説明

空間線量率モニタ

【課題】放射線検出器の内部温度の変動が小さく、年間を通して安定した測定を行うことができる空間線量率モニタを得る。
【解決手段】環境中の放射線を検出する放射線検出器5と、放射線検出器5の温度を測定する温度センサー6と、放射線検出器5の温度を恒温化するためのヒータ17,ペルチェ素子18と、放射線検出器5を内部に収容するとともに直射日光を反射する検出器外套7とを備えている。また、検出器外套7の内面全体に断熱材19が装着されており、放射線検出器5を熱絶縁している。さらに、放射線検出器5を支持しているスタンドパイプ8に直射日光が当たらないようにするための日除けカバー21も装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空間線量率モニタに関し、特に、原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等における周辺環境の空間線量率を測定するための空間線量率モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等の施設の周辺には、環境放射線レベルを監視するための空間線量率モニタが設置されている。従来の空間線量率モニタは、以下の2通りの設置方法により設置されていることが多い。
(1)放射線を検出するための放射線検出器を内包する検出部が専用の局舎の天井に設置され、測定部が局舎内に設置される場合。
(2)検出部が地表または建屋のポール上に設置され、測定部が建屋内に設置される場合。
【0003】
検出部が局舎の天井に設置される上記の(1)の設置方法における局舎空間線量率モニタの場合は、局舎の天井に開口部を設けて開口部にフランジ付きの短管を設け、検出部をフランジに載せる形で設置し、測定部は空調の効いた局舎内部に設置される。検出部は、直接環境に曝されるため、夏場の直射日光を受ける時は内部が高温になり、冬場の積雪時は低温になる。このため、局舎の空調空気を専用のブロアで送風し、年間を通して装置が安定に動作するようにしている。また、送風で熱量が不足する低温時には検出部内に設置したヒータで昇温し、それでもなお不足する時はブロアに設置したヒータを動作させて加熱した空気を送風している。検出部内に設置したヒータだけでまかなおうとしてその容量を大きくすると検出器がローカルヒートするため、加熱空気の送風を併用している。このように、検出部の温度調整は局舎の空調空気の送風を基本としているために、検出部の温度は、周辺環境からの検出部への熱の出入りと空調空気温度に依存する。一般に年間の外気温度は−10〜40℃であり、空調は冷却のみであるため、局舎内温度は5〜30℃程度で、検出部の内部温度は15〜35℃程度に調整される。
【0004】
なお、検出部が地表または建屋のポール上に設置される上記(2)の設置方法におけるポール型空間線量率モニタの場合は、温度調節は検出部の内部に設置された小容量のヒータのみとなるため、検出部の内部の温度は5〜45℃となる。
【0005】
このように、従来の空間線量率モニタにおいては、検出部の内部温度の年間変動幅が大きい。このため、天然の放射能K−40の放射線が放射線検出器と反応した結果として出力される検出器信号パルスのスペクトルピークを指標として、温度補償を行う方法が提案されている。しかしながら、この方法は、ラドン・トロンの娘核種の放射線により、前記指標となるスペクトルピークが影響を受けてしまうため、前記娘核種の放射線量が変化する降雨時には温度センサーに基づく温度補償に切り換える必要がある。この温度センサーに基づく温度補償は、工場出荷段階で個別に検出器の温度特性を測定し、そのデータに基づく補償係数と補償演算式を測定部にソフトウエアとして搭載し、温度センサーで検出器ケースの温度を測定し、前記ソフトウエアで温度補償を行うという方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特許第3153484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の空間線量率モニタにおける天然の放射能K−40による温度補償は、K−40の放射線の計数率が非常に小さいため、統計的変動を抑制して高精度で指示の温度補償を行うためには数時間に及ぶスペクトル測定が必要となるので、放射線検出器の温度変化に追従できないという問題点があった。
【0008】
また、温度センサーによる温度補償は、熱の出入りにおける熱伝達が異なること及び熱容量が異なることから、温度センサーと放射線検出器の温度変化の過渡応答に違いがあり、それが補償誤差となって指示に影響を及ぼすという問題点があった。
【0009】
更に、検出器に電離箱を使用したものは、電離箱の出力信号が微小電流のために温度の他に湿度の影響も受け易いという問題点があった。
【0010】
湿度対策としては、検出器をその周辺回路を含めて密閉容器の中に封入し、吸湿剤を密閉容器に入れて除湿しているが、密閉容器は高度の気密性が必要なために価格が高くなり、また、定期的に吸湿剤の交換が必要であるという問題点があった。
【0011】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、放射線検出器の温度の変動が小さく、年間を通して安定した測定ができる低価格の空間線量率モニタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、環境中の放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線検出器の温度を恒温化する恒温化手段と、前記放射線検出器を内部に収容するとともに外来光を反射する光反射手段とを備えた空間線量率モニタである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、環境中の放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線検出器の温度を恒温化する恒温化手段と、前記放射線検出器を内部に収容するとともに外来光を反射する光反射手段とを備えた空間線量率モニタであるので、放射線検出器の内部温度の変動が小さく、低価格で、年間を通して安定した測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る空間線量率モニタを図に基づいて説明する。図1に示すように、NaI(TI)シンチレータ1と光電子増倍管2とは光学的に接合され、光電子増倍管2の出力が前置増幅器3に入力されるように接続されている。また、高圧電源9が光電子増倍管2に接続され、光電子増倍管2が蛍光を電子に変換してその電子を増倍するために必要な高圧を供給する。NaI(TI)シンチレータ1と光電子増倍管2と前置増幅器3とが、検出器ケース4に密閉されて、放射線検出器5を構成している。その検出器ケース4の側面の外側には、放射線検出器5の温度変化を測定するための温度センサー6(温度測定手段)が密着するように取り付けられている。検出器外套7(光反射手段)は、放射線検出器5及び温度センサー6を内包してスタンドパイプ8(支持手段)に取り付けられている。検出器外套7は、例えば、熱伝導率の低いプラスチックで成形されており、かつ、外来光(特に、直射日光)の反射効率が高くなるように白色顔料を用いて塗装し、表面を滑らに仕上げたものである。こうすることにより、直射日光は検出器外套7で反射されて表面の温度上昇は環境温度に対して5℃程度以下に抑制することができる。
【0015】
また、リボン状の小型のヒータ17(恒温化手段(加熱/冷却手段))が、検出器ケース4の側面の外側に密着して取り付けられている。ヒータ17は巻回して設けてもよく、あるいは、側面の一部分または全体に密着させて設けるようにしてもよい。環境温度が低く放射線検出器5から熱が奪われる場合には、当該ヒータ17により放射線検出器5を加熱する。また、検出器ケース4の底面の外側には、小型のペルチェ素子18(恒温化手段(加熱/冷却手段))が密着して取り付けられている。ペルチェ素子18の検出器ケース4と反対側の面は、スタンドパイプ8の上部フランジに密着して取り付けられている。環境温度が高く放射線検出器5の冷却が必要な場合には、当該ペルチェ素子18により放射線検出器5を冷却する。なお、図1においては2個のペルチェ素子18が設けられているが、個数については、この限りではなく、必要最小限の個数を設ければよい。また、断熱材19(恒温化手段(熱絶縁手段))が、検出器外套7の内面全体に配置され、断熱材19の内部に放射線検出器5が配置される構成となっている。当該断熱材19により、放射線検出器5を検出器外套7から熱絶縁できるので、外部からの放射線検出器5への熱伝導は緩やかになる。また、日除けカバー21(恒温化手段(日除け手段))が、スタンドパイプ8に直射日光が当たらないように日陰をつくるように配置されている。
【0016】
前置増幅器3の出力は主増幅器10に接続され、主増幅器10の出力はA/D変換器11に接続されている。A/D変換器11は演算部14とデータのやりとりを行うように接続されている。また、温度センサー6の出力は、温度測定部12に接続されている。温度測定部12の出力は、演算部14に接続されるとともに、温度制御部20に接続されている。温度制御部20は、温度測定部12で測定した結果の温度信号を入力し、所定の設定値と比較をしてその差を解消するように、ヒータ17とペルチェ素子18とをON/OFF制御する。また、演算部14の出力は、出力部16を介して、外部に出力されるとともに、D/A変換器13に接続されている。D/A変換器13の出力は主増幅器10に接続される。また、演算部14には、メモリー15が接続されている。メモリー15は演算部14の演算プログラム、演算部14の演算結果としての線量率データ及び各種警報、温度補償係数テーブル、警報の判定基準値、波高データに基づく波高スペクトル、指標スペクトルピークの初期位置を記憶する。
【0017】
NaI(TI)シンチレータ1はγ線が入射すると蛍光を発し、光電子増倍管2はその蛍光を電子に変換して増倍させ、電流パルスを生成する。前置増幅器3はその電流パルスを電圧パルスに変換して、放射線検出器5の出力として外部に出力する。主増幅器10は放射線検出器5から出力された電圧パルスを増幅し、A/D変換器11は、その増幅された電圧パルスの波高をディジタルデータである波高データに変換する。一方、温度測定部12は、温度センサー6の出力を入力し、当該出力を、検出温度に対応した電圧の温度信号に変換する。演算部14は、A/D変換器11からの波高データと温度測定部12からの温度信号とを入力し、当該波高データに重み付けを行って線量率を演算して出力するとともに、当該温度信号とメモリー15の温度補償係数テーブルとに基づき、主増幅器10のゲインを制御するためのディジタルデータを生成する。D/A変換器13は、演算部14で演算されたディジタルデータを増幅器10のゲインを制御できるようなアナログデータに変換して、主増幅器10に対して出力する。また、出力部16は演算結果としての線量率データと警報とを出力して画面表示(警報についてはアラーム音発呼でもよい)を行うとともに、空間線量率モニタの外部に演算結果を出力する。
【0018】
次に、放射線検出器5への熱の出入りの抑制と放射線検出器5の恒温化についての動作を説明する。検出器外套7は、上述したように、例えば、プラスチック成形品で、白色顔料を用いて表面を滑らに仕上げたものである。こうすることにより、直射日光は検出器外套7で反射されて表面の温度上昇は環境温度に対して5℃程度以下に抑制できる。また、検出器外套7の内部に配置された断熱材19で熱伝達は緩やかになっている。
これにより、放射線検出器5に伝達する熱量は軽微な量に抑制されるため、必要な冷却容量は小さくなり、小型のペルチェ素子18を検出器ケース4の底に密着して取り付けることにより、十分な冷却を行うことができる。
また、環境温度が低く放射線検出器5から熱が奪われる逆の場合についても、必要加熱容量が同様の理由により小さくなるので、小型のリボン状ヒータ17を検出器ケース4に密着して取り付けることにより、十分な加熱を行うことができる。
このように、放射線検出器5の熱の出入りを抑制することにより、検出器ケース4を低コストで恒温化することが可能となり、検出器ケース4の恒温化により放射線検出器5の温度特性を抑制することができ、年間を通して安定した測定を行うことができる。
【0019】
以上のように、本実施の形態においては、環境中の放射線を放射線検出器5にて検出し、この放射線検出器5から出力される検出信号に基づいて環境の放射線量を連続測定する空間線量率モニタであって、温度センサー6を用いて放射線検出器5の温度を測定する温度測定手段である温度測定部12と、放射線検出器5を恒温化する恒温化手段であるヒータ17、ペルチェ素子18および演算部14と、放射線検出器5を内包して環境から保護するとともに直射日光(外来光)を反射する光反射手段である検出器外套7と、放射線検出器5を検出器外套7から熱絶縁する熱絶縁手段である断熱材19とを備えるようにしたので、放射線検出器5の内部温度の変動が小さく、当該内部温度の管理が容易になるので、小型のペルチェ素子18や小型のリボン状ヒータ17で恒温化できるので、低消費電力で低価格の空間線量率モニタを得ることができ、当該空間線量率モニタを用いることにより年間を通して安定した測定を行うことができる。
【0020】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2に係る空間線量率モニタを図2に基づいて説明する。図2に示すように、本実施の形態においては、電離箱25と電流/周波数変換器26とが、検出器ケース27内部に密閉して設置されて、放射線検出器28を構成している。検出器ケース27の底面の外側には、除湿器29(除湿手段)が密着して取り付けられている。また、電流/周波数変換器26から出力されるデジタルパルスがカウンタ31に入力されて計数される。カウンタ31により得られた当該計数データは演算部32に入力される。演算部32には、メモリー33と出力部16とが接続されている。
【0021】
また、実施の形態1と同様に、温度センサー6が検出器ケース27の側面の外側に密着して取り付けられており、検出器外套7が放射線検出器28及び温度センサー6を内包してスタンドパイプ8に取り付けられている。検出器外套7の内面全体には、断熱材19が配置されている。温度センサー6の出力は、温度測定部12に接続されている。温度測定部12の出力は演算部32と温度制御部20との両方に接続され、温度制御部20は温度測定部12で測定した結果の温度信号を所定の設定値と比較してその差を解消するように、ペルチェ素子18を制御する。なお、本実施の形態においても、小型のペルチェ素子18は、検出器ケース27の底に密着して取り付けられている。また、本実施の形態においても、日除けカバー21が、スタンドパイプ8に直射日光が当たらないように日陰をつくるように配置されている。
【0022】
電離箱25は空間のγ線と反応して封入したガスを電離させて電離電流を出力する。高圧電源30は電離箱25内で発生したイオンと電子を電極に集電するための高電圧を供給する。電流/周波数変換器26は、電離箱25から出力されるその電離電流を、例えば電流に比例した周波数のデジタルパルスに変換し、放射線検出器28からの出力として出力する。カウンタ31は放射線検出器28から出力されたデジタルパルスを計数する。演算部32は、カウンタ31の計数データと温度測定器12からの温度信号とを入力し、前記計数データを計数率に変換し、その計数率に基づき線量率を演算して出力するとともに、温度信号とメモリー33に記憶されている温度補償係数テーブルに基づき、線量率の温度補償を行う。メモリー33は、演算部32の演算プログラム、演算部32の演算結果としての線量率データ及び各種警報、温度補償係数テーブル、警報の判定基準値を記憶する。なお、演算結果の線量率は環境放射線量の工学値の一例であり、当然のことであるが線量当量率としてもよい。
【0023】
図3は、本実施の形態で使用される除湿器29の固体電解質膜の機能構造を示した図である。図3に示すように、除湿器29は、固体電解質膜291と、陽極292と、陰極293と、取付板294と、取付穴295とで構成される。除湿器29は、陽極292側から水蒸気を取り込んで、陰極293側から外部に放出する。固体電解質膜291は、例えばプロトン伝導性を有する機能膜である。固体電解質膜291は陽極292と陰極293とで挟んだ構造になっている。陽極292と陰極293との間に直流電圧3V程度を印加すると水素イオンが水分子を伴って固体電解質膜291中を移動する。陽極292と陰極293は多孔質でかつ触媒作用を有し、陽極292は水蒸気を取り込んでその触媒作用で酸素イオンと水素イオンに分解し、酸素イオンは陽極292の表面で酸素ガスになり気密ボックスである検出器外套7内部に放出され、水素イオンは固体電解質膜291の内部を電界で移動し、陰極293の触媒作用により外気の酸素と結合して水蒸気として放出される。この時、水素イオンに付いてきた水も陰極293の表面から蒸発して外気に放出される。このようにして、検出器外套7内部の除湿が行われる。従って、陽極292が検出器外套7内に設けられて陰極293が外部に接するような向きに設置されることは言うまでもない。
【0024】
固体電解質膜291は、例えば、デュポン社のナフィオン(商品名)等から構成すればよく、これは、手で触っても害のない電気絶縁性の透明なフィルムである。なお、陽極292と陰極293との間に加える電圧は、3V程度と低く万一漏電しても安全である。この膜は、図4の化学式に示されるように、フッ素系の樹脂を主鎖に持ち、プロトンを付加することができるスルフォニル基SOを側鎖に持つ構造になっている。図4は、ナフィオンを使った固体電解質膜291の内部を水素イオンが移動するメカニズムを示すもので、水素イオンはスルフォニル基SOを伴って電界の方向に移動する。
【0025】
このように、本実施の形態においては、放射線検出器28の内部の空間を除湿する除湿手段である除湿器29を備え、ペルチェ素子18による放射線検出器28の温度の変化抑制に加えて、固体電解質膜291を使用した除湿器29により、電離箱25を好適な条件下に保つことができるので、安定した測定を行うことができる。また、除湿器29に固体電解質膜291を用いるようにしたので、吸湿剤交換等の保守を軽減することができる。
【0026】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3に係る空間線量率モニタを図5に基づいて説明する。図5は、検出器外套7の構造を示している。図5において、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics,炭素繊維強化樹脂)34は、炭素繊維に樹脂を含浸させて固化させた成形品で、表面層35は酸化チタンを白色顔料として用いてゲルコート処理し、白色の滑らかな表面に仕上げたものである。このようにすることにより、炭素繊維により検出器外套7が補強されるとともに、酸化チタンの光触媒作用により、日光に含まれる紫外線で表面の付着物が活性酸素で分解され、雨で流されて洗浄され、また、苔等の繁殖が抑制されるため、直射日光の反射効率が劣化することを長時間にわたり防止することができる。このため、年間を通して安定した測定を行うことができる。なお、他の構成については、上記の実施の形態1または実施の形態2と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0027】
以上のように、本実施の形態においては、光反射手段として、炭素繊維に樹脂を含浸させて固化させた成形品を、白色顔料を用いてゲルコート処理して白色の滑らかな表面に仕上げた検出器外套7を備え、白色顔料に酸化チタンを含ませ、酸化チタンの触媒作用により付着物を分解清掃するようにしたので、酸化チタンの光触媒作用により、日光に含まれる紫外線で表面の付着物が活性酸素で分解され、雨で流されて洗浄され、また、苔等の繁殖が抑制されるため、直射日光の反射効率が劣化することがないので、年間を通して安定した測定を行うことができる。
【0028】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4に係る空間線量率モニタを図6に基づいて説明する。図6において、日除けカバー21(恒温化手段(日除け手段))は、スタンドパイプ8への直射日光による加熱を防ぐため、例えば、検出器外套7と同種の太陽光を透過しない材料で作られたカバーである。スタンドパイプ8は、大地24中に敷設された電線管23内に通された検出器ケーブル22が通過し、かつ、放射線検出器(5または28)を支える構造になっている。スタンドパイプ8に日除けカバー21を装着することにより、スタンドパイプ8の直射日光による加熱を防ぐことが出来るので、スタンドパイプ8内の空気が対流することにより、検出器外套7内の温度の上昇を抑えることができる。その結果として、検出器外套7内の温度を恒温に保つことが容易となり、年間を通して安定した測定を行うことができる。なお、他の構成については、上記の実施の形態1または実施の形態2と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、放射線検出器5,28を恒温化する手段として、さらに、放射線検出器5,28のスタンドパイプ8に日除けカバー21を装着するようにしたので、スタンドパイプ8の直射日光による加熱を防ぐことが出来るので、スタンドパイプ8内の空気が対流することにより、検出器外套7内の温度の上昇を抑えることができる。その結果として、検出器外套7内の温度を恒温に保つことが容易となり、年間を通して安定した測定を行うことができる。
【0030】
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5に係る空間線量率モニタを図7に基づいて説明する。図7に示すように、本実施の形態においては、放射線検出器5に対して、熱交換器37が接触して設けられている。熱交換器37には、管38を介して、恒温水循環器36が設けられている。恒温水循環器36の内部には、ヒータと冷凍器とが設けられていて(図示省略)、それらを用いて、水温が一定の恒温水を生成する。生成された恒温水は、管38を通って熱交換器37まで流れ、放射線検出器5の中を通過する。放射線検出器5の内部は当該恒温水により冷却または加熱されて、一定の温度に保たれる。このように、熱交換器37、管38および恒温水循環器36は、恒温流体を放射線検出器5の中を通過させる恒温流体通過手段を構成している。なお、本実施の形態における他の構成は、図1に示した実施の形態1の構成と同じであるため、同一符号により示し、ここではその説明を省略する。但し、本実施の形態においては、図1で示したヒータ17とペルチェ素子18とが設けられていないが、必要であれば、恒温水循環器36と併用するようにしてもよい。また、断熱材19と日除けカバー21とは、図示されていないが、必要に応じて、適宜設けるようにすれば、恒温化の効率がより向上する。
【0031】
図7において、恒温水循環器36は、ヒータと冷凍器をオン/オフ制御することにより恒温水を作り、この恒温水をポンプにより循環させる装置である。この恒温水循環器36から恒温水を、放射線検出器5に接触して備えつけられた熱交換器37に対して、管38を通して導き、循環するように構成している。
【0032】
放射線検出器5に取り付けられた温度センサー6の出力が温度測定部12に入力され、放射線検出器5の温度が測定される。測定された温度は、演算部14に入力され、恒温水循環器36の設定温度が変更される。恒温水循環器36の運転制御は、このようにして実施される。この閉ループによる温度制御により、年間の季節変動による、大幅な温度変化に対しても放射線検出器5の中を恒温に保つことが出来る。
【0033】
以上のように、本実施の形態においては、放射線検出器5を恒温化する手段として、温度センサー6の出力を用いて、ヒータと冷凍器とを有する恒温水循環器36を制御することにより、恒温水を放射線検出器5の中を通過させる構造としたので、閉ループによる温度制御により、年間の季節変動による、大幅な温度変化に対しても放射線検出器5の中を恒温に保つことが出来る。
【0034】
なお、上記の説明においては、恒温水を例に挙げて述べたが、この場合に限らず、恒温化できるものであれば任意の恒温流体を用いることができる。また、上記の説明においては、本実施の形態の構成を実施の形態1に適用した例について述べたが、その場合に限らず、実施の形態2〜4のいずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空間線量率モニタの構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る空間線量率モニタの構成を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る空間線量率モニタにおける除湿器の構成を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る空間線量率モニタにおける除湿器の固体電解質膜の一つであるナフィオンの水素イオンが移動するメカニズムを示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る空間線量率モニタにおける検出器外套の構成を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係る空間線量率モニタの構成を示す部分構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係る空間線量率モニタの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 NaI(TI)シンチレータ、2 光電子増倍管、3 前置増幅器、4 検出器ケース、5 放射線検出器、6 温度センサー、7 検出器外套、8 スタンドパイプ、9 高圧電源、10 主増幅器、11 A/D変換器、12 温度測定部、13 D/A変換器、14 演算部、15 メモリー、16 出力部、17 ヒータ、18 ペルチェ素子、19 断熱材、20 温度制御部、21 日除けカバー、22 検出器ケーブル、23 電線管、24 大地、25 電離箱、26 電流/周波数変換器、27 検出器ケース、28 放射線検出器、29 除湿器、30 高圧電源、31 カウンタ、32 演算部、33 メモリー、34 CFRP、35 表面層、36 恒温水循環器、37 熱交換器、38 管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線検出器の温度を恒温化する恒温化手段と、
前記放射線検出器を内部に収容するとともに外来光を反射する光反射手段と
を備えたことを特徴とする空間線量率モニタ。
【請求項2】
前記恒温化手段は、
前記放射線検出器と前記光反射手段との間に設けられ、前記放射線検出器を前記光反射手段から熱絶縁する熱絶縁手段を含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の空間線量率モニタ。
【請求項3】
前記放射線検出器の内部温度を測定する温度測定手段をさらに備え、
前記恒温化手段は、
前記温度測定手段からの出力に基づいて、前記放射線検出器を加熱または冷却する加熱/冷却手段を含んでいる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空間線量率モニタ。
【請求項4】
前記放射線検出器の内部の空間を除湿する除湿手段をさらに備え、
前記除湿手段は固体電解質膜を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空間線量率モニタ。
【請求項5】
前記光反射手段は、炭素繊維に樹脂を含浸させて固化させた成形品を、酸化チタンを含む白色顔料を用いてゲルコート処理した検出器外套を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空間線量率モニタ。
【請求項6】
前記放射線検出器を支持する支持手段をさらに備え、
前記恒温化手段は、前記支持手段に装着された日除け手段を含んでいることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空間線量率モニタ。
【請求項7】
前記恒温化手段は、
前記放射線検出器の温度を測定する温度測定手段からの出力に基づいて、前記放射線検出器の中に恒温流体を通過させる恒温流体通過手段を含んでいる
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空間線量率モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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