説明

空気調和機

【課題】空気調和機において、水生成部を大型化することなく霧化用水の生成量を増大し、確実に室内環境を快適にできるようにすること。
【解決手段】空気調和機は、室内熱交換器、室内空気を送風する室内ファン、水生成部41及び静電霧化部42を有する霧化装置40を備える。水生成部41は、ペルチェ素子19、このペルチェ素子19の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材22を備える。静電霧化部42は水生成部41で生成された霧化用水を室内ファンによって送風される室内空気中にイオンミストとして放出するように構成されている。冷却部材22は立体的に3面以上の面で構成される水分結露可能面を有する構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係り、特に水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置を備えた空気調和機に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内空気を室内熱交換器に通風して、加熱,冷却,除湿機能等により調整し、この調整された室内空気を室内に吹出すことにより室内を空気調和する。このとき、温度,湿度の調節以外にも様々な機能を付加し、室内を清浄で、快適な空間にすることが行われている。
【0003】
室内には、生活に付随して種々の臭いの発生源が生じ、そのあるものは鼻の臭気細胞を刺激し、臭いとして感知される。これらの臭い発生源は、気体,小液滴,微細な塵埃等であり、いずれも、放置しておくと宇宙線等により電離した空気中のイオン等と衝突して帯電したり、重力のため沈降したり、気流により壁に衝突したりして、室内の壁,家具,床,天井等の固定物に吸着され室内の空気中から取り除かれ、または、活性物質と遭遇し分解,変成されて、臭いは消えてしまう。しかし、分解されないで、部屋の壁や床等に吸着、沈降した臭いの発生源は、温度が上がったり、風が当ったり、掃除で舞い上がったりすると、また、室内空気に浮遊することになり、臭いとして感じられるようになる。
【0004】
このように、吸着等により室内の壁等に付着している臭いの発生源を分解、変成するため、OHラジカル等の活性物質を微細な水滴に付与して、長寿命化し、臭いの発生源に遭遇させ、脱臭する試みが行われている。
【0005】
そのひとつとして、室内に吹出す空気に静電霧化方式により帯電した微細粒の水(イオンミスト)を放出し、室内を脱臭する方法が考えられ、これを具現化するために種々の工夫が凝らされている。
【0006】
この種の従来の空気調和機として、例えば、特開2008−185289号公報(特許文献1)、特開2008−190819号公報(特許文献2)に記載されたものがある。
【0007】
特許文献1の空気調和機は、室内熱交換器と、室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置とから構成されている。
【0008】
前記水生成部は、ペルチェ素子と、このペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材とから構成されている。前記冷却部材は、ペルチェ素子の低温部の側面と同じ大きさの平坦な金属板で形成され、前記ペルチェ素子の低温部の側面にシリコングリス及び電気絶縁シートを介して熱的に接続されて設置されている。
【0009】
前記静電霧化部は、霧化用水を搬送する搬送部(水案内手段)と、前記搬送部の霧化用水をイオンミスト(イオン化した微細粒の水)として室内空気中に放出する霧化電極とから構成されている。前記搬送部は、前記冷却部材から滴下する霧化用水を溜める水溜め部と、この水溜め部に溜った霧化用水を吸い上げて保持し霧化電極(ミストイオン用放電電極)に供給する保水部材(保水部)とで構成されている。この保水部材はスポンジのようなもので構成されている。
【0010】
特許文献2の空気調和機は、室内熱交換器と、室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置とから構成されている。
【0011】
前記水生成部は、ペルチェ素子と、このペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材(冷却板)と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材(放熱板)とから構成されている。前記冷却部材は、ペルチェ素子の低温部の側面と同じ大きさの平坦な金属板で形成され、前記ペルチェ素子の低温部の側面に電気絶縁シートを介して熱的に接続されて設置されている。
【0012】
前記静電霧化部は、霧化用水を搬送する搬送部と、前記搬送部の霧化用水をイオンミストとして室内空気中に放出する霧化電極とから構成されている。前記搬送部は前記冷却部材の水分結露可能面の下部に接触して配置され保水部材で構成されている。この保水部材は、前記冷却部材の水分結露可能面の上部に結露した霧化用水を吸水して保持し、その保持した霧化用水を霧化電極に供給するように構成されている。
【0013】
【特許文献1】特開2008−185289号公報
【特許文献2】特開2008−190819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1の空気調和機では、冷却部材はペルチェ素子の低温部と同じ大きさの平坦な金属板で形成されているので、水分結露可能面が金属板の一面だけとなって水分結露可能面積が極めて小さいものとなり、霧化用水の不足を招いていた。係る霧化用水の不足により、室内空気の温度、湿度条件によっては室内環境を十分に快適にできない場合が生ずるおそれがあった。
【0015】
また、特許文献2の空気調和機では、冷却部材はペルチェ素子の低温部と同じ大きさの平坦な金属板で形成されているので、水分結露可能面が金属板の一面だけとなって水分結露可能面積が極めて小さいものとなり、霧化用水の不足を招いていた。その上、冷却部材の水分結露可能面の下部が保水部材で覆われるため、この点からも水分結露可能面積が減少して霧化用水の不足を招いていた。従来の空気調和機では、係る霧化用水の不足により、室内空気の温度、湿度条件によっては室内環境を十分に快適にできない場合が生ずるおそれがあった。
【0016】
さらに、特許文献1、2には、冷却部材の具体的な固定構造については開示されていないが、これらの冷却部材を金属製固定部材、例えば金属製螺子を介して放熱部材に固定した場合には、放熱部材の熱が金属製螺子を通して冷却部材に伝達され、冷却部材がその分だけ温度上昇して霧化用水の生成量が少なくなり、室内空気の温度、湿度条件によっては室内環境を十分に快適にできない場合が生ずるおそれがあった。
【0017】
本発明の目的は、水生成部を大型化することなく霧化用水の生成量を増大でき、これによって確実に室内環境を快適にできる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様では、室内熱交換器と、前記室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置と、を備え、前記水生成部は、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材とを備え、前記静電霧化部は、前記水生成部で生成された霧化用水の供給を受け、この霧化用水を前記室内ファンによって送風される室内空気中にイオンミストとして放出するように構成されている空気調和機において、前記冷却部材は立体的に3面以上の面で構成される水分結露可能面を有する構造としたことにある。
【0019】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記冷却部材は前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続される平板部と前記平板部から斜め下方に突出して延びる屈曲部とを有する一枚の金属板で構成されていること。
(2)前記ペルチェ素子の低温部と前記冷却部材の平板部との間に電気絶縁シートを備え、前記電気絶縁シートは前記ペルチェ素子の低温部及び前記冷却部材の平板部より外方に突出するように設置され、前記冷却部材の屈曲部は前記電気絶縁シートよりも下方に突出して延びるように設置されていること。
(3)前記静電霧化部は、霧化用水を搬送する搬送部と、前記搬送部の霧化用水をイオンミストとして室内空気中に放出する霧化電極とを備え、前記搬送部は、前記冷却部材の屈曲部の下端から滴下する霧化用水を受ける霧化用水受け部材と、前記霧化用水受け部材から供給を受けた霧化用水を保水する保水部材とを備えていること。
(4)前記冷却部材の屈曲部は前記保水部材の側方まで突出して延びるように設置されていること。
(5)前記冷却部材は熱絶縁性を有する固定部材を介して前記放熱部材に固定されていること。
(6)前記固定部材は、前記冷却部材の平板部及び屈曲部に室内空気を上下方向に通風可能なように、前記冷却部材の平板部の両端部を支持していること。
【0020】
また、本発明の第2の態様では、室内熱交換器と、前記室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置と、を備え、前記水生成部は、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材とを備え、前記静電霧化部は、前記水生成部で生成された霧化用水の供給を受け、この霧化用水を前記室内ファンによって送風される室内空気中にイオンミストとして放出するように構成されている空気調和機において、前記冷却部材は熱絶縁性を有する固定部材を介して前記放熱部材に固定されていることにある。
【発明の効果】
【0021】
係る本発明の空気調和機によれば、水生成部を大型化することなく霧化用水の生成量を増大でき、これによって確実に室内環境を快適にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態の空気調和機について図1から図8を用いて説明する。
【0023】
まず、本実施形態の空気調和機1の全体構成を、図1から図3を参照しながら説明する。図1は本実施形態の空気調和機1の全体構成を示す斜視図、図2は図1の室内機2を正面から縦に断面した図、図3は図1の室内機2を側面から縦に断面した概略図である。なお、図3では、高電圧発生装置29を室内機2の外部に便宜的に表示してあるが、実際には室内機2の内部に配置されている。また、図3及び後述する図4では、固定部材23を省略してある。
【0024】
空気調和機1は、室内機2、リモコン5、室外機3及び接続配管9等を備えて構成され、室内を空気調和する。室内機2は室内の壁面等に設置され、室外機3は室外に設置される。接続配管9は、冷媒配管、ドレン配管、電気配線、信号配線等から構成され、室内機2と室外機3と接続している。リモコン5は、室内機2と別体に構成され、運転条件を設定して空気調和機1の運転の指令を行うものである。このリモコン5の操作によって、空気調和機の冷房運転、除湿運転、暖房運転、イオンミスト運転、空気清浄運転等が行われる。
【0025】
室内機2は、筐体4、室内ファン10、ファンモータ16、フィルタ11、室内熱交換器12、露受皿13、上下風向板14、左右風向板15、霧化装置40、制御装置等を備えて構成されている。室外機3は、筐体3a、室外ファン、室外熱交換器、圧縮機等を備えて構成されている。ここで、室内熱交換器12、室外熱交換器、圧縮機は冷凍サイクルを構成する。
【0026】
筐体4は、筐体ベース4a、化粧枠4b及び前面パネル4c等を備えて構成され、上部に空気吸込口8、下部に空気吹出し口7を有している。前面パネル4cは、前面開口部を有し、この開口部を開閉する開閉パネル6を備える。空気吸込口8及び空気吹出し口7は中央空間4Aの通風口として設けられている。開閉パネル6は下端部を支点として回動可能に設けられ、空気調和機の運転時に駆動モータで開閉パネル6を回動することにより前面パネル4cの前面中央部が開放される。この開放部が空気吸込口8の一部を形成する。開閉パネル6の下部には、運転状況を表示する表示部51と、リモコン5からの赤外線の操作信号を受ける受光部52が配置されている。
【0027】
室内機2の筐体4には、室内ファン10、ファンモータ16、フィルタ11、11’室内熱交換器12、露受皿13、上下風向板14及び左右風向板15等の基本的な内部構造体が取付けられている。
【0028】
また、筐体4は仕切り板63、64により筐体4の内部は左右に3つの空間4A、4B、4Cに仕切られている。中央の空間4Aには室内ファン10、室内熱交換器12、フィルタ11、11’等が配置され、左側の空間4Bには霧化装置40等が配置され、右側の空間4Cにはファンモータ16及び制御装置等が配置されている。
【0029】
室内ファン10は、室内熱交換器12の横幅とほぼ等しい横長の貫流ファンで構成され、室内空気を空気吸込み口8から吸い込んで空気吹出し口7から吹出すように中央空間4Aの中央部に配置されている。室内ファン10を作動することにより、室内空気は、図2及び図3の白抜き矢印53のように中央空間4Aを通って流れ、主気流を形成する。室内機2に吸い込まれる空気中の塵埃はフィルタ11、11’に捕集される。フィルタ11、11’は、吸い込まれた室内空気の中に含まれる塵埃を取り除くためのものであり、室内熱交換器12の吸込側を覆うように、その上方及び前方に配置されている。
【0030】
室内熱交換器12は室内ファン10の吸込側に配置され、略逆V字状に形成されている。熱交換器16は、室外機3から供給された冷媒が通過することで、その温度が低温または高温に変えられる。例えば、空気調和機1を冷房運転すると、室内熱交換器12が冷却され、この冷えた室内熱交換器12で白抜き矢印53のように流れる室内空気が冷やされ、室内を空気調和することができる。この時に、室内熱交換器12が室内空気の露点温度以下になると、空気中の水分が結露することで室内熱交換器12に水が付着する。結露した水分が増えると、露受皿13へと垂れ、室外へ排出される。露受皿13に溜まった水分は露受皿13に取付けられたドレンホースに流れ、接続配管9を通して室外へと排出される。
【0031】
霧化装置40は、水生成部41及び静電霧化部42を備えて構成され、空間4Bに配置されている。筐体4の外部から空間4Bへの空気流入口61が筐体4の下部に設けられ、空間4Bから空間4Aへの空気流出口62が仕切り板63に設けられている。空気流出口62は室内熱交換器12の吸い込み側に位置されている。室内ファン10が運転されることにより、室内空気は、図3の斜線矢印54のように空間4Bを流れ、副気流を形成する。
【0032】
次に、水生成部41について図3から図6を参照しながら説明する。図4は図3の水生成部41の縦断面図、図5は図4の水生成部41の斜視図、図6は図4の水生成部41の冷却板温度変化20aを比較例の冷却板温度変化20bと対比して示す図、図7は図3の水生成部41の冷却板22の変形例を示す斜視図である。
【0033】
水生成部41は、ペルチェ効果を利用して空気中から水分を凝縮させて霧化用水を生成する方式のものであり、ペルチェ素子19、放熱部材17、電気絶縁シート21及び冷却板22を主要構成要素として構成されている。なお、冷却板22は冷却部材を構成する。
【0034】
ペルチェ素子19は、縦に設置され、両側面が他の面より広い面積を有している。ペルチェ素子19に直流電流を流すことにより、その一方の側面が低温部となり、その他方の側面が高温部となる。
【0035】
放熱部材17は、金属製部材で構成され、基板部17aと放熱フィン部17bとを備えている。この放熱部材17は、ペルチェ素子19の高温部側に熱的に接続され、ヒートシンクとして機能する。ペルチェ素子19の高温部側の熱は、放熱部材17に伝達され、放熱部材17の表面より周囲空気中に放出される。このとき、放熱部材17の周囲には、室内ファン10の運転により、室内空気が図3の斜線矢印54に示すように副気流として供給される。
【0036】
電気絶縁シート21は、ペルチェ素子19と冷却板22との絶縁距離を確保するために、ペルチェ素子19の側面及び冷却板22の平板部22aより外方へ突出されており、ペルチェ素子19の側面及び冷却板22の平板部22aよりも大きく形成されている。
【0037】
冷却板22は平板部22aと屈曲部22bとを有する一枚の金属板で構成されている。この冷却板22は、ペルチェ素子19の低温部側に電気絶縁シート21を挟んで熱的に接続されている。冷却板22は、ペルチェ素子19の低温部により冷却されて低温になると、周囲空気を冷却してその空気中の水分をその表面に結露させ、霧化用水を生成する。この霧化用水は冷却板22の下端から滴下され、静電霧化部42に供給される。
【0038】
平板部22aは、ペルチェ素子19の側面の投影面で重なるように設置されると共に、ペルチェ素子19の側面より外方へ突出する大きさに形成されている。屈曲部22bは平板部22aの下端から斜め下方に延びている。この屈曲部22bは電気絶縁シート21より水平方向に徐々に間隔があくように斜めに突出して設けられている。屈曲部22bの下端は電気絶縁シート21の下端より下方に突出している。
【0039】
冷却板22は、平板部22aの表面、屈曲部22bの上面と共に、屈曲部22bの下面にも霧化用水が生成される。換言すれば、冷却板22は立体的に3面以上の面で構成される水分結露可能面を有する構造となっている。これによって、冷却板22の水生成能力を向上することができる。
【0040】
霧化装置40が設置できる室内機2の内部スペース4Bは限られたスペースであるため、霧化装置40を小型化しつつ水分確保能力の向上が望まれる。そのため、平板状の冷却板22を単に大きくし水分結露可能面積を大きくすることは難しく、冷却板22の設置スペースを抑えながら表面積を拡大しなくてはならない。そこで、本実施形態では、平板部22aから斜め下方に突出して延びる屈曲部22bを設けるという簡単で安価な構造で、屈曲部22bの下面も水分結露可能面としたものである。
【0041】
なお、図7の変形例に示すように、冷却部材22’の平板部22a’に冷却フィン22b’を設けるようにすることも考えられる。このように、冷却部材22’に冷却フィン22b’を設けることで、冷却板フィン22b’の両面で水分結露させることができることから、表面積は格段に大きくなり水分結露することができる。また、他に冷却板表面積を大きくする構造として、凹凸や溝を冷却板の表面に設けることでも表面積の拡大をすることはできる。ただし、凹凸や溝を冷却板表面に設ける構造では、冷却板の加工に手間がかかることや、冷却板に結露した水分が凹凸や溝に表面張力で留まり導水経路部材へと垂れない弊害が発生してしまう。
【0042】
設置スペースを抑えながら表面積を大きくした図4の冷却板22は、平板部22aの下部に屈曲部22bを設けるのみであり、屈曲部22bが表裏両面で空気中の水分を凝縮することができると共に、屈曲させて固定部材23から浮かせることで空間を利用でき小スペースとすることができる。また、屈曲部22bは90度以下とすることで結露した水分を下へと垂らすことができる。屈曲部22bが90度より大きくなると、冷却板22に結露した水分は重力で下へ垂れず、屈曲部22bの角度が小さくなると、電気絶縁シート21と屈曲部22bとの間が狭くなり、屈曲部22bの下面への空気の流れが悪くなることで水分結露量が低下してしまう。そこで、本実施形態においては、屈曲部22bの角度を略45度としている。
【0043】
なお、本実施形態においては、屈曲部22bを平板部22aの下方に延びるように設けたが、平板部22aの横方向に延びるように設けることも可能である。また、屈曲部22bを平板部22aの上方に延びるように設ける場合には、屈曲部22bと電気絶縁シート21との間に表面張力により水分が溜まってしまうおそれがある。このため、屈曲部22bを平板部22aの上方に延びるように設ける場合には、屈曲部22bを前後方向に斜めにすることが好ましい。屈曲部22bを前後方向に斜めにすることで、溜まった水分が片側から下へと伝わせることができる。
【0044】
ここで、平板部のみで構成された冷却板を用いた比較例の水生成部と、平板部22a及び屈曲部22bで構成された冷却板22を用いた本実施形態の水生成部41との結露試験結果について述べる。
【0045】
結露可能表面積が589mmである冷却板を有する比較例の水生成部と、結露可能表面積が1570mmである冷却板22を有する本実施形態の水生成部41とを、温度24℃、湿度35%RHの恒温室にそれぞれ配置し、各水生成部を1時間運転した時における冷却板に発生する水分結露量を測定した。ペルチェ素子は15mm×15mm×3.4mmの大きさであり、電流2.0A、電圧2.7Vを印加したときの水分結露量の測定を行った。その結果、比較例の冷却板22の水分結露量100とした場合、本実施形態の冷却板22の水分結露量は118となり、水分結露量を多くできることが確認できた。冷却板22を屈曲させ多面で空気と接触させることで、より小型で水分確保能力のある水生成部41を得ることができる。
【0046】
また、冷却板22は、熱絶縁性を有する固定部材23を介して放熱部材17に固定されている。ここで、冷却板22は、熱絶縁性を有する樹脂製の固定部材23により電気絶縁シート21を介してペルチェ素子19の側面に押されるように設置されている。換言すれば、冷却板22の両端部は、ペルチェ素子19と固定部材23との間に挟持され、締付けられている。固定部材23は合成樹脂製螺子65を介して放熱部材17に取付けられている。具体的には、固定部材23の両側フランジ部に設けられた螺子貫通孔に金属製螺子65を通し、放熱部材17の基板部17aに設けられた螺子孔に螺子65の先端を捩じ込むことにより、固定部材23が放熱部材17に固定されている。
【0047】
かかる構成により、放熱部材17から冷却板22への熱伝達が抑制され、これに伴って冷却板22の温度上昇が抑制されることとなり、冷却板22の霧化用水の生成能力を増大することができる。本実施形態によれば、冷却板22の結露可能面積の多面化と樹脂製固定部材23による熱絶縁固定化とが相乗的に機能して、冷却板22の霧化用水の生成能力を格段に増大することができる。
【0048】
平板部のみで構成された冷却板を金属製螺子で放熱部材に固定した比較例における冷却板の温度変化と、本実施形態における冷却板22の温度変化とを実測した結果を図6に示す。ここで、比較例の冷却板と本実施形態の冷却板22とは同じ投影面積で構成されているものとする。図6は、幅15mm×高さ15mm×厚さ3.4mmのペルチェ素子19及び表面積589mmの冷却板を有する霧化装置40を温度24℃、湿度35%RHの恒温室に設置し、ペルチェ素子19に、電流2.0A、電圧2.7Vを印加して30分間運転したときの冷却板の表面温度の変化を測定したものである。その結果、本実施形態の冷却板22の表面温度変化20aが従来の冷却板の表面温度変化20bよりも5℃も低下することができ、本実施形態の冷却板22の霧化用水生成能力を大幅に増大できることが確認できた。
【0049】
なお、本実施形態においては、冷却板22の固定部材23として樹脂製の枠を用いているが、樹脂製の螺子や樹脂製の爪を用いることも可能である。
【0050】
ここで、空間4Bにおける空気の流れについて、具体的に説明する。図3において、破線及び実線矢印55は水生成部41によって形成される気流を示す。
【0051】
室内ファン10の運転により空気吸込口8から空気吹出し口7に流れる主気流に誘引されて、ペルチェ素子19周辺の空気に連通する筐体20の背面下部に設けた空気流入口61から、主気流のファン上流の風路壁に形成された空気流出口62への副気流が生じる。この副気流とペルチェ素子19の放熱部材17の放熱によって生じた上昇気流との合成気流によって、ペルチェ素子19の周りに副気流の一部を構成する気流が形成される。この副気流によって、ペルチェ素子19の高温部から放熱板17を通して放熱が行われる。放熱により温度の上昇した副気流は、空気流出口62を通って主気流に合流され、空気吹出し口7から室内に吹出される。
【0052】
ペルチェ素子19からの放熱を良くするため、ペルチェ素子19の高温部に取り付けた放熱部材17に放熱フィン17aを設けている。この放熱フィン17aを略垂直に設けて、ペルチェ素子19からの放熱を受けて上昇する副気流の流れをより加速している。このようにすると少ないスペースであっても、効果的な放熱が行われるようになる。
【0053】
また、ペルチェ素子19への通電により、ペルチェ素子19の低温部が低温になり、冷却板22が冷却される。この温度が冷却板22に面する冷却空間の空気の露点温度より下がると、冷却空間の空気中の水分が冷却板22の表面に結露してくる。この冷却板22により冷却された冷却空間の空気は重くなり、図3の実線矢印55で図示のように冷却板22に沿って下降流が生ずる。この下降流により、放熱フィン17aの下部背面側で暖められた空気の一部がその冷却空間に流入する。そして、冷却板22の下部に流下した空気は、図3の実線矢印11で図示のように、放熱フィン17a側を上昇する副気流に誘引されて合流し、空気流出口62へ流れていく。
【0054】
このような構造にしたことによって、空気中の水分が冷却板22の表面に移動する結露が連続的に起こって、霧化用水の連続的供給が確保できる。また、水生成部41のためのファンが無いので、空気調和機が冷房、暖房、除湿等の運転をしていないときでも霧化装置40だけによるイオンミスト運転ができ、室内を脱臭して質の高い環境に維持することができる。
【0055】
次に、静電霧化部42について図3、図4及び図8を参照しながら説明する。図8は図3の静電霧化部42の斜視図である。
【0056】
静電霧化部42は、霧化用水受け部材37、保水部材24、乾燥抑制カバー35、高電圧発生装置29及び高電圧電極28等を主要構成要素して構成されている。なお、霧化用水受け部材37、保水部材24及び乾燥抑制カバー35は、霧化用水の搬送部を構成する。
【0057】
霧化用水受け部材37は、皿状部材で構成され、冷却板22から滴下する霧化用水を受けるように冷却板22の直下に配置されている。冷却板22の下端部(屈曲部22の下端部)は、霧化用水受け部材37内に位置されている。霧化用水受け部材37の霧化用水を受ける部分は傾斜面37aで形成されているので、滴下された霧化用水をこの傾斜面を通して迅速に且つ確実に保水部材24に導くことができる。
【0058】
保水部材24は、霧化用水受け部材37の霧化用水を毛細管現象で吸引して移動させる繊維集合体で構成され、霧化用水受け部材37の底部に配置されている。この繊維集合体は、長さが約50mm、外径が約15μmの繊維を集合させて略矩形状に形成したものである。
【0059】
乾燥抑制カバー35は、樹脂成型品で構成され、保水部材24の上面及び側面を含む複数の面を覆っている。乾燥抑制カバー35の側面下部には、霧化用水受け部材37に供給された霧化用水を保水部材24に送るための開口部36が設けられている。このように、開口部36を乾燥抑制カバー35の側面下部に設け、保水部材24の側面下部から水分を吸水させることで、保水部材24の側面上部及び上面からの水分蒸散を抑制することができる。従来例のように保水部材24の上面から霧化用水を供給した場合、重力により吸水性は良くなるものの、保水部材24の上面を乾燥抑制カバー35で覆うことができないため、水分蒸散がしやすくなり、静電霧化する水分量が不足するおそれがある。
【0060】
ここで、保水部材24に乾燥抑制カバー35を設けない場合と、保水部材24に乾燥抑制カバー35設けた場合とにおける保水部材24の乾燥試験結果について述べる。15mm×25mmの保水部材24に乾燥抑制カバー35を取り付けない静電霧化部42と、15mm×25mmの保水部材24に乾燥抑制カバー35を取り付け、寸法1mm×10mmの開口部36を設けた図7に示す静電霧化部42とを製作した。これらの静電霧化部42の保水部材24を満水状態にして、温度24℃、湿度35%RHの恒温室内に1時間静置した後、水分乾燥量を測定した。その結果、静置前重量を100%とすると、保水部材24に乾燥抑制カバー35を設けない場合の静置後重量は80%まで低減してしまったのに対し、保水部材24に乾燥抑制カバー35設けた場合の静置後重量は89%となり、乾燥抑制カバー35を設けることで保水部材24からの水分蒸散を抑制することができることが確認できた。
【0061】
本実施形態によれば、静電霧化部42の保水部材24に乾燥抑制カバー35を設けることで保水部材24からの水分蒸散を抑制し、水生成部41で結露した水分の損失を少なくして静電霧化することができる。
【0062】
また、乾燥抑制カバー35と霧化用水受け部材37には、防カビ剤や抗菌剤が練り込まれている。これによって、水生成部41からの霧化用水でカビや菌が繁殖するのを抑制することができる。さらには、保水部材24は水分が吸水され留まることから、カビや菌が繁殖しやすい。しかし、保水部材24に直接防カビ剤あるいは抗菌剤を練り込むと吸水性や水分の搬送速度の低下が懸念される。そこで、乾燥抑制カバー35と霧化用水受け部材37に防カビ剤あるいは抗菌剤が練り込むことで、保水部材24の吸水性や水分の搬送速度の低下を招くことなく、カビや菌が繁殖するのを抑制することができる。
【0063】
高電圧発生装置29は、−3kV〜−6kVの高電圧を発生するものであり、空間4Bに設置されている。この高電圧発生装置29は、高電圧端子31及び接地端子32を有する。霧化接続部26は、保水部材24に外面に設置され、高電圧発生装置29の高電圧端子31から延びる導電体30が接続されている。
【0064】
高電圧電極28は、複数本の霧化電極25と、1本のイオン電極27とから構成されている。
【0065】
霧化電極25は、保水部材24に保持された霧化用水を毛細管現象で吸水して移動させるように多孔質や繊維質の針状部材で構成されている。この霧化電極25は電極導水部25aと電極霧化部25bとからなっている。保水部材24の側面には、適所に複数の穴が設けられており、これらの穴に各電極導水部25aの端部が挿入されている。これにより、保水部材24に保持された水分が、毛細管現象で電極導水部25aを通して電極霧化部25bに供給され、霧化電極25の全体に霧化用水が保持される。電極霧化部25bは空間4Aの室内熱交換器12の吹出し側に突出している。霧化電極25は、吸水時に霧化接続部26と電気的に接続される。
【0066】
高電圧発生装置29で発生させた−3kV〜−6kVの高電圧を霧化電極25及びイオン電極27に印加すると共に、室内ファン10を回転することにより、水生成部41から供給した水分を霧化電極25先端から微細粒にして且つ帯電させ放出すると共に、イオン電極27からイオンを放出することができる。
【0067】
即ち、イオン電極27から周辺の空気にむけてコ口ナ放電が起こり、電子が放出され、イオンが発生する。また、霧化電極25からは帯電した微細粒の水が放出され、このイオン化および帯電された微細粒の水が吹出し風路に放出され、吹出し気流に乗って室内に吹出され、室内空気の質を向上させるなどの効果を発揮する。換言すれば、霧化した帯電微細粒の水は、気流に乗って室内に充満し、その電荷によりOHラジカルが生じる等して、室内の空気中の臭気成分や壁・カーテン・家具等に付着した臭気成分に対する脱臭効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の空気調和機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の室内機を正面から縦に断面した図である。
【図3】図1の室内機を側面から縦に断面した概略図である。
【図4】図3の水生成部の縦断面図である。
【図5】図4の水生成部の斜視図である。
【図6】図4の水生成部の冷却板温度変化を比較例の冷却板温度変化と対比して示す図である。
【図7】図3の水生成部の冷却板の変形例を示す斜視図である。
【図8】図3の静電霧化部の斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1…空気調和機、2…室内機、3…室外機、4…筐体、4a…筐体ベース、4b…化粧枠、4c…前面パネル、5…リモコン、6…開閉パネル、7…空気吹出し口、8…空気吸込み口、9…接続配管、10…室内ファン、11、11’…フィルタ、12…室内熱交換器、13…露受皿、14…上下風向板、15…左右風向板、16…ファンモータ、17…放熱部材、19…ペルチェ素子、20a、20b…冷却板表面温度変化、21…電気絶縁シート、22…冷却板(冷却部材)、22’…冷却部材、22a’…平板部、22b’…冷却フィン、22a…平板部、22b…屈曲部、23…固定部材、24…保水部材、25…霧化電極、25a…電極導水部、25b…電極霧化部、26…霧化接続部、27…イオン電極、28…高圧電極、29…高電圧発生装置、30…導電体、31…高電圧端子、32…接地端子、35…乾燥抑制カバー、36…開口部、37…霧化用水受け部材、40…霧化装置、41…水生成部、42…静電霧化部、51…表示部、52…受光部、53…白抜き矢印(主気流)、54…斜線矢印(副気流)、55…実線矢印(ペルチェ素子の周囲流れ)、61…空気流入口、62…空気流出口、63、64…仕切り板、65…螺子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器と、
前記室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、
水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置と、を備え、
前記水生成部は、低温部及び高温部を両側面に有するペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材とを備え、
前記静電霧化部は前記水生成部で生成された霧化用水を前記室内ファンによって送風される室内空気中にイオンミストとして放出するように構成されている空気調和機において、
前記冷却部材は立体的に3面以上の面で構成される水分結露可能面を有する構造としたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、前記冷却部材は前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続される平板部と前記平板部から斜め下方に突出して延びる屈曲部とを有する一枚の金属板で構成されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項2において、前記ペルチェ素子の低温部と前記冷却部材の平板部との間に電気絶縁シートを備え、前記電気絶縁シートは前記ペルチェ素子の低温部及び前記冷却部材の平板部より外方に突出するように設置され、前記冷却部材の屈曲部は前記電気絶縁シートよりも下方に突出して延びるように設置されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項3において、前記静電霧化部は、霧化用水を搬送する搬送部と、前記搬送部の霧化用水をイオンミストとして室内空気中に放出する霧化電極とを備え、前記搬送部は、前記冷却部材の屈曲部の下端から滴下する霧化用水を受ける霧化用水受け部材と、前記霧化用水受け部材から供給を受けた霧化用水を保水する保水部材とを備えていることを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4において、前記冷却部材の屈曲部は前記保水部材の側方まで突出して延びるように設置されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項2において、前記冷却部材は熱絶縁性を有する固定部材を介して前記放熱部材に固定されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項6において、前記固定部材は、前記冷却部材の平板部及び屈曲部に室内空気を上下方向に通風可能なように、前記冷却部材の平板部の両端部を支持していることを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
室内熱交換器と、
前記室内熱交換器に室内空気を送風する室内ファンと、
水生成部及び静電霧化部を有する霧化装置と、を備え、
前記水生成部は、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の低温部に熱的に接続され室内空気中の水分を結露して霧化用水を生成する冷却部材と、前記ペルチェ素子の高温部に熱的に接続された放熱部材とを備え、
前記静電霧化部は、前記水生成部で生成された霧化用水の供給を受け、この霧化用水を前記室内ファンによって送風される室内空気中にイオンミストとして放出するように構成されている空気調和機において、
前記冷却部材は熱絶縁性を有する固定部材を介して前記放熱部材に固定されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項9】
請求項8において、前記固定部材は、前記冷却部材の平板部及び屈曲部に室内空気を上下方向に通風可能なように、前記冷却部材の平板部の両端部を支持していることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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