説明

空調装置

【課題】冷温水発生機における燃料消費量、及びCO2の発生量を低減し得る空調装置を構成する。
【解決手段】空調装置10を含む空調システム12は、各種の高温炉、鍛造加工装置、鋳造加工装置等の様々な生産設備を有する工場に設置される。空調装置10は、補助熱交換コイル16と主熱交換コイル18を具備し、この中の補助熱交換コイル16には、例えば、前記生産設備を冷却するための冷却水を得る冷却塔24から、冷却水が供給される。一方、主熱交換コイル18には、冷温水発生機14によって生成された冷水、又は温水が供給される。空調装置10に取り込まれた外気は、先ず、前記補助熱交換コイル16に接触して予備的に冷却又は加熱された後、主熱交換コイル18に接触してさらに冷却又は加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り込んだ外気の温度を下降又は上昇させて調和空気として供給する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場において、夏季の冷房や冬季の暖房は、例えば、図4に示すように、空調装置1と、冷温水発生機2とを含んで構成される空調システム3を用いて行われる。
【0003】
ここで、冷温水発生機2は、例えば、液化天然ガス(LNG)や灯油、都市ガス等を燃料として、冷房時に用いられる冷水、又は暖房時に用いられる温水を生成するものとして公知である。すなわち、冷温水発生機2を用いることにより、冷却媒体である冷水、加温媒体である温水の双方を得ることが可能である。
【0004】
一方、空調装置1は、特許文献1の図2にも示されるように、1個の熱交換コイル4と、送風機5とを有する。この中の熱交換コイル4と前記冷温水発生機2との間には、冷温水発生機2から該熱交換コイル4に向かう往路用配管6と、該熱交換コイル4から冷温水発生機2に向かう復路用配管7とが橋架される。
【0005】
図4から諒解されるように、冷房運転を行う場合には、熱交換コイル4に対し、冷温水発生機2から往路用配管6を経由する冷水が供給される。この冷水の温度は、概ね7〜12℃の間である。
【0006】
この冷水は、熱交換コイル4において、空調装置1に導入された外気と熱交換する。例えば、外気の温度が35℃である場合、冷水と熱交換した外気は20℃程度まで温度降下するように制御される。このように温度が降下した外気が、送風機5の作用下に、調和空気(給気)として工場の各所に供給される。
【0007】
その一方で、外気からの熱が伝達された冷水は温度が上昇し、45〜55℃程度の温水となって熱交換コイル4から復路用配管7に排出され、冷温水発生機2に戻される。さらに、該冷温水発生機2にて再冷却されて冷水となり、往路用配管6を経て熱交換コイル4に再供給される。
【0008】
これに対し、暖房運転を行う場合には、冷温水発生機2は、50〜60℃程度の温水を生成する。この温水は、往路用配管6を経由して熱交換コイル4に到達する。
【0009】
熱交換コイル4では、温水と、空調装置1に導入された外気との間で熱交換が行われる。例えば、外気の温度が−5℃である場合、温水と熱交換した外気は43℃程度まで昇温するように制御される。この昇温された外気が、上記同様、送風機5によって調和空気(給気)として工場の各所に供給される。
【0010】
また、外気によって熱が奪取された温水は、その温度が45〜55℃程度に下降する。熱交換コイル4から復路用配管7に排出されて冷温水発生機2に戻された温水は、該冷温水発生機2にて50〜60℃程度まで再加温された後、往路用配管6を経て熱交換コイル4に再供給される。
【0011】
この種の空調装置では、冷房効率や暖房効率に優れていることが要求される。そこで、特許文献2においては、熱交換コイルの下流側に直膨コイルを配置し、これら熱交換コイルと直膨コイルの双方で外気を2段冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭58−135612号公報(特に、第2図参照)
【特許文献2】特許第2643691号公報(特に、段落[0011]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1、2のいずれにおいても、熱交換コイルには冷温水発生機から冷温水が供給されるが、上記したように、この冷温水を得るためにLNGや灯油、都市ガス等が燃料として用いられる。従って、一層低温の冷水や、一層高温の温水を得ようとする場合には、燃料消費量が多くなる。これに伴い、CO2の発生量が増加することになる。
【0014】
CO2は、周知の通り温暖化ガスであるので、その発生を可及的に抑制することが望まれる。しかしながら、特許文献1、2には、如何なる構成を採用すれば冷温水発生機における燃料消費量を低減し得るかについての提案はなされていない。
【0015】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、冷温水発生機における燃料消費量を低減し得、このためにCO2の発生量を低減することが可能な空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明は、取り込んだ外気の温度を下降又は上昇させて調和空気として供給する空調装置であって、
冷却媒体又は加温媒体によって前記外気の温度を予備的に下降又は上昇させる補助熱交換手段と、
前記補助熱交換手段によって温度が予備的に下降又は上昇された外気を、冷却媒体又は加温媒体によってさらに冷却又は加熱することでその温度を下降又は上昇させる主熱交換手段と、
を備え、
前記主熱交換手段による外気の温度変化幅が、前記補助熱交換手段による外気の温度変化幅よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、外気は、補助熱交換手段によって予備的に冷却又は加熱された後、主熱交換手段によってさらに冷却又は加熱される。このため、主熱交換手段の熱交換負荷が少ない。従って、主熱交換手段においては、外気と熱交換を行う前後での冷却媒体又は加温媒体の温度変化幅が比較的小さい。
【0018】
従って、使用済の冷却媒体を再冷却又は再加熱する冷却加熱機構(例えば、熱温水発生機)の負荷も小さくなる。上記したように冷却媒体及び加温媒体の温度変化幅が小さいため、冷却加熱機構で冷却媒体を再冷却する際の温度下降幅、又は加温媒体を再加温する際の温度上昇幅が小さいからである。
【0019】
これにより、冷却加熱機構で燃焼される燃料の量も低減する。すなわち、燃料消費量が低減し、これに伴い、冷却加熱機構からのCO2発生量も低減する。結局、本発明によれば、冷却加熱機構で冷却媒体を再冷却する際、又は加温媒体を再加温する際の燃料消費量を低減することができるとともに、該冷却加熱機構から発生するCO2の量を低減することができる。
【0020】
なお、補助熱交換手段に流通する冷却媒体又は加温媒体と、外気との温度差は比較的小さい。このような場合に、補助熱交換手段を通過する外気の流速が大きいと、外気と冷却媒体又は加温媒体との熱交換が十分に行われない懸念がある。この懸念を払拭するべく、補助熱交換手段を外気が通過可能な第1外気通過面積を、主熱交換手段を外気が通過可能な第2外気通過面積よりも大きく設定することが好ましい。
【0021】
空調装置は、好適には工場に設置される。大多数の工場には、要冷却設備、すなわち、例えば、各種の高温炉や、鍛造加工装置、鋳造加工装置等の様々な生産設備が設置されることが通例である。本発明においては、この種の要冷却設備から排出された使用済冷却水を、冷却媒体又は加温媒体として補助熱交換手段に供給することもできる。この場合、工場の排熱を一層有効に利用することが可能となる。
【0022】
さらに、地下水を冷却媒体又は加温媒体として補助熱交換手段に供給するようにしてもよい。地下水は一般的に約16℃であり、夏季においては冷却塔で冷却して得られた冷却水よりも低温である。従って、例えば、前記冷却水では外気を十分に予備冷却し得ないとき等に補助熱交換手段に地下水を流通することにより、外気を十分に予備冷却することが可能となる。
【0023】
勿論、補助熱交換手段に流通する冷却媒体又は加温媒体を地下水のみとし、冷却塔からの冷却水を補助熱交換手段に流通しないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、補助熱交換手段によって予備的に冷却又は加熱された外気を主熱交換手段によってさらに冷却又は加熱するようにしているので、主熱交換手段を流通する冷却媒体又は加温媒体において、外気と熱交換を行う前後での温度変化幅が比較的小さくなる。このため、冷却加熱機構で冷却媒体を再冷却する際の温度下降幅、又は加温媒体を再加温する際の温度上昇幅が小さくなるので、冷却加熱機構で燃焼される燃料の量を低減し得る。
【0025】
すなわち、本発明によれば、所定の温度の冷却媒体又は加温媒体を得るための燃料消費量を低減することができる。また、燃料の燃焼量が低減するので、燃焼に伴って発生するCO2の量を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調装置を含んで構成された空調システムを模式的に示した全体概略模式構成図である。
【図2】前記空調システムで暖房運転を行う際のフローを模式的に示した概略フロー図である。
【図3】前記空調システムと、補助熱交換コイルを具備しない従来技術に係る空調システムとで主熱交換コイルから導出された加温媒体又は冷却媒体の温度を比較して示す図表である。
【図4】従来技術に係る空調装置を含んで構成された空調システムを模式的に示した全体概略模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る空調装置につき、それを含む空調システムとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る空調装置10を含んで構成された空調システム12を模式的に示した全体概略模式構成図である。この場合、空調システム12は工場に設置されており、前記空調装置10の他、冷温水発生機14を含む。
【0029】
冷温水発生機14としては、上記した従来技術と同様に、LNGや灯油、都市ガス等を燃料として使用する吸収式冷凍機等の従来から公知のものを採用することができる。
【0030】
一方、空調装置10は、外気が導入される上流側から、補助熱交換手段としての補助熱交換コイル16と、主熱交換手段としての主熱交換コイル18と、送風機20とがこの順序でケーシング22内に配列されて構成されている。
【0031】
ここで、工場には、熱処理炉をはじめとする各種の炉や、鍛造加工装置、鋳造加工装置、工業用圧縮エアを生成するためのコンプレッサ、オイルクーラ等の様々な生産設備が設置され、且つ各生産設備には、冷却媒体としての冷却水が流通される。この冷却水が各生産設備から熱を奪取することにより、該生産設備の温度が過度に上昇することが回避される。
【0032】
生産設備から熱を奪取して温度が上昇した冷却水は、冷却塔24に送られる。周知の通り、冷却塔24は、高温となった冷却水を大気に接触させ、これにより該冷却水の温度を下降させるものである。
【0033】
本実施の形態においては、この冷却水が補助熱交換コイル16に対して循環供給される。すなわち、冷却塔24によって冷却された後に冷却水槽に貯留された冷却水は、前記生産設備に再供給される一方で、補助熱交換コイル16に供給される冷却媒体又は加温媒体となる。
【0034】
補助熱交換コイル16には、地下水を冷却媒体として供給することも可能である。すなわち、補助熱交換コイル16には、前記冷却水槽から橋架された往路用予備配管26と、地下水源から橋架された地下水供給用配管28とが第1切換弁30を介して連結される。この第1切換弁30を操作することにより、補助熱交換コイル16に対して供給される冷却媒体を、冷却水槽からの冷却水、又は地下水のいずれかに設定することが可能となる。
【0035】
さらに、補助熱交換コイル16には、冷却水槽に至るまで橋架された復路用予備配管32と、貯水施設33に至るまで橋架された貯水施設行配管34とが第2切換弁36を介して連結される。第1切換弁30及び第2切換弁36は、補助熱交換コイル16に対し、冷却水槽の冷却水を供給する際には該冷却水が冷却水槽に戻り、一方、地下水を供給する際には該地下水が貯水施設33に向かうように操作される。
【0036】
なお、補助熱交換コイル16を流通し、外気と熱交換を行った後の使用済の地下水は、貯水施設33に一旦貯留される。この貯水施設33で砂等の含有物を沈殿させた後の上澄みが、工業用水等として再利用される。
【0037】
このように構成された補助熱交換コイル16の下流側には、上記したように、主熱交換コイル18が配置される。この主熱交換コイル18には、前記冷温水発生機14からの往路用配管38と、該冷温水発生機14に向かう復路用配管40とが橋架される。すなわち、主熱交換コイル18には、冷温水発生機14によって生成された冷水又は温水が、冷却媒体又は加温媒体として流通する。
【0038】
以上の構成から諒解されるように、本実施の形態では、外気は、先ず、補助熱交換コイル16において、冷却塔24にて温度が降下された冷却水で予備的に冷却又は加温され、次に、主熱交換コイル18において、冷温水発生機14にて生成された冷水又は温水によってさらに冷却又は加温される。このため、後述するように、外気の温度変化幅は、補助熱交換コイル16側よりも主熱交換コイル18側の方が大きい。
【0039】
補助熱交換コイル16の熱交換能力は、例えば、主熱交換コイル18の熱交換能力の1/10程度であっても十分である。
【0040】
また、この場合、補助熱交換コイル16と主熱交換コイル18とでは、補助熱交換コイル16の方が大寸法に設定されている。このため、外気が通過することが可能な外気通過面積も、補助熱交換コイル16の方が大きい。例えば、補助熱交換コイル16における第1外気通過面積は、主熱交換コイル18における第2外気通過面積の1.2倍に設定される。
【0041】
空調装置10を構成するケーシング22において、補助熱交換コイル16を収容した部位、及び主熱交換コイル18を収容した部位の各寸法は、これら補助熱交換コイル16及び主熱交換コイル18の各寸法に対応するように設定されている。すなわち、ケーシング22は主熱交換コイル18側で縮小されており、このため、主熱交換コイル18とケーシング22との間にクリアランスが生じていない。従って、補助熱交換コイル16を通過した外気の全量が主熱交換コイル18に向かい、該主熱交換コイル18を通過する。
【0042】
換言すれば、ケーシング22の寸法は、補助熱交換コイル16を通過した外気が主熱交換コイル18のみを通過し得るように設定されている。
【0043】
そして、主熱交換コイル18の下流側には、上記したように送風機20が配置されている。この送風機20は、外気が補助熱交換コイル16及び主熱交換コイル18を通過することで生成した調和空気を、給気として供給するためのものである。
【0044】
本実施の形態に係る空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、空調システム12の運転との関係で説明する。なお、主熱交換コイル18の熱交換能力は、図4に従来技術として示した空調装置1における熱交換コイル4と同一である。
【0045】
はじめに、夏季の冷房運転に関して説明する。
【0046】
夏季の場合、各種の炉、鍛造加工装置、鋳造加工装置等の各生産設備を冷却して冷却塔24に戻った冷却水の温度は、概ね30〜40℃である。この冷却水が、冷却塔24の作用下に25〜35℃程度に温度降下され、冷却水槽及び往路用予備配管26を経由して補助熱交換コイル16に送られる。
【0047】
その一方で、冷温水発生機14は、7〜12℃程度の冷水を生成する。この冷水が、往路用配管38を介して主熱交換コイル18に供給される。
【0048】
およそ35℃の外気は、空調装置10のケーシング22に導入され、最初に補助熱交換コイル16に接触する。
【0049】
上記したように、補助熱交換コイル16の外気通過面積が主熱交換コイル18に比して大きい。しかも、このために、補助熱交換コイル16を通過する外気の流速が主熱交換コイル18を通過する外気の流速よりも小さい。このような理由から、外気は、補助熱交換コイル16を流通する冷却水と効率よく熱交換を行う。
【0050】
冷却水は外気よりも低温であるから、外気から熱を奪取するとともに、これに伴って温度上昇する。すなわち、加温される。補助熱交換コイル16から導出された冷却水の温度は、概ね28〜35℃である。
【0051】
一方、外気は、補助熱交換コイル16を流通する冷却水によって熱が奪取されるために温度が下降するが、冷却水との温度差がさほど大きくないため、その温度降下幅は比較的小さい。
【0052】
温度が下降した外気は、次に、主熱交換コイル18に接触する。この際、上記した理由から、補助熱交換コイル16を通過した外気は、略全量が主熱交換コイル18に到達する。
【0053】
主熱交換コイル18には、上記したように、冷却塔24からの冷却水に比してさらに低温(7〜12℃程度)の冷水が供給されている。この低温の冷水により、外気がさらに冷却される。すなわち、外気の熱が冷水によって奪取され、その結果、外気の温度が一層下降する。
【0054】
なお、主熱交換コイル18の外気通過面積が補助熱交換コイル16に比して小さいため、主熱交換コイル18を通過する外気の流速は、補助熱交換コイル16を通過する外気の流速よりも大きくなる。しかしながら、上記したように、主熱交換コイル18に流通する冷水の温度は、補助熱交換コイル16に流通する冷却水の温度に比して低い。このため、主熱交換コイル18に流通する冷水と、補助熱交換コイル16を通過した外気との温度差が比較的大きいので、外気は、冷水と効率よく熱交換を行う。その結果、主熱交換コイル18における外気の温度下降幅が、補助熱交換コイル16における外気の温度下降幅に比して大きくなる。
【0055】
このようにして補助熱交換コイル16及び主熱交換コイル18によって冷却された外気は、その温度が20℃程度となるように制御される。この20℃程度の外気が、送風機20の作用下に調和空気、換言すれば、給気として工場の各所に供給される。
【0056】
一方、外気と熱交換を行った後に主熱交換コイル18から導出された冷水は11〜18℃程度であり、この温度で、復路用配管40を経由して冷温水発生機14に戻る。すなわち、本実施の形態によれば、冷温水発生機14に戻る冷水の温度を、主熱交換コイル18と熱交換能力が同一である熱交換コイルのみを具備する従来技術に係る空調装置10の12〜19℃よりも低温とすることができる。
【0057】
冷温水発生機14は、11〜18℃で戻った冷水を7〜12℃に冷却して主熱交換コイル18に再供給する。ここで、戻ってきた冷水の温度が低温であるほど、冷温水発生機14が冷却を行うのに要するエネルギの消費量が少なくなる。冷却前後での冷水の温度差が小さいからである。
【0058】
従って、冷温水発生機14で消費される燃料の量を少なくすることができる。また、燃料消費量が低減することに伴い、CO2発生量も低減する。
【0059】
冷却塔24からの冷却水では補助熱交換コイル16での外気の冷却効果が不足する場合、一層低温(一般的には、16℃前後)である地下水を補助熱交換コイル16に導入するようにしてもよい。この際には、第1切換弁30及び第2切換弁36を、地下水が補助熱交換コイル16を流通することが可能であり、且つ補助熱交換コイル16を流通した後の地下水が貯水施設33に貯留されるように切り換えればよい。
【0060】
地下水を冷却媒体として使用した場合、外気と熱交換を行った後の使用済の地下水を貯水施設33に一旦貯留する。地下水には砂等が含まれているので、この貯水施設33で砂等を沈殿させ、上澄みと分離する。このようにして得られた上澄みは、工業用水等として再利用することができる。
【0061】
次に、冬季の暖房運転に関し、図2を参照して説明する。
【0062】
冬季には、上記したような各種の生産設備を冷却して冷却塔24に戻った冷却水の温度は、概ね25〜35℃である。この冷却水が、冷却塔24の作用下に20〜30℃程度に温度降下され、冷却水槽及び往路用予備配管26を経由して補助熱交換コイル16に送られる。
【0063】
その一方で、冷温水発生機14は、50〜60℃程度の温水を生成し、往路用配管38を介して主熱交換コイル18に供給する。
【0064】
この状態で、およそ−5℃の外気が空調装置10のケーシング22に導入され、先ず、補助熱交換コイル16に接触する。
【0065】
この場合には、冷却水が外気よりも高温であるため、冷却水の熱が外気に奪取される。これに伴い、外気の温度が上昇する。一方、熱が奪取された冷却水は温度が降下する。補助熱交換コイル16から導出される冷却水の温度は、概ね15〜25℃である。
【0066】
なお、冬季では、地下水よりも冷却塔からの冷却水の方が高温であるため、補助熱交換コイル16に流通する加温媒体は冷却水の方が好ましいが、地下水が外気よりも高温である場合には、地下水を用いてもよいことは勿論である。
【0067】
温度が上昇した外気は、次に、主熱交換コイル18に接触する。この際にも、補助熱交換コイル16を通過した外気の略全量が主熱交換コイル18に到達する。
【0068】
冬季においては、上記したように、冷温水発生機14が生成した50〜60℃程度の温水が主熱交換コイル18に供給される。この高温の温水により、外気がさらに加温される。すなわち、温水から外気に対して熱が伝達され、その結果、外気の温度が一層上昇する。
【0069】
温水は、補助熱交換コイル16を流通する冷却水に比して高温である。このため、補助熱交換コイル16に接触する外気と冷却水ないし地下水の温度差よりも、補助熱交換コイル16を通過した後に主熱交換コイル18に接触する外気と温水の温度差の方が大きい。従って、外気の温度上昇幅は、補助熱交換コイル16側よりも主熱交換コイル18側の方が大きくなる。
【0070】
このようにして補助熱交換コイル16及び主熱交換コイル18によって加温された後の外気は、その温度が43℃程度となるように制御される。この43℃程度の外気が、送風機20の作用下に調和空気(給気)として工場の各所に供給される。
【0071】
一方、外気と熱交換を行った後に主熱交換コイル18から導出された温水は46〜57℃程度であり、この温度で、復路用配管40を経由して冷温水発生機14に戻る。すなわち、本実施の形態によれば、冷温水発生機14に戻る温水の温度を、主熱交換コイル18と熱交換能力が同一である熱交換コイルのみを具備する従来技術に係る空調装置10の45〜55℃よりも高温とすることができる。
【0072】
冷温水発生機14は、46〜57℃程度で戻った温水を50〜60℃程度に加温して主熱交換コイル18に再供給する。暖房運転時には、戻ってきた温水の温度が高温であるほど、冷温水発生機14が加温を行うのに要するエネルギの消費量が少なくなる。加温前後での温水の温度差が小さいからである。
【0073】
従って、この場合においても、冷温水発生機14で消費される燃料の量を少なくすることができる。また、燃料消費量が低減することに伴い、CO2発生量も低減する。
【0074】
以上の結果を、図3に併せて示す。補助熱交換コイル16が存在しない場合に暖房運転時及び冷房運転時において主熱交換コイル18から導出された温水及び冷水の温度と、補助熱交換コイル16が存在するときに暖房運転時及び冷房運転時において主熱交換コイル18から導出された温水及び冷水の温度とを対比し(太枠線参照)、補助熱交換コイル16を設けることによって暖房運転時の温水の温度を一層高温にし得、且つ冷房運転時の冷水の温度を一層低温にし得ることが明らかである。
【0075】
以上のように、本実施の形態によれば、冷房運転時又は暖房運転時のいずれにおいても、冷温水発生機14で燃焼させる燃料の量(燃料消費量)を低減することができる。その結果、燃料の燃焼に伴うCO2の発生量も低減する。
【0076】
しかも、本実施の形態では、冷却塔24によって冷却された冷却水の供給先に補助熱交換コイル16を追加することで対応することができる。そして、これにより、工場の排熱を一層有効に利用することができるという利点も得られる。
【0077】
なお、上記した実施の形態では、空調システム12を工場に設置するとともに、補助熱交換コイル16に冷却塔24からの冷却水を供給する場合を例示して説明したが、補助熱交換コイル16に供給する媒体は、外気の温度を予備的に下降又は上昇させ得るようなものであればよい。
【符号の説明】
【0078】
10…空調装置 12…空調システム
14…冷温水発生機 16…補助熱交換コイル
18…主熱交換コイル 20…送風機
24…冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込んだ外気の温度を下降又は上昇させて調和空気として供給する空調装置であって、
冷却媒体又は加温媒体によって前記外気の温度を予備的に下降又は上昇させる補助熱交換手段と、
前記補助熱交換手段によって温度が予備的に下降又は上昇された外気を、冷却媒体又は加温媒体によってさらに冷却又は加熱することでその温度を下降又は上昇させる主熱交換手段と、
を備え、
前記主熱交換手段による外気の温度変化幅が、前記補助熱交換手段による外気の温度変化幅よりも大きいことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調装置において、前記補助熱交換手段を外気が通過可能な第1外気通過面積が、前記主熱交換手段を外気が通過可能な第2外気通過面積よりも大きいことを特徴とする空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の空調装置において、当該空調装置が工場に設置されるとともに、該工場に設けられた要冷却設備から排出された使用済冷却水が冷却媒体又は加温媒体として前記補助熱交換手段に供給されることを特徴とする空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調装置において、地下水が冷却媒体又は加温媒体として前記補助熱交換手段に供給されることを特徴とする空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−47583(P2011−47583A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196863(P2009−196863)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】