説明

空気浄化装置及び空気浄化装置のフィルタ交換方法

【課題】 装置構造及びフィルタ交換方法を簡易なものとすることができ、フィルタが捕集した有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる空気浄化装置を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る空気浄化装置1は、HEPAフィルタ25を有するフィルタユニット4と、HEPAフィルタ25を水洗するためにフィルタユニット4の下方に設置されてHEPAフィルタ25の水洗用の開口16を有するとともに、プレフィルタ14を有する水洗ユニット5とを備え、プレフィルタ14を通じて吸入された空気がHEPAフィルタ25を通過して排気口32から排出されるように、水洗ユニット5の内部とフィルタユニット4の内部とが連通し、プレフィルタ14を取り外した状態で開口16から水洗ユニット5の内部に放水したときにHEPAフィルタ25の下面41が水洗されるように、HEPAフィルタ25が水洗ユニット5の内部に臨んで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬工場等において有害粉塵を含む空気を浄化して排出する空気浄化装置、及び、この空気浄化装置のフィルタ交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能フィルタを用いた空気浄化装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。この空気浄化装置は、ケーシングの内部で高性能フィルタ(HEPAフィルタ)とその交換用の開口(スキャンテスト用ハッチ口)との間にグローブが一体成形されたビニルバッグを有し、HEPAフィルタの交換時には、作業者は、スキャンテスト用ハッチ口を塞ぐスキャンテスト用パネルを外し、グローブに手を入れて、ビニルバッグを透してケーシングの内部を見ながらHEPAフィルタを取り外す。そして、取り外されたHEPAフィルタをビニル袋等に封入してケーシングの外部に運び出し、新しいHEPAフィルタをケーシングに固定する(同文献の段落番号0040、0041、0051、0052参照)。
【0003】
ところが、このようなビニルバッグを用いた空気浄化装置のフィルタ交換方法は装置を複雑にするとともにフィルタ交換に手間がかかり、ビニルバッグを用いた密封交換方式によらない簡易な装置構造、簡易なフィルタ交換方法が求められている。また、製薬工場等における空気浄化装置では放射性同位元素のような絶対に漏れてはいけない物質までは対象としないことが一般的であるが、高活性物質、ステロイド剤等の微量で人体に影響のある薬剤を取り扱う事例は多く、製造薬品を切り替える場合に異なる薬効成分の混入を防止するために室内及び空気浄化装置廻りを水洗いする運用があるが、これまで、HEPAフィルタの上流側(一次側)を水洗いできるものはなかった。このような背景のもとに、空気浄化装置について、汚染されたHEPAフィルタを安全に交換することができ、かつ、HEPAフィルタの一次側が水洗い可能であることが望まれている。
【特許文献1】特開2002−214115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、装置構造及びフィルタ交換方法を簡易なものとすることができ、かつ、フィルタが捕集した有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる水洗可能な空気浄化装置と、このような空気浄化装置のフィルタ交換方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、排気口及び高性能フィルタを有するフィルタユニットと、前記高性能フィルタを水洗するために前記フィルタユニットの下方に設置されて前記高性能フィルタの水洗用の開口を有するとともに、吸気口及びプレフィルタを有する水洗ユニットとを備え、前記吸気口から吸入された空気が前記プレフィルタ及び前記高性能フィルタを通過して前記排気口から排出されるように、前記水洗ユニットの内部と前記フィルタユニットの内部とが連通し、前記プレフィルタを取り外した状態で前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水したときに前記高性能フィルタの空気流の上流側の面が水洗されるように、前記高性能フィルタが前記水洗ユニットの内部に臨んで設けられている空気浄化装置を特徴とする。ここで、吸気口とプレフィルタとは必ずしも別個独立に設けられていることを要せず、例えば水洗フィルタの筐体の壁面の一部にプレフィルタが取り付けられ、これが吸気口の機能を兼ねることとしてもよい。排気口と高性能フィルタとの関係についても同様である。
【0006】
請求項1に係る発明によれば、プレフィルタを取り外した状態で開口から水洗ユニットの内部に放水したときに高性能フィルタの空気流の上流側の面が水洗されるように、高性能フィルタが水洗ユニットの内部に臨んで設けられているので、高性能フィルタをビニルバッグを用いることなく直接的に交換しようとするときに、まずプレフィルタを取り外し、開口から水洗ユニットの内部に放水し、使用済みの高性能フィルタの空気流の上流側の面を水洗して湿潤させた上で、この高性能フィルタを新しい高性能フィルタに交換してプレフィルタを取り付けることにすれば、主に高性能フィルタの空気流の上流側の面に捕集されている有害粉塵の飛散が湿潤により抑制されることになって、装置構造やフィルタ交換方法を簡易なものとしつつ有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空気浄化装置において、前記フィルタユニットに、前記高性能フィルタへ流れる空気流量を確保しつつ前記高性能フィルタが載置されて取り付けられる枠状の取付フレームが設けられ、前記取付フレームの各部の断面形状が、前記取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないことを特徴とする。ここで、取付フレームの各部の断面形状が下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないとは、取付フレームの断面において上部と評価される箇所に断面内側である下方に窪んで凹となる部分(上方に開放した凹部)がなく、かつ、取付フレームの断面において側部と評価される箇所に断面内側である側方に窪んで凹となる部分(断面外側に開放した凹部)がないことを意味する。すなわち、取付フレームの各部の断面において上部又は側部と評価される箇所(例えば断面が多角形であれば多角形の辺の法線が断面の外側に向かって水平方向か水平方向よりも上を向いている箇所、断面が円形であればその中心の高さか中心よりも上の高さにある箇所)が断面の外側に凸となる曲線か直線のいずれかで構成されていることを意味し、取付フレームに付着した水が重力の作用によっても流下せずに安定的に留まる形状は除かれる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、取付フレームの各部の断面形状が下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないので、高性能フィルタの水洗時に取付フレームに水が付着しても短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。また、水洗後、作業者が残留水の拭取作業を行うにしても拭取りが容易で、フィルタ交換作業を短時間で完了させることが可能となる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の空気浄化装置において、前記水洗ユニットに、前記高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が水洗ユニットに設けられているので、その使用水が傾斜床を流下して短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。また、水洗後、作業者が残留水の拭取作業を行うにしても拭取りが容易で、フィルタ交換作業を短時間で完了させることが可能となる。
【0011】
請求項4に係る発明は、排気口及び高性能フィルタを有するフィルタユニットと、前記高性能フィルタを水洗するために前記フィルタユニットの下方に設置されて前記高性能フィルタの水洗用の開口を有するとともに、吸気口及びプレフィルタを有する水洗ユニットとを備え、前記吸気口から吸入された空気が前記プレフィルタ及び前記高性能フィルタを通過して前記排気口から排出されるように、前記水洗ユニットの内部と前記フィルタユニットの内部とが連通し、前記プレフィルタを取り外した状態で前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水したときに前記高性能フィルタの空気流の上流側の面が水洗されるように、前記高性能フィルタが前記水洗ユニットの内部に臨んで設けられている空気浄化装置のフィルタ交換方法であって、前記プレフィルタを取り外すプレフィルタ取外しステップと、前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水して前記高性能フィルタの空気流の上流側の面を水洗する高性能フィルタ水洗ステップと、前記高性能フィルタ水洗ステップで水洗した高性能フィルタを新しい高性能フィルタに交換する高性能フィルタ交換ステップと、前記プレフィルタ取外しステップで取り外したプレフィルタ又は新しいプレフィルタを取り付けるプレフィルタ取付けステップとを含むことを特徴とする。なお、吸気口とプレフィルタとの関係及び排気口と高性能フィルタとの関係については、請求項1に係る発明と同様である。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、まずプレフィルタを取り外し、開口から水洗ユニットの内部に放水し、使用済みの高性能フィルタの空気流の上流側の面を水洗して湿潤させた上で、この高性能フィルタを新しい高性能フィルタに交換してプレフィルタを取り付けるので、高性能フィルタをビニルバッグを用いることなく直接的に交換するときであっても、主に高性能フィルタの空気流の上流側の面に捕集されている有害粉塵の飛散が湿潤により抑制されることになって、装置構造やフィルタ交換方法を簡易なものとしつつ有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の空気浄化装置のフィルタ交換方法において、前記フィルタユニットに、前記高性能フィルタへ流れる空気流量を確保しつつ前記高性能フィルタが載置されて取り付けられる枠状の取付フレームが設けられ、前記取付フレームの各部の断面形状が、前記取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないことを特徴とする。なお、取付フレームの各部の断面形状が下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないことの意義については、請求項2に係る発明と同様である。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、取付フレームの各部の断面形状が下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないので、高性能フィルタの水洗時に取付フレームに水が付着しても短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。また、水洗後、作業者が残留水の拭取作業を行うにしても拭取りが容易で、フィルタ交換作業を短時間で完了させることが可能となる。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載の空気浄化装置のフィルタ交換方法において、前記水洗ユニットに、前記高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が水洗ユニットに設けられているので、その使用水が傾斜床を流下して短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。また、水洗後、作業者が残留水の拭取作業を行うにしても拭取りが容易で、フィルタ交換作業を短時間で完了させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気浄化装置及び空気浄化装置のフィルタ交換方法によれば、HEPAフィルタの一次側の水洗ユニット内全てを水洗でき、拭取作業がしやすい装置構造及びフィルタ交換方法を簡易なものとすることができ、かつ、フィルタを湿潤することでフィルタが捕集した有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本形態に係る空気浄化装置を示す。この空気浄化装置1は、製薬工場等において有害粉塵を含む空気を浄化して排出するために、工場等のクリーンルーム2の壁面3に埋込式で設置され、フィルタユニット4と、水洗ユニット5とが上下に積層されて概略構成されている。水洗ユニット5は架台6に載置され、架台6の前側(図1において左側)においてクリーンルーム2の床面7との間をコーキング材8でシールされている。フィルタユニット4は水洗ユニット5の上方に設置され、フィルタユニット4の上部には前方に取付板9が、後方に排気ダクト10がそれぞれ設けられている。取付板9とクリーンルーム2の壁面3との間はコーキング材11でシールされている。
【0020】
水洗ユニット5は、筐体12と、傾斜床13と、プレフィルタ14とを備える。筐体12は直方体状を呈し、その前壁15には開口16が形成され、上部には前後左右の各壁が内側に屈曲してなる平面視矩形状のフランジ部17が形成されている。傾斜床13は筐体12の内部下方において後方から前方に向かうにつれて下降するように設置され、傾斜床13の前部18は開口16の下縁19とほぼ同じ高さになっている。プレフィルタ14は開口16に対応する形状を有し、プレフィルタ14の周囲には金属製の額縁20が設けられている。筐体12の前壁15の前面で開口16の周囲には磁石21が貼着され、プレフィルタ14は額縁20が磁石21に磁着されることにより開口16を覆って吸気口を兼ねるようになっている。
【0021】
フィルタユニット2は、筐体22と、扉23と、取付フレーム24と、HEPAフィルタ25とを備える。筐体22は直方体状を呈し、その前壁26には開口27が形成されている。扉23は、前壁26に固着されたナット28に螺合する六角ボルト29によって、前壁26に着脱可能に締結されている。扉23と前壁26との間にはガスケット30が設けられ、筐体22の内部のクリーンルーム2に対する密封状態が保たれている。筐体22の天壁31には排気口32が形成され、排気口32は排気ダクト10に連通し、排気ダクト10の上部にはダンパ33が設けられている。排気ダクト10にはリーク・差圧測定装置34が設けられ、ダンパ33には風量調整装置35が設けられ、リーク・差圧測定装置34及び風量調整装置35はいずれも取付板9に接続されている。筐体22の下部には前後左右の各壁が屈曲されてなる平面視矩形状のフランジ部36が形成され、このフランジ部36がフランジ部17に当接することにより、フィルタユニット4が水洗ユニット5に載置されて両ユニットの内部が連通している。
【0022】
取付フレーム24は筐体22の内部においてフランジ部36に支持されている。取付フレーム24は断面矩形状の中空部材により形成され、平面視でフランジ部36に対応する(つまり、筐体22の内周にほぼ沿う)矩形状を呈する。
【0023】
HEPAフィルタ25は、その外周がガスケット37を介して取付フレーム24に載置されて取り付けられている。このHEPAフィルタ25の取付けは、取付フレーム24の側に固定されたスタッドボルト38をHEPAフィルタ25に形成された図示を略す挿通孔に対して下方から挿通させた状態で、スタッドボルト38の先端部(HEPAフィルタ25から上方に突出した部分)にワッシャー等からなる環状の押さえ部材39を填めた後にナット40を螺着させて行われる。ナット40としては、通常のナットよりも大口径で工具を使用せずに手で締付け等を行うことができるノブナットを使用することが望ましい。空気浄化装置1では、吸気口(プレフィルタ14)から吸入された空気がHEPAフィルタ25を通過して排気口32、排気ダクト10から排出されるが(したがって、HEPAフィルタ25の上面(空気流の下流側の面)側に設けられているスタッドボルト38、押さえ部材39、ナット40等の金具類は薬剤等で汚染されにくくなっている。)、HEPAフィルタ25は、後述するようにプレフィルタ14を取り外した状態で開口16から水洗ユニット5の内部に放水したときに、その下面(空気流の上流側の面)41が水洗されるように水洗ユニット5の内部に臨んで設置されている。
【0024】
この空気浄化装置1のHEPAフィルタ25(及びプレフィルタ14)の交換方法について説明すると、まず、使用済のプレフィルタ14をホース42からの放水により水洗した(図2(A)、ステップ1(図3において「S.1」と記載。以下同様。))後に水洗ユニット5の前壁15から取り外し(図2(B)、ステップ2)、開口16からホース42を水洗ユニット5の内部に挿入し、傾斜床13、水洗ユニット5の内壁43、取付フレーム24及び使用済のHEPAフィルタ25(の少なくとも下面41)を洗浄して付着した粉塵を洗い流す(図2(C)、ステップ3)。
【0025】
つぎに、六角ボルト29を緩めて扉23を開け (図2(D)、ステップ4)、開口27を通じてナット40を緩めてナット40及び押さえ部材39をスタッドボルト38から外し、HEPAフィルタ25をガスケット37ごと取付フレーム24から取り外して開口27から取り出す(図2(E)、ステップ5)。
【0026】
続いて、新しい(一般的には未使用の)HEPAフィルタ25をガスケット37とともに開口27からフィルタユニット4の内部に入れ、HEPAフィルタ25の図示を略す挿通孔にスタッドボルト38を挿通させて押さえ部材39及びナット40を取り付け(図2(F)、ステップ6)、扉23を閉じるとともに額縁20付きの新しいプレフィルタ14で開口16を塞ぐことにより、フィルタ交換作業が完了する(図2(G)、ステップ7)。
【0027】
本形態に係る空気浄化装置1では、プレフィルタ14を取り外した状態で開口16から水洗ユニット5の内部に放水したときにHEPAフィルタ25の下面41が水洗されるように、HEPAフィルタ25が水洗ユニット5の内部に臨んで設けられているので、HEPAフィルタ25をビニルバッグを用いることなく直接的に交換しようとするときに(空気浄化装置1はそもそもビニルバッグを有しない。)、上述したようにまずプレフィルタ14を取り外し、開口16から水洗ユニット5の内部に放水し、使用済みのHEPAフィルタ25の下面41を水洗して湿潤させた上で、このHEPAフィルタ25を新しいものに交換してプレフィルタ14を取り付けることにすれば、使用済みのHEPAフィルタ25において主に下面41に捕集されている有害粉塵の飛散が湿潤により抑制されることになって、装置構造やフィルタ交換方法を簡易なものとしつつ有害粉塵のフィルタ交換時における飛散を有効に防止することができる。
【0028】
ここでは、特に、取付フレーム24に付着した水を滴下させてその残留を防止するように、取付フレーム24の各部の断面形状が一様に矩形状を呈して下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないので、HEPAフィルタ25の水洗時に取付フレーム24に水が付着しても短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。取付フレーム24が断面矩形状の中空枠体であることは、取付フレームに有害粉塵が溜まりにくいことにも寄与する。
【0029】
また、HEPAフィルタ25の水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床13が水洗ユニット5に設けられているので、その使用水が傾斜床13を流下して短時間で乾燥し、錆の発生等を防止することができる。とりわけ傾斜床13の前部18が開口16の下縁19とほぼ同じ高さになっていることにより、使用水が開口16から円滑に流れ出て水洗ユニット5の内部に溜まらないので、洗浄作業を短縮することができる。
【0030】
このように取付フレーム24の形状や傾斜床13の存在により素早い水切りが可能であるが、たとえ作業者が水洗残留水の拭取作業を行うにしても拭取りが容易で、フィルタ交換作業を短時間で完了させることができる。
【0031】
さらに、プレフィルタ14を取り外す前にそれに水をかけているので、HEPAフィルタ25の交換時にプレフィルタ14に付着した有害物質の再飛散を防止することができ、HEPAフィルタ25を床面に対し水平に配置してナット40にノブナットを採用することにより、HEPAフィルタ25の交換作業を容易なものとすることができる。
【0032】
なお、本発明は以上説明した形態に限られるものではなく、例えば上記形態ではプレフィルタ14を水洗ユニット5の前壁15に取り付けて吸気口と兼用としたが(こうすることで、水洗ユニット5の内部は汚れにくいので毎日掃除する必要がなく、HEPAフィルタ25の交換時に水洗すればよい。)、プレフィルタ14を水洗ユニット5の内部に設けて前壁15には別個独立に吸気口を設けてもかまわない。具体的には、例えば図4に示すように、プレフィルタ14を取付フレーム24の下面に貼着した磁石44に磁着させ、磁石21には吸気口を有する蓋体45を磁着させればよい。このようにプレフィルタ14を水洗ユニット5の上部(フィルタユニット4側)に設けた場合には、蓋体45を外して水洗ユニット5の内部を毎日洗浄したとしても、プレフィルタ14により洗浄水が遮断されてHEPAフィルタ25の日常的な水濡れは回避される。このとき、プレフィルタ14の額縁20には、プレフィルタ14の上面側に透過した水を抜くための水抜き穴を設けておくことが好ましく、この水抜き穴は、例えば、上方に解放し濾材が充填された凹状の水受け部を額縁20の上面側に形成し、その凹状の水受け部の側壁に濾材と外部(プレフィルタ14の上流側等)とを連通するように形成すればよい。これにより、汚染した空気が何らフィルタを経ることなくHEPAフィルタ25に直接流入することを防止することができる。一方、HEPAフィルタ25の交換時には、プレフィルタ14を取り外して水洗することにより(プレフィルタ14は日常的に洗浄していたとしても上記同様取外し前に水洗する方がよい。)、既述の効果が得られる。
【0033】
また、上記形態ではHEPAフィルタ25の固定をスタッドボルトによる締付方式としたが、原子力・RI用のフィルタユニットで使用されている特開平7−136436号公報に記載の締付方法等を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】発明を実施するための最良の形態に係る空気浄化装置を示す説明図
【図2】(A)は図1の空気浄化装置のフィルタ交換時においてプレフィルタを水洗する様子を示す説明図、(B)は水洗したプレフィルタを取り外した様子を示す説明図、(C)は水洗ユニットの開口からその内部に放水してHEPAフィルタの下面を水洗して湿潤させる様子を示す説明図、(D)はフィルタユニットの扉を開けてその開口を開放した様子を示す説明図、(E)は使用済みのHEPAフィルタを取付フレームから取り外してフィルタユニットの開口から取り出す様子を示す説明図、(F)は新しいHEPAフィルタをフィルタユニットの開口からその内部に入れて取付フレームに取り付ける様子を示す説明図、(G)はフィルタユニットの開口を扉で閉塞するとともに水洗ユニットの開口にプレフィルタを取り付けた様子を示す説明図
【図3】図1の空気浄化装置のフィルタ交換方法を示す流れ図
【図4】空気浄化装置の他の例を示す説明図
【符号の説明】
【0035】
1 空気浄化装置
4 フィルタユニット
5 水洗ユニット
13 傾斜床
14 プレフィルタ
16 開口
24 取付フレーム
25 HEPAフィルタ(高性能フィルタ)
32 排気口
41 下面(空気流の上流側の面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気口及び高性能フィルタを有するフィルタユニットと、
前記高性能フィルタを水洗するために前記フィルタユニットの下方に設置されて前記高性能フィルタの水洗用の開口を有するとともに、吸気口及びプレフィルタを有する水洗ユニットとを備え、
前記吸気口から吸入された空気が前記プレフィルタ及び前記高性能フィルタを通過して前記排気口から排出されるように、前記水洗ユニットの内部と前記フィルタユニットの内部とが連通し、
前記プレフィルタを取り外した状態で前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水したときに前記高性能フィルタの空気流の上流側の面が水洗されるように、前記高性能フィルタが前記水洗ユニットの内部に臨んで設けられていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタユニットに、前記高性能フィルタへ流れる空気流量を確保しつつ前記高性能フィルタが載置されて取り付けられる枠状の取付フレームが設けられ、
前記取付フレームの各部の断面形状が、前記取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記水洗ユニットに、前記高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
排気口及び高性能フィルタを有するフィルタユニットと、
前記高性能フィルタを水洗するために前記フィルタユニットの下方に設置されて前記高性能フィルタの水洗用の開口を有するとともに、吸気口及びプレフィルタを有する水洗ユニットとを備え、
前記吸気口から吸入された空気が前記プレフィルタ及び前記高性能フィルタを通過して前記排気口から排出されるように、前記水洗ユニットの内部と前記フィルタユニットの内部とが連通し、
前記プレフィルタを取り外した状態で前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水したときに前記高性能フィルタの空気流の上流側の面が水洗されるように、前記高性能フィルタが前記水洗ユニットの内部に臨んで設けられている空気浄化装置のフィルタ交換方法であって、
前記プレフィルタを取り外すプレフィルタ取外しステップと、
前記開口から前記水洗ユニットの内部に放水して前記高性能フィルタの空気流の上流側の面を水洗する高性能フィルタ水洗ステップと、
前記高性能フィルタ水洗ステップで水洗した高性能フィルタを新しい高性能フィルタに交換する高性能フィルタ交換ステップと、
前記プレフィルタ取外しステップで取り外したプレフィルタ又は新しいプレフィルタを取り付けるプレフィルタ取付けステップとを含むことを特徴とする空気浄化装置のフィルタ交換方法。
【請求項5】
前記フィルタユニットに、前記高性能フィルタへ流れる空気流量を確保しつつ前記高性能フィルタが載置されて取り付けられる枠状の取付フレームが設けられ、
前記取付フレームの各部の断面形状が、前記取付フレームに付着した水を滴下させてその残留を防止するように、下方又は側方に向かって凹となる部分を有しないことを特徴とする請求項4に記載の空気浄化装置のフィルタ交換方法。
【請求項6】
前記水洗ユニットに、前記高性能フィルタの水洗時の使用水を受けて集めるための傾斜床が設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の空気浄化装置のフィルタ交換方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−50831(P2009−50831A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222717(P2007−222717)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】