説明

空気誘導装置を有する自動車

【課題】
リヤ領域の構造空間が狭い場合でも引き出し可能な空気誘導装置が格納可能であるように、自動車を発展させる。
【解決手段】
空気誘導装置(4)が、変位装置(5)によって、隣接するリヤ領域のボディ(2)と同一平面上に延在する静止位置からこれに対して引き出された作動位置に移動可能であり、この作動位置で、空気誘導装置(4)が、隣接するボディ(2)に対して間隔を置いて延在し、変位装置(5)が、空気誘導装置(4)の横の領域に配設された、空気誘導装置(4)を移動させるための2つのアジャスタ(34,35)を有する、リヤ領域に配設された空気誘導装置(4)を有する自動車、特に乗用車において、空気誘導装置を構造空間が狭い場合でも無段階に格納される静止位置から引き出された作動位置に変位可能にするため、各アジャスタ(34,35)を、垂直に整向された車両固定のサポート部品(29)にヒンジ結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、リヤ領域に配設された空気誘導装置を有する自動車、特に乗用車に関する。
【背景技術】
【0002】
量産車両から、一方で自動車の空気抵抗係数を下げ、他方で動的な後輪圧力を高めるために、自動車のリヤ領域にいわゆるスポイラを設けることが公知である。更に、このようなスポイラもしくは空気誘導装置によって、例えばリヤ領域に配設したエンジン用の冷気を供給することが公知である。
【0003】
特許文献1から、空気誘導装置を、変位装置によって、隣接するリヤ領域のボディと同一平面上に延在する静止位置からこれに対して引き出された作動位置に移動させることが公知である。変位装置は、空気誘導装置の横の領域に配設された、空気誘導装置を上もしくは下に向かって移動させるための2つのアジャスタを有する。
【特許文献1】独国特許出願公開第36 15 584号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、リヤ領域の構造空間が狭い場合でも引き出し可能な空気誘導装置が格納可能であるように、この種の自動車を発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。
【0006】
有利な形成は、従属請求項の特徴から分かる。
【0007】
本発明の核心は、変位装置に付設した、空気誘導装置の横の領域に配設したアジャスタが、サポート部品にヒンジ結合されていることに見られる。サポート部品は、従来技術に示される解決策とは違って、本質的に垂直方向に自動車のリヤ領域に配設可能である。従って、空気誘導装置は、アジャスタを相応に形成した場合、リヤ領域の、ヒンジの直近領域に位置しない位置に格納することができる。
【0008】
従って、サポート部品は、例えば、リヤフードの下に配設されたクロスメンバに固定可能である。これは、リヤ領域の補強が同時に得られるという利点を有する。
【0009】
予組立てのため、変位装置の駆動装置、例えば電気モータは、サポート部品に固定可能である。更に、アジャスタは、空気誘導装置と共にサポート部品に予組立て可能であり、モジュールとしてクロスメンバに組立て可能である。
【0010】
アジャスタの駆動装置については、電気モータが、柔軟な軸を介してアジャスタと結合されている。これは、両アジャスタのために1つの駆動装置しか必要でなく、従って、少ない構造空間しか必要でない。これにより、同時に、重量削減が得られる。
【0011】
アジャスタをサポート部品に統合するため、各側に、クロスメンバに向かって開放した、アジャスタを収容するためのそれぞれ1つの領域を設けることができる。これにより、アジャスタは、隣接するサポート部品とクロスメンバの壁によって構成される空間に存在する。
【0012】
アジャスタの好ましい形成は、各アジャスタが、一方でサポート部品にヒンジ固定され、他方で結合要素にヒンジ固定されたそれぞれ2つのコントロールリンクを備えることにある。コントロールリンクは、角度を付けて形成可能である。これにより、空気誘導装置が、流れに起因する強い力が生じた場合でも、任意の位置で確実に自動車のボディからの間隔を維持する安定した4アクションリンクが得られる。
【0013】
本発明の好ましい形成では、結合要素が、空気誘導装置に固定されている。
【0014】
スポイラ脚部が、各結合要素の可視領域をカバーするので、外側から空気誘導装置の駆動装置が認識不能である。
【0015】
空気誘導要素の各位置で画一的な隙間の大きさを得るため、スポイラ脚部の形状が、収容部の軌道曲線に適合可能であり、各結合要素用の出口が、スポイラ脚部の形状に適合可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の有利な形成を、図面を基にして説明する。
【0017】
図示した実施例で、自動車1は、リヤ領域3に配設した空気誘導装置4を有するボディ2を有し、この空気誘導装置は、変位装置5によって、隣接するボディ2と同一平面上に延在する静止位置Aから引き出された作動位置Bに移動可能である。空気誘導装置4によって、一方で自動車1の空気抵抗係数が下げられ、他方で走行中の動的な後輪圧力が高められる(動力伝達)。
【0018】
リヤ領域3のボディ2は、両側面部分9間に配設された、リヤウインドウ6、バンパ7及びリヤフード8から成る。外部部分と内側の補強フレームから構成されたリヤフード8は、空気誘導装置4を挿入するほぼ長方形の開口12を備える。静止位置Aでは、フラップ状もしくはスポイラ状に形成された空気誘導要素50は、そのアウタシェルが、ファストバック状に形成されたリヤ領域3の輪郭と同一平面上に延在するが、作動位置Bでは、ボディ面外に旋回させられ、外側に位置するその空気流動面がほぼ水平に設定される形態になる。同時に、空気誘導要素50は、走行方向Cとは反対に寸法Dだけ後に向かって移動させられる。空気誘導要素50は、複数のクロスストラット14を備えた大面積のエアインテークグリッド13を備える。
【0019】
リヤフード8の下には、図2及び3から分かるように、クロスメンバ30が配設され、このクロスメンバに、サポート部品29を介して変位装置5が固定されている。変位装置5は、サポート部品29の後側のほぼ中心に固定された電気モータ31を有し、この電気モータが、柔軟な軸32及び33によって、その横に配設された2つのアジャスタ34及び35を駆動する。
【0020】
サポート部品29は、横断面が変化するように成形されている。外縁領域には、クロスメンバ30に向かって開放したそれぞれ1つのU字部分37及び38が設けられている。両U字部分37,38は、本質的に平坦な部分39によって互いに結合されている。
【0021】
U字部分37,38は、クロスメンバ30と共に、それぞれ空気誘導要素50の左右に、アジャスタ34及び35を格納する自由空間を画成する。
【0022】
アジャスタ34もしくは35の運動は、図4に詳細に説明されている。運動は、車両にヒンジ結合された2つのコントロールリンク40及び41を有する直立型の4アクションリンクである。コントロールリンク40もしくは41のヒンジ結合は、垂直に上下にサポート部品29に配設されたヒンジ46及び47によって行なわれる。結合要素42によって、両コントロールリンク40及び41は、ヒンジ48及び49を介して互いにヒンジ結合されている。このため、結合要素42は、コントロールリンク40のジョイント48の上で曲がったホルダ44に移行するカプラ43を備える。ホルダ44は、固定箇所45にて空気誘導要素50と結合されている。
【0023】
システムの駆動は、コントロールリンク41の下の頂点51に作用する図示してないジョイントレバーを介して行なわれる。このジョイントレバーは、ナットによって、車両高さ方向に位置決めされた図示してないネジ付きスピンドルと結合され、このネジ付きスピンドルが、柔軟な軸32によって駆動され、ネジもしくは材料に起因するそのセルフロックによりリヤスポイラの位置決めを保証する。
【0024】
コントロールリンク40及び41をサポート部品29に垂直に結合することに基づいて、車両高さ方向の構造空間がリニアアジャスタに比べて低減可能になる。
【0025】
両コントロールリンク40もしくは41の形状は、図5から分かる。この場合、左側の図が、アジャスタ35のために車両の右側に設けられるコントロールリンク40を示し、右側の図が、アジャスタ34のために車両の左側に設けられるコントロールリンク40’を示す。これから分かるように、コントロールリンク40もしくは40’は、鏡面対称に構成されているので、交互の取付けが可能である。従って、製造工具の数は、半分にすることができる。
【0026】
各コントロールリンク40は、2つの脚52及び53を備え、その頂点51に、取付け状態に応じて、駆動用のジョイントレバーが作用可能である。脚52及び53の自由端には、それぞれこれらに対して横に中空シリンダ状の軸受収容部54及び55が形成されており、これら軸受収容部が、サポート部品29又は結合要素42に対応するボルトを収容し、従って、それぞれのヒンジを構成する。
【0027】
サポート部品29をクロスメンバ30と不動にネジ留めすること及びクロスメンバを高剛性に形成することによって、車両の捩り剛性の付加的な向上が得られる。
【0028】
両コントロールリンク40及び41を結合する結合要素42は、特別にジェイ製されたスポイラ脚部56によって包囲される。図6及び7から分かるように、スポイラ脚部56は、不等形状の横断面を有する合成樹脂部品である。この実施例では、横断面の輪郭は、特に傾いた円錐の円錐曲線に似ている。中空のスポイラ脚部56内を、結合要素42のホルダ44が延在する。
【0029】
周囲のボディコンポーネント、特にリヤフード8に出口57の均等な継目の変化を得るため、スポイラ脚部56の形状は、運動の軌道曲線に適合されている。これにより、空気誘導要素50の全ての引出し工程の間、位置に依存した継目形状が生じないことが保証される。
【0030】
前記の空気誘導装置は、空気誘導装置が、空気抵抗係数の低減のために使用されるか、動的な後輪圧力を増強するかに依存せずに使用される。当然、本発明による空気誘導装置は、リヤエンジンの車両に配設することも、付加的に、エンジンのために冷気を供給するための吸気口を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】空気誘導装置を有する自動車のリヤ領域を後から見た斜視図を示す。
【図2】図1の空気誘導装置用の駆動装置の配設を示す。
【図3】図2の駆動装置用のサポート部品を示す。
【図4】空気誘導装置用の駆動装置の動作を示す。
【図5】図4の2つのコントロールリンクを示す。
【図6】空気誘導要素用の結合要素を示し。
【図7】空気誘導要素のない図1の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 自動車
2 ボディ
3 リヤ領域
4 空気誘導装置
5 変位装置
6 リヤウインドウ
7 バンパ
8 リヤフード
9 側面部分
12 開口
13 エアインテークグリッド
14 クロスストラット
29 サポート部品
30 クロスメンバ
31 電気モータ
32 軸
33 軸
34 アジャスタ
35 アジャスタ
37 U字部分
38 U字部分
39 平坦な部分
40 コントロールリンク
41 コントロールリンク
42 結合要素
43 カプラ
44 ホルダ
45 固定箇所
46 ヒンジ
47 ヒンジ
48 ヒンジ
49 ヒンジ
50 空気誘導要素
51 頂点
52 脚
53 脚
54 軸受収容部
55 軸受収容部
56 スポイラ脚部
57 出口
A 静止位置
B 作動位置
C 走行方向
D 寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気誘導装置(4)が、変位装置(5)によって、隣接するリヤ領域のボディ(2)と同一平面上に延在する静止位置からこれに対して引き出された作動位置に移動可能であり、この作動位置で、空気誘導装置(4)が、隣接するボディ(2)に対して間隔を置いて延在し、変位装置(5)が、空気誘導装置(4)の横の領域に配設された、空気誘導装置(4)を移動させるための2つのアジャスタ(34,35)を有する、リヤ領域に配設された空気誘導装置(4)を有する自動車、特に乗用車において、
各アジャスタ(34,35)が、垂直に整向された車両固定のサポート部品(29)にヒンジ結合されていることを特徴とする自動車。
【請求項2】
サポート部品(29)が、リヤフード(8)の下に配設されたクロスメンバ(30)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
変位装置(5)が、サポート部品(29)に固定された駆動装置、特に電気モータ(31)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車。
【請求項4】
電気モータ(31)が、柔軟な軸(32,33)を介してアジャスタ(34,35)と結合されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
サポート部品(29)が、各側に、クロスメンバに向かって開放した、アジャスタ(34,35)を収容するためのそれぞれ1つの領域を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項6】
アジャスタ(34,35)が、一方でサポート部品(29)にヒンジ固定され、他方で結合要素にヒンジ固定されたそれぞれ2つのコントロールリンクを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項7】
結合要素が、空気誘導装置(4)に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の自動車。
【請求項8】
各結合要素が、スポイラ脚部によってカバーされていることを特徴とする請求項7に記載の自動車。
【請求項9】
スポイラ脚部の形状が、収容部の軌道曲線に適合していることを特徴とする請求項8に記載の自動車。
【請求項10】
各結合要素用の出口が、スポイラ脚部の形状に適合していることを特徴とする請求項9に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−149293(P2009−149293A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320527(P2008−320527)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany