説明

空調室内機

【課題】コアンダ気流の方向を変更できる空調室内機を提供する。
【解決手段】空調室内機10では、制御部40は、コアンダ羽根32の姿勢を第1の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きにし、コアンダ羽根32の姿勢を第1の姿勢とは異なる第2の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きとは異なる第2の向きにするように制御する。このとき、コアンダ羽根32の第1の姿勢および第2の姿勢それぞれに対して、風向調整羽根31の姿勢が異ならせてもよい。なお、コアンダ羽根32の姿勢は、リモコン50により選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コアンダ効果を利用して吹出空気を所定ゾーンへ到達させる空気調和機が検討されるようになった。例えば、特許文献1(特開2002−61938号公報)に開示されている空気調和機では、前面パネルの前面傾斜部が天井に向けてなだらかに傾斜する形状を成している。吹出口から吹き出された調和空気が上下風向板によって前面傾斜部へ偏向されたとき、その調和空気は前面傾斜部に沿って天井方向に導かれる。その結果、調和空気を天井面に沿ってより遠くへ到達させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような空気調和機では、前面パネルによるコアンダ効果を利用してコアンダ気流を発生させるので、1方向のコアンダ気流しか選択することができない。したがって、たとえば、空調対象空間の大きさや形状、空調室内機の据付位置が変わっても、或いは、コアンダ気流の方向に障害物があってもコアンダ気流の方向を変更することができない。
【0004】
本発明の課題は、コアンダ気流の方向を変更できる空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吹出口と、コアンダ羽根と、制御部とを備える。吹出口からは、吹出空気が吹き出される。コアンダ羽根は、吹出口の近傍に設けられ、吹出空気を自己の下面に沿わせたコアンダ気流にする。制御部は、コアンダ羽根の姿勢を第1の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きにし、コアンダ羽根の姿勢を第1の姿勢とは異なる第2の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きとは異なる第2の向きにするように制御する。
【0006】
この空調室内機では、コアンダ羽根の姿勢を現姿勢とは異なる他の姿勢へ変更することができるので、コアンダ気流の方向が変わり、コアンダ気流の到達位置も変わる。その結果、コアンダ気流を空調対象空間の大きさや形状等の周囲の状況に応じた向きに変更することができる。たとえば、空調対象空間の大きさに応じてコアンダ気流の到達位置を変更したり、コアンダ気流の方向に障害物がある場合はその障害物を避ける方向にコアンダ気流を仕向けることができる。
【0007】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、吹出空気の上下方向を変更する可動の風向調整羽根をさらに備えている。コアンダ羽根の第1の姿勢および第2の姿勢それぞれに対して、風向調整羽根の姿勢が異なる。
【0008】
この空調室内機では、コアンダ気流の方向は、コアンダ羽根単独でも変動させることができるが、その変動幅は大きくないので、コアンダ気流の元となる吹出空気の方向を風向調整羽根によって変動させることによって、コアンダ気流の変動許容範囲が拡大する。
【0009】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点または第2観点に係る空調室内機であって、コアンダ気流の向きを遠隔操作するリモコンをさらに備えている。コアンダ羽根の姿勢は、リモコンにより選択される。
【0010】
この空調室内機では、ユーザーが、リモコンを介して少なくとも調和空気を単に上吹きするモードと、調和空気を遠方に飛ばすモードとを選択することできる。例えば、調和空気を遠方に飛ばすモードを選択することによって、調和空気を空調対象空間に均一に行き渡らせることが可能となる。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第3観点に係る空調室内機であって、リモコンが、空調対象空間の大きさを入力するサイズ入力手段を有している。制御部は、サイズ入力手段を介して空調対象空間の大きさが入力されたとき、空調対象空間の大きさに基づいてコアンダ羽根の姿勢が選択される。
この空調室内機では、ユーザーが、リモコンを介して空調対象空間の大きさを入力することができるので、ユーザーは室内機が設置された部屋の大きさに応じて、コアンダ羽根の姿勢を選択し、コアンダ気流の向きを変更することができる。
【0012】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、第3観点に係る空調室内機であって、リモコンが、吹出口から吹出口の前方対面壁までの対面距離を入力する距離入力手段をさらに有している。制御部は、距離入力手段を介して対面距離が入力されたとき、対面距離に基づいてコアンダ羽根の姿勢が決定される。
【0013】
この空調室内機では、ユーザーが、リモコンを介して吹出口からその前方対面壁までの対面距離を入力することができるので、例えば、室内機が設置された部屋における上記対面距離に応じて、コアンダ羽根の姿勢を決定し、コアンダ気流の向きを変更することができる。
【0014】
本発明の第6観点に係る空調室内機は、第1観点また第2観点に係る空調室内機であって、距離センサをさらに備えている。距離センサは、吹出口から吹出口の前方対面壁までの距離を測定する。制御部は、距離センサの測定値に基づいてコアンダ羽根の姿勢を決定する。この空調室内機では、ユーザーが対面距離を入力する必要がないので、使い勝手がよい。
【0015】
本発明の第7観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、コアンダ羽根の姿勢は、少なくともコアンダ気流を天井に到達させる天井吹き姿勢を含む。制御部は、天井吹き姿勢における風向調整羽根および/またはコアンダ羽根の姿勢を調整してコアンダ気流の到達位置を定期的に変動させる。
【0016】
例えば、天井の一点に冷風、若しくは温風が当たり続けた場合、当たり面だけが極端に汚れる可能性がある。また、冷風が当たり続けることにより結露する可能性がある。それゆえ、この空調室内機では、定期的に気流の当たり面を変更することによって、天井の局部的なよごれ、結露を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、コアンダ羽根の姿勢を現姿勢とは異なる他の姿勢へ変更することができるので、コアンダ気流の方向が変わり、コアンダ気流の到達位置も変わる。その結果、コアンダ気流を空調対象空間の大きさや形状等の周囲の状況に応じた向きに変更することができる。
【0018】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、コアンダ気流の元となる吹出空気の方向を風向調整羽根によって変動させることによって、コアンダ気流の変動許容範囲が拡大する。
【0019】
本発明の第3観点に係る空調室内機では、ユーザーが、リモコンを介して少なくとも調和空気を単に上吹きするモードと、調和空気を遠方に飛ばすモードとを選択することできる。
【0020】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、ユーザーがリモコンを介して空調対象空間の大きさを入力することができるので、ユーザーは室内機が設置された部屋の大きさに応じて、コアンダ羽根の姿勢を選択し、コアンダ気流の向きを変更することができる。
【0021】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、ユーザーがリモコンを介して吹出口からその前方対面壁までの対面距離を入力することができるので、例えば、室内機が設置された部屋における上記対面距離に応じて、コアンダ羽根の姿勢を決定し、コアンダ気流の向きを変更することができる。
【0022】
本発明の第6観点に係る空調室内機では、ユーザーが対面距離を入力する必要がないので、使い勝手がよい。
【0023】
本発明の第7観点に係る空調室内機では、定期的に気流の当たり面を変更することによって、天井の局部的なよごれ、結露を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機の断面図。
【図2】運転時の空調室内機の断面図。
【図3A】吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3B】吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3C】コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3D】コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3E】下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図4A】吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図。
【図4B】風向調整羽根とコアンダ羽根との開き角度の一例を表す概念図。
【図5A】コアンダ気流前方吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図5B】コアンダ気流天井吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図6A】コアンダ羽根が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6B】コアンダ羽根が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6C】コアンダ羽根が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図7A】制御部とリモコンとの関係を示すブロック図。
【図7B】「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部の正面図。
【図8A】コアンダ羽根が第3姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図8B】コアンダ羽根が第5姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図9A】コアンダ羽根が上向き姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図9B】コアンダ羽根が天井吹き姿勢で遥動動作するときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図10A】「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した第1変形例に係る表示部の正面図。
【図10B】「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した第2変形例に係る表示部の正面図。
【図10C】制御部、距離センサおよびリモコンとの関係を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
(1)空調室内機10の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機10の断面図である。また、図2は、運転時の空調室内機10の断面図である。図1及び図2において、空調室内機10は壁掛けタイプであり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0027】
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40を収納している。
【0028】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、吸込口(図示せず)が設けられている。
【0029】
前面パネル11bは室内機の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0030】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0031】
本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の方向を変更する風向調整羽根31が回動自在に取り付けられている。風向調整羽根31は、モータ(図示せず)によって駆動し、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。風向調整羽根31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0032】
また、吹出口15の近傍にはコアンダ羽根32が設けられている。コアンダ羽根32は、モータ(図示せず)によって前後方向に傾斜した姿勢をとることが可能であり、運転停止時に前面パネル11bに設けられた収容部130に収容される。コアンダ羽根32は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0033】
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0034】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって吸込口、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0035】
制御部40は、本体ケーシング11を前面パネル11bから視て室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置しており、室内ファン14の回転数制御、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の動作制御を行う。
【0036】
(2)詳細構成
(2−1)前面パネル11b
図1に示すように、前面パネル11bは本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前方エッジに向かって延びている。前面パネル11bの下部に本体ケーシング11の内側に向かって窪んだ領域がある。この領域の窪み深さはコアンダ羽根32の厚み寸法に合うように設定されており、コアンダ羽根32が収容される収容部130を成している。収容部130の表面もなだらかな円弧曲面である。
【0037】
(2−2)吹出口15
図1に示すように、吹出口15は、本体ケーシング11の下部に形成されており、横方向(図1紙面と直交する方向)を長辺とする長方形の開口である。吹出口15の下端は下部水平板11dの前方エッジに接しており、吹出口15の下端と上端とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0038】
(2−3)スクロール17
スクロール17は、室内ファン14に対峙するように湾曲した隔壁であり、底フレーム16の一部である。スクロール17の終端Fは、吹出口15の周縁近傍まで到達している。吹出流路18を通る空気は、スクロール17に沿って進み、スクロール17の終端Fの接線方向に送られる。したがって、吹出口15に風向調整羽根31がなければ、吹出口15から吹き出される吹出空気の風向は、スクロール17の終端Fの接線L0に概ね沿った方向である。
【0039】
(2−4)垂直風向調整板20
垂直風向調整板20は、図1及び図2に示すように、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。また、垂直風向調整板20は、吹出流路18において、風向調整羽根31よりも室内ファン14近傍に配置されている。
【0040】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0041】
(2−5)風向調整羽根31
風向調整羽根31は、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。風向調整羽根31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、風向調整羽根31の内側面31b(図2参照)も、外面にほぼ平行な円弧曲面を成している。
【0042】
風向調整羽根31は、下端部に回動軸311を有している。回動軸311は、吹出口15の下端近傍で、本体ケーシング11に固定されているステッピングモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。
【0043】
回動軸311が図1正面視反時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側から遠ざかるように動作して吹出口15を開ける。逆に、回動軸311が図1正面視時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側へ近づくように動作して吹出口15を閉じる。
【0044】
風向調整羽根31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、風向調整羽根31の内側面31bに概ね沿って流れる。すなわち、スクロール17の終端Fの接線方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が風向調整羽根31によってやや上向きに変更される。
【0045】
(2−6)コアンダ羽根32
コアンダ羽根32は、空調運転が停止している間や後述する通常吹出モードでの運転では収容部130に収納されている。コアンダ羽根32は回動することによって収容部130から離れる。コアンダ羽根32の回動軸321は、収容部130の下端近傍で且つ本体ケーシング11の内側の位置(吹出流路18上壁の上方の位置)に設けられており、コアンダ羽根32の下端部と回動軸321とは所定の間隔を保って連結されている。それゆえ、回動軸321が回動してコアンダ羽根32が室内機前面部の収容部130から離れるほど、コアンダ羽根32の下端の高さ位置は低くなるように回転するまた、コアンダ羽根32が回転して開いたときの傾斜は室内機前面部の傾斜よりも緩やかである。
【0046】
本実施形態では、収容部130は、送風路の外に設けられており、収容時にコアンダ羽根32の全体が送風路の外側に収容される。かかる構造に代えて、コアンダ羽根32の一部のみが送風路の外側に収容され、残りが送風路内(たとえば、送風経路の上壁部)に収容されるようにしてもよい。
【0047】
また、回動軸321が図1正面視反時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32の上端および下端ともに円弧を描きながら収容部130から離れるが、そのとき、上端と吹出口より上方の室内機前面部の収容部130との最短距離は、下端と収容部130との最短距離より大きい。すなわち、コアンダ羽根32は前方に行くにしたがって前記室内機前面部から離れるような姿勢に制御される。そして、回動軸321が図1正面視時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32は収容部130に近づき、最終的に収容部130収容される。コアンダ羽根32の運転状態の姿勢としては、収容部130に収納された状態、回転して前方上向きに傾斜した姿勢、さらに回転してほぼ水平な姿勢、さらに回転して前方下向きに傾斜した姿勢がある。
【0048】
コアンダ羽根32が収容部130に収容された状態で、コアンダ羽根32の外側面32aは前面パネル11bのなだらかな円弧曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、コアンダ羽根32の内側面32bは、収容部130の表面に沿うような円弧曲面に仕上げられている。
【0049】
また、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上となるように設定されている。この理由は風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けるためであり、その目的はコアンダ羽根32の側方からの吹出空気がショートサーキットすることを防止することである。
【0050】
(3)吹出空気の方向制御
本実施形態の空調室内機は、吹出空気の方向を制御する手段として、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整する通常吹出モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32を回動させてコアンダ効果によって吹出空気をコアンダ羽根32の外側面32aに沿わせたコアンダ気流にするコアンダ効果利用モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32それぞれの先端を前方下向きにして吹出空気を下方に導く下吹きモードを有している。
【0051】
風向調整羽根31及びコアンダ羽根32は、上記各モードにおいて空気の吹出方向ごとに姿勢が変化するので、各姿勢について図3A〜図3Eを参照しながら説明する。なお、吹出方向の選択は、ユーザーがリモコン等を介して行なうことができるものとする。また、モードの変更や吹出方向は自動的に変更されるように制御することも可能である。
【0052】
(3−1)通常吹出モード
通常吹出モードは、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整するモードであり、「通常前吹き」と「通常前方下吹き」とを含む。
【0053】
(3−1−1)通常前吹き
図3Aは、吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Aにおいて、ユーザーが「通常前吹き」を選択したとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bが略水平になる位置まで風向調整羽根31を回動させる。なお、本願実施形態のように風向調整羽根31の内側面31bが円弧曲面をなしている場合は、内側面31bの前方端E1における接線が略水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前吹き状態となる。
【0054】
(3−1−2)通常前方下吹き
図3Bは、吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Bにおいて、ユーザーは吹出方向を「通常前吹き」よりも下方に向けたいとき、「通常前方下吹き」を選択すればよい。
【0055】
このとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前方下吹き状態となる。
【0056】
(3−2)コアンダ効果利用モード
コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。コアンダ利用モードは、このコアンダ効果を利用した「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」を含む。
【0057】
また、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す、但し、それに限定されるものではない。図4Aは、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図である。図4Aにおいて、コアンダ羽根32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせるには、風向調整羽根31によって変更された吹出空気の方向(D1)の傾斜がコアンダ羽根32の姿勢(傾斜)に近くなる必要がある。両者が離れすぎているとコアンダ効果が生じない。そのため、本コアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32と風向調整羽根31とが所定の開き角度以下になる必要があり、両調整板(31、32)がその範囲内を成すようにして、上記の関係が成立するようにしている。これにより、図4Aに示すように、吹出空気の風向が風向調整羽根31によってD1に変更された後、さらにコアンダ効果によりD2に変更される。
【0058】
また、本実施形態のコアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32が風向調整羽根31の前方(吹出の下流側)かつ上方の位置あるのが好ましい。
【0059】
また、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す。但し、それに限定されるものではない。図4Bは、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度の一例を表す概念図である。図4Bにおいて、風向調整羽根31の内側面31bの前後端を結ぶ直線と水平線との角度を風向調整羽根31の傾斜角θ1とし、コアンダ羽根32の外側面32aの前後端を結ぶ直線と水平線との角度をコアンダ羽根32の傾斜角θ2としたとき、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度θ=θ2−θ1である。なお、θ1及びθ2は絶対値ではなく、図4B正面視において水平線よりも下方となる場合は負の値である。
【0060】
「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」ともに、風向調整羽根31およびコアンダ羽根32は、スクロール17の終端Fの接線とコアンダ羽根32とが成す内角が、スクロール17の終端Fの接線と風向調整羽根31とが成す内角よりも大きい、という条件を満たす姿勢をとるのが好ましい。
【0061】
なお、内角については、図5A(コアンダ気流前方吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)、および図5B(コアンダ気流天井吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)を参照のこと。
【0062】
また、図5Bに示すように、コアンダ効果利用モードにおけるコアンダ羽根32では、コアンダ羽根32の先端部が水平より前方上向で、吹出口15よりも外側上方に位置する。その結果、コアンダ気流はより遠方に到達する上に、コアンダ羽根の上側を通過するような強い気流の発生は抑制され、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくくなる。
【0063】
また、コアンダ羽根32の後端部の高さ位置は運転停止時よりも低くなっているので、上流側でのコアンダ効果によるコアンダ気流が生成し易い。
【0064】
(3−2−1)コアンダ気流前方吹き
図3Cは、コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Cにおいて、「コアンダ気流前方吹き」が選択されたとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0065】
次に、制御部40は、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。なお、本願実施形態のようにコアンダ羽根32の外側面32aが円弧曲面をなしている場合は、外側面32aの前方端E2における接線L2が略水平になるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Aに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。
【0066】
風向調整羽根31で前方下吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0067】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0068】
このように、コアンダ羽根32が室内機前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方下吹きであっても、コアンダ効果によって水平吹きの空気となる。これは、吹出口通過直後の空気を前面パネルに近づけて前面パネルのコアンダ効果で上向きにする従来(特許文献1)の方法に比べて、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0069】
(3−2−2)コアンダ気流天井吹き
図3Dは、コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Dにおいて、「コアンダ気流天井吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0070】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Bに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。風向調整羽根31で水平吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0071】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。コアンダ羽根32の先端部は吹出口15より外側に突出しているので、コアンダ気流はより遠方に到達する。さらに、コアンダ羽根32の先端部は吹出口15よりも上方に位置しているので、コアンダ羽根の上側を通過するような気流の発生は抑制され、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくい。
【0072】
このように、コアンダ羽根32が室内機前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方吹きであっても、コアンダ効果によって上向きの空気となる。これは、吹出口通過直後の空気を前面パネルに近づけて前面パネルのコアンダ効果で上向きにする従来(特許文献1)の方法に比べて、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0073】
その結果、前面パネルに沿わせた気流を生じさせる特許文献1に記載の発明と比べて、吹出口15が開き気味のまま、吹出空気が天井方向へ誘導される。つまり、通風抵抗が低く保たれた状態で吹出空気が天井方向へ誘導される。
【0074】
なお、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上である。それゆえ、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けることができ、コアンダ羽根32の側方から吹出空気がショートサーキットすることが防止されるという効果も奏している。
【0075】
(3−3)下吹きモード
図3Eは、下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Eにおいて、「下吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が下向きなるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0076】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線が下向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。その結果、吹出空気は、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との間を通過し、下向きに吹き出される。
【0077】
特に、風向調整羽根31がスクロール17の終端部の接線角度より下向きになったときでも、制御部40が下吹きモードを実行することによって、コアンダ羽根32の外側面32aに当てて下向きの気流を生成することができる。
【0078】
(4)動作
上記のような吹出空気の方向制御を利用した空調室内機の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0079】
(4−1)コアンダ羽根32の第1姿勢
図6Aは、コアンダ羽根32が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Aにおいて、空調室内機10は室内側壁の上方に設置されている。コアンダ羽根32は、収納部130に収納されている状態(以後、第1姿勢とよぶ)である。コアンダ羽根32が第1姿勢のときに風向調整羽根31の姿勢を水平よりも上向きにすることによって、風向調整羽根31の内側面31bで風向調整された吹出空気がその内側面31bを離れた後、コアンダ羽根32の外側面32に引っ張られるように方向を変え、第1コアンダ気流となってコアンダ羽根32の外側面32および前面パネル11bに沿うように流れる。
【0080】
ここで、ユーザーがコアンダ気流を選択する方法について説明する。図7Aは、制御部40とリモコン50との関係を示すブロック図である。図7Aにおいて、リモコン50は赤外線信号を無線で送信する。リモコン50には、風向を切り換えるための切換手段を有している。具体的には、ユーザーが風向を選択できるように、風向選択メニューを表示する表示部52と、各風向選択メニューを指定するためのカーソル52aを有している。
【0081】
先ず、ユーザーは、表示部52に表示されたメニューの中から「コアンダ風向設定」をカーソル52aで選択する。なお、リモコン50によるメニューの選択および確定するための技術は広く公開されているので詳細な説明は省略する。
【0082】
図7Bは、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部52の正面図である。図7Bにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューには、第1〜第5コアンダ角度が予め準備されており、カーソル52aで第1コアンダ角度を指定して確定することによって、コアンダ羽根32は図6Aに示す第1姿勢をとり、第1コアンダ角度に応じた第1の向きのコアンダ気流が発生する。
【0083】
(4−2)コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢
次に、図6Bは、コアンダ羽根32が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Bにおけるコアンダ羽根32の第2姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第2姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−2)コアンダ気流天井吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第2コアンダ角度が選択されたとき、図3Dに示すように、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。
【0084】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Aは、コアンダ羽根32が第3姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Aにおいて、コアンダ羽根32の第3姿勢は第2姿勢よりも下向きである。なお、図8Aでは、比較のために第2姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第3姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0085】
第2姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第2姿勢よりも下向きである第3姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流天井吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度、若しくは第3コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0086】
本実施形態では、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢は、調和空気を遠方に飛ばしたいときに選択されることを想定している。例えば、吹出口15から天井までの高さ距離、および吹出口15からその対面壁までの対面距離がともに大きい場合は、コアンダ羽根32の姿勢は第2姿勢が好ましい。他方、吹出口15から天井までの高さ距離は小さいが、吹出口15からその対面壁までの対面距離が大きい場合などはコアンダ羽根32の姿勢は第3姿勢が好ましい。このようにユーザーは、リモコン50を介して室内空間の大きさに応じてコアンダ羽根32の姿勢を選択することができるので、使い勝手がよい上に、調和空気を空調対象空間に均一に行き渡らせることが可能となる。
【0087】
また、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢の切り換えは、以下のような事象が発生した場合にも有効である。
【0088】
図9Aは、コアンダ羽根32が上向き姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図9Aにおいて、2点鎖線で描かれたコアンダ羽根32は、第2姿勢(図6B参照)をとっている。このとき、コアンダ気流は、室内天井に設置されている天吊型の照明機器110に向っているため、照明機器110が揺れて居住者に不快感を与える恐れがある。このような場合、第3姿勢を選択して、コアンダ気流が天吊型の照明機器110に向わないようにすることができる。
【0089】
(4−3)コアンダ羽根32の第4姿勢および第5姿勢
さらに、図6Cは、コアンダ羽根32が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Cにおけるコアンダ羽根32の第4姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第4姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−1)コアンダ気流前方吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第4コアンダ角度が選択されたとき、図3Cに示すように、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0090】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Bは、コアンダ羽根32が第5姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Bにおいて、コアンダ羽根32の第5姿勢は第4姿勢よりも下向きである。なお、図8Bでは、比較のために比較のために第4姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第5姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0091】
第4姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第4姿勢よりも下向きである第5姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流前方吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度、若しくは第5コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0092】
なお、上記の説明で明らかなように、コアンダ羽根32の第1姿勢、第2姿勢および第4姿勢それぞれに対して風向調整羽根31の姿勢が異なる。言い換えると、コアンダ羽根32によるコアンダ気流は、風向調整羽根31の姿勢とコアンダ羽根32の姿勢との組み合わせによって如何なる方向にも仕向けることができる。
【0093】
(4−4)特殊な動作
図9Bは、コアンダ羽根32が天井吹き姿勢で遥動動作するときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図9Bにおいて、空調室内機10がコアンダ気流を天井に向ける姿勢のまま長期間使用された場合、天井面のうちのコアンダ気流が常にあたる領域の汚れが他の領域よりも目立つようになり、室内の美観を損なうことになる。また、天井の一領域に冷風が当たり続けることにより結露する可能性もある。
【0094】
そこで、本実施形態では、ユーザーがリモコン50から「天井コアンダ遥動」メニュー(図7B参照)を選択することによって、コアンダ羽根32を天井吹き姿勢のままで定期的に姿勢を変動させることができる。その結果、空調室内機10では、天井の局部的なよごれや、結露を抑制することができる。
【0095】
(5)特徴
(5−1)
空調室内機10では、制御部40は、コアンダ羽根32の姿勢を第1の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きにし、コアンダ羽根32の姿勢を第1の姿勢とは異なる第2の姿勢にすることによってコアンダ気流の向きを第1の向きとは異なる第2の向きにするように制御する。このとき、コアンダ羽根32の第1の姿勢および第2の姿勢それぞれに対して、風向調整羽根31の姿勢が異ならせてもよい。なお、コアンダ羽根32の姿勢は、リモコン50により選択される。この空調室内機10では、コアンダ気流を空調対象空間の大きさや形状等の周囲の状況に応じた向きに変更することができる。
【0096】
(5−2)
空調室内機10では、制御部40は、天井吹き姿勢における風向調整羽根31および/またはコアンダ羽根32の姿勢を調整してコアンダ気流の到達位置を定期的に変動させる。それゆえ、この空調室内機10では、定期的に気流の当たり面を変更することによって、天井の局部的なよごれ、結露を抑制することができる。
【0097】
(6)変形例
(6−1)第1変形例
上記実施形態では、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢は、調和空気を遠方に飛ばしたいときに選択され、ユーザーは、リモコン50を介して室内空間の大きさに応じてコアンダ羽根32の姿勢を選択することができる。
【0098】
しかし、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢が、特定の室内空間には適しない場合も考えられる。そこで、第1変形例では、空調室内機10が設置される室内空間のサイズを予めリモコン50から入力しておくことによって、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢における角度がその室内空間に適する角度に自動的に修正される。
【0099】
図10Aは、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した第1変形例に係る表示部の正面図である。図10Aにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューの中に「部屋サイズ入力」メニュー54が含まれている。ユーザーは、「部屋サイズ入力」メニュー54をカーソル52aで指定して確定することにより、表示部52から部屋サイズを入力することができるようになる。部屋サイズとは、例えば、吹出口15から天井までの高さ距離、および吹出口15からその対面壁までの対面距離で代用させればよい。
【0100】
(6−2)第2変形例
一般に、家の床面から天井までの高さは2m40cmが基準になっており、空調室内機10の設置高さも天井面との隙間が10cm程度あけるように据え付けられるので、予め空調室内機10の設置高さをメモリ40b(図7A参照)に記憶させておくことによって、演算部40a(図7A参照)で吹出口15から天井までの高さ距離を算出することができるので、ユーザーは、吹出口15からその対面壁までの対面距離だけを入力すればよいことになる。
【0101】
図10Bは、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した第2変形例に係る表示部の正面図である。図10Bにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューの中に「対面距離入力」メニュー56が含まれている。ユーザーは、「対面距離入力」メニュー56をカーソル52aで指定して確定することにより、表示部52から対面距離を入力することができるようになる。つまり、ユーザーは、予め対面距離だけを入力しておくことにより、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢における角度がその室内空間に適する角度に自動的に修正される。
【0102】
(6−3)第3変形例
さらに、対面距離をセンサで測定できるようにすれば、第2変形例のような対面距離を入力する必要もなくなり、さらに使い勝手がよくなる。
【0103】
図10Cは、制御部40、距離センサ42及びリモコン50との関係を示すブロック図である。図10Cにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューの中に「対面距離自動入力」メニュー58が含まれている。ユーザーは、「対面距離自動入力」メニュー58をカーソル52aで指定して確定することにより、距離センサ42が自己の位置から対面する壁面までの距離を計測し、メモリ40bに記憶し、演算部40aで吹出口15からその対面壁までの対面距離を算出する。つまり、ユーザーは、対面距離を入力必要はなく、「対面距離自動入力」メニュー58を選択するだけで、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢における角度がその室内空間に適する角度に自動的に修正される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、壁掛け式空調室内機に有用である。
【符号の説明】
【0105】
10 空調室内機
15 吹出口
31 風向調整羽根
32 コアンダ羽根
32a 下面
40 制御部
42 距離センサ
50 リモコン
54 サイズ入力手段
56 距離入力手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開2002−61938号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出空気が吹き出される吹出口(15)と、
前記吹出口(15)の近傍に設けられ、前記吹出空気を自己の下面(32a)に沿わせたコアンダ気流にするコアンダ羽根(32)と、
前記コアンダ羽根(32)の姿勢を第1の姿勢にすることによって前記コアンダ気流の向きを第1の向きにし、前記コアンダ羽根(32)の姿勢を前記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢にすることによって前記コアンダ気流の向きを前記第1の向きとは異なる第2の向きにするように制御する制御部(40)と、
を備える、
空調室内機(10)。
【請求項2】
前記吹出空気の上下方向を変更する可動の風向調整羽根(31)をさらに備え、
前記コアンダ羽根(32)の前記第1の姿勢および前記第2の姿勢それぞれに対して、前記風向調整羽根(31)の姿勢が異なる、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項3】
前記コアンダ気流の向きを遠隔操作するリモコン(50)をさらに備え、
前記リモコン(50)により前記コアンダ羽根(32)の姿勢が選択される、
請求項1又は請求項2に記載の空調室内機(10)。
【請求項4】
前記リモコン(50)は、前記空調対象空間の大きさを入力するサイズ入力手段(54)を有し、
前記制御部(40)は、前記サイズ入力手段(54)を介して前記空調対象空間の大きさが入力されたとき、前記空調対象空間の大きさに基づいて前記コアンダ羽根(32)の姿勢が選択される、
請求項3に記載の空調室内機(10)。
【請求項5】
前記リモコン(50)は、前記吹出口(15)から前記吹出口(15)の前方対面壁までの対面距離を入力する距離入力手段(56)をさらに有し、
前記制御部(40)は、前記距離入力手段(56)を介して前記対面距離が入力されたとき、前記対面距離に基づいて前記コアンダ羽根(32)の姿勢が決定される、
請求項3に記載の空調室内機(10)。
【請求項6】
前記吹出口(15)から前記吹出口(15)の前方対面壁までの距離を測定する距離センサ(42)をさらに備え、
前記制御部(40)は、前記距離センサ(42)の測定値に基づいて前記コアンダ羽根(32)の姿勢が決定される、
請求項1または2に記載の空調室内機(10)。
【請求項7】
前記コアンダ羽根(32)の姿勢は、少なくとも前記コアンダ気流を天井に到達させる天井吹き姿勢を含み、
前記制御部(40)は、前記天井吹き姿勢における前記風向調整羽根(31)および/または前記コアンダ羽根(32)の姿勢を調整して前記コアンダ気流の到達位置を定期的に変動させる、
請求項1に記載の空調室内機(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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