説明

空調用風管

【課題】本発明は、不織布を用いることにより、敷設した風管全体から空調された空気を透出させることによって、室内の温度、湿度等の空調状態を均一に保ち、また、高い耐久性を有して、くり返しの使用が可能な空調用風管を提案する。
【解決手段】本発明の空調用風管は、通気性を有する不織布2と、樹脂製のテープ状のスプリットヤーンを交差させて成る補強シート3とを重ねて重合シート4を構成し、該重合シートを円筒状に形成して風管を構成し、この風管の一端を封止し、また他端に空調機器への接続機構を設けることにより、上記課題を解決している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、暖房装置または冷房装置である空調機器からの空調用空気を、温室等の室内において均一に吹出させて、室内の温度、湿度等を調整することができる空調用風管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば園芸作物の栽培用温室や温度や湿度を一定に保つ必要がある倉庫などにおいて、所定の位置に固定した空調装置から温室内の複数の位置に空調用空気を吹出させる構造としては、たとえば、空調装置に複数の塩ビ管などの風管をとりつけ、この風管端部に吹出し口を設けることにより、温風等を所定の位置まで導き、吹出させる方法が採用されている。また、その他、ポリエチレン製インフレーションフィルムを円筒状に形成して風管とし、一端を空調装置に接続し、他端を封止して、風管が膨らんだ状態で所定の箇所に孔を空け、温風等を吹出させる方法が選択される場合もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の方法によっては、風管から吹出す空調用空気は、位置及び角度が固定された吹出し口から送られるために、空調効果の偏りができ、室内全体の調整を均一に行うことは難しい。特に、温室に使用する場合には、吹出し口の位置及び角度を調節しないと、特定の吹出口から勢いよく吹出した温風が直接、栽培作物に当たり、葉焼け等の問題を生じさせる場合もあった。
【0004】また、上記したインフレーションフィルムを用いる場合のように、風管の敷設現場で孔を開ける場合は、上記したように開口場所や開口角度の問題に加えて、開口径や開口数によって送風される空気の風圧との関係が問題となり、送風が不安定となる場合が有り得る。さらに、インフレーションフィルムは、主として使い捨ての風管であり、秋季、冬季に毎年、敷設作業を行わなければならない繁雑さがあるほか、使用を終えたフィルムの廃棄物処理の問題もあった。
【0005】そこで、本願発明の目的は、通気性を有する不織布を用いることにより、敷設した風管全体から空調された空気を透出させることによって、室内の温度、湿度等の空調状態を均一に保ち、また、高い耐久性を有して、くり返しの使用が可能な空調用風管を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の空調用風管は、前述の従来の問題点を根本的に改善したものであって、通気性を有する不織布と、樹脂製のテープ状のスプリットヤーンを交差させた補強シートとを重ねて重合シートを構成し、該重合シートを円筒状に形成するとともに、一端を封止し、他端に空調機器への接続機構を設けることによって、上記課題を解決している。
【0007】また、効率的に空調用空気を透出させるために、前記風管の下面を通気性を有さない樹脂シートで構成する。また、敷設場所の形状に適宜合わせるために、風管を各種形状のダクトパーツを組み合わせることにより形成可能な構成とすれば便利である。さらに、前記風管の敷設作業を簡単にするために、空調機器と風管間、または各ダクトパーツ間の接続機構をベルベットファスナーを用いて構成することもできる。円筒状にするためには、重合シートを折半して縫製してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の第1実施例を図1乃至図3R>3に基づいて説明する。本実施例の風管は、温室に用いられる温風発散用の風管である。図1は風管の構造を説明する一部断面斜視図、図2は風管を構成する各種ダクトパーツの説明図、そして図3は同風管を敷設した状態の説明図である。
【0009】風管1は、図1に示すように、不織布2の外面にテープ状のスプリットヤーンを交差させた補強シート3を重ねて成形した重合シート4と、通気性のない合成樹脂製シート5とを筒状に貼りあわせて構成される。
【0010】不織布は、ポリプロピレン製の30〜100g/m2 目付のものが使用され、所定の通気性を有する。また、補強シート3はポリプロピレン製のテープを格子状に編んだシートであって、引っ張り強度に優れたシートであり、本実施例では、500デニールのスプリットヤーンが選択される。
【0011】これら不織布2と補強シート3は、両者を重ねた状態で、熱を加えながら加圧することで溶着し、重合シート4を形成することができる。そして、重合シート4と同寸の幅を有する合成樹脂性シート5を重ね、これら長手方向端部4a、5aを縫合することにより、筒状の風管1が形成される。なお、合成樹脂シート5は、通気性を有さず、風管1が敷設された際、直接地面に接するために、地面との摩擦により破れない程度の強度を有するシートが選択される。
【0012】以上説明した風管1は、各種形状のダクトパーツを組み合わせて、所定の管路に敷設される。図2にこれら各種ダクトパーツを説明する。同図(a) に示すダクトパーツは、両端が開放された直線ダクトパーツ11Aである。この直線ダクトパーツの一端内周面にはテープ状のベルベットファスナー雄12aを取り付けており、他端外周面には同様にベルベットファスナー雌12bを取り付けている。複数の直線ダクトパーツ11Aを、ベルベットファスナー12a、12bを用いて順次連結していくことにより、敷設する風管1の長さを調節することができる。
【0013】同図(b) に示すダクトパーツは、一端が封止された終端ダクトパーツ11Bであって、風管1の敷設最終端に必ず連結される。ダクトパーツ11Bの開放端の内周面には上記の直線ダクトパーツ11Aと同様に接続用のベルベットファスナー雄12aが取り付けられる。
【0014】さらに、同図(c) と同図(d) に示すダクトパーツは、それぞれ温風器から地面側に風管1を降ろすS字ダクトパーツ11C、角部に用いられるL字ダクトパーツ11Dである。これらダクトパーツ11C、11Dを用いることにより、風管1を折ることなく、温室のレイアウトに合わせて配置することができる。さらに同図(e) に示すダクトパーツは、風管1を分岐させるT字ダクトパーツ11Eであり、これを用いることにより、風管1のさらに木目細い敷設が可能となる。いずれのダクトパーツ11C、11D、11Eも温風入力側の開放端内面にベルベットファスナー雄12aが取り付けられ、温風出力側の開放端外面にベルベットファスナー雌12bが取り付けられている。
【0015】図3に示すように、以上説明した各種ダクトパーツ11を組み合わせ、一端が開放端1aとなり、他端側が封止端1bとなる風管1を構成する。そして、温室20内において、該開放端1aを温風器21の送風ダクト21aに接続して使用される。風管1は、温室20の栽培植物Pの載置台22を囲むように、地面G上に所定の経路で敷設される。
【0016】風管1は、前述のごとく、上側が不織布とスプリットヤーンとを重ねた、通気性を有する重合シート4で構成される。通常の状態にあっては、風管1は自重で潰れシート状に畳まれた状態となっているが、温風器21の送風ダクト21aから所定の風量を送風すると、風圧で円筒状に膨張する。そして、さらに所定の圧力を超えると、重合シート4が風管1内の温風を透出させ、風管1の全路に渡って暖気を発生させる。
【0017】風管1の下面は通気性を有さない樹脂シート5であるため、温風器21から供給される暖気は、効率良く風管1から発散される。温風器21は温度設定が可能なサーモスタットを有しており、図示しない温度センサーから送られる情報に基づいて温室20内の温度を一定に保つように運転が制御される。なお、暖房の必要がない夏季等においては、地面や通路に空気を抜いた状態で畳んでおけば、場所をとらず、そのまま放置しておくことができる。
【0018】上記実施例においては、風管1の下面に通気性のない合成樹脂シート5を使用したが、上面、下面とも不織布とスプリットヤーンからなる重合シート4を貼りあわせて風管1を構成してもよい。また、風管1を構成する各ダクトパーツ11の接続機構として、実施例ではベルベットファスナー12a、12bを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複数のクリップを用いて各ダクトパーツを気密に接続する等の構造としてもよい。
【0019】図4乃至図6を用いて、本発明の風管による効果を調べる実験を説明する。図4は、同実験に用いた風管の配管の摸式図である。図5は、図4に示す各温度測定点における温度測定表、さらに図6は温室の設定温度に対する実際温度の経時変化を示したグラフである。
【0020】図4に示すように、この実験例では、長さ30m、幅11メートルの広さを有する温室20の隅部に温風器21を配置し、温風器21の2つの送風ダクト21a、21aに2系統の風管1、1を接続している。それぞれの風管1、1は、温室20の壁面に沿って、栽培植物の載置台22を囲むように敷設している。これら風管1、1は、直線ダクトパーツ11Aの他、角部にL字ダクトパーツ11D、端部に終端ダクトパーツ11Eを用いて構成している。
【0021】本実験では、50g/m2 目付きの不織布、500デニールのスプリットヤーンからなる風管1を用いている。また、温風器21は50m3 /分の送風能力を有するものを用いている。
【0022】一方、比較例として従来使用されていたインフレーションフィルム風管(以下、従来型風管という)を、図4の風管1と同様に敷設し測定する。実験に使われる同フィルムは厚さ60μmのポリエチレン製フィルムであり、10cm〜15cmの間隔で複数の小穴が開けられ、これら小穴から温風が吹出す構造を有する。
【0023】図5に示す温度分布表、図6に示す温度の経時変化グラフは、いずれも、(a)が本発明の風管1を用いた場合の実験結果を、(b) が上記した従来型風管を用いた実験結果を示す。
【0024】温室内の温度分布については、図4(a) 、(b) を比較すれば自明なごとく、設定温度11℃に対し、いずれの場合も温室壁面部(測定点■〜■、■〜■)で10℃〜12℃程度とほぼ目標温度を達成できているが、熱がこもりやすい温室中央部(測定点■〜■)では、従来型風管が13℃〜14℃と高温になってしまうのに対して(同図(b) 参照)、本発明の風管1を使用した場合は10℃〜12℃を維持しており(同図(a) 参照)、良好な温度分布が達成されている。
【0025】また、測定点■における温度変化を示す図6R>6(a) 、(b) を比較すれば、いずれの場合も、温風器21のサーモスタットの作動により温度変化があるが、従来型風管を用いた場合は温度変化が10℃〜14℃と大きく振れるのに対して(同図(b) 参照)、本発明の風管1を使用した場合は、10℃〜12℃と温度変化が小さく(同図(a) 参照)、経時的にも設定温度の維持性能に優れることがわかる。
【0026】このように、本発明の風管1を用いて温度管理を行うことで、空間的にも、経時的にも、温室の室温を均一な状態に保つことができ、空調用風管として良好な効果を有することがわかる。また、風管の配置は温室側面だけでなく、内部に設置してもよい。
【0027】なお、上記実施例においては、当該風管を温風器に接続して温度管理を行う場合について説明したが、当該風管の使用用途はこれに限られるものではなく、冷房機器や乾燥器を用いて空調を行う場合や、さらに温室以外に、倉庫など温度、湿度管理を行う必要のある場所で使用され得る。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の空調用風管は敷設した管路全体から空調用空気を透出させるために、室内の温度、湿度等の空調状態を均一に保ち、特に、空間的、経時的な温度変化を小さくすることができるために、優れた空調効果を得ることができる。
【0029】また、本発明の空調用風管は、スプリットヤーンを交差させたシートを用いて不織布を補強しているために、耐久性に優れ、くり返しの使用を可能とする。そのため、従来の使い捨ての風管に比べて、使用時毎の敷設作業を行う必要がなく、作業効率に優れるほか、廃棄物処理の問題も生じないという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】風管の構造を説明する一部断面斜視図である。
【図2】風管を構成する各種ダクトパーツの説明図である。
【図3】風管の使用説明図である。
【図4】効果測定実験に用いる風管の配管の摸式図である。
【図5】図4に示す各温度測定点における温度測定表である。
【図6】温室の設定温度に対する温度の経時変化を示したグラフである。
【符号の説明】
1…風管
2…不織布
3…補強シート
4…重合シート
5…合成樹脂シート
11A、11B、11C、11D、11E…各種ダクトパーツ
12a、12b…ベルベットファスナー
21…温風器(空調機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 通気性を有する不織布と、樹脂製のテープ状のスプリットヤーンを交差させた補強シートとを重ねて重合シートを構成し、該重合シートを円筒状に形成して風管を構成するとともに、該風管の一端を封止し、かつ該風管の他端に空調機器への接続機構を設けたことを特徴とする空調用風管。
【請求項2】 前記空調用風管の地面に対面する下面側は、前記不織布と前記補強シートとを重ねた重合シートに換えて、通気性を有さない樹脂シートを用いたことを特徴とする空調用風管。
【請求項3】 前記空調用風管は、両端が開放された直線ダクトパーツ、S型ダクトパーツ、L字型ダクトパーツ、T字型ダクトパーツ、一端が封止された終端ダクトパーツのいずれかを組み合わせて構成されることを特徴とする第1または第2請求項記載の空調用風管。
【請求項4】 前記接続機構は、前記風管または前記ダクトの開放端にとりつけたベルベットファスナーであることを特徴とする第1乃至第3請求項のいずれかに記載の空調用風管。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平9−187174
【公開日】平成9年(1997)7月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−3795
【出願日】平成8年(1996)1月12日
【出願人】(000183657)出光石油化学株式会社 (26)