説明

空気清浄装置

【課題】吸着剤に吸着された有害物質を効果的に分解除去することで当該吸着剤を再生し、継続した空気清浄を実現することができる空気清浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の空気清浄装置1は、空気中の被処理物質を吸着剤2により吸着するものであって、オゾンなどの活性種を含む洗浄液を生成する洗浄液生成手段としての電解装置21を備え、該電解装置21にて生成された洗浄液を吸着剤2に供給し、回収して再び電解槽21に返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の被処理物質を吸着剤により吸着し、清浄された空気を供給する空気清浄装置、特に、当該吸着剤の再生に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中には、インフルエンザウィルスなどの空中浮遊微生物やスギ花粉などのアレルゲンが多数存在する。そのため、空気中の有害物質を除去処理するため空気清浄機が用いられている。一般に空気清浄機は、内部に微孔が形成されるフィルタが内蔵されており、送風機によって、室内の空気を空気清浄機本体内に取り込み、フィルタにて有害物質を除去し、空気を清浄化して、室内に吐出している。
【0003】
フィルタは、効果的に有害物質を除去すべく活性炭などの吸着剤が主に使用される。当該活性炭などの吸着剤は、空気中の臭気成分や浮遊微生物、アレルゲンなどを物理的に吸着し除去処理を行うものであるため、一定期間使用すると吸着剤自体が当該有害物質で飽和され、それ以上装置を運転しても、空気清浄効果が得られなくなるばかりか、有害物質を再放出し、被処理空気を汚染する問題が招来する。
【0004】
そのため、定期的に吸着剤を清掃又は交換しなければならず、当該吸着剤の管理の煩雑化やランニングコストの高騰を招く問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、ミクロポアーをもった吸着樹脂等の脱臭剤の脱臭効果を取り戻す手段として、アルカリ水、酸性水又は水等の洗浄液を脱臭剤に流し込む手段を備えている。これにより、脱臭剤に付着した悪臭成分は洗浄液によって洗うことで、脱臭効果を取り戻し、格別に交換することなく継続した脱臭処理を可能としていた。
【特許文献1】特開昭61−21719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した如き空気清浄装置では、脱臭剤の上方に配置された洗浄液タンクから脱臭剤に洗浄液を流し込み、脱臭ユニット下部に設置された皿により汚れた洗浄液を受け止め、別途廃棄する構成とされていた。
【0007】
そのため、洗浄液の補充や管理、更には汚れた洗浄液の廃棄を別途行う必要があり、係る場合にも、メンテナンスが煩雑となる問題がある。特に、汚れた洗浄液中の物質が分解されることなくそのまま放置されると、異臭発生の原因や、菌の増殖を招く問題があり、衛生状態を維持できないという問題がある。また、汚れた洗浄液をそのまま廃棄すると、環境へ悪影響を及ぼす場合もある。
【0008】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、吸着剤に吸着された有害物質を効果的に分解除去することで当該吸着剤を再生し、継続した空気清浄を実現することができる空気清浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空気清浄装置は、空気中の被処理物質を吸着剤により吸着するものであって、活性種を含む洗浄液を生成する洗浄液生成手段を備え、該洗浄液生成手段にて生成された洗浄液を吸着剤に供給し、回収して再び洗浄液生成手段に返送することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の空気清浄装置は、上記発明において、被処理空気を吸着剤に接触させる送風手段と、洗浄液を吸着剤に供給する洗浄液搬送手段と、洗浄液生成手段、送風手段及び洗浄液搬送手段を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、送風手段を運転し、洗浄液搬送手段を停止して、被処理空気を吸着剤に接触させる空気清浄モードと、送風手段を停止し、洗浄液搬送手段を運転して、洗浄液生成手段にて生成された洗浄液により吸着剤を洗浄する吸着剤洗浄モードを実行することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の空気清浄装置は、上記発明において、制御手段は、吸着剤洗浄モードの終了後、所定の水切り時間を確保し、該水切り時間が経過した後、所定時間送風手段を運転する乾燥モードを実行することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の空気清浄装置は、上記各発明において、活性種は、オゾン、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、促進酸化により発生する活性酸素種、次亜塩素酸、活性水素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の空気清浄装置は、上記各発明において、活性種発生手段は、電解装置、放電装置、光触媒、色素増感のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明の空気清浄装置は、上記請求項1乃至請求項3の何れかの発明において、活性種は、二酸化塩素、一酸化窒素、二酸化窒素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明の空気清浄装置は、上記各発明において、吸着剤は、活性炭素、又は、シリカ、アルミナ、その他の多孔体化合物、もしくは、ゼオライト、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、その他の多孔質鉱物のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の空気清浄装置によれば、空気中の被処理物質を吸着剤により吸着するものであって、活性種を含む洗浄液を生成する洗浄液生成手段を備え、該洗浄液生成手段にて生成された洗浄液を吸着剤に供給し、回収して再び洗浄液生成手段に返送するので、空気中の被処理物質が吸着した吸着剤を、活性種を含む洗浄液によって、効果的に洗浄することができる。特に洗浄液には活性種が含まれているため、係る被処理物質を分解処理することができ、吸着剤を再生することができる。
【0017】
これによって、吸着剤を新しいものと交換することなく、継続して空気の処理に使用することが可能となり、メンテナンス作業性の簡素化、コストの高騰を回避できる。
【0018】
特に、本発明によれば、吸着剤の洗浄に使用された洗浄液は、再び洗浄液生成手段に返送されるため、洗浄液を再度清浄化し、繰り返し使用することが可能となる。そのため、洗浄液の管理を簡素化することができる。また、汚れた洗浄液がドレンパンなどにて長期間貯留されることによる菌の繁殖や悪臭の発生を未然に回避することができ、衛生的に維持することが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、上記発明において、被処理空気を吸着剤に接触させる送風手段と、洗浄液を吸着剤に供給する洗浄液搬送手段と、洗浄液生成手段、送風手段及び洗浄液搬送手段を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、送風手段を運転し、洗浄液搬送手段を停止して、被処理空気を吸着剤に接触させる空気清浄モードと、送風手段を停止し、洗浄液搬送手段を運転して、洗浄液生成手段にて生成された洗浄液により吸着剤を洗浄する吸着剤洗浄モードを実行するので、空気清浄モードにおいて、被処理空気を吸着剤により被処理物質の吸着除去処理を実行することができると共に、吸着剤洗浄モードにおいて、吸着剤に付着した被処理物質を洗浄し、再生することが可能となる。
【0020】
これにより、当該モードを切り替えることによって、経年使用による吸着能力の低下を改善し、当該吸着剤を長期間交換することなく使用することが可能となる。特に、吸着剤洗浄モードにおいて使用される洗浄液は、回収されて洗浄液生成手段に搬送されるため、衛生的な状態で洗浄液を繰り返し使用することが可能となる。従って、洗浄液の廃棄処理を不要とでき、メンテナンス作業性を向上できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、上記発明に加えて、制御手段は、吸着剤洗浄モードの終了後、所定の水切り時間を確保し、該水切り時間が経過した後、所定時間送風手段を運転する乾燥モードを実行することにより、吸着剤洗浄モードにおいて、吸着剤に付着した洗浄液を水切り時間の経過によって、水切りすることができ、その後、乾燥モードが実行されることで、吸着剤を乾燥することができる。従って、吸着剤洗浄モード終了後、吸着剤が洗浄液によって濡れたまま長時間放置されることで、吸着剤に菌が繁殖してしまうなどの不都合を未然に回避し、衛生的に維持することができる。また、水切り時間の経過後、送風機を運転する乾燥モードを実行するため、吸着剤に付着した洗浄液が通風される空気と共に外部に飛び散る不都合を抑制することが可能となる。
【0022】
請求項4の発明によれば、上記各発明において、活性種は、オゾン、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、促進酸化により発生する活性酸素種、次亜塩素酸、活性水素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであるので、吸着剤に付着した被処理物質を効果的に分解除去することが可能となる。
【0023】
請求項5の発明によれば、上記各発明において、活性種発生手段は、電解装置、放電装置、光触媒、色素増感のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであるので、容易にオゾンや過酸化水素等の活性種を生成することが可能となり、吸着剤に付着した被処理物質を効果的に分解除去することが可能となる。
【0024】
請求項6の発明によれば、上記請求項1乃至請求項3の何れかの発明において、活性種は、二酸化塩素、一酸化窒素、二酸化窒素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであるので、吸着剤に付着した被処理物質を効果的に分解除去することが可能となる。
【0025】
請求項7の発明によれば、上記各発明において、吸着剤は、活性炭素、又は、シリカ、アルミナ、その他の多孔体化合物、もしくは、ゼオライト、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、その他の多孔質鉱物のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであるので、効果的に被処理空気に含まれる被処理物質を吸着処理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明の空気清浄装置1の概略構成図を示している。
【0027】
本実施例における空気清浄装置1は、例えば既存の空気清浄機や空気調和機など内部に空気を流通させ、空気中の塵埃などをフィルタにて除去若しくは、空気の除湿、又は、加熱若しくは冷却を行う装置に適用可能とされる装置である。
【0028】
本実施例の空気清浄装置1は、図示しない本体内に図1に示す如く吸着剤2と、外部の空気を本体1内に取り込み、処理後の空気を本体1外に吐出する送風機(送風手段)6とを備えてなる装置である。吸着剤2は、両端に流入出口3、4を備えた容器5内に収容される。なお、本実施例において、吸着剤2は活性炭素であるものとする。吸着剤2は、これに限定されるものではなく、菌やウィルス、カビ等の空中浮遊微生物、花粉等のアレルゲン物質、更には、悪臭成分等の被処理物質を吸着処理可能なもの、例えば、シリカ、アルミナ、その他の多孔体化合物、もしくは、ゼオライト、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、その他の多孔質鉱物のうちのいずれか、もしくは、活性炭素を含むこれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
本実施例において、第1の流入出口3は容器5の上部に設けられており、第1の切替弁(切替手段)7により切替可能に、空気排出部8と、洗浄液供給部9が接続されている。また、第2の流入出口4は容器5の下部に設けられており、第2の切替弁(切替手段)10により切替可能に、空気導入部11と、洗浄液排出部12が接続されている。本実施例では、本体内に位置して空気導入部11の空気上流側に前記送風機6が配設されている。
【0030】
本体内には、上記吸着剤2と共に、吸着剤洗浄装置20が設けられている。この吸着剤洗浄装置20は、洗浄液生成手段としての電解装置21と、洗浄液搬送手段としての循環ポンプ22と、ドレンパン23とを備える。電解装置21の洗浄液流出側には、配管24を介して循環ポンプ22が接続されており、当該循環ポンプ22には、一端が吸着剤2が収容された容器5の第1の流入出口3に接続される洗浄液供給部9が接続されている。そして、容器5の第2の流入出口4に接続される洗浄液排出部12の他端は、本体内に設けられるドレンパン23上方にて開口している。なお、電解装置21の洗浄液流入部21Aは、当該ドレンパン23に貯留される洗浄液内にて開口されている。
【0031】
本実施例において、洗浄液生成手段を構成する電解装置21は、洗浄液(詳細は後述する如くドレンパン23から導入される汚れた洗浄液)を貯留する電解槽25と、当該電解槽25内に浸漬される図示しない複数対の電極とから構成されている。これら電極が通電されると、電解槽25内に流入した洗浄液(設置当初は、例えば、別途ドレンパン23に供給される水道水)が電気分解(電気化学的処理)され、活性種が生成される。ここで、活性種とは、例えば、通常の酸素よりも高い酸化活性を有する酸素分子と、その関連物質を示す活性酸素種であり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、あるいは過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸(例えば、次亜塩素酸)等といった所謂広義の活性酸素及び活性水素を含むものとする。活性酸素には、促進酸化(AOP)により発生する活性酸素種(O3+H22)を含むものとする。
【0032】
電解槽25は、吸着剤2が収容される容器5の近傍に配置され、当初水道水を電気分解して生成された活性種を迅速に容器5の吸着剤2に供給できる構成とされる。
【0033】
前記電極は、アノードとして電解により容易にオゾンを生成可能とする金属材料、例えば、白金とタンタルの焼成電極を用い、カソードとして白金電極を用いる。これらの電極間距離を4mm程度、もしくは、電極間に陽イオン交換膜を設け、これら電極に所定の電流値で、電解処理を行う。なお、用いられる水道水は、例えば約30ppm以上の塩化物イオンが含有されている。
【0034】
これにより、アノードでは、塩化物イオンが電子を放出して塩素を生成する。その後、この塩素は、水に溶解し、次亜塩素酸を生成する。また、電解に用いられる水には、塩化物イオンが存在するため、電位が上昇し、電解によって得られる洗浄液中の水酸化物イオンは酸素又はオゾン等の活性酸素を生成する。
【0035】
なお、本実施例では、洗浄液生成手段として電極を備えた電解装置21を例として説明しているが、これに限定されるものではなく、放電によりオゾンやラジカルを生成する手段や、色素増感により特定の光を照射して例えば一重項酸素を生成する手段や、光触媒活性物質に特定の光、例えば酸化チタンに近紫外線を照射することによって活性種を生成する手段などであってもよい。
【0036】
また、洗浄液に含まれる(生成される)活性種としては、上述した如き活性種に限定されるものではなく、容易に洗浄液を処理することによって二酸化塩素や、一酸化窒素、二酸化窒素などの活性種を生成することができる手段であれば、上記に限定されるものではなく、これら活性種を含む洗浄液を採用してもよい。
【0037】
次に、図2の電気ブロック図を参照して、本実施例の空気清浄装置1の制御装置(制御手段)Cについて説明する。制御装置Cは、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、時限手段としてのタイマ41が内蔵されている。この入力側には、前記本体に設けられるコントロールパネル40が接続されている。この出力側には、前記第1の切替弁7及び第2の切替弁10と、送風機6と、前記吸着剤洗浄装置20を構成する電解装置21と、循環ポンプ22などが接続されている。また、出力側には、報知ランプ26等の報知手段を設け、吸着剤2による吸着能力の低下報知や、現在のモードを報知してもよい。
【0038】
以下、本実施例の空気清浄装置1の動作について説明する。まず、コントロールパネル40の操作に基づき、制御装置Cは、空気清浄モードを実行する。この空気清浄モードでは、制御装置Cは第1の切替弁7及び第2の切替弁10をそれぞれ空気排出部8及び空気導入部11側に切り替え、洗浄液の容器5内への導入を禁止し、被処理空気の導入及び排出のみを許容する。
【0039】
この状態で、送風機6を運転する。これにより、当該空気清浄装置1が設置される室内の空気(被処理空気)は、図示しない本体の空気吸込口を介して空気導入部11より吸着剤2が収容される容器5内に導入される。なお、本体の空気吸込口には、予めプレフィルタが設けられており、比較的大きな埃等が当該プレフィルタによって除去された後、容器5内に導入される。
【0040】
当該容器5内を通過する過程において取り込まれた被処理空気内の菌やウィルス、カビ等の空中浮遊微生物、花粉等のアレルゲン物質、更には、悪臭成分等の被処理物質が吸着剤2に吸着され、清浄な空気となって空気排出部8及び本体に設けられた空気吐出口より室内に吐出される。図1では白抜き矢印により被処理空気の流れを示す。
【0041】
これにより、被処理空気に含まれる菌やウィルス等の有害物質(被処理物質)が除去され、室内の空気の清浄化を行うことができる。特に、吸着剤2は、上述したように活性炭素、又は、シリカ、アルミナ、その他の多孔体化合物、もしくは、ゼオライト、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、その他の多孔質鉱物のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであるので、効果的に被処理空気に含まれる被処理物質を吸着処理することが可能となる。
【0042】
当該空気清浄モードをある程度の時間実行すると、容器5内の吸着剤2が被処理物質によって飽和され、吸着能力が低下する。このまま継続して空気清浄モードを実行しても、被処理空気の清浄化を実現することができないのみならず、吸着剤2に吸着されていた被処理物質の再気散が生じる。
【0043】
そのため、制御装置Cは、例えば、内蔵されたタイマ41によって空気清浄モードの運転積算時間を算出し、予め設定された所定時間に達すると、報知ランプ26によって使用者に吸着剤2の洗浄を促す。なお、当該設定時間は、例えば、吸着剤2が飽和し吸着能力が低下しているものと経験的に得られる所定時間が予め設定される。
【0044】
そして、使用者がコントロールパネル40によって空気清浄モードから吸着剤洗浄モードに変更する旨操作すると、制御装置Cは、現在実行している空気清浄モードから吸着剤洗浄モードに移行する。なお、この時点において、ドレンパン23には、予め水道水又は前回使用された洗浄液が供給されているものとする。また、空気清浄モードから吸着剤洗浄モードへの変更は、これに限定されるものではなく、運転積算時間が所定時間経過した後、制御装置Cにより空気清浄モードから吸着剤洗浄モードに移行してもよい。
【0045】
吸着剤洗浄モードでは、制御装置Cは、送風機6の運転を停止し、第1の切替弁7及び第2の切替弁10をそれぞれ洗浄液供給部9及び洗浄液排出部12側に切り替え、被処理空気の容器5内への導入を禁止し、洗浄液の導入及び排出のみを許容する。
【0046】
そして、循環ポンプ22を運転して、ドレンパン23内の水道水又は汚れた洗浄液を電解槽25内に搬送する。電解槽25内では、上述したように水道水又は洗浄液が電気分解され、活性種が生成される。循環ポンプ22の運転によって、活性種を含む洗浄液は洗浄液供給部9を介して電解槽25から本体5に搬送される。
【0047】
本体5内に供給された洗浄液は、吸着剤2を通過することで吸着剤2に吸着されていた菌やウィルス、カビ等の空中浮遊微生物、花粉等のアレルゲン物質、更には、悪臭成分等の被処理物質を洗い流す。
【0048】
このとき、本発明では、洗浄液には電解槽25にて生成されたオゾンや次亜塩素酸やスーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、あるいは過酸化水素などの活性酸素や活性水素などの活性種が含まれている。そのため、吸着剤2に吸着した被処理物質を高い反応性の活性種によって効果的に分解・除去処理を行うことができる。
【0049】
これにより、空気中の被処理物質が吸着した吸着剤2を、活性種を含む洗浄液によって、効果的に洗浄することができ、また、係る被処理物質は、活性種によって分解・除去されるため、吸着剤2が再生され、吸着能力を回復させることができる。これによって、吸着剤2を新しいものと交換することなく、継続して空気の処理に使用することが可能となり、メンテナンス作業性の簡素化、コストの高騰を回避できる。
【0050】
特に、洗浄液に含まれる活性種は、電解装置21などの洗浄液生成手段により生成された直後に、吸着剤2に供給されるため、それ自体が分解しやすいオゾン等の活性種により、より高い濃度にて吸着剤2に吸着した被処理物質を分解・除去することが可能となる。従って、高い分解・除去能力にて洗浄することが可能となる。

容器5内において、吸着剤2の洗浄、被処理物質の分解・除去に用いられた洗浄液は、自重により流下し、洗浄液排出部12よりドレンパン23内に排出される。ここで、ドレンパン23に貯留された汚れた洗浄液は、循環ポンプ22の運転により再び電解槽25内に返送し、電解処理され残存する被処理物質の分解・除去されると共に、活性種を含む洗浄液として再度容器5内に供給される。図1では破線矢印により洗浄液の流れを示す。
【0051】
このように、吸着剤2の洗浄に用いられる洗浄液は、循環ポンプ22の運転により洗浄液生成手段である電解装置21(電解槽25)と吸着剤2が収容される容器5とを循環することから、洗浄液を再度清浄化し、衛生的な状態で繰り返し使用することが可能となる。そのため、洗浄液の管理の簡素化、更には、汚れた洗浄液の廃棄処理を不要とでき、メンテナンス作業性を向上できる。また、汚れた洗浄液がドレンパン23にて長期間受容されることによる菌の繁殖や悪臭の発生を未然に回避することができ、衛生的に維持することが可能となる。
【0052】
また、本実施例では、コントロールパネル40の操作に基づきモードを切り替えることによって、経年使用による吸着剤2の吸着能力の低下を改善し、当該吸着剤2を長期間交換することなく使用が可能となる。
【0053】
上述した如き吸着剤洗浄モードを所定時間実行した後、制御装置Cは、所定の水切り時間を確保し、当該水切り時間が経過した後、所定時間送風機6を運転する乾燥モードを実行する。即ち、上記吸着剤洗浄モードの終了により、循環ポンプ22の運転を停止しても、容器5内の洗浄液はすぐには洗浄液排出部12から排出されない。そのため、当該循環ポンプ22の停止から所定の水切り時間を確保することにより、容器5内の洗浄液を洗浄液排出部12より排出させる。
【0054】
そして、当該水切り時間が経過した後、制御装置Cは、第1の切替弁7及び第2の切替弁10をそれぞれ空気排出部8及び空気導入部11側に切り替え、洗浄液の容器5内への導入を禁止し、被処理空気の導入及び排出のみを許容する。そして、乾燥モードとして送風機6を運転する。これにより、洗浄液によって洗浄された吸着剤2に通風することで、当該吸着剤2や容器5内を乾燥させることができ、洗浄液によって濡れたまま放置されることによるカビの発生や菌の繁殖等を抑制することが可能となる。従って、吸着剤2の衛生状態を維持することが可能となる。
【0055】
また、本実施例では、吸着剤洗浄モード終了後、所定の水切り時間の経過後に、送風機6を運転する乾燥モードを実行するため、吸着剤2に付着した洗浄液が通風される空気と共に外部に飛び散る不都合を抑制することが可能となる。
【0056】
次に、図3及び図4を参照して本発明の他の実施例としての空気清浄装置30について説明する。図3及び図4はいずれも空気清浄装置30の概略構成図を示している。係る実施例の空気清浄装置30は、上記実施例の空気清浄装置1と同様に図示しない本体内に吸着剤2を収容した容器5と、外部の空気を本体1内に取り込み、処理後の空気を本体1外に吐出する送風機(送風手段)6と、吸着剤洗浄装置31とを備えている。
【0057】
容器5の上部には、空気排出部32が設けられていると共に、容器5下部には、流入出口33が形成され、当該流入出口33には、切替弁(切替手段)34により切替可能に、空気導入部35と、洗浄液給排部36が接続されている。
【0058】
吸着剤洗浄装置31は、上記実施例と同様に構成される洗浄液生成手段としての電解装置21と、洗浄液搬送手段としての循環ポンプ22と、ドレンパン23とを備える。電解装置21の洗浄液流入部21Aは、当該ドレンパン23に貯留される洗浄液内にて開口されていると共に、洗浄液流出側には、配管24を介して循環ポンプ22が接続されている。そして、この循環ポンプ22には、一端が容器5の流入出口33に接続される洗浄液給排部36が接続されている。
【0059】
なお、上記実施例と同様に、コントロールパネル40、切替弁34、送風機6、吸着剤洗浄装置30を構成する電解装置21と、循環ポンプ22、報知ランプ26等の報知手段が接続されている。
【0060】
上記構成により、空気清浄装置30の動作について説明する。まず、コントロールパネル40の操作に基づき、制御装置Cは、空気清浄モードを実行する。この空気清浄モードでは、制御装置Cは切替弁34を空気導入部35側に切り替え、洗浄液の容器5内への導入を禁止し、被処理空気の導入及び排出のみを許容する。
【0061】
この状態で、送風機6を運転する。これにより、当該空気清浄装置1が設置される室内の空気(被処理空気)は、図示しない本体の空気吸込口を介して空気導入部11より吸着剤2が収容される容器5内に導入される。当該容器5内を通過する過程において取り込まれた被処理空気内の菌やウィルス、カビ等の空中浮遊微生物、花粉等のアレルゲン物質、更には、悪臭成分等の被処理物質が吸着剤2に吸着され、清浄な空気となって空気排出部32及び本体に設けられた空気吐出口より室内に吐出される。図3では白抜き矢印により被処理空気の流れを示す。
【0062】
これにより、上記実施例と同様に被処理空気に含まれる菌やウィルス等の有害物質(被処理物質)が除去され、室内の空気の清浄化を行うことができる。
【0063】
上記同様、報知ランプ26によって吸着剤2の洗浄を促す報知がなされた場合、使用者は、コントロールパネル40によって空気清浄モードから吸着剤洗浄モードに変更する旨操作すると、制御装置Cは、現在実行している空気清浄モードから吸着剤洗浄モードに移行する。なお、この時点において、ドレンパン23には、予め水道水又は前回使用された洗浄液が供給されているものとする。
【0064】
吸着剤洗浄モードでは、制御装置Cは、送風機6の運転を停止し、切替弁34を洗浄液供排部36側に切り替え、被処理空気の容器5内への導入を禁止し、洗浄液の導入及び排出のみを許容する。
【0065】
そして、循環ポンプ22を運転して、ドレンパン23内の水道水又は汚れた洗浄液を電解槽25内に搬送する。電解槽25内では、上述したように水道水又は洗浄液が電気分解され、活性種が生成される。循環ポンプ22を所定時間、運転し、活性種を含む洗浄液は洗浄液供排部36を介して電解槽25から本体5に搬送される。なお、制御装置Cは、循環ポンプ22を運転することで、洗浄液を本体5内に所定水位、例えば、吸着剤2が充填されている範囲を浸漬可能とする水位、もしくは、本体5の空気排出部32から洗浄液が溢出しない水位まで満たす。
【0066】
その後、循環ポンプ22を所定時間停止して、本体5内の洗浄液を洗浄液給排部36を介して自重により電解槽25やドレンパン23内に回収する。以後、循環ポンプ22を所定時間運転、停止を繰り返すことで、本体5内に洗浄液を供給する。図3では破線矢印により洗浄液の供給状態の流れ、図4では破線矢印により洗浄液の排水状態の流れを示す。
【0067】
これにより、本体5内に供給された洗浄液は、吸着剤2を通過することで吸着剤2に吸着されていた菌やウィルス、カビ等の空中浮遊微生物、花粉等のアレルゲン物質、更には、悪臭成分等の被処理物質を洗い流す。
【0068】
このとき、本発明では、洗浄液には電解槽25にて生成されたオゾンや次亜塩素酸やスーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、あるいは過酸化水素などの活性酸素や活性水素などの活性種が含まれている。そのため、吸着剤2に吸着した被処理物質を高い反応性の活性種によって効果的に分解・除去処理を行うことができる。
【0069】
これにより、空気中の被処理物質が吸着した吸着剤2を、活性種を含む洗浄液によって、効果的に洗浄することができ、また、係る被処理物質は、活性種によって分解・除去されるため、吸着剤2が再生され、吸着能力を回復させることができる。これによって、吸着剤2を新しいものと交換することなく、継続して空気の処理に使用することが可能となり、メンテナンス作業性の簡素化、コストの高騰を回避できる。
【0070】
また、当該実施例では、循環ポンプ22によって容器5内に洗浄液を供給した後、当該循環ポンプ22を停止することで容器5内の洗浄液を自重により再度洗浄液給排部36を介して電解装置21やドレンパン23に返送する構成としているため、上記実施例の効果に加えて、配管構造を簡素化することができ、当該装置自体の小型化を実現することが可能となる。
【0071】
なお、上記実施例と同様に当該吸着剤洗浄モード終了後は、水切り時間を確保し、乾燥モードを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】空気清浄装置の概略構成図である。
【図2】制御装置の電気ブロック図である。
【図3】他の実施例の空気清浄装置の概略構成図である。
【図4】他の実施例の空気清浄装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0073】
C 制御装置(制御手段)
1、30 空気清浄装置
3、4 流入出口
5 容器
6 送風機(送風手段)
7 第1の切替弁(切替手段)
8、32 空気排出部
9 洗浄液供給部
10 第2の切替弁(切替手段)
11、35 空気導入部
12 洗浄液排出部
20、31 吸着剤洗浄装置
21 電解装置(洗浄液生成手段)
21A 洗浄液流入部
22 循環ポンプ
23 ドレンパン
25 電解槽
26 報知ランプ(報知手段)
33 流入出口
34 切替弁(切替手段)
36 洗浄液給排部
40 コントロールパネル
41 タイマ(時限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の被処理物質を吸着剤により吸着する空気清浄装置において、
活性種を含む洗浄液を生成する洗浄液生成手段を備え、
該洗浄液生成手段にて生成された洗浄液を前記吸着剤に供給し、回収して再び前記洗浄液生成手段に返送することを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記被処理空気を前記吸着剤に接触させる送風手段と、
前記洗浄液を前記吸着剤に供給する洗浄液搬送手段と、
前記洗浄液生成手段、前記送風手段及び前記洗浄液搬送手段を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、前記送風手段を運転し、前記洗浄液搬送手段を停止して、前記被処理空気を前記吸着剤に接触させる空気清浄モードと、
前記送風手段を停止し、前記洗浄液搬送手段を運転して、前記洗浄液生成手段にて生成された洗浄液により前記吸着剤を洗浄する吸着剤洗浄モードを実行することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記吸着剤洗浄モードの終了後、所定の水切り時間を確保し、該水切り時間が経過した後、所定時間前記送風手段を運転する乾燥モードを実行することを特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記活性種は、オゾン、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、促進酸化により発生する活性酸素種、次亜塩素酸、活性水素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記活性種発生手段は、電解装置、放電装置、光触媒、色素増感のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記活性種は、二酸化塩素、一酸化窒素、二酸化窒素のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記吸着剤は、活性炭素、又は、シリカ、アルミナ、その他の多孔体化合物、もしくは、ゼオライト、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、その他の多孔質鉱物のうちのいずれか、もしくは、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−195289(P2009−195289A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37270(P2008−37270)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】