説明

空調システム

【課題】例えば研究開発施設において実験室レイアウトや室内環境の変更が必要になった場合にも効率的且つ経済的に柔軟に対応することが可能な空調システムを提供する。
【解決手段】環状に繋がるループダクト1と、このループダクト1にそれぞれ繋げて設けられ、ループダクト1に処理空気を供給する複数の空調機2と、一端と他端をそれぞれループダクト1に繋げて架設され、取出口から室内負荷に見合った風量の処理空気を供給する風量ダクト3とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の空調システムは、一般に、空調機(外気処理空調機)から本管ダクト、また、この本管ダクトから各階のフロア毎や部屋毎に分岐した分岐管、さらに分岐管から分岐した枝管ダクトを通じて、空調機で処理された空気(処理空気)を各階のフロアや部屋に供給するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−183927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、例えば研究開発施設においては、時代の変化への俊敏な対応が求められるため、実験室レイアウトや室内環境を変更して(すなわち、既存の空調システムを変更しながら)、多様な実験ニーズに柔軟に対応することが必要になる。
【0005】
そして、研究開発施設(従来の空調システム)では、空調機から供給した処理空気の温湿度を天井面に設置したファンコイルユニットで調整し、このファンコイルユニットを通じて各実験室などに供給するようにしている。このため、空調システムの変更を行う際には、空気負荷の増加に見合ったファンコイルユニットを増設することになり、設備投資の増大、工事に伴う研究開発の中断などを要するという問題があった。また、処理空気の最大供給量が既存のダクト(本管ダクトなど)のサイズに見合った供給量に限定されるため、実験室の増設などに柔軟に対応できない場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、例えば研究開発施設において実験室レイアウトや室内環境の変更が必要になった場合にも効率的且つ経済的に柔軟に対応することが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の空調システムは、環状に繋がるループダクトと、該ループダクトにそれぞれ繋げて設けられ、前記ループダクトに処理空気を供給する複数の空調機と、一端と他端をそれぞれ前記ループダクトに繋げて架設され、取出口から室内負荷に見合った風量の前記処理空気を供給する風量ダクトとを備えて構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明においては、複数の空調機からループダクト、風量ダクトに処理空気が供給され、風量ダクトの取出口から室内などに処理空気が供給されるため、どこに風量ダクトを接続しても、どこに取出口を設けても、ダクト内を流通する処理空気の圧力をほぼ一定に保つことが可能になる。すなわち、複数の空調機で過不足を補って換気を行うことができるため、ループダクトに対する風量ダクトの接続箇所、風量ダクトの取出口の設置箇所を制限する必要がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空調システムによれば、複数の空調機で過不足を補って換気を行うことができるため、ループダクトに対する風量ダクトの接続箇所、風量ダクトの取出口の設置箇所を制限する必要がない。これにより、例えば研究開発施設において実験室レイアウトや室内環境の変更が必要になった場合に、従来のようにファンコイルユニットの増設工事(改修工事:冷水配管工事や電源工事など)が不要になり、風量ダクトの増設工事のみで対応することが可能になる。よって、ファンコイルユニットの増設などに伴い設備投資が増大したり、工事に伴って研究開発を中断する必要がなく、空調システムの変更に効率的且つ経済的に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る空調システムについて説明する。本実施形態は、研究開発施設(建物)に設けられた空調システムに関するものである。
【0013】
本実施形態の空調システムAは、図1に示すように、研究開発施設Tの各階に設けられ、ループダクト1と、複数の空調機2と、風量ダクト3とを備えて構成されている。ループダクト1は、環状に繋がる本管ダクトであり、本実施形態では、研究開発施設Tの外周に沿うように方形状に形成されている。
【0014】
空調機2は、取り入れた外気を清浄化するとともに温湿度を調整して処理するものである。そして、本実施形態では、ループダクト1の4つのコーナー側にそれぞれ処理空気(新鮮空気+循環空気)を供給するように、4台の空調機2がループダクト1に繋げて設けられている。また、新鮮空気は、循環空気と混合されてこの空調機2により処理され、空調機2とループダクト1によって各所に必要分が供給される。
【0015】
風量ダクト3は、空調機2からループダクト1に供給して流通する処理空気を研究開発施設Tの実験室T1などに供給するための供給ダクトであり、一端と他端をそれぞれループダクト1に繋げて架設されている。また、風量ダクト3は、所定位置に取出口が設けられ、各所に変風量装置(VAV)を設けることによって用途に応じた必要量を供給でき、取出口から室内負荷に見合った風量の処理空気を供給できるように構成されている。そして、本実施形態では、複数の風量ダクト3がループダクト1に繋げて設けられ、実験エリア(実験室T1)に配設された風量ダクト3には、実験エリアT1の各スパンあたり3箇所の取出口が設けられている。なお、処理空気は、新鮮空気と混合し、且つフィルターを通しているので質的に全く問題がない。
【0016】
このように構成した本実施形態の空調システムAにおいては、各空調機2で外気が取り入れられ、取り入れた外気が清浄化されるとともに、各空調機2に内蔵されたファンコイルユニットで温湿度が調整され、このように処理した処理空気がループダクト1に供給される。また、処理空気は、ループダクト1を流通して風量ダクト3に供給され、各風量ダクト3の取出口から取り出されて、実験室T1などに供給される。
【0017】
このとき、本実施形態の空調システムAにおいては、4台の空調機2から処理空気が環状のループダクト1、ループダクト1に架設した風量ダクト3を介して供給されるため、ダクト1、3内の圧力がほぼ一定になる。これにより、4台の空調機2で過不足を補いながら、所望の風量の処理空気を実験室T1などに供給することができる。
【0018】
そして、実験室レイアウトや室内環境の変更が必要になった場合には、どこに風量ダクト3を接続しても、どこに取出口を設けても、ダクト1、3内を流通する処理空気の圧力がほぼ一定に保たれるため、従来のようにファンコイルユニットの増設工事(改修工事:冷水配管工事や電源工事など)が不要になって例えば風量ダクト3を増設するだけで済み、変更した実験室レイアウトや室内環境に対して好適な空調が行える。すなわち、すべてのダクト1、3をループ状に接続して、ピーク負荷に対応するため、実験室T1などの個別の変化を建物全体で対応することができる。
【0019】
したがって、本実施形態の空調システムAにおいては、複数の空調機2からループダクト1、風量ダクト3に処理空気が供給され、風量ダクト3の取出口から室内などに処理空気が供給されるため、どこに風量ダクト3を接続しても、どこに取出口を設けても、ダクト1、3内を流通する処理空気の圧力をほぼ一定に保つことが可能になる。すなわち、複数の空調機2で過不足を補って換気を行うことができるため、ループダクト1に対する風量ダクト3の接続箇所、風量ダクト3の取出口の設置箇所を制限する必要がない。
【0020】
これにより、研究開発施設Tにおいて実験室レイアウトや室内環境の変更が必要になった場合に、従来のようにファンコイルユニットの増設工事が不要になり、風量ダクト3の増設工事のみで対応することが可能になる。よって、ファンコイルユニットの増設などに伴い設備投資が増大したり、工事に伴って研究開発を中断する必要がなく、空調システムAの変更に効率的且つ経済的に対応することが可能になる。
【0021】
以上、本発明に係る空調システムの一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、風量ダクト3から室内などに供給した空気(循環空気)を各空調機2に導入し、各空調機2で改めて処理した処理空気を室内などに供給するように構成してもよい。また、負荷より風量が必要な部屋の冷やしすぎ防止のため、温風ダクトを設けることも可能である。その際、必要箇所に温風と冷風を混合する混合型変風量装置(VAV)を設けて対応する。
【符号の説明】
【0022】
1 ループダクト
2 空調機
3 風量ダクト
A 空調システム
T 研究開発施設(建物)
T1 実験室(実験エリア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に繋がるループダクトと、該ループダクトにそれぞれ繋げて設けられ、前記ループダクトに処理空気を供給する複数の空調機と、一端と他端をそれぞれ前記ループダクトに繋げて架設され、取出口から室内負荷に見合った風量の前記処理空気を供給する風量ダクトとを備えて構成されていることを特徴とする空調システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−47562(P2011−47562A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195615(P2009−195615)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】