説明

穿刺針カートリッジとそれを用いた穿刺器具

【課題】本発明は、穿刺針カートリッジおよびそれを用いた穿刺器具に関するもので、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止することを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために、本発明は、保護キャップ32の後端側に外周に広がった再装着防止鍔32aを形成するとともに、ホルダー39の再装着防止鍔32aよりも前方側に再装着防止爪39aを設け、この再装着防止爪39aは、ホルダー39の内外周方向に可動自在な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば血糖値を測定するために、人体に針を穿刺し、血液を流出させる穿刺針カートリッジとそれを用いた穿刺器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種、穿刺針カートリッジの構成は、以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、前端側で穿刺針を保持し、後端側に穿刺器具への装着部を有するランセット本体と、後端側が前記ランセット本体の前端側に破断部を介して一体化されるとともに、前記穿刺針を覆い、前端側には、連結部を介して前記破断部に連結された回動操作部を有する保護キャップと、前記ランセット本体の前端側と、前記保護キャップの前記破断部および前記連結部の外周を覆ったホルダーと、を備えた構成であった(たとえば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/129757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例においては、この穿刺針カートリッジを穿刺器具の本体ケースに装着後、回動操作部を回動させれば、保護キャップをランセット本体から容易に取り外す事が出来るので、その後、穿刺ボタンを操作すれば、穿刺器具の本体ケースから穿刺針が突出し、これにより、穿刺による採血が出来るようになっている。
【0006】
この採血が終了後、穿刺針カートリッジは本体ケースから取り外され、次の採血時には、新しい穿刺針カートリッジが、本体ケースに装着される事になる。
【0007】
つまり、衛生の観点から、穿刺針の再利用は行わない事となっている。
【0008】
しかしながら、本体ケースから取り外された穿刺針カートリッジに、誤って保護キャップを再装着してしまうと、この穿刺針カートリッジを再利用することが可能な状態となる事もあり、このような誤った対応が、なされるのを阻止することが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するために本発明は、前端側で穿刺針を保持し、後端側に穿刺器具への装着部を有するランセット本体と、後端側が前記ランセット本体の前端側に破断部を介して一体化されるとともに、前記穿刺針を覆い、前端側には、連結部を介して前記破断部に連結された回動操作部を有する保護キャップと、前記ランセット本体の前端側と、前記保護キャップの前記破断部および前記連結部の外周を覆ったホルダーと、を備え、前記保護キャップの後端側に外周に広がった再装着防止鍔を形成するとともに、前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成とし、これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、前端側で穿刺針を保持し、後端側に穿刺器具への装着部を有するランセット本体と、後端側が前記ランセット本体の前端側に破断部を介して一体化されるとともに、前記穿刺針を覆い、前端側には、連結部を介して前記破断部に連結された回動操作部を有する保護キャップと、前記ランセット本体の前端側と、前記保護キャップの前記破断部および前記連結部の外周を覆ったホルダーと、を備え、前記保護キャップの後端側に外周に広がった再装着防止鍔を形成するとともに、前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成としたものであるので、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止する事が出来るものとなる。
【0012】
すなわち、本発明においては、前記保護キャップの後端側に外周に広がった再装着防止鍔を形成するとともに、前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成としたものであるので、この穿刺針カートリッジが、穿刺器具の本体ケースに装着された状態では、ホルダーの再装着防止爪は、ホルダーの外周方向に移動した状態となっている。したがって、この状態では、保護キャップを穿刺針カートリッジから分離することが出来るようになる。また、穿刺による採血後には、この穿刺針カートリッジは前記穿刺器具の本体ケースから取り外されることになるが、この時には、前記再装着防止爪はホルダーの内周方向に移動した状態となる。このため、一旦分離されている保護キャップを穿刺針方向に挿入しようとしても、この保護キャップに設けた再装着防止鍔が、前記内周方向に移動した再装着防止爪に当接し、これにより、それ以上の挿入が行えず、その結果として、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止する事が出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる穿刺器具の斜視図
【図2】同、分解斜視図
【図3】同、使用状態を説明する斜視図
【図4】同、使用状態を説明する斜視図
【図5】同、使用状態を説明する斜視図
【図6】同、要部を示す図
【図7】同、要部を示す図
【図8】同、要部を示す図
【図9】同、要部を示す図
【図10】同、使用状態を説明する図
【図11】同、使用状態を説明する図
【図12】同、使用状態を説明する図
【図13】同、使用状態を説明する図
【図14】同、穿刺針カートリッジを示す斜視図
【図15】同、穿刺針カートリッジを示す斜視図
【図16】同、穿刺針カートリッジを示す斜視図
【図17】同、穿刺針カートリッジの要部を示す図
【図18】同、穿刺針カートリッジの要部を示す図
【図19】同、穿刺針カートリッジの要部を示す図
【図20】同、穿刺針カートリッジの装着状態を示す図
【図21】同、穿刺針カートリッジの装着状態を示す図
【図22】同、穿刺針カートリッジの装着状態を示す図
【図23】同、穿刺針カートリッジのランセット本体を示す図
【図24】同、穿刺針カートリッジの保護キャップを示す図
【図25】同、穿刺針カートリッジの保護キャップが外された状態を示す断面図
【図26】同、穿刺針カートリッジの保護キャップを再装着しようとする状態を示す断面図
【図27】同、穿刺針カートリッジの保護キャップを再装着しようとする状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1において、1は円筒状の本体ケースで、その下端側の開口には、図2に示す穿刺深さ調整リング2と先端リング3が装着されている。この内、穿刺深さ調整リング2は、周知のごとく、これを回動することで、穿刺針(図13の4)の穿刺深さを調整するものである。
【0015】
また、先端リング3は、穿刺深さ調整リング2よりも下端側に位置しており、この先端リング3の開口部が前記本体ケース1の穿刺用開口部5となっている。
【0016】
次に、前記本体ケース1の上端開口部には、周知のごとく、穿刺針4を排出するための操作ボタン6が装着されている。
【0017】
また、本体ケース1の中ほどの表面には、穿刺針4の穿刺ボタン7が配置されている。
【0018】
さらに、本体ケース1内には、図2に示すごとく、ベース部材8と、このベース部材8に摺動自在に取付けた針保持体9と、同じくベース部材8に摺動自在に取付けた穿刺針排出部材10が設けられている。
【0019】
前記ベース部材8は、図6に示すような構成となっている。
【0020】
すなわち、図6(a)は、このベース部材8の上面側の斜視図、図6(b)は、このベース部材8の下面側の斜視図、図6(c)は、このベース部材8の上面図、図6(d)は、このベース部材8の下面図、図6(e)は、このベース部材8の一方側の側面図、図6(f)は、このベース部材8の他方側の側面図である。
【0021】
このベース部材8は、前記本体ケース1内に固定されており、この固定状態のベース部材8に対して、次に詳細に説明するように、前記針保持体9と、穿刺針排出部材10が摺動自在に取付けられているのである。
【0022】
また、このベース部材8の中ほどの上面には、外周方向に突出する取付片11が、設けられており、この取付片11に前記穿刺ボタン7が本体ケース1の開口部12を貫通して取付けられている。
【0023】
さて、前記針保持体9は、図7に示すような構成となっている。図7(a)は、この針保持体9の上面側の斜視図、図7(b)は、この針保持体9の下面図、図7(c)は、この針保持体9の上面図、図7(d)は、この針保持体9の一方の側面図、図7(e)は、この針保持体9他方側の側面図である。
【0024】
この図7および図10に示すように、針保持体9の下端側には、針保持部13が設けられ、この針保持部13の上方には、棒形状の連結部14を設け、この棒形状となった連結部14の外周には、図2に示すコイル形状となった弾性体15を配置している。
【0025】
このコイル形状となった弾性体15の下端側は、前記針保持体9の中ほどに設けた当接面16に当接させられている。
【0026】
なお、この当接面16近傍の弾性体15の外周に設けた突起17は、針保持体9が、図11、図12のごとく、穿刺準備完了状態を示すために用いたものである。つまり、この突起17は、着色(たとえば、緑色)されており、この突起17が図10の状態から図12の状態に上端側に移動した場合には、本体ケース1の外周に設けた表示窓17aに前記突起17が表出することとなり、これにより、穿刺準備が完了したことを使用者に知らしめるようにしている。
【0027】
また、前記弾性体15の上端側は、図6に示すベース部材8の上端側に設けた当接面18に当接させている。つまり、弾性体15の上端側は、ベース部材8の当接面18に常に当接した状態となっており、また、この弾性体15の下端側は上述のごとく、針保持体9の当接面16に当接しており、この結果として、針保持体9が、図11に示すごとく、上端側に移動させられた時には、弾性体15は圧縮され、その後、針保持体9が、図13に示すごとく、下端側に移動する時には、伸長される。
【0028】
なお、図10から図13は、その動作状態を説明するものであって、詳細は後で説明するが、図10は、針保持体9に穿刺針カートリッジ19を装着する前の状態を示し、図11は、針保持体9に穿刺針カートリッジ19を装着する途中の状態を示し、図12は、針保持体9に穿刺針カートリッジ19を装着した後の状態を示し、図13は、針保持体9に穿刺針カートリッジ19を装着した状態で、穿刺動作を行った状況を示している。
【0029】
さて、図10から図13からも理解されるように、針保持体9の連結部14の上端側は、回動体20に連結されている。具体的には、回動体20は、前記本体ケース1の上下方向に直交する方向に配置された板形状としており、その中部がベース部材8の上端側に設けられた回動軸21に回動自在に軸支されている。この回動体20は、図9に示すような構成となっている。図9(a)は、この回動体20の斜視図を示し、図9(b)は、この回動体20の上面図を示し、図9(c)は、この回動体20の一方の側面図を示している。この図9から明らかなように、回動体20の中ほどには、前記回動軸21が突入する貫通孔22が形成され、また、右側には、図7のごとく、前記針保持体9の連結部14の上端側に形成された突起23が嵌合する細溝状態の貫通孔24が形成されており、さらに、左側には、図10から図13に示したコイル状の弾性体25の上端側が係合する係合部26が形成されている。前記貫通孔24は、図9から理解されるように、表裏面側に重なるように、2箇所に設けられており、この2箇所の貫通孔24に上述した図7に示す表裏面側の突起23が、嵌合するようになっている。
【0030】
前記弾性体15および弾性体25は、回動体20よりも本体ケース1の下端側に設けられたものであって、前記弾性体25の下端は、図6(b)、図6(d)に示す突起27に取付けられている。
【0031】
次に、前記ベース部材8に対して上下方向に摺動自在に取付けられた穿刺針排出部材10は、図8に示すような構成となっている。図8(a)は、この穿刺針排出部材10の上面側の斜視図、図8(b)は、この穿刺針排出部材10の上面図、図8(c)は、この穿刺針排出部材10の下面図、図8(d)は、この穿刺針排出部材10の一方側の側面図、図8(e)は、この穿刺針排出部材10の他方側の側面図を示している。
【0032】
この穿刺針排出部材10の上端側には、周知のごとく、穿刺針カートリッジ19を排出するための操作ボタン6が取付けられる取付部28が設けられ、また、下端側には、穿刺針カートリッジ19を排出するための押圧部29が設けられ、さらに、中部には、操作ボタン6を上方に付勢するキックバネ30が装着されている。
【0033】
上記構成において、図3、図10は、本体ケース1に穿刺針カートリッジ19を装着する前の状態を示しており、図4、図5、図11は、本体ケース1に穿刺針カートリッジ19を装着している状態を示している。
【0034】
図11から理解されるように、本体ケース1の下端の穿刺用開口部5から穿刺針カートリッジ19を挿入すると、図2に示した針保持体9の下端側の針保持部13内に、前記穿刺針カートリッジ19の装着部31が挿入されるとともに、針保持体9を上方へと移動させる事になる。このように、針保持体9が、上方に移動させられると、この図11に示すごとく、針保持体9の連結部14によって、回動体20の弾性体15側が押し上げられた状態となる。この状態で、穿刺針カートリッジ19の先端側の保護キャップ32をねじ切り、図12の状態とする。この図12の状態においては、針保持体9に設けた係止突起33が、図6に示すベース部材8の取付片11間に設けた係止孔34に係合し、その結果として、針保持体9は、図12に示すように、上方位置で保持される。
【0035】
この時、針保持体9の上方移動に伴い、弾性体15は、図12に示すごとく、圧縮された状態となっている。
【0036】
この状態で、使用者は、この図12に示す穿刺針カートリッジ19の皮膚当接部(針保持体9に保持された穿刺針カートリッジ19の、残存している部分の先端側)19aを皮膚に当接させ、その後、穿刺ボタン7を押すと、係止孔34が穿刺針排出部材10側に押され、その結果として、係止突起33の係止孔34への係止が解除され、図13に示す状態となる。
【0037】
つまり、圧縮された弾性体15の伸長により、針保持体9が下端側に勢いよく押され、この結果、図13に示すごとく、皮膚当接部19aから穿刺針4が皮膚側に突出し、穿刺することになるのである。
【0038】
次の瞬間、回動体20の貫通孔24とは反対側を弾性体25が引張る力により、穿刺針4は、本体ケース1内に戻ることとなる(回動体20の状態は、ほぼ図10の状態)。
【0039】
そして、この弾性体25による引張力により、穿刺針4は、再び皮膚当接部19a外に突出することはなくなる。
【0040】
本実施形態においては、上述のごとく、弾性体15によって前記皮膚当接部19a(穿刺用開口部5)側に移動させられた前記針保持体9を前記本体ケース1内の上端側に引き戻す弾性体25を設けるとともに、前記本体ケース1内の前記針保持体9の針保持部13よりも上方に、回動軸21の両側が回動する回動体20を設けた。また、この回動体20の一側に前記針保持体9の連結部14を連結させるとともに、この回動体20の他側に前記弾性体25を連結させ、前記回動体20の回動軸21を前記本体ケース1に固定したものである。なお、回動体20の回動軸21は、ベース部材8に固定されており、このベース部材8は、本体ケース1に固定されているので、結論として、回動体20の回動軸21が本体ケース1に固定された状態になっているのである。
【0041】
このため、穿刺針4の再突出の防止は回動体20の回動によって行われることとなり、つまり、従来のような衝突壁を設けるものとは異なり、衝突音が発生しないので、その結果として、穿刺時における異音の発生を抑制することが出来るものである。
【0042】
以上の説明で、本実施形態における基本的な構成および動作が理解されたところで、以下に本実施形態の特徴点について説明する。
【0043】
まず、本実施形態の第一の特徴点について、図14から図24を用いて説明する。
【0044】
本実施形態における前記穿刺針カートリッジ19は、図14から図16のような構成となっているが、まずは、図17を用いて詳細に説明する。
【0045】
図17(a)は正面図、図17(b)は左側側面図、図17(c)は後面図、図17(d)は右側側面図、図17(e)は(a)のA−A線断面図である。
【0046】
すなわち、図17に示すごとく、前記穿刺針カートリッジ19は、前端側で穿刺針4を保持し、後端側に穿刺器具の本体ケース1に装着する装着部31を有する棒状のランセット本体35と、後端側が前記ランセット本体35の前端側に破断部36を介して一体化されるとともに、前記穿刺針4を覆い、前端側には、連結部37を介して前記破断部36に連結された回動操作部38を有する保護キャップ32と、前記ランセット本体35の前端側と、前記保護キャップ32の前記破断部36および前記連結部37の外周を覆った図18に示すホルダー39と、を備えている。
【0047】
前記ランセット本体35と前記保護キャップ32は、図17に示すごとく、直線状に一体化されており、この状態で、図18に示すホルダー39の前端側(図18の下側)から挿入することで、図19に示すごとく、ランセット本体35、保護キャップ32、ホルダー39が一体化されるものとなる。
【0048】
つまり、この状態において、ランセット本体35の装着部31は、図19に示すごとく、ホルダー39の後方へと(図18の上側)突出した状態となっている。また、保護キャップ32の回動操作部38は、ホルダー39の前端側より前方側に配置された状態となっている。
【0049】
前記、保護キャップ32の回動操作部38は、図17に示すごとく、円板状の基部40を有し、この基部40の外周には、後方に延長された係合爪41を設けている。
【0050】
また、図18に示すごとく、前記ホルダー39の前端側の外周には、前記係合爪41が図15、図16のごとく、係合する係合鍔42を設けている。この係合鍔42は、前記係合爪41の排出空間(図14の43)を介した環状形状とし、この係合鍔42の前記排出空間43の両側部分の後辺側には、図14から理解されるように、前記係合爪41をホルダー39の外周方向に案内する案内部44を設けている。
【0051】
また、この係合鍔42の前記排出空間43の両側部分の前辺側には、図18に示すように、前記係合爪41をホルダー39の前方方向に案内する案内部45を設けている。なお、図18(a)は左側側面図、図18(b)は後面図、図18(c)は右側側面図、図18(d)は正面図、図18(e)は(a)のB−B線断面図、図18(f)は前面図、図19(a)は正面図、図19(b)は断面図、図19(c)は側面図である。
【0052】
図20から図22は、穿刺針カートリッジ19を本体ケース1に装着する状態を示しており、穿刺針カートリッジ19を本体ケース1内に押込めば、この穿刺針カートリッジ19の装着部31が、針保持体9の針保持部13によって、保持される。また同時に、図20、図10、図11からも理解されるように、ベース部材8の下端に設けた突起46が、ホルダー39の後端側に、図20、図10、図11のごとく形成された係合部47に、係合する。このように、穿刺針カートリッジ19は、その装着部31が、針保持体9の針保持部13によって保持されることで、前後方向の固定が行われ、また、その係合部47にベース部材8の突起46が係合することで、外周方向への固定が行われ、この結果として、穿刺針カートリッジ19は、図11のごとく、本体ケース1の穿刺用開口部5に装着されることとなる。なお、係合部47は、ホルダー39の対向する2箇所(180度の間隔)で形成されているのに対して、突起46は、ベース部材8に90度の間隔で4箇所形成されており、したがって、2箇所の突起46が係合部47に係合した状態となっている。そして、残りの2箇所の突起46は、後述のごとく、図24のごとく分離された保護キャップ32の再装着防止に活用される。
【0053】
次に、図11の状態から、穿刺針カートリッジ19の後端側に設けた回動操作部38を半周以上、右でも左でも回動させれば、図12のごとく、穿刺針カートリッジ19の保護キャップ32が、本体ケース1に装着された穿刺針カートリッジ19から取り外されることになる。
【0054】
このように、保護キャップ32が、穿刺針カートリッジ19から取り外される理由については、後で詳細に説明するが、取り外された状態の保護キャップ32は、図24に示している。
【0055】
また、本体ケース1内に残されたランセット本体35は、図23のような状態となっている。なお、図23においては、ランセット本体35の穿刺針4が表出した状態を示すために図示していないが、このランセット本体35は、図18に示したホルダー39内に保持された状態となっている。
【0056】
このように、ランセット本体35から保護キャップ32を取り外した状態でも、ランセット本体35がホルダー39内に保持される理由は、このランセット本体35には、図23に示すごとく、外周方向の水平方向に2本のアーム48が設けられ、また、このアーム48に直交する水平方向には2本の突起49が設けられている。
【0057】
また、これらに対応するようにホルダー39の外周に90度間隔で開口部50が形成され、これらの開口部50に前記アーム48と突起49が嵌入させられており、この結果として、上述のごとく、ランセット本体35から保護キャップ32を取り外した状態でも、ランセット本体35がホルダー39内に保持されるのである。なお、図23(a)は正面図、図23(b)は左側側面図、図23(c)は後面図、図23(d)は右側側面図、図24(a)は正面図、図24(b)は左側側面図、図24(c)は後面図、図24(d)は右側側面図である。
【0058】
さて、本実施形態においては、上述のごとく、穿刺針カートリッジ19の後端側に設けた回動操作部38を半周以上、右方向でも、左方向でも回動させれば、図12のごとく、穿刺針カートリッジ19の保護キャップ32が、この穿刺針カートリッジ19から(本体ケース1の穿刺用開口部5から)取り外されることになることが特徴の一つであって、以下、この点について詳細に説明する。
【0059】
まず、保護キャップ32の基部40の外周には、係合爪41が設けられており、この係合爪41は、ホルダー39の前端側に設けた係合鍔42の装着部31側の面に沿って、摺動することになる。この係合鍔42は、上述のごとく、前記係合爪41の排出空間(図14の43)を介した環状形状とし、この係合鍔42の前記排出空間43の両側部分の後辺側(装着部31側の面)には、図14から理解されるように、前記係合爪41をホルダー39の外周方向に案内する案内部44を設けている。
【0060】
このため、回動操作部38を右方向でも、左方向でも回動させればやがて、係合爪41は、この案内部44に案内されて、外周方向に移動し、次の瞬間、この案内部44を乗り越えて、排出空間43に到達し、その後、案内部45によってこの係合爪41はホルダー39の前方方向に案内移動させられる。
【0061】
この状態において、回動操作部38は、180度以上回動させられた事となり、しかも、案内部44によって外周方向に案内移動させられ、その後、案内部45によって、前方側に案内移動させられるので、破断部36は破断させられ、この両者は、図23、図24のごとく、分離される。
【0062】
このように、本実施形態においては、回動操作部38を、右方向でも、左方向でも回動させれば、破断部36を容易に破断させ、穿刺針4を本体ケース1内に残した状態で、表出させることが出来、極めて使い勝手の良いものとなる。
【0063】
さらに本実施形態においては、以上の構成に加え、下記の構成を追加することで、回動操作部38を、右方向でも、左方向でも回動させれば、破断部36を容易に破断させることが出来るようにしている。
【0064】
すなわち、本実施形態においては、図17に示すごとく、前記保護キャップ32の基部40の後面側(装着部31側の面)で、係合爪41の内周方向に突起51を設けている。
【0065】
また、この突起51の回動径に対応する前記ホルダー39の係合鍔42の排出空間43の内方には、図18(f)に示すように、前記突起51が摺動するガイド部52を形成している。
【0066】
このガイド部52の中部は、その両端よりも前方側に湾曲させている。つまり、このガイド部52の中部(排出空間43の中部)は、前方側(回動操作部38側)に突出し、その両側は、後方側(装着部31側)に向けて連続的に緩やかな傾斜を持って下降した状態となっている。
このため、回動操作部38を右方向でも、左方向でも回動させればやがて、突起51は、ガイド部52の下部から徐々に前方側へと案内され、この結果、上述した案内部44による外周方向への移動および案内部45による前方方向への案内移動が、よりスムーズに行われることとなり、これにより、破断部36は効果的に破断させられ、極めて使い勝手の良いものとなるのである。
【0067】
また、本実施形態においては、穿刺針4先端の再突出を防止することも出来るものである。
【0068】
すなわち、図13によれば、穿刺針4先端が上述のごとく、前記穿刺針カートリッジ19の皮膚当接部19aから(本体ケース1から)突出した状態となっている。そして、この時には弾性体25が伸びた状態となっているので、次の瞬間には、弾性体25が元の状態へと縮み、その結果として、針保持体9が引き上げられ、穿刺針4先端も、前記本体ケース1の穿刺用開口部5内に戻されることとなる(ほぼ図10の状態)。
【0069】
この時、図10と図12の比較から明らかなように、弾性体15は、ほとんど圧縮されていない状態となっており、このような状態であれば、この弾性体15が、再び、穿刺針カートリッジ19を介して穿刺針4先端を前記穿刺針カートリッジ19の皮膚当接部19a(本体ケース1)外へと再突出させようとする力よりも、弾性体25がそれを阻止する力の方が大きいため、結論として、穿刺針4先端の再突出を防止することが出来るものである。
【0070】
次に、本実施形態の第二の特徴点について、図25から図27も加えて説明する。
【0071】
図25は、図11のように、穿刺針カートリッジ19を本体ケース1内に装着後、その保護キャップ32を取り外した状態を示している。
【0072】
この時、上述した図20、図21のごとく、穿刺針カートリッジ19を構成するホルダー39の対向する2箇所(180度の間隔)には、係合部47が形成されているのに対して、対向するベース部材8には、90度の間隔で4箇所に突起46が形成されている。
【0073】
したがって、2箇所の突起46が係合部47に係合した状態となっており、残りの2箇所の突起46は、図24のごとく分離された保護キャップ32の再装着防止に活用される。
【0074】
具体的には、前記保護キャップ32の後端側に、図25、図17のごとく、外周に広がった円板状の再装着防止鍔32aを形成している。
【0075】
また、図25、図18、図19に示すように、前記ホルダー39の再装着防止鍔32aよりも前方側で、対向する2箇所には、再装着防止爪39aを設け、この再装着防止爪39aは、前記ホルダー39の内外周方向に可動自在な構成としている。
【0076】
再装着防止爪39aの後端側(ベース部材8側)には、内周が前方側、外周が後方側となった傾斜面39bが形成されており、穿刺針カートリッジ19が、本体ケース1に装着された状態では、図25に示すごとく、前記2つの再装着防止爪39aのそれぞれの傾斜面39bを、前記残り2つの突起46が、それぞれ外周方向に押し広げることとなる。
【0077】
このため、この図25に示すごとく、ホルダー39内に再装着防止爪39aが、突入していない状態となる。
【0078】
したがって、穿刺針4から保護キャップ32を分離し、ホルダー39外に取り出す時には、保護キャップ32の再装着防止鍔32aが前記再装着防止爪39aに当接することはなく、スムーズに図25に示すごとく、取り出すことが出来る。
【0079】
さて、穿刺針4の穿刺による採血が終わった状態では、上述のごとく、操作ボタン6を押し下げる事で、図26のごとく、穿刺針カートリッジ19を本体ケース1外に排出することになる。
【0080】
この時、穿刺針4は、上述のごとく、図17、図23に示すアーム48が、図18の開口部50に係合することで、ホルダー39内に保持された状態となっており、決して外方に突出することはなく、安全対策が講じられている。
【0081】
また、この時には、穿刺針カートリッジ19が、本体ケース1外に排出されることで、前記再装着防止爪39aの傾斜面39bを外方に広げていた前記突起46による動作も解除され、その結果として、再装着防止爪39aは、この図26に示すように、ホルダー39内に突出した状態となっている。このため、図27に示すごとく、保護キャップ32を穿刺針4に再装着しようとして、ホルダー39内に挿入しても、その再装着防止鍔32aが、再装着防止爪39aに当接する結果として、この再装着は行えず、その結果として、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止する事が出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように本発明は、前記保護キャップの後端側に外周に広がった再装着防止鍔を形成するとともに、前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成としたものであるので、この穿刺針カートリッジが、穿刺器具の本体ケースに装着された状態では、ホルダーの再装着防止爪は、ホルダーの外周方向に移動した状態となっている。したがって、この状態では、保護キャップを穿刺針カートリッジから分離することが出来るようになる。また、穿刺による採血後には、この穿刺針カートリッジは前記穿刺器具の本体ケースから取り外されることになるが、この時には、前記再装着防止爪はホルダーの内周方向に移動した状態となる。このため、一旦分離されている保護キャップを穿刺針方向に挿入しようとしても、この保護キャップに設けた再装着防止鍔が、前記内周方向に移動した再装着防止爪に当接し、これにより、それ以上の挿入が行えず、その結果として、穿刺針カートリッジの誤った再使用を防止する事が出来るのである。
【0083】
したがって、医療用の穿刺針カートリッジおよびそれを用いた穿刺器具としての利用が期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0084】
1 本体ケース
2 穿刺深さ調整リング
3 先端リング
4 穿刺針
5 穿刺用開口部
6 操作ボタン
7 穿刺ボタン
8 ベース部材
9 針保持体
10 穿刺針排出部材
11 取付片
12 開口部
13 針保持部
14 連結部
15 弾性体
16 当接面
17 突起
17a 表示窓
18 当接面
19 穿刺針カートリッジ
19a 皮膚当接部
20 回動体
21 回動軸
22 貫通孔
23 突起
24 貫通孔
25 弾性体
26 係合部
27 突起
28 取付部
29 押圧部
30 キックバネ
31 装着部
32 保護キャップ
32a 再装着防止鍔
33 係止突起
34 係止孔
35 ランセット本体
36 破断部
37 連結部
38 回動操作部
39 ホルダー
39a 再装着防止爪
39b 傾斜面
40 基部
41 係合爪
42 係合鍔
43 排出空間
44 案内部
45 案内部
46 突起
47 係合部
48 アーム
49 突起
50 開口部
51 突起
52 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側で穿刺針を保持し、後端側に穿刺器具への装着部を有するランセット本体と、
後端側が前記ランセット本体の前端側に破断部を介して一体化されるとともに、前記穿刺針を覆い、前端側には、連結部を介して前記破断部に連結された回動操作部を有する保護キャップと、
前記ランセット本体の前端側と、前記保護キャップの前記破断部および前記連結部の外周を覆ったホルダーと、
を備え、
前記保護キャップの後端側に外周に広がった再装着防止鍔を形成するとともに、前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成とした穿刺針カートリッジ。
【請求項2】
前記再装着防止鍔は、円板状とした請求項1に記載の穿刺針カートリッジ。
【請求項3】
前記ホルダーの再装着防止鍔よりも前方側に、複数の再装着防止爪を設け、この再装着防止爪は、前記ホルダーの内外周方向に可動自在な構成とした請求項2に記載の穿刺針カートリッジ。
【請求項4】
前記再装着防止爪は、前記ホルダーの対向する部分に配置した請求項3に記載の穿刺針カートリッジ。
【請求項5】
前記再装着防止爪には、この再装着防止爪を前記ホルダーの外周方向に可動させる傾斜面を形成した請求項1から4のいずれか一つに記載の穿刺針カートリッジ。
【請求項6】
下端側に穿刺用開口部を有する筒状の本体ケースと、
この本体ケース内の前記穿刺用開口部側に設けた針保持体と、
この針保持体を前記穿刺用開口部側に移動させる弾性体と、
を備え、
前記本体ケース内の下端側には、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の穿刺針カートリッジのホルダーを保持する保持部を設け、
この保持部で穿刺針カートリッジを保持した状態では、この穿刺針カートリッジの装着部を前記針保持体で保持する構成とするとともに、前記本体ケース内の前記穿刺用開口部側には、前記穿刺針カートリッジの再装着防止爪を外周方向に移動させる突起を設けた穿刺器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−120556(P2012−120556A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271047(P2010−271047)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】