説明

空間的付加物展開用装置およびそのような装置を備える空間的付加物

本発明は、2つの回転主軸(10、20)を備える少なくとも1つの2フェーズ関節式展開ラインを含む、例えば太陽発電機などの空間的付属物用の展開装置に関する。本発明によれば、展開装置は、2つの回転主軸用の同期機構(101、102、103、106、107)を備え、第1の展開フェーズ中に駆動主軸(20)が回転するとき、被駆動主軸(10)は回転せず、次に、第2の展開フェーズ中に駆動主軸が回転するとき、被駆動主軸が駆動主軸と同期して回転するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマスト、アンテナアーム、太陽発電機などの空間的付属物(または付加物)用の展開装置に関する。本発明は、そのような装置を備える空間的付属物にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は特に、スペースクラフト用、具体的には衛星用の太陽発電機に適用される。本発明は、具体的には特有の基礎または移行式関節(transfer articulation)のための展開装置に適用される。そのような装置を使用して、衛星の太陽電池パネルを展開する。
【0003】
太陽発電機は、打ち上げの際に衛星の壁部に折り畳まれている、数枚の太陽電池パネルを備える。
【0004】
これらの展開装置は、2つの回転主軸を備える1つ以上の関節式展開ラインを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
提示される問題は、展開運動力学の実施にあたり、被駆動主軸が駆動主軸から決して係合を解除されてはならず、全体的な回転は駆動主軸によってのみ駆動される必要があることにある。
【0006】
さらに、具体的には特有の基礎の複雑な展開の際にいかなる関節ラインにも装置を使用する、または移行式関節を用いて装置を使用することが可能である必要がある。
【0007】
現在、この問題点に取り組んだ解決法はない。
【0008】
特に、歯付きセクタギアに基づく解決法は、第1の展開フェーズにわたって被駆動主軸を係合解除されたままとするため好適ではなく、ツメまたはラッチに基づく解決法は、不可逆的であるため好適ではない。
【0009】
本発明により、この問題を解決することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主題は、詳細には、2つの回転主軸を備える少なくとも1つの2フェーズ関節式展開ラインを含む空間的付属物用の展開装置であり、主に、展開装置は2つの回転主軸用に同期機構を備えて、第1の展開フェーズ中に駆動主軸が回転するとき、被駆動主軸は回転せず、次に第2の展開フェーズ中に駆動主軸が回転するとき、被駆動主軸は駆動主軸と同期して回転することを特徴とする。
【0011】
それゆえ、2つの回転主軸用の同期機構の配置を、第1のフェーズ中に駆動主軸が折り畳み位置から中間位置へ移動するとき、被駆動主軸は回転せず、次に第2のフェーズ中に、駆動主軸が中間位置から最終位置へ移動する時、被駆動主軸が同期してこの最終位置まで回転するようにする。
【0012】
被駆動主軸を保持し、かつ機構を可逆にするために、同期機構は、駆動主軸が折り畳み位置から中間位置へ回転するとき、被駆動主軸を保持することを可能とする被駆動主軸保持手段と、第2のフェーズ中に、駆動主軸が中間位置から最終位置へ回転するとき、被駆動主軸を駆動主軸と同期して回転させ最終位置に達するようにする解除手段とを備える。
【0013】
実施しやすい実施形態によれば、保持手段は、被駆動主軸にプーリ系を備え、そこから、解除手段に互いに独立して取り付けられた2本のケーブル撚り線が出て;解除手段は、第1の巻取機−巻出機装置、第2の巻取機−巻出機装置を備え、これらの装置は偏心しており、ケーブル撚り線の一方は第1の巻取機−巻出機装置への付着点を備える一方で、他方の撚り線は第2の巻取機−巻出機装置への付着点を備え、プーリ系および巻取機−巻出機装置は2本のケーブル撚り線によってつながれていて、装置の一方により、撚り線を駆動主軸の中間位置から最終位置へと巻き取ることが可能となる一方で、他方の装置により、被駆動主軸が最終位置に達するまで他方の撚り線を巻き出すことが可能となる。
【0014】
例示的な実施形態によれば、巻取機−巻出機装置は各々プーリセクタを備える。
【0015】
本発明はまた、上述の特徴のいずれか1つによる展開装置を備える太陽発電機にも関する。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、一例として非限定的な例として以下に示す説明を読むことおよび図面を参照することにより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a−d】本発明による機構によって実施される展開運動力学を概略的に示す。
【図2】運動力学の図を示す。
【図3】本発明による同期機構の詳細を示す。
【図4a−d】図3の同期機構の各展開順序における動作を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に図式的に示すスペースクラフト1は、2つの回転主軸を各々備える2つの関節式展開ラインを備え、回転主軸の一方は被駆動主軸10であり、他方は駆動主軸20である。関節主軸に結合された部分AおよびBは、スペースクラフトへのエネルギー供給を可能とする太陽電池パネルを含む。
【0019】
展開は、この図で1a〜1dの符号を付したステップによって示す順序に従って起こる。
【0020】
以下、動作方法のより良い理解のために、回転角の値を一例として示す。
【0021】
実際には、中間位置までの駆動主軸の回転は90°であり、最終位置までの回転は180°である。
【0022】
折り畳み(収容とも称す)位置のフェーズでは、駆動主軸および被駆動主軸の展開関節部に結合された部分は、ステップ1aに示す位置にある。展開フェーズでは、部分Aが開いて0の位置から90°へ移り、部分Bはステップ1bに示すように依然として部分Aに折り畳まれている。ステップ1cでは、部分Aは展開し続け、かつ部分Bが展開し始める。部分AおよびBは展開し続け、部分Aが90°から180°へかつ部分Bが0°から180°へ開いた後に、ステップ1dの最終位置となる。
【0023】
展開運動力学は、図のステップ1aおよび1bに対応する展開フェーズ1aの間、装置はいわゆる「収容」位置から90°の位置へ移り、2つの部分は互いに対して何の動きもなく、何らかの妨げとなる相対運動を回避するために、被駆動主軸11を保持することを必要とする。
【0024】
図のステップ1cおよび1dに対応する展開フェーズ1bの間、装置は90°の位置から展開位置へ移り、2つの可動部分間の相対開放角度は、第1の可動部分の開放角度と同期している。
【0025】
図2に展開運動力学の図を示す。角度bは概して2aに等しい。
【0026】
展開中、所望の展開運動力学に従って、被駆動主軸10は駆動主軸20から決して係合解除されない。全体的な回転は駆動主軸によってのみ駆動される。
【0027】
図3は、この運動力学を実行可能とする、本発明による同期機構を示す。
【0028】
この機構は、被駆動主軸10にプーリ系101を備え、そこから2本のケーブル撚り線102、103が出て偏心プーリセクタ104、105に達する。2本の撚り線102、103によって、被駆動主軸10を両回転方向に保持することが可能となる。プーリセクタのプロファイルは厳密な円ではなく、円の曲率よりも平坦な曲率を示すので、ケーブルを線形に平行移動できる。
【0029】
ケーブル撚り線102は、付着点104によってプーリセクタ106に固定される。ケーブル撚り線103は、付着点105によってプーリセクタ107に固定される。
【0030】
図4のステップ4a〜4dに示す順序は、図1に示す運動力学に対応する。
【0031】
プーリセクタ106によって、90°から180°への駆動主軸の回転に基づいてケーブル撚り線102を巻き取ることが可能である(ステップ4cおよび4d)。
【0032】
プーリセクタ107によって、90°から180°への駆動主軸の回転に基づいて他方のケーブル撚り線、すなわち撚り線103を巻き出すことが可能である(ステップ4cおよび4d)。
【0033】
被駆動主軸は、第1の展開フェーズ中、いかなる構造においても両回転方向に保持される。この解決法は可逆性であり、駆動主軸の回転が厳密には大きくならなくても(ほぼ平均回転角にわたる振動の場合)、衝撃のない90°への移行を可能とする。
【0034】
当然、ケーブル撚り線を、同様に可撓性バンドまたはベルトに置き替えることもできる。
【0035】
変形実施形態では、巻出機プーリセクタ、すなわちセクタ107をリンク機構に置き替えることができ、そのリンク機構の回転主軸は中心を外れており、リンク機構は、駆動主軸が90°回転したら直ぐに旋回し始める(ステップ4b)。この実施変形例によって、ステップ4a(位置0°)の巻取機プーリセクタ107にケーブル撚り線103によってエルボが生じることを回避することが可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転主軸(10、20)を備える少なくとも1つの2フェーズ関節式展開ラインを含む空間的付属物用の展開装置であって、前記2つの回転主軸用に同期機構(101、102、103、106、107)を備えて、第1の展開フェーズ中に前記駆動主軸(20)が回転するとき、前記被駆動主軸(10)は回転せず、次に、第2の展開フェーズ中に前記駆動主軸が回転するとき、前記被駆動主軸が前記駆動主軸と同期して回転するようにする展開装置において、
−前記同期機構は、前記第1のフェーズ中に、前記駆動主軸が折り畳み位置から中間位置へ回転するとき、前記被駆動主軸を保持することを可能とする保持手段(101、102、103)と、前記第2のフェーズ中に、前記駆動主軸が中間位置から最終位置へ回転するとき、前記被駆動主軸を前記駆動主軸と同期して回転させ前記最終位置に達するようにする解除手段(106、107)とを備え;
−前記保持手段が、前記被駆動主軸(10)にプーリ系(101)を備え、そこから、前記解除手段に互いに独立して取り付けられた2本のケーブル撚り線(102、103)が出て;前記解除手段は、第1の巻取機−巻出機装置(106)、第2の巻取機−巻出機装置(107)を備え、これら装置は偏心しており、前記ケーブル撚り線の一方は前記第1の巻取機−巻出機装置への付着点(104)を備える一方で、他方の撚り線は前記第2の巻取機−巻出機装置への付着点(105)を備え、前記プーリ系および前記巻取機−巻出機装置は前記2本のケーブル撚り線によってつながれていて、前記装置の一方により、ケーブル撚り線を前記駆動主軸の前記中間位置から前記最終位置へと巻き取ることが可能となる一方で、他方の装置により、前記被駆動主軸が前記最終位置に達するまで他方のケーブル撚り線を巻き出すことが可能となることを特徴とする展開装置。
【請求項2】
前記巻取機−巻出機装置が各々プーリセクタ(106、107)を備えることを特徴とする請求項1に記載の展開装置。
【請求項3】
前記中間位置までの前記駆動主軸の回転が90°であり、前記最終位置までの回転が180°であることを特徴とする請求項1または2に記載の展開装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の展開装置を備える太陽発電機。

【図1a−d】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a−d】
image rotate


【公表番号】特表2009−539688(P2009−539688A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514774(P2009−514774)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055727
【国際公開番号】WO2007/144329
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505157485)テールズ (231)