説明

空調装置

【課題】熱交換部周りにおける冷気の自然降下で室内を冷房する自然対流式の冷房を行いながらも、使用者に早期に冷房感を与え得る空調装置を提供する。
【解決手段】熱媒を通過させる伝熱管を並列配置して熱交換部19を形成し、この熱交換部19を室内に露呈させる状態で室内機8に装備するとともに、吸熱用の熱媒を伝熱管に通過させることで熱交換部19周りにおいて生じる冷気の自然降下により室内空間11を冷房する自然対流式の冷房運転を実行可能に構成し、冷房運転による降下冷気を室内空間11における熱交換部7の対向域の側に案内する冷気案内面17を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居や施設等の室内の温度を調整するのに用いられる空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ファン付きの室内機(所謂、エアコン)によって室内空気を温度調整した調整空気(冷気又は暖気)を室内に吹き出すことで、この吹出し空気による強制対流を生じさせて室内の温度を調整する空調装置が多く用いられている。
【0003】
しかし、上記従来の技術では、比較的短時間で室内の温度を調整し得るものの、室内機からの吹出し空気に人体が晒されるため、その吹出し空気の触感や吹出し空気に晒された部位の冷えすぎ(又は暖まりすぎ)によって使用者が不快感を感じたり、吹出し空気に晒された部位の冷えすぎ(又は暖まりすぎ)によって使用者に健康障害が生じたりする問題があった。
【0004】
特に、吹出し空気に晒された部位の冷えすぎ(又は暖まりすぎ)が起こることは、子供や老人や病人等の比較的体力の乏しい者が空調装置の使用を敬遠する事態となって、そのことで、これらの者に熱中症などの空調装置を使用しないための別種の健康障害を生じさせる問題も招いていた。
【0005】
このことから、本出願人は、上記の如き問題を効果的に解消するため、使用者の不快感や健康障害を招く虞のある強制対流の発生を回避しながらも冷暖房効果を効率的に得ることのできる空調装置として、冷凍回路の循環冷媒(熱媒の一例)を通過させる伝熱管を並列配置して熱交換部を形成し、この熱交換部を縦姿勢において室内に露呈する状態で室内機に設け、伝熱管中で液相冷媒(吸熱用の熱媒の一例)を蒸発させることで熱交換部周りに生じる冷気の自然降下で室内を冷房する自然対流式の冷房運転と、伝熱管中で気相冷媒(放熱用の熱媒の一例)を凝縮させることで熱交換部から室内に輻射熱を放射して室内を暖房する輻射式の暖房運転を実行可能とした空調装置を先に提案(特願2011−026398号)した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の提案装置は、冷房運転において、熱交換部周りに生じる冷気の自然降下によって室内の下方側から順次に冷気を貯めていく形態で室内を冷房するから、使用者にほとんど気流を体感させない状態で室内を冷房することができるものの、使用者に冷房感を与えるまでに比較的時間を要しており、この点に未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、冷気の自然降下で室内を冷房する自然対流式の冷房を行いながらも、使用者に早期に冷房感を与え得る空調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、空調装置に係り、その特徴は、
熱媒を通過させる伝熱管を並列配置して熱交換部を形成し、この熱交換部を室内に露呈させる状態で室内機に装備するとともに、
吸熱用の熱媒を前記伝熱管に通過させることで前記熱交換部周りにおいて生じる冷気の自然降下により室内を冷房する自然対流式の冷房運転を実行可能に構成し、
前記冷房運転による降下冷気を室内における前記熱交換部の対向域の側に案内する冷気案内面を設けてある点にある。
【0009】
つまり、上記構成によれば、前記冷房運転において吸熱用の熱媒を前記伝熱管に通過させることで前記熱交換部周りにおいて生じる冷気の自然降下により室内を冷房するに際して、前記冷気案内面による案内により熱交換部周りからの降下冷気を熱交換部の対向域の側に導くことができるから、その分、冷気を熱交換部の対向域の側に早期に到達させることができる。従って、冷気の自然降下で室内を冷房する自然対流式の冷房を行いながらも、使用者に早期に冷房感を与えることができる。
【0010】
なお、吸熱用の熱媒は、顕熱のみで吸熱作用する冷水等の低温流体、潜熱を用いて吸熱作用する液相冷媒のいずれであってもよい。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記冷気案内面として、前記熱交換部の対向域の側ほど下方に位置する傾斜面を熱交換部の下方側に設けてある点にある。
【0012】
上記構成によれば、前記熱交換部からの降下冷気を前記冷気案内面としての前記傾斜面に沿って斜降させる状態で熱交換部の対向域の側に案内するから、冷気の自然降下現象を利用する状態で熱交換部の対向域の側に冷気を効率的に導くことができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記室内機における前記熱交換部よりも下方部位の少なくとも前記対向域の側を被覆する下部カバーを設けるとともに、この下部カバーの上面部を前記傾斜面に構成してある点にある。
【0014】
つまり、この種の空調装置では、室内機の前記熱交換部よりも下方部位に冷媒配管やドレンパンなどを配置することが考えられるが、上記構成によれば、前記下方部位における少なくとも前記対向域の側を被覆する下部カバーを設けるから、冷媒配管やドレンパンなどの配置に利用し得る空間を、室内とは区画した状態で室内機に構成することができる。
【0015】
そして、この下部カバーの上面部を前記冷気案内面としての前記傾斜面に構成してあるから、室内機における被覆用のカバーに兼用する状態で冷気案内面を構成することができ、下部カバーと冷気案内面とを別々に構成する場合に比べて、装置構成の効率化を図ることができる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記冷房運転による降下冷気の前記熱交換部の対向域の側への流れを整える整流部を前記冷気案内面に設けてある点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記冷気案内面による案内作用と前記整流部による整流作用とによって、前記冷房運転による降下冷気を熱交換部の対向域の側に整流化した状態で円滑に導くことができる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
放熱用の熱媒を前記伝熱管の管内に通過させることで前記熱交換部の対向域に輻射熱を放射して室内を暖房する輻射式の暖房運転も実行可能に構成するとともに、
前記冷気案内面を、前記暖房運転において前記熱交換部の裏側対向域に放射される輻射熱を反射するように熱交換部の裏側に設けた反射面から構成してある点にある。
【0019】
つまり、上記構成によれば、縦姿勢において室内に露呈した前記熱交換部の発熱作用で前記熱交換部から輻射熱を放射する暖房運転により室内を暖房するに際して、熱交換部から裏側対向域に放射される輻射熱を反射して表側対向域の側に放射させることができるから、その分、表側対向域に対する暖房効果を高めることができる。
【0020】
そして、前記冷房運転では、前記反射面を冷気案内面として裏側対向域への移動を制限する状態で熱交換部周りの裏表両側における降下冷気を表側対向域の側に案内するから、この反射面による案内作用により熱交換部周りの裏表両側での降下冷気を熱交換部の表側対向域の側に導くことができ、その分、表側対向域に対する冷房効果を高めることができるとともに、使用者に対して一層早期に冷房感を与えることができる。
【0021】
なお、放熱用の熱媒は、顕熱のみで放熱作用する温水等の高温流体、潜熱を用いて放熱作用する気相冷媒のいずれであってもよい。
【0022】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記熱交換部を構成するのに、前記伝熱管の長手方向に延びる熱良導材製の伝熱エレメントを前記室内機における前記熱交換部の支持フレームから離した状態で伝熱管の外周に装着してある点にある。
【0023】
上記構成によれば、前記伝熱エレメントを伝熱管に装着することにより伝熱管のみから熱交換部を形成する場合に比べて熱交換部での冷気や輻射熱の発生効率を高めることができる。しかも、該伝熱エレメントを前記室内機における前記熱交換部の支持フレームから離してあるから、伝熱エレメントから支持フレームに直接的に熱伝達するのを回避して、その直接的な熱伝達により冷房や暖房に使用すべき熱量が消費されるのを抑止することができる。これらのことから、室内に対する冷房効果や暖房効果を効率的に得ることができる。
【0024】
さらに、伝熱エレメントと支持フレームとが非接触状態にあるから、伝熱エレメントの高温化による伝熱エレメントの熱膨張によって伝熱エレメントと支持フレームとの間で軋み音等が生じることを抑止することができ、また、伝熱エレメントを介しての支持フレームの低温化によって支持フレームに結露が生じることも抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態における空調装置の構成図
【図2】第1実施形態における室内機の正面図
【図3】第1実施形態における室内機の縦断面図
【図4】図2のIV−IV線断面図
【図5】第2実施形態における室内機の要部の縦断面図
【図6】第3実施形態における室内機の要部の縦断面図
【図7】第4別実施形態における室内機の要部の縦断面図
【図8】(a)第5実施形態における室内機の要部の斜視図、(b)第5実施形態における室内機の要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1は、住宅や施設等に設置されるセパレート式の空調装置を示し、この空調装置は、圧縮機1と凝縮器と膨張機構(膨張弁やキャピラリチューブ等)2と蒸発器とにわたって冷媒Rを循環させることで、蒸発器における低圧下での冷媒蒸発により蒸発器の伝熱部に吸熱作用させるとともに、凝縮器における高圧下での冷媒凝縮により凝縮器の伝熱部に発熱作用させる冷凍回路3(ヒートポンプ回路)を備えてなり、冷凍回路3の凝縮器・蒸発器として機能するコイル型の室外側熱交換器4及び通風ファン5を室外機6に装備するとともに、冷凍回路3の蒸発器・凝縮器として機能するフィンチューブ型の室内側熱交換器7(熱交換部の一例)を室内機8に装備した装置構成になっている。
【0027】
9は、冷媒Rを図1中の点線矢印方向に沿って循環させる冷房運転と、冷媒Rを図1中の実線矢印方向に沿って循環させる暖房運転とを切り換える四方弁である。また、10は当該空調装置の運転を司る制御器(制御手段の一例)であり、この制御器10は、室内機8に設けた操作部や室内に配置した操作端末などの操作を受けて冷房運転と暖房運転の切り換えや圧縮機1の出力調整などの各種の制御を行う。
【0028】
前記室内機8の主要構造部は、図2〜図4に示すように、金属製の左右一対のサイドフレーム(図示しない)と金属製の上部フレーム8bと金属製の下部フレーム8cとを正面視矩形状に組付けるとともに、両サイドフレームの下方寄り位置に金属製の中間フレーム8dを架設して構成してある。
【0029】
そして、この室内機8は、前記両サイドフレームと上部フレーム8bと中間フレーム8dとで囲まれる部分に前記室内側熱交換器7を配設して該部分に室内側の熱交換部19を形成するとともに、この熱交換部19を除く部分を適宜に外装材で被覆することで、室内設置時において熱交換部19を縦姿勢で室内空間(室内)11に露呈させる構成にしてある。
【0030】
つまり、この空調装置は、図1中の点線矢印で示すように、圧縮機1、室外側熱交換器4、膨張機構2、室内側熱交換器7の順で冷媒Rを循環させることで、前記伝熱管7Aの管内での液相冷媒(吸熱用の熱媒の一例)の蒸発に伴い、図2に示すように、縦姿勢で室内空間11に露呈させた熱交換部19で生じる冷気を自然降下させ、冷気を室内の下方域(低層域)に貯めていく状態で室内を冷房する自然対流式の冷房運転を実行する。
【0031】
また、この空調装置は、図1中の実線矢印で示すように、圧縮機1、室内側熱交換器7、膨張機構2、室外側熱交換器4の順で冷媒Rを循環させることで、伝熱管7Aの管内での気相冷媒(放熱用の熱媒の一例)の凝縮に伴い、縦姿勢で室内空間11に露呈させた熱交換部19から室内の対向域に輻射熱を放射して室内を暖房する輻射式の暖房運転を実行する。
【0032】
前記室内側熱交換器7は、図3、図4に示すように、管内を冷媒Rの流路とする銅製(金属製の一例)の伝熱管7Aを上下方向に沿う縦管姿勢で並列配置した状態で前記上部フレーム8bと前記中間フレーム8dとに支持させるとともに、この伝熱管7Aの長手方向に延びるアルミニウム製(金属製の一例、熱良導材製の一例)の伝熱エレメント7Bを上部フレーム8bと中間フレーム8dとから離した状態(具体的には、伝熱エレメント7Bと両フレーム8b、8dとの間の各々に隙間を空けた状態)で伝熱管7Aの外周に装着して構成してある。
【0033】
つまり、伝熱エレメント7Bを伝熱管7Aに装着することにより熱交換部19での冷気や輻射熱の発生効率を高めるようにしてある。
【0034】
また、この伝熱エレメント7Bを室内機8における熱交換部19の上部フレーム8b及び中間フレーム8d(熱交換部19を支持する支持フレームの一例)から離すことで、伝熱エレメント7Bとフレーム8b、8dとの直接的に熱伝達により冷房や暖房に使用すべき熱量が消費されるのを抑止するとともに、伝熱エレメント7Bの高温化による伝熱エレメント7Bの熱膨張によって伝熱エレメント7Bとフレーム8b、8dとの間で軋み音等が生じることを抑止し、更に、伝熱エレメント7Bを介しての上部フレーム8b及び中間フレーム8dの低温化によって両フレーム8b、8d(更には、それらに接続されたサイドフレームや下部フレーム8c)に結露が生じることも抑止するようにしてある。
【0035】
各伝熱管7Aの長さ寸法や内径寸法、各伝熱エレメント7Bの表面積は、伝熱管7A内での冷媒Rの相変化が十分且つ小音で円滑に行われるものに設定してある。
【0036】
なお、伝熱エレメント7Bを伝熱管7Aの外周に装着するのに、伝熱エレメント7Bを加熱膨張させた状態で伝熱管7Aに外装させる方法を採用するのが好ましい。このようにすれば、装着後の伝熱エレメント7Bの冷却収縮によって伝熱エレメント7Bを伝熱管7Aに対して密着性が高くて強固な取付け状態で装着することができる。
【0037】
前記伝熱エレメント7Bには、その横断面視において、伝熱管8Aの外周に取り付ける本体部7bと、伝熱管7Aの並び方向(つまり、横方向)において間隔を空けた並列配置で本体部7bから外側(具体的には、表側と裏側)に向かって延びる複数の伝熱板7c(換言すれば、吸放熱板)とを設けてある。
【0038】
また、図3に示すように、前記室内機8における室内側熱交換器7の下方部位には、室内側熱交換器7からの結露水を受けるドレンパン12や該ドレンパン12で受けた結露水を排出する排出管13、該排出管13を通じて結露水を外部に排出するためのドレンポンプ14等の各種の付帯部品を配設してある。
【0039】
当該空調装置は、上述の如く付帯装備したドレンポンプ14の動作によりドレン水を水勾配に逆らって排出し得るため、図示しないが、壁面上部等に形成された既設の貫通穴を利用して、該貫通穴を介して冷媒管やドレン管を室内外に亘らせる状態で設置してある。
【0040】
さらに、室内機8には、付帯部品を配設した下方部位の少なくとも表面と裏面とを被覆するための表裏一対の下部カバー15、16(外装材の一例)を設けてある。なお、この下部カバー15、16は、サイドフレーム側の外装材と併せて下部ケースを構成する。
【0041】
そして、この空調装置には、前記冷房運転による降下冷気を室内における室内側熱交換器7の対向域の側に案内する冷気案内面17を設けてある。当該冷気案内面17は、前記下部カバー15、16の上面部15a、16aから構成してある。これら上面部15a、16aは、室内側熱交換器7の対向域の側ほど下方に位置する傾斜面にしてある。
【0042】
つまり、この空調装置は、図2に示すように、冷房運転において室内側熱交換器7での発生冷気を縦板姿勢の伝熱板7cによる案内により伝熱板7cどうしの間の間隔を通じて下方へ整流化した状態で円滑に自然降下させるとともに、この降下冷気を前記冷気案内面17による案内により室内側熱交換器7の対向域の側に円滑且つ早期に導く。
【0043】
なお、この空調装置は、前記冷気案内面17を室内機8の表裏両側に設けることにより、室内における一方の室内部分と他方の室内部分との境界部に1つの室内機8を設置した場合でも、冷房運転において一方の室内部分と他方の室内部分との両方側に冷気を円滑且つ早期に導き得るようにしてある。
【0044】
表裏一対の下部カバー15、16の上面部15a、16aは、それの内側端(つまり、室内機8の表裏中心線側の端部)が、前記伝熱エレメント7Bの先端(つまり、伝熱板7cの先端)よりも外側で、且つ、伝熱エレメント7Bの下端よりも上方に位置する状態で設けてある。
【0045】
つまり、下部カバー15、16の上面部15a、16aの内側端を、伝熱エレメント7Bの先端(つまり、伝熱板7cの先端)よりも外側に位置させることで、伝熱エレメント7Bに沿って降下する冷気の一部を下部ケース内に流入させて、下部ケース内外の温度を均一化するとともに、ドレンパン12周りの空気を低温化し、これにより、下部ケースの内面やドレンパン12の外面等に結露が発生するのを抑止する。
【0046】
また、下部カバー15、16の上面部15a、16aの内側端を、伝熱エレメント7Bの下端よりも上方に位置させることで、結露水の滴下現象などが生じる伝熱エレメントの下端が人目に晒されるのを抑止する。
【0047】
さらに、下部カバー15、16の横側面部15b、16bは、下部カバー15、16の各々の上面部15a、16aよりも鈍角な傾斜面又は垂直面に構成してあり、これにより、室内機8の表裏方向での寸法増大を抑えながら、冷気案内面17による降下冷気の案内作用を効率的に得られるようにしてある。
【0048】
[第2実施形態]
図5は、第1実施形態の空調装置を改変した第2実施形態を示し、この第2実施形態では、表裏一対の下部カバー15、16の上面部15a、16a(冷気案内面17の一例)の内側端(つまり、室内機8の表裏中心線側の端部)を、前記伝熱エレメント7Bの先端(つまり、伝熱板7cの先端)よりも内側位置にまで延出させている。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0049】
つまり、この第2実施形態の空調装置では、伝熱板7cどうしの隙間の直下にも冷気案内面17を配置することで、伝熱板7cどうしの隙間を通過する冷気も熱交換部19の対向域の側に案内するようにしてある。
【0050】
[第3実施形態]
図6は、第2実施形態の空調装置を改変した第3実施形態を示し、この第3実施形態では、裏側の下部カバー16の上面部16a(冷気案内面17の一例)を、表側の下部カバー15の上面部15a(冷気案内面17の一例)と同じく、表側の対向域の側ほど下方に位置する傾斜面とし、表側の下部カバー15の上面部15aとで、表側の対向域の側ほど下方に位置する連続的な傾斜面を形成するように、表側の下部カバー15の上面部15aよりも高位に位置させている。なお、その他の構成は第2実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0051】
つまり、この第3実施形態の空調装置では、熱交換部19の下方部位における表側及び裏側の双方に表側対向域の側ほど下方に位置する傾斜面からなる冷気案内面17を設けることで、熱交換部19の表側及び裏側で下降する冷気を表側対向域の側に案内し、表側対向域への冷房を効率的に行うようにしてある。
【0052】
[第4実施形態]
図7は、第3実施形態の空調装置を改変した第4実施形態を示し、この第4実施形態では、鏡面加工等により表面を反射面18aに構成した裏面板部18を熱交換部19の裏側に配設してある。なお、その他の構成は第3実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0053】
つまり、この第4実施形態の空調装置では、裏面板部18を熱交換部19の裏側に設けることで、前記冷房運転では、裏側への冷気の移動を制限する状態で表側対向域の側に冷気を案内し、表側対向域への冷房を効率的に行うとともに、前記暖房運転では、熱交換部19から裏側に放射される熱輻射を反射して、表側対向域への暖房も効率的に行うようにしてある。
【0054】
[第5実施形態]
図8は、第1実施形態の空調装置を改変した第5実施形態を示し、この第5実施形態では、図8(a)や図8(b)に示すように、少なくとも表側の下部カバー15の上面部15a(冷気案内面17の一例)に、熱交換部19の対向域に側に延びる整流片20(整流部の一例)を設けてある。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0055】
つまり、この第5実施形態では、冷気案内面17に整流片20を設けることで、冷気案内面17による案内作用と整流片20による整流作用とによって、前記冷房運転における下降冷気を整流化した状態で熱交換部19の対向域の側に円滑に導くようにしてある。
【0056】
[別実施形態]
(1)前述の各実施形態では、伝熱エレメント7Bを支持フレームから離した状態で室内機に設けるのに、伝熱エレメント7Bを支持フレームとの間に空隙を形成する場合を例に示したが、例えば、伝熱エレメント7Bを支持フレームとの間にゴムやエラストマーや合成樹脂材などからなる柔軟材や断熱材を介在させるようにしてもよい。
【0057】
(2)前述の各実施形態では、冷気案内面17の内側端(つまり、室内機8の表裏中心線側の端部)が、前記伝熱エレメント7Bの下端よりも上方に配置する場合を例に示したが、冷気案内面17の全体を伝熱エレメント7Bの下端よりも下方に配置するようにしてもよい。
【0058】
(3)前述の各実施形態では、冷気案内面17を室内機8に設ける場合を例に示したが、室内機8とは別途に構成してもよい。
【0059】
(4)前述の各実施形態では、熱交換部19の表側と裏側の夫々の下方部位に冷気案内面17を設ける場合を例に示したが、いずれか一方側だけに設けてもよい。
【0060】
(5)前述の第4実施形態では、冷気案内面17を構成するのに、表面を反射面18aに構成した裏面板部18を熱交換部19の裏側に配設する場合を例に示したが、冷気の案内作用だけを望む場合には裏面板部18に反射面18aを設ける必要はない。
【0061】
(6)前述の各実施形態では、前記伝熱管7Aを縦管姿勢で並列配置する場合を例に示したが、横管姿勢や斜め管姿勢で並列配置するようにしてもよい。
【0062】
(7)熱交換部19を縦姿勢で室内に露呈させる状態に装備した室内機8は、床置き式のものの限らず、壁掛け式や天井吊り式にしてもよい。
【0063】
(8)室内機8の構造や伝熱エレメント7Bの構造は、前述の各実施形態で示した構造のものに限らず、本発明の実施において種々の構造変更が可能である。
【0064】
(9)前述の各実施形態では、伝熱管7Aの管内に冷凍回路3の冷媒Rを通過させる構造を例に示したが、チラーを設けることにより伝熱管7Aの管内に冷水や温水を通過させる構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
R 熱媒(冷媒)
7A 伝熱管
7B 伝熱エレメント
8 室内機
8b 支持フレーム(上部フレーム)
8d 支持フレーム(中間フレーム)
15、16 下部カバー
15a、16a 上面部
17 冷気案内面
18a 反射面
19 熱交換部
20 整流部(整流片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を通過させる伝熱管を並列配置して熱交換部を形成し、この熱交換部を室内に露呈させる状態で室内機に装備するとともに、
吸熱用の熱媒を前記伝熱管に通過させることで前記熱交換部周りにおいて生じる冷気の自然降下により室内を冷房する自然対流式の冷房運転を実行可能に構成し、
前記冷房運転による降下冷気を室内における前記熱交換部の対向域の側に案内する冷気案内面を設けてある空調装置。
【請求項2】
前記冷気案内面として、前記熱交換部の対向域の側ほど下方に位置する傾斜面を熱交換部の下方側に設けてある請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記室内機における前記熱交換部よりも下方部位の少なくとも前記対向域の側を被覆する下部カバーを設けるとともに、この下部カバーの上面部を前記傾斜面に構成してある請求項2記載の空調装置。
【請求項4】
前記冷房運転による降下冷気の前記熱交換部の対向域の側への流れを整える整流部を前記冷気案内面に設けてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項5】
放熱用の熱媒を前記伝熱管の管内に通過させることで前記熱交換部の対向域に輻射熱を放射して室内を暖房する輻射式の暖房運転も実行可能に構成するとともに、
前記冷気案内面を、前記暖房運転において前記熱交換部の裏側対向域に放射される輻射熱を反射するように熱交換部の裏側に設けた反射面から構成してある請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項6】
前記熱交換部を構成するのに、前記伝熱管の長手方向に延びる熱良導材製の伝熱エレメントを前記室内機における前記熱交換部の支持フレームから離した状態で伝熱管の外周に装着してある請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177515(P2012−177515A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40611(P2011−40611)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】