説明

空気調和機の制御方法

【課題】低外気温での暖房運転時に生じた室外熱交換器の着霜を逆サイクルの冷房サイクル運転により除霜するにあたって、除霜時間中における圧縮機の運転時間を短縮する。
【解決手段】除霜を目的として行う室外ファン51を停止しての冷房サイクル運転開始後、配管温度センサ52により室外熱交換器50の冷媒出口側配管の温度を検知し、その配管温度が所定の基準温度を超えた時点で膨張弁40を閉鎖し、室外熱交換器50内に圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒を貯留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の制御方法に関し、さらに詳しく言えば、低外気温での暖房運転時に生じた室外熱交換器の着霜を冷房サイクル運転により除霜する空気調和機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプによる空気調和機は、圧縮機,四方弁,室外熱交換器,膨張弁および室内熱交換器を冷媒配管を介して接続してなる冷媒循環回路を備え、四方弁にて冷媒の流れ方向を切り替えることにより、暖房運転時には、室内熱交換器を凝縮器、室外熱交換器を蒸発器として作用させ、冷房運転時には、室内熱交換器を蒸発器、室外熱交換器を凝縮器として作用させるようにしている。
【0003】
ところで、低外気温での暖房運転時に、室外熱交換器の蒸発温度が氷点下かつ露点以下である場合、そのフィンの表面に霜が発生する。この状態で長時間運転を続けると、霜が成長してフィンが霜で覆われ熱伝達率が低下する。また、霜によりフィン間が遮蔽され室外ファンの風が通らなくなるため、室外熱交換器の性能が著しく低下する。
【0004】
そこで、特許文献1,2に記載されているエアコンでは、室外熱交換器に霜が発生した場合には、逆サイクル運転(冷房サイクル運転)やバイバス経路を用いて、圧縮機より吐出される高温高圧冷媒を室外熱交換器に流して解氷,流下させる除霜運転を行うようにしている。
【0005】
この除霜運転により解氷水がフィンの表面を伝わって流下するが、その流下中に再結氷しないようにフィン表面を高温に保つ必要がある。したがって、これら解氷に必要な時間と、再結氷させることなく解氷水を流下させる時間の合計が除霜時間となる。
【0006】
逆サイクル運転(冷房サイクル運転)中は、通常、室外ファンを停止させてから、四方弁を切り替え、膨張弁の開度を大きくして冷媒流量を増やした運転を行い、解氷が終了して、その解氷水が流下している間も、室外熱交換器の所定の配管部位(例えば、熱交換器内の配管途中もしくは冷媒出口配管)の温度があらかじめ設定された温度になるまで圧縮機の運転を継続する制御を行うようにしている。
【0007】
この除霜制御において、圧縮機停止後における室外熱交換器内の冷媒と低圧冷媒との均圧により、室外熱交換器の配管温度の低下が起こることから、従来では、上記の設定温度は、流下中の解氷水が再結氷しないように、氷点よりもかなり高い温度(例えば10℃程度)に設定されている。
【0008】
このように、従来では、解氷終了後においても、室外熱交換器の所定の配管部位の配管温度が上記設定温度になるまで圧縮機が運転されるため、実際に解氷に必要な熱量よりも多くの電力を使っていることになり、省エネルギーの観点から好ましくない。参考までに、従来の除霜運転前後における圧縮機,室外ファン,膨張弁および四方弁の動作タイミングチャートを図2(a)に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−337187号公報(段落0004〜0008)
【特許文献2】特開平10−170109号公報(段落0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、低外気温での暖房運転時に生じた室外熱交換器の着霜を冷房サイクル運転により除霜するにあたって、除霜時間中における圧縮機の運転時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、圧縮機,四方弁,室外熱交換器,膨張弁および室内熱交換器を冷媒配管を介して接続してなる冷媒循環回路を備え、上記室内熱交換器を凝縮器,上記室外熱交換器を蒸発器として運転する暖房運転時における上記室外熱交換器の着霜を、上記室内熱交換器を蒸発器,上記室外熱交換器を凝縮器とし、かつ、上記室外熱交換器の室外ファンを停止して行う冷房サイクル運転により除霜する空気調和機の制御方法において、上記除霜を目的として行う上記冷房サイクル運転開始後、上記室外熱交換器の温度を検知し、その温度が所定の第1基準温度を超えた時点で上記膨張弁を閉鎖し、上記室外熱交換器内に上記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒を貯留することを特徴としている。
【0012】
また、本発明において、上記室外熱交換器の温度は、上記室外熱交換器の冷媒出口側配管で測定されるものであることを特徴としている。
【0013】
また、本発明では、上記膨張弁を閉鎖し、第一の所定時間後に上記圧縮機を停止することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記四方弁を切り替えて上記冷房サイクル運転から上記暖房運転に復帰させる際、上記膨張弁を所定開度に開き、第二の所定時間後に上記四方弁を切り替えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、除霜終了後の暖房運転時において、上記圧縮機の起動後に上記室外熱交換器の温度を検知し、その検知温度が所定の第2基準温度を下回るまで上記室外ファンの停止を維持し、上記第2基準温度を下回った時点で上記室外ファンを起動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、除霜を目的として行う室外ファンを停止しての冷房運転開始後、室外熱交換器の所定の配管部位の温度を検知し、その配管温度が所定の第1基準温度を超えた時点で膨張弁を閉鎖し、室外熱交換器内に圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒を貯留するようにしたことにより、貯留した冷媒の熱により、室外熱交換器の配管温度を高く保つことができるため、解氷水の流下時に圧縮機が停止していても、解氷水の再結氷のおそれがなく、除霜時間中における圧縮機の運転時間を短縮することができる。
【0017】
また、室外熱交換器の冷媒出口側は、冷媒入口側に比べて解氷が遅い箇所として特定できることから、その冷媒出口側の配管温度を検知して、膨張弁閉鎖の制御と圧縮機停止の制御を行うことにより、室外熱交換器の着霜が完全に解氷されるように除霜運転を制御することが可能となる。
【0018】
また、四方弁を切り替えて上記冷房サイクル運転から暖房運転に復帰させる際、膨張弁を所定開度に開き、所定時間後に四方弁を切り替えるようにしたことにより、高圧側と低圧側との圧力差を小さくして四方弁切替時の冷媒流動音や振動を抑制することができる。
【0019】
また、除霜終了後の暖房運転時において、圧縮機の起動後に室外熱交換器の所定の配管部位の温度を検知し、その検知温度が所定の第2基準温度を下回るまで室外ファンの停止を維持し、第2基準温度を下回った時点で室外ファンを起動することにより、室外熱交換器の配管やフィン等に残留している熱量を大気に放出せずに効果的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によって制御される空気調和機を示す模式図。
【図2】(a)従来技術による除霜運転前後における圧縮機,室外ファン,膨張弁および四方弁の各動作を示すタイミングチャート、(b)本発明による除霜運転前後における圧縮機,室外ファン,膨張弁および四方弁の各動作を示すタイミングチャート。
【図3】本発明の制御方法において、暖房運転に復帰させる際の四方弁および膨張弁の動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
まず、図1を参照して、この空気調和機は、基本的な構成として、圧縮機10,四方弁20,室内熱交換器30,膨張弁40,室外熱交換器50を冷媒配管を介して接続してなる冷媒循環回路と、動作の全体を制御する制御部60とを備えている。
【0023】
なお、膨張弁40には、弁開度が可変の電子膨張弁が用いられる。また、圧縮機10の冷媒戻り側の冷媒吸入経路にはアキュムレータ11が設けられ、室内熱交換器30には室内ファン31が、室外熱交換器50には室外ファン51がそれぞれ付設されている。
【0024】
また、動作制御に必要な各種センサとして、例えば圧縮機10の高圧側と低圧側とにそれぞれ圧力センサ、室内機側には室内温度センサ、室外機側には室外温度センサ等が設けられるが、これら各センサのうち、図1には、室外熱交換器50の冷媒入口配管側と冷媒出口配管側とに設けられている配管温度センサ52,53のみを示す。この各配管温度センサ52,53にて検知された配管温度は制御部60に与えられる。
【0025】
基本的な動作として、暖房運転時には、圧縮機10の冷媒吐出側が四方弁20を介して室内熱交換器30側に接続され、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒が、図示実線矢印Aに示すように、室内熱交換器30→膨張弁40→室外熱交換器50→四方弁20→アキュムレータ11→圧縮機10へと流れ、室内熱交換器30が凝縮器、室外熱交換器50が蒸発器として作用する。この暖房運転時、配管温度センサ52が冷媒入口側の温度センサで、配管温度センサ53が冷媒出口側の温度センサとなる。
【0026】
これに対して、冷房サイクル運転時には、圧縮機10の冷媒吐出側が四方弁20を介して室外熱交換器50側に接続され、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒が、図示鎖線矢印Bに示すように、室外熱交換器50→膨張弁40→室内熱交換器30→四方弁20→アキュムレータ11→圧縮機10へと流れ、室外熱交換器50が凝縮器、室内熱交換器30が蒸発器として作用する。この冷房サイクル運転時、配管温度センサ52が冷媒出口側の温度センサで、配管温度センサ53が冷媒入口側の温度センサとなる。
【0027】
制御部60は、図示しないリモコンからの運転指令信号に基づいて、それに必要な空調制御を行うが、低外気温下で暖房運転が継続的に行われ、室外熱交換器50の温度と運転時間あるいは外気温等によって、室外熱交換器50に霜が発生していると判断した場合、本発明では、次のような除霜運転を実行する。
【0028】
図2(b)を参照して、制御部60は、四方弁20を冷房運転側に切り替えて、室外熱交換器50を凝縮器として作用させる除霜運転を行う。このとき、室外ファン51を停止する。また、膨張弁40は全開(最大開度)とする。
【0029】
この冷房サイクル運転により、圧縮機10にて圧縮された高温高圧の冷媒が室外熱交換器50に供給され、室外熱交換器50の配管温度が上昇する。
【0030】
制御部60は、冷媒出口側の温度センサである配管温度センサ52による冷媒出口側の配管検知温度Toを監視し、あらかじめ設定されている基準温度T1(第1の基準温度)と比較する。基準温度T1は外気温との関係で決められ、この実施形態では、氷点よりも高い5℃としている。この基準温度T1の設定温度は、上記従来例での設定温度(一例としての10℃)よりも低い温度である。
【0031】
制御部60は、冷媒出口側の配管検知温度Toが基準温度T1以上(To≧T1)、もしくは基準温度T1を超えた(To>T1)時点で、膨張弁40を閉鎖(最小開度)し、第一の所定時間(t)経過後、圧縮機10を停止する。このように、圧縮機10の停止タイミングを膨張弁40の閉鎖から所定時間(t)だけ遅らせることで、圧縮機10から吐出された高温高圧の冷媒を室外熱交換器50内に十分に貯留することができる。
【0032】
上記従来の除霜運転では、圧縮機停止後に室外熱交換器の温度が低下するが、本発明によれば、室外熱交換器50の解氷が終了したと判断される時点で圧縮機10を停止した場合でも、室外熱交換器50に高温高圧の冷媒が貯留されているため、配管内の冷媒と配管の温度差から配管の温度が緩やかに上昇する。
【0033】
解氷水の流下中は、氷点以上の再結氷が起こらない程度の温度で十分であることから、過度に加熱する必要がなく、圧縮機10を停止しても解氷水が再結氷する心配はない。さらに、解氷終了から流下が終わるまでの時間は配管温度の影響がないため、除霜時間中の圧縮機運転時間を短縮しても除霜時間が長くなることはない。(図2(a)と図2(b)における圧縮機の停止時点のずれを参照)。
【0034】
制御部60は、上記の除霜運転終了後、四方弁20を室外熱交換器50側から室内熱交換器30側に切り替え、膨張弁40を所定の開度とし、圧縮機10を再起動して暖房運転を再開する。
【0035】
このとき、室外熱交換器50の配管やフィンに蓄熱されている熱量を大気に放出させずに回収して暖房の立ち上がり性能を向上させるため、制御部60は、室外ファン51の起動を遅らせる。
【0036】
すなわち、制御部60は、暖房運転時に出口側となる室外熱交換器の配管検知温度Toと、あらかじめ設定されている基準温度T2(第2の基準温度)とを比較する。この基準温度T2も外気温との関係で決められ、この実施形態では、T2=外気温+5℃としており、To≦T2(もしくはTo<T2)になった時点で、室外ファン51を起動するようにしている。
【0037】
ところで、除霜運転終了後に四方弁20を切り替えて暖房運転を復帰させる際、高低圧差が大きいと、四方弁20の切り替え時に一気に大量の冷媒が移動して大きな冷媒流動音や振動が発生する。
【0038】
そこで、本発明では、図3に示すように、四方弁20を冷房側から暖房側に切り替える前の所定のタイミングで膨張弁40を適量開き、第二の所定時間経過後に四方弁20を切り替えるようにしている。このように所定時間冷媒が流通することで、切り替え時における高低圧差を小さくすることができ、冷媒流動音や振動を抑制するようにしている。
【0039】
上記実施形態では、除霜運転時、室外熱交換器50の冷媒出口側の配管検知温度Toを監視するようにしているが、この配管検知温度Toは、解氷がもっとも遅い箇所(例えば、室外熱交換器50の最下部側配管)における配管温度であることが好ましい。
【0040】
また、膨張弁40を閉鎖したのちに、圧縮機10を停止するようにしているが、膨張弁40の閉鎖と同時に圧縮機10を停止させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 圧縮機
11 アキュムレータ
20 四方弁
30 室内熱交換器
31 室内ファン
40 膨張弁
50 室外熱交換器
51 室外ファン
52,53 配管温度センサ
60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機,四方弁,室外熱交換器,膨張弁および室内熱交換器を冷媒配管を介して接続してなる冷媒循環回路を備え、上記室内熱交換器を凝縮器,上記室外熱交換器を蒸発器として運転する暖房運転時における上記室外熱交換器の着霜を、上記室内熱交換器を蒸発器,上記室外熱交換器を凝縮器とし、かつ、上記室外熱交換器の室外ファンを停止して行う冷房サイクル運転により除霜する空気調和機の制御方法において、
上記除霜を目的として行う上記冷房サイクル運転開始後、上記室外熱交換器の温度を検知し、その温度が所定の第1基準温度を超えた時点で上記膨張弁を閉鎖し、上記室外熱交換器内に上記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒を貯留することを特徴とする空気調和機の制御方法。
【請求項2】
上記室外熱交換器の温度は、上記室外熱交換器の冷媒出口側配管で測定されるものであることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項3】
上記膨張弁を閉鎖し、第一の所定時間後に上記圧縮機を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項4】
上記四方弁を切り替えて上記冷房サイクル運転から上記暖房運転に復帰させる際、上記膨張弁を所定開度に開き、第二の所定時間後に上記四方弁を切り替えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項5】
除霜終了後の暖房運転時において、上記圧縮機の起動後に上記室外熱交換器の温度を検知し、その検知温度が所定の第2基準温度を下回るまで上記室外ファンの停止を維持し、上記第2基準温度を下回った時点で上記室外ファンを起動することを特徴とする空気調和機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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