説明

空気調和機の室外機及び室外機の組み立て方法

【課題】簡便に空気調和機の室外機の防錆及び防傷を実現する。
【解決手段】空気調和機の室外機6を、切断された塗装鋼板を成形した側面板及び底面板を有してなる筐体40と、切断された塗装鋼板を成形して筐体40の上部に嵌合挿入組付けされる蓋体42とを備えて構成する。そして、蓋体42を、天井部42cと、この天井部42cの外周端部を下方に折り曲げて形成され筐体を外包する垂下部42dと、垂下部42dの下端部を筐体の方向に折り曲げて形成された折り曲げ部42eとを有して構成し、この折り曲げ部42eの切断端面42bにパラフィン44を擦着した後、蓋体42を筐体40に勘合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室外機及び室外機の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機は、一般に側面板及び底面板などで構成された筐体の内部に、圧縮機、熱交換器及び電気部品を収納した電気箱などを配置しており、また、筐体の上部には蓋体が嵌合挿入組付けされる。
【0003】
室外機の筐体や蓋体は、所定サイズに裁断された塗装鋼板をプレス金型で成形して用いられるのが一般的である。この場合、室外機は屋外に設置されるため雨水などの水分が塗装鋼板の切断端面と接触し、切断端面において錆の発生などに伴って腐食が進行することが問題となる。
【0004】
このような塗装鋼板の切断端面からの腐食進行抑制方法としては、切断端面に直接防錆剤処理、或いは塗装を施すことなどが挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、グリースを揮発性溶剤で溶かした潤滑剤を、冷蔵庫の扉パネルとパネルを挟持する扉キャップとの嵌合部に注入して、扉パネルの切断端面の防錆処理を行うことが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−344090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、簡便な方法で塗装鋼板の切断端面の防錆を図りたいという要求に十分対応できない場合がある。
【0008】
すなわち、特許文献1は、扉パネルと扉キャップとによりポケット状の溝空間を設け、この溝空間に潤滑剤潤滑剤を注入する方法であるが、これを空気調和機の室外機に適用しようとすると、扉キャップのような部材を設けるスペースが確保し難く、柔軟な設計、製造に困難が伴う場合がある。
【0009】
また、仮に扉キャップを設けず、直接扉パネルをむき出しの状態にすると潤滑剤は流動性が良いため液垂れしてしまい、充分な腐食防止効果を得ることができない恐れがある。
【0010】
特に、室外機の蓋体については、自身の切断端面における腐食の他に、筐体の上部に嵌合挿入される際に、蓋体の切断端面によって筐体の塗装面を傷つけて、そこから新たな錆の発生による腐食が進行するという2次的な問題もあるが、仮に嵌合組み立ての前に潤滑剤を塗布したとしても、液垂れによって筐体の塗装面を傷つけてしまう恐れがある。
【0011】
本発明は、簡便に空気調和機の室外機の防錆及び防傷を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の空気調和機の室外機は、切断された塗装鋼板を成形した側面板及び底面板を有してなる筐体と、切断された塗装鋼板を成形して筐体の上部に嵌合挿入組付けされる蓋体とを備えるものである。そして、蓋体は、天井部と、この天井部の外周端部を下方に折り曲げて形成され筐体を外包する垂下部とを有して構成され、この垂下部の切断端面及び筐体と対向する内面にはパラフィンが擦着されてなることを特徴とする。
【0013】
これによれば、蓋体の垂下部の切断端面にパラフィンが擦着されているので、パラフィン(ろう)の撥水効果により、例えば雨水などが切断端面の鋼板に侵入するのを抑制して、切断端面の錆の発生を抑制することができる。また、切断端面と共に筐体と対向する内面にもパラフィンが擦着されていることで、蓋体を筐体に嵌合する時に、筐体の塗装面を保護して防傷効果を得ることができる。また、パラフィンの滑り摩擦により蓋体の挿入性も向上する。このように、切断端面にパラフィンを擦着することにより、簡便に空気調和機の室外機の防錆及び防傷を実現することができる。
【0014】
この場合において、蓋体は、垂下部の下端部を筐体の方向に折り曲げて形成された折り曲げ部を有し、この折り曲げ部の切断端面にパラフィンが擦着されてなることが好ましい。
【0015】
これによっても、上述と同様にパラフィンの撥水効果により、切断端面の鋼板に雨水などが侵入するのを抑制して、切断端面の錆の発生を抑制することができ、また、切断端面が筐体に対向する面となるので、パラフィンにより蓋体を筐体に嵌合する時に筐体の塗装面を保護して防傷効果を得ることができる。
【0016】
また、蓋体は、折り曲げ部の切断端面と筐体との間の距離が0.1〜0.8mmになるように形成されてなることが好ましい。
【0017】
これによれば、折り曲げ部の切断端面と筐体との隙間はパラフィンによって固着され密閉されたシール状態となり、隙間から筐体の内部に雨水などが浸入するのを防ぐことができ、その結果、空気調和機の信頼性を向上することができる。
【0018】
また、折り曲げ部の切断端面及びこの切断端面に接する下面にパラフィンが擦着されてなり、この下面に擦着されたパラフィンの表面は、パラフィンが擦着されていない部位の下面に対して90〜135°の角度の範囲内に形成されてなることが好ましい。
【0019】
これにより、下面に擦着されたパラフィンに付着した水、或いはパラフィンが擦着されていない下面側から伝ってきた水を下方に滴下させ易くなるので、切断端面への水の侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便に空気調和機の室外機の防錆及び防傷を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を適用してなる空気調和機の室外機の実施形態を図1〜図10を用いて説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0022】
まず、図1は、本実施形態の空気調和機の室外機を構成要素とする空気調和機の冷凍サイクルを示す図である。図1に示すように、空気調和機2は、室内機4と、室外機6とを冷媒を循環する配管8で連結して構成されている。室内機4には、室内熱交換器10、室内膨張弁12、室内ファン14などが配置されている。また、室外機6には、圧縮機16、四方弁18、室外熱交換器20、室外ファン22などが配置されている。
【0023】
このような空気調和機の基本的な動作について説明する。例えば暖房運転時、圧縮機16により圧縮された冷媒ガスが、四方弁18を介して室内機4内の室内熱交換器10に導かれるようになっている。室内熱交換器10に導かれた冷媒ガスは、室内ファン14によって室内へ送られる空気と熱交換して凝縮した後、膨張弁12を介して室外機6の室外熱交換器20に導かれるようになっている。室外機6に導かれた冷媒は室外ファン22によって室外熱交換器20に送られる外気と熱交換して蒸発し圧縮機16に戻される構成になっている。冷房運転の場合は、四方弁18を切り替えて冷媒が反対方向に循環する。
【0024】
本発明は、このような空気調和機を構成する室外機6に関するものである。以下、室外機6について説明する。図2は、本実施形態の空気調和機の室外機の外観図である。図2に示すように、室外機6は、サービスカバ30、アトカバ32、シュラウド34などで構成された側面板36と、底面板38とで、筐体40を構成している。そして、筐体40の上部には、蓋体であるウエカバ42が嵌合挿入されて組付けされている。
【0025】
サービスカバ30、アトカバ32、シュラウド34、ウエカバ42などは、図3に示すように、表面塗装された塗装鋼板100が所定のサイズに裁断され、プレス成形用の金型200によって所望の形状に加工されて用いられる。
【0026】
このような製造過程により、塗装鋼板100は図4に示すように、表面は塗装100aが施してあるが、切断端面100bは塗装未処理状態であり、いわゆる地鉄がむき出しとなる。
【0027】
次に、室外機6の組み立てについて説明する。図5に示すように、室外機6は、筺体40の上部からウエカバ42が嵌合挿入され、螺子42aにて締結固定されるものである。
【0028】
このような室外機は、一般に屋外に設置されており、雨や湿気などによって発生した水滴がウエカバ42の切断端面42bに付着し、錆が発生する。また、ウエカバ42を筐体40に嵌合する際に、ウエカバ42の切断端面42bにより筐体の塗装面を傷つけ、塗装がはがれた箇所に同様に錆が発生する。以下、このような問題を解決する本実施形態の室外機の特徴部について説明する。
【0029】
図6に示すように、ウエカバ42をプレス成形用の金型200によって所望の形状に加工した後、筐体に組付ける前の状態において、ウエカバ42の外周部の切断端面に42bに沿って固形状態のパラフィン(ろう)44を予め擦着する。
【0030】
図7は、ウエカバ42の形状の詳細と、パラフィン44が擦着された状態での嵌合状態を説明する断面図である。図7に示すように、本実施形態では、ウエカバ42は、天井部42cと、天井部42cの外周端部を下方に折り曲げて形成され筐体を外包する垂下部42dと、垂下部42dの下端部を筐体の方向に折り曲げて形成された折り曲げ部42eを有して構成されている。そして、この折り曲げ部42eの切断端面42bにパラフィン44が擦着されている。
【0031】
これによれば、パラフィン44の撥水効果によって、雨や湿気などによって発生した水が、ウエカバ42の切断端面42bに侵入しづらくなる。したがって、ウエカバ42の切断端面420bの錆の発生を抑制することができ、地鉄部を保護することができる。
【0032】
また、ウエカバ42は、パラフィン44が擦着された状態で筐体に嵌合されるので、ウエカバ42を挿入する際に、パラフィン44によって筐体の塗装面は保護され、塗装面がウエカバ42の切断端面42bにより傷つくことを抑制することができる。したがって、錆の発生要因を低減することができ、その結果、簡便に空気調和機の室外機の防錆及び防傷を実現することができる。
【0033】
また、従来技術のように、揮発性溶剤で溶かした潤滑剤を、切断端面を狭持する部材との嵌合部に注入する工程を行わないので、注射器の先端で塗装面を損傷してしまう恐れもない。さらに、本実施形態では、揮発性溶剤を用いないので、時間経過後、溶剤の成分が蒸発することによる作業場所の環境管理や地球環境への配慮を必要としない。
【0034】
ところで、室外機は外気温と輻射熱によって筐体の表面温度は約20℃から65℃の範囲で変化する。本実施形態のパラフィンの仕様は融点約47〜68℃であるため、液体状となる場合もある。このような環境下においては、液体のパラフィン44は、ウエカバ42の切断端面42bと筺体の塗装面との隙間Δで表面張力によって附着状態を保つ。そして、再び筐体及びウエカバ42の温度がパラフィンの融点以下の温度となればパラフィンは固体となって隙間Δに固着し塗装面と切断端面42bは密閉されたシール状態となり雨水などの侵入を抑制することができる。このようなパラフィン44によるシールと表面張力を得るためには嵌合隙間Δは0.1〜0.8mm程度が望ましい。
【0035】
また、筐体40とウエカバ42の表面温度がパラフィン44の融点47℃を超える環境下は晴れや曇りの天候であり、雨天時の環境ではパラフィン44の融点を超えることは無いため嵌合隙間からパラフィン44が雨水と混在し液体状態で流出することは無い。したがって、雨天時にはパラフィン44は固体状態で撥水効果を保持することができる。
【0036】
また、パラフィンの擦着は、固体形状であるため取り扱い、管理、作業が簡単にできるし、パラフィンの引火点は約190℃、発火点は約260〜371℃であるから、一般環境における外気温では火災発生もない。したがって、一般環境においては作業者が吸引することもなく、大気への放出がないことから、環境に配慮した防錆、防傷を実現することができる。
【0037】
このように、切断端面にパラフィンを擦着する簡便な方法で防錆、防傷を実現しているが、さらに、切断端面に擦着されたパラフィンの好ましい形状について説明する。図8は、図7における切断端面42b及びパラフィン44の周辺部を拡大した図である。図8に示すように、パラフィン44は、切断端面42b及び切断端面42bに接する下面42fに擦着されている。そして、この下面42fに擦着されたパラフィンの表面44aは、パラフィンが擦着されていない部位の下面に対して90〜135°の角度の範囲内に形成されている。
【0038】
これによれば、下面42fに擦着されたパラフィン44に付着した水、或いはパラフィンが擦着されていない下面42g側から伝ってきた水を下方に滴下させ易くなるので、切断端面42bへの水の侵入を抑制することができる。
【0039】
図9は、本実施形態によりウエカバ42の切断端面42bにおけるパラフィン擦着効果の実験結果を示す図である。図9は、ある環境条件下で、本実施形態のようにウエカバ42の切断端面42bにパラフィン44を擦着したものと、パラフィン44を擦着しない、いわゆる切断端面4bが地鉄の状態のものとの切断面積腐食進行率実験したものである。図に示すように、約10日を過ぎたあたりから、地鉄の状態のものの腐食面積は増加しており、一方本実施形態のものは、腐食面積はほとんど変化しなかった。このように、切断端面は地鉄状態での腐食の進行が早く、パラフィンによる防錆効果が確認できる。
【0040】
なお、本実施形態では、ウエカバ42を、天井部42c、垂下部42d及び折り曲げ部42eで構成する例を示したが、これに限らず、例えば天井部42c及び垂下部42dで構成してもよい。この場合、垂下部42dの切断端面及び筐体と対向する内面にパラフィンを予め擦着して、上述と同様の作用により防錆及び防傷を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の空気調和機の室外機を構成要素とする空気調和機の冷凍サイクルを示す図である。
【図2】本発明の空気調和機の室外機の外観図である。
【図3】平板状の塗装鋼板をプレス成形する金型の外観図である。
【図4】塗装鋼板の断面図である。
【図5】筐体にウエカバを組付ける状態を説明する図である。
【図6】ウエカバにパラフィンを擦着する状態を説明する図である。
【図7】ウエカバの形状の詳細を説明する断面図である。
【図8】図7における切断端面及びパラフィンの周辺部を拡大した図である。
【図9】ウエカバの切断端面におけるパラフィン擦着効果の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
6 室外機
30 サービスカバ
32 アトカバ
34 シュラウド
36 側面板
38 底面板
40 筐体
42 ウエカバ
42b 切断端面
42c 天井部
42d 垂下部
42e 折り曲げ部
42f 下面
44 パラフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断された塗装鋼板を成形した側面板及び底面板を有してなる筐体と、切断された塗装鋼板を成形して前記筐体の上部に嵌合挿入組付けされる蓋体とを備えてなる空気調和機の室外機であって、
前記蓋体は、天井部と、該天井部の外周端部を下方に折り曲げて形成され前記筐体を外包する垂下部とを有し、
該垂下部の切断端面及び前記筐体と対向する内面にはパラフィンが擦着されてなることを特徴とする空気調和機の室外機。
【請求項2】
前記蓋体は、前記垂下部の下端部を前記筐体の方向に折り曲げて形成された折り曲げ部を有し、該折り曲げ部の切断端面にはパラフィンが擦着されてなることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。
【請求項3】
前記蓋体は、前記折り曲げ部の切断端面と前記筐体との間の距離が0.1〜0.8mmになるように形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項4】
前記折り曲げ部の切断端面及び該切断端面に接する下面にパラフィンが擦着されてなり、該下面に擦着されたパラフィンの表面は、前記パラフィンが擦着されていない部位の下面に対して90〜135°の角度の範囲内に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項5】
切断された塗装鋼板を成形した側面板及び底面板を有してなる筐体の上部に、切断された塗装鋼板で成形した蓋体を嵌合挿入組付けする場合に、前記蓋体を、天井部と、該天井部の外周端部を下方に折り曲げて形成され前記筐体を外包する垂下部とで構成し、該垂下部の切断端面及び前記筐体と対向する内面にパラフィンを擦着し、その後前記蓋体を前記筐体に嵌合することを特徴とする空気調和機の室外機の組み立て方法。
【請求項6】
前記垂下部の下端部を前記筐体の方向に折り曲げることにより折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部の切断端面にパラフィンを擦着し、その後前記蓋体を前記筐体に嵌合することを特徴とする請求項5に記載の空気調和機の室外機の組み立て方法。
【請求項7】
前記折り曲げ部の切断端面と前記筐体との間の距離が0.1〜0.8mmになるように前記蓋体を形成することを特徴とする請求項6に記載の空気調和機の室外機の組み立て方法。
【請求項8】
前記折り曲げ部の切断端面及び該切断端面に接する下面にパラフィンを擦着し、該下面に擦着されたパラフィンの表面を、前記パラフィンが擦着されていない部位の下面に対して90〜135°の角度の範囲内に形成することを特徴とする請求項6に記載の空気調和機の室外機の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−175412(P2008−175412A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7000(P2007−7000)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】