説明

空調システム

【目的】 ビル等の冷暖房を行うための空調システムに関し、排熱回収を可能としてエネルギーの有効利用を図り、省エネルギー効果を有する空調システムを提供することを目的とする。
【構成】 液相または固相の蓄熱媒体を熱源として蓄える蓄熱槽を複数台備え、冷房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽として使用し、冷暖房運転時には複数台の蓄熱槽のうちの一部を温熱源用蓄熱槽に切り換えて使用するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビル等の冷暖房を行うための空調システムに関し、特に省エネルギー化およびエネルギーの有効利用を図るようにした空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、情報化機器の普及が進むなかで、オフィスビルをはじめとしてビルの変貌には目ざましいものがある。これに伴いビル内で働く執務者や居住者の環境およびオフィス・オートメーション(OA)機器類の排熱を考慮した様々な空調方式が導入され始めている。しかし、その一方でビルの空調に伴うランニングコストの低減、省エネルギー化およびエネルギーの有効利用等が求められている。
【0003】ここで、現在使用されている2つの空調システムについて簡単に説明する。まず、第1の空調システムは冷温水循環式の空調システムで、ビルの屋上または地下等に設置した蓄熱槽に水を蓄え、この水を夏期はヒートポンプを用いて冷水とし、冬期はボイラ等を用いて温水とし、それぞれ季節に応じてビル内の各部屋に設置した熱交換器(室内器)に供給することによって各部屋の冷房または暖房を行うようにしている。ヒートポンプの凝縮器としては水冷式または空冷式の熱交換器を使用し、吸収した熱は全て大気中に放出している。
【0004】第2の空調システムは冷媒の相変化を利用した空調システムで、冷房サイクルと暖房サイクルとを独立した2系統で構成し、冷房サイクルの場合はビルの最上部に設置した氷蓄熱槽および凝縮器と下部の各部屋に設置した室内器とを冷媒蒸気管および冷媒液管で接続し、内部に封入した冷媒の蒸発および凝縮による自然循環によって熱交換を行わせる。暖房サイクルの場合はビルの最下部に温水槽を設置し、ヒートポンプチラーの凝縮器によって形成した熱交換器を用いて熱回収し、温水を取り出して温水槽へ蓄えると共に、蒸発器を設置し、この蒸発器と上部の各部屋に設置した室内器とを冷媒蒸気管および冷媒液管で接続し、内部に封入した冷媒の蒸発および凝縮によって自然循環で熱交換を行わせる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の空調システムでは、冷房または暖房に対して夜間電力を使用して熱源をつくり出しているため、ランニングコストの低減を図ることは出来るが、省エネルギー化やエネルギーの有効利用を図ることは難しかった。また、近年は冬期でも冷房が必要になっているため、冷暖房の負荷を考慮した空調システムが必要になると共に、ランニングコストの低減が図れ、省エネルギー性に優れた蓄熱方式が必要となってきた。
【0006】そこで、本発明は排熱回収を可能としてエネルギーの有効利用を図り、省エネルギー効果を有する空調システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による空調システムは、液相または固相の蓄熱媒体を熱源として蓄える蓄熱槽を複数台備え、冷房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽として使用し、冷暖房運転時には複数台の蓄熱槽のうちの一部を温熱源用蓄熱槽に切り換えて使用するように構成する。
【0008】また、本発明による空調システムは、複数台の蓄熱槽に熱源を与えるヒートポンプを有し、冷房運転時には複数台の蓄熱槽の熱交換器をヒートポンプの蒸発器とし、蓄熱槽の熱交換器とは別に設置した熱交換器をヒートポンプの凝縮器としてそれぞれ使用し、冷暖房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、冷熱源用蓄熱槽の熱交換器をヒートポンプの蒸発器とし、温熱源用蓄熱槽の熱交換器をヒートポンプの凝縮器としてそれぞれ使用すると共に、冷房負荷および暖房負荷の比率に応じて蓄熱槽の熱交換器とは別に設置した熱交換器をヒートポンプの凝縮器または蒸発器として使用するように構成する。
【0009】また、本発明による空調システムは、複数台の蓄熱槽に熱源を与えるヒートポンプを有し、冷房運転時には複数台の蓄熱槽にヒートポンプにより作られた冷熱を蓄えることにより冷房運転を行い、冷暖房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、冷熱源用蓄熱槽にヒートポンプにより作られた冷熱を蓄えることにより冷房運転を行い、温熱源用蓄熱槽にヒートポンプから吸収した冷却水の温熱を蓄えることにより暖房運転を行うように構成する。
【0010】このとき、本発明による空調システムは、複数台の蓄熱槽のうちの一部を冷熱源専用として使用し、残りの蓄熱槽を冷熱源用と温熱源用とに切り換えて使用すると共に、冷熱源専用として使用する蓄熱槽の蓄熱媒体を、建物の各階に設置する複数の室内器と、単数または複数の凝縮器と、室内器で蒸発した冷媒蒸気を凝縮器に移動させる冷媒蒸気管と、凝縮器で凝縮した冷媒液を室内器へ循環する冷媒液管とから少なくとも構成される2次配管系の熱源として使用し、冷熱源用と温熱源用とに切り換えて使用する蓄熱槽の蓄熱媒体を、建物の各階に設置する複数の室内ユニットと、被空調室外に設置したヒートポンプユニットと、室内ユニットおよびヒートポンプユニット間でガス冷媒および液冷媒をそれぞれ移動させる冷媒ガス管および冷媒液管とから構成される3次配管系の熱源として使用するように構成してもよい。
【0011】
【作用】本発明による空調システムは、複数台の蓄熱槽を含むヒートポンプにより構成され、ヒートポンプを構成する各機器の接続関係はシステムの運転サイクルにより異なる。冷房運転時には、複数台の蓄熱槽の熱交換器が蒸発器として作用し、蓄熱槽とは別に設けた熱交換器が凝縮器として作用する。蓄熱槽に蓄積された冷熱は直接各部屋の室内器に供給されるか、あるいは冷媒の相変化を用いたシステムの場合は凝縮器に供給され、間接的に各部屋の冷房を行う。
【0012】冷暖房運転時には、複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、冷熱源用蓄熱槽の熱交換器が蒸発器として作用し、温熱源用蓄熱槽の熱交換器が凝縮器として作用する。別に設けた熱交換器は、冷房負荷と暖房負荷との均衡が取れている場合は使用せず、均衡が取れていない場合は冷房負荷と暖房負荷とのバランスに応じて蒸発器または凝縮器として使用する。
【0013】また、本発明による他の空調システムは、複数台の蓄熱槽とヒートポンプとにより構成され、冷房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽として使用し、ヒートポンプからの冷熱を蓄えて各部屋の冷房を行う。冷暖房運転時には複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、冷熱源用蓄熱槽にヒートポンプからの冷熱を蓄えて各部屋の冷房を行い、温熱源用蓄熱槽にヒートポンプからの温熱を蓄えて各部屋の暖房を行う。
【0014】
【実施例】図1〜図4は、本発明による空調システムの一実施例を示す模式的接続図である。このシステムは複数台の蓄熱槽1aおよび1bを有し、蓄熱槽1aおよび1b内には蒸発器または凝縮器として作用する熱交換器2aおよび2bが設けられている。また、蓄熱槽1aおよび1bとは別に熱交換器3が設けられ、さらに低温低圧ガス冷媒を昇圧する圧縮機4、高温高圧液冷媒を減圧する膨張弁5がそれぞれ設けられており、これらの各機器によってヒートポンプが構成されている。また、蓄熱槽1aおよび1bには、それぞれポンプ6aおよび6bを介して熱交換器が室内器7aおよび7bとして接続されている。
【0015】各機器の接続関係は、システムの運転サイクルによって異なり、図1に示す接続関係は冷房運転時の接続関係を示し、図2〜図4に示す接続関係は冷暖房運転時の接続関係を示す。
【0016】図1の冷房運転サイクルでは、蓄熱槽1aおよび1bが共に冷熱源用蓄熱槽となり、内部の熱交換器2aおよび2bが共に蒸発器として作用し、別に設けた熱交換器3が凝縮器として作用する。この構成では、熱交換器(蒸発器)2aおよび2bで発生したガス冷媒が圧縮機4で加圧・昇温され、熱交換器(凝縮器)3で凝縮されて液冷媒となり、膨張弁5で減圧・降温された後に熱交換器2aおよび2bに循環される。蓄熱槽1aおよび1bに蓄積された冷熱源は、ポンプ6aおよび6bを介して室内器7aおよび7bに供給され、各部屋の冷房を行う。
【0017】なお、この実施例では冷熱源を室内器7aおよび7bに供給して各部屋の冷房を行っているが、冷媒の相変化を用いて各部屋の冷房を行う場合には、ポンプ6aおよび6bを介して凝縮器に冷熱源を供給するようにしてもよい。
【0018】図2は、冷房運転と暖房運転とを同時に行う運転サイクルの接続関係を示す図である。最近はコンピュータ等のOA機器類の普及によって冬期でも冷房負荷が増加し、暖房運転と同時に冷房運転を行う場合が増えてきている。この運転サイクルでは、蓄熱槽1aが冷熱源用蓄熱槽となり、蓄熱槽1bが温熱源用蓄熱槽となる。したがって、蓄熱槽1a内の熱交換器2aが蒸発器として作用し、蓄熱槽1b内の熱交換器2bが凝縮器として作用する。このとき冷房負荷と暖房負荷とがほぼ等しいならば、熱交換器3は使用しない。
【0019】この構成では、熱交換器(蒸発器)2aで発生したガス冷媒が圧縮機4で加圧・昇温され、熱交換器(凝縮器)2bで凝縮されて液冷媒となる。液冷媒は膨張弁5で減圧・降温された後に熱交換器2aに循環される。蓄熱槽1aに蓄積された冷熱源はポンプ6aを介して室内機7aに供給され各部屋の冷房を行い、蓄熱槽1bに蓄積された温熱源はポンプ6bを介して室内機7bに供給され各部屋の暖房を行う。
【0020】この運転サイクルでは、蓄熱槽1aから吸収した熱を別の蓄熱槽1bへ蓄える熱回収運転が行えるため、エネルギーの有効利用を図ることができる。また、複数台ある蓄熱槽のうち、冷熱源用蓄熱槽の一部を温熱源用蓄熱槽に変更することにより、負荷に見合った形で対応することができ、機器の有効利用を図ることができる。
【0021】ところで、前述した図2の冷暖房運転サイクルは冷房負荷と暖房負荷とがほぼ等しい場合の運転サイクルであるが、冷房負荷と暖房負荷の均衡が崩れた場合は熱交換器3を蒸発器または凝縮器として使用することにより対応している。
【0022】すなわち、冷房負荷が暖房負荷より大きい場合は、図3に示すように、熱交換器3を凝縮器として使用し、熱交換器(凝縮器)2bで凝縮しきれなかったガス冷媒をここで完全に凝縮するようにしている。つまり、この運転サイクルでは熱交換器(蒸発器)2aで発生したガス冷媒を圧縮機4で加圧・昇温し、熱交換器(凝縮器)2bで凝縮して液冷媒とするが、冷房負荷が暖房負荷より大きいために熱交換器(凝縮器)2bのみではガス冷媒を完全に凝縮しきれないため、さらに熱交換器(凝縮器)3を通すことによって完全に凝縮するようにしている。
【0023】このため、熱交換器(凝縮器)3へは熱交換器(凝縮器)2bで凝縮された液冷媒と凝縮しきれなかったガス冷媒とが混合した状態で供給され、完全に凝縮されて液冷媒となり、膨張弁5で減圧・降温された後に熱交換器(蒸発器)2aに循環される。この場合、液冷媒とガス冷媒とを分離し、ガス冷媒のみを熱交換器(凝縮器)3に供給するようにしてもよい。
【0024】次に、図4に示す接続図を参照し、暖房負荷が冷房負荷より大きい場合について説明する。この場合は、熱交換器3を蒸発器として使用し、熱交換器(蒸発器)2aで蒸発しきれない液冷媒を熱交換器3で蒸発するようにしている。
【0025】すなわち、熱交換器(凝縮器)2bで凝縮された液冷媒は、膨張弁5で減圧・降温され、その一部は熱交換器(蒸発器)2aに供給されて蒸発し、残りは熱交換器(蒸発器)3に供給されて蒸発する。このように、暖房負荷が冷房負荷より大きい場合は、熱交換器(蒸発器)2aのみでは液冷媒を蒸発しきれないため、2つの蒸発器2aおよび3を並列接続して液冷媒を蒸発させ、ガス冷媒を得るようにしている。熱交換器(蒸発器)2aおよび3で得られたガス冷媒は、圧縮機4で加圧・昇温された後、熱交換器(凝縮器)2bに循環される。
【0026】また、蓄熱槽に熱を蓄えるために蓄熱槽内に設置されて蒸発器または凝縮器となる熱交換器は、必ずしも蓄熱槽内に設置することに限らず、蓄熱槽外に取り付けた熱交換器によって蓄熱槽内の蓄熱媒体を循環させるようにしてもよい。
【0027】また、前述の実施例では、蓄熱槽内に蓄積した熱を、ポンプによって室内器に直接送るようにしたが、これに限らず冷媒の相変化を利用した空調システムのように凝縮器または蒸発器に流すことによって間接的に空調を行うようにしてもよい。また、これら冷媒を使用して、別途ヒートポンプユニットを運転することも可能である。このように、蓄熱槽に蓄えた熱の利用方法については特に本実施例に限定されることはない。
【0028】図5は、本発明による空調システムを複数階のビル等に設置した場合の実施例を示す部分模式図である。なお、この図ではビルの構造については詳述していないが、図の上部がビルの高所を示しており、冷暖房運転時(冷房負荷>暖房負荷)の接続関係を示している。
【0029】本実施例では、ビルの最上階に前述した図1R>1〜図4に示した空調システム10を設置し、蓄熱槽1aを冷熱源専用の蓄熱槽として使用し、蓄熱槽1bを冷熱源または温熱源両用の蓄熱槽として使用している。また、本実施例では、室内器7aに代えて凝縮器11を設置し、室内器7bに代えてヒートポンプユニット(HPU)12を設置している。
【0030】また、ビルの各階F1,F2,…には、ビルの内部域(インテリアゾーン)IZに複数台の室内器13を設置し、ビルの外周域(ペリメータゾーン)PZに複数台の室内ユニット14を設置している。
【0031】そして、各階のインテリアゾーンIZに設置されている複数台の室内器13と空調システム10の凝縮器11との間は冷媒液管15および冷媒蒸気管16とで連通されて2次配管系を構成している。また、凝縮器11の下部には受液器17が設けられ、各室内器13にはそれぞれ液量調節弁18が設けられている。
【0032】また、各階のペリメータゾーンPZに設置されている複数台の室内ユニット14と空調システム10のHPU12との間は冷媒液管19および冷媒ガス管20とで連通されて3次配管系を構成している。こうして、空調システム10内の1次配管系を含めて3つの独立した配管系が構成されている。
【0033】この構成では、インテリアゾーンIZに設置されている室内器13が冷却ユニット(蒸発器)として機能し、冷媒液管15から供給される冷媒液を室内の冷房負荷に追従して蒸発させて冷媒蒸気とする。冷媒蒸気は冷媒蒸気管16を上昇して凝縮器11に移動し、蓄熱槽1aからの冷熱源によって凝縮する。凝縮して液化した冷媒液は受液器17に流下し、冷媒液管15を通って重力の作用により再び各室内器13に戻る。こうして、この2次配管系では冷媒の相変化による自然循環が行われ、搬送動力を必要としない省エネルギー性に優れた冷房運転が行われる。
【0034】これに対し、ペリメータゾーンPZに設置されている室内ユニット14は暖房ユニット(凝縮器)として機能し、冷媒ガス管20から供給されるガス冷媒を室内の暖房負荷に追従して凝縮させて液冷媒とする。液冷媒は冷媒液管19内を強制循環されてHPU12に送られる。HPU12では、蓄熱槽1bに蓄えられた温熱源を吸収して液冷媒を蒸発させ、ガス冷媒として再び各室内ユニット14に送出する。
【0035】このように全体を構成することによって熱を輸送するための搬送動力を削減し、熱回収運転が行えるようになるため、この空調システムは省エネルギー性に優れ、エネルギーの有効利用が可能なシステムとなる。
【0036】図6は、前述した図5に示す実施例の変形例を示す部分模式図である。本実施例は各階F1,F2,…のインテリアゾーンIZに浮子の浮力により冷媒液の供給量を調節する液面調節器21を設け、各階の室内器13内の冷媒液の液面高さを液量調節弁18に代わって所定の高さに維持するように構成したものである。また、3次配管系を3管式とすることにより、ペリメータゾーンPZの冷暖房同時運転を可能とし、各部屋あるいは各ゾーン毎に個別に冷・暖房運転を行えるようにしたものである。
【0037】図7は、本発明による空調システムの他の実施例を示す模式図で、前述した実施例構成(図1〜図4R>4)と同一部分には同一符号を付して説明する。本実施例は、2つの蓄熱槽1aおよび1bを有し、この蓄熱槽1aおよび1b内には蓄熱槽1aおよび1bに冷熱を供給するための熱交換器2aおよび2bが設けられ、さらに蓄熱槽1b内には温熱を供給するための第3の熱交換器2cが設けられている。
【0038】また、蓄熱槽1aおよび1bとは別に、内部で冷媒が蒸発・圧縮・凝縮・膨張のサイクルを繰り返すヒートポンプ(HP)30、冷却水の冷却を行う冷却塔31がそれぞれ設置されている。なお、蓄熱槽1aおよび1bに蓄熱された熱源がそれぞれポンプ6aおよび6bを介して室内器7aおよび7bに供給されることは前述の実施例と同様である。
【0039】また、本実施例では、HP30の蒸発器(吸熱器)側と蓄熱槽1aの熱交換器2aおよび蓄熱槽1bの熱交換器2bとが冷水配管33a,33bおよび32a,32bによって接続され、HP30の凝縮器(放熱器)側と蓄熱槽1bの熱交換器2cとが冷却水配管34aおよび34bによって接続されている。そして、配管34aの途中には、冷却塔31が接続されている。
【0040】また、配管32bと配管33bとの接続部、配管34aと冷却塔31を迂回する接続管35との接続部、配管34aおよび34b間を短絡する接続管36と配管34aとの接続部には、それぞれ三方弁37a、37bおよび37cが設けられている。
【0041】また、配管33b上にはポンプ38aが設置され、熱交換器2aまたは2bとHP30との間で冷水を循環させるようにしている。また、配管34a上にはポンプ38bが設置され、HP30と熱交換器2cまたは冷却塔31との間で冷却水を循環させるようにしている。
【0042】この構成において、冷房運転を行うには、図8に示すように、配管32a,32bおよび33a,33bに冷水を循環することによりHP30からの冷熱を蓄熱槽1aおよび1bに蓄え、この冷熱をポンプ6aおよび6bを介して各室内器7aおよび7bに供給して各部屋の冷房を行う。HP30で回収した温熱は冷却塔31から大気中に放熱する。
【0043】また、冷暖房運転を行うには、図9に示すように、配管33a,33bに冷水を循環することによりHP30からの冷熱を蓄熱槽1aに蓄え、この冷熱をポンプ6aによって室内器7aに供給することにより各部屋の冷房を行う。HP30で回収した温熱は配管34a,34b,35に冷却水を循環することにより蓄熱槽1bに蓄え、この温熱をポンプ6bによって室内器7bに供給することにより各部屋の暖房を行う。この運転サイクルでは冷却塔31を使用していないが、これは冷房負荷と暖房負荷とが略等しい場合には、冷却塔31で冷却水を冷却すると、ここでの放熱が大きすぎて冷却水の温度が低下し、蓄熱槽1bに温熱を蓄えられなくなるおそれがあるためである。
【0044】これに対し、冷房負荷が暖房負荷より大きい場合は、図10に示すように、冷却塔31を使用して余剰の熱を放出するようにしている。また、暖房負荷が冷房負荷より大きくなる場合は、図示しない電気ヒータやボイラ等の補助熱源を用いて暖房負荷の不足分を補うように構成することも可能である。
【0045】図11は、前述した図7に示す構成の空調システムを、複数階のビルの最上階に設置した場合の実施例を示す部分模式図で、ビルの各階F1,F2,…の構成および最上階に設置した空調システムと各階F1,F2,…とを接続する構成は前述した図5に示す構成と同一である。
【0046】本実施例においても、前述した図5に示す構成と同様に、蓄熱槽1aは冷熱源専用の蓄熱槽として使用し、蓄熱槽1bは冷熱源または温熱源両用の蓄熱槽として使用し、室内器7aに代えて凝縮器11を設け、室内器7bに代えてHPU12を設けるようにしている。
【0047】そして、凝縮器11とインテリアゾーンIZ内の各室内器13とを結ぶ2次配管系では、冷媒の相変化による自然循環が行われ、搬送動力を必要としない省エネルギー性の高い冷房運転がなされる。また、HPU12とペリメータゾーンPZ内の各室内ユニット14とを結ぶ3次配管系では、系内の冷媒をHPU12で強制循環させ、冷房運転時にはHPU12から各室内ユニット14に液冷媒を供給して蒸発させて各部屋の冷房を行い、暖房運転にはHPU12から各室内ユニット14にガス冷媒を供給して凝縮させて各部屋の暖房を行う。
【0048】なお、本実施例においても、前述した図6に示すように、液量調節弁18に代えて液面調節器21を設けたり、また、3次配管系を3管式として冷暖房同時運転を行えるように構成してもよい。また、蓄熱槽に熱を蓄えるために蓄熱槽内に設置された熱交換器は、必ずしも蓄熱槽内に設置することに限らず、蓄熱槽外に取り付けた熱交換器によって蓄熱槽内の蓄熱媒体を循環させるようにしてもよい。
【0049】なお、本発明では、蓄熱槽の台数や圧縮器の台数は前述した実施例に限定されず、複数台を用いて組み合わせを変更したり、夜間の蓄熱時と昼間の運転時、または季節によって運転台数を変更するようにしてもよい。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、複数台の蓄熱槽を設け、冷熱源用蓄熱槽で発生・回収した熱を温熱源用蓄熱槽で回収し、これを暖房に使用するようにしたので、省エネルギー化およびエネルギーの有効利用を図ることが可能となる。また、複数台の蓄熱槽を、負荷に見合った形で冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに設定変更することができるので、負荷に応じた機器の有効利用を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空調システムの冷房運転時の模式的接続図である。
【図2】本発明による空調システムの冷暖房運転時(暖房負荷≒冷房負荷)の模式的接続図である。
【図3】本発明による空調システムの冷暖房運転時(暖房負荷<冷房負荷)の模式的接続図である。
【図4】本発明による空調システムの冷暖房運転時(冷房負荷<暖房負荷)の模式的接続図である。
【図5】本発明による空調システムをビルに設置した場合の部分模式図である。
【図6】本発明による空調システムをビルに設置した場合の他の部分模式図である。
【図7】本発明による空調システムの他の実施例を示す模式的接続図である。
【図8】図7に示す空調システムの冷房運転時の模式的接続図である。
【図9】図7に示す空調システムの冷暖房運転時(暖房負荷≒冷房負荷)の模式的接続図である。
【図10】図7に示す空調システムの冷暖房運転時(暖房負荷<冷房負荷)の模式的接続図である。
【図11】図7に示す空調システムをビルに設置した場合の部分模式図である。
【符号の説明】
1a,1b 蓄熱槽
2a,2b,2c 熱交換器
3 熱交換器
4 圧縮器
5 膨張弁
6a,6b ポンプ
7a,7b 室内器
10 空調システム
11 凝縮器
12 HPU(ヒートポンプユニット)
13 室内器
14 室内ユニット
15 冷媒液管(2次配管系)
16 冷媒蒸気管(2次配管系)
17 受液器
18 液量調節弁
19 冷媒液管(3次配管系)
20 冷媒ガス管(3次配管系)
30 HP(ヒートポンプ)
31 冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液相または固相の蓄熱媒体を熱源として蓄える蓄熱槽を複数台備え、冷房運転時には前記複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽として使用し、冷暖房運転時には前記複数台の蓄熱槽のうちの一部を温熱源用蓄熱槽に切り換えて使用することを特徴とする空調システム。
【請求項2】 複数台の蓄熱槽に熱源を与えるヒートポンプを有し、冷房運転時には前記複数台の蓄熱槽の熱交換器を前記ヒートポンプの蒸発器とし、前記蓄熱槽の熱交換器とは別に設置した熱交換器を前記ヒートポンプの凝縮器としてそれぞれ使用し、冷暖房運転時には前記複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、冷熱源用蓄熱槽の熱交換器を前記ヒートポンプの蒸発器とし、温熱源用蓄熱槽の熱交換器を前記ヒートポンプの凝縮器としてそれぞれ使用すると共に、冷房負荷および暖房負荷の比率に応じて前記蓄熱槽の熱交換器とは別に設置した熱交換器を前記ヒートポンプの凝縮器または蒸発器として使用することを特徴とする空調システム。
【請求項3】 複数台の蓄熱槽に熱源を与えるヒートポンプを有し、冷房運転時には前記複数台の蓄熱槽に前記ヒートポンプにより作られた冷熱を蓄えることにより冷房運転を行い、冷暖房運転時には前記複数台の蓄熱槽を冷熱源用蓄熱槽と温熱源用蓄熱槽とに分け、前記冷熱源用蓄熱槽に前記ヒートポンプにより作られた冷熱を蓄えることにより冷房運転を行い、前記温熱源用蓄熱槽に前記ヒートポンプから吸収した冷却水の温熱を蓄えることにより暖房運転を行うことを特徴とする空調システム。
【請求項4】 複数台の蓄熱槽のうちの一部を冷熱源専用として使用し、残る蓄熱槽を冷熱源用と温熱源用とに切り換えて使用すると共に、前記冷熱源専用として使用する蓄熱槽の蓄熱媒体を、建物の各階に設置する複数の室内器と、単数または複数の凝縮器と、前記室内器で蒸発した冷媒蒸気を前記凝縮器に移動させる冷媒蒸気管と、前記凝縮器で凝縮した冷媒液を前記室内器へ循環する冷媒液管とから少なくとも構成される2次配管系の熱源として使用し、前記冷熱源用と温熱源用に切り換えて使用する蓄熱槽の蓄熱媒体を、前記建物の各階に設置する複数の室内ユニットと、被空調室外に設置したヒートポンプユニットと、前記室内ユニットおよび前記ヒートポンプユニット間でガス冷媒および液冷媒をそれぞれ移動させる冷媒ガス管および冷媒液管とから構成される3次配管系の熱源として使用することを特徴とする請求項1乃至3記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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