説明

空調機および空調方法

【課題】従来の冷風扇に比べて大幅に温度を下げることが可能で、しかもエアコンより消費電力の少ない空調機および空調方法を提供する。
【解決手段】本空調機は、大気中に噴霧水を噴出する噴霧ノズル1aおよび当該噴霧水に向けて除湿空気を送気する空気ノズル1bとからなる噴霧装置1と、当該噴霧装置1に送給する除湿空気を調製する除湿装置3および当該除湿空気を冷却する冷却装置2と、前記除湿装置3に圧縮空気を送給するコンプレッサー4と、前記噴霧装置8に噴霧水を供給するための水槽5および加圧送水ポンプ7とから概略構成される。噴霧装置1の噴霧ノズル1aから大気中に噴出される噴霧水に、除湿装置3により調製され、冷却装置2により外気温以下に冷却された除湿空気を、噴霧装置1の空気ノズル1bから送出して噴霧水に送気接触させる。これにより、噴霧水の蒸発が促進され、その周囲の空気は急激に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用または少なくとも一部が屋外に開放されている室用の空調機および空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの影響により猛暑が続き、熱中症などの事故が多発して社会問題となっている。これを少しでも緩和する装置として、霧状水を噴霧する冷風扇が開発されている。例えば、特許文献1では、水槽内の水を気化用ベルトに吸収させて気化させ、気化した水を含んだ空気を送風ファンにより吹出すようにした冷風扇が開示されている。また、特許文献2では、超音波加湿装置にて霧化された水をネジポンプ内で空気と混合させた後、当該空気を送風ファンから吹出すようにした霧化式冷風扇が開示されている。
【特許文献1】実開平1−136313号公報
【特許文献2】特開平4−15425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、日本のような夏季に高湿度となる地域では気化が進まないため、上記冷風扇を使用したとしても、せいぜい3〜4℃程度しか温度を下げることができず、涼感を得るには程遠いものであった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、従来の冷風扇に比べて大幅に温度を下げることが可能で、しかもエアコンより消費電力の少ない空調機および空調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、屋外用または少なくとも一部が屋外に開放されている室用の空調機であって、大気中に噴霧水を噴出する噴霧部および当該噴霧水に向けて除湿空気を送気する送気部とを有する噴霧装置と、前記送気部に送給する除湿空気を調製する除湿装置とを備えること特徴としている。
【0006】
また、本発明は、屋外用または少なくとも一部が屋外に開放されている室用の空調方法であって、大気中に噴出される噴霧水に除湿空気を送気接触させることで、当該噴霧水による気化冷却を促進させることを特徴としている。
【0007】
本発明では、大気中に噴出される噴霧水が蒸発するときの気化熱を利用する。即ち、噴霧水が蒸発するときに、その周囲から気化熱を奪う現象を利用して冷却を行う。この際、空気が乾燥しているほど蒸発が促進されるため、本発明では除湿空気を使用し、噴霧部から噴出する噴霧水に除湿空気を送気接触させる。これにより、噴霧水の蒸発が促進され、その周囲の空気は急激に冷却される。この際、噴霧水に吹き付ける除湿空気の温度は、外気温以下であればよい。
なお、本発明では、大気中に噴霧水を噴出するので、使い続けていると、大気中の水分量が増加し、気化しにくくなる。このため、本発明は、屋外、または少なくとも一部が屋外に開放されている室での使用を想定している。
【0008】
また、本発明では、吸着剤を使用した吸着式除湿装置を用いて前記除湿空気を調製することを好適とする。
ここで、吸着式除湿装置は、シリカゲルやゼオライト等の吸着剤(デシカント)を使って空気中の水分を吸着する除湿装置であり、固定式(2塔切替方式)と回転式(ローター式)の2種類がある。
2塔切替方式の除湿装置は、吸着剤が充填された一対の塔を備え、一方の塔に湿り空気を通して除湿を行うとともに、他方の塔では吸着剤の再生を行い、交互に塔を切り替えながら連続的に除湿を行うものである。
一方、ローター式の除湿装置(デシカントローター)は、ローターケーシングが処理ゾーンと再生ゾーンに分かれている。湿り空気は、処理ゾーンのローター内に導かれ、ローターを通過する間に水分が吸着剤に吸着され、低湿空気となって出て行く。水分を吸着したローターは、再生ゾーンへ回転移動し、加熱空気によって吸着剤から水分を脱着した後、再び処理ゾーンへ回転移動する。このサイクルの繰り返しによって連続的に除湿空気が調製される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空調機および空調方法では、噴霧部から噴出する噴霧水に除湿空気を送気接触させることにより、噴霧水の蒸発が促進され、その周囲の空気を急激に冷却することができる。その結果、従来の冷風扇に比べて大幅に温度を下げることが可能で、しかも噴霧水が蒸発するときの気化熱を利用するので、機構がシンプルでエアコンに比べて消費電力を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
[第一の実施形態]
本空調機は、図1に示すように、噴霧水を大気中に噴出する噴霧装置1と、当該噴霧装置1に送給する除湿空気を調製する除湿装置3および当該除湿空気を冷却する冷却装置2と、前記除湿装置3に圧縮空気を送給するコンプレッサー4と、前記噴霧装置8に噴霧水を供給するための水槽5および加圧送水ポンプ7とから概略構成される。
【0011】
噴霧装置1は、大気中に噴霧水を噴出する噴霧ノズル1a(噴霧部)と、噴霧ノズル1aを取り囲むように配置され、当該噴霧水に向けて除湿空気を送給する複数の空気ノズル1b…(送気部)とから構成されている。噴霧ノズル1aは、配管51によって水槽5および加圧送水ポンプ7に接続され、空気ノズル1bは、配管52によって冷却装置2、除湿装置3、およびコンプレッサー4に接続されている。
【0012】
除湿装置3は、2塔切替方式の除湿装置であって、シリカゲルやゼオライト等の吸着剤が充填された一対の塔15,15と、一対の塔15,15の前後に設置され、除湿装置3に取り込まれた空気を分岐させる四方弁17,18および空気の逆流を防止する逆止弁21,22と、不純物を除去するフィルター19,20,23とから概略構成されている(図2参照)。
本除湿装置3では、一方の塔15に湿り空気を通して除湿を行うとともに、他方の塔15では吸着剤の再生を行い、交互に塔15を切り替えながら連続的に除湿を行う。具体的には、コンプレッサー4で圧縮された空気は、塵埃フィルター19およびドレン水フィルター20を通過する際に不純物が除去され、四方弁17によって一方の塔15に導入される。一方の塔15内では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、除湿空気が調製される。調製された除湿空気は、四方弁18によって空気フィルター23を通過後、冷却装置2に送給される。また、塵埃フィルター19およびドレン水フィルター20を通過した圧縮空気は、四方弁18によって他方の塔15にも導入され、吸着剤から水分を脱着した後、四方弁17によって排気口45から大気中に排出される。
【0013】
なお、導入される空気量が塔15の容量より大きい場合は、所定の除湿度が得られないので、空気流量計24の指示値を見て所定の空気量となるように、冷却装置2に設けられている調整弁14で空気量を調整する。
【0014】
冷却装置2は、冷凍機12および熱交換器11と、膨張弁13と、これらの装置間に配設される冷媒配管55とから概略構成されている。冷凍機12で冷却された冷媒は、膨張弁13通過時に減圧され、熱交換器11において、除湿装置3から送出された除湿空気から熱を吸収した後、再び冷凍機12で冷却される。一方、熱交換器11で冷却された除湿空気は、調整弁14を通過した後、噴霧ノズル1aの空気ノズル1bに送給される。
なお、本実施形態では、冷凍機12を用いて除湿空気を冷却しているが、ラジエーターなどの空冷式としても良い。
【0015】
水槽5の水面には、浮き6が浮かべてあり、浮き6が下がると、水面が一定レベルに達するまで自動的に水槽5内に給水されるようになっている。
【0016】
上記空調機を用いて空調を行うには、噴霧装置1の噴霧ノズル1aから大気中に噴出される噴霧水に、除湿装置3により調製され、冷却装置2により外気温以下に冷却された除湿空気を、噴霧装置1の空気ノズル1bから送出して噴霧水に送気接触させればよい。これにより、噴霧水の蒸発が促進され、その周囲の空気は急激に冷却される。
【0017】
[第二の実施形態]
本空調機は、図3に示すように、噴霧水を大気中に噴出する噴霧装置8と、当該噴霧装置8に除湿冷却空気を送給する除湿冷却装置9と、前記噴霧装置8に噴霧水を供給するための水槽5および加圧送水ポンプ7とから概略構成され、噴霧装置8と除湿冷却装置9、噴霧装置8と水槽5および加圧送水ポンプ7とは、それぞれ配管53,54で接続されている。
【0018】
噴霧装置8は、円筒状の筒体8aの後端部に送気ファン8b(送気部)が取り付けられたファン方式噴霧装置である。筒体8aの前端部には、その外周に沿って、水槽5の水を供給する配管53に接続されたヘッダー8dが装着されており、ヘッダー8dに沿って設けられた複数の噴霧ノズル8c…(噴霧部)から前方に向けて噴霧水が噴射されるようになっている。一方、送気ファン8bの後方には、除湿冷却装置9で調製された除湿冷却空気を噴霧装置8に送給するための配管54が配されており、除湿冷却空気は、筒体8aの前端部から大気中へ放出される。
【0019】
除湿冷却装置9は、噴霧装置8に送給される空気の除湿を行う除湿装置Jと、除湿装置Jによって除湿された空気を冷却するヒートポンプHとから構成される(図4参照)。
除湿装置Jは、デシカントローター30と、デシカントローター30を駆動するモーター32と、デシカントローター30とモーター32とを連結する駆動ベルト31に加えて、外気を吸引するための一対の外気吸引ファン33,34と、電気ヒーター35とから構成される。
また、ヒートポンプHは、圧縮機36および冷媒タンク37と、膨張弁40と、蒸発器38および凝縮器39と、これらの装置間に配設される冷媒配管56とから構成されている。
なお、除湿装置Jと吸気口46、およびヒートポンプHと吸気口48との間には、外気中の塵埃を除去するための塵埃フィルター41,42がそれぞれ設置されている。
【0020】
円盤状とされたデシカントローター30は、シリカゲルやゼオライト等の吸着剤から形成されており、正面視で内部が格子状またはハニカム状に区画されている。また、デシカントローター30は、空気に含まれる水分を吸着する処理ゾーンと、当該処理ゾーンにて吸着剤に吸着した水分を排湿する再生ゾーンに区画されており、一定速度で回転することにより、デシカントローター30を形成する吸着剤は吸着処理と排湿処理を交互に繰り返す。
【0021】
外気吸引ファン33によって吸気口46から除湿冷却装置9内に取り込まれた外気は、塵埃フィルター41を通過した後、デシカントローター30の処理ゾーンに導入される。外気中の水分は、外気が処理ゾーンを通過する際に吸着剤に吸着する。処理ゾーンを通過した除湿空気は、蒸発器38によって冷却され、除湿冷却空気となって排気口47から除湿冷却装置9外に排出される。
【0022】
一方、外気吸引ファン34によって吸気口48から除湿冷却装置9内に取り込まれた外気は、塵埃フィルター42を通過した後、凝縮器39によって加熱される。凝縮器39によって加熱された加熱空気は、電気ヒーター35によってさらに加熱された後、デシカントローター30の再生ゾーンに導入される。再生ゾーンでは、加熱空気が吸着剤から水分を吸収(脱着)する。水分を吸収した加熱空気は、排気口49から除湿冷却装置9外に排出される。
【0023】
ここで、空気の加熱・冷却を行うヒートポンプHの作用について説明しておく。
冷媒タンク37内の冷媒液は、膨張弁40を通過することにより蒸発しやすい状態になるまで減圧された後、蒸発器38において、デシカントローター30の処理ゾーンから排出された除湿空気から熱を吸収して低温・低圧の冷媒ガスとなる。冷媒ガスは、圧縮機36で圧縮されて高温・高圧の冷媒ガスとなり、凝縮器39に送られる。凝縮器39において、冷媒ガスは、デシカントローター30の再生ゾーンに送給される空気に放熱して液化する。液化した冷媒液は、冷媒配管56を通って冷媒タンク37に蓄えられる。
【0024】
本実施形態では、コンプレッサーを使用しないので、第一の実施形態に比べて消費電力を低減させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、第一の実施形態では、冷却装置と除湿装置とを別体としているが、一体化してもよい。また、第二の実施形態では、除湿装置とヒートポンプとを一体に形成しているが、別体としてもよい。要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【実施例】
【0026】
第二の実施形態で説明した空調装置を用いて実証実験を行ったので、その結果について以下に示す。ただし、以下の実施例では、測定場所の気流変化により、±2℃程度の温度変動があったことを付記しておく。
【0027】
[実施例1]
噴霧ノズルは6個とし、1個当たりの噴霧量は60cc/min、水温は19℃であった。一方、除湿空気は、送風量2m/min、温度26.5℃、相対湿度3.3%、絶対湿度0.7g/kgとした。また、実験時の外気温は、28.8℃であった。
上記条件下において、本発明を実施した結果、噴霧装置から2m程度離れた位置における周辺温度は14.7℃であった。
[比較例1]
外気温28℃、その際の相対湿度を82%として、湿球温度を空気線図から求めると、25.5℃となる。湿球温度は気化による最低温度であり、大気中に噴霧水のみを噴射した場合の周辺温度に相当する。
【0028】
[実施例2]
噴霧ノズルは6個とし、1個当たりの噴霧量は60cc/min、水温は19℃であった。一方、除湿空気は、送風量2m/min、温度28.6℃、相対湿度2.9%、絶対湿度0.7g/kgとした。また、実験時の外気温は、31.5℃であった。
上記条件下において、本発明を実施した結果、噴霧装置から2m程度離れた位置における周辺温度は16.2℃であった。
[比較例2]
大気中に噴霧水のみを噴射した場合について、外気温33.5℃、その際の相対湿度を68%として、湿球温度、即ち気化による最低温度を空気線図から求めると、28.3℃となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る空調機の第一の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1における除湿装置と冷却装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る空調機の第二の実施形態を示すブロック図である。
【図4】図3における除湿冷却装置のブロック図である
【符号の説明】
【0030】
1,8 噴霧装置
1a,8c 噴霧ノズル(噴霧部)
1b 空気ノズル(送気部)
2 冷却装置
3 除湿装置
4 コンプレッサー
5 水槽
6 浮き
7 加圧送水ポンプ
8a 筒体
8b 送気ファン(送気部)
8d ヘッダー
9 除湿冷却装置
11 熱交換器
12 冷凍機
13,40 膨張弁
14 調整弁
15 塔
17,18 四方弁
19,41,42 塵埃フィルター
20 ドレン水フィルター
21,22 逆止弁
23 空気フィルター
24 空気流量計
30 デシカントローター
31 駆動ベルト
32 モーター
33,34 外気吸引ファン
35 電気ヒーター
36 圧縮機
37 冷媒タンク
38 蒸発器
39 凝縮器
45,47,49 排気口
46,48 吸気口
51,52,53,54 配管
55,56 冷媒配管
H ヒートポンプ
J 除湿装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外用または少なくとも一部が屋外に開放されている室用の空調機であって、
大気中に噴霧水を噴出する噴霧部および当該噴霧水に向けて除湿空気を送気する送気部とを有する噴霧装置と、前記送気部に送給する除湿空気を調製する除湿装置とを備えることを特徴とする空調機。
【請求項2】
前記除湿装置は、吸着剤を使用した吸着式除湿装置であることを特徴とする請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
屋外用または少なくとも一部が屋外に開放されている室用の空調方法であって、
大気中に噴出される噴霧水に除湿空気を送気接触させることで、当該噴霧水による気化冷却を促進させることを特徴とする空調方法。
【請求項4】
前記除湿空気は、吸着剤を使用した吸着式除湿装置によって調製されることを特徴とする請求項3に記載の空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−115335(P2009−115335A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285796(P2007−285796)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(391043505)アイスマン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】