説明

空気調和機

【課題】マルチ型の空気調和機において、室外機に大型室内機用の膨張弁を設けることなく、必要に応じて大型室内機を接続できるようにする。
【解決手段】1台の室外機10と、室外機に対して液側配管路15とガス側配管路16とを介して並列的に接続される複数台の室内機20とを含み、液側配管路15内には、室外機の室外熱交換器に対して並列に接続された弁口径が同一である複数個の膨張弁31〜34が設けられており、室内機の液側接続配管が所定の膨張弁に接続される空気調和機において、室内機の液側接続配管として、一端側に2個以上の膨張弁に接続される複数本の枝管42,43を有し、他端側に各枝管と連通し室内機の室内熱交換器側に接続される1本の幹管41を有する冷媒合流配管40を含み、特定の室内機(大型室内機21)を、冷媒合流配管40を介して2個以上の膨張弁に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外機が1台で、これに複数台の室内機が接続されるマルチ型の空気調和機に関し、さらに詳しく言えば、小型,大型等の容量(能力)の異なる室内機を接続可能とした空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の家庭用途の空気調和機では、室外機と室内機がともに1台であるが、例えば共同集合住宅やオフィスビル等の多くの空調空間を有する大型建物用途の場合には、1台の室外機に対して、各空調空間に設置される複数台の室内機が接続される。このような空気調和機は、マルチ型(もしくは多室型)空気調和機と呼ばれている。
【0003】
マルチ型空気調和機の室外機には、接続し得る室内機の台数分の膨張弁が設けられているが、通常では、比較的容量(能力)が小さな小型の室内機が接続されることを想定して、各膨張弁の弁口径を小型室内機に合わせている。そのため、比較的容量(能力)が大きな大型の室内機を接続することができない、という問題がある。
【0004】
この点について、特許文献1には、室外機に小型室内機用の膨張弁と大型室内機用の膨張弁とがそれぞれ所定個数ずつ設けられ、これによって、小型室内機と大型室内機とを接続可能とした空気調和機が提案されている。
【0005】
しかしながら、空気調和機の設置環境によっては、例えば小型室内機用として用意されている膨張弁の数よりも小型室内機を多く必要とし、大型室内機は不要である場合や、反対に大型室内機用として用意されている膨張弁の数よりも大型室内機を多く必要とし、小型室内機は不要である場合もあり、このような場合には、特許文献1に記載された発明では対処することが困難である、という問題がある。
【0006】
また、別の問題として、小型室内機用の膨張弁と大型室内機用の膨張弁は、それぞれ接続配管を介して室外熱交換器に接続されるが、小型室内機用の膨張弁と大型室内機用の膨張弁とでは、接続配管の太さ(配管径)を変える必要がある。すなわち、太さの異なる2種類の接続配管を用いる必要があり、コスト的にも部品管理の面でも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−280678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、1台の室外機に対して複数台の室内機が接続されるマルチ型の空気調和機において、室外機に大型室内機用の膨張弁を設けることなく、必要に応じて大型室内機を接続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、1台の室外機と、上記室外機に対して液側配管路とガス側配管路とを介して並列的に接続される複数台の室内機とを含み、上記液側配管路内には、上記室外機の室外熱交換器に対して並列に接続された弁口径が同一である複数個の膨張弁が設けられており、上記室内機の液側接続配管が所定の上記膨張弁に接続される空気調和機において、上記室内機の液側接続配管として、一端側に2個以上の上記膨張弁に接続される複数本の枝管を有し、他端側に上記各枝管と連通し上記室内機の室内熱交換器側に接続される1本の幹管を有する冷媒合流配管を備え、他の室内機より冷房能力が大きい室内機を接続する場合、上記冷媒合流配管を介して上記2個以上の膨張弁に接続されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記各膨張弁が例えば比較的容量(能力)が小さな小型室内機用であるとして、比較的容量(能力)が大きい大型室内機を必要としない場合には、室外機に小型室内機のみを接続することができ、また、大型室内機については、冷媒合流配管を介してその容量や能力に応じて2個以上の膨張弁に接続することができるため、空気調和機の設置環境に応じて、室外機に接続される室内機の機種選択の自由度が高められる。また、室外機には小型室内機用の膨張弁のみが設けられ、大型室内機用の膨張弁が不要であることから、各膨張弁と室外熱交換器とを接続する冷媒配管も1種類でよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和機を示す模式的な冷媒循環回路図。
【図2】冷媒合流配管により2個の膨張弁に大型室内機を接続した状態を示す模式図。
【図3】冷媒合流配管により3個の膨張弁に大型室内機を接続した状態を示す模式図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る空気調和機を示す模式的な冷媒循環回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図1ないし図4により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る空気調和機は、1台の室外機10と、これに接続される複数台の室内機20とを備えている。
【0014】
この実施において、室内機20は、1台の大型室内機21と、2台の小型室内機22,23の合計3台である。小型室内機22,23は、ともに冷房能力が例えば2.3KWであり、大型室内機21は、その冷房能力が例えば5.2KWである。
【0015】
室外機10は、基本的な構成として、圧縮機11,暖房サイクルと冷房サイクルを切り替える四方弁12,室外熱交換器13および膨張弁30を備える。この実施形態では、圧縮機11を1台としているが、圧縮機11は複数台が用いられてもよい。
【0016】
また、この実施形態において、膨張弁30は31〜34の4個が用いられており、各膨張弁31〜34は、小型室内機22,23用の膨張弁で、その弁口径は同一である。
【0017】
室外機10と室内機20(21〜23)は、液側配管路15とガス側配管路16とを介して接続されるが、室外機10側の液側配管路151内には、膨張弁31〜34が並列的に含まれている。この第1実施形態では、図2に示すように、膨張弁31〜34は、室外機10の筐体側面に配置されている。
【0018】
各室内機21〜23は、それぞれ室内熱交換器21a,22a,23aを備え、それらの各一端側には液側接続配管211,221,231が接続され、各他端側にはガス側接続配管212,222,232が接続されている。なお、図示が省略されているが、室外熱交換器13および室内熱交換器21a,22a,23aには、それぞれ送風ファンが付設されている。
【0019】
図2に示すように、室内機21〜23のうち、小型室内機22,23は、それらの液側接続配管221,231を介して膨張弁33,34に接続されるが、大型室内機21の液側接続配管211は、冷媒合流配管40を介して2つの膨張弁31,32に接続される。
【0020】
この第1実施形態において、冷媒合流配管40は、2本の枝管42,43と、これら枝管42,43に連通する1本の幹管41とを有するY字配管で、枝管42,43がそれぞれ膨張弁31,32に接続され、幹管41が大型室内機21の液側接続配管211と接続される。
【0021】
なお、室内機21,22,23のガス側接続配管212,222,232は、それぞれ室外機10側のガス側配管路161に接続される。
【0022】
冷房サイクル時に、室外熱交換器13にて凝縮された液冷媒は、膨張弁31〜34を介して室内機21〜23に供給されるが、大型室内機21には、膨張弁31,32からの液冷媒が冷媒合流配管40にて合流されて供給されるため、大型室内機21に必要とされる冷媒量を確保することができる。
【0023】
暖房サイクル時には、冷房サイクル時とは反対に、室内機21,22,23で凝縮された液冷媒が、液側接続配管211,221,231を介して膨張弁31〜34側に戻されるが、大型室内機21からの液冷媒については、冷媒合流配管40の幹管41から枝管42,43に分流されて膨張弁31,32側に戻される。
【0024】
なお、大型室内機21でより多くの冷媒量を必要とする場合には、図3に示すように、冷媒合流配管40にさらにもう1本の枝管44を付け加えて、3つの膨張弁31,32,33に接続する構成とすればよい。
【0025】
上記第1実施形態では、膨張弁31〜34が室外機10内に設けられているが、図4に示す第2実施形態のように、膨張弁31〜34が室外機10に付設される分流ユニット50内に設けられている場合でも、冷媒合流配管40を用いることにより、上記第1実施形態と同様に、必要に応じて大型室内機21を接続することができる。
【0026】
次に、冷媒合流配管40を介して大型室内機21が接続される膨張弁の弁制御形態について説明する。この弁制御を行うにあたっては、室内機20側から機種情報として大型室内機21で使用する膨張弁の個数を室外機と室内機との間に配線されている信号線を介して室外機10の制御手段(ともに図示しない)に認識させる。この機種情報の送信は、例えば室内機の電源投入時に行われる。
【0027】
例えば、図2に示すように、大型室内機21で使用する膨張弁が31,32の2個であり、かつ、運転サイクルが冷房サイクルである場合を例にして説明すると、室外機10の制御手段は、大型室内機21に要求される冷房能力が小さい通常運転時には、その冷房能力に応じて、一方の膨張弁31の弁開度を制御し、他方の膨張弁32は全閉とする。
【0028】
そして、大型室内機21に要求される冷房能力が高まり、膨張弁31を制御上限である全開としても冷媒供給量が足りない状態に至ると、2つ目の膨張弁32を開き、その弁開度を制御する。
【0029】
別の制御形態として、室外機10の制御手段は、室温がリモコン等により設定された目標温度よりも大幅に高い場合には、膨張弁31,32を同時に開いて大型室内機21に多くの冷媒を供給する。
【0030】
その結果、室温が目標温度に近づいたときには、膨張弁31,32のいずれか一方を全閉とし、他方の膨張弁の弁開度を制御して室温をコントロールするため、従来の大型の膨張弁で制御するよりもきめ細かな制御が可能である。なお、各膨張弁31〜34に接続される室内機が、すべて小型室内機である場合には、従来どおりの制御を行う。
【0031】
なお、上記実施形態では、室外機に接続される室内機を説明の便宜上、小型室内機と大型室内機としているが、これは相対的なものであって、上記室内機には、容量および/または能力的に、小型室内機と大型室内機の中間に位置付けられる中型室内機が含まれてもよい。
【0032】
上記実施形態で説明したように、各膨張弁が例えば比較的容量(能力)が小さな小型室内機用であるとして、本発明によれば、比較的容量(能力)が大きい大型室内機を必要としない場合には、室外機に小型室内機のみを接続することができ、また、大型室内機については、冷媒合流配管を介してその容量や能力に応じて2個以上の膨張弁に接続することができるため、空気調和機の設置環境に応じて、室外機に接続される室内機の機種選択の自由度が高められる。また、室外機には小型室内機用の膨張弁のみが設けられ、大型室内機用の膨張弁が不要であることから、各膨張弁と室外熱交換器とを接続する冷媒配管も1種類でよい、という格別な効果が奏される。
【符号の説明】
【0033】
10 室外機
11 圧縮機
12 四方弁
13 室外熱交換器
15 液側配管路
16 ガス側配管路
20 室内機
21 大型室内機
22,23 小型室内機
211,221,231 液側接続配管
212,222,232 ガス側接続配管
30(31〜34) 膨張弁
40 冷媒合流配管
41 幹管
42〜44 枝管
50 分流ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の室外機と、上記室外機に対して液側配管路とガス側配管路とを介して並列的に接続される複数台の室内機とを含み、上記液側配管路内には、上記室外機の室外熱交換器に対して並列に接続された弁口径が同一である複数個の膨張弁が設けられており、上記室内機の液側接続配管が所定の上記膨張弁に接続される空気調和機において、
上記室内機の液側接続配管として、一端側に2個以上の上記膨張弁に接続される複数本の枝管を有し、他端側に上記各枝管と連通し上記室内機の室内熱交換器側に接続される1本の幹管を有する冷媒合流配管を備え、
他の室内機より冷房能力が大きい室内機を接続する場合、上記冷媒合流配管を介して2個以上の上記膨張弁に接続されることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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