説明

空気調和機

【課題】アンテナ位置による最適受信ポイントが波長の1λ〜1/4λ範囲内で変化することに着目し、移動範囲が無線電波の波長より十分大きな空気調和機にアンテナを取りつけることで、アンテナ位置の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、安定通信を実現する。
【解決手段】エアフィルター102の塵埃を移動しながら吸入する吸入ノズル104と、吸入ノズル104の移動制御を行うマイコン基板106と、吸入ノズル104に備えた無線機と、無線機により受信した信号の電界強度と吸入ノズル104の位置を記憶する記憶手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の向上につれてエネルギー消費が進み、地球温暖化、大量エネルギー消費と共にC02大量排出により地球環境の悪化が社会問題になりつつある。家電機器も生活の利便性向上に伴いエネルギー消費が大量となっていることから、家電メーカーはユーザーに対する製品の差別化ポイントとして省エネを謳っている。
【0003】
家電機器単体での性能向上は既にある程度まで進み更なる省エネ化を進めるために、家電機器を連携して制御することで利便性を犠牲にすることなく、省エネルギー化を図る試みがなされ始めている。これは、家庭内に点在する家電機器を有線または無線で接続し、機器の運転情報をセンターで環視したり、センターから機器の運転を最適制御し、総合的な家電制御によって、更なる省エネ化を図ろうとするものである。
【0004】
当然、家電機器は家庭内の各所に点在するので、新築のみならず、製品の追加購入時等の利便性を考えると、センターとの接続は無線の方が利便性が高いことは言うまでもない。
【0005】
これまで、家電機器を無線で相互接続して機器の運転状態をモニターしたり、機器をセンターから制御使用とする試みとしては、アダプター形式で対応するものが一般的であり、機器に最初から無線機を内蔵し、機器の運転状態をセンターに知らしめたり、センターから家電機器を積極的に制御するシステムは、ほとんど存在しなかった。
【0006】
これは、全ての機器に無線が内蔵され、センターからモニターやコントロールをするシステム製品ではなく、必要な機器だけ対応すると言うシステムポリシーに基づいて、設計されたものであり、全ての機器に無線機を搭載すると、製品価格も上昇し他社との価格競争に勝てないという事情によるものである。
【0007】
無線機を内蔵する機器によっても機器固有の実装上の制約が有り、一例として電子レンジに無線機を内蔵する場合のアンテナの設置に関する物などがあった(例えば、特許文献1参照)。また、空気調和機において、エアフィルターに付着する塵埃を吸入ノズルを用いて吸い込む技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−317942号公報
【特許文献2】特開2004−286345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成では、周囲の電波環境の変化により、継続的に無線通信が行えないといった課題がある。設置時には電波環境を調査し、無線通信が問題なく行なえるか確認するが、無線機を内蔵する機器の設置位置の変更による送信側−受信側の無線アンテナの位置関係の変化、周囲の構造物の設置位置の変化等によって、電波環境は大きく変わってしまう。無線通信経路では、無線アンテナ間を最短距離で伝搬する直接伝搬波と、それ以外に建築構造物で反射された反射伝搬波が存在する。これによって、受信アン
テナでの無線電波はフェージングを受け、無線周波数の波長の1/4λ〜1λ範囲内の位置変化で、強弱が大きく変化してしまう。
【0010】
本発明は、このアンテナ位置による最適受信ポイントが波長の1λ〜1/4λ範囲内で変化することに着目し、移動範囲が無線電波の波長より十分大きな空気調和機にアンテナを取りつけることで、アンテナ位置の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、安定通信を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、空気調和機に関するもので、エアフィルターの塵埃を移動しながら吸入する吸入ノズルと、吸入ノズルの移動制御を行う制御手段と、吸入ノズルに備えた無線手段と、無線手段により受信した信号の電界強度と吸入ノズルの位置を記憶する記憶手段とを備えたものである。
【0012】
これによれば、無線手段の位置を最適に設定できるので、無線手段の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、安定通信を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気調和機は、無線手段の位置を最適に設定するため、無線手段の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、相手局との通信状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における空気調和機と無線装置の通信システム概観図
【図2】本実施の形態における空気調和機と無線装置の通信システム概観図
【図3】本実施の形態における空気調和機と無線装置との無線通信特性を示す図
【図4】本実施の形態における空気調和機の構成図
【図5】本実施の形態における空気調和機が行う移動制御のフロー図
【図6】本実施の形態における空気調和機と無線装置との無線通信特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、空気調和機に関するもので、エアフィルターの塵埃を移動しながら吸入する吸入ノズルと、吸入ノズルの移動制御を行う制御手段と、吸入ノズルに備えた無線手段と、無線手段により受信した信号の電界強度と吸入ノズルの位置を記憶する記憶手段とを備えたものである。
【0016】
これによって、無線手段の位置を最適に設定できるので、無線手段の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、安定通信を実現できる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明において、エアフィルターの塵埃を吸入しながら吸入ノズルが移動している間、記憶手段は定期的に電界強度と吸入ノズルの位置を記憶し続けるものである。これによれば、無線手段の最適な位置を特定できる。
【0018】
第3の発明は、特に、第2の発明において、エアフィルターの塵埃を吸入しながら吸入ノズルが移動している処理が終了した後、制御手段は記憶手段に記憶されている電界強度の中で最も大きい電界強度値をとる吸入ノズルの位置を特定し、吸入ノズルを当該位置へ移動させるものである。これによれば、無線手段の変化によって生ずるフェージングの影響を解消し、相手局との通信状態を良好に維持することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第3の発明において、記憶手段はさらにBER(ビットエラーレ
ート)又はPER(パケットエラーレート)の値を記憶するものである。これによれば、さらに確実に無線手段の最適な位置を特定することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における空気調和機と無線装置の位置関係を示す図である。図1は、部屋に備え付けられている空気調和機100と無線装置200を天井から見た図である。空気調和機100には無線機101が備わっており、無線装置200と無線通信を行うことができる。
【0022】
空気調和機100と無線装置200との間の無線伝搬経路はマルチパス、すなわち複数形成されており、図1では一例として3つの経路(A、B、C)を図示している。経路Aは、空気調和機100と無線装置200との間の最短距離となる直接伝搬経路である。一方、経路Bや経路Cは側壁面に反射する経路となる反射伝搬経路である。
【0023】
経路Aは、直接伝搬経路であることから、伝搬経路が最も短く、空間での減衰しか受けないので、最も電波強度が強く、かつ、他の経路に比べて最速に伝搬し、受信側では最も好条件で受信することができる。しかし、実際は経路Bや経路Cといったマルチパスが存在しており、受信側ではそれらが合成されることで減衰した信号を受信することになる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態における空気調和機と無線装置の位置関係を示す図である。図2は、部屋に備え付けられている空気調和機100と無線装置200を部屋横側から見た図である。図2の場合にも、空気調和機100と無線装置200との間の複数の無線伝搬経路が形成されており、一例として3つの経路(D、E、F)を図示している。経路Dは、空気調和機100と無線装置200との間の最短距離となる直接伝搬経路である。一方、経路Eは部屋天井面に反射する反射伝搬経路であり、経路Fは部屋床面に反射する反射伝搬経路である。図1に関して上述した通り、直接伝搬経路である経路Dが最も電波強度が強く、かつ、他の経路に比べて最速に伝搬し、受信側では最も好条件で受信することができる。一方で、経路Eや経路Fは、反射しているために伝搬経路が長く、伝搬時間に差が生ずることがわかる。
【0025】
なお、図1、図2では壁面、天井面、床面の反射について説明したが、実際の設置環境では、家具や、家電製品、観葉植物等々の影響で更に多数の伝搬パスが存在し、その合成となる受信点での電界強度変化は複雑なものとなる、ピークディップを伴う。
【0026】
図3は、空気調和機100と無線装置200との間の無線伝搬距離における受信側の電界強度の変化を示す図である。横軸は空気調和機100と無線装置200との間の無線伝搬距離を示し、縦軸は受信側の電界強度を示している。
【0027】
受信側の電界強度は、壁面や家具、家電機器等々の部屋内の構造物に電波が反射するので大きく変化している。例えば、点Aでは電界強度は十分に大きいが、点Bでは電界強度はほぼゼロとなっている。したがって、空気調和機100と無線装置200の位置関係が点Bにあった場合は、空気調和機100と無線装置200との間の無線通信は困難になる。しかも、空気調和機100や無線装置200は、一度宅内に設置すると容易に移動できない。
【0028】
そこで、本実施の形態では、空気調和機100に備わる無線機101を移動可能なものとすることで、利得の高くなる無線機101の位置を検出し、その位置を記憶することで
、通信の安定性を図るものです。
【0029】
図4は、空気調和機100(室内機)の構成図である。図4の示す空気調和機100は正面内部を表しており、熱交換器(図示せず)の前面を覆うようにしてエアフィルター102があり、さらにエアフィルター102を覆うようにしてフィルター枠103が形成されている。フィルター枠103には吸入ノズル104が取り付けられており、吸入ノズル104は方向Xに移動可能である。吸入ノズル104には、吸入口(図示せず)が設けられており、吸入ノズル104が最右端(マイコン基板106側)から最左端まで移動することでエアフィルター103の表面に付着する塵埃を吸い取る。この塵埃吸取り動作は、例えば初期電源入力時に行われ、その後は定期的(例えば、毎週、毎月、隔月など)に行われる。
【0030】
吸入ノズル104は、給電ケーブル105を介してマイコン基板106と接続しており、マイコン基板106は吸入ノズル104の移動制御を行う。また、吸入ノズル104には、アンテナ107とアンテナ整合回路108からなる無線機101が備えられている。アンテナ107で受信した信号は、給電ケーブル105を介してマイコン基板106へ伝達される。
【0031】
通常の構成であれば、吸入ノズル104の移動長さは、空気調和機100の横幅の80%程度の距離を占めると言われる。したがって、移動する吸入ノズル104に無線機101を搭載することで、空気調和機100と無線装置200との間の無線伝搬距離は変化し、空気調和機100と無線装置200との間の無線通信が全く行えないといった事態を回避できる。
【0032】
次に、マイコン基板106における吸入ノズル104の移動制御について図5を用いて説明する。なお、吸入ノズル104の移動制御のタイミングは、前述した通り初期電源入力時や、定期的(例えば、毎週、毎月)な時間、使用者により指示があったタイミングなど様々であり、いずれのタイミングであっても良いとする。
【0033】
移動制御が開始すると、まずマイコン基板106は、無線機101を介して無線装置200に移動制御開始信号を送信する(S501)。この移動制御開始信号は、吸入ノズル104の移動制御を開始するタイミングを示す内容であれば、どのような信号内容であってもよい。
【0034】
無線装置200は、移動制御開始信号を受信すると、移動制御が終了すると見積もられる期間、空気調和機100に対してテスト信号を送信し続ける。
【0035】
マイコン基板106は、無線機101を介してテスト信号を受信し続ける(S502)。このとき、マイコン基板106は、テスト信号を受信したときの電界強度と、吸入ノズル104の位置を対応させて記憶手段109に記憶する(S503)。なお、S503の処理は、連続的にあるいは定期的に行われる。マイコン基板106は、吸入ノズル104が最左端へ到達しているか否かを確認し(S504)、吸入ノズル104が最左端へ到達するまで上記S502、S503の処理を繰り返し行う。
【0036】
吸入ノズル104が最左端へ到達すると、マイコン基板106は記憶手段109に記憶されている電界強度情報とそれに対応する位置情報を参照し、最も大きい電界強度値と、それに対応する吸入ノズル104の位置を特定する(S505)。
【0037】
次に、マイコン基板106はS505の処理で特定した位置に吸入ノズル104を移動させ(S506)、吸入ノズル104の移動制御を終了する。終了してから次回に移動制
御を開始する場合は、吸入ノズル104の位置を最右端(マイコン基板106側)に戻し、最右端から最左端へ掃除を行うとともに、上記S501からS506の処理を行う。
【0038】
なお、本実施の形態では、無線周波数を900MHz〜1GHzとしている。この場合、λ(波長)は30〜33cmとなり、吸入ノズル104による掃除範囲内は1波長分(1λ)より十分に長いので、無線機101の位置が変わる際にいくつかのピークディップを繰り返すため、ピークディップを回避することは充分可能である。
【0039】
なお、S503では電界強度の代わりにBER(ビットエラーレート)又はPER(パケットエラーレート)を記憶し、S505ではBERやPERが最も低くなるような吸入ノズル104の位置を特定してもよい。図6は、空気調和機100と無線装置200との間の無線伝搬距離における受信側のBERの変化を示す図であるが、図3に示した電界強度を同じ性質を有しているため、同様の効果を得ることができる。もちろん、S503では電界強度と、BER、PERすべてを記憶し、S505ではそれらすべての値から吸入ノズル104の位置を特定してもよい。
【0040】
以上の通り、本実施の形態によれば、受信信号の電界強度情報に注目してアンテナの最適位置を決定できるので、処理に時間を必用とせず、簡単な回路構成でアンテナ最適位置の判定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明によれば、空気調和機熱交換機の前面のフィルターを移動しながらクリーニングしつつ、通信状態の最良好な位置を検出してその位置に無線機が位置するように制御するので、相手局との通信状態を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 空気調和機
101 無線機
102 エアフィルター
103 フィルター枠
104 吸入ノズル
105 給電ケーブル
106 マイコン基板
107 アンテナ
108 アンテナ整合回路
109 記憶手段
200 無線装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルターの塵埃を移動しながら吸入する吸入ノズルと、
前記吸入ノズルの移動制御を行う制御手段と、
前記吸入ノズルに備えた無線手段と、
前記無線手段により受信した信号の電界強度と前記吸入ノズルの位置を記憶する記憶手段とを備えた空気調和機。
【請求項2】
前記エアフィルターの塵埃を吸入しながら前記吸入ノズルが移動している間、前記記憶手段は定期的に電界強度と前記吸入ノズルの位置を記憶し続ける、請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記エアフィルターの塵埃を吸入しながら前記吸入ノズルが移動している処理が終了した後、前記制御手段は前記記憶手段に記憶されている電界強度の中で最も大きい電界強度値をとる前記吸入ノズルの位置を特定し、前記吸入ノズルを当該位置へ移動させる、請求項2記載の空気調和機。
【請求項4】
前記記憶手段は、さらにビットエラーレート又はパケットエラーレートの値を記憶する、請求項3記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207883(P2012−207883A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75017(P2011−75017)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】