説明

空気調和機

【課題】フィルタの通風抵抗を落とさずに、より集塵効率のよいフィルタを備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】フィルタ3のメッシュシート32に導電糸35を一体的に編み込んで、帯電ブラシ41a,41bにて摩擦帯電させた電荷を導電糸35を介して運び、フィルタ全面を均等に帯電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室内機ユニットに関し、さらに詳しく言えば、より多くのゴミをフィルタで捕らえることができる空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、一般的な空気調和機(室内機ユニット)には、空気が熱交換器に導かれる前に空気中に含まれるゴミや埃を除去するためのフィルタが設けられている。通常、この種のフィルタは、フィルタに溜まったゴミを定期的に掃除する必要があるため、ユーザ自身がフィルタを着脱して清掃できるようになっている。
【0003】
従来のフィルタは、集塵効率をできる限り高めるため、フィルタネットに細く、強度があるPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用し、できるかぎりフィルタの目を細かくするようにしている。
【0004】
しかしながら、フィルタの網目を細かく設定しすぎると、通風抵抗が高くなるため、好ましくない。逆に、網目が粗すぎると、粗大なゴミがフィルタを通過して熱交換器に付着するなどするため衛生上好ましくない。また、網目よりも微細な粉状のゴミをフィルタで捕捉することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、フィルタの通風抵抗を高くせずに、より集塵効率のよいフィルタを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、室内機内に空気を取り込む空気吸込口に沿って配置されたフィルタを有する空気調和機において、上記室内機には、上記フィルタを帯電させる帯電手段が設けられており、上記フィルタには、上記フィルタの全面を一様に帯電させるためのフィルタ導電手段が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記フィルタ導電手段は、導電糸を上記フィルタのメッシュシートに一体的に編み込んだものからなることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記フィルタは、上記メッシュシートを支持するフィルタ桟を有し、上記導電糸は、上記フィルタ桟の互いに対向する辺の間に架け渡されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記請求項2または3において、上記フィルタ桟は、格子状に形成されており、上記導電糸は、上記フィルタ桟の1つの格子枠内に少なくとも2以上設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記請求項4において、上記導電糸は、上記フィルタの通風量が多い部分に高密度に配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、上記請求項2ないし5のいずれか1項において、上記導電糸は、上記フィルタの一端から他端に向かって所定の間隔をもって互いに平行に配置される複数の横糸と、上記各横糸に対して交差するように配置される縦糸とを有し、上記帯電手段は、少なくとも上記縦糸を帯電可能な位置に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、上記請求項6において、上記横糸は、上記フィルタ桟に対して斜めに配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、上記請求項1において、上記フィルタ導電手段は、導電性を有する塗料を上記フィルタのメッシュシートに塗布したものからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、室内機筐体にフィルタを帯電させる帯電手段を設け、フィルタにフィルタの全面を一様に帯電させるためのフィルタ導電手段を設けたことにより、フィルタを帯電させることで、フィルタに微細なゴミを静電吸着で吸着させて除去することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、フィルタ導電手段は、導電性を有する繊維を糸状に形成した導電糸を上記フィルタのメッシュシートに一体的に編み込んだものからなることにより、容易にフィルタ全面を一様に帯電させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、フィルタにはメッシュシートを支持するフィルタ桟を有し、導電糸をフィルタ桟の互いに対向する辺の間に架け渡したことにより、フィルタ全面を効率的に一様に帯電させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、フィルタ桟は格子状に形成されており、導電糸はフィルタ桟の1つの格子枠内に少なくとも2以上設けられていることにより、フィルタ面を一様に帯電させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、導電糸はフィルタの通風量が多い部分に高密度に配置されていることで、通風量の多い部分をより強力に帯電させることで、吸着力を高めて集塵率を高めることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、導電糸は、フィルタの一端から他端に向かって所定の間隔をもって互いに平行に配置される複数の横糸と、各横糸に対して交差するように配置される縦糸とを有し、帯電手段は、少なくとも縦糸を帯電可能な位置に配置されていることにより、帯電手段でフィルタ全面を摩擦せずにフィルタ全面を帯電でき、帯電手段の設置スペースを減らせる分、省スペースで低コストで実施できる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、横糸はフィルタ桟に対して斜めに配置されていることにより、同じ間隔で配置した場合、縦横方向に配置するよりも導電糸の設置面積を密にすることができ、集塵効率を高めることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、フィルタ導電手段は、導電性を有する塗料をフィルタのメッシュシートに塗布したものからなることにより、フィルタの表面に導電性塗料を塗布するだけでよく、加工が容易であり、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和機の内部構造を一部省略した要部断面図。
【図2】本発明の空気調和機のフィルタの斜視図。
【図3】(a)〜(e)上記フィルタに設けられた導電性糸の各種配置パターンを説明するための模式図。
【図4】上記フィルタの導電性糸の配置パターンの変形例を示す模式図。
【図5】第1実施形態の帯電ブラシの構造を示す斜視図。
【図6】帯電ブラシをフィルタに非接触状態としたときの要部断面図。
【図7】第1実施形態の帯電ブラシの回転手順を説明する説明図。
【図8】摩擦帯電の手順を説明するためのフローチャート。
【図9】フィルタ清掃手段と摩擦帯電手段との動作の関連性を示すフローチャート。
【図10】第2実施形態に係る空気調和機の内部構造を一部省略した要部断面図。
【図11】第2実施形態の帯電ブラシの構造を示す斜視図。
【図12】第2実施形態のフィルタの模式図。
【図13】第2実施形態のフィルタと帯電ブラシの動きを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限られない。図1に示すように、この空気調和機(室内機ユニット)1は、図示しない背板を介して壁面に支持されるケーシング10を備えている。
【0025】
この実施形態において、室内機ユニット1は、左右に長い本体が壁面に据え付けられる、いわゆる壁掛け型の家庭用エアコンであって、ケーシング10には、熱交換器2とクロスフローファン(図示しない)が本体長手方向(図1では紙面垂直方向)に架け渡されるようにして支持されている。この例において、熱交換器2は、上下2段の前面側熱交換器21と、1段の背面側熱交換器22とをラムダ(Λ)型に組み合わせたものが用いられている。本発明において、熱交換器2とクロスフローファンの具体的な構成は仕様に応じて任意に選択されてよい。
【0026】
また、ケーシング10の下面側には、空気吹出口17が設けられており、空気吹出口には風向板やディフューザー(ともに図示しない)が設けられるが、本発明において、これらの構成は任意的な構成要素であって、特に限定されることはない。
【0027】
ケーシング10には、熱交換器2の上面を覆う上面パネル11と、熱交換器2の前面を覆う前面パネル12と、熱交換器2の左右両端を支持する側面パネル13とを備えている。この例において、各パネルは合成樹脂の成型品からなる。
【0028】
上面パネル11および前面パネル12には、空気を室内機ユニット1に取り込むための空気吸込口14が設けられている。前面パネル12の一部には、運転時に開閉することにより、空気吸込口14の開口面積を大きくして、空気流入量を増やすオープンパネル15が設けられている。
【0029】
オープンパネル15は合成樹脂製の板体からなり、室内機ユニット1の前面パネル12の一部を覆い隠すように設けられている。オープンパネル15は、その下端が図示しない回転軸を介して前面パネル12の一部に回動可能に連結されており、その上端(自由端)側が図示しない開閉駆動手段により開閉するようになっている。
【0030】
この例において、オープンパネル15の開閉にはモータを動力とした開閉駆動手段が用いられているが、これ以外に例えばソレノイドなどの各種アクチュエータを用いてもよい。また、バネ力などを利用して開閉するようにしてもよい。
【0031】
室内機ユニット1の内部には、空気吸込口14に対応するようにフィルタ3が設けられている。この例において、フィルタ3は、横並び(図1の紙面方向)に2枚設けられており、それぞれで空気吸込口14を覆うようになっている。なお、フィルタ3は、左右ともに同一形状である。
【0032】
フィルタ3は、後述する摩擦帯電ユニット4によって摩擦帯電される際に帯電列において−側に帯電する材質によって構成されている。すなわち、この例において、フィルタ3はポリエチレンテレフタレートが用いられている。−側に帯電しやすい材質としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあるが、仕様に応じて任意に選択されてよい。
【0033】
図2に示すように、フィルタ3は、矩形状のフィルタ桟31と、フィルタ桟31に沿って張設されたメッシュシート32とを有する薄板状に形成されている。フィルタ桟31は、例えばPETなどの強靱な合成樹脂の成型品からなり、フィルタ桟31の幅方向(図2では左右方向)の両端には、フィルタ3を前後に送るためのラック溝33,33が設けられている。
【0034】
ラック溝33は、フィルタ桟31とともに一体成形されており、フィルタ3の送り量を揃えるため、左右同一ピッチで左右対称に形成されている。上述したようにラック溝33は、フィルタ3を前後に送るために用いられるが、この第1実施形態において、フィルタ3は固定され、これに対して後述する摩擦帯電ユニット4がフィルタ3に沿って移動するようになっている。
【0035】
この例において、フィルタ桟31の一部には、フィルタ3が空気吸込口14の所定位置に配置されているかどうかを検知するための検知孔34が設けられている。検知孔34は、フィルタ3を厚さ方向に貫通する貫通孔であって、室内機筐体1のガイドレールに設けられた図示しない検知スイッチによって検知孔34が検出されることで、制御手段がフィルタ3が設定位置に配置されたかどうかを検出することができる。
【0036】
メッシュシート32は、フィルタ桟31と同様にPETなどの合成樹脂製であって、所定の網目状、この例ではメッシュ間隔が約0.3〜1.0mmに形成されている。メッシュシート32の材質や形状などについては、仕様に応じて任意に変更可能である。
【0037】
図3を併せて参照して、メッシュシート32には、摩擦帯電ユニット4で生成された電化をフィルタ3の全面に行き渡らせるため、導電性を有する導電糸35が編み込まれている。導電糸35は、例えばカーボンなどの導電性材料を繊維状に形成したものからなり、フィルタ3または摩擦帯電ユニット4の移動方向(図3では上下方向)に沿って平行に設けられている。
【0038】
導電糸35は、導電繊維以外に、例えば導電材料を練り込んだ樹脂を糸状に形成したものや、綿などの糸に導電材料を含浸させたものなどがあるが、導電糸35の材質や形状は、仕様に応じて任意に選択されてよい。
【0039】
この例において、導電糸35は、図3(a)に示すように、フィルタ桟31の一端(図3(a)では上端)から下端(図3(a)では下端)にかけて直線状に設けられており、フィルタ桟31の1枠分に2本の導電糸35が16mm以下の間隔で平行に配置されている。すなわち、間隔が16mmよりも広くなりすぎると、隣り合う導電糸35が形成する電場同士が重なり合わず、フィルタ3の全面を帯電させることが難しい。
【0040】
この例において、導電糸35は、フィルタ3の左右方向に沿って平行に配置されているが、これ以外に、図3(b)に示すように、上下方向(図3(b)では上下方向)に平行となるように配置されてもよい。さらには、図3(c)に示すように、縦方向および横方向に交差するよう格子状に形成してもよい。また、図3(d)に示すように、斜め方向に配置してもよく、導電糸35の配置は仕様に応じて任意に選択されてよい。
【0041】
図3(b)〜(d)の場合において、後述する摩擦ブラシ41は、その場で複数回回転することにより、摩擦ブラシ41をフィルタ3に擦り付けて静電気を発生する。したがって、帯電ブラシ41によって生成された電荷をフィルタ3の全面に行き渡らせるため、メッシュシート3には、渡り糸35aが設けられている。渡り糸35aは、導電糸35と同じ導電性の糸であって、各導電糸35に短絡するようにメッシュシート32に折り込まれている。
【0042】
さらには、図3(e)に示すように、フィルタ3の通風量の多い部分のメッシュシート32に導電糸35を他の部分よりも多く編み込み、通風量の多い部分における帯電量を多くするようにしてもよい。すなわち、図3(e)においては、両側の枠には1枠に対して2本の導電糸35が設けられており、中央の枠には1枠につき5本の導電糸35が設けられている。このような態様も本発明に含まれる。これによれば、通風量の多い部分での帯電量を増やして、より捕捉性能を高めることができる。
【0043】
また、通常メッシュシート32は無色透明であり、導電糸35はカーボンなどの場合黒色となる。そこで、導電糸35の視認性を利用して、フィルタ3の取り付け方向などのサインを導電糸35の織り込みを利用して行ってもよい。これによれば、単に導電糸35としての機能だけでなく、表示要素としての機能も加わり、その分の印刷などのコストを抑えることができる。
【0044】
この例において、摩擦帯電ユニット4は、図3(a)に示すように、フィルタ3の左右に跨がるように架け渡されているため、メッシュシート32の全ての導電糸35が摩擦帯電ユニット4に触れることができるようになっている。
【0045】
他方において、図4に示すように、摩擦帯電ユニット4をフィルタ3の幅方向に沿って跨がるように架け渡すのではなく、片持ちでフィルタ3の一部分を擦るように小型化することもできる。このような場合においても、フィルタ3には、摩擦帯電ユニット4の摩擦部分を含むように第1導電糸351を設け、この第1導電糸351に交差するように第2導電糸352をフィルタ3の全面に向かって張り巡らせばよい。
【0046】
これによれば、摩擦帯電ユニット4によって生成された静電気は、第1導電糸351から交差する複数の第2導電糸352に沿って移動するため、フィルタ3の全面を帯電させることができる。このような態様も本発明に含まれる。
【0047】
フィルタ3は、図示しないフィルタ支持レールが上面パネル11から前面パネル12にかけて緩やかなアーチ状に形成されている。このフィルタ支持レールによってフィルタ3の幅方向の両端が支持されることでフィルタ3が熱交換器2の上流側に配置される。
【0048】
室内機ユニット1内には、フィルタ3を摩擦帯電させる摩擦帯電ユニット4が、フィルタ1枚に対して1箇所、この例では2箇所設けられている。摩擦帯電ユニット4はともに同一形状であるため、以下においてはいずれか一方についてのみ説明する。
【0049】
摩擦帯電ユニット4は、フィルタ3を摩擦帯電させるための帯電ブラシ41を備えている。図5に示すように、帯電ブラシ41は、フィルタ3の一方の面(図1では上面)側に配置された第1帯電ブラシ41aと、フィルタ3の他方の面(図1では下面)側に配置される第2帯電ブラシ41bとを有し、それらがフィルタ3を挟んで対向的に配置されている。
【0050】
第1帯電ブラシ41aおよび第2帯電ブラシ41bはともに同一形状であるため、以下においては、第1帯電ブラシ41aのみについて説明する。第1帯電ブラシ41aは、所定の水平回転軸Lを中心に回動するブラシ台43(第1ブラシ台)と、同ブラシ台43に植設されるブラシ毛44とを備えている。
【0051】
ブラシ台43は、合成樹脂の成型品からなり、ブラシ毛44が植設される板状のベース431と、同ベース431の両端からほぼ垂直に立設され、回動用の図示しない軸受部を備えた側板432,432とを有するコ字状に形成されている。この例において、ブラシ台43はコ字型に形成されているが、水平回転軸Lを中心に回動可能な形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0052】
ここで、静電気を帯びた状態とは、非導電性の異なる物体同士を摩擦させることにより、表面の電子が移動して物体表面の電位が変化し、その表面に電荷が帯電した状態をいい、フィルタ3を−電荷に帯電させることで、空気中の+電荷を帯びている埃をフィルタ3で吸着することができる。
【0053】
そこで、ブラシ毛44は、フィルタ3に擦り付けた際に+側の電荷を帯びやすい材質のものが用いられている。すなわち、この例においては、+側に帯電しやすいナイロンが用いられている。これ以外に、+側に帯電しやすい材質として、各種毛皮類やガラスなど、仕様に応じて任意に選択されてよい。なお、ブラシ毛44の植設条件などについても同様である。
【0054】
ここで、フィルタ3が−電荷を帯びるようにするためには、フィルタ3を構成する材質よりもブラシ毛44の材質が帯電列において+側に位置するものであればよく、フィルタ3とブラシ毛44との間に電位を生むものであれば、ブラシ毛44を−側に帯電させ、フィルタ3を+側に帯電させるものであってもよい。
【0055】
この例においては、摩擦帯電手段として帯電ブラシ41が用いられているが、摩擦帯電は、摩擦するものの材質や形状が異なるほど帯電しやすく、とりわけ密着性のよいものが帯電させやすい。そこで、帯電ブラシ41に変えて、シートやスポンジなどのフィルタ3に密着しやすいものをブラシ台43に設けてもよい。
【0056】
なお、エアコン運転中に摩擦帯電させる場合には、被接触体(フィルタ3または帯電ブラシ41)のいずれか一方を除電した方がよい。すなわち、一方をアースすることにより、帯電量(電位差)を増やすことができ、吸着力を上げることができる。
【0057】
例えば、摩擦することで得られる電位差ΔVを10kVとした場合、一方(フィルタ)が−5kVのままであるとすると、他方(ブラシ)は+5kVとなるが、一方(フィルタ)をアース(0kV)すると、他方(ブラシ)に+10kVの電位を生じさせることができる。すなわち、空気中のゴミがほぼ電位を有していないとすると、フィルタの電位を大きくすることで、フィルタにゴミをより多く付着させることができる。これにより、再度帯電させる際に摩擦帯電の効果がより効率的に得られる。この例において、電位差ΔVは、湿度などの条件にもよるが、帯電ブラシ41で3〜4回擦ることにより、約2〜8kVの電位差を得ることを目的としている。
【0058】
帯電ブラシ41は、制御手段によって制御される駆動モータ(ともに図示しない)によって回転駆動される。図6に示すように、第1および第2帯電ブラシ41a,41bは、水平回転軸(図6では紙面に垂直軸)を中心として、その場で約90°回転することにより、ブラシ毛44をフィルタ3に接触、非接触を繰り返すことで、フィルタ3を帯電させるようになっている。この例において、第1帯電ブラシ41aは時計回りに回転し、第2帯電ブラシ41bは反時計回りに回転する。
【0059】
図7(a)〜(c)および図8のフローチャートを参照して、摩擦帯電動作(摩擦帯電ステップ)の手順の一例について説明する。まず、リモコンの操作や室内機ユニット1の内蔵メモリに収納された運転プログラムなどによって、制御部(ともに図示しない)は摩擦帯電モードを開始する(ステップST01)。ここで、本発明の摩擦帯電動作(摩擦帯電ステップST)は、空気調和機の運転開始前もあるいは運転中に行われることが好ましい。これによれば、停止中や運転中に減った電荷を回復することができる。
【0060】
摩擦帯電運転が開始されると、制御部は、まず、フィルタ3が所定の初期位置に配置されているかを検出する。併せて、帯電ブラシ41が所定の初期位置にあるかを検出する。(ステップST02)。次に、制御部は、帯電ブラシ41の駆動モータに指令を出し、図7(a)に示すように、第1帯電ブラシ41aを反時計回り、第2帯電ブラシを時計回りに約90°回転させ、帯電ブラシ41をフィルタ3に接触させる(ステップST03)。
【0061】
次に、制御部は、摩擦帯電の摩擦条件を設定するに当たり、図示しない湿度センサから現在のフィルタ3の周囲の湿度を測定する(ステップST04)。湿度データに基づき、制御部は、あらかじめ組み込まれた所定の制御プログラムに沿って湿度データを解析し、湿度が「高い」と判断した場合、高湿度モードに移行する。
【0062】
高湿度モードにおいて、制御部は、まず帯電ブラシ41の駆動モータに回動命令を出す。これを受けて、駆動モータは、図7(b)に示すように、湿度条件に応じて帯電ブラシ41を往復的に回動させてフィルタ3を摩擦する(ステップST05)。
【0063】
ここで、高湿度の場合、電荷は移動しやすいため、帯電しにくくなる。したがって、ブラシによる摩擦運動を長時間(複数回)行う必要がある。そこで、制御部は、高湿度モード時の設定時間T1が来るまで帯電ブラシ41を往復移動し続ける(ステップST06)。
【0064】
これに対して、制御部が湿度が「低い(通常)」であると判断した場合、制御部は、低湿度(通常)モードで運転される。
【0065】
通常運転モードにおいて、制御部は、帯電ブラシ41の駆動モータに回動命令を出し(ステップST07)。これに応じて、帯電ブラシ41が回動動作を設定時間T2(T1>T2)が来るまで繰り返し行う。(ステップST08)。
【0066】
帯電ブラシ41がフィルタ3を摩擦することによって、フィルタ3のメッシュシート32には電荷が蓄積され静電気を帯びる。その際、電荷は、導電糸35を通ってフィルタ全面に運ばれるため、フィルタ3の全面を一様に帯電させることができる。
【0067】
設定時間T1,T2が経過すると、制御部は、帯電ブラシ41の駆動モータに指令を出し、図6(c)に示すように、第1帯電ブラシ41aを時計回り、第2帯電ブラシを反時計回りに約90°回転させ、帯電ブラシ41をフィルタ3に非接触な状態に回動させる(ステップST09)。帯電ブラシ41a,41bがフィルタ3から離れることにより、電荷がフィルタ3の導電糸35を伝ってフィルタ3の全面に運ばれ、均一に帯電する。
【0068】
ところで、このようにフィルタ3が帯電した状態で室内機ユニット1を駆動した場合、空気がフィルタ3を通過する際、空気中に含まれる微細なゴミが静電気によってフィルタ3に吸着されるが、フィルタ3を通過する空気量が増えるほど、フィルタに帯電した電荷は弱まる、すなわち吸着能が低下する。同様に、空気の流れが速いほどフィルタ3を通過する空気量が増えるため、電荷は弱まる。
【0069】
さらには、フィルタ3に堆積したゴミによっても電荷が弱められる。したがって、運転中の静電吸着能を維持するためには、室内機ユニット1の運転中にも摩擦帯電作業を行うことが好ましい。
【0070】
この例において、空気調和機1には、帯電摩擦ユニット4とは別に、フィルタ3に付着したゴミを除去するフィルタ清掃ユニットが設けられている。フィルタ清掃ユニットは、例えば上記特許文献1でも示したような、現在用いられている一般的な自動フィルタ清掃ユニットが用いられる。本発明の摩擦帯電ユニット4は、その摩擦作業の実施間隔をフィルタ清掃の動作に連動して、フィルタの清掃の後に帯電させることが好ましい。
【0071】
すなわち、図9に示すように、図8の帯電ステップST05に移行する際に、設定時間tが設定時間t1よりも大きいと判断した場合、制御部は、前回フィルタ清掃が完了してからの積算運転時間Sをカウントしておき、積算運転時間Sが0〜10時間以内の場合(ステップST10)、その間は、帯電摩擦ユニット4を摩擦運転間隔m1で運転する(ステップST11)。摩擦運転間隔mとは、直近の摩擦運転と次回の摩擦運転の時間的な間隔をいう。
【0072】
制御部は、積算運転時間Sが10〜20時間の場合(ステップST12)、帯電摩擦ユニット4を摩擦運転間隔m2で運転する(ステップST13)。積算運転時間Sが20〜30時間の場合(ステップST14)、帯電摩擦ユニット4を摩擦運転間隔m3で運転する(ステップST15)。
【0073】
積算運転時間Sが増えるにつれ、フィルタ3にはゴミが堆積し、電荷の帯電量が減少する。したがって、摩擦運転時間は、m1>m2>m3となる。最後に、積算運転時間Sが30時間を越えると、制御部は、フィルタ清掃時期と判断し(ステップST16)、図示しないフィルタ清掃ユニットを駆動してフィルタ清掃を行う、もしくは、ユーザにフィルタ清掃時期であることを案内する。
【0074】
この例において、摩擦帯電ユニット4は、上下一対の帯電ブラシ41a,41bをその場で90°往復回動させることで、フィルタ3を帯電させているが、これ以外の方法であってもよい。次に、図10〜図13を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一もしくは同一と見なされる箇所には同じ参照符号を付した。
【0075】
この第2実施形態に係る空気調和機1の摩擦帯電ユニット4は、上記第1実施形態と同様の上下一対の帯電ブラシ41a,41bを備えているが、その摩擦帯電方法が異なる。第2実施形態においても各帯電ブラシ41a,42bはともに同一形状であるため、以下においては、一方の帯電ブラシ41aについて説明する。
【0076】
図11に示すように、帯電ブラシ41aは、平板状のブラシ台43(第2ブラシ台)と、同ブラシ台43に植設されるブラシ毛44とを備えている。ブラシ台43は、扁平な板状に形成されており、その一方の面にブラシ毛44が2箇所に分けて植設されている。
【0077】
ブラシ台43の中央および両端には、後述するフィルタ3に設けられたブラシレール36が案内されるガイド溝433が設けられている。ガイド溝433は、ブラシ台43の表面から一段低く形成された切欠溝であって、フィルタ3の移動方向(図11では紙面方向)に沿って形成されている。
【0078】
ブラシ台43の裏面側には、ブラシ毛44をフィルタ3に向けて押圧する押圧バネ45が設けられている。押圧バネ45は、ブラシ台43を常にフィルタ方向に向けて押し出す圧縮バネからなり、この例では、2カ所設けられている。この例において、押圧バネ45は、摩擦帯電ユニット4のベース46側に他端側が設置されているが、その設置数および位置は特に限定されない。
【0079】
図12を参照して、フィルタ3は上記第1実施形態のフィルタ3とほぼ同じ形状であるが、フィルタ3の移動方向のフィルタ桟31には、各帯電ブラシ41a,41bを互いに離反させるためのブラシ駆動レール36が設けられている。
【0080】
ブラシ駆動レール36は、フィルタ桟31の終端側(図12では上端側)の両面に上下対称に設けられた凸状のリブからなり、フィルタ桟31に沿って一体的に形成されている。ブラシ駆動レール36は、フィルタ桟31よりも一段高く形成されており、その端部には、テーパー面361が設けられている。
【0081】
フィルタ桟31のブラシ駆動レール36の他端側(図12では下端側)には、摩擦帯電時にフィルタ3を前後に移動させるためのラック溝33が設けられている。ラック溝33は、室内機ユニット1内部に設けられた駆動ギア5に歯合され、駆動ギア5を介してフィルタ3が前後にするスライドする。
【0082】
これによれば、図13に示すように、エアコンの運転時は、フィルタ3が図13で示す位置に配置されることにより、ブラシ駆動レール36によって帯電ブラシ41a,41のブラシ台43が持ち上げられるため、帯電ブラシ41a,41b同士がフィルタ3を挟んで互いに離反し、ブラシ毛44がフィルタ3に非接触となる。
【0083】
これに対して、摩擦帯電時には、図10に示すように、駆動ギア5を介してフィルタ3が後方に移動することで、ブラシ台43がブラシ駆動レール36を外れることで、押圧バネ45によって帯電ブラシ41a,41bが、フィルタ3側に押し付けられて接触した状態となる。
【0084】
この状態で、駆動ギア5を往復的に回動させることにより、フィルタ3が小刻みに前後することにより、ブラシ毛44がフィルタ3を摩擦して帯電する。なお、この第2実施形態において、メッシュシート32には、図面の都合上、導電糸35は描画されていないが、実際には第1実施形態と同様の導電糸35が含まれている。
【0085】
この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様にフィルタ清掃装置をさらに備えていることが好ましい。これによれば、フィルタ3にゴミが堆積して帯電による静電吸着性能が落ちることを防止することができる。より具体的には、フィルタ3に付着した埃を除去するブラシと、摩擦ブラシとを兼用することにより、埃の摩擦による吸着およびフィルタの清掃を最小限の構成で行うことができる。
【0086】
この例において,空気調和機1は一般的な壁掛け式の家庭用エアコンを例にとって説明したが、本発明の摩擦帯電ユニット4は、より大型の壁掛けエアコンにも適用可能であるし、さらには、天井埋込型などの業務用エアコンにも適用可能である。さらには、空気調和機だけでなく、除湿器や加湿器、空気清浄機などのフィルタに利用することもできる。
【符号の説明】
【0087】
1 空気調和機
10 ケーシング
2 熱交換器
3 フィルタ
31 フィルタ桟
32 メッシュシート
33 ラック溝
35 導電糸
36 フィルタガイドレール
4 摩擦帯電ユニット
41a,41b 帯電ブラシ
43 ブラシ台
44 ブラシ毛
45 押圧バネ
5 駆動ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機筐体内に空気を取り込む空気吸込口に沿って配置されたフィルタを有する空気調和機において、
上記室内機筐体には、上記フィルタを帯電させる帯電手段が設けられており、上記フィルタには、上記フィルタの全面を一様に帯電させるためのフィルタ導電手段が設けられていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
上記フィルタ導電手段は、導電糸を上記フィルタのメッシュシートに一体的に編み込んだものからなることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
上記フィルタは、上記メッシュシートを支持するフィルタ桟を有し、上記導電糸は、上記フィルタ桟の互いに対向する辺の間に架け渡されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
上記フィルタ桟は、格子状に形成されており、上記導電糸は、上記フィルタ桟の1つの格子枠内に少なくとも2以上設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の空気調和機。
【請求項5】
上記導電糸は、上記フィルタの通風量が多い部分に高密度に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
上記導電糸は、上記フィルタの一端から他端に向かって所定の間隔をもって互いに平行に配置される複数の横糸と、上記各横糸に対して交差するように配置される縦糸とを有し、上記帯電手段は、少なくとも上記縦糸を帯電可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
上記横糸は、上記フィルタ桟に対して斜めに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の空気調和機。
【請求項8】
上記フィルタ導電手段は、導電性を有する塗料を上記フィルタのメッシュシートに塗布したものからなることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−208876(P2011−208876A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77034(P2010−77034)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】