空気清浄装置
【課題】フィルタカセットの交換作業が容易で、且つ、確実に取り付けることができる空気清浄装置を提供する。
【解決手段】光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置10であって、内部に空気を取り込む吸気部21と、外部に空気を送り出すための排気部23とを有するケース本体11と、光触媒を含む層を有し、ケース本体11の内部に配置された光触媒フィルタ12a,12bと、光触媒フィルタ12a,12bに光を照射する光照射部14と、吸気部21から排気部23の間に形成された流路に空気を送風する送風部16とを備え、光触媒フィルタ12a,12bがケース本体11に対して着脱可能なフィルタカセット50に保持され、フィルタカセット50には、装着時にケース本体11に係合する係合部53と、係合部53の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部56と、取り出し時に該フィルタカセット50を装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部54とが形成されている。
【解決手段】光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置10であって、内部に空気を取り込む吸気部21と、外部に空気を送り出すための排気部23とを有するケース本体11と、光触媒を含む層を有し、ケース本体11の内部に配置された光触媒フィルタ12a,12bと、光触媒フィルタ12a,12bに光を照射する光照射部14と、吸気部21から排気部23の間に形成された流路に空気を送風する送風部16とを備え、光触媒フィルタ12a,12bがケース本体11に対して着脱可能なフィルタカセット50に保持され、フィルタカセット50には、装着時にケース本体11に係合する係合部53と、係合部53の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部56と、取り出し時に該フィルタカセット50を装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部54とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭、脱臭、除菌等を目的とした、光触媒を用いた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気の消臭、脱臭、除菌等をする空気清浄装置としては、光触媒を用いて空気中に存在する有機物質の粒子を分解するものがある。このような空気清浄装置は、有機物質の粒子を吸着させるためのフィルタを備えているものがある。従来のフィルタを備えた空気清浄装置としては例えば下記特許文献に示すものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−218883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気清浄装置は、フィルタを交換する際に、装置本体の壁面に設けられた蓋を取り外して、フィルタを取り出して交換する構成であるため、フィルタの交換にかかる作業が煩雑となり、コスト高となるという問題があった。上記特許文献1では、このような問題を解決するため、蓋を取り外さずに、フィルタカセットを交換できる構成である。しかし、フィルタカセットの装着及び引き出しを行う際に、フィルタカセットをスライドさせる向きに規制があるため取り出しにくい点で改良の余地があった。また、フィルタカセットを空気清浄装置に装着した状態で確実に保持されていないと、フィルタカセットががたついてしまう点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、フィルタカセットの交換作業が容易で、且つ、確実に取り付けることができる空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置であって、
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
光触媒を含む層を有し、前記ケース本体の内部に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部とを備え、
前記光触媒フィルタが前記ケース本体に対して着脱可能なフィルタカセットに保持され、前記フィルタカセットには、装着時に前記ケース本体に係合する係合部と、前記係合部の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部と、取り出し時に該フィルタカセットを装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部とが形成されていることを特徴とする空気清浄装置。
(2)前記フィルタカセットに保持され、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む抗体フィルタを備えていることを特徴とする上記(1)に記載の空気清浄装置。
(3)前記フィルタカセットは、装着時に前記ケース本体の側面と同一平面を形成する基板部と、前記基板部に固定された枠状の枠板部とを有し、前記基板部と前記枠板部との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の空気清浄装置。
(4)前記枠板部の少なくとも挿入側端部に、前記フィルタカセットを装着する方向に向かって前記フィルタ保持部の面積が小さくなる孤形状部が設けられていることを特徴とする上記(3)に記載の空気清浄装置。
(5)前記ケース本体には、少なくとも一つは異なるフィルタを保持している複数の前記フィルタカセットを挿入するカセット挿入部が、前記フィルタカセットごとに複数形成され、前記カセット挿入部のそれぞれの近傍に凸状又は凹状の誤挿入防止部が形成され、前記カセット挿入部と対応する前記フィルタカセットを装着した状態で、前記基板部に前記誤挿入防止部と係合するカセット側係合部が形成されていることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の空気清浄装置。
【0007】
本発明にかかる空気清浄装置は、フィルタカセットをケース本体から取り出すには、該フィルタカセットを、第1付勢部の付勢力に逆らいながら移動させて、係合部が解除される向きに動かして係合部を解除させることで、フィルタカセットが第2付勢部の付勢力によってフィルタカセットが装着する際の向きとは反対向きに押し出され、取り出しが可能となる。このため、フィルタカセット自身に使用者が取り出し時に手指で把持するための部位を設ける必要がなく、フィルタカセットを所定の係合部を解除させる向きにスライドさせることで、容易に取り出すことができる。また、フィルタカセットをケース本体に装着する場合には、該ケース本体にフィルタカセットを押し込むことで、第1付勢部の付勢力によって係合部に契合する位置に付勢力がかかるため、フィルタカセットがケース本体の所定の位置に保持されるうえ、ガタつくことやケース本体から不測に抜け出てしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタカセットの交換作業が容易で、且つ、確実に取り付けることができる空気清浄装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる空気清浄装置の一実施形態の構成を示す図である。図2は、図1の空気清浄装置を吸気側からみた図である。図3は、図1の空気清浄装置を排気側からみた図である。図4は、図1の空気清浄装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【0010】
空気清浄装置10は、内部に所定の空間を有する略長方体形状を有するケース本体11を備えている。図2に示すように、ケース本体11の吸気側の側面11aには、複数の吸気口21が形成されており、これら吸気口21がケース本体11の内部に空気を取り入れるための吸気部として機能する。また、図3に示すように、ケース本体11の排気側の側面11bには、複数の排気口23が形成されており、これら排気口23がケース本体11の外部に空気を送り出すための排気部として機能する。
【0011】
ケース本体11の内部には、吸気口21から排気口23に連通する流路が形成されている。空気清浄装置10の駆動時には、吸気口21から取り込まれた空気が図1中の矢印Fの方向に流れ、排気口23から送り出される。以下、本発明にかかる実施形態において、流路に対して吸気側を上流側とし、排気側を下流側とする。
【0012】
ケース本体11の流路には、光触媒フィルタ12が配置されている。本実施形態の光触媒フィルタ12は、略長方対形状を有し、流路の断面積と略等しい面積で且つ互い平行な平面を有し、該平面を流路を流れる空気の流れ(矢印F)に対して垂直になるように配置されている。なお、本実施形態では、上流側に光触媒フィルタ12aを配置し、下流側に光触媒フィルタ12bを配置した。
【0013】
光触媒フィルタ12は、不織布等のように多孔質の繊維層と、不活性チタン層と、不活性チタン層上に活性チタン層を有する。
光触媒としては、主に、酸化チタン(TiO2)を主体として使用するが、木の他に酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(Ce2O3)、酸化テルビウム(Tb2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化エルピウム(Er2O3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、および[Ru(bpy)3]2+やCo錯体等が適用可能である。なお、活性酸化チタンとしては、アナターゼ結晶の微粒子を用いるのが望ましい。
繊維層としては、目付けが100g/m2〜300g/m2のものであって、圧力損失が標準風速2.5m/sでの初期圧力損失が、20〜90Paのものを用いることが好ましい。
【0014】
また、光触媒フィルタ12の下流側には、抗体フィルタ15が設けられている。抗体フィルタ15は、上記光触媒フィルタ12と同一寸法及び形状とすることができる。
【0015】
抗体フィルタ15は、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む。
担体は、例えば、調質性素材で形成することができる。かかる調湿性素材としては、例えば繊維を挙げることができ、織布、不織布などの形態で担体を構成することができる。
【0016】
抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状の分子形態の一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0017】
抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス属、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌を挙げることができる。カビとしては、例えば、酵母、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン(ダニ分解物)、カビ胞子、ネコアレルゲン(ペットのふけ)を挙げることができる。これらのうち細菌及びカビについては、抗体により不活化されないものの、高い吸着効果により静菌するのに対し、ウイルス及びアレルゲンについては、殺菌・不活化される。
【0018】
抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液又は融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、ニワトリに抗原を投与して免疫卵を生ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易に且つ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
【0019】
担体には、抗菌剤を含有するコーティングを行うなどの抗菌加工及び/又は抗カビ剤を含有するコーティングを行うなどの抗カビ加工が施されていることが望ましい。抗体は、基本的にはタンパク質であり、特に鶏卵抗体は食物であり、また、抗体以外のタンパク質を伴う場合もあり、それらは細菌やカビが増殖するための恰好の餌となるが、担体に抗菌加工及び/又は抗カビ加工が施されていれば、かかる細菌やカビの増殖が抑制され、長期間の保管も行うことができる。抗菌/抗カビ剤としては、有機シリコン第4級アンモニウム塩系、有機第4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、ポリフェノール系、キトサン、銀担持コロイダルシリカ、ゼオライト担持銀系などを挙げることができる。そして、その加工法としては、繊維からなる担体に抗菌/抗カビ剤を含浸させる又は塗布する後加工法や、担体を構成する繊維の合成段階で抗菌/抗カビ剤を練り混む原糸原綿改質法などがある。
【0020】
担体に抗体を固定する方法としては、担体をγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングしたのちにアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法を挙げることができる。ここで、上記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C6H5NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0021】
また、担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0022】
さらに、抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きとなり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
【0023】
光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、後述するフィルタカセット50に保持され、該フィルタカセット50をケース本体11に装着することで、所定の位置に配置されている。本実施形態では、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、長尺板形状を有し、流路Fに対して垂直方向に延在し、空気の流れを許容しつつ、肉眼視した状態で遮蔽するように配置されている。
【0024】
ケース本体11の内部の流路には、光触媒フィルタ12に光を照射する光照射部14を備えている。本実施形態では、光照射部14を上流側の光触媒フィルタ12aと下流側の光触媒フィルタ12bとの間に配置している。光照射部14は、光触媒が反応する波長である300nm〜420nm程度の紫外線を発光するものである。本実施形態では、光照射部14の光源として蛍光灯を利用したが、これに限定されず、例えば、LED(Light Emitting Diode)やその他の紫外線照射装置を用いてもよい。本実施形態の光照射部14の近傍には蛍光灯を点灯させるためのグローランプが設けられていてもよい。
【0025】
図1及び図4に示すように、ケース本体11の流路の下流で、排気口23の直前(上流側近傍)には、送風部16が設けられている。本実施形態では、送風部16として軸流ファンを用いている。駆動時には、ファンの回転によって送風部16が流路内部の空気を下流側の排気口23から送り出すことで、流路において、空気を上流側の吸気口21から取り込み、流路に沿って空気を送って下流側の排気口23から送り出すといった図1で矢印Fで示す空気の流れが発生する。送風部16としては、軸流ファンに限らず、シロッコファンなどを用いてもよい。なお、本実施形態では、流路の下流側に送風部16を設ける構成としたが、流路の上流側に送風部16を設ける構成としてもよく、または、流路の上流側及び下流側の両方に送風部16を設ける構成としてもよい。
【0026】
また、空気清浄装置10には、ケース本体11の内部には、光照射部14や送風部16に電気を供給する電源回路32と、モータ制御部33と、光照射部14の電圧を変換可能な変圧器34とが設けられている。ケース本体11の排気側の側面11bには、電源スイッチ24が設けられている。また、ケース本体11の吸気側11aには、送風部16から送風される空気の流量を使用者が調整可能な、ノズル状の風量調節部26とが設けられている。
【0027】
また、図4に示すように、流路の上流側で、かつ、吸気口21の下流側には、光照射部14からの光が吸気口21からケース本体11の外部に漏れ出ることを防止するため、光を遮蔽するケース本体11の内側面に設けられた庇状の遮蔽部18が設けられている。こうすれば、駆動時に紫外線などの人体に有害な光が外部に照射されてしまうことを防止でき、安全性を確保することができる。
【0028】
次に、本実施形態の空気清浄装置10の制御系を説明する。
図5は、本実施形態の空気清浄装置の制御系を示すブロック図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。空気清浄装置10の駆動時には、電源回路32を起動することで、所定の電圧がモーター制御部33、光照射部14と、変圧器34に供給される。変圧器34を所定の周波数(例えば、周波数50Hzと60ヘルツ)に設定することで光照射部14の駆動にかかる電圧を切り替えることができる。モーター制御部33を駆動することで、送風部16が駆動し、ケース本体11の流路に沿って、空気が流動し始める。送風部16の駆動開始と同時、または、その駆動開始の前後で光照射部14を駆動して、光の照射を開始し、光触媒フィルタ12で活性酸素を発生させるとともに、送風部16によって流動する空気によって活性酸素を空気清浄装置10の周囲雰囲気に拡散させる。
【0029】
ここで、空気清浄装置10には、雰囲気中の有機物質の量を検出するセンサ部36と、光照射部14と送風部16との少なくとも一方に信号の入出力が可能な状態で接続された駆動制御部38とが設けられている。センサ部36は、有機物質を検出した場合に、検出信号を駆動制御部38に出力する。駆動制御部38は、有機物質の検出信号に基づいて光照射部14と送風部16との少なくとも一方を制御することができる。光照射部14を制御する場合には、照射する光の量や、光を照射する時間を制御することができる。また、光照射部14の点灯を間欠運転に設定することや、照射を終了するタイマー機能を有していてもよい。送風部16を制御する場合には、送風する空気の量や、送風する時間を制御することができる。また、送風部16の駆動を間欠運転に設定することや、送風を終了するタイマー機能を有していてもよい。
【0030】
センサ部36で検出する臭気としては、例えば、人体からの体臭や口臭、アルコール物質や、愛玩動物の糞尿から生じた有機物質などがある。また、センサ部は、臭気に限定されず、例えば、ダニなどのハウスダスト、塵埃、花粉を検出することもできる。
【0031】
図6は、空気清浄装置の上面視した状態を示す図である。図7は、フィルタカセットの構成を説明する図である。ここで、空気清浄装置の上面とは、長方体形状のケース本体11のうち、対向する広い平面の一方を設置する場所の表面に対向する底面としたとき、他方の面側をいう。なお、空気清浄装置の上面とは、常に空気清浄装置の上方の位置にあることを意味するものでなく、空気の流れる方向Fと光触媒フィルタ12a,12bの長手方向とがともに水平方向に対して平行になるように設置したときの上側の面を意味する。
【0032】
ケース本体11の上面には、フィルタカセット50を挿入するためスリット状のカセット挿入部42,43,44が形成されている。カセット挿入部42,43,44は、互いに平行に配置され、且つ、それぞれが空気の流通する方向(図1の矢印F方向)に対して垂直方向に延在している。本実施形態では、カセット挿入部42には、上流側の光触媒フィルタ12aを保持するフィルタカセット50が挿入され、カセット挿入部43には、下流側の光触媒フィルタ12bを保持するフィルタカセット50が挿入され、カセット挿入部44には、抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50が挿入される。
【0033】
図7に示すように、フィルタカセット50は、長尺形状を有する基板部51と、基板部51に固定された枠状の枠板部52とを備え、基板部51と枠板部52との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画され、該フィルタ保持部に光触媒フィルタ12a,12b又は抗体フィルタ15を保持させることで構成されている。枠板部52は、長尺板体を略コ字形状に折り曲げた形状を有し、両端部が基板部51における、ケース本体11の表面に露呈する側に対して反対側の面(図7にの下側の面)に固定されている。フィルタ保持部は、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15の外周縁形状を略同一であり、例えば、枠板部52を互いに形状の等しい一対の部材として、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15の周縁部を両面から挟み込むことで固定する構成とすることができる。
【0034】
カセット挿入部42,43,44には、フィルタカセット50を装着した状態で枠板部52全体を収容可能な挿入口46が形成され、ケース本体11における挿入口46の周囲近傍には、ケース本体11の表面より段差を介して内側に窪んだ座部48が形成されている。フィルタカセット50を装着した状態で基板部51が座部48に収納され、基板部51の表面がケース本体11の面と同一平面を形成する。
【0035】
座部48には、挿入口46の周囲の段差から挿入口46側へ一部が突出するように形成された凸部42a,43a,44aが形成されている。凸部42a,43a,44aは、それぞれカセット挿入部42,43,44に対応している。凸部42a,43a,44aは、それぞれ対応するカセット挿入部42,43,44に装着されるフィルタカセット50に保持されるフィルタに応じてその位置が配置され、フィルタカセット50をカセット挿入部42,43,44に装着した状態で、基板部51に形成された凹部51aに係合する。本実施形態では、凸部42a,43a,44aがフィルタカセット50の誤挿入防止部として機能し、基板部51の凹部51aがカセット側係合部として機能する。具体的には、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部42,43においては、ともに同じフィルタを保持するフィルタカセット50が装着されるため、誤挿入防止をする必要がなく、凸部42a,43aの、挿入口46に対する相対位置が互いに同じであり、また、カセット挿入部42,43に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置も互いに同じである。一方で、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部42,43と抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部44においては、異なるフィルタを保持するフィルタカセット50が装着されるため、凸部42a,43aの、挿入口46に対する相対位置が、凸部44aの挿入口46に対する相対位置と異なっている。また、図示しないが、カセット挿入部42,43に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置が、カセット挿入部44に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置とは異なっている。こうすることで、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50がカセット挿入部44に装着されることや、 抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50がカセット挿入部42,43に装着されることを防止できる。
【0036】
カセット挿入部42,43,44の数は限定されない。また、フィルタカセット50に保持されるフィルタは、光触媒フィルタ12a,12bや抗体フィルタ15だけに限定されず、他の異なるフィルタを保持させてもよい。本実施形態では、抗体フィルタ15を1つだけ配置する構成としているが、2つ以上配置する構成として、それぞれ、フィルタカセットに保持させる構成としてもよい。
【0037】
上記実施形態において、カセット挿入部42,43,44のそれぞれの凸部42a,43a,44aがフィルタカセット50の誤挿入防止部として機能し、基板部51の凹部51aがカセット側係合部として機能する構成としたが、カセット挿入部42,43,44のそれぞれに誤挿入防止部として機能する凹部を形成し、装着時に凹部と係合するように、基板部51にカセット側係合部として機能する凸部を形成してもよい。
【0038】
フィルタカセット50の枠板部52には、装着時にケース本体11に係合する係合部として機能する突起部53が形成されている。また、枠板部52において突起部53が形成されていない水平方向(図7の左右方向)反対側には板バネなどの付勢部材56と、枠板部52の装着方向の先端側の端部に板バネなどの付勢部材54とが設けられている。
【0039】
図8は、フィルタカセットをケース本体に装着するときの状態及び取り出すときの状態を示す図である。
図8(a)に示すように、フィルタカセット50をケース本体11に装着している状態で、枠板部52に設けられた突起部53が、挿入口46の内側に面するケース本体11の側面61に形成された溝部61aに係合する。このとき、付勢部材56がケース本体11の側面61に対して反対側(図8において左側)の側面63に当接することで、フィルタカセット50を、突起部53と溝部61aとの係合が解除される向きとは反対向きに付勢力によって押し込んでいる。このため、フィルタカセット50の突起部53と、ケース本体11の溝部61aとの係合が維持され、フィルタカセット50がケース本体11から抜け出てしまうことがない。また、フィルタカセット50をケース本体11に装着している状態で、枠板部52の付勢部材54が、ケース本体11の底面62に当接することで、フィルタカセット50を装着する方向とは反対向きに付勢しているが、突起部53と溝部61aとの係合により、フィルタカセット50の位置は保持されている。
【0040】
フィルタカセット50をケース本体11から取り出す場合には、使用者が手指などによって基板部51を、突起部53と溝部61aとの係合が外れる方向、すなわち、付勢部材56と側面63とが当接している側へスライド移動させる。すると、突起部53が溝部61aから外れて、係合が解除される。図8(c)に示すように、突起部53が溝部61aから外れることで、枠板部52の装着方向の先端側に形成された付勢部材54の付勢力によってフィルタカセット50が挿入口46から上方(図8の上側)に持ち上げられる。こうすれば、使用者は、フィルタカセット50の基板部51を把持して引き出すことで、ケース本体11からフィルタカセット50を取り出すことができる。本実施形態において、付勢部材56が第1付勢部として機能し、付勢部材54が第2付勢部として機能する。
【0041】
図9は、フィルタカセットをケース本体に装着する動作及び取り出す動作を示す図である。図9に示すように、枠板部52の少なくとも挿入側端部に、フィルタカセットを装着する方向に向かってフィルタ保持部の面積(図9において、保持されているフィルタ12a,12b,15の面積に等しい)が小さくなる孤形状部55が設けられている。こうすれば、フィルタカセット50をケース本体11の挿入口46に挿入する動作や、挿入口46からフィルタカセット50を取り出す動作を行うとき、枠板部52の装着方向側の先端部が、挿入口46の内側の側面61に干渉することを防止でき、フィルタカセット50の装着や取り出しが行いづらくなることを防止することができる。
【0042】
本発明にかかる空気清浄装置10によれば、フィルタカセット50をケース本体11から取り出すには、該フィルタカセット50を、付勢部材56の付勢力に逆らいながら移動させて、突起部53が解除される向きに動かして突起部53を解除させることで、フィルタカセットが付勢部材54の付勢力によってフィルタカセット50が装着する際の向きとは反対向きに押し出され、取り出しが可能となる。このため、フィルタカセット50自身に使用者が取り出し時に手指で把持するための部位を設ける必要がなく、フィルタカセット50を所定の突起部53を解除させる向きにスライドさせることで、容易に取り出すことができる。また、フィルタカセット50をケース本体11に装着する場合には、該ケース本体11にフィルタカセット50を押し込むことで、付勢部材56の付勢力によって突起部53に契合する位置に付勢力がかかるため、フィルタカセット50がケース本体11の所定の位置に保持されるうえ、ガタつくことやケース本体11から不測に抜け出てしまうことを防止できる。
【0043】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
例えば、排気部として機能する排気口23の形状や位置を適宜変形することができる。
図10は、排気口の形状の変形例を示す断面図である。図10は、ケース本体11を流路の方向に対して平行な面を断面視した状態を示している。図10に示すように、排気口23を、ケース本体11を設置する設置面に対して平行な方向(水平方向)に対して上方に傾斜させて開口させてもよい。排気口23を傾斜させる角度Iは、35°〜55°の範囲とすることが好ましく、40°〜50°とすることがより好ましい。
【0044】
図11は、図10に示す排気口を備えた空気清浄装置を室内に配置した例を示す図である。図11に示すように、室内の壁面近傍に空気清浄装置10を設置する際に、室内のレイアウトに応じては排気側の側面11bと壁面とが接近することが避けられない場合がある。このとき、図10に示すように、排気口23が設置面に対して平行な方向に対して上方に傾斜させて開口されている構成とすれば、排気口23から排気された清浄な空気が壁面に沿って室内全体に循環しやすくなる。排気口23が設置面に対して平行な方向に開口している場合には、図11に示す配置では、排気された清浄な空気が壁面に略垂直に吹き付けられることとなり、室内全体に循環しづらい。また、排気口23の傾斜の角度Iが35°より小さいと、排気された空気が、空気清浄装置10の近傍の壁面などによって上方へ向かう気流と下方へ向かう気流と分散されていしまうため、空気清浄の効率が低下する。排気口23の傾斜の角度Iが55°より大きいと圧力損失が大きくなり、空気の処理量が低下し、空気清浄の効率が低下する。
【0045】
排気口23は、例えば、排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としてもよい。こうすれば、室内レイアウトに応じて、排気口23が形成荒れた部材の向きを調整することができる。図12(a)は、空気清浄装置を縦置きした状態を示す図である。この場合、図中A−A線断面視した排気側の側面11bに図10に示す向きで排気口23を傾斜させることで、排気された空気を室内に効率良く循環させることができる。図12(b)は、空気清浄装置を横置きした状態を示す図である。この場合、図中B−B線断面視した排気側の側面11bに図10に示す向きで排気口23を傾斜させることで、排気された空気を室内に効率良く循環させることができる。排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としては、例えば、排気側の側面11bを正面視した状態で正方形状とすることで、縦置き及び横置きに応じて時計回りに90度回転させることで、排気口23の向きを変えることができる。また、排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としては、排気側の側面11bを正面視した状態で正円形とすることで、その周方向に回転させることで排気口23の向きを適宜調整することができる。
【0046】
本発明にかかる空気清浄装置は、病院、学校、幼稚園、公共施設、待合室、飛行機、電車などの室内に設置することができる。例えば、病院の床頭台に設置することができる。また、空調システムに取り付けて使用することも可能である。
また、空気清浄機は、有機物質の消臭などの機能とともに、マイナスイオンや除菌イオン、オゾンを発生、供給する機能を兼ね備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる空気清浄装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1の空気清浄装置を吸気側からみた図である。
【図3】図1の空気清浄装置を排気側からみた図である。
【図4】図1の空気清浄装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【図5】本実施形態の空気清浄装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】空気清浄装置の上面視した状態を示す図である。
【図7】フィルタカセットの構成を説明する図である。
【図8】フィルタカセットをケース本体に装着するときの及び取り出すときの状態を示す図である。
【図9】フィルタカセットをケース本体に装着する動作及び取り出す動作を示す図である。
【図10】排気口の形状の変形例を示す断面図である。
【図11】図10に示す排気口を備えた空気清浄装置を室内に配置した例を示す図である。
【図12】(a)は、空気清浄装置を縦置きした状態を示す図であり、(b)は、空気清浄装置を横置きした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 空気清浄装置
11 ケース本体
12(12a,12b) 光触媒フィルタ
14 光照射部
15 抗体フィルタ
16 送風部
50 フィルタカセット
53 突起部(係合部)
54 付勢部材(第2付勢部)
56 付勢部材(第1付勢部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭、脱臭、除菌等を目的とした、光触媒を用いた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気の消臭、脱臭、除菌等をする空気清浄装置としては、光触媒を用いて空気中に存在する有機物質の粒子を分解するものがある。このような空気清浄装置は、有機物質の粒子を吸着させるためのフィルタを備えているものがある。従来のフィルタを備えた空気清浄装置としては例えば下記特許文献に示すものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−218883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気清浄装置は、フィルタを交換する際に、装置本体の壁面に設けられた蓋を取り外して、フィルタを取り出して交換する構成であるため、フィルタの交換にかかる作業が煩雑となり、コスト高となるという問題があった。上記特許文献1では、このような問題を解決するため、蓋を取り外さずに、フィルタカセットを交換できる構成である。しかし、フィルタカセットの装着及び引き出しを行う際に、フィルタカセットをスライドさせる向きに規制があるため取り出しにくい点で改良の余地があった。また、フィルタカセットを空気清浄装置に装着した状態で確実に保持されていないと、フィルタカセットががたついてしまう点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、フィルタカセットの交換作業が容易で、且つ、確実に取り付けることができる空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置であって、
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
光触媒を含む層を有し、前記ケース本体の内部に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部とを備え、
前記光触媒フィルタが前記ケース本体に対して着脱可能なフィルタカセットに保持され、前記フィルタカセットには、装着時に前記ケース本体に係合する係合部と、前記係合部の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部と、取り出し時に該フィルタカセットを装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部とが形成されていることを特徴とする空気清浄装置。
(2)前記フィルタカセットに保持され、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む抗体フィルタを備えていることを特徴とする上記(1)に記載の空気清浄装置。
(3)前記フィルタカセットは、装着時に前記ケース本体の側面と同一平面を形成する基板部と、前記基板部に固定された枠状の枠板部とを有し、前記基板部と前記枠板部との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の空気清浄装置。
(4)前記枠板部の少なくとも挿入側端部に、前記フィルタカセットを装着する方向に向かって前記フィルタ保持部の面積が小さくなる孤形状部が設けられていることを特徴とする上記(3)に記載の空気清浄装置。
(5)前記ケース本体には、少なくとも一つは異なるフィルタを保持している複数の前記フィルタカセットを挿入するカセット挿入部が、前記フィルタカセットごとに複数形成され、前記カセット挿入部のそれぞれの近傍に凸状又は凹状の誤挿入防止部が形成され、前記カセット挿入部と対応する前記フィルタカセットを装着した状態で、前記基板部に前記誤挿入防止部と係合するカセット側係合部が形成されていることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の空気清浄装置。
【0007】
本発明にかかる空気清浄装置は、フィルタカセットをケース本体から取り出すには、該フィルタカセットを、第1付勢部の付勢力に逆らいながら移動させて、係合部が解除される向きに動かして係合部を解除させることで、フィルタカセットが第2付勢部の付勢力によってフィルタカセットが装着する際の向きとは反対向きに押し出され、取り出しが可能となる。このため、フィルタカセット自身に使用者が取り出し時に手指で把持するための部位を設ける必要がなく、フィルタカセットを所定の係合部を解除させる向きにスライドさせることで、容易に取り出すことができる。また、フィルタカセットをケース本体に装着する場合には、該ケース本体にフィルタカセットを押し込むことで、第1付勢部の付勢力によって係合部に契合する位置に付勢力がかかるため、フィルタカセットがケース本体の所定の位置に保持されるうえ、ガタつくことやケース本体から不測に抜け出てしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタカセットの交換作業が容易で、且つ、確実に取り付けることができる空気清浄装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる空気清浄装置の一実施形態の構成を示す図である。図2は、図1の空気清浄装置を吸気側からみた図である。図3は、図1の空気清浄装置を排気側からみた図である。図4は、図1の空気清浄装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【0010】
空気清浄装置10は、内部に所定の空間を有する略長方体形状を有するケース本体11を備えている。図2に示すように、ケース本体11の吸気側の側面11aには、複数の吸気口21が形成されており、これら吸気口21がケース本体11の内部に空気を取り入れるための吸気部として機能する。また、図3に示すように、ケース本体11の排気側の側面11bには、複数の排気口23が形成されており、これら排気口23がケース本体11の外部に空気を送り出すための排気部として機能する。
【0011】
ケース本体11の内部には、吸気口21から排気口23に連通する流路が形成されている。空気清浄装置10の駆動時には、吸気口21から取り込まれた空気が図1中の矢印Fの方向に流れ、排気口23から送り出される。以下、本発明にかかる実施形態において、流路に対して吸気側を上流側とし、排気側を下流側とする。
【0012】
ケース本体11の流路には、光触媒フィルタ12が配置されている。本実施形態の光触媒フィルタ12は、略長方対形状を有し、流路の断面積と略等しい面積で且つ互い平行な平面を有し、該平面を流路を流れる空気の流れ(矢印F)に対して垂直になるように配置されている。なお、本実施形態では、上流側に光触媒フィルタ12aを配置し、下流側に光触媒フィルタ12bを配置した。
【0013】
光触媒フィルタ12は、不織布等のように多孔質の繊維層と、不活性チタン層と、不活性チタン層上に活性チタン層を有する。
光触媒としては、主に、酸化チタン(TiO2)を主体として使用するが、木の他に酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(Ce2O3)、酸化テルビウム(Tb2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化エルピウム(Er2O3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、および[Ru(bpy)3]2+やCo錯体等が適用可能である。なお、活性酸化チタンとしては、アナターゼ結晶の微粒子を用いるのが望ましい。
繊維層としては、目付けが100g/m2〜300g/m2のものであって、圧力損失が標準風速2.5m/sでの初期圧力損失が、20〜90Paのものを用いることが好ましい。
【0014】
また、光触媒フィルタ12の下流側には、抗体フィルタ15が設けられている。抗体フィルタ15は、上記光触媒フィルタ12と同一寸法及び形状とすることができる。
【0015】
抗体フィルタ15は、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む。
担体は、例えば、調質性素材で形成することができる。かかる調湿性素材としては、例えば繊維を挙げることができ、織布、不織布などの形態で担体を構成することができる。
【0016】
抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状の分子形態の一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0017】
抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス属、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌を挙げることができる。カビとしては、例えば、酵母、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン(ダニ分解物)、カビ胞子、ネコアレルゲン(ペットのふけ)を挙げることができる。これらのうち細菌及びカビについては、抗体により不活化されないものの、高い吸着効果により静菌するのに対し、ウイルス及びアレルゲンについては、殺菌・不活化される。
【0018】
抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液又は融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、ニワトリに抗原を投与して免疫卵を生ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易に且つ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
【0019】
担体には、抗菌剤を含有するコーティングを行うなどの抗菌加工及び/又は抗カビ剤を含有するコーティングを行うなどの抗カビ加工が施されていることが望ましい。抗体は、基本的にはタンパク質であり、特に鶏卵抗体は食物であり、また、抗体以外のタンパク質を伴う場合もあり、それらは細菌やカビが増殖するための恰好の餌となるが、担体に抗菌加工及び/又は抗カビ加工が施されていれば、かかる細菌やカビの増殖が抑制され、長期間の保管も行うことができる。抗菌/抗カビ剤としては、有機シリコン第4級アンモニウム塩系、有機第4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、ポリフェノール系、キトサン、銀担持コロイダルシリカ、ゼオライト担持銀系などを挙げることができる。そして、その加工法としては、繊維からなる担体に抗菌/抗カビ剤を含浸させる又は塗布する後加工法や、担体を構成する繊維の合成段階で抗菌/抗カビ剤を練り混む原糸原綿改質法などがある。
【0020】
担体に抗体を固定する方法としては、担体をγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングしたのちにアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法を挙げることができる。ここで、上記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C6H5NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0021】
また、担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0022】
さらに、抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きとなり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
【0023】
光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、後述するフィルタカセット50に保持され、該フィルタカセット50をケース本体11に装着することで、所定の位置に配置されている。本実施形態では、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、長尺板形状を有し、流路Fに対して垂直方向に延在し、空気の流れを許容しつつ、肉眼視した状態で遮蔽するように配置されている。
【0024】
ケース本体11の内部の流路には、光触媒フィルタ12に光を照射する光照射部14を備えている。本実施形態では、光照射部14を上流側の光触媒フィルタ12aと下流側の光触媒フィルタ12bとの間に配置している。光照射部14は、光触媒が反応する波長である300nm〜420nm程度の紫外線を発光するものである。本実施形態では、光照射部14の光源として蛍光灯を利用したが、これに限定されず、例えば、LED(Light Emitting Diode)やその他の紫外線照射装置を用いてもよい。本実施形態の光照射部14の近傍には蛍光灯を点灯させるためのグローランプが設けられていてもよい。
【0025】
図1及び図4に示すように、ケース本体11の流路の下流で、排気口23の直前(上流側近傍)には、送風部16が設けられている。本実施形態では、送風部16として軸流ファンを用いている。駆動時には、ファンの回転によって送風部16が流路内部の空気を下流側の排気口23から送り出すことで、流路において、空気を上流側の吸気口21から取り込み、流路に沿って空気を送って下流側の排気口23から送り出すといった図1で矢印Fで示す空気の流れが発生する。送風部16としては、軸流ファンに限らず、シロッコファンなどを用いてもよい。なお、本実施形態では、流路の下流側に送風部16を設ける構成としたが、流路の上流側に送風部16を設ける構成としてもよく、または、流路の上流側及び下流側の両方に送風部16を設ける構成としてもよい。
【0026】
また、空気清浄装置10には、ケース本体11の内部には、光照射部14や送風部16に電気を供給する電源回路32と、モータ制御部33と、光照射部14の電圧を変換可能な変圧器34とが設けられている。ケース本体11の排気側の側面11bには、電源スイッチ24が設けられている。また、ケース本体11の吸気側11aには、送風部16から送風される空気の流量を使用者が調整可能な、ノズル状の風量調節部26とが設けられている。
【0027】
また、図4に示すように、流路の上流側で、かつ、吸気口21の下流側には、光照射部14からの光が吸気口21からケース本体11の外部に漏れ出ることを防止するため、光を遮蔽するケース本体11の内側面に設けられた庇状の遮蔽部18が設けられている。こうすれば、駆動時に紫外線などの人体に有害な光が外部に照射されてしまうことを防止でき、安全性を確保することができる。
【0028】
次に、本実施形態の空気清浄装置10の制御系を説明する。
図5は、本実施形態の空気清浄装置の制御系を示すブロック図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。空気清浄装置10の駆動時には、電源回路32を起動することで、所定の電圧がモーター制御部33、光照射部14と、変圧器34に供給される。変圧器34を所定の周波数(例えば、周波数50Hzと60ヘルツ)に設定することで光照射部14の駆動にかかる電圧を切り替えることができる。モーター制御部33を駆動することで、送風部16が駆動し、ケース本体11の流路に沿って、空気が流動し始める。送風部16の駆動開始と同時、または、その駆動開始の前後で光照射部14を駆動して、光の照射を開始し、光触媒フィルタ12で活性酸素を発生させるとともに、送風部16によって流動する空気によって活性酸素を空気清浄装置10の周囲雰囲気に拡散させる。
【0029】
ここで、空気清浄装置10には、雰囲気中の有機物質の量を検出するセンサ部36と、光照射部14と送風部16との少なくとも一方に信号の入出力が可能な状態で接続された駆動制御部38とが設けられている。センサ部36は、有機物質を検出した場合に、検出信号を駆動制御部38に出力する。駆動制御部38は、有機物質の検出信号に基づいて光照射部14と送風部16との少なくとも一方を制御することができる。光照射部14を制御する場合には、照射する光の量や、光を照射する時間を制御することができる。また、光照射部14の点灯を間欠運転に設定することや、照射を終了するタイマー機能を有していてもよい。送風部16を制御する場合には、送風する空気の量や、送風する時間を制御することができる。また、送風部16の駆動を間欠運転に設定することや、送風を終了するタイマー機能を有していてもよい。
【0030】
センサ部36で検出する臭気としては、例えば、人体からの体臭や口臭、アルコール物質や、愛玩動物の糞尿から生じた有機物質などがある。また、センサ部は、臭気に限定されず、例えば、ダニなどのハウスダスト、塵埃、花粉を検出することもできる。
【0031】
図6は、空気清浄装置の上面視した状態を示す図である。図7は、フィルタカセットの構成を説明する図である。ここで、空気清浄装置の上面とは、長方体形状のケース本体11のうち、対向する広い平面の一方を設置する場所の表面に対向する底面としたとき、他方の面側をいう。なお、空気清浄装置の上面とは、常に空気清浄装置の上方の位置にあることを意味するものでなく、空気の流れる方向Fと光触媒フィルタ12a,12bの長手方向とがともに水平方向に対して平行になるように設置したときの上側の面を意味する。
【0032】
ケース本体11の上面には、フィルタカセット50を挿入するためスリット状のカセット挿入部42,43,44が形成されている。カセット挿入部42,43,44は、互いに平行に配置され、且つ、それぞれが空気の流通する方向(図1の矢印F方向)に対して垂直方向に延在している。本実施形態では、カセット挿入部42には、上流側の光触媒フィルタ12aを保持するフィルタカセット50が挿入され、カセット挿入部43には、下流側の光触媒フィルタ12bを保持するフィルタカセット50が挿入され、カセット挿入部44には、抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50が挿入される。
【0033】
図7に示すように、フィルタカセット50は、長尺形状を有する基板部51と、基板部51に固定された枠状の枠板部52とを備え、基板部51と枠板部52との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画され、該フィルタ保持部に光触媒フィルタ12a,12b又は抗体フィルタ15を保持させることで構成されている。枠板部52は、長尺板体を略コ字形状に折り曲げた形状を有し、両端部が基板部51における、ケース本体11の表面に露呈する側に対して反対側の面(図7にの下側の面)に固定されている。フィルタ保持部は、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15の外周縁形状を略同一であり、例えば、枠板部52を互いに形状の等しい一対の部材として、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15の周縁部を両面から挟み込むことで固定する構成とすることができる。
【0034】
カセット挿入部42,43,44には、フィルタカセット50を装着した状態で枠板部52全体を収容可能な挿入口46が形成され、ケース本体11における挿入口46の周囲近傍には、ケース本体11の表面より段差を介して内側に窪んだ座部48が形成されている。フィルタカセット50を装着した状態で基板部51が座部48に収納され、基板部51の表面がケース本体11の面と同一平面を形成する。
【0035】
座部48には、挿入口46の周囲の段差から挿入口46側へ一部が突出するように形成された凸部42a,43a,44aが形成されている。凸部42a,43a,44aは、それぞれカセット挿入部42,43,44に対応している。凸部42a,43a,44aは、それぞれ対応するカセット挿入部42,43,44に装着されるフィルタカセット50に保持されるフィルタに応じてその位置が配置され、フィルタカセット50をカセット挿入部42,43,44に装着した状態で、基板部51に形成された凹部51aに係合する。本実施形態では、凸部42a,43a,44aがフィルタカセット50の誤挿入防止部として機能し、基板部51の凹部51aがカセット側係合部として機能する。具体的には、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部42,43においては、ともに同じフィルタを保持するフィルタカセット50が装着されるため、誤挿入防止をする必要がなく、凸部42a,43aの、挿入口46に対する相対位置が互いに同じであり、また、カセット挿入部42,43に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置も互いに同じである。一方で、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部42,43と抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50が装着されるカセット挿入部44においては、異なるフィルタを保持するフィルタカセット50が装着されるため、凸部42a,43aの、挿入口46に対する相対位置が、凸部44aの挿入口46に対する相対位置と異なっている。また、図示しないが、カセット挿入部42,43に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置が、カセット挿入部44に挿入される基板部51の凹部51aの相対位置とは異なっている。こうすることで、光触媒フィルタ12a,12bを保持するフィルタカセット50がカセット挿入部44に装着されることや、 抗体フィルタ15を保持するフィルタカセット50がカセット挿入部42,43に装着されることを防止できる。
【0036】
カセット挿入部42,43,44の数は限定されない。また、フィルタカセット50に保持されるフィルタは、光触媒フィルタ12a,12bや抗体フィルタ15だけに限定されず、他の異なるフィルタを保持させてもよい。本実施形態では、抗体フィルタ15を1つだけ配置する構成としているが、2つ以上配置する構成として、それぞれ、フィルタカセットに保持させる構成としてもよい。
【0037】
上記実施形態において、カセット挿入部42,43,44のそれぞれの凸部42a,43a,44aがフィルタカセット50の誤挿入防止部として機能し、基板部51の凹部51aがカセット側係合部として機能する構成としたが、カセット挿入部42,43,44のそれぞれに誤挿入防止部として機能する凹部を形成し、装着時に凹部と係合するように、基板部51にカセット側係合部として機能する凸部を形成してもよい。
【0038】
フィルタカセット50の枠板部52には、装着時にケース本体11に係合する係合部として機能する突起部53が形成されている。また、枠板部52において突起部53が形成されていない水平方向(図7の左右方向)反対側には板バネなどの付勢部材56と、枠板部52の装着方向の先端側の端部に板バネなどの付勢部材54とが設けられている。
【0039】
図8は、フィルタカセットをケース本体に装着するときの状態及び取り出すときの状態を示す図である。
図8(a)に示すように、フィルタカセット50をケース本体11に装着している状態で、枠板部52に設けられた突起部53が、挿入口46の内側に面するケース本体11の側面61に形成された溝部61aに係合する。このとき、付勢部材56がケース本体11の側面61に対して反対側(図8において左側)の側面63に当接することで、フィルタカセット50を、突起部53と溝部61aとの係合が解除される向きとは反対向きに付勢力によって押し込んでいる。このため、フィルタカセット50の突起部53と、ケース本体11の溝部61aとの係合が維持され、フィルタカセット50がケース本体11から抜け出てしまうことがない。また、フィルタカセット50をケース本体11に装着している状態で、枠板部52の付勢部材54が、ケース本体11の底面62に当接することで、フィルタカセット50を装着する方向とは反対向きに付勢しているが、突起部53と溝部61aとの係合により、フィルタカセット50の位置は保持されている。
【0040】
フィルタカセット50をケース本体11から取り出す場合には、使用者が手指などによって基板部51を、突起部53と溝部61aとの係合が外れる方向、すなわち、付勢部材56と側面63とが当接している側へスライド移動させる。すると、突起部53が溝部61aから外れて、係合が解除される。図8(c)に示すように、突起部53が溝部61aから外れることで、枠板部52の装着方向の先端側に形成された付勢部材54の付勢力によってフィルタカセット50が挿入口46から上方(図8の上側)に持ち上げられる。こうすれば、使用者は、フィルタカセット50の基板部51を把持して引き出すことで、ケース本体11からフィルタカセット50を取り出すことができる。本実施形態において、付勢部材56が第1付勢部として機能し、付勢部材54が第2付勢部として機能する。
【0041】
図9は、フィルタカセットをケース本体に装着する動作及び取り出す動作を示す図である。図9に示すように、枠板部52の少なくとも挿入側端部に、フィルタカセットを装着する方向に向かってフィルタ保持部の面積(図9において、保持されているフィルタ12a,12b,15の面積に等しい)が小さくなる孤形状部55が設けられている。こうすれば、フィルタカセット50をケース本体11の挿入口46に挿入する動作や、挿入口46からフィルタカセット50を取り出す動作を行うとき、枠板部52の装着方向側の先端部が、挿入口46の内側の側面61に干渉することを防止でき、フィルタカセット50の装着や取り出しが行いづらくなることを防止することができる。
【0042】
本発明にかかる空気清浄装置10によれば、フィルタカセット50をケース本体11から取り出すには、該フィルタカセット50を、付勢部材56の付勢力に逆らいながら移動させて、突起部53が解除される向きに動かして突起部53を解除させることで、フィルタカセットが付勢部材54の付勢力によってフィルタカセット50が装着する際の向きとは反対向きに押し出され、取り出しが可能となる。このため、フィルタカセット50自身に使用者が取り出し時に手指で把持するための部位を設ける必要がなく、フィルタカセット50を所定の突起部53を解除させる向きにスライドさせることで、容易に取り出すことができる。また、フィルタカセット50をケース本体11に装着する場合には、該ケース本体11にフィルタカセット50を押し込むことで、付勢部材56の付勢力によって突起部53に契合する位置に付勢力がかかるため、フィルタカセット50がケース本体11の所定の位置に保持されるうえ、ガタつくことやケース本体11から不測に抜け出てしまうことを防止できる。
【0043】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
例えば、排気部として機能する排気口23の形状や位置を適宜変形することができる。
図10は、排気口の形状の変形例を示す断面図である。図10は、ケース本体11を流路の方向に対して平行な面を断面視した状態を示している。図10に示すように、排気口23を、ケース本体11を設置する設置面に対して平行な方向(水平方向)に対して上方に傾斜させて開口させてもよい。排気口23を傾斜させる角度Iは、35°〜55°の範囲とすることが好ましく、40°〜50°とすることがより好ましい。
【0044】
図11は、図10に示す排気口を備えた空気清浄装置を室内に配置した例を示す図である。図11に示すように、室内の壁面近傍に空気清浄装置10を設置する際に、室内のレイアウトに応じては排気側の側面11bと壁面とが接近することが避けられない場合がある。このとき、図10に示すように、排気口23が設置面に対して平行な方向に対して上方に傾斜させて開口されている構成とすれば、排気口23から排気された清浄な空気が壁面に沿って室内全体に循環しやすくなる。排気口23が設置面に対して平行な方向に開口している場合には、図11に示す配置では、排気された清浄な空気が壁面に略垂直に吹き付けられることとなり、室内全体に循環しづらい。また、排気口23の傾斜の角度Iが35°より小さいと、排気された空気が、空気清浄装置10の近傍の壁面などによって上方へ向かう気流と下方へ向かう気流と分散されていしまうため、空気清浄の効率が低下する。排気口23の傾斜の角度Iが55°より大きいと圧力損失が大きくなり、空気の処理量が低下し、空気清浄の効率が低下する。
【0045】
排気口23は、例えば、排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としてもよい。こうすれば、室内レイアウトに応じて、排気口23が形成荒れた部材の向きを調整することができる。図12(a)は、空気清浄装置を縦置きした状態を示す図である。この場合、図中A−A線断面視した排気側の側面11bに図10に示す向きで排気口23を傾斜させることで、排気された空気を室内に効率良く循環させることができる。図12(b)は、空気清浄装置を横置きした状態を示す図である。この場合、図中B−B線断面視した排気側の側面11bに図10に示す向きで排気口23を傾斜させることで、排気された空気を室内に効率良く循環させることができる。排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としては、例えば、排気側の側面11bを正面視した状態で正方形状とすることで、縦置き及び横置きに応じて時計回りに90度回転させることで、排気口23の向きを変えることができる。また、排気側の側面11bに対して着脱可能なルーバー状の部材としては、排気側の側面11bを正面視した状態で正円形とすることで、その周方向に回転させることで排気口23の向きを適宜調整することができる。
【0046】
本発明にかかる空気清浄装置は、病院、学校、幼稚園、公共施設、待合室、飛行機、電車などの室内に設置することができる。例えば、病院の床頭台に設置することができる。また、空調システムに取り付けて使用することも可能である。
また、空気清浄機は、有機物質の消臭などの機能とともに、マイナスイオンや除菌イオン、オゾンを発生、供給する機能を兼ね備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる空気清浄装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1の空気清浄装置を吸気側からみた図である。
【図3】図1の空気清浄装置を排気側からみた図である。
【図4】図1の空気清浄装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【図5】本実施形態の空気清浄装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】空気清浄装置の上面視した状態を示す図である。
【図7】フィルタカセットの構成を説明する図である。
【図8】フィルタカセットをケース本体に装着するときの及び取り出すときの状態を示す図である。
【図9】フィルタカセットをケース本体に装着する動作及び取り出す動作を示す図である。
【図10】排気口の形状の変形例を示す断面図である。
【図11】図10に示す排気口を備えた空気清浄装置を室内に配置した例を示す図である。
【図12】(a)は、空気清浄装置を縦置きした状態を示す図であり、(b)は、空気清浄装置を横置きした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 空気清浄装置
11 ケース本体
12(12a,12b) 光触媒フィルタ
14 光照射部
15 抗体フィルタ
16 送風部
50 フィルタカセット
53 突起部(係合部)
54 付勢部材(第2付勢部)
56 付勢部材(第1付勢部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置であって、
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
光触媒を含む層を有し、前記ケース本体の内部に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部とを備え、
前記光触媒フィルタが前記ケース本体に対して着脱可能なフィルタカセットに保持され、前記フィルタカセットには、装着時に前記ケース本体に係合する係合部と、前記係合部の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部と、取り出し時に該フィルタカセットを装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部とが形成されていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記フィルタカセットに保持され、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む抗体フィルタを備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記フィルタカセットは、装着時に前記ケース本体の面と同一平面を形成する基板部と、前記基板部に固定された枠状の枠板部とを有し、前記基板部と前記枠板部との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記枠板部の少なくとも挿入側端部に、前記フィルタカセットを装着する方向に向かって前記フィルタ保持部の面積が小さくなる孤形状部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記ケース本体には、少なくとも一つは異なるフィルタを保持している複数の前記フィルタカセットを挿入するカセット挿入部が、前記フィルタカセットごとに複数形成され、前記カセット挿入部のそれぞれの近傍に凸状又は凹状の誤挿入防止部が形成され、前記カセット挿入部と対応する前記フィルタカセットを装着した状態で、前記基板部に前記誤挿入防止部と係合するカセット側係合部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の空気清浄装置。
【請求項1】
光触媒を用いて有機物質を分解する空気清浄装置であって、
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
光触媒を含む層を有し、前記ケース本体の内部に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部とを備え、
前記光触媒フィルタが前記ケース本体に対して着脱可能なフィルタカセットに保持され、前記フィルタカセットには、装着時に前記ケース本体に係合する係合部と、前記係合部の係合が解除される向きとは反対向きに付勢力を付与する第1付勢部と、取り出し時に該フィルタカセットを装着させる方向と反対向きに付勢力を付与する第2付勢部とが形成されていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記フィルタカセットに保持され、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材を含む抗体フィルタを備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記フィルタカセットは、装着時に前記ケース本体の面と同一平面を形成する基板部と、前記基板部に固定された枠状の枠板部とを有し、前記基板部と前記枠板部との間に略矩形状のフィルタ保持部が区画されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記枠板部の少なくとも挿入側端部に、前記フィルタカセットを装着する方向に向かって前記フィルタ保持部の面積が小さくなる孤形状部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記ケース本体には、少なくとも一つは異なるフィルタを保持している複数の前記フィルタカセットを挿入するカセット挿入部が、前記フィルタカセットごとに複数形成され、前記カセット挿入部のそれぞれの近傍に凸状又は凹状の誤挿入防止部が形成され、前記カセット挿入部と対応する前記フィルタカセットを装着した状態で、前記基板部に前記誤挿入防止部と係合するカセット側係合部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の空気清浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−72343(P2009−72343A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243518(P2007−243518)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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