説明

空気調和装置の風向調整構造

【目的】 天井埋込型の空気調和装置に対し、水平羽根の形状を改良することにより、風向の調整を可能にしながら、その配設位置を室内から見え難い位置に配設して吹出口周辺部の見映えを良好に得る。
【構成】 天井埋込型空気調和装置1の空気吹出口6dにおいて、室内から見え難い位置に断面略S字状の水平羽根11を回転可能に設ける。空気の下向き吹出し時には、水平羽根11を鉛直方向に延びる状態として、水平羽根11の前後両側に空気を流す。空気の水平向き吹出し時には、水平羽根11を、回動させて上端を空気流通路Aの外側の壁面に当接させて、水平羽根11の後側にのみ空気を流す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば天井埋込型等の空気調和装置の吹出口近傍に備えられて空調空気の吹出し方向を変更可能とする風向調整羽根の構造に係り、特に、吹出口周辺部の見映えの向上対策に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平3−160266号公報に開示されているように、天井埋込型の空気調和装置は、空調機本体及び化粧パネルを備えており、これら各部材には空気流通路が形成されている。そして、空調機本体の下面に化粧パネルが取付けられた状態では、各空気流通路同士が連続され、化粧パネルにおける空気流通路の下端部分が室内に向って開放する吹出口に形成される。このような構成により、空調運転時には、空調機本体において生成された空調空気が、各部材の空気流通路を経て吹出口から室内に向って吹出される。
【0003】また、図11に示すように、上記吹出口(a) には、平板状の板材で形成されて一端縁部が化粧パネル(b) に対して回動自在に支持され、その回動に伴って空調空気の吹出し方向を変更する水平羽根(c) が設けられている。つまり、空調空気の吹出し方向を図11に実線の矢印で示すように略水平方向に設定する場合には、水平羽根(c) を水平に近い状態(図11に実線で示す状態)まで回動させる一方、吹出し方向を図11に仮想線の矢印で示すように下向きに設定する場合には、水平羽根(c) を下側に回動させて鉛直に近い状態(図11に仮想線で示す状態)にする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような構成では、水平羽根(c) を吹出口(a) の開放部分に設けねば適切な風向調整が行えないために、この水平羽根(c) は室内側から見える位置に配設されている。このため、以下に述べるような不具合があった。
【0005】・空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃が水平羽根(c) に付着して該水平羽根(c) に汚れが発生している場合、この汚れが室内側から見えることになるため、吹出口(a) 周辺部の見映えが悪化してしまう。
【0006】・一般に、この種の空調機は、室内側からの全体の見映えを良好に確保するために、図12に示すように、吹出口(a) は、化粧パネル(b) の全長に略一致した長さ寸法で形成され、且つ水平羽根(c) の長さ寸法は、この吹出口(a) の長さ寸法に略一致されている。このため、空調機の本体ケーシング(d) の空気流通路(e)の長さ寸法(図12における寸法t1)が化粧パネル(b) の空気流通路(f) の長さ寸法(図12における寸法t2)よりも小さい構成となっている場合、本来の空気の流通路は本体ケーシング(d) の空気流通路(e) の長さ寸法(t1)のみであるにも拘らず、水平羽根(c) の長さ寸法としては、化粧パネル(b) の空気流通路(f) の長さ寸法(t2)が必要となり、吹出口(a) の周辺部の見映えの向上のためだけに水平羽根(c) の全長を必要以上に長く設定せねばならなくなって該水平羽根(c) の大型化を招いていた。
【0007】本発明は、この点に鑑みてなされたものであって、水平羽根の形状を改良することにより、風向の調整を可能にしながら、その配設位置を室内から見えない位置に配設して吹出口周辺部の見映えを良好に得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、水平羽根を吹出口よりも空調空気の流れ方向の上流側に配設し、この水平羽根の形状を、該水平羽根の回動動作等に伴って空調空気の吹出し方向を変更できるように改良した。
【0009】具体的に、請求項1記載の発明は、室内空間に向って空調空気を案内すると共に室内空間に開放する空気吹出口(6d)を有する空気流通路(A) と、空気吹出口(6d)からの空調空気の吹出し方向を変更可能とする風向調整羽根(11)とを備えた空気調和装置を前提としている。そして、上記風向調整羽根(11)を、如何なる空調空気の吹出し方向の変更状態にあっても常に空気吹出口(6d)の開放端よりも空調空気の流れ方向の上流側に位置させると共に、該風向調整羽根(11)に空気流通路(A) の内面と協働して空調空気の吹出し方向を変更する案内面(11c,11f) を備えさせた構成とした。
【0010】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の空気調和装置の風向調整構造において、風向調整羽根(11)を、空調空気の流れ方向の上流側に位置する上流側湾曲部(11a) と、空調空気の流れ方向の下流側に位置し上流側湾曲部(11a) に対して逆方向に湾曲する下流側湾曲部(11b) とを備えた断面略S字状に形成し、且つ回動可能に空気流通路(A) に設けた構成としている。
【0011】請求項3記載の発明は、上記請求項2記載の空気調和装置の風向調整構造において、風向調整羽根(11)の回動中心位置を、該風向調整羽根(11)における空調空気の流れ方向の下流側に位置する端部近傍において、該端部に対して所定間隔を存した空調空気の流れ方向の上流側位置に設定した構成としている。
【0012】請求項4記載の発明は、上記請求項3記載の空気調和装置の風向調整構造において、風向調整羽根(11)の回動軸心を、空気流通路(A) の幅方向に対して直交方向に延ばすと共に該空気流通路(A) の幅方向の略中央部に設定し、上記風向調整羽根(11)を、その回動動作により、空気流通路(A) の一側面との間にのみ空調空気を流すように、上流側湾曲部(11a) の外面(11d) が空気流通路(A) の他側面に当接するような構成としている。
【0013】請求項5記載の発明は、上記請求項1、2、3または4記載の空気調和装置の風向調整構造において、空気調和装置を天井面(R) に据付けられた天井埋込型とした構成としている。。
【0014】請求項6記載の発明は、上記請求項5記載の空気調和装置の風向調整構造において、空気吹出口(6d)を天井面(R) に沿って延ばし、空気流通路(A) の幅方向の空気吹出口(6d)近傍部分を、空気吹出口(6d)から略水平方向へ空調空気を吹出す際の吹出し方向前側に位置する前側案内面(9a)と、上記空調空気の吹出し方向後側に位置する後側案内面(10a) とによって形成する。また、上記後側案内面(10a) に、空気吹出口(6d)の長手方向の中間部分における空調空気の吹出方向を案内する中間部案内面(10c) と、空気吹出口(6d)の長手方向の両側部分における空調空気の吹出方向を上記中間部分よりも下向きにする両側部案内面(10e) とを備えさせた構成としている。
【0015】請求項7記載の発明は、上記請求項6記載の空気調和装置の風向調整構造において、中間部案内面(10c) を、室内空間に向うにしたがって前側案内面(9a)側に湾曲するように凹陥された凹陥湾曲面で成す一方、両側部案内面(10e) を、室内空間に向う平坦面で成した構成としている。
【0016】
【作用】上記の構成により、本発明では以下に述べるような作用が得られる。請求項1記載の発明では、空気吹出口(6d)から室内空間に吹出される空調空気の風向を変更する際には、風向調整羽根(11)が、空気吹出口(6d)の開放端よりも空調空気の流れ方向の上流側位置において例えば回動する。つまり、風向調整羽根(11)は、室内から見え難い位置に常にありながら風向調整を行う。このため、空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃が風向調整羽根(11)に付着して該風向調整羽根(11)に汚れが発生した場合であっても、この汚れが室内側から見えることはない。また、従来のように風向調整羽根(11)を、空気吹出口(6d)周辺部の見映えを良好に確保するために大型にする必要がない。
【0017】請求項2記載の発明では、風向調整動作としては、空気流通路(A) を流れる空調空気が風向調整羽根(11)の各湾曲部(11a,11b) に沿って流れることにより行われ、上記請求項1記載の発明に係る作用を得るための風向調整羽根(11)の形状を具体的に得ることができる。
【0018】請求項3記載の発明では、風向調整羽根(11)の回動状態において、該風向調整羽根(11)の回動中心位置よりも空調空気の流れ方向の下流側部分は室内側に向って延長された状態となるので、この部分が空調空気を室内側へ向わせるためのガイドとしての機能を発揮する。
【0019】請求項4記載の発明では、風向調整羽根(11)の回動動作により上流側湾曲部(11a) の外面(11d) が空気流通路(A) の他側面に当接した状態では、この風向調整羽根(11)と空気流通路(A) の一側面との間を空調空気が流れる一方、風向調整羽根(11)の回動により上記当接が解除された状態では、風向調整羽根(11)と空気流通路(A) の一側面との間だけでなく、風向調整羽根(11)と空気流通路(A) の他側面との間にも空調空気が流れ、このように風向調整羽根(11)の回動に伴って空調空気の流れ状態を変化させることにより風向調整動作が行われる。
【0020】請求項5記載の発明では、上述した各請求項記載の発明が適用される空気調和装置の具体構成が得られる。
【0021】請求項6記載の発明では、空気吹出口(6d)から室内空間へ吹出される空調空気は、空気吹出口(6d)の長手方向の中間部分から吹出されるものよりも両側部分から吹出されるものの方が下向きになっている。このため、従来のように吹出し流速の低い両側部分の空調空気が天井面(R) に沿って流れることにより該天井面(R) に空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃が付着して該天井面(R) が汚れてしまうといった状況が回避される。
【0022】請求項7記載の発明では、空気吹出口(6d)の長手方向の中間部分の中間部分案内面(10c) の形状と両側部分の両側部案内面(10e) の形状とを異ならせたことにより、上述した請求項6記載の作用が得られて天井面(R) の汚れが回避される。
【0023】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基いて説明する。図1は本例に係る天井埋込型空気調和装置(1) の下面図(天井面に据付けられた状態で室内側から見た図)であり、図2は図1におけるII-II 線に沿った断面の拡大図である。この図2に示すように、本空気調和装置(1) は、天井(R) に形成された開口(H) に挿入配置されており、下方に開放する本体ケーシング(2) が天井裏空間(S) に据付けられている。この本体ケーシング(2) は天板(2a)と該天板(2a)の外縁部から下方に延びる側板(2b)とを備えている。また、本体ケーシング(2) 内の中央部には送風機(3) が配設されている。この送風機(3) はシロッコファンで成っており、図示しないファンモータの駆動力を受けてファンロータが回転し、側方から吸込んだ空気を上方に吐出する。また、この送風機(3) の外周囲には熱交換器(4) が配設されている。この熱交換器(4) は、図示しない室外機に冷媒配管を介して連結され、冷房運転時には蒸発器として、暖房運転時には凝縮器として機能し、送風機(3)から吐出された空気との間で熱交換を行って該空気を温度調整する。また、熱交換器(4) の下側にはドレンパン(5) が配設されており、冷房運転時に熱交換器(4) で発生した凝縮水をドレンとして回収排出するようになっている。
【0024】また、本体ケーシング(2) の下端部には化粧パネル(6) が取付けられている。この化粧パネル(6) は、その中央部に開口(6a)が形成されており、該開口(6a)の中央部には該開口(6a)よりも小形のカバーパネル(7) が配設され、該カバーパネル(7) の両外側部分に、室内空気を本体ケーシング(2) 内部に導入するための空気吸込口(6b,6b) が形成されている。つまり、この空気吸込口(6b,6b) は、図1の如く、空気調和装置(1) の2箇所に配設され、夫々が該空気調和装置(1) の長手方向(図1の左右方向)に夫々延びている。また、このカバーパネル(7) は、図2の如く、その両側縁部が湾曲されて成るフック部(7a,7a) が一体形成されており、このフック部(7a,7a) が化粧パネル(6) に設けられた水平方向に延びる係止ピン(6c,6c) に係止されて落下が防止された状態で化粧パネル(6) に一体的に組付けられている。また、本体ケーシング(2) 内における空気吸込口(6b,6b) に対向した位置にはエアフィルタ(8) が設けられて、本体ケーシング(2) 内への塵埃の侵入を防止している。
【0025】また、化粧パネル(6) の両側縁部(図1における上下方向の両側縁部)には空気吹出口(6d,6d) が夫々形成されている。この各空気吹出口(6d,6d) は、化粧パネル(6) の外側縁部を形成する外側部材(9) と、該外側部材(9) に対して所定間隔を存した内側位置において平行に延びる内側部材(10)との間に形成されている。そして、この各空気吹出口(6d,6d) により、上記熱交換器(4) において生成された空調空気を室内空間に供給するようになっている。このようにして、空気吸込口(6b)、エアフィルタ(8) 、送風機(3) 、熱交換器(4) 、空気吹出口(6d)に亘って空気流通路(A) が形成されている。
【0026】以下、この外側部材(9) 及び内側部材(10)における空気流通路(A) を形成する側面(9a,10a)の形状について説明する。先ず、前側案内面としての外側部材(9)の側面(9a)について説明する。図3に示すように、この外側部材(9) の側面(9a)としては、該外側部材(9) の上端部から鉛直下方に延びる鉛直部(9b)と、該鉛直部(9b)の下端から下方に向うにしたがって外側に湾曲して凹陥するように所定の曲率半径の円弧面で成る凹陥部(9c)と、該凹陥部(9c)の下端から下方に向うにしたがって外側に傾斜して本外側部材(9) の下面(9e)に繋る傾斜部(9d)とを備えて成っている。そして、この外側部材(9) にあっては、このような形状が外側部材(9) の全長(図1R>1における左右方向の全体)に亘って連続して形成されている。
【0027】一方、後側案内面としての内側部材(10)の側面(10a) の形状は、該内側部材(10)の延長方向(図1における左右方向)の中間部(図1における領域B)と両外側部(図1における領域C)とで異なっている。先ず、中間部の側面(10a) としては、図3に示すように、該内側部材(10)の上端部から鉛直下方に延びる第1鉛直部(10b) と、該第1鉛直部(10b) の下端から下方に向うにしたがって湾曲して凹陥するように所定の曲率半径の円弧面で成る中間部案内面としての湾曲部(10c) と、該湾曲部(10c) の下端から鉛直下方に延びる比較的寸法の短い第2鉛直部(10d) とを備えている。また、内側部材(10)の延長方向の両外側部の側面(10a')としては、図4に示すように、該内側部材(10)の上端部から下方に向うにしたがって外側に直線的に傾斜する両側部案内面としての傾斜部(10e) と、該傾斜部(10e) の下端から鉛直下方に延びる比較的寸法の短い鉛直部(10f) とを備えている。
【0028】そして、本例の特徴とするところは、空気吹出口(6d)の近傍位置に配設された風向調整羽根としての水平羽根(11)の形状にある。以下、この水平羽根(11)について説明する。図5に示すように、この水平羽根(11)は、樹脂製で長尺の板材であって、その断面形状は略S字形に形成されている。詳しくは、図6に示すように、その重心位置の点Gに対して点対称な断面形状であって、重心位置Gよりも上側の上流側湾曲部としての上側湾曲部(11a) と下側の下流側湾曲部としての下側湾曲部(11b) とが互いに逆方向に湾曲されている。また、各湾曲部(11a,11b)の内面(11c,11e) の曲率半径(R1)は、水平羽根(11)の高さ寸法(L) の約半分に設定され、外面(11d,11f) の曲率半径(R2)は、水平羽根(11)の高さ寸法の約60%程度に設定されている。具体的な寸法の一例について述べると、空気吹出口(6d)の開口寸法が60mmである場合、水平羽根(11)の高さ寸法(L) は40mmに設定され、これに伴って各内面(11c,11e) の曲率半径(R1)は20mm、外面(11d,11f) の曲率半径(R2)は26mmに設定される。この水平羽根(11)の高さ寸法(L) の設定は、空気吹出口(6d)の開口幅寸法の50%以上に設定しておくことが風向調整機能の面で好ましいことが実験によって求められており、これに基いて上述のような値が設定される。
【0029】そして、この水平羽根(11)の長手方向の両端面には回動軸としてピン(11g,11g) が突設されている。このピン(11g,11g) の突出位置は、図5及び図6の如く、水平羽根(11)の下端に対して僅かに上側位置に設定されている。具体的に、このピン(11g,11g) の中心位置は、水平羽根(11)の高さ寸法(L) の約20%程度の寸法(L1)だけ水平羽根(11)の下端よりも上側に設定されている。
【0030】そして、図3及び図4の如く、このような構成とされた水平羽根(11)が、室内側から見え難いように、空気吹出口(6d)の開放部分よりも空調空気の流れ方向の上流側(上側位置)において回動自在に配設されている。つまり、この水平羽根(11)のピン(11g,11g) の支持位置は、この水平羽根(11)が如何なる回動姿勢にあっても常に化粧パネル(6) における空気吹出口(6d)の開放端よりも奥側に設定されるようになっており、本空気調和装置(1) が天井面に据付けられた状態において室内から水平羽根(11)の存在が認識できないように設定されている。具体的に、この水平羽根(11)の配設位置は、図3に示す状態において、化粧パネル(6) の下端と水平羽根(11)の下端との間隔は約20mmに設定されている。この寸法の設定に関し、この寸法が小さ過ぎる場合には、室内から水平羽根(11)が見えてしまうばかりでなく、水平羽根(11)の下端と、外側部材(9) 及び内側部材(10)の下端との間の寸法が小さくなり、つまり、空気吹出口(6d)での空気流通路(A2)の面積が小さくなってしまって、この部分での圧力損失が大きくなる虞れがある一方、この寸法が大き過ぎる場合には、水平羽根(11)の回動動作による空気の風向調整が十分に行えなくなる虞れがあることから上記の寸法が設定されている。
【0031】このように、本例の水平羽根(11)は、室内から見え難い位置に設定されているので、空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃が水平羽根(11)に付着して該水平羽根(11)に汚れが発生した場合であっても、この汚れが室内側から見えることはなく、空気吹出口(6d)周辺部の見映えを長期的に良好に維持できる。また、そればかりでなく、水平羽根(11)を、空気吹出口(6d)周辺部の見映えを良好に確保するために大型にする必要がなくなる。即ち、図7に示すように、本体ケーシング(2) の空気流通路(A1)の長さ寸法(t1)が化粧パネル(6) の空気流通路(A2)の長さ寸法(t2)よりも短い構成では、本来の空気の流通路である本体ケーシング(2) の空気流通路(A1)の長さ寸法(t1)程度の水平羽根(11)の長さ寸法があれば十分な風向調整が可能であり、これによって、水平羽根(11)を必要最小限の長さ寸法に設定することができ、空気吹出口(6d)周辺部の見映えの悪化を招くことなしに水平羽根(11)の小型化を図ることができる。また、化粧パネル(6) の形状、特に空気吹出口(6d)の開口形状として、水平羽根(11)の形状等を考慮する必要がなくなるので、化粧パネル(6) のデザイン性の自由度の向上を図ることができる。
【0032】次に、上述の如く構成された空気調和装置(1) の運転動作について説明する。この空調運転時には、送風機(3) が駆動され、空気吸込口(6b)から本体ケーシング(2) 内に吸込まれた室内空気は、エアフィルタ(8) 及び送風機(3) を経て熱交換器(4) に流される。そして、この熱交換器(4) において冷媒との間で熱交換を行って温度調整(冷房運転にあっては冷却、暖房運転にあっては加熱)された後、空気吹出口(6d)から室内空間に吹出されて該室内空間の空気調和を行う。
【0033】そして、本例の特徴とする動作としては、空気吹出口(6d)から室内空間に吹出される空調空気の吹出し方向を変更する際の水平羽根(11)の回動動作にある。以下、この吹出し動作について説明する。
【0034】先ず、暖房運転時等のように空調空気を比較的下向きに吹出す要求がある場合には、図3及び図4に示すように、水平羽根(11)を、空気流通路(A) の延長方向(鉛直方向)に沿うような立設状態にする。これにより、水平羽根(11)の前後両側を空気が流れることになり、この水平羽根(11)の前側を流れた気流と後側を流れた気流とは空気吹出口(6d)において合流されて室内空間に吹出される。この場合、水平羽根(11)は各気流に対して殆ど影響を与えず、水平羽根(11)の前側の気流、つまり水平羽根(11)と外側部材(9) との間を流れる気流(図3R>3及び図4の矢印D1) は、流路抵抗を受けることなしに、略鉛直下方に流れる一方、水平羽根(11)の後側の気流、つまり水平羽根(11)と内側部材(10)との間を流れる気流(図3及び図4の矢印D2) は、空気吹出口(6d)の中間部にあっては湾曲部(10c) により、空気吹出口(6d)の両側部にあっては傾斜部(10e) により僅かに流線方向が外側(図3及び図4における左側)に変更されることになる。そして、これら各気流(D1,D2) が合流された状態では、空気吹出口(6d)から斜め下方に空気が吹出されることになり(図3及び図4の矢印D3) 、空気吹出口(6d)全体に亘って略同一方向に空気が吹出される。
【0035】一方、冷房運転時等のように空調空気を比較的水平方向に吹出す要求がある場合には、図8及び図9R>9に示すように、水平羽根(11)をピン(11g) を回動中心として図中反時計回り方向に回動させ、該水平羽根(11)の上端が外側部材(9) 若しくは本体ケーシング(2) の内壁面に当接する位置に設定する。これにより、水平羽根(11)の前側の空間は閉塞され、空調空気は水平羽根(11)の後側のみを流れて空気吹出口(6d)より室内空間に吹出される。この場合、空気吹出口(6d)の長手方向の中間部分では、図8に示すように、水平羽根(11)の上側から流れてきた空気が、本発明でいう案内面としての水平羽根(11)の上側湾曲部(11a) の内面(11c) 及び下側湾曲部(11b) の外面(11f) の形状及び内側部材(10)の湾曲部(10c) の形状に沿って流れて流線の方向が大きく変化し(図8の矢印E1,E2 参照)、空気吹出口(6d)から略水平方向に吹出されることになる(図8の矢印E3参照)。また、この際、上述したように水平羽根(11)のピン(11g) の位置(回動中心位置)は、水平羽根(11)の下端よりも僅かに上側に設定されているので、このような水平羽根(11)の回動状態において、水平羽根(11)のピン(11g) よりも下側の部分は、室内側に向って延長された状態となっており、空気を室内側へ向わせるためのガイドとしての機能を発揮することになる。
【0036】一方、空気吹出口(6d)の長手方向の両側部分では、図9に示すように、水平羽根(11)の上側から流れてきた空気が、水平羽根(11)の形状及び内側部材(10)の傾斜部(10e) の形状に沿って流れて流線の方向の変化は、上述した空気吹出口(6d)の長手方向の中間部よりも小さく(図9の矢印F1,F2 参照)、この中間部での吹出方向よりも下向きに空気が吹出されることになる(図9の矢印F3参照)。つまり、比較的風速の高い中間部分では水平吹きとされ、風速の低い両側部分では下吹きとされている。
【0037】このため、従来より課題とされていた天井汚れの発生を抑制することができる。この天井汚れ防止作用を詳しく説明すると、天井埋込型の空気調和装置(1) において空気の吹出し速度が低い部分では、コアンダ効果によって気流が天井面に接近し、略天井面に沿った流れが発生し易い傾向があり、また、この空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃は、慣性力が低いために、天井面に接触した際には、該天井面に付着し易い状況になっていることから、空気吹出口(6d)の両側部分近傍では天井が汚れ易かったが、本例のように、この風速の低い部分のみを下吹きにすることによって天井面に沿った風速の低い気流が発生することを抑制して天井に汚れが発生することが防止される。
【0038】このように、本例の構成によれば、特に、空調空気の水平吹出しが要求される冷房運転時において、天井面(R) の汚れを防止しながら水平吹出しを確保することができ、天井面(R) の見映えの悪化の防止と空調効率の確保とを両立することができる。
【0039】尚、上述した実施例は天井埋込型空気調和装置(1) に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、天井吊下げ型や床置き型などの空気調和装置に対しても適用可能である。
【0040】また、水平羽根(11)の断面形状としては、上述したような略S字状に限らず、室内から見え難い位置において風向の変更が可能となる形状であればよく、例えば図10に示すように、前面部分の形状が円弧状であり、後面部分の形状が略S字状に形成されたものなど種々の形状が採用可能である。
【0041】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば以下に述べるような効果が発揮される。請求項1記載の発明によれば、風向調整羽根を室内から見え難い位置に設定しながら風向調整を可能としたために、風向調整羽根に汚れが発生した場合であっても、この汚れが室内側から見えることはなく、空気吹出口周辺部の見映えを長期的に良好に維持できる。また、従来のように風向調整羽根を、空気吹出口周辺部の見映えを良好に確保するために大型にする必要がなくなり、必要最小限の長さ寸法に設定することができて空気吹出口周辺部の見映えの悪化を招くことなしに風向調整羽根の小型化を図ることができる。
【0042】請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明に係る効果を得るための風向調整羽根の形状を具体的に得ることができ、風向調整構造の実用性の向上を図ることができる。
【0043】請求項3記載の発明によれば、風向調整羽根の回動中心を、空調空気の流れ方向下流側端部よりも上流側に設定したことにより、風向調整羽根の回動状態において、該風向調整羽根の回動中心位置よりも空調空気の流れ方向の下流側部分を室内側に向って延長させることができ、この部分が空調空気を室内側へ向わせるためのガイドとしての機能を発揮して、風向調整機能の向上を図ることができる。
【0044】請求項4記載の発明によれば、風向調整羽根の回動動作により上流側湾曲部の外面と空気流通路の他側面とが当接する状態と当接しない状態とを変更することにより風向調整動作を行うことができ、風向調整羽根の回動動作のみで要求に応じた風向調整を行うことができる。
【0045】請求項5記載の発明によれば、上述した各請求項記載の発明が適用される空気調和装置の具体構成が得られ、風向調整構造の実用性の向上を図ることができる。
【0046】請求項6記載の発明によれば、空気吹出口の長手方向の中間部分から吹出される空調空気よりも両側部分から吹出される空調空気を下向きにしたことにより、従来のように吹出し流速の低い両側部分の空調空気が天井面に沿って流れることにより該天井面に空調空気中に含まれる微粒子状の塵埃が付着して該天井面が汚れてしまうといった状況が回避でき、空気吹出口周辺部の天井面の見映えを良好に維持することができる。
【0047】請求項7記載の発明によれば、空気吹出口の長手方向の中間部分の中間部分案内面の形状と両側部分の両側部案内面の形状とを異ならせたことにより、上述した請求項6記載の発明に係る効果が得られ、後側案内面の具体構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る天井埋込型空気調和装置を室内側から見た図である。
【図2】図1におけるII-II 線に沿った断面図である。
【図3】下向き吹出しの場合の空気吹出口中間部分の断面図である。
【図4】下向き吹出しの場合の空気吹出口両側部分の断面図である。
【図5】水平羽根の斜視図である。
【図6】水平羽根の端面形状を示す図である。
【図7】図1におけるVII-VII 線に沿った断面図である。
【図8】水平吹出しの場合の図3相当図である。
【図9】水平吹出しの場合の図4相当図である。
【図10】水平羽根の断面形状の変形例を示す図である。
【図11】従来例における空気吹出口の断面図である。
【図12】従来例における図7相当図である。
【符号の説明】
(1) 天井埋込型空気調和装置
(6d) 空気吹出口
(9a) 外側部材の側面(前側案内面)
(10a) 内側部材の側面(後側案内面)
(10c) 湾曲部(中間部案内面)
(10e) 傾斜部(両側部案内面)
(11) 水平羽根(風向調整羽根)
(11a) 上側湾曲部(上流側湾曲部)
(11b) 下側湾曲部(下流側湾曲部)
(11c) 上側湾曲部の内面(案内面)
(11f) 下側湾曲部の外面(案内面)
(R) 天井
(A) 空気流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 室内空間に向って空調空気を案内すると共に室内空間に開放する空気吹出口(6d)を有する空気流通路(A) と、空気吹出口(6d)からの空調空気の吹出し方向を変更可能とする風向調整羽根(11)とを備えた空気調和装置において、上記風向調整羽根(11)は、如何なる空調空気の吹出し方向の変更状態にあっても常に空気吹出口(6d)の開放端よりも空調空気の流れ方向の上流側に位置していると共に、空気流通路(A) の内面と協働して空調空気の吹出し方向を変更する案内面(11c,11f) を備えていることを特徴とする空気調和装置の風向調整構造。
【請求項2】 風向調整羽根(11)は、空調空気の流れ方向の上流側に位置する上流側湾曲部(11a) と、空調空気の流れ方向の下流側に位置し上流側湾曲部(11a) に対して逆方向に湾曲する下流側湾曲部(11b) とを備えて断面が略S字状に形成され、且つ回動可能に空気流通路(A) に設けられていることを特徴とする請求項1記載の空気調和装置の風向調整構造。
【請求項3】 風向調整羽根(11)の回動中心位置は、該風向調整羽根(11)における空調空気の流れ方向の下流側に位置する端部近傍において、該端部に対して所定間隔を存した空調空気の流れ方向の上流側位置に設定されていることを特徴とする請求項2記載の空気調和装置の風向調整構造。
【請求項4】 風向調整羽根(11)の回動軸心は、空気流通路(A) の幅方向に対して直交方向に延びていると共に該空気流通路(A) の幅方向の略中央部に設定されており、上記風向調整羽根(11)は、その回動動作により、空気流通路(A) の一側面との間にのみ空調空気を流すように、上流側湾曲部(11a) の外面(11d) が空気流通路(A) の他側面に当接するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の空気調和装置の風向調整構造。
【請求項5】 空気調和装置は天井面(R) に据付けられた天井埋込型であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の空気調和装置の風向調整構造。
【請求項6】 空気吹出口(6d)は天井面(R) に沿って延びており、空気流通路(A) の幅方向の空気吹出口(6d)近傍部分は、空気吹出口(6d)から略水平方向へ空調空気を吹出す際の吹出し方向前側に位置する前側案内面(9a)と、上記空調空気の吹出し方向後側に位置する後側案内面(10a) とによって形成されており、上記後側案内面(10a) は、空気吹出口(6d)の長手方向の中間部分における空調空気の吹出方向を案内する中間部案内面(10c) と、空気吹出口(6d)の長手方向の両側部分における空調空気の吹出方向を上記中間部分よりも下向きにする両側部案内面(10e) とを備えていることを特徴とする請求項5記載の空気調和装置の風向調整構造。
【請求項7】 中間部案内面(10c) は、室内空間に向うにしたがって前側案内面(9a)側に湾曲するように凹陥された凹陥湾曲面で成っている一方、両側部案内面(10e) は、室内空間に向う平坦面で成っていることを特徴とする請求項6記載の空気調和装置の風向調整構造。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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