説明

空調装置及びこれを用いた建物の空気循環システム

【課題】
大量の地下水を用いることなく熱効率性に優れるとともに、省エネルギー並びに環境負荷の軽減を図りながら建築物の温湿度制御や空気清浄化を行なうことのできる空調装置を提供する。
【解決手段】
所定温度の冷水又は温水を貯留する略円筒状の熱交換タンク21と、熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管22及び内筒管23からなる二重管構造とを備え、前記二重管構造の外筒管と内筒管間に形成される空気流路に供給される室内空気を熱交換タンク内の冷水又は温水と熱交換させてその内筒管内に向けて排出するように空調装置20を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般住宅などの住環境において、室内へ導入する空気の加熱冷却、清浄化、除加湿などを行なう空調装置及びこれを用いた建物の空気循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模で温室効果ガスの排出量が増えている。一方、日本では産業部門は減少傾向にあるが、民生部門の排出量は1990年から15年間で44%増となっている。
また、昨今では太陽光や風力発電などによる省エネルギーが進んでいるが、余りにも恵まれた生活環境に慣れ過ぎて地球環境の改善は必要と考えていても、なかなか効果的な施策を講じられないのが現状である。
一方、従来から地下水や地熱などの自然エネルギーを熱源として利用することにより、空調用エネルギーの消費量を削減するようにした空気循環システムが提案されている。例えば、特許文献1(特開2000−97586号公報)には、熱交換器となる地中パイプを埋設し、地上に設置した空調機の熱源設備(ヒートポンプ)とパイプとの間で水を循環させるように構成した建物の自然力利用空調システムが記載されており、地中パイプが埋設された地盤中では、年間を通じて温度が15℃前後に維持されるため、夏期には、地中パイプを介して冷却された空気が室内に導入され、冬期には、加熱された空気が室内に導入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−97586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の地熱利用空調システムでは、地中に埋設した地中パイプを地熱交換器として用いているため、地熱と水の熱交換の効率が悪いという問題があった。
この問題を解決するには、地中深部までパイプを埋設させたり、大径のパイプを用いたりするなどして、より多くの水を循環させ熱効率を高めることも考えられるが、大型ポンプ設置の必要性が生じ、結果的に消費エネルギーの削減効果が低下してしまうという欠点があった。
また、空気中の塵埃除去などの清浄化、建物内の除湿なども行うことができず、種々の問題点が残されていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、大量の地下水を用いることなく効率性に優れた空調装置を提供するとともに、自然エネルギーの利用並びに環境負荷の軽減を図りながら、建物内の温湿度制御や空気清浄化、徐加湿などを行なうことのできる空調装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、この空調装置を用いた建物の空気循環システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明の空調装置は、所定温度の冷水又は温水を貯留する略円筒状の熱交換タンクと、前記熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管及び内筒管からなる二重管構造とを備え、前記二重管構造の外筒管と内筒管間に形成される空気流路に供給される導入空気を前記熱交換タンク内の冷水又は温水と熱交換させて前記内筒管内に向けて排出するように構成される。
【0007】
(2)本発明は前記(1)の空調装置において、建物内の天井部などから取り入れられた導入空気を、前記冷水又は温水により冷却又は加熱された外筒管内壁表面や外筒管底の溜まり水に接触させて、導入空気を清浄化するようにしたことを特徴とする。
【0008】
(3)本発明の空調装置を用いた建物の空気循環システムは、前記(1)又は(2)の空調装置における冷水又は温水の供給源を建物近傍から採取される地下水とするとともに、建物内への導入空気が供給される空気流路に設けられたヒートポンプなどの温度調整装置に前記空調装置を直列配置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定温度の冷水又は温水を貯留する略円筒状の熱交換タンクと、前記熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管及び内筒管からなる二重管構造とを備え、前記二重管構造の外筒管と内筒管間に形成される空気流路に供給される導入空気を前記熱交換タンク内の冷水又は温水と熱交換させてその内筒管内に向けて排出するので、大量の地下水を用いることなく経済的に運用して熱効率性に優れた空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る空調装置を用いた建物の空気循環システムの説明図である。
【図2】実施例の空調装置を用いた空調循環システムが適用される建物の平面図である。
【図3】実施例の空調装置の概略説明断面図である。
【図4】(a)は実施例の空調装置の上段部分の平面図、(b)は実施例の空調装置の下段部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の空調装置は、所定温度の冷水又は温水を貯留する略円筒状の熱交換タンクと、前記熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管及び内筒管からなる二重管構造とを備え、前記二重管構造の外筒管と内筒管間に形成される空気流路に供給される導入空気を前記熱交換タンク内の冷水又は温水と熱交換させてその内筒管内に向けて排出する。これによって、深度10m〜100mでは年間を通じて15〜17℃と一定している地下水を利用することによって、家中を夏涼しく冬暖かくすると共に、導入空気の清浄化や湿度の調整などを行って、自然エネルギーの有効利用が実現でき、時代の要請に応じた、健康的で快適な住生活を可能とすることができる。
【0012】
空調装置は、夏季の高温多湿状態、冬季の低温乾燥状態に対応して室内空間を快適な環境に維持するための装置であり、当該空間内における空気の温度、湿度および清浄度を所望範囲に調節する機能を有している。なお、空気の清浄度や湿度を調節するために、一般に各種フィルタや加湿機構などを併用、付加することもできる。
【0013】
熱交換タンクは、建物近傍で採取できる地下水などの冷水又は温水を貯留させるためのタンクであって、その外壁周囲をグラスウールやウレタンフォームなどの断熱材で被覆した金属管やプラスチック管を用いることができる。
熱交換タンクは、その内部に貯留する冷水又は温水を管理するための水位計や水温計などの計器類を備えるとともに、タンク内に取り込む地下水などの供給管とタンク内の冷水又は温水の排出管及びこれらの流量を制御するための制御弁や開閉弁を設けることができる。
【0014】
二重管構造は、前記熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管及び内筒管からなるパイプ状のものであって、この外筒管の外周に貯留される冷水又は温水(水温が年間を通じて約15℃前後の地下水など)を、外筒管と内筒管との間隙(空気流路)を流れる導入空気と熱交換させることによって、空気を所定温度に維持させる冷暖房効果や、導入空気中の汚れを外筒管内壁へ付着させたり溜まり水へ吸収させて除去する空気清浄化効果が付与されるようになっている。
【0015】
なお、前記熱交換タンク、二重管構造に供給又は排出される空気や地下水は空気循環システムを構成するファンユニットや、地下水の揚水ポンプを介して輸送され、建物全体の空気フローや水の流れを管理する制御部によって、ファンユニットやポンプ、各制御弁などが制御されるようになっている。
【0016】
本実施形態の空調装置は、建物内の天井部などから取り入れられる導入空気を、前記冷水又は温水により冷却又は加熱された外筒管内壁表面や外筒管底に溜まっている水(溜まり水)の水面に接触させて導入空気中の汚れを取り込み、これを溜まり水の排水と共に外部に排出する排出管を前記二重管構造の底部に設けることができる。
これによって、熱交換タンクの外筒管(例えば250mmφ)と内筒管(150mmφ)の間隙(空気流路)を下側に所定流速(例えば毎秒2.65mの流速)で導入空気を流通させることによって、導入空気中に含まれるごみ、塵、花粉などを、二重管構造のパイプ下部に溜まる溜まり水とともに排出させ、室内に導入される空気を清浄化することができる。
【0017】
さらに、本実施形態の建物の空気循環システムは、前記空調装置における冷水又は温水の供給源を建物近傍から採取される地下水や冷加熱排水とするとともに、建物内の室内空気が供給される空気流路に設けられたヒートポンプなどの温度調整装置に前記空調装置を直列配置させたことを特徴とする。
これによって、建物の屋根面などにおける冬の暖気や夏の夜間冷気を有効に取り込みつつ、ヒートポンプの利用などを組み合わせることで経済性に優れた自在の空調が可能となる。これにより、建物内を快適環境に保つことが可能となる。
なお、空調装置は、工場などにおけるスポットクーラーとして利用することもできる。
【0018】
空気循環システムは、建物内の空調システムとして適用することができ、建物の構造は木造、鉄骨造り、RC構造などいずれにも可能である。建物としては、一般住宅、各種施設、店舗、事務所等が挙げられる。
このような空気循環システムは、法的に建築可能な敷地ならばどこでも設置可能であるが、敷地又は周辺に地下水が利用できることが望ましい。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
以下、図面を参照して、本発明の一実施例に係る空調装置を用いた建物の空気循環システムについて説明する。
図1は、実施例の空調装置を用いた建物の空気循環システムの説明図である。空調装置20を用いた建物の空気循環システム10は、図示するように、一般住宅などの建物11に適用される。建物11の床下部分となる地盤上には蓄熱砂層12が配置されている。この蓄熱砂層12の内部には、井戸から汲み上げられた地下水を、熱交換タンク及び冷温水熱交換器18を通過させて流すための地下水パイプ13が蓄熱砂層12中をジグザグ状に這うように埋設されている。
【0020】
建物11は、その天井部分に屋根裏空間を設けた2階建て構造であって、ソーラブレス11aと呼ばれる構成の屋根構造と屋根裏給排気構造14を備えるとともに、その一階及び二階の各床面から所定の空気を室内に供給するための床吹出口15と、各天井面に設けられ室内空気を排気するための天井排気口16とを有している。
【0021】
蓄熱砂層12は、床下に川砂などを60cmの厚みに敷いて形成される。この蓄熱砂層12の内部には、ポリブテンパイプ(口径16mm)が、図2の平面図に示すように、60cmピッチにジグザグ状に配管されている。また、蓄熱砂層12の中間部分には、給気パイプ(vu200mmφ)が配管されている。
【0022】
なお、ソーラブレス11aは、建物の壁面や屋根面の夏期における太陽熱による熱気を建物内に侵入させない工法として、従来より「通気工法」として採用されている。本実施例においてもこの工法を採用することができ、図1のように、冬期において、日中の屋根面(通常ガルバー鋼板で葺かれる)の温度、即ち、ソーラブレス11a内の温度が上昇したときは、パイプファン14bで強制的に建物内に吸引させる。また、夏期において、夜間放射冷却による冷気も同じく建物内に吸引する。
これらのコントロールは、小屋裏に設置された集合管ユニット17が温度センサーを介して行なう。
【0023】
屋根裏給排気構造14には、屋根面から取り入れられた一部の空気を外部に排出させるためのソーラブレスダンパ14aや、屋根裏に空気を吸引するためのパイプファン14bが配置されており、このパイプファン14bにより吸引された空気や天井排気口16からの空気を取り込むための集合管ユニット17を備えている。
この集合管ユニット17を介して取り込まれた空気は、後述する空調装置の給気管に供給されて、所定の熱交換処理や清浄化処理がなされた後、その排気管から排出された空気が床吹出口15から室内に向けて吹き出されることで、建物11内の空気循環がなされるようになっている。
【0024】
本実施例の空調装置を用いた建物の空気循環システム10(図1〜図4に示す空気循環システム)において、屋根裏の集合管ユニット17は、2階3室の空気及び屋根裏の空気を、エアサイクルダクト17aを通して、エアサイクルダンパー17bを経て(本システム24時間換気を併用しているため換気量計算に基づき必要時間だけ外気取り入れが必要となる)、ファンユニット17cに送られる。
なお、エアサイクルダンパー17bは、外気取入口17dに接続されており、必要に応じてエアサイクルダンパー17bを操作することによって、所定量の外気を取り入れることができる。
【0025】
空調装置20の交換タンク21内に配置された、外筒管22と内筒管23との間隙(空気流路)Sを下降して、内筒管23の下部に開けられた通気孔23aより吸引された空気Aは、内筒管23内を上方向Uに流れ、冷温水熱交換器18に(この後冷暖房効果を大きくしたいときはヒートポンプ19を直列に設置してこれを経由しながら)床下に埋設された給気パイプ15aを経由して流れる。
次に、床吹出口15より1階床面より冷風(夏期)・温風(冬期)を吹き出し、これを天井吸引口16や、2階の床吹気口を経て屋根裏に排出させる。
このような、建物11内の空気を床下から屋根裏まで循環させるための手段は、ファンユニット17c内に設置したシロッコファン(100V−150W有効排気量600m3/H)などにより得られる。
【0026】
ここで、空調装置20は、建物11の屋根裏内に配置された集合管ユニット17を介して導入された空気を、年間を通して水温がほぼ一定の地下水と熱交換させるための装置である。
さらに、外筒管22底に溜まっている水(溜まり水W)の水面に接触させて導入空気中の汚れを取り込み、導入空気中に含まれていた塵、埃、臭い、花粉などを、その溜まり水W内に取り込み、空気清浄化、温度調整を行なうための装置でもある。
なお、本実施例では、空調装置20の冷温水熱交換器18に加えて、ヒートポンプ19を直列に設けており、これによって、空調装置20で清浄化して空調処理された空気をさらに温度調節して、季節による温度の変動に柔軟に対応している。
【0027】
空調装置20は、図3及び図4に示すように、シスタンクと呼ばれる所定温度の冷水又は温水を貯留する内径350mmの熱交換タンク21と、熱交換タンク21の中央に同軸状に立設される外径250mm、厚み約10.5mmの外筒管22及び外径150mm、厚み約5.5mmの内筒管23からなる二重管構造と、を、空調装置20の本体20a内に備えている。
熱交換タンク21は、底付きの略円筒状金属容器体であって、その外表面はグラスウールなどの断熱材で被覆され、周囲の屋内空気と断熱されることが好ましい。
なお、所定量、所定温度の地下水を熱交換タンク21内に保持させるために、水位計24やオーバーフロー管21eなどを必要に応じて設けることができる。
【0028】
熱交換タンク21に保持される冷水又は温水は、このタンク上部に設けられた給水管21aより所定量が井戸などの地下水源から給水され、タンク底板21cに設けられた熱交換器導入管21bを介して冷温水熱交換器18へ移送されるか、排水管21dを介して外部へ排水されるようになっている。
なお、建物11の近傍の地下水源に接続する給水管21a及び熱交換器導入管21bの各管路に、必要に応じて、開閉弁や流量制御弁を設けることができる。
これによって、タンク内の水温や水位を検知する計測器のデータに基づいて、所定の間欠的、又は連続的な地下水の流れを熱交換タンク21内に効率的に形成させることが可能であり、これら開閉弁などの制御操作をコンピュータなどからなる制御装置により行なうことができる。
【0029】
外筒管22と内筒管23との間隙(空気流路)S及び熱交換タンク21は、その上部が、密閉された空調装置20の本体20a上部に開放されるとともに、それぞれの下端は、タンク底板21cで水密状態に封止されている。
空調装置20の本体20a上部には、その側壁に内筒管23の上端が湾曲して貫通形成された排気管20bが配置されるとともに、集合管ユニット17に接続されて供給される空気をタンク内の本体20a上部に導入するための給気管20cが設けられている。
なお、タンク底板21cに近接した内筒管23下端には、上中下3つの通気孔23aが内筒管の両面に設けられており、外筒管22と内筒管23との間隙(空気流路)Sを下降する空気Aが、これらの通気孔23aを通って内筒管23の外側から内側に流入して、内筒管23内に、熱交換、清浄化された空気の上昇流Uが形成されるようになっている。
内筒管23上部は、本体20a上部の排気管20bに連接されており、冷温水熱交換器18やヒートポンプ19に空調装置10で処理された空気が供給される構造にしている。
【0030】
なお、タンク底板21cで封止された外筒管22及び内筒管23の底部には、導入空気中の汚れを吸収して汚れた溜まり水Wを排出するための汚水排出部25が設けられており、逆U字状に配置された水抜き用U字状パイプ25aを介して、U字状パイプ上端を超えた水位の溜まり水Wが外部に排出されるようになっている。
空調装置10は、熱交換タンク21及び外筒管22、内筒管23からなる三重パイプ構造の形態をなしており、熱交換タンク21を形成するパイプはVU350mmφのものを用いており、地下水を貯留する貯留タンクの役目をする。
外筒管22を形成する中間のパイプはvu250mmφのもの、内筒管23を形成する内側のパイプはVU150mmφのものを用いており、内筒管23においてはファンユニットのファンで吸引するために、上方向に空気(U)は流れ、外筒管22においては、パイプ室を経由した空気が下方向に流れる(A)ようになる。
また、熱交換タンク21及び外筒管22、内筒管23からなる三重パイプの底部は、タンク底板21cにより水密が保たれている。
なお、タンク底板21cで封止された外筒管22及び内筒管23の底部の溜まり水Wは、水抜き用のU字状パイプ25aを介して自然排水される。
また、間隙(空気流路)Sには、外筒管洗浄給水管21fを介して定期的に洗浄水が流され、外筒管22の内壁やタンク底板21cに付着した汚れの洗浄を行うようになっている。
【0031】
以上説明したように、本実施例の空調装置20及びこれを用いた建物の空気循環システム10は、季節に拘わらず一定温度が保たれている、深度10m〜100m(30m以深は生活用水併用)の地下水を利用して、この自然エネルギーを住宅や生活環境に取り込むことによって、時代の要請に通じた省エネルギーで快適、健康的な住生活を可能とすることができる。
すなわち、地下水を空気循環システム10に取り込んで利用することによって、家中を夏涼しく冬暖かくすると共に導入空気の浄化、温度や湿度の調整ができる。
また、屋根面からは、冬は暖気、夏は夜間冷気を取り込み、ヒートポンプ19の併用と組み合わせることで、さらに自在の空調が可能となる。
【0032】
このように室内空気を夏涼しく、冬は暖かくし、かつ空気清浄化を行うことのできる空気調整機能を有した本実施例の空気循環システムは、熱交換タンク21を有した空調装置20を備えており、以下に示す(A)熱交換機能、(B)空気清浄化機能、(C)湿度調整機能を有する。
【0033】
すなわち、
(A)熱交換機能
空調装置20は、エアサイクルダクト17aから導入される夏の暖かい空気、冬の冷たい空気を、外側のタンク部(熱交換タンク21)に貯められた地下水の間を通過させて、暖かい空気は冷たく、冷たい空気は暖かく熱交換させる機能を備える。
【0034】
(B)空気清浄機能
実施例のファンユニット17cを駆動させて、空調装置のシスタンクとなる外筒管22(中間パイプ半径:0.125m)と内筒管23(内側パイプ半径:0.075m)の間隙(空気流路)Sを下方に空気を流通させ(A)、導入空気中のごみや塵、花粉などを、外筒管22の内壁や内筒管23の外壁に付着させるとともに、パイプ底部の溜まり水に吸収させて清浄化する。
【0035】
(C)湿度調整機能
大気中の夏の湿度は日中50%前後、夜間80〜90%となる。また、冬の日中には10〜20%、夜間は50〜60%が晴天時の平均湿度となることが多い。この夏、冬の外気湿度は外気を熱交換タンク21に通過させることによって平準化され夏期は60〜70%程度となり、夏のべとべと、冬のからからが緩和され快適となる。
【0036】
こうして、上記(A)〜(C)の機能を有した空調装置20においては、蓄熱砂層に年間を通して(春秋の一時期を除いて)地下水を供給することが必要となる。通常の場合、熱交換のための地下水をタンク内に流し続けることは、揚水ポンプを連続運転することになり不経済となる。このために熱交換タンク21を設け、このタンクの水圧により冷熱交換器を経由させ蓄熱砂層の配管にゆっくり流し、最後に池などに放流する。
このように地下水を無駄なく活用して、省エネルギー効果や空気清浄化効果を奏することができる。
【0037】
空調装置20を用いた建物の空気循環システム10は、通常行われる局所冷暖房ではなく、図1に示すように、建物全体に清浄化された冷・暖気をゆっくりサイクルさせるため、建物が吹き抜きなど開放的であっても、差し支えない。
エアサイクルは、24時間、365日連続(24時間換気のため)運転することにより、建物内の床、壁、天井、家具類などすべてがシーズン毎に床吹出口より吹き出される温度に近い温度を保つことになる。これは、即ち、建物内のすべて質量のある物体を蓄熱体と見做すことができ、快適で健康的な住環境が実現されることになる。
【0038】
このようなシステム設置に係る主たる設備は、地下水源として必要な井戸などの他に揚水ポンプ、ヒートポンプなどであって、その水源の深さや地域、容量などによって、そのイニシャルの設置費用は異なる。
また、ランニングコストに関しては、ヒートポンプを除けば、ファンユニット、排気用ファンなどが主な消費電力源となる。
ファンユニットのファンは、インバータ付きで、4段階に回転数がコントロールされるため、省エネルギー運転が可能である。
したがって、これに揚水ポンプ及びヒートポンプの消費電力を加えても、そのランニングコストを極めて経済的なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、実施例に示したように、熱交換タンク内に貯留された所定温度の地下水など冷水又は温水を介して、導入される室内空気を地下水温度に近い温度まで降温又は昇温させるとともに、空調装置によって清浄化した空気を建築物内に導くことにより、室内の空気調節を行なおうとするものである。
こうして、通常の空調設備における冷熱源および温熱源が不要となるため、省エネルギーが図られることはもとより、消費電力や燃料等の使用量節減が可能であることから、二酸化炭素排出量を大幅に低減可能な建物の空気循環システムを提供できる。
また、本発明によれば、室内空気の清浄化を達成しつつ、コスト低減や効率性に優れた空調装置を提供できるということから、産業上の利用可能性が極めて大きいものといえる。
【符号の説明】
【0040】
10 空気循環システム
11 建物
11a ソーラブレス
12 蓄熱砂層
13 地下水パイプ
14 屋根裏給排気構造
14a ソーラブレスダンパ
14b パイプファン
15 床吹出口
15a 給気パイプ
16 天井排気口
17 集合管ユニット
17a エアサイクルダクト
17b エアサイクルダンパー
17c ファンユニット
17d 外気取入口
18 冷温水熱交換器
19 ヒートポンプ
20 空調装置
20a 本体
20b 排気管
20c 給気管
21 熱交換タンク
21a 給水管
21b 熱交換器導入管
21c タンク底板
21d 排水管
21e オーバーフロー管
21f 外筒管洗浄給水管
22 外筒管
23 内筒管
23a 通気孔
24 水位計
25 汚水排出部
25a U字状パイプ
A 導入空気
S 間隙(空気流路)
U 空気の上昇流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度の冷水又は温水を貯留する略円筒状の熱交換タンクと、前記熱交換タンクの中央に同軸状に立設される外筒管及び内筒管からなる二重管構造とを備え、前記二重管構造の外筒管と内筒管間に形成される空気流路に供給される導入空気を前記熱交換タンク内の冷水又は温水と熱交換させて前記内筒管内に向けて排出することを特徴とする空調装置。
【請求項2】
建物内の天井部などから取り入れられた導入空気を、前記冷水又は温水により冷却又は加熱された外筒管内壁表面や外筒管底の溜まり水に接触させて、導入空気を清浄化するようにしたことを特徴とする請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2の空調装置における冷水又は温水の供給源を建物近傍から採取される地下水とするとともに、建物内への導入空気が供給される空気流路に設けられたヒートポンプなどの温度調整装置に前記空調装置を直列配置させたことを特徴とする建物の空気循環システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251733(P2012−251733A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125166(P2011−125166)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【特許番号】特許第4944265号(P4944265)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(511135994)スミコーホームズ株式会社 (2)
【出願人】(305034203)株式会社ジオパワーシステム (8)
【Fターム(参考)】