空気調和機及び空気調和機の制御方法
【課題】空気調和機に関して、簡単な構造で様々な空調制御を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】複数の熱電モジュール群1のそれぞれは、少なくとも一つの熱電モジュール1aから成り、筺体10に設けられた吸気口から当該筺体10の内部に取り込まれた空気に対して加熱または冷却を行う。また筺体10には、複数の熱電モジュール群1で加熱または冷却された空気を筺体10の外側に排出する排気口が設けられている。制御部2は、複数の熱電モジュール群1のそれぞれを独立して制御する。そして、制御部2は、除湿運転において、複数の熱電モジュール群1の一部のみを冷却動作させる。
【解決手段】複数の熱電モジュール群1のそれぞれは、少なくとも一つの熱電モジュール1aから成り、筺体10に設けられた吸気口から当該筺体10の内部に取り込まれた空気に対して加熱または冷却を行う。また筺体10には、複数の熱電モジュール群1で加熱または冷却された空気を筺体10の外側に排出する排気口が設けられている。制御部2は、複数の熱電モジュール群1のそれぞれを独立して制御する。そして、制御部2は、除湿運転において、複数の熱電モジュール群1の一部のみを冷却動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱電モジュール群を備える空気調和機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機に関して従来から様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ガス圧縮式の熱交換器を使用して、筺体内に取り入れた空気を加熱あるいは冷却して筺体外に排出する技術が提案されている。
【0003】
また、特許文献2,3には、ペルチェ効果を利用した電子冷却素子を使用して、筺体内に取り入れた空気を冷却して除湿する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−183776号公報
【特許文献2】特開昭59−95357号公報
【特許文献3】特開昭59−95358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の空気調和機では、ガス圧縮式の熱交換器が使用されているため、装置構造が複雑となる。
【0006】
これに対して、特許文献2,3に記載の装置では、電子冷却素子を使用しているため装置構造を簡素化できるものの、複雑な空調制御を行うことはできない。
【0007】
そこで、本発明は上述の問題に鑑みて成されたものであり、空気調和機に関して、簡単な構造で様々な空調制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明に係る空気調和機の第1の態様は、筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備え、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる。
【0009】
この発明に係る空気調和機の第2の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する。
【0010】
この発明に係る空気調和機の第3の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる。
【0011】
この発明に係る空気調和機の第4の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える。
【0012】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第1の態様は、筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備える空気調和機の除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる。
【0013】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第2の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する。
【0014】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第3の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる。
【0015】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第4の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る空気調和機の第1の態様によれば、複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御するため、簡単な構造で様々な空調制御を行うことができる。
【0017】
この発明に係る空気調和機の第1の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第1の態様によれば、複数の熱電モジュール群のうちの一部のみを冷却動作させるため、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0018】
この発明に係る空気調和機の第2の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第2の態様によれば、複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止するため、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができるとともに、消費電力を低減することができる。
【0019】
この発明に係る空気調和機の第3の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第3の態様によれば、冷却動作と加熱動作とを組み合わせて複数の熱電モジュール群を制御するため、空気温度の低下をさらに抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0020】
この発明に係る空気調和機の第4の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第4の態様によれば、複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替えるため、除湿効果がそれほど必要とされない場合には、複数の熱電モジュール群の動作モードを第1モードから第2モードに切り替えることによって、空気温度を変化させずに各熱電モジュール群を効率の良い動作点で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構造を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第1の動作例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の計算結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第2の動作例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第3の動作例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る熱電モジュール群での駆動電流と吸熱量との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る熱電モジュール群での駆動電流とCOPとの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る空気調和機の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示すブロック図である。図2は本実施の形態1に係る空気調和機が建物の外壁20に取り付けられた際の当該空気調和機の構造を示す側面図である。図3は本実施の形態1に係る空気調和機を図2中の矢視Aから見た際の当該空気調和機の構造を示す斜視図である。なお図2では、内部構造が理解しやすいように、筺体10及び外壁20については断面構造を示している。また図3では、ともに3行×3列に配置された複数のヒートシンク4a及び複数の熱電モジュール群1のうち、最も上の行のヒートシンク4a及び熱電モジュール群1のみを示している。
【0023】
図1〜3に示されるように、本実施の形態1に係る空気調和機は、複数の熱電モジュール群1と、制御部2と、整流回路3と、室内側熱交換器4と、室外側熱交換器5と、室内側ファン6と、室外側ファン7とを備えており、これらの構成要素は筺体10内に収納されている。
【0024】
筺体10は、図2に示されるように、室内と室外とに跨って配置されるように、外壁20に空けられた穴20aに取り付けられている。筺体10内には、室内側と室外側とを区分する仕切り板16が設けられている。これにより、筺体10は室内側部分10aと室外側部分10bとに区分されている。筺体10の室内側部分10aの上面には、室内の空気100を室内側部分10a内に取り入れる吸気口11が設けられている。筺体10の室内側の前面には、室内側部分10a内の空気100を室内に排出する排気口12が設けられている。また、筺体10の室外側部分10bの上面には、室外の空気を室外側部分10b内に取り入れる吸気口13が設けられている。筺体10の後面には、室外側部分10b内の空気を室外に排出する排気口14が設けられている。なお、筺体10を窓枠に取り付けても良い。
【0025】
複数の熱電モジュール群1のそれぞれは、少なくとも一つの熱電モジュール1aを備えている。本実施の形態1では、各熱電モジュール群1は、例えば4個の熱電モジュール1aを備えている。そして、各熱電モジュール1aは、例えばペルチェ効果を利用した熱電素子(例えばP型及びN型半導体の接合対)を少なくとも一つ有している。複数の熱電モジュール1aは、仕切り板16を貫通するように当該仕切り板16に取り付けられている。したがって、複数の熱電モジュール1aは、室内と室外とに跨って配置されている。複数の熱電モジュール群1全体を筺体10の前面側から見ると、当該熱電モジュール群1は3行×3列の行列状に配置されている。そして、複数の熱電モジュール1a全体を筺体10の前面側から見ると、当該熱電モジュール1aは6行×6列の行列状に配置されている。
【0026】
室内側熱交換器4は、筺体10の室内側部分10aにおいて吸気口11の下方に配置された複数のヒートシンク4aを備えている。ヒートシンク4aは熱伝導性の良い金属などで構成されており、熱電モジュール群1ごとに設けられている。その結果、筺体10の前面側から見ると、複数のヒートシンク4aは3行×3列の行列状に配置されている。各熱電モジュール群1の熱電モジュール1aには、対応するヒートシンク4aが取り付けられている。そして、各熱電モジュール1aは、ヒートシンク4aとの接触面を制御部2の制御によって加熱あるいは冷却することが可能である。
【0027】
室外側熱交換器5は、例えば、熱伝導性の良い金属などから成る一つのヒートシンク5aで構成されており、筺体10の室外側部分10bに配置されている。各熱電モジュール群1の熱電モジュール1aには、室外側においてヒートシンク5aが取り付けられている。そして、各熱電モジュール1aは、ヒートシンク5aとの接触面を制御部2の制御によって加熱あるいは冷却することが可能である。なお、本実施の形態1では、室外側熱交換器5を一つのヒートシンク5aで構成したが、室内側熱交換器4のように、複数のヒートシンクで構成しても良い。
【0028】
本実施の形態1に係る熱電モジュール1aでは、ペルチェ効果によって、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となるとヒートシンク5aとの接触面が吸熱面となり、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となると、ヒートシンク5aとの接触面が発熱面となる。
【0029】
整流回路3は、筺体10の外部に設けられた商用電源15から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、それを制御部2に供給する。
【0030】
制御部2は、整流回路3からの直流電圧を電源電圧として動作し、複数の熱電モジュール群1のそれぞれを独立して制御することが可能である。したがって、各熱電モジュール群1では、複数の熱電モジュール1aが同じような動作を行う。例えば、ある熱電モジュール群1において、それに含まれるある一つの熱電モジュール1aがヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、他の残りの全ての熱電モジュール1aもヒートシンク4aとの接触面を加熱することになる。
【0031】
制御部2は、制御回路2a及び複数の駆動回路2bを備えている。制御回路2aは、複数の駆動回路2bのそれぞれを独立して制御することが可能である。駆動回路2bは、熱電モジュール群1ごとに設けられており、制御回路2aによる動作制御に基づいて、対応する熱電モジュール群1を駆動する。駆動回路2bが、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに第1駆動電流を与えると、当該各熱電モジュール1aでは、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となる。これに対して、駆動回路2bが、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに対して第1駆動電流とは逆向きの第2駆動電流を与えると、当該各熱電モジュール1aでは、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となる。また、駆動回路2bは、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに対する駆動電流の供給を停止して、当該各熱電モジュール1aの動作を停止することも可能である。
【0032】
室内側ファン6は、例えばプロペラファンであって、排気口12と複数のヒートシンク4aとの間で室内側部分10aに配置されており、吸気口11から取り込まれた空気100を室内側熱交換器4を経由して排気口12側に送る。室外側ファン7は、例えばプロペラファンであって、排気口14とヒートシンク5aとの間で室外側部分10bに配置されており、吸気口13から取り込まれた空気を室外側熱交換器5を経由して排気口14側に送る。
【0033】
以上のような構成を備える本実施の形態1に係る空気調和機では、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、当該ヒートシンク4aが加熱される。その結果、吸気口11から取り入れられた空気100が加熱される。一方で、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を冷却すると、当該ヒートシンク4aが冷却される。その結果、吸気口11から取り入れられた空気100が冷却される。本実施の形態1では、このような動作が複数の熱電モジュール群1のそれぞれで独立して行うことができるため、様々な空調制御を行うことができる。以後、熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aが、それに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱する動作を単に「加熱動作」と呼び、当該ヒートシンク4aとの接触面を冷却する動作を単に「冷却動作」と呼ぶ。
【0034】
次に、本実施の形態1に係る空気調和機の動作例について説明する。
【0035】
<第1の動作例>
図4は本実施の形態1に係る空気調和機の除湿運転の一例を示す図である。図4に示される例では、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、中央1列の熱電モジュール群1は冷却動作を行い、その他の2列の熱電モジュール群1は動作を停止している。
【0036】
図4に示されるように、熱電モジュール群1が冷却動作を行うと、それに取り付けられたヒートシンク4a近傍の空気100は冷却されて、結露水110が発生し、当該空気100の湿度が低下する。一方で、動作が停止している熱電モジュール群1に取り付けられたヒートシンク4a近傍の空気100は冷却されない。したがって、排気口12からは、温度が低下して除湿された空気100と、常温付近の空気100とが排出される。そして、両者は、室内側ファン6によって生じる対流によって混ざり合う。その結果、温度があまり低くない、低湿度の空気100を室内に供給することができる。
【0037】
図5は、本実施の形態1に係る空気調和機を図4に示されるように動作させた場合の計算結果を示す図である。図5では、図4のように動作する本空気調和機において、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を730Wに設定し、排気口12から排出される空気100の風量を11m3/分に設定した場合の空気100の温度及び絶対湿度を「本発明」の欄に示している。また図5では、本実施の形態1とは異なり、複数の熱電モジュール群1を一括してしか制御することができず、各々を独立して制御することができない場合の例として、除湿運転する場合にすべての熱電モジュール群1を冷却動作させた場合の計算結果を「比較例1」及び「比較例2」の欄に示している。比較例1及び2の欄の値は、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量をそれぞれ730W及び1500Wに設定した場合の空気100の温度及び絶対湿度を示しており、比較例1及び2においては、排気口12から排出される空気100の風量はともに11m3/分に設定されている。また、図中の「入口空気」の欄の値は、吸気口11付近の空気100の温度及び絶対湿度を示しており、「出口空気」の欄の値は、排気口12付近の空気100の温度及び絶対湿度を示している。なお、図中の計算結果は、温度27℃、相対湿度80%RHの空気100に対して冷却処理を行った際の計算結果である。また、図中の絶対湿度の単位g/kg(DA)は、乾燥空気単位重量あたりの水分質量を示している。
【0038】
図5の比較例1に示されるように、すべての熱電モジュール群1を冷却動作させて、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を730Wに設定した場合には、空気温度は24℃まで低下している。このとき、空気温度は露点温度にまで到達していないため、除湿効果は得られていない。そこで、比較例2に示されるように、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を1500Wまで増加させると、空気温度は露点温度以下となり、除湿効果が得られる。しかしながら、この場合には、空気温度が低下しすぎて、室内が冷えすぎる状態となる。
【0039】
これに対して、複数の熱電モジュール群1のうち一部の熱電モジュール群1のみを冷却動作させる場合において、当該一部の熱電モジュール群1での吸熱量を比較例1での吸熱量と同じに設定すると、当該一部の熱電モジュール群1の冷却効果が大きくなるため、筺体10内の空気温度を局所的に大きく低下させることができる。その結果、局所的ではあるが空気温度を露点温度以下にまで低下させることができ、吸熱量を比較例1と同じ値に設定した場合であっても、比較例2と同等の除湿効果を得ることができる。そして、上述のように、排気口12から排出される低温の空気100と常温付近の空気100とは混ざり合うため、室内温度を比較例2よりも高くすることができる。さらに、空気100中の水分が結露する際に発生する凝縮潜熱によって空気温度が上昇するため、室内温度を比較例1よりも高くすることができる。
【0040】
このように、複数の熱電モジュール群1のうちの一部のみを冷却動作させることによって、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0041】
また、冷却動作を行っている熱電モジュール群1以外の熱電モジュール群1の動作を停止させることによって、本空気調和機の消費電力を低減できる。
【0042】
<第2の動作例>
図6は本実施の形態1に係る空気調和機の除湿運転の他の例を示す図である。図6に示される例では、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、中央1列と端1列の計2列の熱電モジュール群1が冷却動作を行い、残り1列の熱電モジュール群1が加熱動作を行っている。図6に示されるように、冷却動作と加熱動作とを組み合わせて複数の熱電モジュール群1を制御する場合には、冷却動作を行っている熱電モジュール群1によって除湿を行い、加熱動作を行っている熱電モジュール群1によって空気温度を高めることができるため、空気温度の低下をさらに抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0043】
<第3の動作例>
上述の図4に示されるように、複数の熱電モジュール群1のうちの一部の熱電モジュール群1を冷却動作させることによって、空気温度の低下を抑制しつつ除湿効果を得ることができる。このとき、除湿効果を十分に発揮するためには、冷却動作させる熱電モジュール群1に供給する駆動電流を大きくして、その吸熱量を大きくする必要がある。そのため、熱電モジュール群1の効率が低下することがある。
【0044】
一方で、あまり除湿効果が必要でない場合には、熱電モジュール群1にはそれほど大きな駆動電流を供給する必要は無いことから、熱電モジュール群1を効率の良い動作点で動作させることができる。
【0045】
したがって、除湿効果がそれほど必要とされていない場合には、図4に示される動作例において、冷却動作を行っている一部の熱電モジュール群1に供給する駆動電流を小さくして、当該熱電モジュール群1の効率を向上させる方法が考えられる。
【0046】
しかしながら、この場合には、冷却動作を行っている熱電モジュール群1の吸熱量が低下するため、室内温度が変化してしまう。
【0047】
そこで、除湿効果がそれほど必要とされていない場合には、本実施の形態1に係る空気調和機の動作モードを、図4に示されるような、一部の熱電モジュール群1のみが冷却動作する第1モードから、図7に示されるような、すべての熱電モジュール群1が冷却動作する第2モードに切り替えるようにする。これにより、室内温度を変化させずに各熱電モジュール群1を効率の良い動作点で動作させることができる。以下にこのことについて詳細に説明する。
【0048】
図8は、列方向に並ぶ3つの熱電モジュール群1全体での駆動電流と吸熱量との関係を示す図である。図9は、列方向に3つの熱電モジュール群1全体での駆動電流とCOP(成績係数:coefficient of performance)との関係を示す図である。図4の動作例のように、ある列の複数の熱電モジュール群1のみを冷却動作させる場合には、除湿効果を十分に発揮するために、図8に示されるように、冷却動作させる複数の熱電モジュール1a全体に供給される駆動電流がIbに設定され、当該熱電モジュール1a全体での吸熱量がQcに設定される。したがって、図9に示されるように、当該熱電モジュール群1全体でのCOPは例えば0.4となる。
【0049】
一方で、除湿効果があまり必要とされなくなり、本空気調和機の動作モードを第1モードから、すべての熱電モジュール群1を冷却動作させる第2モードに変化させる場合には、3列全部動作させるので、1列あたりの吸熱量はQc/3で済むため、図8に示されるように、各列における複数の熱電モジュール群1全体での駆動電流はIbよりも小さいIaに設定される。その結果、図9に示されるように、各列における複数の熱電モジュール群1全体でのCOPが例えば0.7まで増加し、当該熱電モジュール群1全体での効率は向上する。このとき、冷却動作させる熱電モジュール群1の数が増加するため、個々の熱電モジュール群1の吸熱量が減少したとしても、室内温度の低下を抑制できる。
【0050】
以上の説明では、本空気調和機の動作モードを第1モードから第2モードに変化させる場合について説明したが、これとは逆に、本空気調和機の動作モードを第2モードから第1モードに変化させることによって、熱電モジュール群1の効率は低下するものの、除湿効果を高めることができる。このように、冷却効果を優先させる場合には本空気調和機を第1モードで動作させ、熱電モジュール群1の効率向上を優先させる場合には本空気調和機を第2モードで動作させることによって、きめ細やかな空調制御を行うことができる。
【0051】
なお、本空気調和機の動作モードを切り替えるタイミングについては、本空気調和機において自動的に判断しても良いし、ユーザが指示できるように本空気調和機を構成しても良い。例えば、室内湿度を検出する湿度センサを本空気調和機に設けて、その湿度センサからの出力に基づいて制御回路2aが上記タイミングを判断する。あるいは、本空気調和機の動作を制御するリモートコントローラを設けて、このリモートコントローラをユーザが操作することによって、ユーザからの上記タイミングの指示が制御回路2aに通知されるようにする。
【0052】
また、本実施の形態1では、行列状の複数の熱電モジュール群1をモジュール単位で制御していたが、複数の熱電モジュール群1を列単位で制御しても良い。この場合であっても、各列を構成する3つの熱電モジュール群1を、新たな一つの熱電モジュール群1として捉え直すことによって、複数の熱電モジュール群1のそれぞれが独立して制御されることになる。
【0053】
また、吸気口11から取り入れた空気100を冷却あるいは加熱するために室内側熱交換器4は必ずしも必要ではなく、複数の熱電モジュール群1だけで十分な冷却効果あるいは加熱効果が得られるのであれば、空調制御のために室内側熱交換器4は必要ではない。
【0054】
また、上述の第1及び第2の動作例のような除湿運転を考えると、本実施の形態1のように、室内側熱交換器4を複数のヒートシンク4aで構成した方が、筺体10内の空気100を局所的に冷却しやすくなるため望ましいが、室内側熱交換器4を、ヒートシンク5aのように、すべての熱電モジュール群1に跨る一つのヒートシンクで構成しても、ある程度の効果は得られる。ただし、熱伝導性が非常に良好な材料でヒートシンクを構成すると、ヒートシンクを局所的に冷却しようとしたとしても困難であるため、その場合には、隣接する2つの熱電モジュール1aが接触している境界での厚みを薄くする等によって、ヒートシンクを局所的に冷却しやすくする必要がある。
【0055】
実施の形態2.
図10は本発明の実施の形態2に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。図10は上述の図2に示される矢視Aに相当する方向から見た際の本実施の形態2に係る空気調和機の構造を示している。図10では、図3と同様に、最も上の行のヒートシンク4a及び熱電モジュール群1のみを示している。図10に示されるように、本実施の形態2に係る空気調和機は、上述の実施の形態1に係る空気調和機において、室内側ファン6の替わりに室内側ファン26を設けたものである。室内側ファン26は、例えばクロスフローファンであって、複数の熱電モジュール群1が並ぶ行方向に沿った軸を回転軸としている。
【0056】
本実施の形態2に係る空気調和機のように、複数のヒートシンク4aと排気口12との間にクロスフローファンを設けた場合には、あるヒートシンク4aの近傍から室内に排出される空気100と、当該ヒートシンク4aに隣接する他のヒートシンク4aの近傍から室内に排出される空気100とは混ざり合いにくくなる。したがって、複数の熱電モジュール群1のうち、一部を動作させつつ、その他の動作を停止させることによって、室内の一部のゾーンのみを集中的に冷却または加熱することができる。
【0057】
例えば、図10に示されるように、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、端1列の熱電モジュール群1は冷却動作を行い、その他の2列の熱電モジュール群1の動作は停止すると、排気口12から排出される空気100のうち、冷却動作を行っている端1列の熱電モジュール群1に取り付けられたヒートシンク4aの近傍から排出される空気100aは低温となり、その他のヒートシンク4aの近傍から排出される空気100bの温度は常温に近い値となる。そして、空気100aと空気100bとはあまり混ざり合わずに室内に供給される。したがって、室内を局所的に冷却することができる。複数の熱電モジュール群1のうち、一部を加熱動作させつつ、その他の動作を停止させる場合も同様である。
【0058】
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3に係る空気調和機の構造を示す側面図である。図11では、内部構造が理解しやすいように、筺体60,80及び外壁20については断面構造を示している。以下では、上述の実施の形態1に係る空気調和機との相違点を中心に、本実施の形態3に係る空気調和機について説明する。
【0059】
図11に示されるように、本実施の形態3に係る空気調和機は、上述の複数の熱電モジュール群1、制御部2、整流回路3及び室内側熱交換器4と、室内側ファン51と、水冷ジャケット52とを備えており、これらの構成要素は筺体60内に収納されている。さらに、本空気調和機は、ガス圧縮式の熱交換器71と、ポンプ72と、室外側ファン73とを備えており、これらの構成要素は筺体80内に収納されている。
【0060】
筺体60は室内に配置されており、その上面には室内の空気100を筺体60内に取り入れる吸気口61が設けられている。そして、筺体60の前面の下方には、吸気口61から筺体60内に取り入れた空気100を室内に排出する排気口62が設けられている。室内側熱交換器4を構成する複数のヒートシンク4aは、吸気口61の下方に設けられており、当該複数のヒートシンク4aの下方には、排気口62と対向するように室内側ファン51が設けられている。室内側ファン51は、例えばクロスフローファンであって、複数の熱電モジュール群1が並ぶ行方向に沿った軸を回転軸としている。
【0061】
水冷ジャケット52は、例えば熱伝導性の良い金属などで構成されており、その内部には熱媒体200が流れる流路52aが上下方向に貫通するように設けられている。この流路52aの上方の一端には流通管70aが接続されており、その下方の一端には流通管70bが接続されている。これらの流通管70a,70bは、室内から、外壁20に空けられた穴20aを通って室外まで延びている。熱媒体200は例えば水である。水冷ジャケット52は、複数のヒートシンク4aとの間に複数の熱電モジュール群1を挟んでおり、当該複数の熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aが取り付けられている。
【0062】
本実施の形態3に係る熱電モジュール1aでは、ペルチェ効果によって、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となると水冷ジャケット52との接触面が吸熱面となり、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となると、水冷ジャケット52との接触面が発熱面となる。
【0063】
筺体80は室外に配置されており、その室外側から見た際の前面には筺体80内の空気を室外に排出する排気口81が設けられている。熱交換器71には、室内から延びる流通管70bが接続されており、さらに流通管70cを介してポンプ72が接続されている。ポンプ72には、室内から延びる流通管70aが接続されている。室外側ファン73は、例えばプロペラファンであって、排気口81に対向するように配置されている。
【0064】
以上のような構成を備える本実施の形態3に係る空気調和機では、熱交換器71によって熱媒体200が冷却される。そして、冷却された熱媒体200は、ポンプ72の働きによって、流通管70b及び水冷ジャケット52の流路52aを流れ、さらに流通管70a,70cを流れて、熱交換器71に帰ってくる。そして、熱媒体200は熱交換器71で再び冷却されて、その後、水冷ジャケット52の流路52aを通って、熱交換器71に帰ってくる。これにより、水冷ジャケット52が熱媒体200で冷却され、各熱電モジュール1aが冷却される。
【0065】
また、本実施の形態3に係る空気調和機では、実施の形態1,2と同様に、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、当該ヒートシンク4aが加熱され、その結果、吸気口61から取り入れられた空気100が加熱される。一方で、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を冷却すると、当該ヒートシンク4aが冷却され、その結果、吸気口61から取り入れられた空気100が冷却される。本実施の形態3でも、制御部2の働きによって、このような動作が複数の熱電モジュール群1のそれぞれで独立して行うことができる。そのため、簡単な構造で様々な空調制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 熱電モジュール群
1a 熱電モジュール
2 制御部
10,60 筺体
11,61 吸気口
12,62 排気口
100 空気
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱電モジュール群を備える空気調和機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機に関して従来から様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ガス圧縮式の熱交換器を使用して、筺体内に取り入れた空気を加熱あるいは冷却して筺体外に排出する技術が提案されている。
【0003】
また、特許文献2,3には、ペルチェ効果を利用した電子冷却素子を使用して、筺体内に取り入れた空気を冷却して除湿する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−183776号公報
【特許文献2】特開昭59−95357号公報
【特許文献3】特開昭59−95358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の空気調和機では、ガス圧縮式の熱交換器が使用されているため、装置構造が複雑となる。
【0006】
これに対して、特許文献2,3に記載の装置では、電子冷却素子を使用しているため装置構造を簡素化できるものの、複雑な空調制御を行うことはできない。
【0007】
そこで、本発明は上述の問題に鑑みて成されたものであり、空気調和機に関して、簡単な構造で様々な空調制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明に係る空気調和機の第1の態様は、筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備え、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる。
【0009】
この発明に係る空気調和機の第2の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する。
【0010】
この発明に係る空気調和機の第3の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる。
【0011】
この発明に係る空気調和機の第4の態様は、その第1の態様であって、前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える。
【0012】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第1の態様は、筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備える空気調和機の除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる。
【0013】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第2の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する。
【0014】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第3の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる。
【0015】
この発明に係る空気調和機の制御方法の第4の態様は、その第1の態様であって、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る空気調和機の第1の態様によれば、複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御するため、簡単な構造で様々な空調制御を行うことができる。
【0017】
この発明に係る空気調和機の第1の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第1の態様によれば、複数の熱電モジュール群のうちの一部のみを冷却動作させるため、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0018】
この発明に係る空気調和機の第2の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第2の態様によれば、複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止するため、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができるとともに、消費電力を低減することができる。
【0019】
この発明に係る空気調和機の第3の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第3の態様によれば、冷却動作と加熱動作とを組み合わせて複数の熱電モジュール群を制御するため、空気温度の低下をさらに抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0020】
この発明に係る空気調和機の第4の態様及びこの発明に係る空気調和機の制御方法の第4の態様によれば、複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替えるため、除湿効果がそれほど必要とされない場合には、複数の熱電モジュール群の動作モードを第1モードから第2モードに切り替えることによって、空気温度を変化させずに各熱電モジュール群を効率の良い動作点で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構造を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第1の動作例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の計算結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第2の動作例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の第3の動作例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る熱電モジュール群での駆動電流と吸熱量との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る熱電モジュール群での駆動電流とCOPとの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る空気調和機の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示すブロック図である。図2は本実施の形態1に係る空気調和機が建物の外壁20に取り付けられた際の当該空気調和機の構造を示す側面図である。図3は本実施の形態1に係る空気調和機を図2中の矢視Aから見た際の当該空気調和機の構造を示す斜視図である。なお図2では、内部構造が理解しやすいように、筺体10及び外壁20については断面構造を示している。また図3では、ともに3行×3列に配置された複数のヒートシンク4a及び複数の熱電モジュール群1のうち、最も上の行のヒートシンク4a及び熱電モジュール群1のみを示している。
【0023】
図1〜3に示されるように、本実施の形態1に係る空気調和機は、複数の熱電モジュール群1と、制御部2と、整流回路3と、室内側熱交換器4と、室外側熱交換器5と、室内側ファン6と、室外側ファン7とを備えており、これらの構成要素は筺体10内に収納されている。
【0024】
筺体10は、図2に示されるように、室内と室外とに跨って配置されるように、外壁20に空けられた穴20aに取り付けられている。筺体10内には、室内側と室外側とを区分する仕切り板16が設けられている。これにより、筺体10は室内側部分10aと室外側部分10bとに区分されている。筺体10の室内側部分10aの上面には、室内の空気100を室内側部分10a内に取り入れる吸気口11が設けられている。筺体10の室内側の前面には、室内側部分10a内の空気100を室内に排出する排気口12が設けられている。また、筺体10の室外側部分10bの上面には、室外の空気を室外側部分10b内に取り入れる吸気口13が設けられている。筺体10の後面には、室外側部分10b内の空気を室外に排出する排気口14が設けられている。なお、筺体10を窓枠に取り付けても良い。
【0025】
複数の熱電モジュール群1のそれぞれは、少なくとも一つの熱電モジュール1aを備えている。本実施の形態1では、各熱電モジュール群1は、例えば4個の熱電モジュール1aを備えている。そして、各熱電モジュール1aは、例えばペルチェ効果を利用した熱電素子(例えばP型及びN型半導体の接合対)を少なくとも一つ有している。複数の熱電モジュール1aは、仕切り板16を貫通するように当該仕切り板16に取り付けられている。したがって、複数の熱電モジュール1aは、室内と室外とに跨って配置されている。複数の熱電モジュール群1全体を筺体10の前面側から見ると、当該熱電モジュール群1は3行×3列の行列状に配置されている。そして、複数の熱電モジュール1a全体を筺体10の前面側から見ると、当該熱電モジュール1aは6行×6列の行列状に配置されている。
【0026】
室内側熱交換器4は、筺体10の室内側部分10aにおいて吸気口11の下方に配置された複数のヒートシンク4aを備えている。ヒートシンク4aは熱伝導性の良い金属などで構成されており、熱電モジュール群1ごとに設けられている。その結果、筺体10の前面側から見ると、複数のヒートシンク4aは3行×3列の行列状に配置されている。各熱電モジュール群1の熱電モジュール1aには、対応するヒートシンク4aが取り付けられている。そして、各熱電モジュール1aは、ヒートシンク4aとの接触面を制御部2の制御によって加熱あるいは冷却することが可能である。
【0027】
室外側熱交換器5は、例えば、熱伝導性の良い金属などから成る一つのヒートシンク5aで構成されており、筺体10の室外側部分10bに配置されている。各熱電モジュール群1の熱電モジュール1aには、室外側においてヒートシンク5aが取り付けられている。そして、各熱電モジュール1aは、ヒートシンク5aとの接触面を制御部2の制御によって加熱あるいは冷却することが可能である。なお、本実施の形態1では、室外側熱交換器5を一つのヒートシンク5aで構成したが、室内側熱交換器4のように、複数のヒートシンクで構成しても良い。
【0028】
本実施の形態1に係る熱電モジュール1aでは、ペルチェ効果によって、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となるとヒートシンク5aとの接触面が吸熱面となり、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となると、ヒートシンク5aとの接触面が発熱面となる。
【0029】
整流回路3は、筺体10の外部に設けられた商用電源15から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、それを制御部2に供給する。
【0030】
制御部2は、整流回路3からの直流電圧を電源電圧として動作し、複数の熱電モジュール群1のそれぞれを独立して制御することが可能である。したがって、各熱電モジュール群1では、複数の熱電モジュール1aが同じような動作を行う。例えば、ある熱電モジュール群1において、それに含まれるある一つの熱電モジュール1aがヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、他の残りの全ての熱電モジュール1aもヒートシンク4aとの接触面を加熱することになる。
【0031】
制御部2は、制御回路2a及び複数の駆動回路2bを備えている。制御回路2aは、複数の駆動回路2bのそれぞれを独立して制御することが可能である。駆動回路2bは、熱電モジュール群1ごとに設けられており、制御回路2aによる動作制御に基づいて、対応する熱電モジュール群1を駆動する。駆動回路2bが、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに第1駆動電流を与えると、当該各熱電モジュール1aでは、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となる。これに対して、駆動回路2bが、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに対して第1駆動電流とは逆向きの第2駆動電流を与えると、当該各熱電モジュール1aでは、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となる。また、駆動回路2bは、対応する熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aに対する駆動電流の供給を停止して、当該各熱電モジュール1aの動作を停止することも可能である。
【0032】
室内側ファン6は、例えばプロペラファンであって、排気口12と複数のヒートシンク4aとの間で室内側部分10aに配置されており、吸気口11から取り込まれた空気100を室内側熱交換器4を経由して排気口12側に送る。室外側ファン7は、例えばプロペラファンであって、排気口14とヒートシンク5aとの間で室外側部分10bに配置されており、吸気口13から取り込まれた空気を室外側熱交換器5を経由して排気口14側に送る。
【0033】
以上のような構成を備える本実施の形態1に係る空気調和機では、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、当該ヒートシンク4aが加熱される。その結果、吸気口11から取り入れられた空気100が加熱される。一方で、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を冷却すると、当該ヒートシンク4aが冷却される。その結果、吸気口11から取り入れられた空気100が冷却される。本実施の形態1では、このような動作が複数の熱電モジュール群1のそれぞれで独立して行うことができるため、様々な空調制御を行うことができる。以後、熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aが、それに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱する動作を単に「加熱動作」と呼び、当該ヒートシンク4aとの接触面を冷却する動作を単に「冷却動作」と呼ぶ。
【0034】
次に、本実施の形態1に係る空気調和機の動作例について説明する。
【0035】
<第1の動作例>
図4は本実施の形態1に係る空気調和機の除湿運転の一例を示す図である。図4に示される例では、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、中央1列の熱電モジュール群1は冷却動作を行い、その他の2列の熱電モジュール群1は動作を停止している。
【0036】
図4に示されるように、熱電モジュール群1が冷却動作を行うと、それに取り付けられたヒートシンク4a近傍の空気100は冷却されて、結露水110が発生し、当該空気100の湿度が低下する。一方で、動作が停止している熱電モジュール群1に取り付けられたヒートシンク4a近傍の空気100は冷却されない。したがって、排気口12からは、温度が低下して除湿された空気100と、常温付近の空気100とが排出される。そして、両者は、室内側ファン6によって生じる対流によって混ざり合う。その結果、温度があまり低くない、低湿度の空気100を室内に供給することができる。
【0037】
図5は、本実施の形態1に係る空気調和機を図4に示されるように動作させた場合の計算結果を示す図である。図5では、図4のように動作する本空気調和機において、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を730Wに設定し、排気口12から排出される空気100の風量を11m3/分に設定した場合の空気100の温度及び絶対湿度を「本発明」の欄に示している。また図5では、本実施の形態1とは異なり、複数の熱電モジュール群1を一括してしか制御することができず、各々を独立して制御することができない場合の例として、除湿運転する場合にすべての熱電モジュール群1を冷却動作させた場合の計算結果を「比較例1」及び「比較例2」の欄に示している。比較例1及び2の欄の値は、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量をそれぞれ730W及び1500Wに設定した場合の空気100の温度及び絶対湿度を示しており、比較例1及び2においては、排気口12から排出される空気100の風量はともに11m3/分に設定されている。また、図中の「入口空気」の欄の値は、吸気口11付近の空気100の温度及び絶対湿度を示しており、「出口空気」の欄の値は、排気口12付近の空気100の温度及び絶対湿度を示している。なお、図中の計算結果は、温度27℃、相対湿度80%RHの空気100に対して冷却処理を行った際の計算結果である。また、図中の絶対湿度の単位g/kg(DA)は、乾燥空気単位重量あたりの水分質量を示している。
【0038】
図5の比較例1に示されるように、すべての熱電モジュール群1を冷却動作させて、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を730Wに設定した場合には、空気温度は24℃まで低下している。このとき、空気温度は露点温度にまで到達していないため、除湿効果は得られていない。そこで、比較例2に示されるように、複数の熱電モジュール群1全体での吸熱量を1500Wまで増加させると、空気温度は露点温度以下となり、除湿効果が得られる。しかしながら、この場合には、空気温度が低下しすぎて、室内が冷えすぎる状態となる。
【0039】
これに対して、複数の熱電モジュール群1のうち一部の熱電モジュール群1のみを冷却動作させる場合において、当該一部の熱電モジュール群1での吸熱量を比較例1での吸熱量と同じに設定すると、当該一部の熱電モジュール群1の冷却効果が大きくなるため、筺体10内の空気温度を局所的に大きく低下させることができる。その結果、局所的ではあるが空気温度を露点温度以下にまで低下させることができ、吸熱量を比較例1と同じ値に設定した場合であっても、比較例2と同等の除湿効果を得ることができる。そして、上述のように、排気口12から排出される低温の空気100と常温付近の空気100とは混ざり合うため、室内温度を比較例2よりも高くすることができる。さらに、空気100中の水分が結露する際に発生する凝縮潜熱によって空気温度が上昇するため、室内温度を比較例1よりも高くすることができる。
【0040】
このように、複数の熱電モジュール群1のうちの一部のみを冷却動作させることによって、空気温度の低下を抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0041】
また、冷却動作を行っている熱電モジュール群1以外の熱電モジュール群1の動作を停止させることによって、本空気調和機の消費電力を低減できる。
【0042】
<第2の動作例>
図6は本実施の形態1に係る空気調和機の除湿運転の他の例を示す図である。図6に示される例では、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、中央1列と端1列の計2列の熱電モジュール群1が冷却動作を行い、残り1列の熱電モジュール群1が加熱動作を行っている。図6に示されるように、冷却動作と加熱動作とを組み合わせて複数の熱電モジュール群1を制御する場合には、冷却動作を行っている熱電モジュール群1によって除湿を行い、加熱動作を行っている熱電モジュール群1によって空気温度を高めることができるため、空気温度の低下をさらに抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0043】
<第3の動作例>
上述の図4に示されるように、複数の熱電モジュール群1のうちの一部の熱電モジュール群1を冷却動作させることによって、空気温度の低下を抑制しつつ除湿効果を得ることができる。このとき、除湿効果を十分に発揮するためには、冷却動作させる熱電モジュール群1に供給する駆動電流を大きくして、その吸熱量を大きくする必要がある。そのため、熱電モジュール群1の効率が低下することがある。
【0044】
一方で、あまり除湿効果が必要でない場合には、熱電モジュール群1にはそれほど大きな駆動電流を供給する必要は無いことから、熱電モジュール群1を効率の良い動作点で動作させることができる。
【0045】
したがって、除湿効果がそれほど必要とされていない場合には、図4に示される動作例において、冷却動作を行っている一部の熱電モジュール群1に供給する駆動電流を小さくして、当該熱電モジュール群1の効率を向上させる方法が考えられる。
【0046】
しかしながら、この場合には、冷却動作を行っている熱電モジュール群1の吸熱量が低下するため、室内温度が変化してしまう。
【0047】
そこで、除湿効果がそれほど必要とされていない場合には、本実施の形態1に係る空気調和機の動作モードを、図4に示されるような、一部の熱電モジュール群1のみが冷却動作する第1モードから、図7に示されるような、すべての熱電モジュール群1が冷却動作する第2モードに切り替えるようにする。これにより、室内温度を変化させずに各熱電モジュール群1を効率の良い動作点で動作させることができる。以下にこのことについて詳細に説明する。
【0048】
図8は、列方向に並ぶ3つの熱電モジュール群1全体での駆動電流と吸熱量との関係を示す図である。図9は、列方向に3つの熱電モジュール群1全体での駆動電流とCOP(成績係数:coefficient of performance)との関係を示す図である。図4の動作例のように、ある列の複数の熱電モジュール群1のみを冷却動作させる場合には、除湿効果を十分に発揮するために、図8に示されるように、冷却動作させる複数の熱電モジュール1a全体に供給される駆動電流がIbに設定され、当該熱電モジュール1a全体での吸熱量がQcに設定される。したがって、図9に示されるように、当該熱電モジュール群1全体でのCOPは例えば0.4となる。
【0049】
一方で、除湿効果があまり必要とされなくなり、本空気調和機の動作モードを第1モードから、すべての熱電モジュール群1を冷却動作させる第2モードに変化させる場合には、3列全部動作させるので、1列あたりの吸熱量はQc/3で済むため、図8に示されるように、各列における複数の熱電モジュール群1全体での駆動電流はIbよりも小さいIaに設定される。その結果、図9に示されるように、各列における複数の熱電モジュール群1全体でのCOPが例えば0.7まで増加し、当該熱電モジュール群1全体での効率は向上する。このとき、冷却動作させる熱電モジュール群1の数が増加するため、個々の熱電モジュール群1の吸熱量が減少したとしても、室内温度の低下を抑制できる。
【0050】
以上の説明では、本空気調和機の動作モードを第1モードから第2モードに変化させる場合について説明したが、これとは逆に、本空気調和機の動作モードを第2モードから第1モードに変化させることによって、熱電モジュール群1の効率は低下するものの、除湿効果を高めることができる。このように、冷却効果を優先させる場合には本空気調和機を第1モードで動作させ、熱電モジュール群1の効率向上を優先させる場合には本空気調和機を第2モードで動作させることによって、きめ細やかな空調制御を行うことができる。
【0051】
なお、本空気調和機の動作モードを切り替えるタイミングについては、本空気調和機において自動的に判断しても良いし、ユーザが指示できるように本空気調和機を構成しても良い。例えば、室内湿度を検出する湿度センサを本空気調和機に設けて、その湿度センサからの出力に基づいて制御回路2aが上記タイミングを判断する。あるいは、本空気調和機の動作を制御するリモートコントローラを設けて、このリモートコントローラをユーザが操作することによって、ユーザからの上記タイミングの指示が制御回路2aに通知されるようにする。
【0052】
また、本実施の形態1では、行列状の複数の熱電モジュール群1をモジュール単位で制御していたが、複数の熱電モジュール群1を列単位で制御しても良い。この場合であっても、各列を構成する3つの熱電モジュール群1を、新たな一つの熱電モジュール群1として捉え直すことによって、複数の熱電モジュール群1のそれぞれが独立して制御されることになる。
【0053】
また、吸気口11から取り入れた空気100を冷却あるいは加熱するために室内側熱交換器4は必ずしも必要ではなく、複数の熱電モジュール群1だけで十分な冷却効果あるいは加熱効果が得られるのであれば、空調制御のために室内側熱交換器4は必要ではない。
【0054】
また、上述の第1及び第2の動作例のような除湿運転を考えると、本実施の形態1のように、室内側熱交換器4を複数のヒートシンク4aで構成した方が、筺体10内の空気100を局所的に冷却しやすくなるため望ましいが、室内側熱交換器4を、ヒートシンク5aのように、すべての熱電モジュール群1に跨る一つのヒートシンクで構成しても、ある程度の効果は得られる。ただし、熱伝導性が非常に良好な材料でヒートシンクを構成すると、ヒートシンクを局所的に冷却しようとしたとしても困難であるため、その場合には、隣接する2つの熱電モジュール1aが接触している境界での厚みを薄くする等によって、ヒートシンクを局所的に冷却しやすくする必要がある。
【0055】
実施の形態2.
図10は本発明の実施の形態2に係る空気調和機の構造を示す斜視図である。図10は上述の図2に示される矢視Aに相当する方向から見た際の本実施の形態2に係る空気調和機の構造を示している。図10では、図3と同様に、最も上の行のヒートシンク4a及び熱電モジュール群1のみを示している。図10に示されるように、本実施の形態2に係る空気調和機は、上述の実施の形態1に係る空気調和機において、室内側ファン6の替わりに室内側ファン26を設けたものである。室内側ファン26は、例えばクロスフローファンであって、複数の熱電モジュール群1が並ぶ行方向に沿った軸を回転軸としている。
【0056】
本実施の形態2に係る空気調和機のように、複数のヒートシンク4aと排気口12との間にクロスフローファンを設けた場合には、あるヒートシンク4aの近傍から室内に排出される空気100と、当該ヒートシンク4aに隣接する他のヒートシンク4aの近傍から室内に排出される空気100とは混ざり合いにくくなる。したがって、複数の熱電モジュール群1のうち、一部を動作させつつ、その他の動作を停止させることによって、室内の一部のゾーンのみを集中的に冷却または加熱することができる。
【0057】
例えば、図10に示されるように、3行×3列の行列状に配置された複数の熱電モジュール群1のうち、端1列の熱電モジュール群1は冷却動作を行い、その他の2列の熱電モジュール群1の動作は停止すると、排気口12から排出される空気100のうち、冷却動作を行っている端1列の熱電モジュール群1に取り付けられたヒートシンク4aの近傍から排出される空気100aは低温となり、その他のヒートシンク4aの近傍から排出される空気100bの温度は常温に近い値となる。そして、空気100aと空気100bとはあまり混ざり合わずに室内に供給される。したがって、室内を局所的に冷却することができる。複数の熱電モジュール群1のうち、一部を加熱動作させつつ、その他の動作を停止させる場合も同様である。
【0058】
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3に係る空気調和機の構造を示す側面図である。図11では、内部構造が理解しやすいように、筺体60,80及び外壁20については断面構造を示している。以下では、上述の実施の形態1に係る空気調和機との相違点を中心に、本実施の形態3に係る空気調和機について説明する。
【0059】
図11に示されるように、本実施の形態3に係る空気調和機は、上述の複数の熱電モジュール群1、制御部2、整流回路3及び室内側熱交換器4と、室内側ファン51と、水冷ジャケット52とを備えており、これらの構成要素は筺体60内に収納されている。さらに、本空気調和機は、ガス圧縮式の熱交換器71と、ポンプ72と、室外側ファン73とを備えており、これらの構成要素は筺体80内に収納されている。
【0060】
筺体60は室内に配置されており、その上面には室内の空気100を筺体60内に取り入れる吸気口61が設けられている。そして、筺体60の前面の下方には、吸気口61から筺体60内に取り入れた空気100を室内に排出する排気口62が設けられている。室内側熱交換器4を構成する複数のヒートシンク4aは、吸気口61の下方に設けられており、当該複数のヒートシンク4aの下方には、排気口62と対向するように室内側ファン51が設けられている。室内側ファン51は、例えばクロスフローファンであって、複数の熱電モジュール群1が並ぶ行方向に沿った軸を回転軸としている。
【0061】
水冷ジャケット52は、例えば熱伝導性の良い金属などで構成されており、その内部には熱媒体200が流れる流路52aが上下方向に貫通するように設けられている。この流路52aの上方の一端には流通管70aが接続されており、その下方の一端には流通管70bが接続されている。これらの流通管70a,70bは、室内から、外壁20に空けられた穴20aを通って室外まで延びている。熱媒体200は例えば水である。水冷ジャケット52は、複数のヒートシンク4aとの間に複数の熱電モジュール群1を挟んでおり、当該複数の熱電モジュール群1の各熱電モジュール1aが取り付けられている。
【0062】
本実施の形態3に係る熱電モジュール1aでは、ペルチェ効果によって、ヒートシンク4aとの接触面が発熱面となると水冷ジャケット52との接触面が吸熱面となり、ヒートシンク4aとの接触面が吸熱面となると、水冷ジャケット52との接触面が発熱面となる。
【0063】
筺体80は室外に配置されており、その室外側から見た際の前面には筺体80内の空気を室外に排出する排気口81が設けられている。熱交換器71には、室内から延びる流通管70bが接続されており、さらに流通管70cを介してポンプ72が接続されている。ポンプ72には、室内から延びる流通管70aが接続されている。室外側ファン73は、例えばプロペラファンであって、排気口81に対向するように配置されている。
【0064】
以上のような構成を備える本実施の形態3に係る空気調和機では、熱交換器71によって熱媒体200が冷却される。そして、冷却された熱媒体200は、ポンプ72の働きによって、流通管70b及び水冷ジャケット52の流路52aを流れ、さらに流通管70a,70cを流れて、熱交換器71に帰ってくる。そして、熱媒体200は熱交換器71で再び冷却されて、その後、水冷ジャケット52の流路52aを通って、熱交換器71に帰ってくる。これにより、水冷ジャケット52が熱媒体200で冷却され、各熱電モジュール1aが冷却される。
【0065】
また、本実施の形態3に係る空気調和機では、実施の形態1,2と同様に、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を加熱すると、当該ヒートシンク4aが加熱され、その結果、吸気口61から取り入れられた空気100が加熱される。一方で、ある熱電モジュール群1に含まれる各熱電モジュール1aがそれに対応するヒートシンク4aとの接触面を冷却すると、当該ヒートシンク4aが冷却され、その結果、吸気口61から取り入れられた空気100が冷却される。本実施の形態3でも、制御部2の働きによって、このような動作が複数の熱電モジュール群1のそれぞれで独立して行うことができる。そのため、簡単な構造で様々な空調制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 熱電モジュール群
1a 熱電モジュール
2 制御部
10,60 筺体
11,61 吸気口
12,62 排気口
100 空気
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体(10/60)と、
前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、
それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、
前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、
前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)と
を備え、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる、空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する、空気調和機。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる、空気調和機。
【請求項4】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える、空気調和機。
【請求項5】
筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備える空気調和機の除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる、空気調和機の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する、空気調和機の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる、空気調和機の制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える、空気調和機の制御方法。
【請求項1】
筺体(10/60)と、
前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、
それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、
前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、
前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)と
を備え、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる、空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する、空気調和機。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる、空気調和機。
【請求項4】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御部は、除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える、空気調和機。
【請求項5】
筺体(10/60)と、前記筺体内に空気(100)を取り入れる吸気口(11/61)と、それぞれが少なくとも一つの熱電モジュール(1a)から成り、前記吸気口から前記筺体内に取り込まれた空気(100)に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う複数の熱電モジュール群(1)と、前記複数の熱電モジュール群で加熱または冷却された空気(100)を前記筺体外に排出する排気口(12/62)と、前記複数の熱電モジュール群のそれぞれを独立して制御する制御部(2)とを備える空気調和機の除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の一部のみを冷却動作させる、空気調和機の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他の動作を停止する、空気調和機の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群のうち、一部を冷却動作させつつ、その他を加熱動作させる、空気調和機の制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の空気調和機の制御方法であって、
除湿運転において、前記複数の熱電モジュール群の動作モードを、一部のみが冷却動作する第1モードから、すべてが冷却動作する第2モードに切り替える、空気調和機の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−47446(P2012−47446A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238569(P2011−238569)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2007−27034(P2007−27034)の分割
【原出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2007−27034(P2007−27034)の分割
【原出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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