説明

空間安定装置

【課題】本発明は、ジンバル部の中に、そのジンバル部を駆動制御するための駆動制御情報を記憶した記憶媒体をジンバル部内に設け、制御器に接続するジンバル部を自在に駆動制御することができるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明による空間安定装置は、ジンバル部(1)内には、ジンバル部(1)を駆動制御するために必要な駆動制御情報(26)が読み書き自在に格納された記憶媒体(25)が設けられ、制御器(10a)はジンバル部(1)内の記憶媒体(25)から駆動制御情報(26)を読み取ることができる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間安定装置に関し、特に、ジンバル部の中に、そのジンバル部を駆動制御するための駆動制御情報を記憶した記憶媒体をジンバル部内に設け、制御器に接続したジンバル部を自在に駆動制御することができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のジンバル機構としては、例えば、特許文献1のジンバル機構に開示された構成を図2に示すことができる。
図2は、外側ジンバル10、内側ジンバル12、及びジンバル被搭載物14の間の制御信号(駆動信号)と電源供給の経路を説明するための図である。
外側ジンバル10は、曲面基板により構成されており、この基板上にジンバル制御回路10aが実装されている。ジンバル制御回路10aには、外部から供給される電源を制御する電源回路10b、外部からのジンバル駆動に関わる信号(駆動信号)などを無線通信により送受信する無線回路10cが設けられている。
【0003】
内側ジンバル12は、外側ジンバル10と同様に曲面基板により構成されており、この基板上に無線回路12aが設けられている。無線回路12aは、外側ジンバル10に設けられた無線回路10c(及びジンバル被搭載物14に設けられた無線回路14b)との間でジンバル駆動に関わる信号などを無線通信により送受信する。
【0004】
また、ジンバル被搭載物14には、内側ジンバル12の無線回路12aとの間で無線通信を行う無線回路14bが設けられる。無線回路14bは、ジンバル被搭載物14(例えば撮像装置やレーザ発射装置など)の制御回路14aとの間で信号を授受する。
【0005】
ジンバル機構1の外部より与えられるジンバル駆動に関わる信号及び電源は、外側ジンバル10に設けられたジンバル制御回路10aにより一旦受け取られる。外側ジンバル10の駆動に関わる信号(外側ジンバル駆動装置に対する駆動信号など)は、ジンバル制御回路10aにおいて処理され、その出力に従い外側ジンバル駆動装置を制御して内側ジンバル12を駆動する。
【0006】
内側ジンバル12の駆動に関わる信号(図示しない内側ジンバル駆動装置に対する駆動信号など)は、外側ジンバル10の無線回路10cにより無線回路12aに対して無線通信により送信される。また、内側ジンバル12に対する電源は、外側ジンバル10から図示しない外側軸受け及び外側ジンバル軸を通じて供給される。
【0007】
内側ジンバル12は、無線回路12aにより受信した信号に応じて内側ジンバル駆動装置を制御してジンバル被搭載物14を駆動する。内側ジンバル駆動装置は、外側ジンバル軸を通じて供給される電源により動作する。
【0008】
さらに、外部よりジンバル被搭載物14に対する制御信号が入力される場合には、無線回路12aから無線回路14bに対して無線通信により送信される。無線回路14bは、無線回路12aから受信した制御信号を制御回路14aに出力する。制御回路14aは、この制御信号に応じた制御を実行する。ジンバル被搭載物14(例えば撮像装置やレーザ発射装置など)は、内側ジンバル軸を通じて供給される電源により動作する。
【0009】
また、ジンバル被搭載物14からの信号は、制御回路14aから無線回路14bを通じて、内側ジンバル12の無線回路12aに対して無線通信により送信される。無線回路12aは、ジンバル被搭載物14からの信号を外側ジンバル10の無線回路10cに対して無線通信により送信する。ジンバル制御回路10aは、内側ジンバル12(無線回路12a)を通じて得られたジンバル被搭載物14からの信号を外部に出力する。
【0010】
なお、前述した説明では、無線回路10cと無線回路12a、無線回路12aと無線回路14bとの間で無線通信を実行するものとして説明しているが、外側ジンバル10に設けられた無線回路10cは、無線回路12a及び無線回路14bと、それぞれ直接無線通信を実行できるものとしても良い。
【0011】
このようにして、内側ジンバル12及びジンバル被搭載物14の回転駆動を制御するジンバル制御回路10aを、曲面基板により構成された外側ジンバル10において一体化して実装することで、ジンバル機構1とは別に制御回路を設置する場所を確保する必要が無いので搭載寸法を低減でき、また制御回路を含めたジンバル機構1の全体構成を小型化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−342993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のジンバル機構は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、通常、大型のジンバルであれば制御系を含めた回路をジンバル内部に持つことが可能であるが、小型のジンバルでは一般的に不可能である。
また、前述の特許文献1に開示されたジンバル機構においては、ジンバル単体内に制御器を組み込んだ構成であるため、ジンバル機構自体が専用機となり、交換時には制御器とジンバル機構全体を交換しなければならなかった。
また、小型のジンバル機構においては、ジンバル部と制御器間がケーブルで接続され、ジンバル部を制御するために必要とする情報は制御器内に格納されており、制御器とジンバル部の組合せが変更となった場合には、これまでの制御器を新しいジンバル部に接続しても、新しいジンバル部を制御するために必要な情報を有していないため、そのままでは駆動することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による空間安定装置は、制御器とジンバル部が分離され、前記制御器とジンバル部をジンバル駆動用ケーブルで接続して前記ジンバル部の駆動を行うようにした空間安定装置において、前記ジンバル部内には、前記ジンバル部を駆動制御するために必要な駆動制御情報が読み書き自在に格納された記憶媒体が設けられ、前記制御器は前記ジンバル部内の前記記憶媒体から前記駆動制御情報を読み取ることができる構成であり、また、前記制御器に電源が投入された時に毎回、前記駆動制御情報が読み取られる構成であり、また、同一の前記制御器に対し、複数のジンバル部を選択して接続・制御できる構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による空間安定装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、制御器とジンバル部が分離され、前記制御器とジンバル部をジンバル駆動用ケーブルで接続して前記ジンバル部の駆動を行うようにした空間安定装置において、前記ジンバル部内には、前記ジンバル部を駆動制御するために必要な駆動制御情報が読み書き自在に格納された記憶媒体が設けられ、前記制御器は前記ジンバル部内の前記記憶媒体から前記駆動制御情報を読み取ることができることにより、ジンバル部を変更又は交換した場合においても、そのジンバル部の駆動制御情報を直ちに読み取り、駆動制御できる。
また、用意した複数のジンバル部を同一制御器で選択的に制御できる。
また、前記制御器に電源が投入された時に毎回、前記駆動制御情報が読み取られることにより、交換した各ジンバル部に対してケーブルを接続するのみで、直ちにジンバル部の駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による空間安定装置を示すブロック図である。
【図2】従来のレゾルバ機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ジンバル部の中に、そのジンバル部を駆動制御するための駆動制御情報を記憶した記憶媒体をジンバル部内に設け、制御器に接続するジンバル部を自在に駆動制御することができるようにした空間安定装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0018】
以下、図面と共に本発明による空間安定装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については同一符号を用いて説明する。
図1において、符号10aで示されるものはジンバル部1を制御するための制御器
であり、この制御器10a内には、周知のFPGA又はCPUを有する制御用基板20が設けられている。
【0019】
前記制御器10aは、ジンバル駆動用ケーブル21を介してジンバル部1に接続されている。
前記ジンバル駆動用ケーブル21と制御器10a及びジンバル部1とは、制御器10aとジンバル部1に設けられた第1、第2コネクタ部22,23を介して着脱自在に設けられ、制御器10aに対して種類の異なる複数のジンバル部1を選択的に接続することができる。
【0020】
前記ジンバル部1には、周知のFPGA又はCPUを有する基板24が設けられ、この基板24には、ジンバル部1を制御するために必要な情報が読み書きできるようにROM又はRAM等のメモリからなる記憶媒体25が設けられている。
前記記憶媒体25は、ジンバル部1を駆動させるために必要な情報である駆動制御情報26を格納しており、電源投入時にこの駆動制御情報26を制御器10a側で読み出して使用できるようにすることで、制御器10aとジンバル部1が一対一の関係で使用されない場合でも対応可能となるように構成されている。
【0021】
次に、動作の一例について述べる。
まず、制御器10aのCPUからジンバル部1のCPUに対して、駆動制御情報26の読み出しコマンドを発行してジンバル部1の駆動制御情報26の読み出しモードに切替えた後に、駆動制御情報26の読み出し指令を発行する(空間安定装置30の電源投入時に自動的に行われる)。
次に、ジンバル部1のCPUにおいて、駆動制御情報26の読み出しモードへの移行を受けて、駆動制御情報の送受信に使用していたジンバル駆動用ケーブル21を駆動制御情報読み出し用の通信モードに切替を行う。
【0022】
次に、ジンバル部1のCPUにおいて、記憶媒体25から読み出した駆動制御情報26をジンバル駆動用ケーブル21を経て制御器10a側へ送信する。
次に、制御器10a側で駆動制御情報26の内容(通信状態、チェックサム等)を実施し、特に問題がなければ、通常運用モードに切替を行い、制御器10aで受信した駆動制御情報26を使用して空間安定装置を運用する。
前記ジンバル部1のCPUは、前述の通常運用モードへの移行を受けてジンバル部1の制御に必要な各種センサ情報(ジンバル部1内の各アクチュエータ、ジャイロ等)をジンバル駆動用ケーブル21を経て制御器10aへ送信を行うことができる。
従って、制御器10aは、空間安定装置30の電源投入時に駆動制御情報26を読み込むため、ジンバル部1が各種の構成に交換された場合でも、制御器10a及びジンバル部1を何らの操作及び変更等を加えることなく、自動的に制御器10aによってジンバル部1の駆動制御を行うことができる。
【0023】
従って、1個の制御器10aで複数のジンバル部1を選択的に接続して運用することが可能となり、例えば、運用する機体(例えば、飛行機、ヘリコプタ、船等)に前記制御器10aを据付けておき、使用用途に合わせてジンバル部1を交換して使用することができる。
尚、交換して使用するジンバル部1は、同等のサイズであることが望ましく、様々な用途に向けたジンバル部1をいくつか用意しておき、同一の制御器10aを使用して同じ機体で運用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による空間安定装置は、移動体としての飛行機、ヘリコプタ、船等のジンバル部に限ることなく、固定された監視装置のジンバル部等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ジンバル部
10a 制御器
20 制御用基板
21 ジンバル駆動用ケーブル
22,23 第1、第2コネクタ部
24 基板
25 記憶媒体
26 駆動制御情報
30 空間安定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御器(10a)とジンバル部(1)が分離され、前記制御器(10a)とジンバル部(1)をジンバル駆動用ケーブル(21)で接続して前記ジンバル部(1)の駆動を行うようにした空間安定装置において、
前記ジンバル部(1)内には、前記ジンバル部(1)を駆動制御するために必要な駆動制御情報(26)が読み書き自在に格納された記憶媒体(25)が設けられ、前記制御器(10a)は前記ジンバル部(1)内の前記記憶媒体(25)から前記駆動制御情報(26)を読み取ることができることを特徴とする空間安定装置。
【請求項2】
前記制御器(10a)に電源が投入された時に毎回、前記駆動制御情報(26)が読み取られることを特徴とする請求項1記載の空間安定装置。
【請求項3】
同一の前記制御器(10a)に対し、複数のジンバル部(1)を選択して接続・制御できることを特徴とする請求項1又は2記載の空間安定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242247(P2011−242247A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114315(P2010−114315)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)