した。
【0069】
タイヤサイド部の昇温量の評価方法は、上記試験車両にて、全周2[km]のテストコースで時速100[km/h]にて50周走行した直後に、タイヤサイド部の温度を非接触放射温度計(赤外線放射温度計)にて計測した。そして、この計測結果に基づいて、従来例の空気入りタイヤの走行前後での昇温量を基準(100)として指数評価する。この指数評価は、数値が小さいほど昇温量が小さく冷却効果が向上していることを示す。
【0070】
図21において、従来例、比較例、および実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、タイヤサイド部に、長手状に延在する凸部が、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている(図2参照)。そして、従来例の空気入りタイヤは、凸部が直方体形状であって、その頂部に凹凸が設けられている。この凹凸は、凸部分の最大高さをH1とし、凹部分の最大高さをH2とした場合に、(H1−H2)/H1=0.4とされている。
【0071】
比較例の空気入りタイヤは、凸部の断面が対称三角形状であって、その面に凹部を有していない。
【0072】
一方、図21において、実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、凸部の面に凹部を有している。この凹部は、開口形状が円形状であって、断面形状が円弧状とされ、最大深さが1[mm]、最大開口幅が3[mm]とされており、千鳥状に配置されている。そして、実施例1の空気入りタイヤは、断面が対称三角形状とされた凸部のタイヤ回転方向前側の面にのみ凹部が配置され、当該面の面積の10[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定されている。また、実施例2の空気入りタイヤは、断面が対称三角形状とされた凸部のタイヤ回転方向前側およびタイヤ回転方向後側の面にそれぞれ凹部が配置され、当該各面の面積の60[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定されている。また、実施例3の空気入りタイヤは、断面が対称三角形状とされた凸部のタイヤ回転方向前側およびタイヤ回転方向後側の面にそれぞれ凹部が配置され、タイヤ回転方向前側の面の面積の60[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定され、タイヤ回転方向後側の面の面積の40[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定されている。また、実施例4の空気入りタイヤは、断面が非対称三角形状でタイヤ回転方向前側が切り立ちタイヤ回転方向後側がなだらかとされた凸部のタイヤ回転方向前側およびタイヤ回転方向後側の面にそれぞれ凹部が配置され、当該各面の面積の60[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定されている。また、実施例5の空気入りタイヤは、断面が非対称三角形状でタイヤ回転方向前側が切り立ちタイヤ回転方向後側がなだらかとされた凸部のタイヤ回転方向前側およびタイヤ回転方向後側の面にそれぞれ凹部が配置され、タイヤ回転方向前側の面の面積の60[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定され、タイヤ回転方向後側の面の面積の40[%]を占めるように凹部の開口面積の総和が設定されている。
【0073】
そして、図21の試験結果に示すように、実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、タイヤサイド部の昇温量が低下し、冷却効果が向上されていることが分かる。
【符号の説明】
【0074】
1 空気入りタイヤ
9 凸部
9a 面
9b 角
10 凹部
S タイヤサイド部
W 凹部の最大開口幅
D 凹部の最大深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方のタイヤサイド部に、長手状に延在する凸部が、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置された空気入りタイヤにおいて、
前記凸部の表面に凹設され、その開口外縁が前記凸部の表面で連続する1つの面上に形成された複数の凹部を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記凹部は、その開口面積の総和が、当該凹部が設けられた前記凸部の面の面積の10[%]以上を占めることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部は、前記凸部のタイヤ周方向に向く少なくとも1つの面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凹部は、前記凸部におけるタイヤ回転方向前側の面と、タイヤ回転方向後側の面とで開口面積の総和が占める割合が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状が、タイヤ回転方向前側とタイヤ回転方向後側とで非対称であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凹部は、その容積が前記凸部の延在方向で異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記凹部は、最大開口幅Wと最大深さDとの関係が、0.05≦D/W≦1の範囲で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状が、三角形状に基づき形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記凸部の延在方向に対して直交する断面形状において、前記凹部を有する部分が少なくとも1つの円弧を有して形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−71669(P2013−71669A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213232(P2011−213232)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)