説明

穿孔装置、穿孔装置支持体及び人孔内足掛金具の撤去・設置方法

【課題】簡易な構造で人孔の壁部に穴を穿孔可能とする穿孔装置を得る。
【解決手段】人孔の内壁間に架設して内壁を穿孔する穿孔装置であって、前記人孔の一方の内壁の円弧状面に対して4つの水平固定ボルト18の長さを調整することで係止可能な係止部17を一端側に配した筒状部11と、筒状部11内を移動することで筒状部外に延出可能とし所望位置で筒状部に対して固定される伸長部12と、伸長部の先端側に装着し他方の内壁に先端部24が当接するよう長さが調整可能な支点部23と、筒状部11に対して平行に位置するよう固定された棒状部26と、棒状部に対してその長手方向に移動可能に装着された円柱状切削刃31を有する切削装置30とを具備して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水道に連通する人孔(マンホール)において、その内壁に配設される昇降用の足掛金具を撤去する際に使用される穿孔装置、及び、この穿孔装置を使用して行う人孔内の足掛金具の撤去・設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人孔は、作業者が下水道等を点検するときなどの出入口として利用されるが、その内壁には、作業者が人孔内を昇降するために、鉄製のコの字形の足掛金具(ステップ等)が配設されている。この足掛金具は、経年変化により劣化するので、設置から数十年経過した場合には、表面に腐食防止用の樹脂がコーティングされた新しい鉄製の足掛金物に取り換える必要があった。
従来、この足掛金物を取替える場合、作業者自身が直接人孔に入り、足掛金具近くの内壁を電動ハンマー等を使用して破壊することで、人孔の内壁から足掛金具を取り外すことが行われていた。
【0003】
しかしながら、電動ハンマー等を使用した作業員の手作業により足掛金具を交換する場合、足掛金具の撤去のために必要以上に穴を大きく開けたり、また、そのための騒音も大きくなるとともに、煩雑であり作業時間もかかるという問題点が存在した。
そこで、特許文献1に記載されるように、作業者が人孔に入らないで、その内壁に配設された足掛金物を自動的に取り換えることができる足掛金物自動取替え装置が提案されているが、装置が複雑且つ高価であるという課題がある。
また、人孔に装着される足掛金具4は、図3に示すように、中央から左右にずれた位置に固定される場合が多く、足掛金具4の装着方向に沿って孔を設けることが必ずしも容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−35233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたものであり、簡易な構造で人孔の壁部に穴を穿孔可能とする穿孔装置、及び、この穿孔装置を使用して人孔内の足掛金物を除去して新しい足掛金具を設置する人孔内の足掛金具の撤去・設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、人孔の内壁間に架設して内壁を穿孔する穿孔装置であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記人孔の一方の内壁に対して係止可能な係止部を一端側に配した筒状部。
前記筒状部内を移動することで筒状部外に延出可能とし所望位置で前記筒状部に対して固定される伸長部。
前記伸長部の先端側に装着し他方の内壁に先端部が当接するよう長さが調整可能な支点部。
前記筒状部に対して平行に位置するよう固定された棒状部。
前記棒状部に対してその長手方向に移動可能に装着された円柱状切削刃を有する切削装置。
【0007】
請求項2は、人孔の内壁間に架設される支持体であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記人孔の一方の内壁に対して係止可能な係止部を一端側に配した筒状部。
前記筒状部内を移動することで筒状部外に延出可能とし所望位置で前記筒状部に対して固定される伸長部。
前記伸長部の先端側に装着し他方の内壁に先端部が当接するよう長さが調整可能な支点部。
前記筒状部に対して平行に位置するよう固定され、円柱状切削刃を有する切削装置を装着可能とする棒状部。
【0008】
請求項3は、請求項2の穿孔装置支持体において、前記係止部は、先細となる支点部を備えることで、内壁の円弧状面に対して係止可能としたことを特徴としている。
【0009】
請求項4は、請求項2の穿孔装置支持体において、前記係止部は、平面部と、該平面部に対して任意の長さに突出可能な4本の水平固定ボルトを備えることで、内壁の円弧状面に対して係止可能としたことを特徴としている。
【0010】
請求項5は、人孔の内壁に配設された足掛金具を撤去し、新しい足掛金具を設置する方法であって、次の手順を含むことを特徴としている。
内壁から突出する足掛金具のコ字状部について根元を残して切断する切断工程。
人孔の内壁間に円柱状切削刃を有する穿孔装置を前記足掛金具の装着方向に沿って架設し、円柱状切削刃の回転により前記足掛金具の根元周囲を切削することで前記根元を周囲壁とともに撤去する撤去工程。
前記根元を撤去することで穿孔された孔に新しい足掛金具を配置し、孔の隙間部分に固定剤を充填して足掛金具の設置を行う設置工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穿孔装置によれば、人孔の内壁間に架設した支持体に切削装置を装着して、内壁に埋没した足掛金具の根元周囲に穴を穿孔することで、内壁の破壊を最小限にして足掛金具の根元を撤去することができる。そのため、内壁破壊によって生じる騒音の発生も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の一例としての穿孔装置を示す正面説明図である。
【図2】穿孔装置から切削装置を取り外した穿孔装置支持体の裏面説明図である。
【図3】足掛金具が配設された人孔の縦断面説明図である。
【図4】他の構成の係止部を有する穿孔装置支持体の一部分を示す正面説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、人孔内足掛金具の撤去・設置方法の工程を説明するための人孔の横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の穿孔装置の実施の形態の一例について、図1〜図3を参照しながら説明する。
本発明の穿孔装置1は、図3に示すような下水道に連通する人孔(マンホール)3において、その内壁に配設される昇降用の足掛金具4を撤去する際に、人孔3の内壁間に架設して内壁を穿孔するように使用されるものである。図3では、人孔3の内壁に配設された足掛金具4において、右側の足掛金具4と左側の足掛金具4との間に間隔を空けて配置しているが、右側と左側を近づけ、上方から見た場合に両者が重なるような配置であってもよい。
穿孔装置1は、穿孔装置支持体10に切削装置30(ドリル装置)を装着して構成されている。切削装置30は、専用のもの作製して装着してもよいし、また、ドリル装置として市販されている切削装置を使用してもよい。
【0014】
穿孔装置支持体10は、方形筒状で形成された長尺状の筒状部11と、筒状部11内を移動して筒状部外に延出可能とし所望位置で固定される伸長部12とを備えて構成されている。伸長部12には、側面間を貫通する位置に長尺方向に沿って複数の穴13が設けられている。そして、この穴13の内の一つを筒状部11の対向する面に設けられた穴14に合わせてピン15を貫通させ、反対側に突出したピン15の先端側にストッパー16を装着させることで、筒状部11に対して伸長部12を所望位置で固定するようになっている。
【0015】
伸長部12が延出するのと反対側の筒状部11端部には、人孔の内壁の円弧状面に対して係止可能な係止部17が装着されている。係止部17は、方形状に構成され、その周囲位置の四か所にそれぞれネジ山を有する水平固定ボルト18が螺着して貫通可能な貫通孔を構成するベース部19が溶接されている。ベース部19の貫通孔にはネジ溝が設けられ、4本の水平固定ボルト18の先端側の突出長さを調整して螺着することで、人孔3の内壁の円弧面に対して係止部17が任意の位置で係止できるようにし、穿孔装置支持体10が水平面内に維持できるように構成されている。
また、人孔の内壁が平面である場合には、係止部17の前面から各水平固定ボルト18が突出しないように調整して、係止部17の前面が内壁面に当接するようにすればよい。
【0016】
伸長部12の先端側には方形支持体21が固定され、この方形支持体21に設けた孔22に支点部23が螺着されて長さが調整可能になっている。支点部23には先細の先端部24が形成され、人孔の内壁に対して点接触で当接するよう構成されている。
【0017】
筒状部11の側面側には、筒状部11に対して平行に位置するよう平板上のプレート25を介して棒状部26が固定されている。棒状部26には、円柱状切削刃31を有する切削装置30が、棒状部26の長手方向に移動可能なように装着されている。切削装置30は、アーム32の回転動作により棒状部26への押圧が調整されて棒状部26の任意の位置で固定できるようになっている。
円柱状切削刃31は、外部の発電機等からの電源供給を受け、切削装置30の内部に搭載されたモータ(図示せず)により回転駆動するとともに、給水管32を介して円柱状切削刃31の上端に水が供給され、円柱状切削刃31の内面側を伝わった水の供給を受けながら先端部分が回転することで、人孔の壁面を切削して円柱状孔が形成できるように構成されている。
【0018】
上記例では、複数の水平固定ボルト18を備えた係止部としたが、内壁に係止可能な構造であればよい。例えば、図4に示すように、筒状部11に対して平行に位置するよう連結部27を介して棒状部26を固定し、筒状部11の端部に先端突起を有する支持部28を固定することで係止部17としてもよい。図4中、図1と同じ構成を取る部分については同一符号を付している。
この場合、図1の例の穿孔装置支持体10の係止部17のように各水平固定ボルト18の長さ調整を行う必要がないが、人孔の内壁間の水平面位置に穿孔装置支持体10を位置させるように配置する必要がある。
【0019】
次に、上述した穿孔装置を利用して人孔の内壁に配設された足掛金具を撤去し、新しい足掛金具を設置する方法について、図5を参照しながら説明する。
先ず、切断工程として、人孔3の内壁から突出する足掛金具4のコ字状部(図5(a))について、市販の切断工具(図示せず)を使用して根元4aを残して切断する(図5(d))。
次に、撤去工程として、人孔3の内壁間に円柱状切削刃31を有する切削装置30が装着された穿孔装置支持体10を架設する(図5(c))。穿孔装置支持体10を架設するに際しては、筒状部11に対する伸長部12の長さを調整するとともに、4本の水平固定ボルト18の先端側の突出長さを調整して人孔3の内壁の円弧状面に対して係止部17を係止し、支点部23の突出長を調整することで、根元4aに平行に円柱状切削刃31が切削可能な位置に穿孔装置支持体10を人孔3の内壁間に根元4a(足掛金具4)の装着方向に沿って固定する。
【0020】
この状態で切削装置30の駆動を行い、円柱状切削刃31の回転により足掛金具の根元4aの周囲を切削することで根元4aを円柱状の周囲壁とともに撤去する(撤去工程)。
そして、全ての根元4aを撤去した後、根元4aを撤去することで穿孔された孔に新しい足掛金具を配置し、孔の隙間部分にコンクリートを充填して新しい足掛金具の設置を行う(設置工程)。
【0021】
上述した構造の穿孔装置によれば、4本の水平固定ボルト18の先端側の突出長さを調整して人孔3の内壁の円弧状面に対して係止部17を係止する一方、筒状部11に対する伸長部12の長さを調整、及び、支点部23の突出長の調整を行うことで、種々内径の人孔3の内壁間に円柱状切削刃31を有する穿孔装置30を足掛金具4の装着方向に沿って容易に架設することができる。そして、この状態で切削装置30を駆動すれば、円柱状切削刃31の回転により足掛金具4の根元4aの周囲を切削して円柱状孔を形成することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…穿孔装置、 3…人孔、 4…足掛け金具、 10…穿孔装置支持体、 11…筒状部、 12…伸長部、 17…係止部、 18…水平固定ボルト、 23…支点部、 24…先端部、 26…棒状部、 30…切削装置、 31…円柱状切削刃。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔の内壁間に架設して内壁を穿孔する穿孔装置であって、
前記人孔の一方の内壁に対して係止可能な係止部を一端側に配した筒状部と、
前記筒状部内を移動することで筒状部外に延出可能とし所望位置で前記筒状部に対して固定される伸長部と、
前記伸長部の先端側に装着し他方の内壁に先端部が当接するよう長さが調整可能な支点部と、
前記筒状部に対して平行に位置するよう固定された棒状部と、
前記棒状部に対してその長手方向に移動可能に装着された円柱状切削刃を有する切削装置と、
を具備することを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
人孔の内壁間に架設される支持体であって、
前記人孔の一方の内壁に対して係止可能な係止部を一端側に配した筒状部と、
前記筒状部内を移動することで筒状部外に延出可能とし所望位置で前記筒状部に対して固定される伸長部と、
前記伸長部の先端側に装着し他方の内壁に先端部が当接するよう長さが調整可能な支点部と、
前記筒状部に対して平行に位置するよう固定され、円柱状切削刃を有する切削装置を装着可能とする棒状部と、
を具備することを特徴とする穿孔装置支持体。
【請求項3】
前記係止部は、先細となる支点部を備えることで、内壁の円弧状面に対して係止可能とした請求項2に記載の穿孔装置支持体。
【請求項4】
前記係止部は、平面部と、該平面部に対して任意の長さに突出可能な4本の水平固定ボルトを備えることで、内壁の円弧状面に対して係止可能とした請求項2に記載の穿孔装置支持体。
【請求項5】
人孔の内壁に配設された足掛金具を撤去し、新しい足掛金具を設置する方法であって、
内壁から突出する足掛金具のコ字状部について根元を残して切断する切断工程と、
人孔の内壁間に円柱状切削刃を有する穿孔装置を前記足掛金具の装着方向に沿って架設し、円柱状切削刃の回転により前記足掛金具の根元周囲を切削することで前記根元を周囲壁とともに撤去する撤去工程と、
前記根元を撤去することで穿孔された孔に新しい足掛金具を配置し、孔の隙間部分に固定剤を充填して足掛金具の設置を行う設置工程と、
を具備することを特徴とする人孔内足掛金具の撤去・設置方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21382(P2011−21382A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167324(P2009−167324)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509202086)株式会社富士邑 (1)
【出願人】(509202097)大日建機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】