説明

空気圧式造形体

【課題】短い製作時間、低い製作コストで、視認性・表現性に優れ、また平面画像を忠実に再現できる立体的な空気圧式造形体を提供することにある。
【解決手段】膜構造体は、画像が表面に印刷された前面シート9と反転画像が印刷された背面シート10が、各々の裏面同士が向かい合うように設置され、前面シート周縁部13と背面シート周縁部14が後述する側面シート11を介して繋がるように縫合され、袋状に形成されている。また、前面シート9と背面シート10との間には、ブリッジ12が架設され、膨張を拘束し、前面シート9および背面シート10の表面に凹凸を生じさせる。これにより、膨張時の膜構造体はレリーフのように立体化され、印刷された画像の印象を壊すことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を印刷したシートを縫いあわせて袋状に形成され、空気を供給することで膨張状態となる空気圧式造形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを用いた装飾には、平面的な装飾体や立体的な空気圧式造形体が用いられている。平面的な装飾体には、シートに画像印刷を施した垂れ幕のようなものがあり、短い製作時間、低い製作コストで作成することが可能である。しかし、視認性が不十分であり、表現性も低いという問題点がある。
【0003】
一方、立体的な空気圧式造形体は、空気不透過または空気難透過性シートにて作成された膜構造体に、送風機を用い空気を送り込んで膨張させ立体形状を維持させるものであり、視認性に優れ、表現性の高い装飾用ディスプレイとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、3次元の空気圧式造形体は、膨張時に立体的に膨張する膜構造体を製作する際、設計、シートの裁断、縫製加工にかかる製作時間は長く、製作コストは高くなる。また、巨大な膜構造体を、製作するには、さらに、製作時間、製作コストがかかる。
【0005】
また、平面画像を元に3次元化し立体的な空気圧式造形体を製作すると、元の平面画像とは印象の異なる造形体となってしまうことが多い。
【特許文献1】実用新案登録第3088289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、短い製作時間、低い製作コストで、視認性・表現性に優れ、また画像の印象を崩さず、画像に合わせてレリーフ状に膨張する立体的な空気圧式造形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の空気圧式造形体は、表面に写真やイラストなどの画像を印刷され、印刷された画像の外周に沿って裁断された前面シートと、裏面が前面シートの裏面と向かい合わせになり、膨張時に前面シートと所定の距離を保つように設けられた背面シートと、前面シートの周縁部と背面シートの周縁部を繋ぐ側面シートと、画像中の輪郭に沿うとともに、前面シートと背面シートとの間に架設され、膨張を拘束し、前面シートおよび背面シートの表面に凹凸を生じさせるブリッジとを有し、袋状に形成された膜構造体を備える。
【0008】
これにより、様々な写真、イラストの、立体的な造形体を製作することが可能である。さらに、画像をシートに拡大印刷すれば、簡単に巨大な立体造形体を作成することができる。
また、この造形体は、縫合箇所が少なく、短い製作時間、低コストでの製作が可能である。さらに、3次元の空気圧式造形体に比べ、持ち運びがしやすく、設置も容易である。
【0009】
前面シートの周縁部と背面シートの周縁部とを直接縫い合わせる場合、縫合部分に皺が生じ、美観性に劣り、また、膨らみすぎてしまうことにより、平面画像の印象を壊してしまうという不具合があった。本発明では、前面シートの周縁部と背面シートの周縁部とを襠(側面シート)を介して縫い合わせることにより、平面画像の印象を壊さず立体的に視認させることができ、美観性に優れる。
さらに、膜構造体膨張時、ブリッジが架設された箇所が凹部となることで、画像に合わせた凹凸がレリーフ状に形成されるため、より平面画像の印象を壊さず、立体的な造形体となっている。
【0010】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の空気圧式造形体は、背面シートの表面に、画像の反転画像が印刷されたことを特徴とする。
これにより、前面シートだけでなく、背面シートにも凹凸が画像に合わせてレリーフ状に形成されるため、前方からだけでなく、後方から見られた際にも美観に優れる。
【0011】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の空気圧式造形体では、側面シートの幅が前面シートの周縁部および背面シートの周縁部に沿う方向で異なる。
これにより、多様な3次元形状の表現をすることができる。
【0012】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の空気圧式造形体では、膜構造体を自立させる自立手段を備え、
自立手段は、膜構造体に設けられた支柱支持部と、支柱支持部に保持されるとともに膜構造体に差し込まれた支柱とを有する。
これにより、造形体は自立可能となる。
【0013】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の空気圧式造形体では、膜構造体に空気を供給する空気供給手段を備え、空気供給手段は、膜構造体に継続的に送風して膜構造体を膨張状態に保つ送風機である。
送風機で膜構造体に空気を継続的に送ることで、膜構造体が所定の立体形状に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最良の形態1の空気圧式造形体は、表面に写真やイラストなどの画像を印刷され、印刷された画像の外周に沿って裁断された前面シートと、裏面が前面シートの裏面と向かい合わせになり、膨張時に前面シートと所定の距離を保つように設けられた背面シートと、前面シートの周縁部と背面シートの周縁部を繋ぐ側面シートと、画像中の輪郭に沿うとともに、前面シートと背面シートとの間に架設され、膨張を拘束し、前面シートおよび背面シートの表面に凹凸を生じさせるブリッジとを有し、袋状に形成された膜構造体を備える。そして、背面シートの表面に、画像の反転画像が印刷される。
【0015】
また、膜構造体を自立させる自立手段を備え、自立手段は、膜構造体に設けられた支柱支持部と、支柱支持部に保持されるとともに膜構造体に差し込まれた支柱とを有する。
さらに、膜構造体に空気を供給する空気供給手段を備え、空気供給手段は、膜構造体に継続的に送風して膜構造体を膨張状態に保つ送風機である。
【0016】
最良の形態2の空気圧式造形体は、側面シートの幅が前面シートの周縁部および背面シートの周縁部に沿う方向で異なる。
【実施例1】
【0017】
〔実施例1の構成〕
実施例1は、女性の全身像の形状を有する空気圧式造形体1である。その構成を、図1ないし図3を用いて説明する。図1ないし図3において、上側を頭部側、下側を土台側とする。
図1は、空気圧式造形体1の概略構成図である。
空気圧式造形体1は、空気を供給すると膨張状態となる膜構造体2と、膜構造体2を自立させる自立手段3と、膜構造体2に空気を供給する空気供給手段4とを備える。
【0018】
膜構造体2は、女性の全身像の画像が印刷された前面シート9と、前面シート9に印刷された画像の反転画像が印刷された背面シート10と、前面シート9と背面シート10を袋状に繋ぐ側面シート11と、前面シート9と背面シート10の間に架設されたブリッジ12とを有する。ここで用いた女性の全身像の画像では、女性はガウン9a、10aを羽織り、片方の腕9b,10bを差し出し、ブーツ9c、10cを履いている。
尚、画像の印刷は、スクリーン印刷のように、べた塗りの印刷方法ではなく、インクジェットプリントのように、点で印刷し、点の集合により色や濃淡を表現するタイプの印刷方法により行っている。
【0019】
前面シート9は、画像が表面に印刷された空気不透過または空気難透過性シートが、画像の外周に沿って裁断されることで形成されている。
背面シート10は、画像の反転画像が印刷された空気不透過または空気難透過性シートが、画像の外周に沿って裁断されることで形成されている。
【0020】
前面シート9と背面シート10は、各々の裏面同士が向かい合うように設置され、前面シート周縁部13と背面シート周縁部14が後述する側面シート11を介して繋がるように縫合され、袋状に形成されている。
【0021】
側面シート11は、空気不透過または空気難透過性シートにて、帯状に形成されている。また、側面シート11の頭部側の内側には、後述する支柱支持部16が取り付けられており、側面シート11の土台側部の所定の位置には支柱17を差し込むための穴11dが設けられている。
尚、側面シート11は、前面シート9および背面シート10と縫合され接触している各位置において、前面シート9および背面シート10の色と同一もしくは類似した色としている。例えば、側面シート11のうち、前面シート9および背面シート10で女性のガウン9a、10aの部分に当たる箇所の側面シートガウン部11aはガウン9a、10aと同じ色となっており、ブーツ9c、10cの部分に当たる箇所の側面シートブーツ部11bはブーツ9c、10cと同じ色となっている。これにより、膨張した膜構造体は斜めから見られた際に、違和感なく、且つより立体的な印象を与える。
【0022】
ブリッジ12は、通気性のシートにて形成されており、前面シート9及び背面シート10の面方向に対し略垂直に、前面シート9と背面シート10との間に架設されている。ブリッジ12は、印刷された画像において、凹凸が必要であるとされる部分の輪郭(例えば、女性の腕9bとガウン9aの境界など)に沿って架設される(図2および図3参照)。ブリッジ12にも支柱17を差し込むための穴12aが設けられている。
尚、本実施例では、ブリッジ12を縫合する際に用いる糸に、印刷された画像に合わせた色を着色をし、輪郭が不自然に見えることのないようにしている。
【0023】
自立手段3は、膜構造体2に設けられた支柱支持部16と、この支柱支持部16に保持されるとともに膜構造体2に差し込まれた支柱17とを有する。
支柱支持部16は、例えば、空気不透過または空気難透過性シートで形成された筒体である。支柱支持部16の上端部は、膜構造体2の頭部側の側面シート11に縫合されている(図1(b)参照)。支柱支持部16の下端部は、膜構造体2から土台側へ突き出ており、支柱支持部16の穴11aを通過する部分は、側面シート11の穴11aの内周に縫合されている(図1(c)参照)。
支柱17は、膜構造体2の土台側から、支柱支持部16に差し込まれる。支柱支持部16の下端部は、図1に示すように、支柱17とともに紐やバンド等により巻きつけられ締結されている。支柱支持部16、膜構造体2が膨張すると、空気圧により、支柱支持部16は、支柱側へ圧接し、支柱17を保持する。
支柱17には土台18が接続されている。
尚、本実施例では、支柱支持部16の上端部は、膜構造体2の頭部側の側面シート11に縫合されているが、支柱支持部16の上端部も、支柱支持部16の下端部と同じように、膜構造体2の側面シート11から突き出ており、支柱17とともに紐やバンド等により巻きつけられ締結されることにより、膜構造体2全体を支柱18が貫通するようにしてもよい。
【0024】
空気供給手段4は、膜構造体2に継続的に送風して膜構造体2を膨張状態に保つ送風機20である。送風機20は、膜構造体2の内部に加圧空気を供給して、膜構造体2を膨張させるのに必要な送風能力を有する周知のものである。送風機20は、膜構造体2の内部に、常時空気を供給する。
なお、送風機20の配置場所は、膜構造体2の外部、土台18の内部など、限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1の作用〕
実施例1の作用を図3を用いて説明する。送風機20を作動させ、膜構造体2の内部に空気を供給すると、空気圧によって膜構造体2は膨張し、前面シート9と背面シート10は互いに遠ざかる方向へ移動するが、ブリッジ12の設置箇所ではブリッジ12の長さL分しか遠ざかることができず、ブリッジ12設置箇所は、凹部になる。ブリッジ12のない部分はそのまま膨張し凸部となり、前面シート9および背面シート10の表面にはレリーフのような凹凸が形成される。図3では、例えば、女性の腕9bとガウン9aの境界に垂直にブリッジ12が設けられており、この境界が凹部となることで、腕9bが突出する。
【0026】
〔実施例1の効果〕
画像を前面シート9および背面シート10に印刷し、立体的な膜構造体2を製作することができるため、様々な写真、イラストの、立体的な膜構造体2を製作することが可能である。
また、画像をシートに拡大印刷すれば、簡単に巨大な膜構造体2を作成することができる。この膜構造体2は、縫合箇所が少なく、短い製作時間、低コストで製作が可能である。さらに、3次元の空気圧式造形体に比べ、持ち運びがしやすく、設置も容易である。
【0027】
前面シート周縁部13と背面シート周縁部14とを側面シート11を介して縫い合わせることにより、皺の発生や膨らみすぎなどの不具合が生じることなく、平面画像の印象を壊さず立体的に視認させることができ、美観性に優れる。
さらに、膜構造体2の膨張時、ブリッジ12が架設された箇所が凹部となることで、画像に合わせた凹凸がレリーフ状に形成されるため、より平面画像の印象を壊さず、立体的な造形体となっている。
このため、立体造形された膜構造体2は、視認性に優れ、表現性も高く、美観に優れている。
【0028】
また、自立手段3を備えることにより、膜構造体2は自立することが可能となっている。
送風機20で膜構造体2内に空気を常時送ることにより、膜構造体2の内圧上昇に伴う、縫い目からの空気の漏出と空気の供給が釣り合い、膜構造体2が所定の立体形状に維持される。
【実施例2】
【0029】
実施例2は、魚の形状をした空気圧式造形体1であり、その構成を、図4を用いて説明する。図4上側を頭部側、下側を土台側とする。
実施例2の空気圧式造形体1では、側面シート11の幅が場所により異なり、すなわち前面シート周縁部13と背面シート周縁部14の距離が場所により異なる。図4では、例えば、膜構造体2の土台側の側面シート11の幅w1は、頭部側の側面シート11の幅w2より小さく、膜構造体2は、土台側より、頭部側の方がより膨らんだ形状となっている。
【0030】
これにより、より多様な3次元形状を表現することができ、美観に優れる。
【0031】
〔変形例〕
実施例1及び実施例2では、背面シート10に、前面シート9に印刷された画像の反転画像が印刷されているが、印刷されていなくてもよい。
また、膜構造体2は、自立手段3を備えず、壁面に吊り下げられ設置されていても、天井から吊り下げられ設置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は空気圧式造形体の概略構成図であり、(b)は、支柱支持部と頭部側の側面シートとの縫合部分の拡大図であり、(c)は、支柱支持部と土台側の側面シートとの縫合部分の拡大部分断面図である(実施例1)。
【図2】空気圧式造形体の斜視展開図である(実施例1)。
【図3】膨張時の膜構造体の斜視断面図である(実施例1)。
【図4】空気圧式造形体の正面図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0033】
1 空気圧式造形体
2 膜構造体
3 自立手段
4 空気供給手段
9 前面シート
10 背面シート
11 側面シート
12 ブリッジ
13 前面シート周縁部
14 背面シート周縁部
16 支柱支持部
17 支柱
20 送風機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を供給することで膨張状態となる空気圧式造形体において、
表面に写真やイラストなどの画像が印刷され、印刷された前記画像の外周に沿って裁断された前面シートと、
裏面が前面シートの裏面と向かい合わせになり、膨張時に前面シートと所定の距離を保つように設けられた背面シートと、
前記前面シートの周縁部と前記背面シートの周縁部を繋ぐ側面シートと、
画像中の輪郭に沿うとともに、前記前面シートと前記背面シートとの間に架設され、膨張を拘束し、前記前面シートおよび前記背面シートの表面に同一の凹凸を生じさせるブリッジとを有し、
袋状に形成された膜構造体を備える空気圧式造形体。
【請求項2】
請求項1に記載の空気圧式造形体において、
前記背面シートの表面に、前記画像の反転画像が印刷されたことを特徴とする空気圧式造形体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の空気圧式造形体において、前記側面シートの幅が前記前面シートの周縁部および前記背面シートの周縁部に沿う方向で異なることを特徴とする空気圧式造形体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空気圧式造形体において、前記膜構造体を自立させる自立手段を備え、
前記自立手段は、前記膜構造体に設けられた支柱支持部と、該支柱支持部に保持されるとともに前記膜構造体に差し込まれた支柱とを有することを特徴とする空気圧式造形体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気圧式造形体において、前記膜構造体に空気を供給する空気供給手段を備え、
前記空気供給手段は、前記膜構造体に継続的に送風して前記膜構造体を膨張状態に保つ送風機であることを特徴とする空気圧式造形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−65236(P2007−65236A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250667(P2005−250667)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成17年3月1日から3月4日 株式会社日本経済新聞社主催の「JAPAN SHOP 2005」に出品
【出願人】(593152915)株式会社クエストアンドトライ (1)
【Fターム(参考)】