説明

空気浄化エレメント、及びこの空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置

【課題】電解水と空気が接触する気液接触部材を備えた空気浄化エレメント、及びこの空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置において、オゾン等の活性酸素に対する耐性が高く、低コスト化に適し、オゾン水等の電解水の保持性に優れた気液接触部材を備えた空気浄化エレメントを提供するものである。
【解決手段】活性酸素に対する耐性が高い繊維の組み合わせによって前記繊維相互間に空気の通過する隙間を形成した気液接触部材が、前記活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体で担持され、前記活性酸素種を含む電解水が前記繊維の表面に付着した状態で、空気が前記電解水と接触しつつ前記隙間を通過する間に前記空気の除菌や脱臭を行うための空気浄化エレメントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水と空気が接触することにより細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物や、臭い成分の除去が可能な気液接触部材を備えた空気浄化エレメント、及びこの空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解槽46と、前記電解槽46によって生成された電解水を貯留する水受け皿42を備え、前記水受け皿42に貯留した電解水を循環ポンプ44で汲み上げて空気浄化エレメントである気液接触部材53の上部に配置した電解水供給器51に供給し、前記電解水供給器51によって前記気液接触部材53上に均一に電解水を分散させ、前記気液接触部材53から流下する電解水を前記水受け皿42で受け、再び前記循環ポンプ44で汲み上げて前記気液接触部材53に供給するよう、電解水の循環を行なう。この循環によって、前記電解水を前記気液接触部材53に浸潤させ、送風ファン31により前記気液接触部材53に空気を送り前記気液接触部材53に接触させ、当該空気を除菌する空気清浄装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
前記気液接触部材53は、ハニカム構造を持ったフィルタ部材であり、電解水と空気が接触することにより空気中のウィルス等の除菌を行なうフィルタ部材であり、気体に接触するエレメント部をフレームにより支持する構造を有する。図示されていないが、エレメント部は、波板状の波板部材と平板状の平板部材とが積層されて構成され、これら波板部材と平板部材との間に略三角状の多数の開口が形成されている。それによって、エレメント部に空気を通過させる際の気体接触面積が広く確保され、電解水の滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。このエレメント部には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)又はセラミックス系材料等の素材が使用されている。また、エレメント部には親水性処理が施され、電解水に対する親和性が高められており、これによって、気液接触部材53の電解水の保水性(湿潤性)が保たれ、後述する活性酸素種(活性酸素物質)と室内空気との接触が長時間持続される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−183185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の気液接触部材53は、ハニカム構造を持ったフィルタ部材で構成したものであり、このような構造に形成する場合はコストが高く、これを採用した空気清浄装置のコストもアップする。また、空気清浄装置の使用によって気液接触部材53の空気通路が汚れて除菌効果が低下した場合等にて交換する場合の費用も高くなる。
【0006】
また、この気液接触部材53を流れる電解水として、次亜塩素酸水を用いる場合と、オゾン水を用いる場合が考えられるが、次亜塩素酸によって空気を除菌する場合に比して、オゾンによって空気を除菌する場合の方が、酸化作用が大であるため空気の除菌効果が大である。エレメント部は、電解水として次亜塩素酸水を用いる場合は、上記の素材で形成されても耐次亜塩素酸上問題なく、製品化の場合は、除菌効果に優れ、製造のし易さを考慮して、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂でもってハニカム構造に形成したものが用いられている。
【0007】
空気の除菌効果からすれば、前述の通り、次亜塩素酸水よりもオゾン水を用いる方が除菌効果が大であるが、オゾン水の場合は酸化作用が大であるため、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂でもってハニカム構造に形成した気液接触部材を使用した場合は、この気液接触部材でのオゾンの消滅速度が速く(気液接触部材でオゾンが多く消費される)、この気液接触部材に接触する空気の除菌効果がその分低下することが憂慮される。また、オゾンの強い酸化作用によって気液接触部材の劣化が速く、好ましくない。
【0008】
そこで、耐オゾン性を考慮して、上記の素材のうちのポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)、及びセラミックス系材料を用いる発想も浮かぶが、これらの素材でもってハニカム構造に形成する場合は、その形成が困難である場合も含めてコストアップとなり、好ましくない。
【0009】
このような点に鑑み、本発明は、電解水と空気が接触することにより、空気の除菌や脱臭を行なうために、オゾン等の活性酸素に対する耐性が高く、上記ハニカム構造のものよりもかなりの低コスト化に適し、オゾン水等の電解水の保持性に優れた気液接触部材を備えた空気浄化エレメントを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、特に、酸化作用が強いオゾン水と空気との接触によって空気の除菌や脱臭を行なうために、オゾンに対する耐性が高く、低コスト化に適し、オゾン水の保持性に優れた空気浄化エレメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明は、活性酸素に対する耐性が高い繊維の組み合わせによって前記繊維相互間に空気の通過する隙間を形成した気液接触部材が、前記活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体で担持され、前記活性酸素種を含む電解水が前記繊維の表面に付着した状態で、空気が前記電解水と接触しつつ前記隙間を通過する間に前記空気の除菌や脱臭を行うための空気浄化エレメントである。
【0012】
第2発明は、第1発明において、前記気液接触部材が無機酸化物で構成された繊維であることを特徴とする。
【0013】
第3発明は、第1発明において、前記気液接触部材がガラス繊維で構成されたことを特徴とする。
【0014】
第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、前記枠体がポリ塩化ビニル、ステンレスまたは表面を酸化処理したアルミニウムで構成されたことを特徴とする。
【0015】
第5発明は、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、前記空気浄化エレメントは、前記空気が通過する方向に所定の厚さを形成した立方体形状または直方体形状であることを特徴とする。
【0016】
第6発明は、第5発明において、前記空気浄化エレメントは、上部に位置する前記枠体部分には、前記気液接触部材へ前記電解水を導入する電解水導入部を形成したことを特徴とする。
【0017】
第7発明は、第5発明において、前記空気浄化エレメントは、上部に位置する前記枠体部分には、前記電解水を一時的に溜める貯留部と、前記貯留部の電解水を前記気液接触部材の上端部へ供給する電解水導入部を形成したことを特徴とする。
【0018】
第8発明は、第1発明乃至第7発明のいずれかの空気浄化エレメントを備え、水を電気分解して活性酸素種を含む前記電解水を生成する電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留する水受け皿を備え、前記水受け皿に貯留した電解水を循環ポンプで汲み上げて前記空気浄化エレメントの上部から前記気液接触部材へ流下させる電解水循環構成である空気清浄装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、繊維状の気液接触部材が活性酸素に対する耐性が高い部材であり、その周囲を活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体で担持したものであるため、繊維状の気液接触部材の安定した形状維持ができると共に、オゾン等の活性酸素に対して耐性が高く、オゾン水等の電解水の保持性に優れ、低コスト化に適したものとなり、この空気浄化エレメントを用いた機器の寿命も長く維持できる効果を奏する。
【0020】
また、第2発明によって、気液接触部材が無機酸化物で構成された繊維であることにより、適度の繊維密度を保った厚さの板状に形成することにより、オゾン水の保持性に優れ、通過する空気と電解水との接触が良好となり、活性酸素に対する耐性が高い金属等の枠体で担持するのに適した構成でもって、優れた除菌脱臭効果を得ることができるものとなる。
【0021】
また、第3発明によって、気液接触部材がガラス繊維で構成できるため、材料コストが低く、適度の繊維密度を保った厚さの板状に形成することが容易であり、オゾン水の保持性に優れ、通過する空気と電解水との接触が良好となり、活性酸素に対する耐性が高い金属等の枠体で担持するのに適した構成でもって、優れた除菌効果を得ることができるものとなる。この発明の空気浄化エレメントは、前記従来のPET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂でもってハニカム構造に形成した場合の略半分のコストで製造できるものとなる。
【0022】
また、第4発明によって、枠体がポリ塩化ビニル、ステンレスまたは表面を酸化処理したアルミニウムで構成されることにより、比較的安価にして、活性酸素に対する耐性が高い空気浄化エレメントを構成することができるものとなる。
【0023】
また、第5発明は、空気浄化エレメントは、空気が通過する方向に所定の厚さを形成した立方体形状または直方体形状であることによって、平板状の空気浄化エレメントとなり、製作、梱包、及び運搬が容易となり、更に、機器に組み込んで使用する場合の組み込みがし易くなる。
【0024】
また、第6発明は、空気浄化エレメントの上部に位置する枠体部分に、気液接触部材へ電解水を導入する電解水導入部を形成したことによって、気液接触部材を枠体で保持しつつ、気液接触部材へ電解水を円滑に導入することができるものとなり、気液接触部材の保持と電解水で満遍に濡らすことが良好となる。
【0025】
また、第7発明は、上部に位置する枠体部分に、電解水を一時的に溜める貯留部と、この貯留部の電解水を気液接触部材の上端部へ供給する電解水導入部を形成したため、気液接触部材を枠体で保持しつつ、気液接触部材へ電解水を円滑に導入することができるものとなり、気液接触部材の保持と気液接触部材を電解水で満遍に濡らすことに適するものとなる。また、空気浄化エレメントの上方から電解水を供給する電解水供給器には、電解水を一時的に貯留するトレー部材を備える必要がなく、このトレー部材に替わって、貯留部と電解水導入部がその作用を司ることができるものとなる。
【0026】
また、第8発明では、オフィス等のある程度限られた部屋の除菌や脱臭を行なう空気清浄装置として、第1発明乃至第7発明の効果を奏する好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す空気清浄装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す空気清浄装置の内部構成を示す右側断面視図である。
【図4】図1に示す空気清浄装置の気液接触部材と電解水生成ユニットとを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る空気清浄装置の電解水の供給の様子を説明する図であり、(A)は空気除菌機構の構成を示す模式図であり、(B)は電解槽の構成を示す図である。
【図6】本発明に係る空気浄化エレメントの正面斜視図である。
【図7】本発明に係る空気浄化エレメントの取り付け状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る空気浄化エレメントの上部に電解水導入部を形成した形態の斜視図である。
【図9】空気浄化エレメントの形態によるオゾン濃度の減少割合を比較した図である。
【図10】従来のハニカム構造の空気浄化エレメントの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、活性酸素に対する耐性が高い繊維の組み合わせによって前記繊維相互間に空気の通過する隙間を形成した気液接触部材が、前記活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体で担持され、前記活性酸素種を含む電解水が前記繊維の表面に付着した状態で、空気が前記電解水と接触しつつ前記隙間を通過する間に前記空気の除菌や脱臭を行うための空気浄化エレメント、及びこの空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置であり、以下に、その実施例を記載する。
【実施例1】
【0029】
以下、電解水がオゾン水である場合について、本発明に係る空気浄化エレメント、及びその空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置の実施例を図に基づき説明する。
図1に示すように、空気清浄装置1は縦長に形成された箱形の筐体11を有し、例えば床置き設置される。筐体11には、この筐体11の両側面の下部に吸込グリル12が形成されるとともに、この筐体11の前面の下端部に空気の吸込口15が形成されている。
【0030】
また、筐体11の上面には吹出口13が形成され、この吹出口13には空気を吹き出す方向を変化させるためのルーバー20が設けられている。このルーバー20は、運転停止時には上記吹出口13を閉塞するように構成されている。
【0031】
空気清浄装置1は、吸込グリル12及び吸込口15を介して空気清浄装置1の設置室内の空気を吸い込んで除菌し、この除菌された空気を吹出口13から排出することで、室内空気を清浄化させる装置である。ここで、室内空気の清浄化とは、室内空気を後述の空気浄化エレメントを通過させることによって、室内空気中に含まれる細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物を不活化させたり、臭い成分を吸着分解して脱臭することにより、室内空気を清浄することを意味する。
【0032】
筐体11の上面には、吹出口13の前面側に配置された操作蓋16Aと、この操作蓋16Aに横並びに配置されたタンク用開閉蓋14Aとが形成されている。操作蓋16Aを開くと、空気清浄装置1の各種操作を行う操作パネル16(図2参照)が露出し、タンク用開閉蓋14Aを開くと、タンク取出口14を介して後述する給水タンク41(図2参照)を出し入れ可能となっている。
【0033】
また、筐体11の両側面の上部にはそれぞれ把持部17が形成されている。これら把持部17は筐体11を手持ちする際に手を掛けるための凹部であり、運搬時に空気清浄装置1を一人で持ち上げて移動できるようになっている。
【0034】
また、筐体11の前面には、上下方向に並べられた上側カバー部材18及び下側カバー部材(カバー部材)19がそれぞれ着脱自在に配置されており、これら上側カバー部材18及び下側カバー部材19を取り外すと筐体11の内部構成が露出するようになっている。また、下側カバー部材19は、この下側カバー部材19の下端部に、筐体11の背面側に向けて湾曲した円弧部19Aを備え、この円弧部19Aに空気の吸込口15が形成されている。
【0035】
次に、空気清浄装置1の内部構成を説明する。
筐体11には、図2に示すように、この筐体11の内部を上下に仕切る支持板21が設けられ、上側の室22と下側の室23とに区分けされている。この下側の室23には、送風ファン31及びファンモータ32が配置されるとともに、仕切板24を介して、把手部57Aを有する排水タンク57が筐体11の前面側に引き出し可能に収容されている。これら送風ファン31及びファンモータ32と排水タンク57とは横並びに配置されている。
【0036】
また、送風ファン31と吸込口15との間、すなわち、下側の室23における下側カバー部材19との対向する位置には、図2に示すように、フィルタユニット34が着脱自在に配置されている。このフィルタユニット34は、仕切板24および支持板21等によって形成された枠部にはめ込まれて配置されており、この枠部に形成された適宜の留め付け部材(図示せず)によって当該枠部に、着脱自在に固定されている。
【0037】
フィルタユニット34は、図2に示すように、捕集効率の異なる粗塵フィルタ25と中性能フィルタ26の2枚のフィルタを備えた構成である。下側カバー部材19側に配置される粗塵フィルタ25は、吸込グリル12及び吸込口15を通じて吸い込まれた空気中の塵埃など粒径の大きなものを捕集し、粗塵フィルタ25の内側に配置される中性能フィルタ26は、粗塵フィルタ25を通過した例えば粒径10μm以上の粒子を高効率(例えば、捕集効率95%程度)に捕集するものである。このフィルタユニット34によって空気中に浮遊する花粉や塵埃等が除去され、この除去された空気が送風ファン31を介して上側の室22に供給される。
【0038】
次に、筐体11の支持板21で仕切られた上側の室22内の構成について説明する。上側の室22には、図2に示すように、送風ファン31及びファンモータ32の上方に電装ボックス39が配置され、この電装ボックス39の上方に本発明に係る空気浄化エレメント53が配置されている。この空気浄化エレメント53と電装ボックス39との間には、空気浄化エレメント53から滴下した水を受ける水受皿42が配置されている。この水受皿42は、深底に形成された貯留部42Aを備え、この貯留部42Aは上記排水タンク57の上方に延在している。電装ボックス39には、空気清浄装置1を制御する制御部(図示せず)を構成する各種デバイスが実装された制御基板や、ファンモータ32に電源電圧を供給する電源回路等の各種電装部品が収容されている。
【0039】
貯留部42Aの上には給水タンク41が配設され、給水タンク41から貯留部42Aに水を供給可能な構成となっている。詳細には、給水タンク41の下端に形成された給水口にはフロートバルブが設けられ、貯留部42Aの水面が給水口よりも下になると、このフロートバルブが開放されることにより、給水タンク41から必要量の水が供給され、貯留部42Aの水位が一定に保たれる仕組みである。
【0040】
また、貯留部42Aの上には、図2に示すように、空気浄化エレメント53に供給する電解水を生成する電解水生成ユニット45が配置されている。この電解水生成ユニット45は、循環ポンプ44と電解槽46とを備えて構成され、循環ポンプ44は、制御部の制御に従って回転数を変更することにより、循環量を変更可能に動作する。循環ポンプ44の吐出口には、貯留部42Aに貯留された水を汲み上げて空気浄化エレメント53に供給する供給管71が接続され、この供給管71には循環ポンプ44と空気浄化エレメント53との間で分岐する分岐管72を介して電解槽46が接続されている。この電解槽46は、後述するように、一方が正、他方が負となる対の電極47、48を複数内蔵し、これら電極47、48間に、制御部から供給される電圧を印加することにより、水を電解して電解水を生成する。実施例の電解水は、後述のようにオゾン水である。電解槽46の上面には、この電解槽46で生成した電解水を排出する排出口46Aが形成され、この排出口46Aには電解水を貯留部42Aに返送する返送管73が接続されている。
【0041】
また、貯留部42Aの上には、この貯留部42Aの入口部分に当該貯留部42Aに流れ込む水に混入する固形物を捕集するフィルタ部材74が配置されている。本構成では、返送管73の出口は、このフィルタ部材74の上方に配置され、水とともに電解槽46から排出された固形物(例えば、電極表面に形成されたスケール成分)をも捕集可能となっている。このフィルタ部材74によって、水受皿42を介して空気浄化エレメント53と電解水生成ユニット45とを循環される水に含まれる固形物が捕集されるため、この固形物が空気浄化エレメント53に流入し、この空気浄化エレメント53の目詰まりの発生が防止される。
【0042】
また、本実施形態では水受皿42に貯留された水を適宜排出可能に構成されている。具体的には、図5に示すように、貯留部42Aの下部には排水管55が連結されるとともに、この排水管55を開閉させる排水バルブ56が設けられている。そして、排水管55の先端は、上記排水タンク57の上方に延びており、排水バルブ56を開放することにより、水受皿42上の水が排水タンク57に排出される。
【0043】
空気浄化エレメント53の上部には、この空気浄化エレメント53上に均一に電解水を分散させるための電解水供給器51が組み付けられている。この電解水供給器51には供給管71から電解水が供給されるように接続されている。この電解水供給器51は、電解水を一時的に貯留するトレー部材を備え、このトレー部材の底面に複数の供給孔51Aが開口し、この供給孔51Aから空気浄化エレメント53に対して電解水を流下するようになっている。
【0044】
空気浄化エレメント53は、電解水にオゾン水を使用するため、図6及び図7に示すように、活性酸素に対する耐性が高い繊維53Sの組み合わせによって繊維53S相互間に空気の通過する隙間53Tを形成した気液接触部材53Aと、この気液接触部材53Aが活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体53Bで担持された構成である。
【0045】
気液接触部材53Aは、空気を通過させる際の気体接触面積が広く確保され、電解水の滴下または流下が可能で、目詰まりしにくい構造が好ましい。このため、繊維53Sは、気液接触部材53Aの略全体が電解水によって濡れた状態を保ちつつ、空気の通過する隙間53Tを形成する状態が好ましく、この状態において、送風ファン31からの空気が隙間53Tを通過する間に電解水に接触して、電解水中のオゾンによってその空気中の細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物を不活化させたり、臭い成分を吸着分解して脱臭することに適する材質が選択される。このため、この繊維53Sは、活性酸素に対する耐性に優れたものとして、無機酸化物で構成された繊維で構成することができる。また、製造コストの低減化等を考慮すれば、その代表的な一つとしてガラス繊維が好適である。実施例では、所定の厚さと大きさを有するガラス繊維板状部材を採用している。なお、コスト低減を重要視としなければ、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)のように、活性酸素に対する耐性に優れた合成樹脂の繊維を採用することもできる。
【0046】
また、枠体53Bには、活性酸素に対する耐性が高い部材であり、枠形状に形成するための製造コストの低減化等を考慮すれば、ポリ塩化ビニル、ステンレス、表面を酸化処理したアルミニウム(アルミナ)が好適であり、コスト低減を重要視としなければ、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)やセラミックスとすることもできる。この表面を酸化処理したアルミニウムとは、表面のみを酸化処理したアルミニウムまたは全体を酸化したアルミニウムのいずれでもよく、少なくとも表面を酸化処理したアルミニウムであることを意味する。
【0047】
空気浄化エレメント53の表側(空気出口側)と裏側(空気入り口側)には、対向位置に略同じ形状及び同じ大きさの空気通過開口53Pが枠体53Bで囲まれて形成されている。気液接触部材53Aが、空気通過開口53Pから飛び出さないように周囲が枠体53Bに保持されるようにするために、少なくとも空気浄化エレメント53の表側(空気出口側)の空気通過開口53Pには、その内側に防護ネット53Cが設けられている。防護ネット53Cは、活性酸素に対する耐性が高い部材であり、空気抵抗が少ない網目形状に形成するための製造コストの低減化等を考慮すれば、ポリ塩化ビニル、ステンレス、表面を酸化処理したアルミニウム(アルミナ)が好適であり、コスト低減を重要視としなければ、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)やセラミックスとすることもできる。この表面を酸化処理したアルミニウムとは、表面のみを酸化処理したアルミニウムまたは全体を酸化したアルミニウムのいずれでもよく、少なくとも表面を酸化処理したアルミニウムであることを意味する。
【0048】
空気浄化エレメント53の大きさは、これを適用する空気清浄装置1の除菌性能によって設定されるが、実際に適用した空気清浄装置1に採用したものは、縦寸法L1が250mm、横寸法L2が100mm、厚さL3が30mmの大きさの直方体形状のものである。また、空気通過開口53Pの大きさは、開口縦寸法LYが230mm、開口横寸法LXが80mmの矩形状である。また、防護ネット53Cは、気液接触部材53Aが空気通過開口53Pから飛び出さないように保持する作用であればよいため、図6に示すように、空気抵抗が少ない大きな網目形状を成している。また、気液接触部材53Aを防護ネット53Cに当接する状態で枠体53B内に収容した後、空気浄化エレメント53の裏側(空気入り口側)の空気通過開口53Pから気液接触部材53Aが飛び出さないように保持するために、棒状のバネ材で構成した保持部材53Dを枠体53Bに着脱自在に係止するようにすればよい。また、枠体53Bの板厚は略1mmであるため、気液接触部材53Aの厚さは、略28mm〜30mmである。なお、適用する空気清浄装置1に応じて、この空気浄化エレメント53を横長にして(L1を横寸法とする状態)使用する形態でも差し支えない。また、ここでの空気浄化エレメント53の形状は直方体であるが、適用される空気清浄装置1の形態によって、空気浄化エレメント53は空気が通過する方向に所定の厚さを形成した立方体形状であってよく、これ以外に、円板、球体、楕円体、円柱、円錐、多角柱、多角錘等の多面体であってもよい。
【0049】
電解水供給器51には、電解水を一時的に貯留するトレー部51Bを備え、このトレー部51Bの底面に複数の供給孔51Aが開口し、この供給孔51Aから空気浄化エレメント53の上面の導水孔53Hに対して電解水を流下するようになっており、枠体53Bの上面には、図6に示すように、電解水供給器51の供給孔51Aから空気浄化エレメント53に対して流下する電解水を気液接触部材53Aへ導くための電解水導入部として、導水孔53Hが形成されている。電解水を気液接触部材53Aへ均一に供給するためには、供給孔51A及び導水孔53Hは、気液接触部材53Aの横幅全体(図6において横寸法L2の範囲)に亘る一連の長孔で形成することもできる。
【0050】
空気浄化エレメント53は略垂直状態となるように縦設置され、この空気浄化エレメント53の裏側から表側へ向けて空気が通過する状態で使用される。実施例では、図7に示すように、空気浄化エレメント53の上端部に電解水供給器51が組み付けられている。空気浄化エレメント53の下端部は、水受皿42に一体または別個に設けた保持部42Hに嵌合保持され、縦設置状態となる。この状態で、オゾン水である電解水は、電解水供給器51の供給孔51Aから導水孔53Hを通って気液接触部材53Aの上端へ導入される。導水孔53Hを覆って貯留部53Wの底部には、分流シート53Qが収納されている。この分流シート53Qは、スポンジ状の連続気泡性であり、電解水の浸透性を有する繊維材料からなるシート(織物、不織布等)であり、全体的に電解水が浸潤した状態を保ちつつ、分流シート53Qの全体から電解水が流下するため、電解水を気液接触部材53Aの上端部へ略均一に分配することができる。
【0051】
実際に空気浄化エレメント53を空気清浄装置1に組み込んで使用した状態は、この縦長の空気浄化エレメント53の3枚を横一列になるように当接配置した状態を1セットとし、電解水は、電解水供給器51と導水孔53Hを通って、この3枚の空気浄化エレメント53の上部からこの3枚の空気浄化エレメント53の各気液接触部材53Aの上端へ供給される構成とした。また、適用する空気清浄装置1に応じて、この空気浄化エレメント53を横長にして(L1を横寸法とする状態)上下に積み重ねた状態で、縦設置の場合と同様に、電解水供給器51から電解水を供給する形態でも差し支えない。この後者の場合、それぞれの空気浄化エレメント53の枠体53Bの上部辺と下部辺には、貫通した導水孔53Hを形成することにより、電解水が上位の空気浄化エレメント53から下位の空気浄化エレメント53へ良好に流れることとなる。
【0052】
気液接触部材53Aの上端へ導入された電解水は、気液接触部材53Aを伝って下方へ流下しつつ、気液接触部材53Aの略全体がこの電解水で濡れた状態となる。この状態で、送風ファン31からの空気が、この濡れた状態で存在する隙間53Tを通過する間に電解水に接触して、電解水中のオゾンによってその空気中の細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物を不活化させたり、臭い成分を吸着分解して脱臭することにより、除菌・脱臭が行なわれる。
【0053】
図7に示す形態に替えて、図8には、空気浄化エレメント53の上辺に位置する枠体53Bには、電解水供給器51から供給される電解水を一時的に溜める貯留部53Wと、この貯留部53Wの電解水を気液接触部材53Aの上端部へ略均一に分配するための電解水導入部として、導水孔53Hが形成されている。このため、電解水供給器51から供給される電解水は、気液接触部材53Aの上端部へ略均一に分配されるため、気液接触部材53Aを全体的に濡らした状態に維持できるものとなる。また、この構成によって、貯留部53Wと導水孔53Hを枠体53Bに一体的に形成することができ、電解水供給器51には、電解水を一時的に貯留するトレー部51Bを備える必要がなく、このトレー部51Bと供給孔51Aに替わって、貯留部53Wと導水孔53Hがその作用を司ることができるものとなる。
【0054】
なお、図8に示す形態では、導水孔53Hが多数形成されているが、この導水孔53Hの大きさ、形状、数は適宜設定とすればよく、また略横寸法L2に近く横方向に長い長孔でもよい。貯留部53Wの電解水を気液接触部材53Aの上端部へ略均一に分配するために、導水孔53Hを覆って貯留部53Wの底部には、分流シート53Qが収納されている。この分流シート53Qは、スポンジ状の連続気泡性であり、電解水の浸透性を有する繊維材料からなるシート(織物、不織布等)であり、全体的に電解水が浸潤した状態を保ちつつ、分流シート53Qの全体から電解水が流下するため、電解水を気液接触部材53Aの上端部へ略均一に分配することができる。
【0055】
通常、ガラス繊維を所定形状に維持するため、即ち、繊維間の隙間維持をしつつ所定の厚さと大きさをもつ板状を維持するために、樹脂系のバインダー処理がなされている場合がある。この処理されたものをそのまま気液接触部材53Aとして使用した場合は、このバインダーによってオゾンが消費されるため、気液接触部材53Aとしての本来の機能が低下する。これを防止するために、このバインダーを除去する。このバインダーの除去は、所定の厚さと大きさをもつ板状の気液接触部材53Aを、枠体53Bに収めた状態または収める前に、例えば、空気中において500℃で1時間の加熱処理を行うことにより達成できる。空気浄化エレメント53は、このバインダーの除去処理後の気液接触部材53Aを備えたものである。気液接触部材53Aは、電解水に対する親和性が高いことが望ましいが、このバインダーの除去の後も、好ましい状態での電解水に対する親和性が維持されるように、ガラス繊維間の隙間が維持された状態となるガラス繊維板状部材を採用すればよい。
【0056】
図9には、空気浄化エレメント53の構成材質によってオゾン濃度が減少する割合を示している。この場合の電極47、48のうちの陽極を白金電極とした形態の電極によって、容器に入れた水道水(導電率200μS/cm)を用いて、オゾン濃度が略0.75mg/Lの電解水(オゾン水)を生成し、このオゾン水2リットル(2L)をビーカに採り、その中に(ロ)(ハ)の構成の空気浄化エレメントを浸漬して、上面開放状態のこのビーカ内のオゾン水のオゾン濃度が半分に減少するまでの経過時間を測定したものである。
【0057】
(ロ)(ハ)の構成の空気浄化エレメントは、いずれも外形寸法が、縦寸法L1が250mm、横寸法L2が100mm、厚さL3が30mmの大きさの直方体形状である。(ロ)の構成の空気浄化エレメントは、図10に示すように、上記背景技術として記載した特開2008−183185号公報に記載されたものと同様の構成であり、並行配置のPET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂板HT間に、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂の波板HMを配置したハニカム構造の空気浄化エレメントである。また、(ハ)の構成の空気浄化エレメントは、図6に示すように、表面が酸化アルミニウム(表面を酸化処理したアルミニウム)で構成された防護ネット53Cを備えた表面が酸化アルミニウムで構成された枠体53Bの中に、ガラス繊維の気液接触部材53Aを収容した状態で、上記のようにバインダー除去の熱処理を行った空気浄化エレメント53である。
【0058】
図9において、(イ)の場合は、前記ビーカ内のオゾン水に何も入れていない状態でのオゾン濃度が半分に減少するまでの時間であり、略48分である。(ロ)の場合は、(ロ)の構成の空気浄化エレメント全体を前記ビーカ内のオゾン水に浸漬した場合であり、オゾン濃度が半分に減少するまでの時間は、略14分である。また(ハ)の場合は、(ハ)の構成の空気浄化エレメント53の全体を前記ビーカ内のオゾン水に浸漬した場合であり、オゾン濃度が半分に減少するまでの時間は、略19分である。
【0059】
図9から明らかなように、(ロ)の従来のハニカム構造に形成した空気浄化エレメントに比して、(ハ)の空気浄化エレメント53の場合が、オゾンが減少し難いことが判り、(ハ)のような空気浄化エレメント53を選定すれば、空気浄化エレメントの材質によるオゾン消滅は、従来のものに比して少ない状態となり、除菌・脱臭効果に優れたものとなることが判る。
【0060】
次に、図3を参照して空気清浄装置1における空気の流れを説明する。
上述のように、筐体11の下側の室23には送風ファン31が設けられている。この送風ファン31の送風口31Aは、筐体11の背面側部分において上向きに設けられ、支持板21には、送風口31Aに重なる位置において開口が設けられている。この支持板21の開口は、上側の室22の背面側において上下に延びる空間1Aに連通する。このため、吸込グリル12および吸込口15を介して筐体11内に吸い込まれた室内空気はフィルタユニット34を通過して、花粉粒子等が除去された空気は送風ファン31の送風口31Aから吹き出される。送風口31Aから吹き出された空気は、図3中に矢印で示すように空間1Aを通り、空気浄化エレメント53の背面に吹き付けられる。
【0061】
本構成では、この空間1Aには、筐体11の背面側に配置される第1導風部材81を備える。この第1導風部材81の上部には、分流板82が配置されており、空間1Aを流れる空気を均一に空気浄化エレメント53の背面(裏側)に吹き付け可能となっている。また、空気浄化エレメント53を介して、筐体11の前面側の空間1Bには、この空気浄化エレメント53を通過した空気を吹出口13に導く第2導風部材83が配置されている。この第2導風部材83は、空間1B内の空気を吹出口13に導く機能と、空気浄化エレメント53から空気とともにこの空間1Bに吹き出された水(いわゆる飛び水)を受ける機能とを有する。具体的には、第2導風部材83は、この第2導風部材83の内側の底面83Aが空気浄化エレメント53に向けて下り勾配に形成されており、この底面83Aの先端部が水受皿42の上方に延在する。このため、空間1Bに吹き出された水は、第2導風部材83の内側の底面83Aを通じて水受皿42に戻される。
【0062】
送風ファン31から吹き出される空気の風速は2〜4m/秒であり、空気浄化エレメント53を通過した空気は、上記第2導風部材83に導かれて吹出口13の下方に配設された吹出口フィルタ36を通って排気される。この吹出口フィルタ36は、吹出口13から筐体11内部への異物の進入を防止するためのフィルタである。吹出口フィルタ36は、網や織物または不織布等(図示略)を備えており、これらの材料としては、合成樹脂、好ましくは空気浄化エレメント53を構成する材料が好ましい。また、吹出口フィルタ36は、空気浄化エレメント53を通過した空気の通風抵抗を著しく増加させないよう、適度に目の粗いものであることが好ましい。空気浄化エレメント53の汚れは、酸洗浄すれば、再利用可能である。
【0063】
図5は、電解水の供給の様子を説明する図であり、図5(A)は、空気除菌機構の構成を示す模式図であり、図5(B)は電解槽46の構成を詳細に示す図である。この図5を参照して、空気浄化エレメント53に対する電解水の供給について説明する。なお、本実施の形態では、給水タンク41に水道水を入れて空気清浄装置1を動作させる場合について説明する。
【0064】
水道水を入れた給水タンク41が空気清浄装置1にセットされると、上述のように、給水タンク41から水受皿42に水道水が供給され、水受皿42の水位が所定のレベルに達する。水受皿42内の水は循環ポンプ44によって汲み上げられて、その一部が電解槽46に供給される。この電解槽46には、図5(B)に示すように、一方が正、他方が負となる対の電極47、48を備え、これら電極47、48間に電圧を印加することにより、電解槽46に流入した水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものであるが、本発明では、特にオゾン水を空気浄化エレメント53の上方から流下させ、この空気浄化エレメント53を通過する空気の除菌・脱臭を行うことに適した技術を提供するものである。
【0065】
電極47は、例えば、ベースがチタン(Ti)で被膜層がイリジウム(Ir)、白金(Pt)から構成された電極板であり、アノード電極として外部電源から正電位が与えられることにより、活性酸素種として次亜塩素酸を生成する。
また、電極48は、例えば、ベースがチタン(Ti)で被膜層が白金(Pt)、タンタル(Ta)から構成された電極板であり、アノード電極として外部電源から正電位が与えられることにより、活性酸素種としてオゾンを生成する。
この電極47、48に流れる電流値は、例えば、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定濃度の次亜塩素酸またはオゾンを発生させることができる。
【0066】
ここで、電極47をカソード電極とし、電極48をアノード電極として、外部電源から電極47及び電極48の間に電圧を印加して、通電すると、アノード電極としての電極48では、下記式(1)〜(3)に示す反応が起こり、オゾンが生成される。
2H2O→4H++O2+4e- ・・・(1)
3H2O→O3+6H++6e- ・・・(2)
2O+O2→O3+2H++2e- ・・・(3)
一方、カソード電極としての電極47では、下記式(4)に示す反応が起こり、電極反応により過酸化水素(H22)が生成される。
2+2e-+2H+→H22 ・・・(4)
【0067】
電極48を正電位とするよう電極47、48間に外部電源から電圧を印加することで、電極48の側から殺菌力の大きいオゾンを、電極47の側からは過酸化水素を生成させて、これらオゾンや過酸化水素を含んだ電解水を作ることができる。更に、電極47、48によりオゾンや過酸化水素を生成させた電解水は、ウィルス等の不活化、殺菌、有機化合物の分解等、種々の空気清浄効果を発揮する。このように、オゾンや過酸化水素を含む電解水が電解水供給器51から空気浄化エレメント53に流下されると、送風ファン31により吹き出された空気が空気浄化エレメント53を通過する間に、オゾンや過酸化水素と接触する。これにより、空気中に浮遊する空中浮遊微生物等が不活化されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質がオゾンと反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。これによって、空気の除菌及び脱臭がなされ、清浄化された空気が空気浄化エレメント53から排出される。
【0068】
この空気清浄装置1が、例えば幼稚園や小・中・高等学校、介護保険施設、病院等のいわゆる大空間に設置された場合であっても、電解水ミスト自体を室内に向けて噴霧するのではなく、電解水により清浄化(除菌、脱臭等)された空気を送風することで、清浄化された空気を大空間内で広く行き渡らせることが可能になり、大空間での空気除菌及び脱臭を効率よく行うことができる。
【0069】
また、電解水供給器51から空気浄化エレメント53に流下された電解水は空気浄化エレメント53を伝って下方に移動し、水受皿42に落ちる。水受皿42に落ちた電解水は再び循環ポンプ44によって汲み上げられ、電解槽46を経て空気浄化エレメント53に供給される。このように、本実施形態における構成では水が循環式となっており、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率よく空気の除菌を行える。また、蒸発等により電解水循環部2を循環する水量が減った場合には、給水タンク41内の水が水受皿42に適量供給される。
【0070】
上記実施例では、オゾン水である電解水を生成するように構成された電極47、48でもって、オゾン水である電解水により空気を清浄化(除菌、脱臭等)する機能及び構成について記載したが、次亜塩素酸も強力な酸化作用や漂白作用を有するため、次亜塩素酸水である電解水を生成するように構成された電極47、48でもって、本発明の空気浄化エレメント53は、そのまま適用可能である。
【0071】
この次亜塩素酸による空気清浄効果を得るためには、電極47をアノード電極とし、電極48をカソード電極として、外部電源から電極47及び電極48の間に電圧を印加して通電する。
アノード電極(陽極)としての電極47では、下記式(5)に示すように水が電気分解される。
2H2O→4H++O2+4e- ・・・(5)
これと共に、電極47においては、水に含まれる塩素イオン(塩化物イオン:Cl-)が下記式(6)に示すように酸化反応し、塩素(Cl2)が発生する。
2Cl-→Cl2+2e- ・・・(6)
更に、この塩素は下記式(7)に示すように加水分解し、次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)が発生する。
Cl2+H2O→HClO+HCl ・・・(7)
【0072】
電極47で発生した次亜塩素酸は広義の活性酸素種に含まれるもので、強力な酸化作用や漂白作用を有する。次亜塩素酸が溶解した水溶液、すなわち空気清浄装置1により生成される電解水は、ウィルス等の不活化、殺菌、有機化合物の分解等、種々の空気清浄効果を発揮する。このように、電極47、48により殺菌力の大きい次亜塩素酸を生成させた場合、この次亜塩素酸を含む電解水が散水ボックス51から空気浄化エレメント53に流下されると、送風ファン31により吹き出された空気が空気浄化エレメント53において次亜塩素酸と接触する。これにより、空気中に浮遊するウィルス等が不活化されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質が次亜塩素酸と反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。従って、空気の除菌及び脱臭がなされ、清浄化された空気が空気浄化エレメント53から排出される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る空気浄化エレメント、及びこの空気浄化エレメントを組み込んだ空気清浄装置は、上記実施例に示した構成に限定されず、種々の形態のものに適用できるものであり、本発明の技術範囲において種々の形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0074】
1・・・・・空気清浄装置
2・・・・・電解水循環部
11・・・・筐体
12・・・・吸込グリル
13・・・・吹出口
15・・・・吸込口
31・・・・送風ファン
41・・・・給水タンク
44・・・・循環ポンプ
45・・・・電解水生成ユニット
46・・・・電解槽
47、48・・・電極
53・・・・空気浄化エレメント
53A・・・気液接触部材
53B・・・枠体
53C・・・防護ネット
53H・・・導水孔
53P・・・空気通過開口
53Q・・・分流シート
53S・・・ガラス繊維
53T・・・空気の通過する隙間
53W・・・貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性酸素に対する耐性が高い繊維の組み合わせによって前記繊維相互間に空気の通過する隙間を形成した気液接触部材が、前記活性酸素に対する耐性が高い部材の枠体で担持され、前記活性酸素種を含む電解水が前記繊維の表面に付着した状態で、空気が前記電解水と接触しつつ前記隙間を通過する間に前記空気の除菌や脱臭を行うための空気浄化エレメント。
【請求項2】
前記気液接触部材が無機酸化物で構成された繊維であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化エレメント。
【請求項3】
前記気液接触部材がガラス繊維で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化エレメント。
【請求項4】
前記枠体がポリ塩化ビニル、ステンレスまたは表面を酸化したアルミニウムで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気浄化エレメント。
【請求項5】
前記空気浄化エレメントは、前記空気が通過する方向に所定の厚さを形成した立方体形状または直方体形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空気浄化エレメント。
【請求項6】
前記空気浄化エレメントは、上部に位置する前記枠体部分には、前記気液接触部材へ前記電解水を導入する電解水導入部を形成したことを特徴とする請求項5に記載の空気浄化エレメント。
【請求項7】
前記空気浄化エレメントは、上部に位置する前記枠体部分には、前記電解水を一時的に溜める貯留部と、前記貯留部の電解水を前記気液接触部材の上端部へ供給する電解水導入部を形成したことを特徴とする請求項5に記載の空気浄化エレメント。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の空気浄化エレメントを備え、水を電気分解して活性酸素種を含む前記電解水を生成する電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留する水受け皿を備え、前記水受け皿に貯留した電解水を循環ポンプで汲み上げて前記空気浄化エレメントの上部から前記気液接触部材へ流下させる電解水循環構成である空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−29780(P2012−29780A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170534(P2010−170534)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】