説明

空気調和ユニット

【課題】比較的単純なフィルタ部材固定構造を有すると共にフィルタ部材の脱着を簡単に行える空気調和ユニットを提供する。
【解決手段】空気調和ユニット1が、空調ケース7と、空調ケース7内に配設されて空気を冷却する冷却用熱交換器10と、空調ケース7内に導入される外気に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部材8とを具備する。空調ケース7は、ケース本体12と、ケース本体12に開閉可能に枢着されたケース上蓋13とを備え、ケース本体12はフィルタ部材8を載置するためのフィルタ載置部17を有し、ケース上蓋13はフィルタ押圧部を有し、フィルタ部材8は、ケース上蓋13が閉じられたとき、フィルタ押圧部とフィルタ載置部17とによって挟まれて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス車両などの屋上に装着して好適な空気調和ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、空気調和ユニットは、そのケース内に熱交換器及び送風ファン等と共に外気用のフィルタを備えている。特許文献1には、外気用のフィルタを備えた車両用屋上装着型空調装置が記載されており、この空調装置では、フィルタを清掃のため空調ケースから取り外そうとした場合、車室内側から又は車両の屋根側からのどちらの側からもフィルタにアクセスすることが可能であるが、フィルタは、それを押さえる枠状のフィルタブラケットを介して空調ケース側にねじ固定されているので、どちらの場合にも固定ねじを緩めてフィルタブラケットを取り外すことが必要であり、またフィルタを装着する場合はフィルタブラケットをねじ固定することが必要である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−306165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された空調装置に示されたやりかたでフィルタは確実に固定されるが、フィルタの脱着をより簡単に行うこと及びより単純なフィルタ固定構造に対する要求も生じていた。
【0005】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的単純なフィルタ固定構造を有すると共にフィルタの脱着を簡単に行える空気調和ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、空調ケース(7)と、空調ケース(7)内に配設されて空気を冷却する冷却用熱交換器(10)と、空調ケース(7)内に導入される外気に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部材(8)と、を具備する空気調和ユニット(1)であって、空調ケース(7)は、ケース本体(12)と、ケース本体(12)に開閉可能に枢着されたケース上蓋(13)とを備え、ケース本体(12)はフィルタ部材(8)を載置するためのフィルタ載置部(17)を有し、ケース上蓋(13)はフィルタ押圧部を有し、フィルタ部材(8)は、ケース上蓋(13)が閉じられたとき、フィルタ押圧部とフィルタ載置部(17)とによって挟まれて固定されることを特徴としている。これによれば、フィルタ部材(8)を固定するための部材が不要となって構造が簡素化されると共に、フィルタ部材(8)はケース上蓋(13)を閉めることによって固定されるので、フィルタ部材(8)の脱着を簡単に行えるようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、フィルタ部材(8)が、少なくとも厚さ方向に弾性変形可能な弾性材料から作られていることを特徴としている。これにより、フィルタ部材(8)を確実に挟んで固定することができるとともに、フィルタ部材(8)を挟んで固定する部分に関する各部材の許容寸法誤差を大きく設定できる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、ケース上蓋(13)のフィルタ押圧部は、フィルタ部材(8)の全周縁部を押圧するように形成されていることを特徴としている。これにより、空気がフィルタ部材(8)の横から漏れ出ることを防ぐことができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、フィルタ載置部(17)は、フィルタ部材(8)を所定の位置に配置するフィルタ位置決め手段(17d)を備えていることを特徴としている。これにより、フィルタ部材(8)のフィルタ載置部(17)に対する位置決めを容易に行うことが可能である。
【0011】
請求項5に記載の発明では、空気調和ユニット(1)が、空調ケース(7)をシールする弾性シール部材(23)にして、ケース本体(12)とケース上蓋(13)との間に設けられて、ケース上蓋(13)が閉じられたときに圧縮される弾性シール部材(23)を更に具備し、ケース上蓋(13)が閉じられたときのフィルタ部材(8)の圧縮反力(R1)が弾性シール部材(23)の圧縮反力(R2)より小さいことを特徴としている。これにより、弾性シール部材(23)の封止性に対する影響をほとんど生じさせることなくケース上蓋(13)によるフィルタ部材(8)の固定が可能になる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。
【0014】
本明細書では、大型バス等の屋根上に搭載されるクーリングユニットを本発明による空気調和ユニットの実施例として説明する。図1は、本発明の実施例によるクーリングユニット1及びコンデンシングユニット2から構成される冷房ユニット3がバス4の屋根上に搭載された状態を示している。コンデンシングユニット2内には、外気と熱交換を行うために、高温側の熱交換器としてのコンデンサやコンデンサ冷却ファン等(いずれも図示せず)が収容されており、クーリングユニット1内には、室内空気と熱交換を行うために、低温側の熱交換器としてのエバポレータ、送風ファン、及び導入される外気に含まれる塵埃を除去する外気用のフィルタ部材等(いずれも図示せず)が収容されている。冷媒圧縮機5がバス車両の後部に配設され、またクーリングユニット1で冷却された空気を各座席の上部に供給するためのクーラーダクト6が車室内の天井に配設されている。
【0015】
図2は前記クーリングユニット1の単体の外観を示す斜視図であり、図3は図2のA−A断面図であって内部を模式的に示す側面断面図であり、図4はケース上蓋を開けた状態を示す斜視図である。クーリングユニット1は、その空調ケース7内に、図3の左側の一方の端から、外気用のフィルタ部材8、内外気切替ドア9、エバポレータ10、及び送風ファン11を収容している。本実施例では、フィルタ部材8は2枚及び送風ファン11は6個配設されている。
【0016】
空調ケース7は、それを上から見たときの平面形状が略長方形に形成されていて、合成樹脂製のケース本体12とケース上蓋13とを具備しており、ケース上蓋13は、前記長方形の一方の長辺に沿って設けられた上蓋回動軸P1周りに回動して開閉するように、ケース本体12にヒンジ(不図示)を介して固定されている。ケース本体12には、前記長方形の他方の長辺の側の端部に外気導入口14が、またほぼ中央部のエバポレータ10の上流側に内気導入口15が、また送風ファン11の下側に冷気送出口16が設けられている。
【0017】
送風ファン11を作動させると、内気つまりバスの客室内の空気は、空調ケース7の内気導入口15から吸引されて、エバポレータ10のフィン付きパイプの間を通って冷却され、更に送風ファン11を通って客室内側に送られる。内外気切替ドア9が図3に示される位置にあると、外気が空調ケース7の外気導入口14から吸引されて、フィルタ部材8を通過し、切替部開口20bを通過し、内気と共にエバポレータ10を通過する。内外気切替ドア9はその回動軸P2を中心に回動可能であり、切替部開口20bを閉じること又は内気導入口15を閉じることも可能である。
【0018】
次に、フィルタ部材8及びその固定構造について説明する。本実施例では、比較的細長い矩形状に形成された2枚のフィルタ部材8が用いられ、それらは空調ケース7の上蓋回動軸P1とは反対側の他方の側端部に沿って、外気導入口14よりやや上方に、図3で見たとき水平から反時計回りに約30度回転して傾いて配置されている。フィルタ部材8は、本実施例では10〜20mmの厚さを有するもので、厚さの約50%以上の弾性的圧縮が可能な弾性材料から作られている。
【0019】
ケース本体12にはフィルタ部材8を載置するためのフィルタ載置板17が2個設けられている。各フィルタ載置板17は、その単体の斜視図である図5に示されるように枠状に形成されて、フィルタ部材8を載せる載置面に2つの矩形の載置板通風穴17aを有している。フィルタ載置板17はその両端に取付用の耳部17b及び固定穴17cを有しており、フィルタ載置面が水平から約30度傾斜するように、耳部17bによって後述する載置板固定部材18に固定される。
【0020】
また、フィルタ載置板17は、フィルタ部材8の位置決めをするために、載置面からほぼ垂直に立ち上がりフィルタ部材8の短辺側の両端面及び長辺側の低位にある一方の端面に接する位置決め部17dを一体に形成している。また、フィルタ部材8の短辺側端面の位置決め部17dは前記耳部17bに接続されている。かくして、フィルタ部材8は、フィルタ載置板17に載置されたとき所定の位置に配置される。
【0021】
図4に示されるように、ケース本体12には、3個の載置板固定部材18が設けられており、載置板固定部材18は、フィルタ載置板17を支持するための載置板支持面部18aを有し、また該固定部材18の下方の一方の端部と他方の端部とがそれぞれケース本体12に結合されている。載置板固定部材18の載置板支持面部18aには、前述したフィルタ載置板17を固定するためのねじ穴18cの他に上蓋固定用のねじ穴18bが設けられている。
【0022】
図3及び図4に示されるように、ケース上蓋13は、外形を形成するカバー部材19と内側のダクト部材20とから形成されている。ダクト部材20は、その横断面形状が図3に示されるように幅の広い略U字状を呈しており、前記U字の上端部がカバー部材19の内面に例えば超音波溶着によって接合されてカバー部材19と一体化している。
【0023】
ダクト部材20の前記U字の図3の左方の底部にはフィルタ部材8からの風を通す矩形のダクト部材通風穴20aがフィルタ載置板通風穴17aと対向して形成され、このダクト部材通風穴20aはフィルタ部材8の外形より小さく形成されている。ダクト部材20は、ケース上蓋13が閉じられたとき、ダクト部材通風穴20aを取り囲む周囲部分が、フィルタ部材8の全周縁部を押圧するフィルタ押圧部として働いて、フィルタ部材8の全周縁部をフィルタ部材厚さの約40%だけ圧縮するように形成されている。
【0024】
また、ダクト部材20の前記U字の右方の側部には切替部開口20bが形成され、その結果ダクト部材20とカバー部材19との間に、ダクト部材通風穴20aから切替部開口20bへ通じる通風空間が形成される。
【0025】
ダクト部材20のU字の左方の側部の外側には、3本の上蓋固定ねじ21が3個のL字状の上蓋固定部材22に1本ずつ設けられており、前記上蓋固定部材22がダクト部材20に固定されている。この上蓋固定ねじ21を前記載置板固定部材18に設けられた上蓋固定用のねじ穴18bにねじ込むことによりケース上蓋13がケース本体12に固定される。また、ケース上蓋13が閉じられたときのカバー部材19とケース本体12との接合部には、弾性部材で形成された防水パッキン23が設けられていて、空調ケース7内への雨水等の浸入を防ぐようになっている。
【0026】
このように構成されているので、フィルタ載置板17に位置決めされて載置されたフィルタ部材8は、ケース上蓋13が閉じられてケース本体12に上蓋固定ねじ21によりねじ固定されると、ダクト部材通風穴20aの周囲部分つまりフィルタ押圧部と、ケース本体側のフィルタ載置板17とによってフィルタ部材8の全周縁部を挟まれて固定される。また、ケース上蓋13の固定ねじ21を緩めてケース上蓋13を開けると、フィルタ部材8の固定は解除されてフィルタ部材8をフィルタ載置板17から取り出すことが可能になる。
【0027】
ところで、ケース上蓋13を閉じると、ケース上蓋側及びケース本体側にはフィルタ部材8の圧縮反力R1だけではなく防水パッキン23の圧縮反力R2も作用するが、ケース上蓋13を閉じるのに要する力が著しく増大しないように、又はフィルタ部材8の圧縮反力R1によってケース上蓋全体が変形して防水パッキン23の封止性に悪影響を与えないように、前記圧縮反力R1はR2より少なくとも小であることが好適である。このため、本実施例においては、フィルタ部材8の圧縮反力R1を防水パッキン23の圧縮反力R2の1/2以下とするべく防水パッキン23及びフィルタ部材8の硬度、変形量、及び当接面積等が設定されている。
【0028】
前述の実施例では、フィルタ部材8はケース上蓋13の上蓋回動軸P1とは遠い側のケース本体12の端部に配設されていたが、図6に示される変更例のクーリング部のように、上蓋回動軸P1をフィルタ部材8に近接させてもよい。上蓋回動軸P1をフィルタ部材8に近接させると、フィルタ部材8の反発力の発生位置が上蓋回動軸P1に近づくので、ケース上蓋13の先端側に力を加えてケース上蓋13を閉じるとき、ケース上蓋13に加える力は前述の実施例の場合に比べて減少する。
【0029】
前述の実施例は、本発明がバス等に用いられるクーリングユニット1に適用された場合のものであったが、本発明はバス等のクーリングユニット1に限定されるものではなく、開閉可能な上蓋を有する空調ケースとそれに配設されたフィルタ部材を有する空気調和ユニットに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例によるクーリングユニットを含む空気調和ユニットとそれを搭載するバスを示す斜視図である。
【図2】第1の実施例のクーリングユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図であってクーリングユニットの側面断面図である。
【図4】図2のクーリングユニットのケース上蓋を開けた状態を示す斜視図である。
【図5】フィルタ載置板の斜視図である。
【図6】変更例のクーリングユニットのケース上蓋を開けた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
7 空調ケース
8 フィルタ部材
10 冷却熱交換器
11 送風ファン
12 ケース本体
13 ケース上蓋
14 外気導入口
17 フィルタ載置板
20 ダクト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケース(7)と、
前記空調ケース(7)内に配設されて空気を冷却する冷却用熱交換器(10)と、
前記空調ケース(7)内に導入される外気に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部材(8)と、を具備する空気調和ユニット(1)であって、
前記空調ケース(7)は、ケース本体(12)と、前記ケース本体(12)に開閉可能に枢着されたケース上蓋(13)とを備え、
前記ケース本体(12)は前記フィルタ部材(8)を載置するためのフィルタ載置部(17)を有し、
前記ケース上蓋(13)はフィルタ押圧部を有し、
前記フィルタ部材(8)は、ケース上蓋(13)が閉じられたとき、前記フィルタ押圧部と前記フィルタ載置部(17)とによって挟まれて固定されることを特徴とする、空気調和ユニット(1)。
【請求項2】
前記フィルタ部材(8)が、少なくとも厚さ方向に弾性変形可能な弾性材料から作られていることを特徴とする、請求項1に記載の空気調和ユニット(1)。
【請求項3】
前記ケース上蓋(13)の前記フィルタ押圧部は、前記フィルタ部材(8)の全周縁部を押圧するように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空気調和ユニット(1)。
【請求項4】
前記フィルタ載置部(17)は、前記フィルタ部材(8)を所定の位置に配置するフィルタ位置決め手段(17d)を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気調和ユニット(1)。
【請求項5】
前記空調ケース(7)をシールする弾性シール部材(23)にして、前記ケース本体(12)と前記ケース上蓋(13)との間に設けられて、前記ケース上蓋(13)が閉じられたときに圧縮される弾性シール部材(23)を更に具備する請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気調和ユニット(1)であって、
前記ケース上蓋(13)が閉じられたときの前記フィルタ部材(8)の圧縮反力(R1)が前記弾性シール部材(23)の圧縮反力(R2)より小さいことを特徴とする空気調和ユニット(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−6888(P2009−6888A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170806(P2007−170806)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】