説明

空気調和方法、空気調和設備及びこの空気調和設備の制御方法

【課題】クリーンルーム等の高効率での空調を可能とする。
【解決手段】空気調和設備10は、外気導入経路20を介して外気を導入し空調する外気調和機22と、外気調和機22の出口側とクリーンルーム12内とを連通する空調機吸入経路24を介して、外気と環気との混合気を空調した後、クリーンルーム12内に供給する空調機26と、クリーンルーム12の空気を排気してスクラバ48に導入した後、外部に排出する局所排気部18とを備える。また、水槽50と外気導入経路20に設けられる第1熱交換器52の入口側とが第1経路54により連通され、第1熱交換器52の出口側と水槽50とが第2経路56により連通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームや恒温室等の空調を行う空気調和方法、空気調和設備及びこの空気調和設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工場等で使用されているクリーンルームでは、洗浄装置や乾燥装置等の各種生産装置が製造プロセス毎に数多く設置されている。このため、このようなクリーンルーム内を一定温度、一定湿度及び一定圧力に維持するための空気調和設備は膨大なエネルギを消費する。
【0003】
特許文献1には、クリーンルームを通過した後の戻り空気を顕熱冷却する熱交換器と、取り込んだ外気を空調する外気調節器とを備える空気調和設備が記載されている。
【0004】
この空気調和設備では、冷却塔で冷却される冷却水により外気調整器に搭載される冷凍機の凝縮器の放熱を行うと共に、クリーンルーム内の空調ユニットの熱交換器に所定温度の冷却水を送るための冷却装置を配置する技術的思想が開示されており、このため、前記冷凍機を運転する時間を短縮する等の効果によって、省エネルギで空調を行うことができると記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−196258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の空気調和設備では、例えば、夏期等で外気の温度が非常に高い場合に、前記外気調整器での冷却負荷が大幅に増加して、冷凍機の消費エネルギが著しく増加するおそれがある。さらに、前記冷却塔や前記冷却装置を必要とするため設備が大型化及び複雑化し、この空気調和設備を既存のクリーンルーム等に設置するためには、既存の空気調和設備を廃棄して新たに設備を導入する必要があり、多大な設備投資を強いられるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮してなされたものであり、クリーンルーム等の高効率な空調を可能とする空気調和方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記空気調和方法を実施することで高効率な空調を可能とし、さらに、既存の空気調和設備等を容易に転用することにより低コスト化を可能とする空気調和設備及びこの空気調和設備の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和方法は、外気調和機により外気を導入して空調し、前記空調された外気と被空調空間からの空気とを吸気し、空調機により空調した後、前記被空調空間に供給し、排気手段により前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入し、該湿式集塵機にて液体を噴射し、前記噴射した液体と前記排気とを接触させて前記排気を洗浄する空気調和方法であって、前記液体と、前記外気調和機に導入される前の外気とを熱交換させることを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、湿式集塵機で利用される液体により、外気調和機に導入される前の外気を加熱又は冷却できるため、外気調和機での加熱又は冷却に係る負荷が軽減され、高効率での空調が可能となる。
【0010】
また、前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも低い場合には、前記熱交換した後の前記液体を、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気と熱交換させると、空調機での冷却負荷が軽減され、当該空調機での空調の効率が向上する。
【0011】
さらに、前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも高い場合には、前記熱交換した後の前記液体を、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気とは熱交換させずに前記湿式集塵機に循環させると、空調機への負担を増加させることなく、高効率な空調が可能となる。
【0012】
また、前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも低く、前記被空調空間内の温度と前記液体の温度との差が所定の範囲以上である場合には、前記熱交換した後の前記液体と、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気と断続的に熱交換させると好適である。
【0013】
本発明の空気調和設備は、被空調空間を空調する空気調和設備であって、外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第2の経路とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、湿式集塵機で利用される液体により、外気調和機に導入される前の外気を加熱又は冷却できるため、外気調和機での加熱又は冷却に係る負荷が軽減され、高効率な空気調和設備を構築することが可能となる。
【0015】
また、本発明の空気調和設備は、被空調空間を空調する空気調和設備であって、外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、前記空調機吸入経路に設けられた第2の熱交換器と、前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、前記第2の熱交換器を経由して、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第3の経路とを備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、湿式集塵機で利用される液体により、外気調和機に導入される前の外気を加熱又は冷却できるため、外気調和機での加熱又は冷却に係る負荷が軽減され、高効率な空気調和設備を構築することが可能となると共に、空調機での冷却負荷が軽減され、当該空調機での空調の効率が向上する。
【0017】
また、本発明の空気調和設備は、被空調空間を空調する空気調和設備であって、外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、前記空調機吸入経路に設けられた第2の熱交換器と、前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第2の経路と、前記第2の熱交換器を経由して、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第3の経路とを備え、前記第2の経路は、前記第2の熱交換器をバイパスしており、前記第2の経路と前記第3の経路とを選択的に切換える切換手段を備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、湿式集塵機で利用される液体により、外気調和機に導入される前の外気を加熱又は冷却できるため、外気調和機での加熱又は冷却に係る負荷が軽減され、高効率な空気調和設備を構築することが可能となると共に、空調機での冷却負荷が軽減され、当該空調機での空調の効率が向上する。さらに、前記第2の経路は、前記第2の熱交換器をバイパスしており、前記第2の経路と前記第3の経路とを選択的に切換える切換手段を備えているため、前記液体の状態に応じて、第2の熱交換器の使用を選択することができ、より一層高効率な空調が可能となる。
【0019】
また、本発明の空気調和設備の制御方法は、前記外気調和機に導入される前の外気の温度が、前記被空調空間内の温度と前記液体貯留部内の液体の温度と間の温度域にある場合には、前記液体の循環を停止させることを特徴とする。このような制御方法により、前記第1の熱交換器や前記第2の熱交換器における、空気調和設備の効率向上に寄与しない不要な熱交換を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クリーンルーム等の外気調和機や空調機の負担を軽減でき、高効率での空調が可能となる空気調和方法、空気調和設備及びこの空気調和設備の制御方法が提供される。また、本発明によれば、既存のクリーンルーム等に設置されている空気調和設備に熱媒体が循環する配管の敷設工事や熱交換器の施工を行うという容易な工事で高効率な空気調和設備を実現でき、低コストで空気調和設備のエネルギ消費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る空気調和方法について、この空気調和方法を実施する空気調和設備との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和設備10の概略構成説明図を示している。図1に示すように、空気調和設備10は、被空調空間の一例としてのクリーンルーム12内を一定温度(例えば、23±1℃)、一定湿度(例えば、45±5%RH)及び一定圧力(例えば、外部よりも若干高い正圧であって、10〜20Pa程度)に維持する設備であって、空気調和部14と、熱媒体循環部16と、局所排気部18と、制御装置19とから構成される。
【0023】
クリーンルーム12は、例えば半導体製造工場で使用され、その室内には、図示しない洗浄装置や乾燥装置等の各種生産装置が製造プロセス毎に多数設置される。
【0024】
空気調和部14は、外気を導入して所定の温度及び湿度に空調した後、クリーンルーム12内の空気(環気)を吸気して前記外気と混合した後、空調し、クリーンルーム12内に供給する。
【0025】
この空気調和部14は、外気を導入するダクトである外気導入経路20と、外気導入経路20と連通し、外気導入経路20を介して導入される外気を空調する外気調和機22と、外気調和機22の出口側(下流側)とクリーンルーム12とを連通する空調機吸入経路24と、外気調和機22で空調された外気とクリーンルーム12からの環気とが混合した混合気を空調機吸入経路24を介して導入して空調する空調機26と、空調機26の出口側と連通し、空調機26で空調された前記混合気をクリーンルーム12内に供給する循環経路28とを備える。
【0026】
外気調和機22は、外気導入経路20を介して外気を導入して空調(温度及び湿度の調整)を行うものである。この外気調和機22には、入口側(上流側)から順に、予熱コイル30と、加湿器32と、冷却コイル34と、再燃コイル36と、ファン38と、フィルタ40とが配置され、ファン38により外気が流通する。
【0027】
予熱コイル30及び再燃コイル36は、例えば、電気ヒータや図示しない蒸気圧縮式冷凍機の凝縮器であって、外気を加熱する作用を奏する。また、冷却コイル34は、例えば、前記蒸気圧縮式冷凍機の蒸発器であって、外気を冷却する作用を奏する。さらに、加湿器32は、水を噴霧して外気を調湿すると共に、水と外気とを接触させることで、外気中の汚染物質等を除去する作用を奏する。なお、フィルタ40には、例えばHEPAフィルタが好適に用いられ、外気調和機22に導入された外気の粉塵等を除去する。
【0028】
空調機26は、外気調和機22で空調された外気とクリーンルーム12からの環気とが混合した混合気を空調機吸入経路24を介して導入し、空調を行うものである。この空調機26には、入口側(上流側)から順に、冷却コイル42と、加湿器44と、ファン46とが配置され、ファン46により前記混合気が流通して空調された後、クリーンルーム12内に供給される。
【0029】
冷却コイル42は、例えば、図示しない冷却塔等を備える冷却水循環装置により前記混合気を冷却する。また、加湿器44は、上記加湿器32と同様に、水を噴霧して導入された混合気を調湿する。
【0030】
熱媒体循環部16は、後述するスクラバ48にて使用される水を熱媒体として循環させて空気調和部14の各位置における空気と熱交換させることで、外気調和機22や空調機26の負担を軽減するために配設される。
【0031】
この熱媒体循環部16は、スクラバ48の下部に設けられる水槽50と外気導入経路20に配設される第1熱交換器52(第1の熱交換器)の入口側(上流側)とを連通する第1経路54(第1の経路)と、第1熱交換器52の出口側(下流側)と前記水槽50とを連通する第2経路56(第2の経路)と、第2経路56から分岐して空調機吸入経路24におけるクリーンルーム側経路24bに配設される第2熱交換器58(第2の熱交換器)を経由して、再び第2経路56に三方弁60(切換手段)を介して合流する切換経路62とを備え、第1経路54に配設されるポンプ64により、スクラバ48の水槽50内の水が熱媒体として循環する。
【0032】
なお、本実施形態において、三方弁60の切換えにより、第2経路56の前記分岐部分より上流側と、切換経路62と、第2経路56の三方弁60より下流側とが連通する経路が、第3の経路として機能することになる。
【0033】
また、切換経路62は、第2経路56から分岐し、第2熱交換器58を経由した後、直接水槽50に接続されるようにしてもよい。この場合には、三方弁60は、切換経路62と第2経路56との分岐部分に配設される。
【0034】
第1熱交換器52及び第2熱交換器58は、熱媒体と、外気及び環気とが対向流となるように配設される。これにより、第1熱交換器52及び第2熱交換器58での熱媒体と、外気又は環気との熱交換効率が向上する。
【0035】
排気手段としての局所排気部18は、クリーンルーム12内における図示しない洗浄装置等で使用されるHF(フッ化水素)やNH3(アンモニア)等の薬品が蒸発して混入した空気を、排気ダクト66から局所的に吸引して強制排気するものである。
【0036】
この局所排気部18には、排気ダクト66に連通する排気経路68と、排気経路68に配設される排気ファン70と、排気経路68と連通し、排気中の前記薬品等を液体、例えば、水に溶解させて当該排気を洗浄するスクラバ48(湿式集塵機)とを備える。
【0037】
湿式集塵機であるスクラバ48は、下部に液体貯留部としての水槽50を有し、この水槽50内に貯留される水をポンプ72を介して噴霧部74から噴霧させ、前記排気と接触させることにより、排気中の薬品等を除去して当該排気を洗浄するものである。前記洗浄された排気は、スクラバ48の上部から外部に排出される。また、水槽50内に貯留される水は、必要に応じてドレン弁76を介して排出され、給水口78より給水される。
【0038】
このように、局所排気部18によりクリーンルーム12内の空気が外部に排出されるが、上記のように外気を導入することで、クリーンルーム12内が所定の圧力(正圧)に維持されている。
【0039】
制御装置19は、空気調和設備10における各部温度を検出するための温度センサ、すなわち、外気温度(Toa)を検出する温度センサ80a、クリーンルーム12内の温度(Tr)を検出する温度センサ80b、水槽50内の温度(T1)を検出する温度センサ80c及び第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)を検出する温度センサ80dでの検出結果に基づき、三方弁60を切換制御する。
【0040】
つまり、制御装置19は、前記各温度センサ80a〜80dでの検出結果に基づき、三方弁60を切換制御して、切換経路62への熱媒体の流通の可否を選択的に切換える。この場合、切換経路62へ熱媒体を流通させず、第2熱交換器58を機能させない場合には、三方弁60は、図1中のA方向に熱媒体が流通するように切換えられる。一方、切換経路62へ熱媒体を流通させ、第2熱交換器58を機能させる場合には、三方弁60は、図1中のB方向に熱媒体が流通するように切換えられる。
【0041】
さらに、制御装置19は、外気調和機22、空調機26、スクラバ48、排気ファン70及びポンプ64等の運転を制御する。
【0042】
次に、以上のように構成される空気調和設備10によるクリーンルーム12の空気調和方法について説明する。以下の説明では、先ず、空気調和部14及び局所排気部18の動作について図1を参照して説明し、次いで、熱媒体循環部16の動作について図2及び図3を参照して説明する。
【0043】
空気調和部14において、外気導入経路20を介して外気が外気調和機22に導入され、外気調和機22にて所定の温度及び湿度に調整されて、空調機吸入経路24の外気調和機側経路24aに流通する。
【0044】
そして、外気調和機22で空調され外気調和機側経路24aに流通した外気は、空調機吸入経路24のクリーンルーム側経路24bからの環気と混合され、この混合気は、空調機26に導入される。空調機26は、前記混合気を所定の温度及び湿度に調整した後、循環経路28からクリーンルーム12内に供給(給気)する。
【0045】
以上のように、空気調和部14において、外気及び環気が空調されることで、クリーンルーム12内が所定の温度及び湿度に維持される。
【0046】
一方、局所排気部18では、上記のように、排気ダクト66からの排気が、排気経路68を介して、スクラバ48内に導入される。この排気は、スクラバ48内で噴霧される水と接触して洗浄された後、外部へ排出される。
【0047】
このとき、クリーンルーム12内の温度(Tr)が+23℃で略一定であるため、スクラバ48内に導入される排気の温度も+23℃で略一定である。このため、スクラバ48内で噴霧されて排気と接触した後、水槽50内に貯留されている水の温度(T2)は、+23℃程度の排気との接触及び噴霧される水の蒸発潜熱による冷却のため、外気温度Toaとは略無関係に、+15〜20℃程度に保持されている。
【0048】
次に、熱媒体循環部16の動作について、図2及び図3を参照して説明する。熱媒体循環部16では、スクラバ48の水槽50内に貯留されている水が熱媒体としてポンプ64の駆動により循環する。なお、三方弁60は、主にクリーンルーム12内の温度(Tr)と、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)との関係により、その切換方向が制御される。また、この場合、Tr>T1であることを前提として説明するものとする。
【0049】
第1に、例えば夏期であって、外気温度(Toa)がクリーンルーム12内温度(Tr)より高い場合、すなわち、Toa>Trである場合について説明する。
【0050】
この場合、水槽50内で貯留している熱媒体(水)は、上記のように、例えば、T1=+15℃程度である。このため、ポンプ64を駆動することにより、熱媒体は、第1経路54から第1熱交換器52を流通し、外気調和機22に導入される前の外気と熱交換して、この外気を冷却する。
【0051】
このように、外気調和機22に導入される前の外気が冷却されることにより、外気温度が高い場合でも、外気調和機22での冷却負荷が軽減されるため、外気調和機22での空調の効率が向上する。
【0052】
ここで、クリーンルーム側経路24bへの環気は、クリーンルーム12内での熱負荷により、当該クリーンルーム12内の温度よりも若干高く、例えば、+25℃程度となっている。
【0053】
そこで、先ず、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)と、クリーンルーム12内の温度(Tr)との関係において、T2<Trの場合には、制御装置19は三方弁60をB方向に切換える。これにより、図3に示すように、ポンプ64の作用下、第1経路54から第1熱交換器52を経た熱媒体は、切換経路62及び第2熱交換器58へと流通する。
【0054】
このため、第2熱交換器58において、熱媒体により、クリーンルーム12からの環気が冷却されることで、空調機26に導入される混合気が冷却され、空調機26での冷却負荷が軽減されるため、空調機26での空調の効率が向上する。そして、第2熱交換器58を経由した熱媒体は、三方弁60を介して、水槽50へと戻ることになる。
【0055】
一方、例えば、外気温度(Toa)が非常に高く、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)と、クリーンルーム12内の温度(Tr)との関係において、T2>Trの場合には、熱媒体により前記環気を冷却することが不可能であるため、制御装置19は三方弁60をA方向に切換える。これにより、図2に示すように、熱媒体は、ポンプ64の作用下、切換経路62及び第2熱交換器58へは流通せずに、三方弁60を介して水槽50へと戻ることになる。
【0056】
第2に、例えば冬期であって、外気温度(Toa)がクリーンルーム12内温度(Tr)より低い場合、すなわち、Toa<Trである場合について説明する。なお、この場合のT1とToaとTrとの関係は、Toa≦T1<Trとなる。
【0057】
この場合にも、水槽50内の熱媒体(水)は、上記のように、例えば、T1=+15℃程度である。このため、ポンプ64を駆動することにより、熱媒体は、第1経路54から第1熱交換器52を流通し、外気調和機22に導入される前の外気と熱交換して、この外気を加熱すると共に、当該熱媒体自体は冷却される。
【0058】
このように、外気調和機22に導入される前の外気が加熱されることにより、外気温度が低い場合でも、外気調和機22での加熱負荷が低減されるため、外気調和機22での空調の効率が向上する。
【0059】
ここで、クリーンルーム側経路24bへの環気は、上記のように、クリーンルーム12内での熱負荷により、当該クリーンルーム12内の温度よりも若干高く、例えば、+25℃程度となっている。
【0060】
そこで、先ず、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)と、クリーンルーム12内の温度(Tr)との関係において、T2<Trの場合には、制御装置19は三方弁60をB方向に切換える。これにより、図3に示すように、ポンプ64の作用下、第1経路54から第1熱交換器52を経た熱媒体は、切換経路62及び第2熱交換器58へと流通する。
【0061】
このため、第2熱交換器58において、熱媒体により、クリーンルーム12からの環気が冷却されることで、空調機26に導入される混合気が冷却され、空調機26での冷却負荷が軽減されるため、空調機26での空調の効率が向上する。そして、第2熱交換器58を経由した熱媒体は、三方弁60を介して、水槽50へと戻ることになる。
【0062】
ところで、この場合(例えば、冬期。Toa<Tr)には、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)は、クリーンルーム12内の温度(Tr)以上となることはないため、通常、三方弁60は常にB方向に切換制御されている。
【0063】
ところが、外気温度(Toa)が非常に低い時には、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)が過度に低下してしまう場合がある。このような場合、第1熱交換器52にて過度に冷却された熱媒体を第2熱交換器58へ流通させてしまうと、クリーンルーム12からの環気の温度が過度に(例えば、+10℃〜+15℃程度まで)低下するおそれがあり、結果的に空調機26での暖房負荷が増加してしまう可能性がある。
【0064】
そこで、上記のように、外気温度(Toa)が非常に低く、クリーンルームからの環気の温度が過度に低下するおそれがある場合、すなわち、第1熱交換器52から出た熱媒体の温度(T2)と、クリーンルーム12内の温度(Tr)との関係において、T2<Trであって、T2とTrの温度差が所定の範囲以上(例えば、20℃以上)となる場合(以下、T2<<Trと記載する)には、制御装置19により切換手段である三方弁60を断続的に切換制御して、第2熱交換器58にて熱媒体と環気とを断続的に熱交換させることにより、前記環気が過度に冷却されることを防止する制御を行う。
【0065】
このように、断続的に切換手段である三方弁60を制御する方法については、例えば、第2熱交換器58の熱交換能力とTrとT2の温度差から、空調機26に導入される空気の温度を予測して、該空調機26に導入される空気の温度がTrよりも低くなることが想定される場合や、第2熱交換器58で熱交換した後の空気の温度を測定し、該測定された温度がTrよりも低い場合において、三方弁60を切換制御し、第2熱交換器58への熱媒体の循環を一時的に停止する方法が挙げられる。
【0066】
なお、前記断続的に熱交換させるとは、所定時間毎に三方弁60を切換制御することにより、第2熱交換器58への熱媒体の流通を所定時間毎に停止又は流通させるように制御することなどが一例として挙げられる。
【0067】
第3に、夏期や冬期以外、例えば、春期や秋期(中間期)であって、外気温度(Toa)が、クリーンルーム12内温度(Tr)以下であって、水槽50内の熱冷媒の温度(T1)より高い場合(Toaが、TrとT1との間の温度域にある場合)、すなわち、T1<Toa≦Trとなる場合について説明する。
【0068】
このような場合、第1熱交換器52及び第2熱交換器58における上記熱媒体と、外気又は環気との熱交換を行ったとしても、必ずしも所望の効率向上を図ることが困難である可能性がある。このため、このような場合には、制御装置19により、ポンプ64を停止して、熱媒体の第1熱交換器52及び第2熱交換器58への循環を行わないような制御を実行するものとする。
【0069】
以上のように、熱媒体循環部16においては、表1に示すように、5種類の制御方法が実行される。このように、空気調和設備10では、外気温度(Toa)、クリーンルーム12内の温度(Tr)、第1熱交換器52から出た熱冷媒の温度(T2)及び水槽50内の温度(T1)等からなる各条件に応じて、ポンプ64のON−OFF制御や三方弁60の切換制御を行うことで、より一層高効率な空調運転が可能となる。
【0070】
【表1】

【0071】
以上、本実施形態に係る空気調和設備10によれば、スクラバ48にて使用される液体である水を熱媒体として、熱媒体循環部16を循環させると共に、三方弁60を切換制御する。これにより、外気調和機22及び空調機26へ導入される外気及び環気を、第1熱交換器52と第2熱交換器58により加熱又は冷却することができる。
【0072】
このため、例えば、外気温度の高い夏期には、特に外気調和機22の負担を大幅に軽減することができる。また、外気温度の低い冬場には、外気調和機22及び空調機26の負担を大幅に軽減することができ、空気調和設備10の効率を向上させることができる。
【0073】
特に、上記実施形態でのクリーンルーム12のように、局所排気部18を有している場合には、クリーンルーム12内の空気の排気量が大きく、クリーンルーム12内を上記のような正圧に維持するためには、その分、外気導入量も大きくなり、その空調には膨大なエネルギを消費する。しかしながら、本実施形態に係る空気調和設備10では、上記のような高効率での空調が可能であるため、クリーンルーム12の空調に係るエネルギ消費量を大幅に低減することができる。
【0074】
ところで、本実施形態に係る空気調和設備10では、基本的には、熱媒体循環部16による熱媒体の循環という簡単な構成により、空気調和部14での空調効率を大幅に向上させることができる。
【0075】
このため、例えば、既に空気調和部14及び局所排気部18が配設されているようなクリーンルーム等の空気調和設備において、スクラバ48の水槽50に第1経路54及び第2経路56を配管工事すると共に、外気導入経路20及びクリーンルーム側経路24bに第1熱交換器52及び第2熱交換器58を、さらに、三方弁60及び各経路を施工するという簡単な追加工事によって、本発明の実施形態に係る空気調和設備10を構築することができる。
【0076】
従って、既存のクリーンルームの空気調和設備を、容易且つ低コストで、本実施形態に係る高効率な空気調和設備10に変更することが可能となる。
【0077】
なお、熱媒体循環部16は、本実施形態に係る空気調和設備10の使用条件や設置場所等に応じて、例えば、第1経路54と、第2経路56と、第1熱交換器52とを用い、三方弁60等を用いずに、外気と熱媒体とを熱交換させ、環気と熱媒体とは熱交換しないように構成してもよい。
【0078】
同様に、熱媒体循環部16は、第1経路54と、第1熱交換器52と、第2経路56の切換経路62への分岐部分より上流側と、切換経路62と、第2熱交換器58とを用いて切換経路62の下流側を水槽50に連通させ、三方弁60等を用いずに、外気及び環気と熱媒体とを熱交換させるように構成してもよい。この場合には、第2経路56の切換経路62への分岐部分より上流側と、切換経路62と、第2熱交換器58とを用いて切換経路62の下流側を水槽50に連通させることにより構成される経路が、上記した第3の経路として機能する。
【0079】
以上、上記実施形態により本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0080】
第2熱交換器58は、空調機吸入経路24のクリーンルーム側経路24bに設けるものとしたが、例えば、外気調和機側経路24aとクリーンルーム側経路24bとが合流した後の空調機吸入経路24に設けてもよい。
【0081】
また、外気調和機22及び空調機26は、夫々導入される外気及び混合気を所定の温度及び湿度に調整できればよく、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0082】
また、本発明に係る空気調和設備10の運転制御は、上記した5種類の制御方法(表1参照)に限定されるものではなく、種々の制御を実行可能であることは勿論である。
【0083】
さらに、本発明に係る空気調和方法、空気調和設備及びこの空気調和設備の制御方法はクリーンルーム以外の恒温室等にも適用可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和設備の概略構成説明図である。
【図2】前記空気調和設備において、三方弁を図1中のA方向に切換えた場合における熱媒体の流通経路を示す説明図である。
【図3】前記空気調和設備において、三方弁を図1中のB方向に切換えた場合における熱媒体の流通経路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10…空気調和設備 12…クリーンルーム
14…空気調和部 16…熱媒体循環部
18…局所排気部 19…制御装置
20…外気導入経路 22…外気調和機
24…空調機吸入経路 24a…外気調和機側経路
24b…クリーンルーム側経路 26…空調機
28…循環経路 48…スクラバ
50…水槽 52…第1熱交換器
54…第1経路 56…第2経路
58…第2熱交換器 60…三方弁
62…切換経路 64、72…ポンプ
74…噴霧部
80a、80b、80c、80d…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気調和機により外気を導入して空調し、
前記空調された外気と被空調空間からの空気とを吸気し、空調機により空調した後、前記被空調空間に供給し、
排気手段により前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入し、該湿式集塵機にて液体を噴射し、前記噴射した液体と前記排気とを接触させて前記排気を洗浄する空気調和方法であって、
前記液体と、前記外気調和機に導入される前の外気とを熱交換させることを特徴とする空気調和方法。
【請求項2】
請求項1記載の空気調和方法において、
前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも低い場合には、
前記熱交換した後の前記液体を、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気と熱交換させることを特徴とする空気調和方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の空気調和方法において、
前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも高い場合には、
前記熱交換した後の前記液体を、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気とは熱交換させずに前記湿式集塵機に循環させることを特徴とする空気調和方法。
【請求項4】
請求項2記載の空気調和方法において、
前記外気調和機に導入される前の外気と熱交換した後の前記液体の温度が、前記被空調空間内の温度よりも低く、前記被空調空間内の温度と前記液体の温度との差が所定の範囲以上である場合には、
前記熱交換した後の前記液体と、前記被空調空間から吸気され且つ前記空調機に導入される前の空気と断続的に熱交換させることを特徴とする空気調和方法。
【請求項5】
被空調空間を空調する空気調和設備であって、
外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、
前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、
前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、
前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、
前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、
前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第2の経路とを備えることを特徴とする空気調和設備。
【請求項6】
被空調空間を空調する空気調和設備であって、
外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、
前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、
前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、
前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、
前記空調機吸入経路に設けられた第2の熱交換器と、
前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、
前記第2の熱交換器を経由して、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第3の経路とを備えることを特徴とする空気調和設備。
【請求項7】
被空調空間を空調する空気調和設備であって、
外気導入経路を介して外気を導入し空調する外気調和機と、
前記外気調和機の出口側と前記被空調空間とを連通する空調機吸入経路を介して、前記外気調和機により空調された外気と前記被空調空間からの空気とを吸気して空調した後、前記被空調空間に供給する空調機と、
前記被空調空間の空気を排気して湿式集塵機に導入する排気手段と、
前記外気導入経路に設けられた第1の熱交換器と、
前記空調機吸入経路に設けられた第2の熱交換器と、
前記湿式集塵機に設けられた液体貯留部と前記第1の熱交換器の入口側とを連通する第1の経路と、
前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第2の経路と、
前記第2の熱交換器を経由して、前記第1の熱交換器の出口側と前記液体貯留部とを連通する第3の経路とを備え、
前記第2の経路は、前記第2の熱交換器をバイパスしており、
前記第2の経路と前記第3の経路とを選択的に切換える切換手段を備えることを特徴とする空気調和設備。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の空気調和設備の制御方法であって、
前記外気調和機に導入される前の外気の温度が、前記被空調空間内の温度と前記液体貯留部内の液体の温度と間の温度域にある場合には、前記液体の循環を停止させることを特徴とする空気調和設備の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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